特許第5777589号(P5777589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777589環境試験装置及び空調システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777589
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】環境試験装置及び空調システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20150820BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20150820BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   F24F3/14
   F25B5/02 B
   B01D53/26 100
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-216753(P2012-216753)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70790(P2014-70790A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】倉良 博伸
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−049034(JP,U)
【文献】 特開平04−006442(JP,A)
【文献】 特開平02−107344(JP,A)
【文献】 特開2007−162973(JP,A)
【文献】 特開2012−103210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
B01D 53/26
F25B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却手段が配された空気調整空間と、試料体が配される試験空間とを有し、空気調整空間を通風環境にして空気調整空間と試験空間との間で空気を循環させ、試験空間を所望の環境に整える環境試験装置において、
前記冷却手段は表面温度を低下させることができるものであり、通風環境下においてその表面で空気と熱交換して空気温度を低下させると共に空気中の水蒸気を凝縮して凝縮水を発生させることが可能であり、
前記冷却手段で発生した凝縮水を通風環境にさらし、凝縮水を蒸発させる凝縮水蒸発装置を備え、目標環境が高湿度環境である場合に実施され凝縮水蒸発装置によって凝縮水を蒸発させる凝縮水蒸発運転モードと、目標環境が低湿度環境である場合に実施され凝縮水を蒸発させない通常運転モードとを行うことができ、
前記冷却手段は2系統以上の冷却用熱交換器によって構成され、少なくとも2系統の冷却用熱交換器は上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器に区分され、
凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させると共に下部側熱交換器を凝縮水蒸発装置として機能させ、主として上部側熱交換器の表面で発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
下部側熱交換器は、表面にフィンを有することを特徴とする請求項に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器は、一連の冷凍サイクルを構成する冷却装置の一部であり、前記冷却装置は、前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器の一次側流路と、圧縮機と、凝縮器及び膨張手段が環状に接続され、内部に相変化する冷媒を循環され、
前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器は、並列に接続されていて前記下部側熱交換器への冷媒の流れを遮断する遮断弁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記上部側熱交換器と前記下部側熱交換器とは分離独立したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項5】
試験空間の目標環境によって運転モードが切り替えられ、目標環境が低湿度環境である場合には通常運転モードで運転され、目標環境が高湿度環境である場合に凝縮水蒸発運転モードで運転されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項6】
通風空間に置かれた冷却手段によって所望空間の温度と湿度とを目標環境に一致させる空調システムの制御方法において、前記冷却手段は、上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器を有し、
目標環境が低湿度環境である場合には主として下部側熱交換器又は下部側熱交換器と上部側熱交換器の双方を使用する通常運転モードで運転され、目標環境が高湿度環境である場合には、主として上部側熱交換器を使用する凝縮水蒸発運転モードで運転され、
