特許第5777587号(P5777587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777587
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ネジ研削砥石用のドレッサ
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/075 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   B24B53/075
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-207575(P2012-207575)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-61566(P2014-61566A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年2月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086450
【弁理士】
【氏名又は名称】菊谷 公男
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−320993(JP,A)
【文献】 特開昭56−062759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00 − 53/085
53/12 − 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの外周にネジを研削するための突起が設けられたネジ研削用砥石を研磨して、前記ネジ研削用砥石の前記突起が設けられた外周の形状を整えるネジ研削砥石用のドレッサであって、
前記ドレッサでは、
前記ネジ研削用砥石の回転軸に平行な軸回りに回転する基部の外周部に、
前記突起の基本形状に対応した溝が、前記軸方向に連なって複数設けられていると共に、前記溝の各々は、前記軸周りの周方向の全周に亘って設けられており、
前記基部の外周部では、前記基部の回転軸方向における一側であって、前記ネジ研削用砥石における前記ワーク側となる一側を研磨する側に、前記溝に隣接して平坦部が形成されており、
前記回転軸方向における前記平坦部の幅を、
前記ネジ研削用砥石の前記基部の前記回転軸方向の幅が、基準となる幅から公差の範囲内で薄くなった場合でも、厚くなった場合でも、前記ネジ研削用砥石で前記平坦部に対応して形成される平坦部に隣接する突起が完全な形状で形成されるような幅に形成したことを特徴とするネジ研削用砥石のドレッサ。
【請求項2】
前記軸方向における前記平坦部の幅は、少なくとも前記ネジ研削用砥石の前記回転軸方向における突起ひとつ分に相当する幅に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のネジ研削用砥石のドレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ研削砥石用のドレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの外周に雄ネジを研削加工するための装置として、例えば特許文献1に開示されたネジ研削装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−028864号公報
【0004】
図5の(a)は、従来例にかかるネジ研削装置の概略構成図であり、(b)は、(a)における領域Aの拡大図であり、(c)は、(a)における領域Bの拡大図である。なお、図5の(b)、(c)では、砥石板120の研削用突起122や、ドレッサ130のドレス溝132(溝133)を、説明の便宜上、模式的に示している。
【0005】
図5に示すように、ネジ研削装置100は、ワークWを保持する保持装置110と、ワークWの外周に雄ネジを研削加工するための砥石板120と、砥石板120の形状を整えるためのドレッサ130と、を備えて構成される。
保持装置110は、ワークWの一端を把持すると共にワークWを回転軸(軸線X1)回りに回転させるヘッドセンタ111と、ワークWの他端を回転可能に支持するテールセンタ112とを備えており、これらヘッドセンタ111およびテールセンタ112は、ワークWの外周に雄ネジを形成する際に、ワークWを、軸線X1周りに回転させながら、軸線X1の軸方向(図中右方向)に移動させるようになっている。
