特許第5777562号(P5777562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777562ガンを治療するための組成物とET743の使用
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  • 特許5777562-ガンを治療するための組成物とET743の使用 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777562
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ガンを治療するための組成物とET743の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4985 20060101AFI20150820BHJP
   A61K 35/56 20150101ALI20150820BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150820BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20150820BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61K31/4985
   A61K35/56
   A61P35/00
   A61K31/573
   A61P43/00 121
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-105249(P2012-105249)
(22)【出願日】2012年5月2日
(62)【分割の表示】特願2000-617900(P2000-617900)の分割
【原出願日】2000年5月15日
(65)【公開番号】特開2012-149095(P2012-149095A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2012年5月2日
(31)【優先権主張番号】9911183.3
(32)【優先日】1999年5月13日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】9911346.6
(32)【優先日】1999年5月14日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】9918534.0
(32)【優先日】1999年8月5日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】9927005.0
(32)【優先日】1999年11月15日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】9927106.6
(32)【優先日】1999年11月16日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0007637.2
(32)【優先日】2000年3月29日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501440835
【氏名又は名称】ファルマ・マール・ソシエダード・アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】エステバン・シヴィトコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ダニエル・デメトリ
(72)【発明者】
【氏名】セシリア・グスマン
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・ヒメーノ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ロペス・ラサロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ルイ・ミセ
(72)【発明者】
【氏名】シー・トゥエルヴズ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ディ・ヴォン・ホフ
【審査官】 田村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−316319(JP,A)
【文献】 特開平10−287567(JP,A)
【文献】 特表平06−507152(JP,A)
【文献】 特表平09−503743(JP,A)
【文献】 国際公開第98/019649(WO,A1)
【文献】 国際公開第96/040284(WO,A1)
【文献】 Proceedings of the American Association for Cancer Research,1998年,Vol.39,P.323の#2207
【文献】 Bull Cancer,1999年 2月,Vol.86,No.2,P.139-141
【文献】 Proceedings of the American Association for Cancer Research,1999年 3月,Vol.40,P.81の#542
【文献】 Drugs Fut,1997年,Vol.22,No.11,P.1279
【文献】 Clinical Cancer Research,1977年,Vol.4,P.1977-1983