前記凝縮水蒸発運転モードにおいては上部側熱交換器の表面温度を低下し、下部側熱交換器の表面温度は前記所望空間から前記通風空間に吸い込まれる空気の温度に近い温度となり、
前記凝縮水蒸発運転モードにおいては上部側熱交換器の表面で空気中の水蒸気を凝縮して凝縮水を発生させると共に、発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴とする空調システムの制御方法。
【請求項7】
前記下部側熱交換器は表面にフィンを有するものであることを特徴とする請求項6に記載の空調システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に関するものである。また本発明は、環境試験装置等に採用される空調システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品や素材等(以下、単に試料体という)の性能や耐久性を試験する装置として、環境試験装置がある。環境試験装置は、試験対象たる試料体が載置される試験空間を備え、この試験空間内の温度や湿度を所望の目標環境に調整するものである。即ち、環境試験装置は、試験空間内を所望の環境に調整すべく、空気を加熱するヒータや、空気を冷却・除湿する冷却装置、加湿装置、さらには試験空間内の空気を攪拌する送風機が搭載されている。
【0003】
図7は、従来技術の代表的な環境試験装置100の概念図である。従来技術の環境試験装置100は、周囲を断熱材(図示せず)で覆われた筐体2を有した恒温恒湿装置である。すなわち、筐体2は、恒温恒湿槽5を成すものであり、その内部が仕切壁3によって、試験室(試験空間)6と、空調用通路(空気調整空間)7とに区切られている。そして、恒温恒湿槽5内の上部側と下部側には、試験室6と空調用通路7とを連通する開口10,11が設けられている。
【0004】
試験室6は、環境試験を行う際に、試料体となる機器や部品等を配置する空間で、当該空間の温度を検知する室内温度検知手段15と、当該空間の相対湿度を検知する室内湿度検知手段16が設けられている。室内温度検知手段15は、例えば、従来公知の測温抵抗体等の温度センサである。一方、室内湿度検知手段16は、例えば、従来公知の湿度センサである。
【0005】
空調用通路7は、所望の温度や湿度の空気を生成する部分であり、下部側(空気の流れ方向上流側)から順番に、冷却器20、加湿器21、加熱器22、送風機25が配されている。
冷却器20は、公知の冷却装置26の一部であり、より具体的には蒸発器であって冷凍サイクルの一部を担うべく機能するものである。即ち冷却装置26は、冷却器(蒸発器)20の他、圧縮機30、凝縮器31、膨張手段32を有し、これらが環状に接続されている。そして内部に相変化する冷媒が流通し、一連の冷凍サイクルを構成する。前記した冷媒は、冷却器(蒸発器)20の一次側を流れ、冷却器20内で気化して周囲の熱を奪い、冷却器20の表面温度を低下させる。
【0006】
加湿器21は、蒸気を放出するものである。
加熱器22は、従来公知の電気ヒータであり、空調用通路7を通過する空気を加熱するものである。
送風機25は、従来公知の多翼型の遠心送風機である。
【0007】
環境試験装置100は、送風機25によって恒温恒湿槽5内の空気を循環して、試験室6内に所望の環境が作られる。即ち恒温恒湿槽5内の空気は、送風機25によって仕切壁3の下部側の開口10から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過して、仕切壁3の上部側の開口11から試験室6側に吐出される。そして空調用通路(空気調整空間)7と試験室(試験空間)6との間で空気を循環させる。空調用通路7は通風環境となるものであり、内部の機器に送風が順次通過する。
【0008】
より詳細に説明すると、送風機25が起動されると、図7に示すように、空調用通路7内の空気が送風機25の吸気口27に吸い込まれて、吐出口28から吐出される。そして、送風機25から吐出された空気は、仕切壁3の上部側の開口11から試験室6側に送り出される。試験室6内を通過して、仕切壁3の下部側の開口10に到達した空気は、再び空調用通路7内に戻る。空調用通路7には、前記したように、空気の流れ方向に沿って順番に冷却器20、加湿器21、加熱器22が配置されているため、空調用通路7に導入された空気は、冷却器20で冷却及び除湿され、加湿器21で必要に応じて加湿されて湿度が調整され、さらに加熱器22で加熱されて温度調節され、再度送風機25の吸気口27に吸い込まれて、吐出口28から吐出される。
【0009】
なお、環境試験装置100は、室内温度検知手段15と室内湿度検知手段16によって、試験室6内の現状の温度(現状気温)と現状の相対湿度(現状相対湿度)が監視され、所定の設定条件に基づいて、各機器(冷却装置26、加湿器21、加熱器22、送風機25等)が制御される。即ち室内温度検知手段15と室内湿度検知手段16の検知信号が、制御装置33に入力され、所定のプログラムで処理される。そして制御装置33から出力される信号によって、冷却装置26、加湿器21及び加熱器22等が駆動される。
