特許第5777539号(P5777539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777539
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】管状スパッタターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-36109(P2012-36109)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-172265(P2012-172265A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2012年7月4日
(31)【優先権主張番号】10 2011 012 034.3
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】315003088
【氏名又は名称】ヘレーウス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Deutschland GmbH&Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ジーモンス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュロット
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ハインデル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュタール
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−526211(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0089482(US,A1)
【文献】 特開平05−171428(JP,A)
【文献】 特開2012−052190(JP,A)
【文献】 特開2012−052193(JP,A)
【文献】 特開2009−120862(JP,A)
【文献】 特開2009−120863(JP,A)
【文献】 特開2006−299412(JP,A)
【文献】 特開昭60−234968(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/081585(WO,A1)
【文献】 特表2004−538371(JP,A)
【文献】 特開平10−068072(JP,A)
【文献】 特開平10−237630(JP,A)
【文献】 特開平10−195609(JP,A)
【文献】 特開平10−130827(JP,A)
【文献】 特開2003−017491(JP,A)
【文献】 特開平06−264233(JP,A)
【文献】 特開2004−162117(JP,A)
【文献】 特開平08−253858(JP,A)
【文献】 特開2011−098855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持管と、該支持管上に配置されたインジウムまたはインジウム合金製のスパッタ材料とを有する管状スパッタターゲットであって、該スパッタ材料が、スパッタ材料のスパッタで粗くされる表面上のグレインの平均直径として測定される1mm未満の平均グレインサイズを有する微細構造を有し、該スパッタ材料が最大1質量%の銅および/またはガリウム部分を含み、且つ、グレインが、直径/厚さの比が2より大きいレンズ状の断面を有する形状を有することを特徴とする、管状スパッタターゲット。
【請求項2】
スパッタ材料が、スズ、亜鉛の群からの少なくとも1つの金属を含有することを特徴とする、請求項1に記載のスパッタターゲット。
【請求項3】
微細構造が、平均グレインサイズ500μm未満を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のスパッタターゲット。
【請求項4】
スパッタ材料が、350℃以下の液相線温度を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項5】
スパッタ材料の前記平均グレインサイズが、ターゲット表面から、支持管の上の少なくとも1mmまでで確立されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項6】
スパッタ材料の金属の純度が、少なくとも99.99%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項7】
スパッタ材料が、少なくとも、スパッタ材料に面している支持管表面から1mmより長い距離にて、均質な微細構造を含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項8】
グレインの少なくとも90%が、平均グレインサイズ付近の±70%の範囲のサイズであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項9】
少なくとも大多数のグレインが球状から偏向した形状を有することを特徴とする、請求項8に記載のスパッタターゲット。
【請求項10】
スパッタ材料の密度が、理論密度の少なくとも90%であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項11】