【文献】 Annals of Oncology,1998年,Vol.9,P.981-987
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクテイナスシジン743(ET743及びデキサメタゾンの投与を含む、ET743の抗腫瘍活性を増強させるための併用療法によるヒトのガン患者の治療のための医薬の調製における、ET743の使用。
【請求項2】
前記患者が肉腫を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記患者が軟組織肉腫を有する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記患者が骨肉腫を有する、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記患者が乳ガンを有する、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記患者が卵巣ガンを有する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記患者が黒色腫を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
ET743単独の投与と比較して、前記投与が腫瘍サイズの縮小をもたらす、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
デキサメタゾンが前記医薬の一部を形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
デキサメタゾンが別の医薬として投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記別の医薬が、前記医薬と同時に投与される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記別の医薬が、前記医薬と異なる時間に投与される、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記患者が、進行した及び/又は転移性の、以前に治療を受けたガンを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記患者が、他の治療に対して抵抗性又は難知性のガンを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ガン(cancer)は、診療所で観察されるケースの多くを含むガン(carcinoma)と、白血病、リンパ腫、中枢神経系腫瘍及び肉腫(sarcomas)を含む他のより頻度の低いガン(cancer)2つのカテゴリーに分けることができる悪性新性物の群からなる。ガン(carcinoma)は、上皮組織を由来としているが、肉腫(sarcomas)は中胚葉組織に由来する連結組織とそれらの構造体から発達する。肉腫は、例えば、筋肉又は骨に影響を与えることが可能で、骨、膀胱、腎臓、肝臓、肺、耳下腺、又は脾臓に起こり得る。
【0003】
ガン(cancer)は、侵襲性であり、新しい部位へ転移する傾向がある。それは、周囲の組織へ直接拡大し、またリンパ及び循環系を通して播種され得る。ガン(cancer)について、局所化された疾患について手術及び放射、薬剤などを含む多くの治療が利用可能である。しかしながら、多くのガン(cancer)タイプでの利用可能な治療の効能は制限されており、臨床上の利点を示す治療の新しい、改善された形態が必要とされている。このことは、進行した及び/または転移性の疾患を有する患者について特にあてはまる。また、確立された治療法で以前に治療を受けた後に進行性の疾患に逆戻りする患者についてもあてはまり、この場合同じ治療法でさらに治療をすることは、耐性が獲得されるため、又はそれに伴う毒性により治療の投与が制限されるため、ほとんど有効でない。
【0004】
化学療法は、ガン(cancer)の治療において重要な役割をになう。その理由は、遠くへの転移を有する進行したガンの治療に必要であり、手術前に腫瘍を減少させることにおいてしばしば有用であり、多くの抗ガン剤が作用の種々の態様に基づいて開発されている。
【0005】
エクテイナスシジン(ecteinascidins)は、海洋生物のアルカロイドであり、それらのいくつかは、インビトロでの抗ガン活性の可能性を有している。いくつかのエクテイナスシジン(ecteinascidins)は、特許又は化学文献ですでに報告されている。
【0006】
例えば米国特許第5,089,273号は、熱帯海洋無脊椎動物、Ecteinascidia turbinataから抽出され、そこでエクテイナスシジン(ecteinascidins)729、743、745、759A、759B及び770としてデザインされた物質の新規組成物を記載している。これらの化合物は、哺乳類における抗菌及び/又は抗ガン剤として有用である。
【0007】
米国特許第5,256,663号は、熱帯海洋無脊椎動物、Ecteinascidia turbinataから抽出され、そこでエクテイナスシジン(ecteinascidins)としてデザインされた物質の製薬組成物と、そのような組成物の、哺乳類における抗菌剤、抗ウィルス剤、及び/又は抗腫瘍剤としての使用を記載している。
【0008】
