特許第5777548号(P5777548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777548
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】シート積載装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20150820BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B65H31/00 Z
   G03G15/00 550
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-64951(P2012-64951)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-193858(P2013-193858A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】大西 祥太
(72)【発明者】
【氏名】能宗 輝光
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−055722(JP,A)
【文献】 特開2011−197412(JP,A)
【文献】 特開平09−309656(JP,A)
【文献】 特開昭63−196437(JP,A)
【文献】 特開平10−226449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00−31/40
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出されたシートを載置可能に構成され、該シートの排出方向の上流側が所定の支持部材によって支持された第1トレイと、
排出されたシートを載置可能に構成され、排出される過程で前記シートに帯電した静電気によって前記シートの排出方向の先端部が前記第1トレイ側へ浮き上がり可能な距離を隔てて前記第1トレイの下方に設けられた第2トレイと、
前記第1トレイにおいて前記第2トレイに対向する対向面に沿うように前記対向面に取り付けられ、前記シートの排出方向に交差する第1方向に延出され、予め定められた基準電位点に接続された導電体からなる補強部材と、を備え、
前記補強部材は、前記第2トレイに排出される過程で前記第1トレイ側へ浮き上がった前記シートの前記先端部に接触して前記先端部に帯電した静電気を除去可能なように、前記第2トレイに載置された前記シートの前記先端部に対応する位置に取り付けられており、
前記第1トレイの前記対向面は、前記補強部材の取り付け位置を前記シートのサイズに応じて変更可能に構成されているシート積載装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記第1方向に沿って隔てられた第1位置と第2位置との間で前記第1トレイを移動可能に支持するものであり、
前記第1位置は、前記第1トレイに前記シートが排出されるときに前記第1トレイが配置される位置であり、前記第2位置は、前記第1トレイから前記シートが取り出されるときに配置される位置である請求項1に記載のシート積載装置。
【請求項3】
前記第1トレイ及び前記第2トレイは、前記シートよりも帯電列において下位の合成樹脂で構成されており、前記シートは、紙などの天然繊維で形成されたものである請求項1又は2に記載のシート積載装置。
【請求項4】
前記補強部材は、前記シートの前記先端部における前記第1方向の全域が前記補強部材に接触して前記先端部から静電気を除去可能なように前記第1方向に延出している請求項1から3のいずれかに記載のシート積載装置。
【請求項5】
給送されたシートに対して画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部による画像形成後のシートをシート排出口から排出する排出手段と、
前記排出手段によって前記シート排出口から排出されたシートを載置する請求項1から4のいずれかに記載のシート積載装置と、を具備する画像形成装置。
【請求項6】
前記排出手段によって画像形成後のシートが排出される排出スペースが前記画像形成部の上方に設けられており、前記シート積載装置が前記排出スペースに設けられている胴内排出型の請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
給送されたシートに対して画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部による画像形成後のシートをシート排出口から排出する排出手段と、
前記画像形成部の上方に設けられ、前記排出手段によって画像形成後のシートが排出される排出スペースと、
