【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明者らは、目標環境が低湿度環境である場合と、高湿度環境である場合に分けてエネルギーの無駄が無いかを検証した。
その結果、従来技術の環境試験装置100は、目標環境が高湿度環境である場合に、エネルギーの無駄が多いことが判明した。即ち従来技術の環境試験装置100は、試験室6内を通過して空調用通路7に戻された空気を冷却器20の表面に接触させ、空気を低温の冷却器20表面で冷やすことによって空気の温度を低下させる。ここで、目標環境が高湿度環境であるならば、空調用通路7に戻って来た空気も一般に高湿度であり、冷却器20の表面に触れることによって含まれた水蒸気が凝縮する。そのため冷却器20を通過した空気の絶対湿度は、目標環境の絶対湿度よりも低いものとなってしまう。そのため従来技術の環境試験装置100では、冷却器20を通過した空気に加湿器21で水蒸気を混入し、空気の湿度を調整している。
【0013】
この様に、従来技術の環境試験装置100で高湿度環境を作る場合、冷却器20の表面に於ける水蒸気の凝縮量が多く、水蒸気の凝縮のためにエネルギーを無駄に消費している。
また冷却器20において、過度に含有水蒸気が除去されてしまうため、その後に加湿することを余儀なくされ、加湿のために余計にエネルギーを消費することとなる。
【0014】
以下、このメカニズムをさらに詳細に説明する。
図8は、
図7に示す環境試験装置100の空調システムで低湿度の環境を作った場合の空調状態を空気線図上に示したものである。
図8における目標環境は、温度が摂氏30度、相対湿度が30パーセントである。
環境試験装置100では、目標の温度(摂氏30度)であって目標の低湿度(30%rh)に調温調湿された空気が送風機25から試験室6へ送られる(
図7、
図8のA点)。この空気が試験室6を経由して再び空調用通路7に戻るときには、試験室6において試料体からの発熱や室外からの水蒸気の進入の影響を受け、点Bへ状態が変化している。即ち試験室6内の環境は低湿度の環境であり、外気よりも湿度が低いから、外気から試験室6側に水蒸気が進入し、絶対湿度が上昇する。また試験室6に配された試料体が発熱することにより、環境温度が上昇する。そのため温度及び湿度が目標温度よりも幾分高くなった状態の空気が空調用通路7に戻る。従って
図8の線分A−Bは、若干、上向きに傾く。
【0015】
空調用通路7へ戻った空気は冷却器20を通過するときに冷却・除湿される。しかしながら、環境試験装置100の目標環境は、低湿度環境であるから、A点からB点に状態変化していると言えどもその湿度は低い。そのため空調用通路7へ戻った空気の絶対湿度が低く、その露点が低いため顕熱比の大きい冷却・除湿(約0.8〜1.0、
図8は0.9で記載)が行われ、冷却器20の出口ではC点の状態となっている。即ち目標の温度・湿度よりもわずかに温度・湿度が低い状態となって冷却器20を通過する。
そして従来技術の環境試験装置100では、この空気を再び目標環境の温度及び湿度たるA点にするため、加湿器21での加湿と、加熱器22での加熱とを行う。それぞれでの状態変化を分けて書いた場合、加湿器21では熱水分比(一般的な値640)に沿った加熱・加湿の状態変化となり、目標環境と同じ絶対湿度であるD点まで状態変化する。また、最後に加熱器22で加熱され目標環境たるA点の状態となる。
【0016】
一方、
図9は、
図7に示す環境試験装置100の空調システムで高湿度の環境を作った場合の空調状態を空気線図上に示したものである。
図9における目標環境は、温度が摂氏30度、相対湿度が80パーセントである。
環境試験装置100では、目標の温度(摂氏30度)であって目標の高湿度(80%rh)に調温調湿された空気が送風機25から試験室6へ送られる(
図7、
図9:A点)。この空気が試験室6を経由して再び空調用通路7に戻るときには、試験室6で試料体からの発熱や室外への水蒸気の放散の影響により、B点へ状態が変化している。即ち試験室6内の環境は高湿度の環境であり、外気よりも湿度が高いから、試験室6側から外気に向かって水蒸気が放散し、絶対湿度が低下する。また試験室6に配された試料体が発熱することにより、環境温度が上昇する。そのため温度は目標温度よりも幾分高く、湿度(絶対湿度)は幾分低くなった状態の空気が空調用通路7に戻る。従って
図8の線分A−Bは、若干、下向きに傾く。
【0017】
空調用通路7へ戻った空気は冷却器20を通過するときに除湿冷却される。ここで、環境試験装置100の目標環境は、高湿度環境であるから、そもそもその湿度が高く、試験室6を経由した空気は高い湿度となっている。そのためB点の湿度は高い。そのため空調用通路7へ戻った空気の絶対湿度が高く、その露点が高いため顕熱比の小さい除湿冷却(約0.1〜0.4
図9では0.35で記載)が行われる。そして冷却器20の出口ではC点の状態となっている。即ち目標の温度・湿度よりも温度・湿度が低い状態となって冷却器20を通過する。
そして従来技術の環境試験装置100では、この空気を再び目標環境たるA点にするため、加湿器21での加湿と、加熱器22での加熱とを行う。それぞれでの状態変化を分けて書いた場合、加湿器21では熱水分比(一般的な値640)に沿った加熱・加湿の状態変化となり、目標環境と同じ絶対湿度であるD点まで状態変化する。また、最後に加熱器22で加熱され目標環境たるA点の状態となる。