米国特許第5,478,932号は、カリブ海の被嚢類Ecteinascidia turbinataから単離されたエクテイナスシジン(ecteinascidins)を記載しており、これはP388リンパ腫、B16黒色腫、M5076卵巣肉腫、Lewis肺ガン(carcinoma)、及びLX−1ヒト肺及びMX−1ヒト乳ガン(carcinoma)異種移植に対するインビボの保護を提供する。
【0009】
米国特許第5,645,426号は、カリブ海の被嚢類Ecteinascidia turbinataから単離されたいくつかのエクテイナスシジン(ecteinascidins)を記載しており、これはP388リンパ腫、B16黒色腫、M5076卵巣肉腫、Lewis肺ガン(carcinoma)、及びLX−1ヒト肺及びMX−1ヒト乳ガン(carcinoma)異種移植に対するインビボの保護を提供する。
【0010】
米国特許第5,721,362号は、エクテイナスシジン(ecteinascidin)化合物と関連する構造の形成のための合成方法を記載している。
さらなる背景技術は以下の文献に見出される:
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,089,273号
【特許文献2】米国特許第5,256,663号
【特許文献3】米国特許第5,478,932号
【特許文献4】米国特許第5,645,426号
【特許文献5】米国特許第5,721,362号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Corey, E.J., J. Am. Chem. Soc, 1996, 1 18 pp. 9202-9203;
【非特許文献2】Rinehart, et al., Journal of National Products, 1990, "Bioactive Compounds from Aquatic and Terrestrial Sources", vol. 53, pp. 771-792;
【非特許文献3】Rinehart et al., Pure and Appl. Chem., 1990, "Biologically active natural products", vol 62, pp. 1277- 1280;
【非特許文献4】Rinehart, et al., J. Org. Chem., 1990, "Ecteinascidins 729, 743, 745, 759A, 759B, and 770: Potent Antitumour Agents from the Caribbean Tunicate Ecteinascidia turbinata", vol. 55, pp. 4512-4515;
【非特許文献5】Wright et al., J. Org. Chem., 1990, "Antitumour Tetrahydroisoquinoline Alkaloids from the Colonial Ascidian Ecteinascidia turbinata", vol. 55, pp. 4508-4512;
【非特許文献6】Sakai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1992, "Additional antitumour ecteinascidins from a Caribbean tunicate: Crystal structures and activities in vivo", vol. 89, 1 1456- 1 1460;
【非特許文献7】Science 1994, "Chemical Prospectors Scour the Seas for Promising Drugs", vol. 266,pp. 1324;
【非特許文献8】Koenig, K.E., "Asymmetric Synthesis", ed. Morrison, Academic Press, Inc., Orlando, FL, vol. 5, 1985,p. 71;
【非特許文献9】Barton, et al., J. Chem Soc. Perkin Trans., 1 , 1982, "Synthesis and Properties of a Series of Sterically Hindered Guanidine Bases", pp. 2085;
【非特許文献10】Fukuyama et al., J. Am Chem. Soc, 1982, "Stereocontrolled Total Synthesis of (+) - Saframycin B", vol. 104,pp. 4957;
【非特許文献11】Fukuyama et al., J. Am Chem Soc, 1990, "Total Synthesis of (+) - Saframycin A", vol. 1 12, p. 3712;
【非特許文献12】Saito, et al., J. Org. Chem., 1989, "Synthesis of Saframycins. Preparation of a Key Tricyclic Lactam Intermediate to Saframycin A", vol. 54, 5391 ;
【非特許文献13】Still, et al., J. Org. Chem., 1978, "Rapid Chromatographic Technique for Preparative Separations with Moderate Resolution", vol. 43, p. 2923;