即ち環境試験装置100の空調システムは、試験室6内の環境を目標の温度及び湿度に調整するものであり、冷却装置26、加湿器21、加熱器22及び送風機25で構成され、冷却装置26、加湿器21、加熱器22を制御装置33から出力される信号によって制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−163585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
環境試験装置100は、耐久試験に多用されるので、長時間に渡って連続的に運転される場合が多い。そのため環境試験装置100の消費電力を極力低くしたいという市場の要望がある。
本発明は、上記した要望に応えるものであり、消費電力が少なく、省エネルギーに寄与する環境試験装置の提供を目的とするものである。また本発明は、消費電力が少なく、環境試験装置に好適な空調システムの制御方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明者らは、目標環境が低湿度環境である場合と、高湿度環境である場合に分けてエネルギーの無駄が無いかを検証した。
その結果、従来技術の環境試験装置100は、目標環境が高湿度環境である場合に、エネルギーの無駄が多いことが判明した。即ち従来技術の環境試験装置100は、試験室6内を通過して空調用通路7に戻された空気を冷却器20の表面に接触させ、空気を低温の冷却器20表面で冷やすことによって空気の温度を低下させる。ここで、目標環境が高湿度環境であるならば、空調用通路7に戻って来た空気も一般に高湿度であり、冷却器20の表面に触れることによって含まれた水蒸気が凝縮する。そのため冷却器20を通過した空気の絶対湿度は、目標環境の絶対湿度よりも低いものとなってしまう。そのため従来技術の環境試験装置100では、冷却器20を通過した空気に加湿器21で水蒸気を混入し、空気の湿度を調整している。
【0013】
この様に、従来技術の環境試験装置100で高湿度環境を作る場合、冷却器20の表面に於ける水蒸気の凝縮量が多く、水蒸気の凝縮のためにエネルギーを無駄に消費している。
また冷却器20において、過度に含有水蒸気が除去されてしまうため、その後に加湿することを余儀なくされ、加湿のために余計にエネルギーを消費することとなる。
【0014】
以下、このメカニズムをさらに詳細に説明する。
図8は、図7に示す環境試験装置100の空調システムで低湿度の環境を作った場合の空調状態を空気線図上に示したものである。図8における目標環境は、温度が摂氏30度、相対湿度が30パーセントである。
環境試験装置100では、目標の温度(摂氏30度)であって目標の低湿度(30%rh)に調温調湿された空気が送風機25から試験室6へ送られる(図7図8のA点)。この空気が試験室6を経由して再び空調用通路7に戻るときには、試験室6において試料体からの発熱や室外からの水蒸気の進入の影響を受け、点Bへ状態が変化している。即ち試験室6内の環境は低湿度の環境であり、外気よりも湿度が低いから、外気から試験室6側に水蒸気が進入し、絶対湿度が上昇する。また試験室6に配された試料体が発熱することにより、環境温度が上昇する。そのため温度及び湿度が目標温度よりも幾分高くなった状態の空気が空調用通路7に戻る。従って図8の線分A−Bは、若干、上向きに傾く。
【0015】
空調用通路7へ戻った空気は冷却器20を通過するときに冷却・除湿される。しかしながら、環境試験装置100の目標環境は、低湿度環境であるから、A点からB点に状態変化していると言えどもその湿度は低い。そのため空調用通路7へ戻った空気の絶対湿度が低く、その露点が低いため顕熱比の大きい冷却・除湿(約0.8〜1.0、図8は0.9で記載)が行われ、冷却器20の出口ではC点の状態となっている。即ち目標の温度・湿度よりもわずかに温度・湿度が低い状態となって冷却器20を通過する。
そして従来技術の環境試験装置100では、この空気を再び目標環境の温度及び湿度たるA点にするため、加湿器21での加湿と、加熱器22での加熱とを行う。それぞれでの状態変化を分けて書いた場合、加湿器21では熱水分比(一般的な値640)に沿った加熱・加湿の状態変化となり、目標環境と同じ絶対湿度であるD点まで状態変化する。また、最後に加熱器22で加熱され目標環境たるA点の状態となる。
【0016】
一方、図9は、図7に示す環境試験装置100の空調システムで高湿度の環境を作った場合の空調状態を空気線図上に示したものである。図9における目標環境は、温度が摂氏30度、相対湿度が80パーセントである。
環境試験装置100では、目標の温度(摂氏30度)であって目標の高湿度(80%rh)に調温調湿された空気が送風機25から試験室6へ送られる(図7図9:A点)。この空気が試験室6を経由して再び空調用通路7に戻るときには、試験室6で試料体からの発熱や室外への水蒸気の放散の影響により、B点へ状態が変化している。即ち試験室6内の環境は高湿度の環境であり、外気よりも湿度が高いから、試験室6側から外気に向かって水蒸気が放散し、絶対湿度が低下する。また試験室6に配された試料体が発熱することにより、環境温度が上昇する。そのため温度は目標温度よりも幾分高く、湿度(絶対湿度)は幾分低くなった状態の空気が空調用通路7に戻る。従って図8の線分A−Bは、若干、下向きに傾く。
【0017】
