(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3記載のインクジェット記録装置においては、サブタンクの容積が小さいので、圧力制御が困難となり、精度に優れるとはいえない。
また、サブタンクに圧力検知手段、空気吸引手段及び空気補充ポンプを取り付ける必要があるので、構造が複雑となり、また、サブタンクの重量も大きくなる。そのため、サブタンクを移動させる際にも効率的でない。
さらに、サブタンク自体が大きくなり、設置に余分なスペースが必要となる欠点もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、分配タンク(サブタンク)をコンパクトにすることができ、且つ圧力制御の精度に優れるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、分配タンク内の空間部に通じる空気室を別所に備え、該空気室に圧力調整機構を取り付けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、(1)記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有するインクジェット部と、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有するインク供給手段と、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する空気供給手段と、を備え、空間部と、空気室の内部との圧力が同じになって
おり、空気室の内部の容積が、空間部の容積よりも大きいインクジェット記録装置に存する。
【0010】
本発明は、(2)
記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有するインクジェット部と、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有するインク供給手段と、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する空気供給手段と、を備え、空間部と、空気室の内部との圧力が同じになっており、空間部の容積R1と、空気室の内部の容積R2との容積比(R1:R2)が、1:1.28〜73.3であるインクジェット記録装置に存する。
【0011】
本発明は、(3)
記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有するインクジェット部と、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有するインク供給手段と、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する空気供給手段と、を備え、空間部と、空気室の内部との圧力が同じになっており、インク供給手段と、空気供給手段とがフルイド部に内蔵されており、インクジェット部と、フルイド部とが別体となっているインクジェット記録装置に存する。
【0012】
本発明は、(4)
記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有するインクジェット部と、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有するインク供給手段と、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する空気供給手段と、を備え、空間部と、空気室の内部との圧力が同じになっており、メインタンクが、脱気モジュールを介して分配タンクにインクを供給するインクジェット記録装置に存する。
【0013】
本発明は、(5)
記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有するインクジェット部と、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有するインク供給手段と、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する空気供給手段と、を備え、空間部と、空気室の内部との圧力が同じになっており、分配タンクには循環口が設けられており、分配タンク内のインクが、該循環口から、該循環口に連結された循環流路を介して、メインタンクに循環するようになっているインクジェット記録装置に存する。
【0014】
本発明は、(6)
記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有するインクジェット部と、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有するインク供給手段と、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する空気供給手段と、を備え、空間部と、空気室の内部との圧力が同じになっており、圧力調整機構が、空気室に減圧電磁弁を介して取り付けられた真空ポンプと、空気室に外気電磁弁を介して外気に通じるように取り付けられたエアーフィルタと、空気室に加圧電磁弁を介して取り付けられた加圧ポンプと、からなるインクジェット記録装置に存する。