【非特許文献14】Kofron, W.G.; Baclawski, L.M., J. Org. Chem., 1976, vol. 41, 1879;
【非特許文献15】Guan et al., J. Biomolec Struc & Dynam., vol. 10 pp. 793-817 (1993);
【非特許文献1】Shamma et al., "Carbon- 13 NMR Shift Assignments of Amines and Alkaloids", p. 206 (1979); Lown et al., Biochemistry, 21 , 419-428 (1982);
【非特許文献16】Zmijewski et al., Chem. Biol. Interactions, 52, 361-375 (1985); Ito, CRC CRIT. Rev. Anal. Chem., 17, 65- 143 (1986);
【非特許文献17】Rinehart et al., "Topics in Pharmaceutical Sciences 1989" pp. 613-626,
【非特許文献18】D. D. Breimer, D.J. A. Cromwelin, K.K. Midha, Eds., Amsterdam Medical Press B.V., Noordwijk, The Netherlands (1989); Rinehart et al., "Biological Mass Spectrometry," 233-258 eds.
【非特許文献19】Burlingame et al., Elsevier Amsterdam (1990);
【非特許文献20】Guan et al., Jour. Biomolec. Struct. & Dynam., vol. 10 pp. 793-817 (1993);
【非特許文献21】Nakagawa et al., J. Amer.Chem. Soc, 11 1: 2721-2722 (1989);
【非特許文献22】Lichter et al., "Food and Drugs from the Sea Proceedings" (1972),
【非特許文献23】Marine Technology Society, Washington, D.C.1973, 1 17- 127;
【非特許文献24】Sakai et al., J. Amer. Chem. Soc. 1996, 118, 9017;
【非特許文献25】Garcia-Rocha et al., Brit. J. Cancer, 1996, 73: 875-883;
【非特許文献26】Pommier et al., Biochemistry, 1996, 35: 13303- 13309.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特に、エクテイナスシジン(ecteinascidin)743は、動物モデルで試験されるとき、例えば乳ガン、非小細胞肺、黒色腫及び卵巣ガン(cancer)の異種移植に対して評価されるとき、有望な作用を示すことも見出されている。
【0014】
患者から外植されたヒト腫瘍に対する新規海洋生物剤、エクテイナスシジン−(Ecteinascidin)743(ET−743,NSC−648766)のインビトロ抗腫瘍活性についての論文、Annals of Oncology, 9:981-987, 1998はインビボの報告として典型的なものである。著者は、連続的に、又は長くさらすことが活性を強める可能性があるとそれらのデータから結論している。その雑誌の同じ記事の989頁〜993頁で、インビトロでの、エクテイナスシジン(Ecteinascidin)743(ET−743)の骨髄毒性と細胞毒性のスケジュール依存性についての論文は、長くさらすことが投与の最良のスケジュールを示しているかもしれないと結論している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
我々は、臨床的改善をもたらす、ET743でのヒトの患者の治療方法を開発した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、この治療方法で観察される反応を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
こうして、発明は、治療に有効な量のET743を、羅患した個体に投与することを含む、ガンに羅患した、あらゆる哺乳類、特にヒトの治療方法と、それらの製薬組成物を提供する。
本発明はまた、ET743を活性成分として含む製薬調製物と、それらの調製物のための方法にも関する。
製薬組成物の例は、静脈内投与に適した組成を有する液体(溶液、分散液又はエマルション)を含み、それらは純粋な化合物、又はあらゆる担体、又は他の製薬活性化合物との組み合わせを含むことができる。
【0018】
本発明の化合物の投与又は組成物は、静脈内投与による。72時間までの注入時間を用いることが好ましく、より好ましくは2乃至24時間であり、約3時間又は約24時間のいずれかが最も好ましい。病院で一晩入院することなく治療の実施を可能にする短い注入時間は、特に望ましい。しかしながら、必要であれば注入は、約24時間又はそれ以上とすることができる。注入は、1乃至6週間の適当な間隔で実施することができる。さらなる案内は、この明細書で後述される。