前記排出スペースに設けられ、前記排出手段によって前記シート排出口から排出されたシートを載置するシート積載装置と、を備え、
前記シート積載装置は、
前記排出スペースに排出されたシートを載置可能に構成された第1トレイと、
前記排出スペースに排出されたシートを載置可能に構成され、所定の距離を隔てて前記第1トレイの下方に設けられた第2トレイと、
前記第1トレイにおいて前記第2トレイに対向する対向面に沿うように前記対向面に取り付けられ、前記シートの排出方向に交差する第1方向に延出され、導電体からなる補強部材と、を有し、
前記画像形成部は、
前記第1トレイにおける前記排出方向の上流側の端部を支持する第1支持部材と、
予め定められた基準電位点に接続された導電体で構成され、前記第1トレイにおける前記第1方向の一方側の端部と係合して前記第1トレイを支持する第2支持部材と、を有し、
前記補強部材は、前記第1方向の前記一方側の端部が前記第2支持部材に形成された係合溝に挿入されることにより前記第2支持部材に支持されており、且つ、前記第2トレイに前記シートが排出される過程で前記シートに帯電した静電気を除去可能なように前記第2トレイに載置された前記シートの排出方向の先端部に対応する位置に取り付けられており、
前記第1トレイの前記対向面は、前記補強部材の取り付け位置を前記シートのサイズに応じて変更可能に構成されている画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置や画像読取装置などから排出されたシートを載置可能な第1トレイ及び第2トレイを備えたシート積載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機、ファクシミリ、及びこれらの複合機などの画像形成装置には、画像形成後に排出されたシート(例えば印刷用紙)を積載するためのシートトレイが設けられている。中型から大型の画像形成装置においては、上下方向に複数のシートトレイが設けられたものがあり、これらの複数のシートトレイは、複数部印刷されたシートをソート処理したり、或いは用途に応じて選択的にシートを排出したりする場合に用いられている。
【0003】
この種の画像形成装置の一例として、複写機などに搭載される特許文献1に記載のソータが公知である。このソータでは、下段のシートトレイに排出されたシートに帯電した静電気を除去するための第1除電ブラシがシート排出口に設けられており、下段のシートトレイにシートが排出される際にシートの幅方向全域の静電気が除電される。また、上段のシートトレイの下面に第2除電ブラシが設けられており、ユーザーが下段のシートトレイからシートを取り出すときに、取り出されたシートが第2除電ブラシに当接することにより、シートの帯電した静電気が更に除電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−75870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前掲の特許文献1に記載のソータでは、下段のシートトレイにシートが載置された状態では、第2除電ブラシがシートに接触しない。そのため、第1除電ブラシによってシート排出口でシートの静電気が除電されたとしても、シート排出口を抜け出てから下段のシートトレイに載置されるまでの間にトレイ載置面などに擦られることによってシートに帯電した静電気は除去されない。特許文献1のソータは、シートトレイのシート排出口側が複写機などのフレームに支持されたものであるが、この構成であればシートトレイの支持機構が堅牢ではないため、シートトレイに多量のシートを積載することはできず、積載枚数が少ないためにシート排出口を抜け出てから帯電する静電気の帯電量も少ないと考えられる。ところが、シートトレイを補強するなどして、シートトレイに多量のシートを積載可能とした場合は、多量のシートが下段のシートトレイに排出されたことにより、静電気の帯電量が大きくなり、積載されたシートが上段のシートトレイの裏面に引き寄せられて引っ付き、下段のシートトレイに積載されるシートの順序が変わったり、シートがずれるなどして積載状態が悪くなったりするという問題がある。また、仮に第2除電ブラシがシートに接触する位置に設けられているとしても、第2除電ブラシはシートの取り出し側に設けられており、しかもシートの排出方向と同方向に延設されているため、第2除電ブラシが排出中のシートに接触して、その接触摩擦力を受けてシートが斜行するおそれがある。この場合、シートの静電気を除電できたとしても、斜行によってシートがずれるなどして積載状態が悪くなる。