【0015】
本発明は、(7)分配タンク
が、インク開閉電磁弁を介して記録ヘッドにインクを供給する上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のインクジェット記録装置に存する。
【0016】
本発明は、(8)記録ヘッドを複数有し、該記録ヘッドに対応するように、分配タンクを複数有し、これらの分配タンク内の空間部が1箇所の空気室に連通している上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のインクジェット記録装置に存する。
【0017】
本発明は、(9)
記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有するインクジェット部と、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有するインク供給手段と、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する空気供給手段と、を備え、空間部と、空気室の内部との圧力が同じになっているインクジェット記録装置の制御方法であって、インクジェット記録時、及び、記録ヘッドの保管時には、空気室内を負圧となるように制御し、記録ヘッドから強制的にインクを排出する回復作業時には、空気室内を正圧となるように制御するインクジェット記録装置
の制御方法に存する。
【0018】
本発明は、(10)上記(1)〜(
8)のいずれか1つに記載のインクジェット記録装置の制御方法であって、インクジェット記録時、及び、記録ヘッドの保管時には、空気室内を負圧となるように制御し、記録ヘッドから強制的にインクを排出する回復作業時には、空気室内を正圧となるように制御するインクジェット記録装置の制御方法に存する。
【0019】
本発明は、(11)上記(
6)記載のインクジェット記録装置の制御方法であって、インクジェット記録時、及び、記録ヘッドの保管時には、空気室内を負圧となるように制御し、記録ヘッドから強制的にインクを排出する回復作業時には、空気室内を正圧となるように制御し、負圧から正圧とする際、又は、正圧から負圧とする際には、途中でエアーフィルタを介して一時的に大気圧とするインクジェット記録装置の制御方法に存する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインクジェット記録装置においては、空気室内の圧力が、分配タンク内の空間部の圧力が同じになっているで、空気室内の圧力を調整することにより、分配タンク内の空間部の圧力を同様に調整することができる。このため、例えば、インクジェット記録装置の仕様に合わせて、空気室を自由な位置に設置することができる。
このとき、空気室の内部の容積が、空間部の容積よりも大きくなっていると、分配タンク内の圧力制御をより高精度で行うことができる。すなわち、分配タンク内の圧力制御は、空気室の圧力制御を介して行われるので、例えば、急激な圧力変化を直接分配タンク内に与えるようなことはない。
【0021】
本発明のインクジェット記録装置においては、別所に空気室を設けるので、空気室に圧力調整機構を取り付ければよい。このため、圧力調整機構を直接取り付けない分配タンクは、よりコンパクトにすることができる。そうすると、分配タンクの設置にスペースをとらないメリットがあり、また、分配タンクを軽量化できるので、分配タンクを含むインクジェット部を移動させることが極めて効率的になる。
【0022】
ちなみに、本発明のインクジェット記録装置は、圧力制御タイプであるので、メインタンクと記録ヘッドとの位置関係に制限はなく、圧力損失を減らすために、メインタンクから記録ヘッドにインクを流通させる経路を短くすることができると共に、インクの吐出量や吐出速度を安定化させることができる。その結果、高速、高カバレッジのインクジェット記録が可能となる。
【0023】
本発明のインクジェット記録装置においては、インク供給手段と、空気供給手段とがフルイド部に内蔵されており、インクジェット部と、フルイド部とを別体とした場合、インクジェット部をよりコンパクトにし、フルイド部を邪魔にならない所望の位置に配置することができる。これにより、インクジェット記録の作業性も向上する。
【0024】
本発明のインクジェット記録装置においては、分配タンクが、インク開閉電磁弁を介して記録ヘッドにインクを供給する構成となっている場合、強制的に記録ヘッドにインクを供給することができる。これにより、記録ヘッドの目詰まり等を予防又は解消することができる。
【0025】
本発明のインクジェット記録装置においては、メインタンクが、脱気モジュールを介して分配タンクにインクを供給する構成となっている場合、インク中における気泡の発生を抑できる。その結果、記録ヘッドにおけるインクの吐出不良を抑制することができる。
このとき、分配タンクには循環口が設けられており、分配タンク内のインクが、該循環口から、該循環口に連結された循環流路を介して、メインタンクに循環するようになっていると、インクを繰り返し脱気することができるので、記録ヘッドにおけるインクの吐出不良をより抑制することができる。