空調用通路7へ戻った空気は冷却器20を通過するときに除湿冷却される。ここで、環境試験装置100の目標環境は、高湿度環境であるから、そもそもその湿度が高く、試験室6を経由した空気は高い湿度となっている。そのためB点の湿度は高い。そのため空調用通路7へ戻った空気の絶対湿度が高く、その露点が高いため顕熱比の小さい除湿冷却(約0.1〜0.4 図9では0.35で記載)が行われる。そして冷却器20の出口ではC点の状態となっている。即ち目標の温度・湿度よりも温度・湿度が低い状態となって冷却器20を通過する。
そして従来技術の環境試験装置100では、この空気を再び目標環境たるA点にするため、加湿器21での加湿と、加熱器22での加熱とを行う。それぞれでの状態変化を分けて書いた場合、加湿器21では熱水分比(一般的な値640)に沿った加熱・加湿の状態変化となり、目標環境と同じ絶対湿度であるD点まで状態変化する。また、最後に加熱器22で加熱され目標環境たるA点の状態となる。
【0018】
次に目標環境が低湿度環境である場合と、高湿度環境である場合における消費電力を比較する。空調システムの消費電力は、冷却器20でのエンタルピ変化(Δh2:h3−h1 Δはデルタ)が大きくなる程、冷却装置26の仕事量が大きくなり消費電力量が大きくなる。また加熱・加湿のエンタルピ変化(Δh1:h2−h1)が大きい場合も同様に空調システムの消費電力量が大きくなる。
この観点で、図8図9とを比較すると、目標環境が高湿度環境である場合には、顕熱比の小さい除湿冷却が行われるので、冷却器20を通過する際のエンタルピ変化(Δh2:h3−h1)が大きく、低湿度の制御時よりも消費電力量が多い。
また目標環境が高湿度環境である場合には、調温・調湿のうち、加湿器21での加湿量が多く必要となるため、Δh1が大きくなり、低湿度の制御時よりも消費電量が多くなる。
さらに図7の空調システムで高湿度(30℃80%rh)かつ顕熱負荷が大きくなった場合は、より大きな電力消費を強いられる。
図11は、図7に示す環境試験装置100の空調システムで高湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。図11における目標環境は、温度が摂氏30度、相対湿度が80パーセントである。
顕熱負荷が大きくなった場合、空気が空調用通路7に戻る際の空気は、前記したB点よりもより温度の高いB’点となっている。B’点は、B点に比べて温度が高く、相対湿度が低くなるため蒸発器での除湿・冷却の顕熱比は多少大きくなり(図11では0.45で記載)除湿しにくくはなるものの、除湿・冷却量が大きくなってしまう。C点での除湿量だけを見ると、図9の場合よりも大きくなっている。従って、加湿器21での加湿量も多く必要となり、結果的に、冷却器20でのエンタルピ変化(Δh2:h3’−h1’)も加熱・加湿のエンタルピ変化(Δh1:h2−h1’)も大きく増加し、空調システムの消費電力量が非常に大きくなってしまう。
【0019】
また参考のために、図7の空調システムで低湿度(30℃30%rh)かつ顕熱負荷が大きくなった場合の空調状態を説明する。
図10は、図7に示す環境試験装置100の空調システムで低湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。
顕熱負荷が大きくなった場合、空気が空調用通路7に戻る際の空気は、前記したB点よりもより温度の高いB’点となっている。B’点は、B点に比べて温度が高い。C点での除湿量は、図8の場合(顕熱負荷が大きくない場合)と比べて大差はない。
【0020】
上記した考察に基づいて開発された請求項1に記載の発明は、冷却手段が配された空気調整空間と、試料体が配される試験空間とを有し、空気調整空間を通風環境にして空気調整空間と試験空間との間で空気を循環させ、試験空間を所望の環境に整える環境試験装置において、前記冷却手段は表面温度を低下させることができるものであり、通風環境下においてその表面で空気と熱交換して空気温度を低下させると共に空気中の水蒸気を凝縮して凝縮水を発生させることが可能であり、前記冷却手段で発生した凝縮水を通風環境にさらし、凝縮水を蒸発させる凝縮水蒸発装置を備え、目標環境が高湿度環境である場合に実施され凝縮水蒸発装置によって凝縮水を蒸発させる凝縮水蒸発運転モードと、目標環境が低湿度環境である場合に実施され凝縮水を蒸発させない通常運転モードとを行うことができ、前記冷却手段は2系統以上の冷却用熱交換器によって構成され、少なくとも2系統の冷却用熱交換器は上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器に区分され、凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させると共に下部側熱交換器を凝縮水蒸発装置として機能させ、主として上部側熱交換器の表面で発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴とする環境試験装置である。
【0021】
本発明の環境試験装置は、運転モードとして凝縮水蒸発運転モードと、通常運転モードとを備えている。凝縮水蒸発運転モードは、目標環境が高湿度である場合に適した運転モードであり、通常運転モードは、目標環境が低湿度である場合に適した運転モードである。
本発明の環境試験装置が採用する凝縮水蒸発運転モードは、冷却手段で発生した凝縮水を通風環境にさらし、凝縮水を蒸発させることを特徴としている。凝縮水蒸発運転モードでは、凝縮水を通風環境にさらすことによって空気中の水蒸気量を確保することができるので、加湿器による加湿量が少なくて足る。