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多量のシートを積載可能なように上方のシートトレイを補強するとともに、排出後にシートに帯電した静電気を簡単な構成で確実に除去することにより、下方のシートトレイに積載されるシートの順序性や積載状態を良好に保つことが可能なシート積載装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、排出されたシートを載置可能に構成され、該シートの排出方向の上流側が所定の支持部材によって支持された第1トレイと、排出されたシートを載置可能に構成され、所定の距離を隔てて前記第1トレイの下方に設けられた第2トレイと、前記第1トレイにおいて前記第2トレイに対向する対向面に沿って設けられ、前記シートの排出方向に交差する第1方向に延出され、予め定められた基準電位点に接続された導電体からなる補強部材と、を備えるシート積載装置として構成されている。本発明のシート積載装置では、前記補強部材は、前記第2トレイに排出される過程で前記シートに帯電した静電気を除去可能なように、前記第2トレイに載置された前記シートの排出方向の先端部に対応する位置に設けられている。
【0008】
これにより、上方に配置された第1トレイが補強部材で補強され、その結果、補強されていない従来のトレイに比べて第1トレイに多量のシートが積載可能となる。また、補強部材が導電体で構成されており、それが基準電位点に接続されているため、仮に第2トレイに排出されたシートが帯電して、最も帯電しやすい先端部が第1トレイの裏面に引き寄せされて引っ付いても、シートの先端部が補強部材に接触することによってシートの静電気が除電される。
【0009】
(2) 前記支持部材は、前記第1方向に沿って隔てられた第1位置と第2位置との間で前記第1トレイを移動可能に支持するものである。この場合、前記第1位置は、前記第1トレイに前記シートが排出されるときに前記第1トレイが配置される位置であることが好ましい。また、前記第2位置は、前記第1トレイから前記シートが取り出されるときに配置される位置であることが好ましい。
【0010】
このように前記第1位置と前記第2位置とに第1トレイがスライド可能に支持されているため、シート排出時は前記第1位置に配置させておき、シートを取り出すときは、シートが取り出しやすい前記第2位置まで第1トレイを引き出すことで、ユーザーは第1トレイに積載されたシートを容易に取り出すことができる。
【0011】
(3) 前記第1トレイ及び前記第2トレイは、前記シートよりも帯電列において上位又は下位の材質で構成されている。このような構成の場合は、前記シートに静電気が帯電しやすい。
【0012】
(4) 例えば、前記第1トレイ及び前記第2トレイは、合成樹脂で形成されたものであり、前記シートは、紙などの天然繊維で形成されたものである。
【0013】
(5) また、本発明は、給送されたシートに対して画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部による画像形成後のシートを排出する排出手段と、前記排出手段によって前記シート排出口から排出されたシートを載置する上述のシート積載装置と、を具備する画像形成装置として捉えることもできる。
【0014】
(6) この場合、前記排出手段によって画像形成後のシートが排出される排出スペースが前記画像形成部の上方に設けられており、前記シート積載装置が前記排出スペースに設けられている所謂胴内排出型の画像形成装置であることが好ましい。
【0015】
このような胴内排出型の画像形成装置において、前記支持部材によって前記第1トレイがシート排出口側で支持される構成とし、且つ、前記排出スペースにおいて排出方向の下流側が開放された構成とすることにより、シート積載装置の第1トレイ又は第2トレイに排出されたシートの視認性が向上し、また、シートへのアクセスが容易になるため各トレイからシートを取り出し易くなる。しかも、このような構成において、補強部材によって第1トレイが補強されるので、従来のトレイに比べて多量のシートを積載することができ、しかも、第2トレイに積載されるシートの静電気を確実に除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多量のシートを積載可能なように上方の第1トレイの補強が可能となり、また、排出後にシートに帯電した静電気が簡単な構成で確実に除去されるため、下方の第2トレイに積載されるシートの順序性や積載状態を悪化させずに良好に保つことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置10の外観構成を示す斜視図である。
図2】画像形成装置10の概略構成を示す模式断面図である。
図3図1における要部IIIの拡大斜視図である。
図4図3において上段トレイ41が引き出された状態を示す拡大斜視図である。
図5】排紙スペース21の奥部を示す部分拡大図である。
図6】上段トレイ41とトレイ連結部60との連結機構を説明する斜視図である。
図7】上段トレイ41の構成を示す斜視図である。