【0006】
砥石板120は、軸線X1に対して平行な軸線X2に沿って延びる砥石軸121の先端に固定されており、図示しないモータの回転駆動力により、砥石軸121と一体に軸線X2周りに回転するようになっている。
砥石板120の外周には、ワークWの外周に雄ネジを形成するための研削用突起122が形成されている(図5の(b)、(c)参照)。この研削用突起122は、砥石板120の厚み方向(軸線X2方向)に連なって複数設けられており、これら研削用突起122の各々は、軸線X2周りの周方向の全周に亘って設けられている。
【0007】
砥石板120は、図示しない砥石支持装置の駆動機構により、軸線X2の直交方向(軸線X4方向)に進退移動可能とされており、ワークWの外周に雄ネジを形成する際には、保持装置110側の所定位置まで移動するようになっている。
【0008】
図6は、砥石板を用いたワークW外周への雄ネジの形成を説明する図であって、(a)は、ワークWが、砥石板120による雄ネジの切削開始位置に配置された状態を、(b)は、ワークWが、その外周に雄ネジを切削している途中位置に配置された状態を、(c)は、ワークWが、砥石板120による雄ネジの切削終了位置に配置された状態を、それぞれ示した図である。
【0009】
実施の形態にかかるネジ研削装置100では、軸線X2方向における砥石板120の軸方向の位置を変えずに、ワークWを軸線X1方向に移動させることで、ワークWの外周に雄ネジを形成するようになっている。
そのため、図6の(a)において矢印aで示すように、軸線X2回りに回転する砥石板120を、ワークWに接触しない位置(図中実線参照)から、ワークWに接触する位置(図中仮想線参照)まで移動させたのち、図6の(a)、(b)において矢印bで示すように、ワークWを軸線X1回りに回転させながら図中右方向に移動させることで、ワークW外周への雄ネジの形成が行われる。
【0010】
そして、図6の(c)に示すように、図中右側に移動したワークWが、雄ネジの切削終了位置に達すると、図中矢印cで示すように、砥石板120を、ワークWに接触する位置(図中仮想線参照)から、ワークWに接触しない位置(図中実線参照)に移動させて、雄ネジの形成を終了する。
【0011】
この砥石板120を用いた雄ネジの加工は、同一の砥石板120を用いて繰り返し行われるので、ワークWに対する雄ネジの加工を行うにつれて、砥石板120の研削用突起122の形状が摩耗して変化してしまう。
そのため、ネジ研削装置100では、所定回数の雄ネジの加工が行われるたびに、ドレッサ130で砥石板120を研磨して、砥石板120の研削用突起122の形状(外周の形状)が整えられるようになっている。
【0012】
図5に示すように、ドレッサ130は、軸線X2に対して平行な軸線X3に沿って延びるドレス軸131に固定されており、その外周には、砥石板120の研削用突起122の形状を整えるためのドレス溝132が形成されている。
このドレス溝132は、ドレッサ130の幅方向に連なって設けられた複数の溝133から構成されており、溝133の各々は、砥石板120の研削用突起122の基本形状に対応した形状を成している。
【0013】
そして、このドレッサ130により砥石板120の外周の形状を整える際には、砥石板120とドレッサ130を、それぞれ軸線X2、軸線X3周りに回転させた状態で、砥石板120を、軸線X3の径方向外側からドレッサ130に接触させることで、砥石板120の外周を研磨して、研削用突起122の形状を整えるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ネジ研削装置100では、軸線X2方向の厚みW1が所定の公差範囲内にある砥石板120を用いて、ワークWの外周に雄ネジを形成している。
ここで、砥石板120では、その側面120aが持つうねりや、公差範囲内での厚みW1のバラツキがあるため、ドレッサ130を用いた研磨により、研削用突起122の形状が不完全になることがある。
【0015】
図7は、砥石板120の厚みの違いによる研削用突起122の形状の変化を説明する図であって、(a)は、砥石板120の厚みが中央値となる厚みWstdである場合に形成される雄ネジの形状を説明する図であり、(b)は、砥石板120の厚みが中央値となる厚みWstdよりも厚い場合に形成される雄ネジの形状を説明する図であり、(c)は、砥石板120の厚みが中央値となる厚みWstdよりも薄い場合に形成される雄ネジの形状を説明する図である。