【0026】
本発明のインクジェット記録装置においては、記録ヘッドを複数有し、該記録ヘッドに対応するように、分配タンクを複数有し、これらの分配タンク内の空間部が1箇所の空気室に連通している場合、1箇所の空気室の圧力調整により、これらの分配タンク内の空間部の圧力が同時に調整されるので、個々の分配タンクの圧力を平均化することができる。
【0027】
本発明のインクジェット記録装置においては、圧力調整機構が、空気室に減圧電磁弁を介して取り付けられた真空ポンプと、空気室に外気電磁弁を介して外気に通じるように取り付けられたエアーフィルタと、空気室に加圧電磁弁を介して取り付けられた加圧ポンプと、からなる場合、圧力を容易に調整することができる。
また、外気に通じるエアーフィルタを利用することにより、空気室への防塵ができる。
【0028】
本発明のインクジェット記録装置の制御方法においては、インクジェット記録時、及び、記録ヘッドの保管時に、空気室内を負圧となるように制御することで、インク漏れを抑制することができ、空気室内を正圧となるように制御することで、記録ヘッドから強制的にインクを排出することで吐出不良を解消することができる。
【0029】
なお、負圧から正圧とする際、又は、正圧から負圧とする際には、途中でエアーフィルタを介して一時的に大気圧とすることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインクジェット部と空気供給手段とインク供給手段との関係を模式的に示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、4箇所のインクジェット部Aと、インクジェット部Aそれぞれにインクを供給する4箇所のインク供給手段Bと、これらのインクジェット部Aに空気を供給する1箇所の空気供給手段Cとを備える。
なお、より詳しくは、インクジェット部Aは、記録媒体にインクを付与する記録ヘッド、及び、該記録ヘッドにインクを供給する分配タンク、を有し、インク供給手段Bは、分配タンクにインクを供給するメインタンク、を有し、空気供給手段Cは、分配タンク内の空間部に連通する空気室、及び、該空気室に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構、を有する。
【0033】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、圧力制御タイプであるので、メインタンクと記録ヘッドとの位置関係に制限はない。このため、圧力損失を減らすために、メインタンクから記録ヘッドにインクを流通させる経路を短くすることができ、その結果、インクの吐出量や吐出速度を安定化させることができる。その結果、高速、高カバレッジのインクジェット記録が可能となる。
【0034】
本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、インクジェット部Aそれぞれに、異なる色のインクがインク供給手段Bによって供給される。
例えば、インクジェット部Aに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクをそれぞれ収容させることにより、フルカラーのインクジェット記録が可能となる。
【0035】
また、これらのインクジェット部Aは、1箇所の空気供給手段Cに連通している。すなわち、記録ヘッドを複数有し、該記録ヘッドに対応するように、分配タンクを複数有し、これらの分配タンク内の空間部が1箇所の空気室に連通している。
このため、空気供給手段Cにおける空気室の圧力調整により、これらのインクジェット部Aにおける分配タンク内の空間部の圧力が調整されるので、個々のインクジェット部Aにおける分配タンクの圧力を平均化することができる。
【0036】
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインクジェット部とインク供給手段との関係を模式的に示す説明図である。
図2に示すように、インクジェット部Aは、記録媒体(図示しない)にインクを付与する記録ヘッド11と、該記録ヘッド11にインクを供給する分配タンク12とを有する。
【0037】
記録ヘッド11は、複数のノズルを有する固定されたラインヘッドが用いられる。
また、上述したように、複数の記録ヘッド11を有するので、記録ヘッド11毎に異なるインクを用いることが可能となっている。
【0038】
分配タンク12は、内部にインクが収容されており、それ以外は空間部12aとなっている。なお、分配タンク12内部におけるインクの液面は、フロートスイッチにて監視され、インク量が適正範囲内となるように制御されている。
また、分配タンク12には、加温ヒーターが内蔵されており、インクの温度が一定となるように制御されている。
さらに、分配タンク12の下端には、複数のインク開閉電磁弁12bが直接取り付けられており、該インク開閉電磁弁12bそれぞれに取り付けられた分配供給管12cを介して対応する記録ヘッド11に接続されている。
【0039】
分配タンク12は、図示しない制御装置からの信号に基づいて、空気室を正圧にした上で、インク開閉電磁弁12bが開閉し、記録ヘッド11からインクを排出する構成となっている。