スパッタ材料の個々のグレインが、酸化物層により表面上で不動態化されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項12】
スパッタ材料の酸素含有率が、スパッタ材料全体に対して50〜500ppmの範囲内であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項13】
支持管が非磁性材料から製造されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項14】
支持管の材料が、非磁性の合金鋼であり、且つ、スパッタ材料の鉄含有率が、支持管からまたはスパッタ材料と支持管との間に配置され得る接着促進剤層から1mmの最短距離のところで測定して、スパッタ材料の出発材料の鉄含有率よりも5ppm以下、高いことを特徴とする、請求項13に記載のスパッタターゲット。
【請求項15】
スパッタターゲットが少なくとも500mmの長さであることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載のスパッタターゲット。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のスパッタターゲットを、直接的または多段階工程のいずれかで、光起電性の吸収体層の堆積のために用いる使用。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のスパッタターゲットを、反応性スパッタによる酸化物層の堆積のために用いる使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持管と、該支持管上に配置されたインジウムベースのスパッタ材料とを有する、管状スパッタターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
インジウムの管ターゲットは、例えば、CuInGaS2またはCuInGaSe2に基づく薄膜光電池のためのCuInGa吸収層を被覆するために使用される。インジウムスパッタは、しばしば、スパッタターゲット表面上の針状構造の形成が付随し、前記針状構造は異なるスパッタ速度をもたらし、従ってグレインの配向に応じて不均一な層厚をもたらす (M.Weigert, The Challenge of CIGS Sputtering, Heraeus Thin Film Materials No.11、2008年4月)。これまでのところ、相応する管ターゲットは、例えばEP1186682号B1内に記載されるような単純な鋳造工程によって製造されている。CIGS用途のためには金属が非常に純粋(99.99〜99.999%)である必要があるので、前記スパッタターゲットは非常に粗い構造を有し、従ってそれは上述の問題をもたらすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP1186682号B1
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.Weigert, The Challenge of CIGS Sputtering, Heraeus Thin Film Materials No.11、2008年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、公知のスパッタターゲットを改善して均一なスパッタ速度および均一な厚さの層を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
該課題は、独立請求項の特徴部によって解決される。有利な実施態様は、従属請求項内で特定される。本発明は特に、支持管と、該支持管上に配置されたインジウムベースのスパッタ材料とを有する管状スパッタターゲットであって、該スパッタ材料が、スパッタ材料のスパッタで粗くされる表面(sputtering−roughened surface)上で、グレインの平均直径として測定される平均グレインサイズ1mm未満を有する微細構造を有することを特徴とする管状スパッタターゲットによって特徴付けられる。
【0007】
選択的に、スパッタ材料は、スズ、亜鉛の群からの少なくとも1つの金属を含有できる。該スパッタ材料は、特に、最大1質量%の銅および/またはガリウム部分を含む。さらには、微細構造の平均グレインサイズについて、500μm未満、好ましくは200μm未満であることが適切である。さらには、スパッタ材料の液相線温度について、350℃以下であることが有利である。
【0008】
さらには、スパッタ材料の前記平均グレインサイズについては、ターゲット表面から支持管の上の少なくとも1mmまで放射状に測定される際、その厚さにわたって確立されていることが有利である。この文脈において、および以降で示される相応の指定される測定に関して、少なくとも1mmの距離とは、支持管の外面から、適宜、支持管とスパッタ材料との間に配置された層(例えば接着促進剤層、はんだ層)の外面から測定された距離を示し、その際、前記距離は半径方向に外向きに測定されるべきである。
【0009】
好ましくは、スパッタ材料の金属の純度は少なくとも99.99%、より好ましくは99.999%である。他の有利な実施態様において、スパッタ材料は、少なくとも、スパッタ材料に面している支持管表面から1mmを上回る距離のところで均質な微細構造を含む。