なお、図7では、砥石板120の研削用突起122、そしてワークWの外周に形成される雄ネジの形状を、説明の便宜上、模式的に示している。
【0016】
前記したように、砥石板120の外周では、厚み方向の全長に亘って研削用突起122が連なって設けられている。
図7の(a)に示すように、砥石板120の厚みが、中央値となる厚みWstdである場合には、砥石板120の両側の研削用突起122は、何れも予定されていた完全な形状となる。そのため、この砥石板120を用いてワークWの外周に雄ネジを形成すると、図中左端に、完全な形状のネジ山部N1とネジ溝部N2とが形成された完全ネジとなる。
【0017】
そのため、雄ネジに螺合する雌ネジを有する相手側部材G(図中、仮想線参照)は、予定されていたネジ溝部N2の位置まで螺入するので、ワークWの拡径部の基点W1と相手側部材Gと離間距離は、予定されていた距離taとなる。
【0018】
図7の(b)に示すように、砥石板120Aの厚みが、中央値となる厚みWstdよりも所定幅aだけ厚い場合には、図中左端に、予定されていない不完全な形状の研削用突起122aが形成されてしまう。
かかる場合、この砥石板120Aを用いて、ワークWの外周に雄ネジを形成すると、不完全な形状の研削用突起122aに起因して、図中左端のネジ溝部N2の隣に、予定されていない不完全な形状のネジ溝部N3が形成されてしまう。
【0019】
ただし、この場合には、相手側部材Gの螺入に必要なネジ(ネジ山部N1、ネジ溝部N2)が形成されているので、相手側部材G(図中、仮想線参照)は、予定されていたネジ溝部N2の位置まで螺入でき、ワークWの基点W1と相手側部材Gとの離間距離は、予定されていた距離taとなる。
【0020】
図7の(c)に示すように、砥石板120Bの厚みが、中央値となる厚みWstdよりも所定幅aだけ薄い場合には、図中左端の研削用突起122bの形状が、他の研削用突起122とは異なり、不完全な形状となってしまう。
かかる場合、この砥石板120Bを用いて、ワークWの外周に雄ネジを形成すると、不完全な形状の研削用突起122bに起因して、図中左端のネジ山部N1の隣に、完全な形状のネジ溝部N2ではなく、予定されてない不完全な形状のネジ溝部N4が形成されてしまう。
【0021】
この場合には、必要なネジ溝部N2が足りないので、相手側部材G(図中、仮想線参照)は、ネジ山部N1の位置で止まってしまい、予定されていた位置まで螺入できなくなる。そのため、ワークWの基点W1と相手側部材Gとの離間距離は、予定されていた距離taよりも大きい距離tbとなる。
【0022】
このように、砥石板120の厚みのバラツキの影響を受けて不完全ネジが形成されると、相手側部材Gが、ワークWにおける予定されていた位置まで螺入できなくなって、相手側部材GとワークWとを螺合したときの軸方向の位置がズレてしまうので、組付け不良となる。
【0023】
そこで、砥石板120の厚みのバラツキの影響を受けずに、完全ネジを形成できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、ワークの外周にネジを研削するための突起が設けられたネジ研削用砥石を研磨して、前記ネジ研削用砥石の前記突起が設けられた外周の形状を整えるネジ研削砥石用のドレッサであって、前記ドレッサでは、前記ネジ研削用砥石の回転軸に平行な軸回りに回転する基部の外周部に、前記突起の基本形状に対応した溝が、前記軸方向に連なって複数設けられていると共に、前記溝の各々は、前記軸周りの周方向の全周に亘って設けられており、前記基部の外周部では、前記基部の回転軸方向における一側であって、前記ネジ研削用砥石における前記ワーク側となる一側を研磨する側に、前記溝に隣接して平坦部が形成されており、
前記回転軸方向における前記平坦部の幅を、
前記ネジ研削用砥石の前記基部の前記回転軸方向の幅が、基準となる幅から公差の範囲内で薄くなった場合でも、厚くなった場合でも、前記ネジ研削用砥石で前記平坦部に対応して形成される平坦部に隣接する突起が完全な形状で形成されるような幅に形成した構成とした。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ドレッサを用いてネジ研削用砥石の外周の形状を整えると、ネジ研削用砥石では、回転軸方向における少なくとも一側に、前記平坦部に起因する平坦部が、ネジを研削するための突起に隣接して形成される。