インク開閉電磁弁12bを開けたとき、インクは、強制的に記録ヘッド11に供給され、記録ヘッド11のノズルから排出される。このため、記録ヘッド11の目詰まり等を予防又は解消することができる。
【0040】
インク供給手段Bは、分配タンク12に脱気モジュール22を介してインクを供給するメインタンク21と、該メインタンク21にインクを供給するインクパック23とを有する。なお、メインタンク21は、図示しないエアーフィルタを介して大気に開放されている。
また、脱気モジュール22と、分配タンク12との間には、インクの逆流を防止する逆止弁25が取り付けられている。
【0041】
インク供給手段Bにおいては、メインタンク21が、フロートスイッチからの信号に基づいて、脱気モジュール22を介して分配タンク12にインクを供給するようになっている。このため、インク中における気泡の発生を抑制でき、その結果、記録ヘッド11におけるインクの吐出不良を抑制することができる。なお、インクは、図示しないポンプにより供給される。
【0042】
本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、分配タンク12の下部に循環口13が設けられており、分配タンク12内のインクが、該循環口13から、該循環口13に連結された循環流路13aを介して、メインタンク21に循環するようになっている。なお、インクは、図示しないポンプにより循環される。
このように、分配タンク12とメインタンク21との間でインクを一方向に循環させるので、インクを繰り返し脱気することができる。これにより、記録ヘッド11におけるインクの吐出不良をより抑制することができる。なお、かかる循環は、インクジェット記録時のみならず、非記録時であっても行うことが好ましい。
【0043】
図3は、本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインクジェット部と空気供給手段との関係を模式的に示す説明図である。
図3に示すように、空気供給手段Cは、分配タンク12内の空間部12aに連通する空気室31と、該空気室31に電磁弁を介して設けられた圧力調整機構とを有する。
【0044】
本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、空気室31内の圧力が、分配タンク12内の空間部12aの圧力と同じになっているで、空気室31内の圧力を調整することにより、これに連動して、分配タンク12内の空間部12aの圧力が同様に調整されるようになっている。
また、圧力調整機構が取り付けられた空気室31を、分配タンク12とは別に備えることにより、従来のように分配タンク12に圧力調整機構を取り付ける必要がないので、分配タンク12をコンパクトにすることができる。
さらに、空気室31が分配タンク12とは別体であるので、インクジェット記録装置の仕様に合わせて、空気室31を自由な位置に設置することができる。
さらにまた、仮に、インクの逆流が起こった場合、空気室31でインクをトラップすることができるので、事故が起こっても未然に防ぐことができる。
【0045】
ここで、空気室31の内部の容積は、空間部12aの容積よりも大きくなっている。
空気室31の容積が大きくなるほど、圧力調整機構による空気室31内の圧力変動は小さくなるので、従来のように空間部12aの圧力を直接調整するよりも、より容積が大きな空気室31の圧力を調整するほうが、分配タンク内の圧力制御をより高精度で行うことができる。
また、インクを消費すると、密閉された分配タンク12では、内部の圧力が負圧方向に変化するが、分配タンク12の空間部12aに空気室31を連結し、該空気室31の容積を大きくすることにより、インクの消費に基づく圧力変化の度合いをより小さくすることができる。
【0046】
このとき、空間部の容積R1と、空気室の内部の容積R2との容積比(R1:R2)が、1:1.28〜73.3であることが好ましく、1:1.28〜36.7であることがより好ましい。
空間部12aの容積R1に対して、空気室31の内部の容積R2が1.28倍未満であると、空気室31の内部の容積R2が上記範囲内にある場合と比較して、より高精度で圧力制御できるという効果を得られない場合があり、空間部12aの容積R1に対して、空気室31の内部の容積R2が73.3倍を超えると、空気室31の内部の容積R2が上記範囲内にある場合と比較して、空気室31が大きくなり過ぎ、余計なスペースをとってしまう場合がある。
【0047】
圧力調整機構は、空気室31に減圧電磁弁32aを介して取り付けられた真空タンク33及び真空タンク33に連結された真空ポンプ35aと、空気室31に外気電磁弁32bを介して外気に通じるように取り付けられたエアーフィルタ35bと、空気室31に加圧電磁弁32cを介して取り付けられた加圧ポンプ35cとからなる。
また、空気室31及び真空タンク33には、圧力を監視するための圧力計39がそれぞれ取り付けられている。
【0048】
ここで、真空ポンプ35aとしては、耐久性の観点から、レシプロ式真空ポンプ、エゼクタ式真空ポンプが好適に用いられ、加圧ポンプ35cとしては、耐久性の観点から、レシプロコンプレッサーが好適に用いられる。