【0019】
化合物の正しい投与量は、特定の処方、適用の態様、特定の位置、宿主、及び治療される腫瘍によって変化するであろう。年齢、体重、性別、食事、投与時間、排出速度、宿主の状態、薬剤の組み合わせ、反応感受性、及び疾患の重度などの他の因子は、考慮されるべきである。投与は、最大許容投与量の範囲内で、連続的、又は周期的に実施されることができる。
【0020】
本発明の化合物ET743と組成物は、組み合わせ治療を提供する他の薬剤と共に用いることができる。他の薬剤は、同じ組成物の一部を形成することができるし、又は同時に又は異なる時間に投与される別の組成物として提供されることができる。他の薬剤の同定は、特に制限されないが、適当な候補には以下のものが含まれる:
【0021】
a)抗有糸分裂効果を有する薬剤、特に、タキサン(taxane)薬剤(例えばタキソール(taxol)、パクリタキセル(paclitaxel)、タキソテール(taxotere)、ドセタキセル(docetaxel)など)、ポドフィロトキシン又はビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン)などの細胞骨格成分を標的とする、微小管モジュレーターを含む;
【0022】
b)代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン(gemcitabine)、ペントスタチンなどの純粋なアナログ、メトトレキサート(methotrexate));
【0023】
c)アルキル化剤又は窒素マスタード(例えばニトロソ尿素、シクロホスファミド又はイフォスファミド);
【0024】
d)DNAを標的とする薬剤、例えばアントラサイクリン(anthracycline)剤、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ファルモルビシン(pharmorubicin)、又はエピルビシン(epirubicin);
【0025】
e)トポイソメラーゼを標的とする薬剤、例えばエトポシド;
【0026】
f)ホルモン及びホルモンアゴニスト又はアンタゴニスト、例えばエストロゲン、アンチエストロゲン(タモキシフェン及び関連化合物)及びアンドロゲン、フルタミド、ロイプロレリン(leuprorelin)、ゴセレリン(goserelin)、シプロトロン(cyprotrone)又はオクトレオチド(octreotide);
【0027】
g)腫瘍細胞におけるシグナルトランスダクションを標的とする薬剤、ヘルセプチン(herceptin)などの抗体誘導体を含む;
【0028】
h)アルキル化薬剤、例えば白金薬剤(cis−プラチン(platin)、カーボンプラチン、オキサリプラチン(oxaliplatin)、パラプラチン)又はニトロソ尿素;
【0029】
i)腫瘍の転移性を潜在的に変える薬剤、例えばマトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター;
【0030】
j)遺伝子療法及びアンチセンス薬剤;
【0031】
k)抗体治療法;
【0032】
l)海洋生物由来の他の生体活性化合物、特に、ヂデムニン(didemnins)、例えばアプリジン(aplidine);
【0033】
m)ステロイドアナログ、特にデキサメタゾン;
【0034】
n)抗炎症剤、非ステロイド剤(例えばアセトアミノフェン又はイブプロフェン)又はステロイド及びその誘導体、特にデキサメタゾンを含む;及び
【0035】
o)抗嘔吐剤、5HT−3インヒビター(グラミセトロン(gramisetron)又はオンダセトロン(ondasetron))又はステロイド及びその誘導体、特にデキサメタゾンを含む。
【0036】
本発明はまた治療方法に用いられる本発明の化合物、及びガンの治療のための組成物の調製における化合物の使用にも及ぶ。
患者の反応は、ET−743を用いた臨床試験において、治療方法の有用性を示すことが観察されている。
【0037】
フェーズI臨床試験と薬物速度分析は、ET−743が、ガンの患者の治療において臨床効能に必要な投与量の範囲において管理可能な毒性で、陽性の治療的有効薬物投与量を提供することを示している。
【0038】
その方法は、他の治療剤と組み合わせてあるいは組み合わせずに、推薦される投与レベル(RD)で72時間にわたる又はそれ以下の静脈内注入による薬物の投与からなる。
【0039】
ET−743は、ET743と、処方物中に治療使用に適した賦形剤からなる滅菌凍結乾燥剤、特に、マンニトールと適当なpHに緩衝化されたリン酸塩を含む処方物として、供給され、保存される。
【0040】
好ましい処方物は、より高い保存温度で改善された安定性を示すものであり、1000mlの0.9%塩化ナトリウム又は他の適当な注入ビシクル、250μgのET−743、250mgのマンニトール、34mgのリン酸モノカリウム、4.00乃至6.00、好ましくは4.80のpHに調製するためのリン酸から得られるものである。製品は、凍結乾燥され、使用まで、4℃乃至−20℃の冷所に保存され、光を遮断される。
【0041】
再構成された溶液の調製物は、無菌状態で、各250μgのET−743について5mlの量の蒸留水を添加し、短時間振とうして固体を溶解することにより、実施される。
【0042】