よって、回転軸方向にけるネジ研削用砥石の厚みが薄くなった場合には、当該ネジ研削用砥石における平坦部の厚みが薄くなり、厚くなった場合には、平坦部の厚みが厚くなるだけで、ネジを研削するための突起の形状が不完全な形状にならない。
これにより、ネジ研削用砥石の厚みにバラツキがあっても、ワークの外周に常に完全ネジを形成できるので、ワークと相手側部材との組付け不良の発生が好適に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態にかかるネジ研削装置の概略構成図である。
図2】実施の形態にかかるドレッサを説明する図である。
図3】砥石板を用いたワーク外周への雄ネジの形成を説明する図である。
図4】砥石板の厚みの違いによる砥石板の外周の形状の変化を説明する図である。
図5】従来例にかかるネジ研削装置の概略構成図である。
図6】従来例の砥石板を用いたワーク外周への雄ネジの形成を説明する図である。
図7】従来例の場合における砥石板の厚みのバラツキと、不完全ネジの形成との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施の形態にかかるドレッサ5を、ネジ研削装置1に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、ネジ研削装置1の概略構成図である。
図2は、ドレッサ5を説明する図であり、(a)は、図1におけるドレッサ5周りの拡大図であり、(b)は、(a)における領域Aの拡大図である。
なお、これらの図においては、説明の便宜上、砥石板3の研削用突起35や、ドレッサ5のドレス溝53を模式的に示している。
【0028】
ネジ研削装置1は、ワークWの外周に雄ネジを研削加工するための装置であり、ワークWを保持する保持装置2と、ワークWの外周に雄ネジを研削加工するための砥石板3と、砥石板3の形状を整えるためのドレッサ5と、を備えて構成される。
【0029】
保持装置2は、ワークWの一端側を保持すると共にワークWを回転軸(軸線X1)周りに回転させるヘッドセンタ21と、ワークWの他端側を回転可能に支持するテールセンタ22と、を備えおり、これらヘッドセンタ21およびテールセンタ22は、ワークWの外周に雄ネジを形成する際に、ワークWを、軸線X1周りに回転させながら、軸線X1の軸方向(図中右方向)に移動させるようになっている。
【0030】
砥石板3は、軸方向から見てリング形状を成しており、軸線X1に対して平行な軸線X2に沿って延びる砥石軸31の先端に、クランプ32、33の間に把持された状態で固定されている。
砥石軸31側のクランプ33は、その中央部に、軸線X2方向に沿って延びる軸部331を有しており、このクランプ33における軸部331とは反対側に、砥石軸31が連結されている。
このクランプ33に隣接するクランプ32は、その中央部に、クランプ33の軸部331を挿通させる貫通孔321が形成されており、クランプ32は、この貫通孔321に軸部331を挿通させて、クランプ33に組み付けられている。
クランプ32は、軸線X2方向に移動可能となっており、クランプ33との間に砥石板3を挟み込んだのち、クランプ32をボルトBでクランプ33に固定することで、砥石板3が砥石軸31に取り付けられるようになっている。
【0031】
砥石軸31には、図示しない砥石保持装置のモータからの回転駆動力が入力されるようになっており、砥石軸31に回転駆動力が入力されると、砥石軸31と、この砥石軸31の先端に固定された砥石板3とが、軸線X2回りに一体に回転するようになっている。
【0032】
図2に示すように、砥石板3の外周部3bには、ワークWの外周に雄ネジを研削するための突起(研削用突起35)が、径方向外側に突出して設けられている。
研削用突起35は、砥石板3の外周部3bから径方向外側に向かうにつれて、砥石板3の厚み方向(軸線X2(図1参照)方向)の幅が狭くなる尖り状に形成されている。
研削用突起35は、砥石板3の厚み方向(軸線X2方向)に連なって複数形成されており、研削用突起35の各々は、軸線X2(図1参照)周りの周方向の全周に亘って設けられている。
また、砥石板3の外周部3bの幅方向における一側(ワークW側の一側)には、軸線X2(図1参照)に対して平行な平坦部36が設けられており、前記した研削用突起35は、この平坦部36から所定高さhaで形成されている。
【0033】