また、真空ポンプ35aは、例えば、圧力が−5〜−6kPaとなるように設定され、加圧ポンプ35cは、圧力が約98kPaとなるように設定される。
【0049】
真空ポンプ35aは、真空タンク33を介して取り付けられている。このため、仮に空気の急激な進入があっても、真空タンク33があるため、真空ポンプ35aが壊れることが抑制される。
【0050】
空気室31は、減圧電磁弁32aの開閉に基づいて真空ポンプ35aにより負圧になるようになっており、外気電磁弁32bの開閉に基づいて大気圧になるようになっており、加圧電磁弁32cの開閉に基づいて、加圧ポンプ35cにより正圧になるようになっている。
このように、空気室31に取り付けられる圧力調整機構は、電磁弁を用いているので、圧力制御の精度が極めて優れる。
ここで、「負圧」とは、大気圧よりも減圧された状態を意味し、「正圧」とは、大気圧よりも加圧された状態を意味する。
【0051】
本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、圧力調整機構が、真空ポンプ35aと、エアーフィルタ35bと、加圧ポンプ35cとを備えるので、圧力を容易に調整することができる。なお、制御の詳細については後述する。
【0052】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、インク供給手段Bと、空気供給手段Cとを収容するフルイド部を備え、インクジェット部Aと、インク供給手段B及び空気供給手段Cを収容するフルイド部とからなる。
【0053】
ここで、インクジェット記録装置において、インクジェット部Aと、フルイド部とは別体となっている。このため、インクジェット部Aをよりコンパクトにし、フルイド部を邪魔にならない所望の位置に配置することが可能となる。これにより、インクジェット記録の作業性も向上する。
また、例えば、インクジェット部Aの近くにメインタンク21が位置するようにフルイド部を配置させることにより、配管経路による圧力損失を軽減させることができ、インク供給ポンプの小型化、高寿命化が可能となる。
【0054】
インクジェット部Aは、上述したように、記録媒体にインクを付与する記録ヘッド11と、該記録ヘッド11にインクを供給する分配タンク12とを有する。
また、インクジェット部Aは、当然、これらの他に、一般的なインクジェットの構成を備えていてもよい。
【0055】
図4は、本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインクジェット部を示す正面図である。
図4に示すように、インクジェット部Aは、記録媒体1にインクを付与する記録ヘッド11と該記録ヘッド11にインクを供給する分配タンク(図示しない)の他に、走行する記録媒体1を案内する案内ローラ2と、該記録ヘッド11により記録された記録媒体1を乾燥するための乾燥機3と、これらを収容する本体フレーム5とを有していてもよい。
【0056】
ここで、記録媒体1としては、特に限定されないが、例えば、紙、フィルム、布帛、金属箔等が適宜用いられる。
また、乾燥機3は、円柱状のドライヤーを有し、該ドライヤー表面にインクジェット記録された記録媒体1を密着させることにより、記録媒体1が乾燥するようになっている。
【0057】
インクジェット記録部Aにおいては、搬入された記録媒体1が案内ローラ2により案内され、記録ヘッド11に到達する。そして、記録ヘッド11により記録媒体1がインクジェット記録される。
インクジェット記録された記録媒体1は、別の案内ローラ2により案内され、乾燥機3に到達し乾燥される。その後、別の案内ローラ2に案内されて乾燥された記録媒体1が外方に搬出される。
【0058】
フルイド部は、上述したように、インク供給手段Bと、空気供給手段Cとを内蔵している。
図5aは、本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるフルイド部の右半分を右側からみた側面図であり、
図5bは、本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるフルイド部の左半分を左側からみた側面図である。
図5a及び
図5bに示すように、フルイド部は、下面に車輪がついており、自由に移動できるようになっている。
【0059】
フルイド部の右半分において、
図5aに示すように、フルイド部は、上面にインクパック23が載置される。そして、内部の後側には、それぞれのインクパック23に対応するように、ポンプを介してチューブで連結されたメインタンク21と、チューブを介してメインタンク21に連結された脱気モジュール22が配置されている。なお、脱気モジュール22はチューブを介して図示しないインクジェット部Aの分配タンクに連結される。また、逆止弁25については図示していない。
【0060】
一方、フルイド部の内部の前側には、真空タンク33が配置される。なお、真空ポンプ35a、エアーフィルタ35b及び加圧ポンプ35cについては図示していない。
【0061】
フルイド部の左半分において、
図5bに示すように、フルイド部は、上面にインクパック23が載置される。そして、内部の後側には、それぞれのインクパック23に対応するように、ポンプを介してチューブで連結されたメインタンク21と、チューブを介してメインタンク21に連結された脱気モジュール22が配置されている。なお、脱気モジュール22はチューブを介して図示しないインクジェット部Aの分配タンクに連結される。また、逆止弁25については図示していない。