図8】下段トレイ42に排出される印刷用紙の排出状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態に係るシート積載ユニット20(本発明のシート積載装置の一例)及びこれを備えた画像形成装置10(本発明の画像形成装置の一例)について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態は適宜変更できる。また、以下の説明においては、画像形成装置10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向6を定義し、操作表示部17が設けられている側を手前側(正面)として前後方向7を定義し、画像形成装置10を手前側(正面側)から見て左右方向8を定義する。
【0019】
まず、図1及び図2を参照して画像形成装置10の概略構成について説明する。図1に示されるように、画像形成装置10は、いわゆる胴内排紙型と称されるものであり、プリンター、複写機、及びファクシミリなどの各機能を備えた複合機である。この画像形成装置10は、入力された画像をトナーなどの印刷材料を用いて、パルプなどの天然繊維で構成された印刷用紙(本発明のシートに相当)にモノクロ印刷又はカラー印刷するものである。なお、画像形成装置10は複合機に限られず、プリンターや複写機、ファクシミリなどの専用機であっても、本発明は適用可能である。
【0020】
画像形成装置10は、上部に原稿の画像を読み取るスキャナー12が設けられ、下部に電子写真方式の画像形成部14(本発明の画像形成部の一例)が設けられたものである。そして、図2において画像形成装置10の右側に用紙排出部30が設けられている。なお、画像形成部14は電子写真方式のものに限られず、インクジェット記録方式のものであっても、或いはそれ以外の記録方式又は印刷方式のものであってもかまわない。
【0021】
画像形成部14の上方には印刷用紙が排出される排紙スペース21(本発明の排出スペースに相当)が設けられている。用紙排出部30は、画像形成部14とスキャナー12との間に排紙スペース21を形成しつつ、画像形成部14とスキャナー12とを連結するように設けられている。本実施形態では、図1に示されるように、排紙スペース21の前方側と左側が開放されている。また、排紙スペース21の後方側と右側は開放されておらず、後方側には後述するトレイ連結部60が設けられており、右側には用紙排出部30が設けられている。本発明の実施形態に係るシート積載ユニット20は、排紙スペース21に設けられている。なお、シート積載ユニット20については後述する。
【0022】
図1に示されるように、スキャナー12には原稿載置面23が設けられている。画像形成装置10が複写機として機能する場合は、原稿載置面23に原稿がセットされて操作表示部17からコピー開始指示が入力されると、スキャナー12による読取動作が開始され、原稿の画像データが読み取られる。なお、図1では、スキャナー12の原稿カバーの図示が省略されている。
【0023】
画像形成部14は、スキャナー12で読み取られた画像データや外部入力された画像データに基づいて、A判サイズ(例えばA5サイズ、A4サイズ、A3サイズ)やB判サイズ(例えばB5サイズ、B4サイズ)などの規定サイズの印刷用紙にモノクロ画像又はカラー画像を形成するものである。画像形成部14は、主として、複数枚の印刷用紙を収容可能な2つの給紙トレイ16と、複数の搬送手段15と、給紙トレイ16から給送された印刷用紙にトナー像を転写する転写装置18と、印刷用紙に転写されたトナー像をその印刷用紙に定着させる定着装置19と、定着装置19でトナー像が定着された画像形成後の印刷用紙を排紙スペース21に排出する2つの排出手段25,26(本発明の排出手段の一例)と、排出された印刷用紙を載置するためのシート積載ユニット20と、これらを制御する制御部(不図示)と、を備えている。
【0024】
給紙トレイ16から給送された印刷用紙は、内部の搬送路27を転写装置18へ向けて移動され、その移動過程において印刷用紙にトナー像が転写される。印刷用紙に転写されたトナー像は、定着ユニット18を通過する際に加熱溶融されることによって印刷用紙に定着する。定着ユニット18を通過した印刷用紙は、搬送路28を通って用紙排出部30へ搬送される。
【0025】
用紙排出部30の排紙スペース21側の側面には、上方に配置された上側排出口35と、上側排出口35の下側に配置された下側排出口36とが形成されている。上側排出口35の近傍に一対のローラーからなる排出手段25が設けられており、下側排出口36の近傍に一対のローラーからなる排出手段26が設けられている。搬送路28は、用紙排出部30内で上側排出口35に至る排紙路32と下側排出口36に至る排紙路33とに分岐されている。用紙排出部30へ搬送された印刷用紙は、制御部によって切り替え制御される図示しないフラップによって排紙路32又は排紙路33のいずれかへ案内される。そして、いずれかの排紙路32及び排紙路33から排出手段25,26のいずれかによって、印刷用紙が排紙スペース21に排出される。