ここで、砥石板3と砥石軸31は、図示しない砥石支持装置の駆動機構により、軸線X2の直交方向(軸線X4方向:図1参照)に移動可能とされており、ワークWの外周に雄ネジを形成する際には、砥石板3を軸線X2周りに回転させながら、砥石板3の外周部3bを、保持装置2側の所定位置(図1における仮想線参照)まで移動させられるようになっている。
【0034】
図1に示すように、ドレッサ5は、軸方向から見てリング形状を成しており、軸線X1と軸線X2に対して平行な軸線X3に沿って延びるドレス軸4に外挿された状態で、ドレス軸4上の所定位置に、図示しないボルトなどで固定されている。
ドレス軸4には、図示しないドレッサ保持装置のモータからの回転駆動力が入力されるようになっており、ドレス軸4に回転駆動力が入力されると、ドレス軸4と、このドレス軸4に固定されたドレッサ5とが、軸線X3回りに一体に回転するようになっている。
【0035】
ドレッサ5は、ドレス軸4との嵌合部51と、この嵌合部51よりも大径で、かつ軸線X3方向の長さが嵌合部51よりも短い基部52と、を備えており、基部52の外周面には、前記した砥石板3の研削用突起35の形状を整えるためのドレス溝53、53が設けられている。
ここで、基部52は、焼き入れにより剛性強度が高められており、この剛性強度が高められた部分に、表面に砥粒がまぶされたドレス溝53、53が設けられている。
【0036】
ドレス溝53は、基部52の幅方向(軸線X3方向)に連なって設けられた複数の溝54から構成されている。溝54の各々は、研削用突起35の基本形状に対応した形状を成しており、軸線X3側に向かうにつれて厚み方向(軸線X3の軸方向)の幅が狭くなる尖り状に形成されている。溝54は、前記した砥石板3の研削用突起35のピッチ幅Pと同じピッチ幅Pで設けられており、溝54の各々は、軸線X3周りの周方向の全周に亘って設けられている。
ここで、軸線X3の軸方向における溝54の数は、同方向における研削用突起35の数よりも多くなっている。
【0037】
軸線X3方向におけるドレス溝53の両側には、平坦部55が、ドレス溝53に隣接して設けられている。平坦部55の外周面55aは、軸線X3に対して平行な平坦面になっており、この平坦部55の幅Wcは、軸線X3の軸方向で並んだ溝54の、少なくともひとつ分以上の幅(実施の形態では二つ分)となっている。
なお、前記した溝54は、この平坦部55の外周面55aを通る仮想線Im1を基準として、所定深さhaで形成されており、この深さは、前記した研削用突起35の平坦部36からの高さhaと同じとなっている。
【0038】
ここで、ドレス溝53の幅Wbと、砥石板3の標準幅Wstd(公差範囲を決めるときの基準となる幅)と、前記した研削用突起35が設けられている範囲の幅Waとの関係は、Wb>Wstd>Waに設定されている。
【0039】
ここで、砥石板を用いた雄ネジの形成を説明する。
図3は、砥石板を用いたワークW外周への雄ネジの形成を説明する図であって、(a)は、ワークWが、砥石板3、120による雄ネジの切削開始位置に配置された状態を、(b)は、ワークWが、その外周に雄ネジを切削している途中位置に配置された状態を、(c)は、ワークWが、砥石板3、120による雄ネジの切削終了位置に配置された状態を、それぞれ示した図である。
なお、図3では、図中上側が、実施の形態に係るドレッサ5を用いてドレス(研磨)した砥石板3の場合を、下側が、従来例にかかるドレッサ130を用いてドレス(研磨)した砥石板120の場合を、それぞれ示している。
【0040】
実施の形態にかかるネジ研削装置1では、軸線X2方向における砥石板3、砥石板120の軸方向の位置を変えずに、ワークWを軸線X1方向に移動させることで、ワークWの外周に雄ネジを形成するようになっている。
そのため、図3の(a)において矢印aで示すように、軸線X2回りに回転する砥石板3、120を、ワークWに接触しない位置(軸線X1の径方向外側に離れた位置:図中実線参照)から、ワークWに接触する位置(図中仮想線参照)まで移動させたのち、図3の(a)、(b)において矢印bで示すように、ワークWを軸線X1回りに回転させながら図中右方向に移動させることで、ワークW外周への雄ネジの形成が行われる。
【0041】
ここで、実施の形態にかかる砥石板3では、ワークW側(図中左側)に平坦部36が設けられている。そのため、軸線X1方向における平坦部36の幅Wxの分だけ、ワークWの切削開始位置が、従来の平坦部36が設けられていない砥石板120の場合のワークWの切削開始位置よりも、図中右側に移動することになる。