【0062】
一方、フルイド部の内部の前側には、空気室31が配置される。なお、各電磁弁32a,32b,32cについては図示していない。
また、
図5a及び
図5bにおいて、前後左右は特に限定されず、当然、逆であってもよい。
【0063】
本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御方法において、インクジェット記録時、及び、記録ヘッド11の保管時には、空気室内を負圧となるように制御する。
また、記録ヘッド11から強制的にインクを排出する回復作業時には、空気室31内を正圧となるように制御する。
これらのことにより、インクジェット記録時、及び、記録ヘッド11の保管時には、インク漏れを抑制することができ、記録ヘッド11から強制的にインクを排出する回復作業時には、空気室31内を正圧となるように制御することで、記録ヘッド11におけるインクの目詰まりを抑制することができる。
【0064】
インクジェット記録装置の制御方法において、空気室31には、大気圧に通じる外気電磁弁32bが取り付けられているので、負圧から正圧とする際、又は、正圧から負圧とする際には、途中で外気電磁弁32bを開放し、エアーフィルタ35cを介して一時的に大気圧とすることにより、ポンプにかかる負荷を軽減することができる。すなわち、空気室31内を、負圧から大気圧にした後で正圧とし、又は、正圧から大気圧にした後で負圧とすることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0066】
例えば、本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、4箇所のインクジェット部Aと、インクジェット部Aそれぞれにインクを供給する4箇所のインク供給手段Bと、これらにインクジェット部Aに空気を供給する1箇所の空気供給手段Cとを備えているが、インクジェット部A及び該インクジェット部Aにインクを供給するインク供給手段Bの数は、特に限定されない。
例えば、インクジェット部A、インク供給手段B及び空気供給手段Cの数は、それぞれ同数であってもよく、異なる数であってもよい。
【0067】
図6の(a)及び
図6の(b)は、他の実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインクジェット部と空気供給手段とインク供給手段との関係を模式的に示す説明図である。
図6の(a)に示すように、8箇所のインクジェット部Aと、インクジェット部Aそれぞれにインクを供給する8箇所のインク供給手段Bと、これらにインクジェット部Aに空気を供給する1箇所の空気供給手段Cとを備えていてもよい。
また、
図6の(b)に示すように、4箇所のインクジェット部Aと、インクジェット部Aそれぞれにインクを供給する4箇所のインク供給手段Bと、これらにインクジェット部Aに空気を供給する1箇所の空気供給手段Cとを、2セット備えていてもよい。なお、複数箇所に空気供給手段Cを設ける場合、真空タンクを複数の空気室に対して共通としてもよい。
【0068】
本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、インクジェット部Aそれぞれに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクが収容させているが、インクはこれらのYMCKに限定されない。
例えば、5箇所以上のインクジェット部Aを備える場合は、同色のインクを複数箇所のインクジェット部Aに収容させてもよく、中間色のインク、蛍光色のインク、耐候剤が含まれたインク等をインクジェット部Aに収容させてもよい。
【0069】
本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、記録ヘッド11にラインヘッドを用いたラインヘッド方式となっているが、シリアルヘッド方式の記録ヘッドであってもよい。
【0070】
本実施形態に係るインクジェット記録装置において、圧力調整機構は、空気室31に外気電磁弁32bを介して外気に通じるように取り付けられたエアーフィルタ35bを備えているが、必ずしも必須ではない。
【0071】
本実施形態に係るインクジェット記録装置において、空気室31には減圧電磁弁32a、外気電磁弁32b、加圧電磁弁32cが直接取り付けられているが、これらの電磁弁は、空気室31への空気流入経路を共通化したマニホールドを介して取り付けられていてもよい。
【0072】
本実施形態に係るインクジェット記録装置においては、インクジェット部Aと、フルイド部とは別体となっているが、同体であってもよい。すなわち、例えば、フルイド部が、
図4に示すインクジェット部Aの本体フレーム5に収容されていてもよい。
【0073】
図5a及び
図5bに示す本実施形態に係るインクジェット記録装置において、インクパック23が、フルイド部の上面に載置されているが、内蔵されていてもよい。
また、真空ポンプ、エアーフィルタ及び加圧ポンプは、フルイド部の外に設置されていてもよい。