【実施例】
【0021】
実施例1(炭素マイクロ繊維網の製造)
6μmから7μmの直径を有するPANの酸化繊維(SHINKONG SYNTHETIC FIBER社により市販されている)にニードルパンチを施して不織布とした。不織布の厚さは3mm、坪量は300g/m
2であった。この不織布を窒素下、加熱速度10℃/分で1500℃まで加熱し、これにより不織布の酸化繊維を炭化させて炭素マイクロ繊維網を形成した。炭素マイクロ繊維網の表面抵抗は299mΩ/□、体積抵抗は7mΩ・cm、導電率は133S/cm、耐圧性(pressure durability)は100kg/cm
2、細孔径分布は3μmから12μmであった。
【0022】
実施例2(炭素マイクロ繊維網の製造)
6μmから7μmの直径を有するPANの酸化繊維(SHINKONG SYNTHETIC FIBER社により市販されている)にニードルパンチを施して不織布とした。不織布の厚さは3mm、坪量は300g/m
2であった。この不織布を熱プレスにより薄くして、厚さ1.5mmのより緻密な不織布とした。薄くされた不織布を窒素下、加熱速度10℃/分で1500℃まで加熱し、これにより薄くされた不織布の酸化繊維を炭化させて炭素マイクロ繊維網を形成した。炭素マイクロ繊維網の表面抵抗は246mΩ/□、体積抵抗は6mΩ・cm、導電率は162S/cm、耐圧性は100kg/cm
2、細孔径分布は3μmから10μmであった。炭素マイクロ繊維網の厚さは約300±10μmであった。
【0023】
実施例3(炭素ナノ繊維網の製造)
ポリアクリロニトリル(Tong-Hwa Synthetic Fiber社により市販されている)13gをジメチルアセトアミド(DMAc)87g中に溶解してポリアクリロニトリル溶液を作製した。このポリアクリロニトリル溶液を、印加電圧39.5kVで静電紡糸により紡糸し、ポリマーナノ繊維網を形成させた。このポリマーナノ繊維の直径は200nmから700nmであった。ポリマーナノ繊維網を酸素下、280℃の温度で180分間酸化し、酸化ナノ繊維網を得た。この酸化ナノ繊維網を窒素下、加熱速度10℃/分で1500℃まで加熱して炭化させた。これにより酸化ナノ繊維は炭化され、炭素ナノ繊維網が形成された。炭素ナノ繊維網の厚さは38μmから44μm、表面抵抗は9Ω/cm
2、体積抵抗は0.05Ω・cm、導電率は13S/cm、耐圧性は10kg/cm
2、細孔系分布は1μmから2μmであった。実施例2の薄くされた炭素マイクロ繊維網に比べ、実施例3の炭素ナノ繊維網は、体積抵抗が著しく低く、機械的強度および耐圧性がより低かった。
【0024】
実施例4(炭素ナノ繊維網および炭素マイクロ繊維網の複合構造の製造)
6μmから7μmの直径を有するPANの酸化繊維(SHINKONG SYNTHETIC FIBER社により市販されている)にニードルパンチを施して不織布とした。不織布の厚さは3mm、坪量は300g/m
2であった。この不織布を熱プレスにより薄くして、厚さ1.5mmのより緻密な不織布とした。
【0025】
ポリアクリロニトリル(Tong-Hwa Synthetic Fiber社により市販されている)13gをジメチルアセトアミド(DMAc)87g中に溶解してポリアクリロニトリル溶液を作製した。このポリアクリロニトリル溶液を、印加電圧39.5kVで静電紡糸により紡糸し、ポリマーナノ繊維網を形成させた。このポリマーナノ繊維の直径は200nmから700nmであった。ポリマーナノ繊維網を酸素下、270℃の温度で180分間酸化させ、酸化ナノ繊維網を得た。この酸化ナノ繊維網の厚さは59μmから64μmであった。
【0026】
酸化ナノ繊維網および薄くされた不織布を積層し、そしてその後、フェノール樹脂中に含浸した。この積層構造を酸素下、200℃の温度で加熱して、フェノール樹脂を酸化させた。この酸化積層構造を窒素下、加熱速度10℃/分で1500℃まで加熱し、これによって酸化ナノ繊維網、不織布および酸化フェノール樹脂を炭化させ、炭素複合構造を形成させた。炭素ナノ繊維網の厚さは38μmから44μm、炭素マイクロ繊維網の厚さは約300±10μmであった。炭素複合構造の表面抵抗は213mΩ/cm
2、体積抵抗は5mΩ・cm、導電率は190S/cm、耐圧性は100kg/cm
2、細孔径分布は1μmから1.5μmであった。
図2の断面SEM写真に示されるように、炭素ナノ繊維網21および炭素マイクロ繊維網23は積層され炭素複合構造20が形成された。
【0027】
実施例4の2層からなる炭素複合構造は、実施例3の単層炭素ナノ繊維網または実施例2の単層炭素マイクロ繊維網と比較してより高い導電率を有していた。実施例4の2層からなる炭素複合構造の細孔径分布は、実施例3の単層炭素ナノ繊維網に比べてより低いものであった。
【0028】
実施例5(燃料電池試験)
実施例1から4の試料を5cm×5cmのサイズにカットし、そしてその後、触媒被覆膜(catalyst coated membrane、CCM、Dupont社から市販されているE71913)と組み合わせて3層からなる膜/電極接合体(MEA)を作製した。これら接合体を燃料電池試験モジュール中に封入した。テフロン(登録商標)ガスケットによりその気密性を確認した後、燃料電池の試験を行った。
【0029】
アノードの燃料(1M メタノール)の流量は1.83stpm、およびカソードのガス(O
2)の流量は300cc/minとした。試験温度は60℃に設定した。燃料電池に0.4Vを印加し、その電流密度およびメタノール遮断能(methanol-blocking ability)を測定した。実施例1の試料を使用した燃料電池の電流密度は55mA/cm
2であり、メタノール遮断能は0.577Vであった。実施例2の試料を使用した燃料電池の電流密度は57mA/cm
2であり、メタノール遮断能は0.584Vであった。実施例3の試料を使用した燃料電池は耐圧性が不十分であったため、測定は不可能であった。実施例4の試料を使用した燃料電池の電流密度は60mA/cm
2であり、メタノール遮断能は0.594Vであった。このように、実施例4の炭素複合構造を使用した燃料電池は、実施例1〜3の単層からなる炭素ナノ繊維網または炭素マイクロ繊維網を使用した燃料電池と比較して、より高い電流密度およびより高いメタノール遮断能を有していた。
【0030】
一実施形態では、
図1に示されるように、炭素複合構造は燃料電池のガス拡散層15とすることができる。
図1において、プロトン伝導膜11は、2つの触媒層13、2つのガス拡散層15、2つのバイポーラプレート17、2つの電流コレクタ18、および2つのエンドプレート19の間に挟みこまれている。
【0031】
開示された実施形態に各種修飾および変更を加えてもよいことは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は例示的なものと見なされるように意図されており、本発明の開示の真の範囲は以下のクレームおよびそれらの均等物により示される。