【0018】
次に目標環境が低湿度環境である場合と、高湿度環境である場合における消費電力を比較する。空調システムの消費電力は、冷却器20でのエンタルピ変化(Δh2:h3−h1 Δはデルタ)が大きくなる程、冷却装置26の仕事量が大きくなり消費電力量が大きくなる。また加熱・加湿のエンタルピ変化(Δh1:h2−h1)が大きい場合も同様に空調システムの消費電力量が大きくなる。
この観点で、
図8と
図9とを比較すると、目標環境が高湿度環境である場合には、顕熱比の小さい除湿冷却が行われるので、冷却器20を通過する際のエンタルピ変化(Δh2:h3−h1)が大きく、低湿度の制御時よりも消費電力量が多い。
また目標環境が高湿度環境である場合には、調温・調湿のうち、加湿器21での加湿量が多く必要となるため、Δh1が大きくなり、低湿度の制御時よりも消費電量が多くなる。
さらに
図7の空調システムで高湿度(30℃80%rh)かつ顕熱負荷が大きくなった場合は、より大きな電力消費を強いられる。
図11は、
図7に示す環境試験装置100の空調システムで高湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。
図11における目標環境は、温度が摂氏30度、相対湿度が80パーセントである。
顕熱負荷が大きくなった場合、空気が空調用通路7に戻る際の空気は、前記したB点よりもより温度の高いB’点となっている。B’点は、B点に比べて温度が高く、相対湿度が低くなるため蒸発器での除湿・冷却の顕熱比は多少大きくなり(
図11では0.45で記載)除湿しにくくはなるものの、除湿・冷却量が大きくなってしまう。C点での除湿量だけを見ると、
図9の場合よりも大きくなっている。従って、加湿器21での加湿量も多く必要となり、結果的に、冷却器20でのエンタルピ変化(Δh2:h3’−h1’)も加熱・加湿のエンタルピ変化(Δh1:h2−h1’)も大きく増加し、空調システムの消費電力量が非常に大きくなってしまう。
【0019】
また参考のために、
図7の空調システムで低湿度(30℃30%rh)かつ顕熱負荷が大きくなった場合の空調状態を説明する。
図10は、
図7に示す環境試験装置100の空調システムで低湿度の環境を作った場合であってさらに顕熱負荷が大きくなった場合における空調状態を空気線図上に示したものである。
顕熱負荷が大きくなった場合、空気が空調用通路7に戻る際の空気は、前記したB点よりもより温度の高いB’点となっている。B’点は、B点に比べて温度が高い。C点での除湿量は、
図8の場合(顕熱負荷が大きくない場合)と比べて大差はない。
【0020】
上記した考察に基づいて開発された請求項1に記載の発明は、冷却手段が配された空気調整空間と、試料体が配される試験空間とを有し、空気調整空間を通風環境にして空気調整空間と試験空間との間で空気を循環させ、試験空間を所望の環境に整える環境試験装置において、前記冷却手段は表面温度を低下させることができるものであり、通風環境下においてその表面で空気と熱交換して空気温度を低下させると共に空気中の水蒸気を凝縮して凝縮水を発生させることが可能であり、前記冷却手段で発生した凝縮水を通風環境にさらし、凝縮水を蒸発させる凝縮水蒸発装置を備え、
目標環境が高湿度環境である場合に実施され凝縮水蒸発装置によって凝縮水を蒸発させる凝縮水蒸発運転モードと、
目標環境が低湿度環境である場合に実施され凝縮水を蒸発させない通常運転モードとを行うことができ、
前記冷却手段は2系統以上の冷却用熱交換器によって構成され、少なくとも2系統の冷却用熱交換器は上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器に区分され、凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させると共に下部側熱交換器を凝縮水蒸発装置として機能させ、主として上部側熱交換器の表面で発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴とする環境試験装置である。
【0021】
本発明の環境試験装置は、運転モードとして凝縮水蒸発運転モードと、通常運転モードとを備えている。凝縮水蒸発運転モードは、目標環境が高湿度である場合に適した運転モードであり、通常運転モードは、目標環境が低湿度である場合に適した運転モードである。
本発明の環境試験装置が採用する凝縮水蒸発運転モードは、冷却手段で発生した凝縮水を通風環境にさらし、凝縮水を蒸発させることを特徴としている。凝縮水蒸発運転モードでは、凝縮水を通風環境にさらすことによって空気中の水蒸気量を確保することができるので、加湿器による加湿量が少なくて足る。
また凝縮水の温度は、冷却手段の表面温度に近いので、気化した水蒸気の温度も低い。気化した水蒸気は、再度冷却手段の領域を通過するが、水蒸気の温度は低いものであるから、冷却手段に掛かる負担は小さい。
さらに通風によって凝縮水を蒸発させるので、凝縮水を気化させるためのエネルギーも小さい。
一方、目標環境が低湿度環境である場合に凝縮水蒸発運転モードで環境試験装置を運転すると、却って消費電力が増大する場合がある。本発明は、この様な事態に備えて、通常運転モードを備えている。