【0026】
以下、図2乃至図8を参照して、シート積載ユニット20の構成について詳細に説明する。
【0027】
図3に示されるように、シート積載ユニット20は、画像形成部14の上方に区画形成された排紙スペース21に設けられており、上方に配置された上段トレイ41(本発明の第1トレイの一例)と、上段トレイ41の下方に配置された下段トレイ42(本発明の第2トレイの一例)と、を備えて構成されている。
【0028】
下段トレイ42は、下段排出口36(図2参照)から排出された複数の印刷用紙を積載可能なものであり、画像形成部14の上面に設けられている。下段トレイ42に複数の印刷用紙を載置できるように、上方の上段トレイ41と下段トレイ42とは、予め定められた積載枚数に応じた距離を隔てられている。下段トレイ42は、ABS樹脂を射出成形することによって形成されたものであり、その上面の用紙載置面43には、印刷用紙の排出方向と同じ左右方向8へ延びる複数のリブ44が形成されている。なお、下段トレイ42はABS樹脂製のものに限られず、ABS樹脂以外の合成樹脂で形成されたものであってもよい。
【0029】
下段トレイ42の用紙載置面43の右側(排出方向上流側)には、用紙排出部30側へ向かって下方へ落ち込むように下り傾斜した傾斜面45が設けられている。そのため、下段排出口36から印刷用紙が排出されると、印刷用紙の先端(排出方向下流側の端部)が傾斜面45に当接して接触しながら左側(排出方向下流側)へ案内される。そして、印刷用紙の後端(排出方向上流側の端部)が下段排出口36を抜け出ると、印刷用紙の後端が下段排出口36から下方に落ちて、傾斜面45に当接する。
【0030】
下段排出口36には除電ブラシ37が設けられている。除電ブラシ37は、下段排出口36から排出された印刷用紙に帯電している静電気を除去するものである。この除電ブラシ37は、例えば金属製の細径のワイヤーがすだれ状に吊り下げられたものであり、下段排出口36の全域に渡って前後方向7に延設されている。除電ブラシ37は、例えば画像形成部14の金属製の筐体に電気的に接続されており、更にこの筐体は接地されている。この除電ブラシ37が設けられているため、印刷動作中に印刷用紙に帯電した静電気が下段排出口36から排出される際に除去される。
【0031】
図2及び図3に示されるように、上段トレイ41は、上段排出口35(図2参照)から排出された複数の印刷用紙を積載可能なものである。この上段トレイ41は、下段トレイ42の上方であって、排紙スペース21において上下方向6の概ね中央に配置されている。上段トレイ41の上面には、上段排出口35から排出された印刷用紙を載置する用紙載置面53が設けられており、順次排出された印刷用紙は、用紙載置面53に積載される。
【0032】
上段トレイ41は、その右側(排出方向上流側)の端部41Aが用紙排出部30に設けられたスライドレール31(図5参照、本発明の支持部材の一例)によって支持されている。なお、図5では、上段トレイ41が取り外された状態が示されている。
【0033】
図5に示されるように、スライドレール31は、用紙排出部30の排紙スペース21側の側面に取り付けられており、詳細には、下側排出口36と上側排出口35との間に前後方向7に沿うように取り付けられている。このスライドレール31は、2つのレールが重ね合わされた構造を有する周知の部材であって、それぞれのレールが摺動して伸縮し易いように滑車やベアリングなどの摺動部材が設けられている。このスライドレール31に上段トレイ41の右側の端部41Aが固定される。これにより、上段トレイ41は、スライドレール31によって、前後方向7に隔てられた排出位置(図3に示される位置、本発明の第1位置に相当)と、取出位置(図4に示される位置、本発明の第2位置に相当)との間でスライド可能に支持されている。ここで、前記排出位置は、上段トレイ41に印刷用紙が排出されるときに配置される位置であり、排出される印刷用紙を載置可能な位置である。また、前記取出位置は、上段トレイ41から印刷用紙が取り出されるときに配置される位置であり、前記排出位置よりも手前側の位置である。なお、上段トレイ41をスライド移動可能に支持する支持機構であれば、スライドレール31以外の如何なる支持機構であっても適用可能である。
【0034】
図5に示されるように、本実施形態では、排紙スペース21の後方にトレイ連結部60が設けられている。トレイ連結部60は、上段トレイ41のスライド位置に応じて上段トレイ41の後端を支持するものである。詳細には、トレイ連結部60は、上段トレイ41が前記排出位置に配置されたときに上段トレイ41の後端と係合して上段トレイ41を上下方向6に支持する。また、トレイ連結部60は、上段トレイ41が前記排出位置から前記取出位置側へ引き出されたときに、上段トレイ41の後端との係合を解係して、上段トレイ41の後端の支持も解除する。