注入溶液の調製は、無菌状態で、各患者について計算された投与に相当する容量の再構成された溶液を抜き出し、所望の再構成溶液容量を、100乃至1000mlの0.9%塩化ナトリウム溶液を含む注入バッグ又はボトルへゆっくりと注入し、その後全体をゆっくりと手で振とうして均質化することよっても、実施される。ET−743注入溶液は、できるだけはやく、調製後48時間以内に、静脈内に投与されるべきである。PVCとポリエチレン注入システムは、透明ガラスと同様に、好ましい容器及び導管材料である。
【0043】
投与は、好ましい適用方法において、サイクルで行なわれ、ET−734の静脈注入は、各サイクルの第1週に患者に与えられ、サイクルの残りで回復させる。各サイクルの好ましい持続は、3週又は4週のいずれかである。必要であれば多数のサイクルを実施することもできる。薬剤は、各サイクルの第1日目ごとに投与することもできる。投与遅延及び/又は投与減少及びスケジュール調整は、治療の個々の患者の許容性に応じて、必要に応じて実施され、特に投与減少は、肝臓トランスアミナーゼ又はアルカリンホスファターゼ又はビリルビンの血清レベルが、正常のレベルよりも高い患者にとって推奨される。
【0044】
推奨される投与(RD)は、投与限定毒性(DLT)を与える患者が6人中2人以下という、国立ガン研究所(USA)により確立されている一毒性基準にしたがって、許容可能、管理可能な可逆性の毒性を引き起こす患者に安全に投与できる最大投与である。ガン治療のガイドラインは、しばしば、最大効能を達成するために毒性が管理可能である最大安全投与での化学療法剤の投与を求める(DeVita, V.T.Jr., Hellman,S.及びRosenberg,S.A.,Cancer:Principles and Practice of Oncology,第3版,1989,Lipincott,Philadelphia)。
【0045】
この治療方法を用いるET743についてのDLTは、臨床試験で、骨髄抑制及び倦怠となることで決定された。これらの研究は、24時間の注入について体表面積のm2について1500マイクログラム、3時間の注入について体表面積のm2について1650マイクログラムの、推奨される投与レベルを確立した。m2について1800マイクログラム以上の投与は、DLTを示す患者の割合が多すぎ、したがって、安全投与には毒性が強すぎることが決定された。
【0046】
98年6月に報告された乳ガン反応のケースでは1800マイクログラム/m2の投与レベルで観察されたが、4患者のうち2人が重度の投与制限毒性反応を示したことから、注入でいかなる程度でも安全でないと考えられるレベルである。他の以前報告されたケースは、1時間の注入の後に黒色腫患者での反応を含んでおり、その方法は、血小板減少と疲労を限定する投与なしで、推奨される投与レベルに達することができない。
【0047】
ET−743は、推奨される投与量(RD)以下の投与レベルで安全に投与することができる。
【0048】
特に、体表面積m2について500乃至1500マイクログラム、好ましくは体表面積m2について1000乃至1500マイクログラムでの投与レベルでの24時間にわたる静脈注入であり、後者は、各臨床試験で決定されたこのスケジュールでのRDである。
【0049】
特に、静脈注入は、体表面積m2について500乃至1650マイクログラム、好ましくは体表面積m2の1000乃至1650マイクログラムの投与レベルで、3時間にわたって適当に実施され、後者は、各臨床試験で決定されたこのスケジュールでのRDである。
【0050】
治療の他の形態は、体表面積m2について1050マイクログラムのこのスケジュールのRDで72時間にわたる静脈注入を含む。
他の方法は、体表面積m2について1625マイクログラムのこのスケジュールのRDで、毎日24時間連続5日間にわたる静脈注入である。
【0051】
ET743が、他の治療剤と組み合わせて用いられるとき、両薬剤の投与量は調整されることが必要かもしれない。
【0052】
以前に、ET743の投与に対して報告されている、唯一の生物反応は、動物において又はインビトロのモデルで観察され、ヒト患者、又は効果のある、安全な治療方法が利用できない実験セットにおいてヒト患者での反応を予測するそれらの有用性について非常に不正確であることが知られている(用いられる投与が推奨される投与量を著しく上回る毒性投与であるか、あるいはスケジュールが適当でないかのいずれか)。
【0053】
この発明の方法を用いた臨床試験で、適当な血漿レベルは、RDで患者において達成され、最も重要なことは、客観的に測定可能な反応が、患者に対する臨床上の利点の証拠を示した。
【0054】
患者の反応についての定義は、WHO一般毒性基準(Common Toxicity Criteria)から採用したものであり、反応は、その分野の標準医療プラクティスにしたがって決定した。
【0055】
軟組織、骨、胃腸間質肉腫、乳癌及び黒色腫を含む、以前の治療に対して難治性の進行した及び/又は転移性のガンをわずらう患者において、客観的な反応が得られた。進行した眼の黒色腫及び中皮腫で観察される種々の最適以下のスケジュールを用いた、活性の証拠、及び卵巣ガンでの陽性臨床マーカー反応は、この発明の方法がこの疾患の治療においても同様に有用であろうことを示唆する。
【0056】
特にこの方法での治療において、確立された療法で以前治療された進行性の疾患を示す、進行した及び/または転移性の疾患を患うガン患者での反応が示された。
【0057】