即ち低湿度環境で凝縮水蒸発運転モードで運転すると、空気の吸水能力が高いために、凝縮水の蒸発量が多く、目標の湿度まで低下させるために要する冷却手段の消費エネルギーが増大する。そのため凝縮水蒸発運転モードは、目標環境が低湿度環境である場合の運転モードとして不向きであり、通常運転モードで運転することが推奨される。
【0022】
前記した様に請求項1に記載の発明は、前記冷却手段は2系統以上の冷却用熱交換器によって構成され、少なくとも2系統の冷却用熱交換器は上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器に区分され、凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させると共に下部側熱交換器を凝縮水蒸発装置として機能させ、主として上部側熱交換器の表面で発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴
の一つとしている。
【0023】
本発明では、冷却手段を2系統以上の冷却用熱交換器によって構成し、この冷却用熱交換器を高さ方向に差を設けて設置した。そして凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させることとした。その結果、上部側熱交換器の表面で水蒸気が凝縮する。そして発生した凝縮水は重力で降下して下部側熱交換器の表面に付着する。ここで凝縮水蒸発運転モードで運転する場合には主として上部側熱交換器によって試験空間の温度を低下させるので、下部側熱交換器は通気温度に近い温度となっている。そのため下部側熱交換器の表面温度は、凝縮水の温度よりも高く、且つ凝縮水は通風空間にさらされるので、容易に気化する。
【0024】
請求項
2に記載の発明は、下部側熱交換器は、表面にフィンを有することを特徴とする請求項
1に記載の環境試験装置である。
【0025】
本発明では、下部側熱交換器が凝縮水蒸発装置として機能する。そして凝縮水蒸発装置たる下部側熱交換器は、表面にフィンを有しているから、凝縮水と空気との接触機会が多く、凝縮水の気化が促進される。
【0026】
請求項3に記載の発明は、前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器は、一連の冷凍サイクルを構成する冷却装置の一部であり、前記冷却装置は、前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器の一次側流路と、圧縮機と、凝縮器及び膨張手段が環状に接続され、内部に相変化する冷媒を循環され、前記上部側熱交換器及び前記下部側熱交換器は、並列に接続されていて前記下部側熱交換器への冷媒の流れを遮断する遮断弁が設けられていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の環境試験装置である。
【0027】
本発明の環境試験装置では、遮断弁を閉じることによって凝縮水蒸発運転モードでの運転が可能となる。
【0028】
請求項
4に記載の発明は、前記上部側熱交換器と前記下部側熱交換器とは分離独立したものであることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0029】
本発明の環境試験装置は、上部側熱交換器と下部側熱交換器とが分離独立しているので、凝縮水蒸発運転モードの際に上部側熱交換器の冷熱が下部側熱交換器に伝わらず、凝縮水の気化を阻害しない。
【0030】
請求項5に記載の発明は、試験空間の目標環境によって運転モードが切り替えられ、目標環境が低湿度環境である場合には通常運転モードで運転され、目標環境が高湿度環境である場合に凝縮水蒸発運転モードで運転されることを特徴とする請求項
1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0031】
本発明の環境試験装置では、目標環境に応じて適切な運転モードで運転される。本発明において、低湿度環境と高湿度環境の差は相対的なものである。
【0032】
また上記した各発明と同様の作用効果を発揮する制御方法の発明は、通風空間に置かれた冷却手段によって所望空間の温度と湿度とを目標環境に一致させる空調システムの制御方法において、前記冷却手段は、上部側に位置する上部側熱交換器と下部側に位置する下部側熱交換器を有し、目標環境が低湿度環境である場合には主として下部側熱交換器又は下部側熱交換器と上部側熱交換器の双方を使用する通常運転モードで運転され、目標環境が高湿度環境である場合には、主として上部側熱交換器を使用する凝縮水蒸発運転モードで運転され、
前記凝縮水蒸発運転モードにおいては上部側熱交換器の表面温度を低下し、下部側熱交換器の表面温度は前記所望空間から前記通風空間に吸い込まれる空気の温度に近い温度となり、前記凝縮水蒸発運転モードにおいては上部側熱交換器の表面で空気中の水蒸気を凝縮して凝縮水を発生させると共に、発生した凝縮水を重力で降下させて下部側熱交換器の表面に付着させ、下部側熱交換器の表面で凝縮水を通風環境にさらして蒸発させることを特徴とする空調システムの制御方法である。
【0033】
本発明の空調システムの制御方法によると、目標環境が低湿度環境である場合の消費電力が抑制される。
請求項7に記載の発明は、前記下部側熱交換器は表面にフィンを有するものであることを特徴とする請求項6に記載の空調システムの制御方法である。