【0035】
図5に示されるように、トレイ連結部60は、画像形成部14の筐体に固定されたフレーム61を備えている。フレーム61は、画像形成部の筐体と同様に、導電性を有する材料で形成されており、例えば金属板を板金加工することによって形成されている。画像形成部14の筐体も金属製部材で形成されており、接地されている。そのため、画像形成部14の筐体、及びこれに固定されたフレーム61は、予め定められた基準電位(例えば接地電位)とされている。
【0036】
図5及び図6に示されるように、フレーム61の正面には、後述する金属リブ48(本発明の補強部材の一例)の後端48Aが挿入される係合溝62が形成されている。また、上段トレイ41の後端に設けられた複数の係合片63と係合可能な被係合部64が設けられている。本実施形態では、上段トレイ41が前記排出位置に配置されることにより、金属リブ48の後端48Aが係合溝62に挿入され、係合片63が被係合部64に係合されることにより、上段トレイ41の後端がトレイ連結部60によって支持される。
【0037】
なお、上段トレイ41が前記排出位置から前記取出位置側へ引き出されて、トレイ連結部60による上段トレイ41の支持が解除されると、上段トレイ41は、前記排出位置から前記取出位置までにスライドする過程において、スライドレール31のみによって支持される。この場合、例えば、上段トレイ41に多数の印刷用紙が積載されていると、上段トレイ41が撓んだり変形したりする。そのため、上段トレイ41には、後述するように、歪みや変形を補強するために金属リブ48が取り付けられている。
【0038】
以下、図7を参照して、上段トレイ41の構成について説明する。図7は、上段トレイ41の構成を示す斜視図であり、(A)には上段トレイ41を上側から見た斜視図が示されており、(B)には上段トレイ41を下側から見た斜視図が示されている。図7に示されるように、上段トレイ41は、トレイ本体47と、金属リブ48とを有する。
【0039】
トレイ本体47は、下段トレイ42と同様に、ABS樹脂を射出成形することによって形成されたものであり、その上面の用紙載置面53には、印刷用紙の排出方向と同じ左右方向8へ延びる複数のリブ50(図7(A)参照)が形成されている。また、リブ50と同様のリブ51(図7(B)参照)がトレイ本体47の裏面にも形成されている。このように印刷用紙の排出方向と同じ方向に延びる多数のリブ50,51が設けられているため、スライドレール31によって上段トレイ41が片持ち状で支持されても、用紙載置面53に垂直な方向への歪みが抑えられる。
【0040】
図7(B)に示されるように、金属リブ48は、下段トレイ42の用紙載置面43に対向する対向面であるトレイ本体47の裏面54に設けられている。金属リブ48は、導電性を有する材料で形成されており、例えば金属板を板金加工することによって形成されている。金属リブ48は、細幅長尺な平板形状に形成されており、裏面54において、その長手方向が印刷用紙の排出方向と直交する方向(本実施形態では前後方向7に一致)と一致するように設けられている。換言すれば、金属リブ48は、裏面54において、前後方向7に延出するように設けられている。なお、金属リブ48は、長手方向が印刷用紙の排出方向と直交する方向へ延出されたものであれば、細幅長尺な平板形状のものに限られない。
【0041】
裏面54には、金属リブ48を固定するための複数の固定片55が設けられている。固定片55と裏面54との間には溝が形成されており、この溝に金属リブ48の短手方向の端部が嵌め入れている。これにより、金属リブ48が裏面に固定されている。金属リブ48が裏面に固定された状態で、金属リブ48の後方の端部48Aがトレイ本体47の後端から突出している。上述したように、上段トレイ41が前記排出位置に配置されたときに、金属リブ48の端部48Aがトレイ連結部60の係合溝62に挿入される。トレイ連結部60のフレーム61は、導電性を有する材料で形成されているため、係合溝62に端部48Aが挿入されることで、金属リブ48とフレーム61とが接触する。これにより、金属リブ48も予め定められた基準電位(例えば接地電位)となる。
【0042】
金属リブ48は、トレイ本体47の裏面54において、予め定められた位置に配置されている。具体的には、裏面54において、下段トレイ42に載置された印刷用紙の排出方向の先端部に対応する位置(以下「先端対応位置」という。)に設けられている。本実施形態では、画像形成装置10において最も頻繁に使用されるサイズの印刷用紙(例えばA4サイズの印刷用紙)が下段トレイ42に載置されたときに、その印刷用紙の先端部の真上に位置するところに金属リブ48が配置されている。
【0043】