【0010】
少なくとも90%のグレインが、平均グレインサイズの±70%、好ましくは±50%の範囲内のサイズであることが適切である。特に、スパッタ材料の微細構造のグレインが各々、大多数のグレインの最大直径の最小直径に対する比が1.5より大きい、好ましくは2より大きい、特に3より大きい、最小直径および最大直径を有することが有利である。この文脈においては、少なくとも大多数のグレインが球状から偏向した形状を有することが合理的である。この文脈において、該形状は、1またはそれより多くの方向で平らになった、またはつぶれた球状、または他の方法で変形された球状であってよい。
【0011】
有利には、スパッタ材料の密度は、理論密度の少なくとも90%、特に少なくとも95%である。さらには、スパッタ材料の個々のグレインは、酸化物層により表面上で不動態化されていることが適切である。好ましくは、スパッタ材料の酸素含有率は、スパッタ材料全体に対して50〜500ppmの範囲内、より好ましくは70〜300ppmの範囲内であってよい。
【0012】
支持管は、非磁性材料から、好ましくは非磁性の合金鋼から製造されてよく、その際、支持管材料は好ましくは非磁性の合金鋼であり、且つ、該スパッタ材料の鉄含有率は、支持管からの、またはスパッタ材料と支持管との間に配置され得る接着促進剤層からの最短距離1mmで測定されたスパッタ材料の出発材料の鉄含有率よりも、5ppm以下、好ましくは1ppm以下、高い。スパッタターゲットの長さは好ましくは少なくとも500mmであってよい。
【0013】
本発明によれば、該スパッタターゲットを、光起電性の吸収体層の、直接的または多段階工程のいずれかでの堆積のために、または反応性スパッタによる酸化物層の堆積のために使用できる。
【0014】
一般に、本発明は、細かいグレインサイズおよび高密度を有するインジウム(In)またはIn合金製の高純度管ターゲット(純度99.99〜99.999%)を提供できる。さらには、その酸素含有率を、一方でスパッタの間、カソードでのスパークオーバー(アーク放電)または針の形成またはピックアップがないように、且つ他方ではアーク放電がどうしても生じる場合にターゲット材料がその面積のほとんどにわたって直ちに溶融しないように、選択することができる。出発材料の有用なターゲット材料に対する良好な比をそのように得ることができる。
【0015】
従って、本発明によるスパッタターゲットは好ましくは1つまたはそれより多くの以下の特徴を含むことができる:
・ 少なくとも99.99%、好ましくは少なくとも99.999%の純度;
・ スパッタでエッチングされた管表面上でのインジウムグレインの平均直径から測定して1mm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは200μm未満の平均グレインサイズを有する細かいグレインの微細構造、その際、前記グレインサイズはターゲット表面から支持管上の1mmまでで確立されている;
・ グレインの90%のグレインサイズが平均グレインサイズの±70%、好ましくは±50%の範囲内である、ターゲットの長さおよび厚さに沿って均質な微細構造(支持管に最も近い最後の1mmを除く);
・ 直径/厚さの比が2より大きい、レンズ状の断面を有するグレイン形状;
・ 理論密度の90%、好ましくは95%より高い密度;
・ アーク放電が起きる場合の溶融傾向を低減するための、薄い酸化物層による個々のグレインの表面の不動態化;
・ 50〜500ppmの範囲、好ましくは70〜300ppmの範囲の酸素含有率;
・ 組成: インジウム(不純物含む)、融解温度300℃未満のインジウム合金、特にIn−Sn;
・ インジウム材料とステンレス鋼の支持管との複合材、その際、スパッタターゲットの鉄含有率は、その製造のために使用された出発材料の鉄含有率と比べて、5ppm/1ppmより多くは増加されていない。
【0016】
以下に、本発明を図面に基づき例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1a: 本発明による微細構造を有する、方法1による細かいグレインのターゲットを示す。図1b: 方法1によるIn管ターゲットのスパッタでエッチングされた表面を示す。
図2】比出力4kW/mでの、本発明によるターゲットについての時間の関数としてのスパッタ速度を示す。
図3】粗いグレインの微細構造を有する、方法2(参考ターゲット)によるスパッタターゲットを示す。
図4】比出力4kW/mでの、方法2(参考ターゲット)によるターゲットについての時間の関数としてのスパッタ速度を示す。
【実施例】
【0018】
1. 本発明による管ターゲットについての方法:
高純度インジウム(99.999%)をるつぼ内で溶融させた。定着剤の粗い層を備えた支持管を、回転装置上に取り付けた。液体の溶融インジウム金属を、供給ラインを通じて噴霧器のノズルへ供給し、そこでそれをガスの作用により溶射した。液体の溶融した液滴が、回転している支持管に当たり、従って、支持管の溶射ノズルに対する相対運動によって、厚い金属質インジウム層が経時的に支持管上に多層の形態で堆積される。
【0019】
溶融物の最適温度を、いくつかの予備実験において、ノズルの幾何学的形状、溶射距離、および支持管の円周速度に応じて測定しなければならない。170〜230℃の範囲の温度が有益であることが証明されている。保護ガス、例えばアルゴンおよび窒素、並びに空気が、噴霧ガスとして考えられる。溶融温度および溶射距離と共同して、適切なガスの選択により、スパッタターゲット材料中で効果的な酸素含有率を調整することが可能になる。これも、選択される溶体に依存して、いくつかの予備実験を必要とする。そのように製造された管のブランクは、まだ、溶射からの粗い表面を有しており、それを回転させること(over−twisting)によって除去した。