また凝縮水の温度は、冷却手段の表面温度に近いので、気化した水蒸気の温度も低い。気化した水蒸気は、再度冷却手段の領域を通過するが、水蒸気の温度は低いものであるから、冷却手段に掛かる負担は小さい。
さらに通風によって凝縮水を蒸発させるので、凝縮水を気化させるためのエネルギーも小さい。
一方、目標環境が低湿度環境である場合に凝縮水蒸発運転モードで環境試験装置を運転すると、却って消費電力が増大する場合がある。本発明は、この様な事態に備えて、通常運転モードを備えている。
即ち低湿度環境で凝縮水蒸発運転モードで運転すると、空気の吸水能力が高いために、凝縮水の蒸発量が多く、目標の湿度まで低下させるために要する冷却手段の消費エネルギーが増大する。そのため凝縮水蒸発運転モードは、目標環境が低湿度環境である場合の運転モードとして不向きであり、通常運転モードで運転することが推奨される。
【0022】
前記した様に請求項1に記載の発明は、前記冷却手段は2系統以上の冷却用熱交換器によって構成され、少なくとも2系統の冷却用熱交換器は上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器に区分され、凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させると共に下部側熱交換器を凝縮水蒸発装置として機能させ、主として上部側熱交換器の表面で発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴の一つとしている。
【0023】
本発明では、冷却手段を2系統以上の冷却用熱交換器によって構成し、この冷却用熱交換器を高さ方向に差を設けて設置した。そして凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させることとした。その結果、上部側熱交換器の表面で水蒸気が凝縮する。そして発生した凝縮水は重力で降下して下部側熱交換器の表面に付着する。ここで凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させるので、下部側熱交換器は通気温度に近い温度となっている。そのため下部側熱交換器の表面温度は、凝縮水の温度よりも高く、且つ凝縮水は通風空間にさらされるので、容易に気化する。
【0024】
請求項に記載の発明は、下部側熱交換器は、表面にフィンを有することを特徴とする請求項に記載の環境試験装置である。
【0025】
本発明では、下部側熱交換器が凝縮水蒸発装置として機能する。そして凝縮水蒸発装置たる下部側熱交換器は、表面にフィンを有しているから、凝縮水と空気との接触機会が多く、凝縮水の気化が促進される。
【0026】
請求項3に記載の発明は、前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器は、一連の冷凍サイクルを構成する冷却装置の一部であり、前記冷却装置は、前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器の一次側流路と、圧縮機と、凝縮器及び膨張手段が環状に接続され、内部に相変化する冷媒を循環され、前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器は、並列に接続されていて前記下部側熱交換器への冷媒の流れを遮断する遮断弁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0027】
本発明の環境試験装置では、遮断弁を閉じることによって凝縮水蒸発運転モードでの運転が可能となる。
【0028】
請求項に記載の発明は、前記上部側熱交換器と前記下部側熱交換器とは分離独立したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0029】
本発明の環境試験装置は、上部側熱交換器と下部側熱交換器とが分離独立しているので、凝縮水蒸発運転モードの際に上部側熱交換器の冷熱が下部側熱交換器に伝わらず、凝縮水の気化を阻害しない。
【0030】
請求項5に記載の発明は、試験空間の目標環境によって運転モードが切り替えられ、目標環境が低湿度環境である場合には通常運転モードで運転され、目標環境が高湿度環境である場合に凝縮水蒸発運転モードで運転されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0031】
本発明の環境試験装置では、目標環境に応じて適切な運転モードで運転される。本発明において、低湿度環境と高湿度環境の差は相対的なものである。
【0032】
また上記した各発明と同様の作用効果を発揮する制御方法の発明は、通風空間に置かれた冷却手段によって所望空間の温度と湿度とを目標環境に一致させる空調システムの制御方法において、前記冷却手段は、上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器を有し、目標環境が低湿度環境である場合には主として下部側熱交換器又は下部側熱交換器と上部側熱交換器の双方を使用する通常運転モードで運転され、目標環境が高湿度環境である場合には、主として上部側熱交換器を使用する凝縮水蒸発運転モードで運転され、前記凝縮水蒸発運転モードにおいては上部側熱交換器の表面温度を低下し、下部側熱交換器の表面温度は前記所望空間から前記通風空間に吸い込まれる空気の温度に近い温度となり、前記凝縮水蒸発運転モードにおいては上部側熱交換器の表面で空気中の水蒸気を凝縮して凝縮水を発生させると共に、発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴とする空調システムの制御方法である。