【0042】
そして、図3の(c)に示すように、図中右側に移動したワークWが、雄ネジの切削終了位置に達すると、図中矢印cで示すように、砥石板3、120を、ワークに接触する位置(図中仮想線参照)から、ワークに接触しない位置(軸線X1の径方向外側に離れた位置:図中実線参照)に移動させて、雄ネジの形成を終了する。
【0043】
ここで、実施の形態では、ワークWの外周に形成される雄ネジの長さ(軸線X1方向の長さ)は、砥石板3を使用する場合と砥石板120を使用する場合とで変わらないので、砥石板3を使用する場合と砥石板120を使用する場合では、雄ネジの切削開始が上記した幅Wxの分だけ変わるだけで、雄ネジの切削開始から切削終了までの間のワークWの軸線X1方向における移動量は変わらないようになっている。
よって、従来のネジ研削装置において用いられていた砥石板120の代わりに、実施の形態にかかるドレッサ5を採用するに当たり、ネジ研削装置における、ワークWの移動に関する設定を大きく変える必要がないようになっている。
【0044】
以下、実施の形態にかかるドレッサ5の作用を説明する。
図4は、砥石板3の軸線X2方向の厚みの違いによる砥石板3の外周部3b(図2参照)側の形状の変化を説明する図であって、(a)は、砥石板3の厚みが中央値となる厚みWstdである場合に形成される雄ネジの形状を説明する図であり、(b)は、砥石板3Aの厚みが中央値となる厚みWstdよりも厚い場合に形成される雄ネジの形状を説明する図であり、(c)は、砥石板3Bの厚みが中央値となる厚みWstdよりも薄い場合に形成される雄ネジの形状を説明する図である。
なお、図4では、砥石板3の研削用突起35、そしてワークWの外周に形成される雄ネジの形状を、説明の便宜上、模式的に示している。
【0045】
前記したように、ドレッサ5の基部52では、ドレス溝53の一側(ワークW側の一側)に平坦部55が設けられている。そのため、ドレッサ5を用いて砥石板3の外周の形状を整えると、研削用突起35のワークW側に、ドレッサ5の平坦部55に対応する平坦部36が、軸線X3に対して平行に形成される。
例えば、図4の(a)に示すように、砥石板3の軸線X2方向の厚みが、中央値となる厚みWstdである場合には、砥石板3の研削用突起35のワークWに、平坦部が36が形成されて、平坦部36の右側(ワークWとは反対側)に位置する研削用突起35の各々は、完全な形状の研削用突起として形成される。
【0046】
また、図4の(b)に示すように、砥石板3Aの軸線X2方向の厚みが、中央値となる厚みWstdよりも所定幅aだけ厚い場合には、図4の(a)の場合よりも所定幅a分だけ長い平坦部36’が形成される。そして、図4の(c)に示すように、砥石板3Bの厚みが、中央値となる厚みWstdよりも所定幅aだけ薄い場合には、図4の(a)の場合よりも所定幅a分だけ短い平坦部36’が形成される。
ここで、ドレッサ5の平坦部55の幅Wcは、砥石板3の側面3aのうねりや、砥石板3の幅の公差に起因する、砥石板3の幅の振れを吸収できる幅に設定されている。
【0047】
そのため、例えば、砥石板3の厚みの振れが、中央値となる厚みWstdを基準として、想定された範囲内である場合には、砥石板3の厚みが、中央値となる厚みWstdよりも厚くても薄くても、砥石板3の研削用突起35のワークW側に、平坦部が36、36’、36’’が形成されて、この平坦部36、36’、36’’のワークWとは反対側(図中右側)に位置する研削用突起35の各々は、完全な形状の研削用突起として形成される。
【0048】
よって、砥石板3の厚みの振れが中央値となる厚みWstdを基準として厚くなった場合と薄くなった場合の何れにおいても、砥石板3の厚み方向(軸線X2方向の)のワークW側の研削用突起35の形状が、完全な形状で形成される。
従って、図4の(a)から(c)に示す砥石板3、3A、3Bを用いて、ワークWの外周に雄ネジを形成すると、砥石板3の厚みのバラツキの影響を受けずに、ネジ山部N1の隣にネジ溝部N2が形成された完全ネジが作成される。よって、予定されていないネジ山部やネジ溝部が完全または不完全な形状で形成された不完全ネジが作成されることがない。
これにより、雄ネジに螺合する雌ネジを有する相手側部材G(図中、仮想線参照)は、予定されていたネジ溝部N2の位置まで常に螺入するので、ワークWの拡径部の基点W1と相手側部材Gと離間距離は、常に一定の距離taとなる。