このような先端対応位置に金属リブ48を配置させた理由は以下のとおりである。下段排出口36から下段トレイ42に印刷用紙が排出されると、画像形成部14内で印刷用紙に帯電した静電気は除電ブラシ37によって除去される。しかしながら、図8(A)に示されるように、下段排出口36を通過した印刷用紙は、用紙載置面43に接触しながら左側(排出方向)へ進むことによって、印刷用紙と用紙載置面43との摩擦により、印刷用紙及び用紙載置面43の双方に静電気が発生する。同様に、上段トレイ41に排出される場合も、上段排出口35を通過した印刷用紙が用紙載置面53に接触しながら左側(排出方向)へ進むことによって、印刷用紙及び用紙載置面53の双方に静電気が発生する
【0044】
紙製の印刷用紙は、帯電列において、ABS樹脂製の上段トレイ41及び下段トレイ42よりも上位に位置する材質である。そのため、本実形態では、図8に示されるように、印刷用紙は+に帯電され、下段トレイ42は−に帯電される。ここで、帯電列とは、材質の異なる2種類の素材を摩擦したときに、+側に帯電しやすい材料を上位とし、−側に帯電しやすいものを下位として並べられた序列のことである。帯電列において、ABS樹脂は紙よりも下位に位置している。また、帯電列において、ABS樹脂と紙とは位置関係が大きく離れているため、両者が接触されると静電気が発生し易い。
【0045】
特に、印刷用紙の先端は排出過程において用紙載置面43と最も長く擦り合わされるため、その先端部には最も多くの静電気が帯電することになる。なお、紙やABS樹脂は絶縁体であるため、印刷用紙や上段トレイ41、下段トレイ42に帯電した静電気は他の部分に移動することなく、その箇所に留まる。
【0046】
このように印刷用紙の先端に多くの静電気が帯電するため、図8(B)に示されるように、静電気によって排出中の印刷用紙の先端が浮き上がる場合がある。特に、上段トレイ41に印刷用紙が排出されたことによってトレイ本体47が−に帯電されていた場合は、+に帯電した印刷用紙の先端が上段トレイ41の裏面54に引き寄せられて引っ付く場合がある。また、紙載置面43に印刷用紙が載置されたときに、用紙載置面43の傾斜面45に印刷用紙の後端が支持されるため、印刷用紙の後端が下がり、その反対側の印刷用紙の先端が浮き上がりやすい状態となる。この場合、排出過程において印刷用紙の先端が上段トレイ41の裏面54に引っ付かなくても、排出後の浮き上がりやすい状態のときに先端部の静電気の影響が加わって、図8(C)に示されるように、+に帯電した印刷用紙の先端が上段トレイ41の裏面54に引き寄せられる場合がある。このような状態のままで次の印刷用紙が排出されると、下段トレイ42に積載される印刷用紙の順序が変わったり、印刷用紙がずれるなどして積載状態が悪くなったりする。このような理由があるため、印刷用紙の先端に帯電された静電気を除電することを目的として、補強部材でありながら金属リブ48を前記先端対応位置に配置させている。
【0047】
このように、前記先端対応位置に金属リブ48が配置されているため、仮に下段トレイ42に排出された印刷用紙の先端が帯電して、上段トレイ41の裏面54に引き寄せされて引っ付いても、印刷用紙の先端が金属リブ48に接触することによって、印刷用紙の先端の静電気が除電される(図8(C)、(D)参照)。また、上段トレイ41が金属リブ48で補強されるため、補強されていない従来構成に比べて多量のシートが積載可能となる。
【0048】
なお、上述の実施形態では、A4サイズの印刷用紙が下段トレイ42に載置されたときのその先端部の真上に金属リブ48を配置させることとしたが、例えば、裏面54において金属リブ48を任意の位置に変更可能なようにして、画像形成装置10を使用するユーザーの使用頻度の高いサイズの印刷用紙に対応する位置に金属リブ48の取り付け位置を変更できるようにしてもよい。
【0049】
また、図8(B)に示されるように先端が裏面54に接触しながら印刷用紙が排出されることもあるため、裏面に設けられた固定片55において、裏面54から固定片55の頂部に至る部分には傾斜面を形成することが好ましい。
【0050】
また、上述の実施形態では、2つのトレイ41,42が設けられたシート積載装置20について例示したが、3以上のトレイを有するシート積載装置に対しても本発明は適用可能である。また、シート積載装置20が排紙スペース21の外側に配置された構成であっても本発明は適用可能である。
【0051】
また、上述の実施形態では、画像形成装置10にシート積載装置20が搭載された例について説明したが、いうまでもなく、シート積載装置20の単体装置として本発明が実現されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10:画像形成装置
12:スキャナー
14:画像形成部
21:排紙スペース
25,26:排出手段
35:上側排出口
36:下側排出口
41:上段トレイ
42:下段トレイ
48:金属リブ
60:トレイ連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8