【0033】
本発明の空調システムの制御方法によると、目標環境が低湿度環境である場合の消費電力が抑制される。
請求項7に記載の発明は、前記下部側熱交換器は表面にフィンを有するものであることを特徴とする請求項6に記載の空調システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の環境試験装置は、消費電力が低く、省エネルギーである。また本発明の空調システムの制御方法によると、消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の構成を示す概念図である。
図2図1の環境試験装置で採用する上部側熱交換器と下部側熱交換器の斜視図である。
図3図1に示す環境試験装置の空調システムで高湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。
図4図1に示す環境試験装置の空調システムで低湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。
図5】本発明の他の実施形態の環境試験装置の構成を示す概念図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態の環境試験装置の冷却器近傍の斜視図である。
図7】従来技術の環境試験装置の概念図である。
図8図7に示す環境試験装置の空調システムで低湿度の環境を作った場合の空調状態を空気線図上に示したものである。
図9図7に示す環境試験装置の空調システムで高湿度の環境を作った場合の空調状態を空気線図上に示したものである。
図10図7に示す環境試験装置の空調システムで低湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。
図11図7に示す環境試験装置の空調システムで高湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態の環境試験装置1は、冷却装置50に特徴があり、他の構成については従来技術の環境試験装置100と同一である。即ち本実施形態の環境試験装置1は、図1に示すように先に説明した環境試験装置100と同様に、筐体2内が試験室(試験空間)6と、空調用通路(空気調整空間)7とに区切られており、空調用通路7内に冷却器20、加湿器21、加熱器22、送風機25が配されている。環境試験装置1の空調システムは、試験室6内の環境を目標の温度及び湿度に調整するものであり、冷却装置50、加湿器21、加熱器22及び送風機25で構成され、冷却装置50、加湿器21、加熱器22を制御装置72から出力される信号によって制御するものである。
従って、従来技術の環境試験装置100と同一の部材については、同一の番号を付することによって重複した説明を省略する。
【0037】
前記した様に、環境試験装置1が従来技術と異なる点は、冷却装置50の構造と、運転モードを自動的に切り替える機能を持つ点である。
本実施形態で採用する冷却装置50は、蒸発器を2基備え、これが高さ方向に上下に配置されている。即ち冷却装置50は、蒸発器として、上部側熱交換器51と下部側熱交換器52を備えている。上部側熱交換器51と下部側熱交換器52とはそれぞれ別途独立している。また上部側熱交換器51と下部側熱交換器52は並列接続されており、圧縮機30等は共通するものの、冷媒の導入路は別系統である。
上部側熱交換器51と下部側熱交換器52の一次側はいずれも一連の管路(図示せず)であり、図2の様に冷媒導入口55、57と、冷媒排出口56、58とを有している。
そして管路の外面には、図2の様に冷却フィン60、61が設けられている。上部側熱交換器51と下部側熱交換器52とは上下に配置されており、上部側熱交換器51の真下の位置に下部側熱交換器52がある。
【0038】
即ち上部側熱交換器51は、一次側が一連の管路であり、冷媒導入口55と、冷媒排出口56が設けられている。上部側熱交換器51の一次側管には、多数の冷却フィン60が設けられている。冷却フィン60は、設置姿勢を基準として、垂直姿勢の板であり、各フィン60は平行に配置されている。
【0039】
下部側熱交換器52は、前記した上部側熱交換器51と同一の構造であり、一次側が一連の管路であり、冷媒導入口57と、冷媒排出口58が設けられている。下部側熱交換器52の一次側管には、多数の冷却フィン61が設けられている。冷却フィン61は、設置姿勢を基準として、垂直姿勢の板であり、各冷却フィン61は平行に配置されている。
そして下部側熱交換器52は、上部側熱交換器51の真下の位置に配されている。
【0040】