よって、ワークWと相手側部材Gとを螺合したときに、砥石板3の厚みのバラツキの影響で、これらの軸方向の位置がずれることがないので、ワークWと相手側部材Gとの組付け不良の発生が好適に防止される。
【0049】
以上の通り、実施の形態では、ワークWの外周にネジを研削するための研削用突起35が設けられた砥石板3を研磨して、砥石板3の研削用突起35が設けられた外周の形状を整えるネジ研削砥石用のドレッサで5あって、
ドレッサ5では、砥石板3の回転軸(軸線X2)に平行な軸線X3回りに回転する基部52の外周部に、研削用突起122の基本形状に対応した溝54が、軸線X3の軸方向に連なって複数設けられてドレス溝53を構成していると共に、溝54の各々は、軸線X3周りの周方向の全周に亘って設けられており、
基部52の外周部では、基部52の軸線X3の軸方向におけるワークW側の一側に、ドレス溝53に隣接して平坦部55が形成されている構成とした。
【0050】
このように構成すると、ドレッサ5を用いて砥石板3の外周の形状を整えると、砥石板3では、回転軸方向におけるワークW側に、ドレッサ5の平坦部55に起因する平坦部36が、ネジを研削するための研削用突起35に隣接して形成される。
よって、砥石板3の回転軸(軸線X2)方向における厚みWaが薄くなった場合には、当該砥石板3における平坦部36の厚みが薄くなり、厚くなった場合には、平坦部36の厚みが厚くなるだけで、ネジを研削するための研削用突起35の形状が不完全な形状にならない。
これにより、砥石板3の厚みにバラツキがあっても、ワークWの外周に常に完全ネジを形成できるので、ワークWと相手側部材Gとを螺合したときのこれらの軸方向の位置関係が常に一定(一定の離間距離ta)になる。よって、ワークWと相手側部材Gとの組付け不良の発生が好適に防止される。
【0051】
さらに、軸線X3の軸方向における平坦部55の幅Wcは、少なくとも砥石板3の軸線X2方向における研削用突起35のひとつ分に相当する幅に設定されている構成とした。
【0052】
このように構成すると、砥石板3の厚みが薄くなっても、厚みの影響を平坦部55で吸収できるので、不完全な形状の研削用突起が砥石板3に形成されてしまうことを好適に防止できる。
また、平坦部55の幅Wcが研削用突起35のひとつ分に相当する幅に設定されているので、雄ネジを形成するときの開始位置と終了位置が研削用突起35のひとつ分ずれるものの、雄ネジを形成する際のワークW移動量が、従来の砥石120を用いた場合と同じになる。
よって、従来のネジ研削装置において用いられていた砥石板120の代わりに、実施の形態にかかるドレッサ5を採用するに当たり、ネジ研削装置における、ワークWの移動に関する設定を大きく変える必要がない。
【0053】
さらに、ドレッサ5では、軸線X3方向における中央部に位置する平坦部55を挟んで一方側と他方側に、軸線X3方向に溝54が連続するドレス溝53、53が形成されている構成とした。
【0054】
実施の形態にかかるドレッサ5の場合、砥石板3の研磨は、平坦部55の両側に位置する一連のドレス溝53、53の一方を用いて行われるようになっている。そのため、砥石板3の研磨を繰り返して、ドレス溝53の形状が摩耗した場合には、使用されていなかった他方のドレス溝53を用いて、砥石板3の研磨を行うことができる。
ひとつのドレス溝53を備えるドレッサを作成する場合よりも、図2に示すような複数のドレス溝53、53を備えるドレッサ5とした方が作製コストが安くなるので、上記のような構成のドレッサ5とすることで、ネジ研削装置1におけるランニングコストの低減が可能になる。
【符号の説明】
【0055】
1 ネジ研削装置
2 保持装置
3、3A、3B 砥石板
3a 側面
3b 外周部
4 ドレス軸
5 ドレッサ
21 ヘッドセンタ
22 テールセンタ
31 砥石軸
32、33 クランプ
35 研削用突起
36、36’ 平坦部
51 嵌合部
52 基部
53 ドレス溝
54 溝
55 平坦部
55a 外周面
100 ネジ研削装置
110 保持装置
111 ヘッドセンタ
112 テールセンタ
120、120A、120B 砥石板
120a 側面
121 砥石軸
122 研削用突起
122a 研削用突起
122b 研削用突起
130 ドレッサ
131 ドレス軸
132 ドレス溝
133 溝
321 貫通孔
331 軸部
521 小径部
B ボルト
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7