特許第5777554号(P5777554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777554
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】プルリングを備えたキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   B65D47/36 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-80433(P2012-80433)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209117(P2013-209117A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100163980
【弁理士】
【氏名又は名称】柴沼 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 茂雄
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−056353(JP,U)
【文献】 実開昭54−146651(JP,U)
【文献】 実開平04−121262(JP,U)
【文献】 特開2007−331769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に取り付けられる装着部と、装着部に連設して上方に筒状に突出する注出筒と、注出筒に連設して容器内部を密閉する隔壁と、隔壁の上面に設けられたプルリングとを備え、
プルリングは、手指で把持するリング部と、上端部でリング部に連設し隔壁の上面に立設された支柱部とからなり、支柱部側部と注出筒の内周面との間の隔壁には、支柱部側部との間に下方が開放された間隙をはさんで支柱部上端部まで立ち上がる立壁部が形成され、
切り取り可能な薄肉弱化部が、支柱部の側部および上端部と立壁部との間に形成されるとともに、注出口を開口する除去部を画成するように隔壁に連続して形成されていることを特徴とするプルリングを備えたキャップ。
【請求項2】
プルリングの支柱部は、容器を傾けて内容液を注ぐ注ぎ側と反対側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のプルリングを備えたキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き上げることによって薄肉弱化部を破断し注出口を開口するプルリングを備えたキャップに係るものであり、とくに抜栓時において、プルリングによる薄肉弱化部の破断を容易にするとともに内容液の飛び跳ねを防止したプルリングを備えたキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を収容する容器に取り付けられたキャップ本体に、注出筒の底部の隔壁に開口部を画成する薄肉弱化部によって抜き取り可能な除去部を形成し、使用にあたって、除去部に支柱を介して取り付けられたプルリングを引き上げて除去部を抜き去り、注出口を形成するプルリングを備えたキャップは従来よりよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、内容液を加熱充填した容器に装着されたキャップでは、常温で容器内が減圧され内容液の液面が上昇しているので、プルリングを引っ張り上げて抜栓する際、抜栓による急激な圧力変化や除去部が引きちぎられる衝撃により液面が波立ち、開口部から液が飛び散ることがあり、このような液の飛び跳ねを防止するために、プルリングにより薄肉弱化部を破断する前に、予め容器内の圧力を下げ、液面を沈下させる割れ目(連通部)を形成する手段を備えたキャップが従来より知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−274976号公報
【特許文献2】特開2003−212254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のキャップでは、抜栓時にプルリング18を上方に引き上げ薄肉部12の破断を開始する際に大きな力を必要とするため、プルリング18の支柱17が延びてしまって開けづらいということがあり、最悪の場合は、支柱17が破断して抜栓が困難になるということがあった。
【0006】
また、上記特許文献1記載のキャップでは、プルリング18を上方に引き上げて薄肉部12を破断するので、容器を片方の手で下に押さえつけ、他方の手でプルリング18を上方に引っ張らなければならないため、お年寄りや子供など力が弱い消費者には扱いにくいという問題があった。
【0007】