上部側熱交換器51と下部側熱交換器52の配管接続構造を見ると、図1の様に両者は並列に接続されている。即ち膨張手段32の下流側に分岐部62があり、上部分岐配管65と下部分岐配管66とに分かれている。そして一方の上部分岐配管65が、上部側熱交換器51の冷媒導入口55に接続されている。また他方の下部分岐配管66は、下部側熱交換器52の冷媒導入口57に接続されている。
上部分岐配管65及び下部分岐配管66には、それぞれ遮断弁70,71が設けられている。遮断弁70,71は電磁弁である。
【0041】
上部側熱交換器51の冷媒排出口56と、下部側熱交換器52の冷媒排出口58とはいずれも圧縮機30の吸入側に接続されている。
したがって、上部分岐配管65に接続された遮断弁70を開き、下部側熱交換器52に設けられた遮断弁71を閉じた状態で圧縮機30を起動すれば、冷媒は、上部分岐配管65だけに流れ、上部分岐配管65の表面が温度低下する。一方、下部側熱交換器52には冷媒が流れないので、下部側熱交換器52の表面温度は、試験室6から吸い込まれる空気の温度に近い温度となる。
【0042】
逆に下部側熱交換器52に設けられた遮断弁71を開き、上部分岐配管65に接続された遮断弁70を閉じた状態で、圧縮機30を起動すれば、冷媒は、下部側熱交換器52だけに流れ、下部側熱交換器52の表面の温度が低下する。一方、上部側熱交換器51には冷媒が流れないので、上部側熱交換器51の表面温度は、下部側熱交換器52を通過した空気の温度に近い温度となる。
【0043】
本実施形態についても室内温度検知手段15と室内湿度検知手段16の検知信号が、制御装置72に入力され、所定のプログラムで処理される。そして制御装置72から出力される信号によって、冷却装置50、加湿器21、加熱器22及び送風機25等が駆動される。
また本実施形態の環境試験装置1では、これに加えて、制御装置72によって遮断弁70,71が切り替えられる。
より具体的には、本実施形態の環境試験装置1では、目標環境の湿度に応じて、遮断弁70,71が自動的に切り替えられる。そして上部分岐配管65に接続された遮断弁70を開き、下部側熱交換器52に設けられた遮断弁71を閉じた状態での運転は、凝縮水蒸発運転モードでの運転となり、下部側熱交換器52に設けられた遮断弁71を開き、上部分岐配管65に接続された遮断弁70を閉じた状態での運転は、通常運転モードでの運転となる。
本実施形態の環境試験装置1では、目標環境の湿度が高い場合には、遮断弁71を閉じた状態となり、凝縮水蒸発運転モードで運転される。逆に目標環境の湿度が低い場合には、下部分岐配管66に設けられた遮断弁71を開き、上部分岐配管65に接続された遮断弁70を閉じた状態となり、通常運転モードで運転される。
【0044】
以下、各運転モードにおける挙動について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、下部側熱交換器52の上方に上部側熱交換器51を追加で設置した構成となっている。
また、下部側熱交換器52の入口には遮断弁71、上部側熱交換器51の入口には遮断弁70が設置されており、冷却・除湿をどちらの熱交換器51,52で行うかを選択する事ができるようになっている。
【0045】
そして目標環境の湿度が高い場合には、凝縮水蒸発運転モードで運転され、上部側熱交換器51を使用して冷却が行われる。上部側熱交換器51を使用して除湿冷却を行った場合、露点温度以下となっている上部側熱交換器51の冷却フィン60に結露することで、除湿が行われるが、この冷却フィン60に結露した凝縮水は、重力により下部側熱交換器52の冷却フィン61上に落下する。下部側熱交換器52の冷却フィン61は面積の広がりをもっているから、落下した凝縮水は冷却フィン61の表面に薄く広がる。
ここで、凝縮水蒸発運転モードで運転されている場合には、下部側熱交換器52に冷媒が流れておらず、冷却フィンの間は、通風が素通しされる状態となっている。前記した様に下部側熱交換器52は、冷却能力を持たないから、冷却フィン61の表面温度は循環空気温度とほぼ同じ温度となっている。また下部側熱交換器52は、通風環境下におかれている。そしてさらに凝縮水は、薄く広がっているから、通風との接触機会が多い。そのため落下した凝縮水は送風された空気と接触し、暖められ蒸発する。そのため上部側熱交換器51に導入される空気が加湿される。また凝縮水が蒸発する際における蒸発潜熱によりりから熱を奪うため、上部側熱交換器51に導入される空気が冷却される。
【0046】
気化した水蒸気は、再度上部側熱交換器51を通過することとなるが、凝縮水の温度は、上部側熱交換器51の表面温度に近いものであったから、水蒸気の温度は低く、上部側熱交換器51に掛かる負荷は小さい。
【0047】
これに対して目標環境の湿度が低い場合には、通常運転モードで運転され、下部側熱交換器52を使用して冷却が行われる。
通常運転モードで運転された場合は、下部側熱交換器52で冷却・除湿が行われ、冷却・除湿後の空気が、上部側熱交換器51に流れる。しかしながら、通常運転モードで運転されている場合には、上部側熱交換器51に冷媒が流れておらず、上部側熱交換器51は冷却機能を持たない。そのため上部側熱交換器51の冷却フィン60の間は、通風が素通しされる状態となっている。従って、通常運転モードで運転された場合は、前記した従来技術の環境試験装置100と同一の運転状態となる。
【0048】
次に、本実施形態の環境試験装置1の有効性を空気線図を参照しつつ説明する。