本発明の好ましい方法は、したがって、ガンについて治療されたガン患者、特に化学療法を受けた患者を同定し、彼らをET743で治療することを含む。
【0058】
特に、本発明の方法は、軟組織、骨、及び胃腸間質肉腫を含む肉腫を患う患者での反応を示した。特に本発明の治療は、軟組織肉腫をわずらう患者での反応を示した。特に本発明の治療は、骨肉腫をわずらう患者での反応を示した。特に本発明の治療は、胃腸間質肉腫をわずらう患者での反応を示した。特に本発明の治療は、乳ガンをわずらう患者での反応を示した。
本発明は、さらにヒトの臨床試験に関する以下の実施例により、例示される。
【実施例】
【0059】
実施例1
データは、1500μg/mで、3又は4週間ごとの、ET743の24時間の静脈連続注入での試験から分析した。
【0060】
ET−743の薬物速度は、すべての患者で、治療の第1サイクルの間、モニターして、患者間の変動性と、臨床活性又は毒性との相関の可能性を評価する。
【0061】
患者の集団:
16人の進行した/転移性軟組織肉腫(STS)患者
12人の、化学療法を以前に受けていない軟組織肉腫患者
8人の進行した/転移性胃腸間質腫瘍(GIST)患者
【0062】
観察された安全性/毒性:
治療の許容性は非常に良好であった。
予防性の抗嘔吐剤としてデキサメタゾンの使用により本質的に減少された吐き気
骨髄抑制
一時的な/無症候性トランスアミニティス(transaminitis)
疲労
データは、初期のフェーズIデータと著しい違いを示さなかった。
【0063】
効能
− 10人中6人の、以前に化学療法を受けていないSTS被験者が、治療の2サイクルの後、安定な疾患又はわずかな反応を示した。
− 12人中4人の、以前に化学療法を受けたSTS被験者が、治療の2サイクルの後、安定な疾患又はわずかな反応を示した。
− 活性の予備的な症候は、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、及び滑膜肉腫で観察された。
【0064】
実施例2
データは、20人の以前に治療を受けた進行した/転移性乳ガン患者について、1500μg/mの投与量で、3週間ごとの、ET743の24時間の静脈連続注入での試験から分析した。
【0065】
患者の集団の特性:
20人の女性
全員が研究において測定可能な疾患と進行を示し、33歳から64歳までである(メジアン50歳)。
評価基準 0−1(ECOG基準)
関連臓器の最小数:2(範囲1−6)
疾患部位:
皮膚 12(60%)
肝臓 10(50%)
骨 9(45%)
リンパ節 6(30%)
胸膜肺 6(30%)
【0066】
以前の化学療法の治療の最小数 2(1−6)
アントラサイクリンで以前に治療を受けた患者 20
タキサンで以前に治療を受けた患者 16
アントラサイクリンとタキサンで以前に治療を受けた患者 5
タキサンだけで以前に治療を受けた患者 2
アントラサイクリンだけで以前に治療を受けた患者 3
【0067】
安全性/毒性:
投与されたサイクルの合計数 56
患者当たりのサイクルの最小数 2(範囲1−8)
サイクル当たり報告されるグレード3又は4毒性の数
好中球減少 25(50%)
血小板減少 4(2%)
可逆性トランスアミニティス 34(60%)
無力症(グレード2/3) 13(23%)
データは、初期のフェーズIデータと著しい違いを示さなかった。
【0068】
効能
16の被検患者のうち、いずれの以前の治療薬剤に対して主な抵抗性を有していない、患者について、3.5、及び2ヶ月を超えて続く部分的反応を2人が示した(胸膜肺及び胸の皮膚関与)。6人の患者が疾患の安定を達成し(2ヶ月を超えた,3ヶ月、3ヶ月、3ヶ月を超えた、4.5ヶ月及び6ヶ月を超えた)、このうち2人がこの疾患のCA15−3マーカーの保持された減少を示した。
【0069】
実施例3
データは、20人の以前に治療を受けた進行した/転移性粘組織肉腫患者について、1500μg/mの投与量で(2人を除く)、3週間ごとの、ET743の24時間の静脈連続注入での試験から分析した。
【0070】
患者の集団の特性:
39人の患者/22人の女性
35人の軟組織肉腫(STS)
3人の骨肉腫(OS)
1人のユーイング肉腫(ES)
【0071】
22人の患者は、重度の疾患をわずらっており、研究に入るとき、以前の治療法に基づく疾患の進行の56%を有していた。
16歳から71歳(メジアン45歳)
評価基準 0(0−2)(ECOG基準)
【0072】
以前の化学療法の治療の最小数 2(1−7)
ほとんどの患者がアントラサイクリンとアルキレーターで以前に治療を受けた。
【0073】
安全性/毒性:
投与されたサイクルの合計数 137
患者当たりのサイクルの最小数 2(範囲1−12)
サイクル当たり報告されるグレード3又は4毒性の数
好中球減少 34%、6.5%が発熱
血小板減少 5%
急性、可逆性トランスアミニティス 44%
無力症(グレード2/3) 13(23%)
データは、初期のフェーズIデータと著しい違いを示さなかった。
【0074】
効能
34の被検患者のうち、4人に部分的な反応(11.7%)が観察され、そのうち二人が術後完全反応となった。3人がわずかな反応を示し、そのうち1人が、術後完全反応となった。11人が疾患が安定し、そのうちほとんどが3ヶ月以上続いた。
【0075】
反応は、種々の組織タイプで観察され、3人中2人が骨肉腫であり、重度及び重度でない疾患において内臓転移を含むすべての疾患部位で、及びアントラサイクリン難治性及び非難治性腫瘍で、観察された。
図1