さらに、上記特許文献2記載のキャップでは、プルリングのリング部7を引き上げる前に、棒状突起9を指で押し曲げ、棒状突起周縁の前弱縁部10を破断することにより割れ目を形成し、容器内を外気に連通して常圧にしてからプルリングにより薄肉脆弱部5を破断して開口するので、プルリングによる開封時に液が飛び散ることはないが、容器を使用するにあたって面倒な準備作業を要し二つの動作を行わなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決することを課題とし、薄肉弱化部を破断して注出口を開口する抜栓時に、プルリングを扱いやすくして容易に薄肉弱化部の破断を開始することができるとともに、内容液が飛び散ることを防止したプルリングを備えたキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、プルリングを備えたキャップとして、容器の口部に取り付けられる装着部と、装着部に連設して上方に筒状に突出する注出筒と、注出筒に連設して容器内部を密閉する隔壁と、隔壁の上面に設けられたプルリングとを備え、プルリングは、手指で把持するリング部と、上端部でリング部に連設し隔壁の上面に立設された支柱部とからなり、支柱部側部と注出筒の内周面との間の隔壁には、支柱部側部との間に下方が開放された間隙をはさんで支柱部上端部まで立ち上がる立壁部が形成され、切り取り可能な薄肉弱化部が、支柱部の側部および上端部と立壁部との間に形成されるとともに、注出口を開口する除去部を画成するように隔壁に連続して形成されていることを特徴とする構成を採用する。
プルリングを備えたキャップの具体的実施形態として、プルリングの支柱部は、容器を傾けて内容液を注ぐ注ぎ側と反対側に配置されていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプルリングを備えたキャップは、プルリングの支柱部側部と注出筒の内周面との間の隔壁に、支柱部側部との間に下方が開放された間隙をはさんで支柱部上端部まで立ち上がる立壁部が形成され、切り取り可能な薄肉弱化部が、支柱部の側部および上端部と立壁部との間に形成されるとともに、注出口を開口する除去部を画成するように隔壁に連続して形成されているので、リング部を引っ張るとリング部が連設する支柱部上端部が引っ張られて薄肉弱化部を破断させるから、リング部を引く力がそのまま薄肉弱化部を破断する力となり、従来技術のように、支柱部の軸方向に働きかけて支柱部を延ばしたり破断させたりすることがない。
その後、リング部を引く力はほぼ水平方向に働き、そのまま支柱部側部の縦方向に沿って薄肉弱化部を破断させていくから、容器を持つ手は容器を倒れないように支持すればよく、薄肉弱化部の破断を開始する抜栓時初期の破断が容易となる。
【0011】
また、支柱部上端部の薄肉弱化部は、隔壁よりかなり上方にあるので、抜栓時初期に当該薄肉弱化部が破断を開始したとき、急激に空気が流入して液面が波立っても当該破断部から内容液が飛び散ることはなく、その後は内圧が大気圧となって液面が沈下し安定するので、その後の抜栓の過程でも液が飛び散りにくい。
さらに、プルリングの支柱部を、容器を傾けて内容液を注ぐ注ぎ側と反対側に配置すれば、除去部を抜き去った後の支柱部に対応する開口部から、液注出時に空気が流入し、当該開口部が気液置換用通路の役割を果たし、内容液を円滑に注出することができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例であるプルリングを備えたキャップの閉蓋状態を示す断面側面図である。
図2】本発明の実施例であるプルリングを備えたキャップの開蓋状態を示す図であり、(a)は上面から見た部分図、(b)は断面側面図である。
図3】本発明の実施例であるプルリングを備えたキャップの開蓋状態を示す図であり、(a)は断面正面図、(b)は下面から見た部分図である。
図4】本発明の実施例であるプルリングを備えたキャップのプルリングを除去部とともに抜き取った図であり、(a)は断面正面図、(b)は下面から見た部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のプルリングを備えたキャップについて、実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例】
【0014】
図1において、Aは容器の口部1に取り付けられるキャップ、BはキャップAにヒンジCを介して連設された上蓋である。
キャップAは、容器の口部1に嵌合して取り付けられる装着部2と、装着部2に連設して上方に筒状に突出する注出筒3と、注出筒3に連設して容器内部を密閉する隔壁4と、抜栓するためのプルリング5とを備えている。
【0015】
図1〜3に示すように、装着部2は、内周が容器口部1の外周に嵌合するとともに、外周上部の所定の位置にヒンジCが連設される外筒部7と、外筒部7の上端内周に連設されるリング状の基壁部8と、基壁部8の上部に立設された蓋係合部9と、基壁部8の下面に垂設され、外周が容器口部1の内周に嵌合する内筒部10とを具えている。
本実施例では、キャップAの外筒部7と内筒部10を容器口部1に嵌合して取り付けているが、本発明のプルリングを備えたキャップは、このような装着部に限られることはなく、本発明の趣旨に反しない範囲で、ねじによる装着など他のいかなる装着手段をも採用しうる。
また、本実施例では、外筒部7は単筒形であるが、従来技術として例示した前記特許文献1記載のキャップと同様に、容器口部1に嵌合する筒部の外側に、一部が破断可能な弱化片で連結された筒部を具えた二重筒形とし、消費者が内容物を使用した後、上蓋Bを引張り上げることによりキャップAを容器口部1から取り外して分別廃棄することができるようにしてもよい。
【0016】
基壁部8の内周縁に注出筒3が立設され、注出筒3の内周底部には容器内部を密閉する隔壁4が連設され、隔壁4の上面にはプルリング5が設けられている。
プルリング5は、手指で把持する環状のリング部17と、リング部17を上端部16付近で連設し、隔壁4の上面のヒンジC側に立設された支柱部15とからなり、リング部17の内面には、手指で把持しやすいように複数の滑り止め突起18がヒンジCの反対側に配設されている。
【0017】