図3は凝縮水蒸発運転モードで運転された場合の空気線図であり、目標環境が高湿度環境(30℃80%rh)であり、且つ顕熱負荷が大きくなった場合を示している。
即ち、仮に下部側熱交換器52で除湿冷却を行った場合の蒸発器出口空気状態はC点となるが、上部側熱交換器51を使用すると、前記した様に、上部側熱交換器51から下部側熱交換器52へ落下した凝縮水による冷却・加湿により、蒸発器出口空気状態はC’点となる(このときの顕熱比は0・8〜1.0、図は0.9で記載)。従って、下部側熱交換器52で除湿冷却を行った場合と比較したすると、加湿器21での状態変化量(C点からD点に至る変化)が非常に少なくなり、冷却・除湿でのエンタルピ変化(Δh2)、加湿・除湿でのエンタルピ変化(Δh1)がともに小さくなり、消費電力量が大幅に低減される。
【0049】
凝縮水蒸発運転モードは、前記した様な目標環境が高湿環境である場合に適し、目標環境が低湿である場合には不向きである。
以下、この理由を説明する。
図4は凝縮水蒸発運転モードで運転された場合の空気線図であり、目標環境が低湿度環境(30℃30%rh)であり、且つ顕熱負荷が大きくなった場合を示している。
この場合、上部側熱交換器51から下部側熱交換器52へ落下した凝縮水による自然冷却・加湿(a点に至るライン)があるが故に、絶対湿度を制御点以下にするのには非常に大きな冷却・除湿量が必要となり、前記した図10に示す冷却器20で除湿・加湿を行った場合の低湿度環境(30℃30%rh)かつ顕熱負荷が大きくなった場合の状態変化と比較した場合、冷却・除湿でのエンタルピ変化(Δh2)、加湿・除湿でのエンタルピ変化(Δh1)ともに非常に大きくなり、消費電力量も大幅に増加する。
【0050】
以上の事実より、蒸発器を上部側熱交換器51と下部側熱交換器52に分離した場合には、高湿運転時では上部側熱交換器51で除湿・冷却を行ったほうが消費電力が小さく、低湿運転時では下部側熱交換器52で除湿・冷却を行ったほうが、空気の状態変化を小さく抑えることとなり、より効率的な運転状態となると言える。
【0051】
従って、本発明を実施する場合には、上部側熱交換器51で除湿・冷却を行ったほうが効率的である温湿度範囲と、下部側熱交換器52で除湿・冷却を行ったほうが効率的である温湿度範囲を予備実験で確認し、この情報を制御装置72へ入力しておき、設定温湿度によってどちらの熱交換器51,52で除湿冷却を行うかを決めておくことが推奨される。
【0052】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
本実施形態の環境試験装置1を使用して、所定の試料体を高湿度環境(30℃80%rh)に置く実験を行い、このときの許容可能な発熱負荷量と、発熱負荷最大時における消費電力量を測定した。その結果、許容可能な発熱負荷量が9.2KWであり、消費電力量は、6,1KWであった。
同様に、従来技術の環境試験装置100を使用して、所定の試料体を高湿度環境(30℃80%rh)に置く実験を行い、このときの許容可能な発熱負荷量と、発熱負荷最大時における消費電力量を測定した。
その結果、許容可能な発熱負荷量が5.4KWであり、消費電力量は、8,1KWであった。
即ち、本実施形態の環境試験装置1は、従来技術の環境試験装置100に比べて、許容可能な発熱負荷量が70パーセント向上しているにも係わらず、消費電力は、25パーセント低減している。
そのため、本実施形態の環境試験装置1は、能力が高く、且つ省エネルギーである。
【0053】
上記した実施形態では、凝縮水蒸発運転モードによる運転と、通常運転モードによる運転の切り替えを遮断弁70,71の切り替えによって行ったが、本発明はこの構成に限定されるものでない。例えば図5に示す環境試験装置の様に、冷却装置を2基搭載し、上部側熱交換器51を含む冷却回路と、下部側熱交換器52を含む冷却回路を独立させてもよい。
【0054】
上記した実施形態では、通常運転モードの際に下部側熱交換器52だけを動作させたが、通常運転モードの際に下部側熱交換器52に加えて上部側熱交換器51を使用してもよい。
【0055】
また上記した実施形態は、いずれも2基の熱交換器51,52を切り替えることによって、下方に配された下部側熱交換器52を凝縮水蒸発装置として機能させた。しかし本発明は、この構成に限定されるものではなく、凝縮水蒸発装置を別途設けてもよい。図6は、凝縮水蒸発装置80を別途設けた例を示している。
図6に示す構成では、冷却用の熱交換器81は、一台だけであり、その下に凝縮水蒸発装置80が設けられている。凝縮水蒸発装置80は単にフィンが多数設けられたものであり、冷却機能は持たない。
凝縮水蒸発装置80は、図示しない駆動装置で配置位置を変えることが可能なものであってもよい。その場合、凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には熱交換器81の下に配され、通常運転モードで運転する場合には、別の位置に移動される。
【符号の説明】
【0056】
1 環境試験装置
6 試験室(試験空間)
7 空調用通路(空気調整空間)
20 冷却器
21 加湿器
22 加熱器
25 送風機
50 冷却装置
51 上部側熱交換器
52 下部側熱交換器
70,71 遮断弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11