【0020】
これは、もし製造パラメータが適切に選択されたならば、本発明による微細構造を生じる。これは、当業者にとっては、少ない一連の実験により、容易に達成され、その際、本発明によるグレインサイズおよび酸素含有率特性に達するために、温度および雰囲気に関して特別に注意を払わねばならない。被覆パラメータを不適切に選択した場合、生じる密度が低すぎる(90%未満)か、または酸素含有率が高すぎた(500ppmの過剰)。
【0021】
そのように製造された管は、製造パラメータに依存して、平均グレインサイズ50〜500μmの細かいグレインの微細構造を有していた。多くの場合、生じる平均グレインサイズは200μm未満であった。該グレインサイズは各々の場合、1mm未満であった(図1a、1b)。層の形態での本発明によるスパッタターゲットの製造のおかげで、微細構造はスパッタターゲットの厚さおよび外装表面にわたって均質である。平均グレインサイズは、長さおよび厚さにおいて、スパッタターゲットにわたって、±70%以下だけ変化したが、多くの場合、±50%以下だけ変化した。さらには、該グレインは、通常、直径の厚さに対する比が2より高く、しばしば3より高い範囲を有する、平らになった形状を有していた。細かく且つ均質なグレインサイズおよび平坦なグレイン形状のおかげで、スパッタの間、グレインの除去までの各々のグレインの曝露時間は断然短い。結果として、上述の針構造は、広い面積にわたって確立され得ない。従って、生じるスパッタ速度は非常に安定であった(堆積速度)(図2参照)。好ましい実施態様においては、厚さ15mmを有するインジウム被覆を有する管ターゲットについてすら、約20kW/mまでの特定のスパッタ負荷を与えることが可能であった。従って、該スパッタターゲットを、少なくとも15kW/mの、恐らく20kW/mまたはそれより高い比出力を用いて稼働させることができる。
【0022】
プロセス条件の適した選択は、50〜500ppmの範囲の酸素値の達成を可能にした。意外にも、スパッタの間に特に引き起こされたアーク放電は、低溶融インジウム中で、酸素含有率が低いほどより深い痕跡を生成することが判明した。従って、グレイン周囲の酸化物シェルは、短時間の溶融の間のスパッタターゲット表面の安定化をみちびく。有利な酸素含有率は、70〜300ppmの範囲内であることが判明した。一定の限定を伴うとはいえ、50〜500ppmの範囲を同様に使用できる。この文脈において、酸素が、粒子および/またはグレインの周囲に酸化物シェルの形態で存在することが重要である。溶融安定化の有益な効果は、O2値が低すぎる場合はもはや生じない。O2値が高すぎる場合は、酸化物によって引き起こされる不安定性が明白であり、その際、不所望のアーク放電がもたらされる。上述の通りに製造されたターゲットの鉄含有率は1ppm未満であり、ただし、該試料は支持管および/または支持管とスパッタ材料との間に配置された接着剤層上の少なくとも1mmで採取された。酸に溶解されたスパッタターゲット材料について、発光分光(OES)および誘導結合プラズマ(ICP)による励起を使用して不純物を評価した。
【0023】
選択的に、純粋なインジウムよりむしろ、インジウム合金、例えばIn:Cu、In:Ga、In:SnまたはIn:Znなど、またはそれらの混合物の使用が可能である。本発明による方法は、合金の液相線温度が350℃を上回らない条件で、うまく機能した。非常に低い共晶混合物のために、In:Gaを最大で5〜10質量%までの添加剤としてのみ使用することが有意義である。In:Cuの使用は、最大で約5質量%に制限され、なぜなら、液相線温度が素早く上昇するからである。
【0024】
2. 代替の管状ターゲットのための方法(参考例)
参考例の鋳造製造手順は、Sn管についてEP1186682号B1内で記載された方法に相応するが、ただし99.999%の純度のインジウムが使用された。該インジウムを溶融させ、そして190℃でるつぼから、支持管を取り囲む予熱された鋼の鋳型へと流し込み、その際、鋼の鋳型の脚部は、シーリング部品により支持管に接続された。さらに、鋳造鋳型を保護ガスですすぎ、酸化を防いだ。支持管へのインジウムの結合を改善するために、支持管は、先にインジウムはんだを備えられ、ニッケルベースの接着剤層を備えられた。鋳造後、支持管を、生じる固化が下部から上部へと進行するように、脚部から開始する空気の吹き込みを使用して、内部から冷却した。前記の方法は、粗いグレインのインジウムの管状ターゲットをもたらし(図3)、その際、長い時間の間に該溶融物が支持管と鋳造鋳型とをつなぐので、50ppmの高すぎる鉄含有率がさらに生じた。粗い微細構造は、図4に示される通り、経時的にスパッタ速度の大幅な低下をもたらし、なぜなら、上述の針構造が表面上に形成されるからである。該スパッタターゲットは、わずかな無視できるアーク放電を伴ってスパッタされた。しかしながら、50ppm未満の低い酸素含有率は、人為的に生成されたアーク放電を引き起こし、ターゲット表面に深い孔をもたらした。大工業規模におけるスパッタ工程は、周期的に、アーク放電についての外部要因が付随するので、この事実はインジウムのように低い材料溶融の場合において特にリスクの高まりを意味する。
図1
図2
図3
図4