プルリング5の支柱部15の側部と注出筒3のヒンジC側の内周面との間の隔壁4には、下方が開放された間隙19をはさんで支柱部15の上端部16まで立ち上がった立壁部20が形成され、支柱部15の側部と上端部16は、切り取り可能な薄肉弱化部21で立壁部20に連結されている。
立壁部20は、下部で平坦な上壁23と上壁23から垂下して他の隔壁4に連設する側壁24を形成して、これらの上壁23、側壁24で注出筒3の内周面に連設している。
立壁部20は、本実施例のように上壁23、側壁24を有する形状に限る必要はなく、下部がそのまま他の隔壁4に連設して、従来技術の支柱部を形成するようなデザインとしてもよい。
【0018】
切り取り可能に薄肉に形成された薄肉弱化部21のラインは、支柱部15の上端部16から支柱部15の側部の両側を通って、支柱部15と隔壁4との連設部位まで下降し、当該連設部位からは、隔壁4に注出口を開口する除去部22を画成するように連続して形成される。
【0019】
上蓋Bは、頂壁30と、頂壁30の外周縁から垂設される外周壁31と、頂壁30の下面から垂設され、閉蓋時にキャップAの注出筒3の内周と係合する密封筒32とからなっている。
外周壁31には、内周端部に、キャップAの蓋係合部9と係合する係合凹部33が設けられており、外周端の所定の位置にヒンジCが連設されている。
なお、本実施例ではキャップAにヒンジCを介して上蓋Bが連設されたヒンジキャップとしたが、本発明のプルリングを備えたキャップは、必ずしもヒンジキャップである必要はなく、上蓋がねじで螺着されるものや、上蓋のないキャップでもよい。
【0020】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
容器を使用するために、本実施例のキャップを抜栓するには、まず図1の閉蓋状態から上蓋BをヒンジC回りに回動して、キャップAの蓋係合部9と上蓋Bの係合凹部33との係合を解除し、図2、3に示す開蓋状態に移行させる。
【0021】
プルリング5のリング部17に手指をかけて斜め上方に引っ張ると、リング部17に連設する支柱部15の上端部16が引っ張られて、上端部16における薄肉弱化部21がまず破断する。
このとき、リング部17を引く力は、上端部16に直接働き、支柱部15の側部は薄肉弱化部21によって立壁部20に連結されているから、支柱部15がリング部17を引く力によって軸方向に延ばされたり破断したりすることはなく、破断開始時のプルリング5の取り扱いが容易である。
【0022】
薄肉弱化部21は、上端部16の薄肉弱化部21を始点として破断を開始した後は、支柱部15の両側部を縦方向に破断されて、支柱部15が立壁部20から分離していく。
そのため、リング部17を引く力は、薄肉弱化部21の剪断方向に一致するように手前側にほぼ水平方向に働き、そのまま支柱部15の側部の縦方向に沿って薄肉弱化部21を破断させていくから、容器を持つ手は容器を倒れないように支持すればよく、抜栓時初期から隔壁4の除去部22を上方に引き上げて破断していく従来技術のように容器を下方に押し付けている必要はないから、抜栓時初期の力も少なくてすみ破断が容易となる。
【0023】
さらに、破断始点となる上端部16の薄肉弱化部頂部21は、間隙19の頂部を形成して隔壁4よりかなり上方にあるので、最初に破断したとき、急激に空気が流入して液面が波立っても当該破断部から内容液が飛び散ることはなく、その後は内圧が低下して液面が沈下するので、その後の抜栓の過程でも液が飛び散りにくくなる。
【0024】
支柱部15が完全に立壁部20から分離し、さらに薄肉弱化部21の破断が他の隔壁4の部位まで進んでいくと、今度はリング部17を引っ張る方向は上方に変化するようになり、隔壁4の薄肉弱化部21の破断が進んでいく。
このとき、既に薄肉弱化部21の破断が進行し、破断が加速されて慣性力がついてきているので、隔壁4における薄肉弱化部21の破断も容易に進行する。
【0025】
薄肉弱化部21の破断が完了し除去部22が完全に切り取られると、図4に示されるように、支柱部15が取り除かれて間隙19が露出した上方に延びる縦開口部Qを有する注出口Pが現出する。
除去部22が隔壁4から引きちぎられるときも、内容液の液面は既に沈下して安定しているので、液が飛び散るようなことはない。
また、縦開口部QはヒンジC側にあるから、容器を傾けヒンジCと反対側の注ぎ側から内容液を注出する際、上方に延びる縦開口部Qは、流出する内容液に代わって空気が流入する気液置換用通路の役割を果たし、円滑に内容液を注出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のプルリングを備えたキャップは、プルリングを扱いやすくして抜栓時初期の薄肉弱化部の破断を容易にし、小さな力でも容易に抜栓することができるとともに、抜栓時に内容液が飛び散るようなことがないから、プルリングを引っ張ることで注出口を開口するタイプのプルリング式キャップに広く適用可能であり、とくに、高温充填等により常温で内部が減圧された容器のプルリング式キャップに採用して好適である。
【符号の説明】
【0027】
A キャップ
B 上蓋
C ヒンジ
P 注出口
Q 縦開口部
1 口部
2 装着部
3 注出筒
4 隔壁
5 プルリング
7 外筒部
8 基壁部
9 蓋係合部
10 内筒部
15 支柱部
16 上端部
17 リング部
18 滑り止め突起
19 間隙
20 立壁部
21 薄肉弱化部
22 除去部
23 上壁
24 側壁
30 頂壁
31 外周壁
32 密封筒
33 係合凹部
図1
図2
図3
図4