特許第5777611号(P5777611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777611
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】透明導電性基材
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20150820BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150820BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20150820BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20150820BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20150820BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   C23C14/06 P
   B32B9/00 A
   B32B3/10
   B32B7/02 104
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-514823(P2012-514823)
(86)(22)【出願日】2011年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2011060869
(87)【国際公開番号】WO2011142392
(87)【国際公開日】20111117
【審査請求日】2014年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2010-109960(P2010-109960)
(32)【優先日】2010年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597051757
【氏名又は名称】名阪真空工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河添 昭造
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−27561(JP,A)
【文献】 特開昭63−89656(JP,A)
【文献】 特開昭61−205925(JP,A)
【文献】 特開昭61−227945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 3/10
B32B 7/02
B32B 9/00
C23C 14/06
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面又は両面に透明導電性薄膜層、透明金属酸化物層をこの順で積層した透明導電性基材であり、該透明金属酸化物層が表裏面に貫通する多数の微細空孔を有し、該空孔の孔径が該透明導電性薄膜層と接する面より反対側の面の方が大きいことを特徴とする透明導電性基材。
【請求項2】
前記透明金属酸化物層の前記透明導電性薄膜層と接していない面における平均孔径が100〜1000 nmであることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性基材。
【請求項3】
前記透明金属酸化物層の前記透明導電性薄膜層と接していない面における表面空孔率が5〜90%であることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性基材。
【請求項4】
更に前記透明導電性薄膜層の上に金属電極を積層した、請求項1に記載の透明導電性基材。
【請求項5】
請求項1に記載の透明導電性基材を備えたタッチパネル。
【請求項6】
請求項1に記載の透明導電性基材を備えた太陽電池。
【請求項7】
請求項1に記載の透明導電性基材を備えたヒーター。
【請求項8】
請求項1に記載の透明導電性基材を備えた電磁波/静電シールド用基材。
【請求項9】
請求項1に記載の透明導電性基材の製造方法であって、前記透明導電性薄膜層の表面に前記透明金属酸化物層を斜め蒸着法によって形成することを特徴とする、透明導電性基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明導電性基材、及び該透明導電性基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基板上に透明な金属酸化物導電層(ITO、ZnOなど)を形成した透明導電性基材は、透明で導電性がある事により、タッチパネル、太陽電池、電磁波/静電気シールド、紫外/赤外線シールド等の用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、従来品には次の欠点があった。
1)金属酸化物導電層面の可視光の光反射量が大きく透明性が悪い。
2)金属酸化物導電層は近紫外線近辺の光を吸収するため光波長<450 nmでの光波長の透過率が減少し、黄色に着色する。
上記1)及び2)により金属酸化物導電層をパターンエッチングして使用する場合、パターンが有る部分と無い部分の差が明確に認識出来るため、この改良も要求されていた。
3)ITO膜が薄膜のため搬送時、加工時及び使用時に擦れによるキズが発生し、導電性劣化、断線、外観劣化等の不良が発生していた。
4)ITO膜上は水の濡れ性が悪く、ITO膜上への印刷、塗工、接着剤等の接着性の改良が課題であり、膜表面の水の濡れ性の向上(水の接触角を減少)が要求されていた。
【0004】
これらの欠点を改良する目的でITO膜面上にITOより光の屈折率の小さい透明な層(SiO2、Al2O3、透明樹脂等)を形成した物が提案されていた(例えば、特許文献1及び2)。
【0005】
特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に高周波スパッタエッチング処理を施したのちに、透明な導電性薄膜を形成し、ついでこの薄膜上に膜厚100Å以上の透明な誘電体薄膜を形成することを特徴とする透明導電性フィルムの製造法が記載され、誘電性薄膜の形成により耐擦傷性の向上と透明性の改善が図られている。
【0006】
特許文献2には、厚さが2〜120μmの透明なフィルム基材の一方の面に透明な導電性薄膜とさらにこの上に透明な誘電体薄膜を形成し、他方の面に透明な粘着剤層を介して透明基体を貼り合わせてなる透明導電性積層体が記載され、誘電体薄膜の形成により透明性及び耐擦傷性が向上し、打点特性の改善も図られている。
【0007】
このような層の形成により上記欠点を改善できたものの、透明な誘電体薄膜が電気絶縁層である事により、金属酸化物導電層と、誘電体薄膜層上に設けた電極(導電ペースト、金属層等)間の導電性が非常に悪く導電性も不安定であった。また金属酸化物導電層(ITO)膜のパターンエッチングが必要な場合、上記絶縁層があるため困難であった。
【0008】
これらのことにより、金属酸化物導電層に誘電体薄膜層を設けた透明導電性基材は、タッチパネルや太陽電池のように、ITO膜のエッチング及びリード用電極が必要な用途には不向きで用途が限定されていた。
【0009】
特許文献3には、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する平均孔径が0.1 nm〜10μmの超微細孔を有することを特徴とする無機質微孔膜が記載され、この無機質微孔膜は無機質材料を斜め蒸着することにより製造することが記載されている。そして、この無機質微孔膜の用途としては、分離膜、偏光膜、触媒担持フィルム、着色フィルム等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−27617号公報
【特許文献2】特開平2−213006号公報
【特許文献3】特開平8−27561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ITO等の透明導電性薄膜層と金属電極間の導電性が高い上に、透明性、耐擦傷性、及び水の濡れ性に優れ、エッチングも可能な透明導電性基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、透明導電性薄膜層上に微細な表裏面を貫通する孔を空けた透明金属酸化物層を設けることにより、透明導電性薄膜層と透明金属酸化物層上の金属電極間の導電性を、透明性を落とすことなく大幅に上げることができるという知見を得た。
【0013】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の透明導電性基材、透明導電性基材の製造方法等を提供するものである。
【0014】
項1.基材の片面又は両面に透明導電性薄膜層、透明金属酸化物層をこの順で積層した透明導電性基材であり、該透明金属酸化物層が表裏面に貫通する多数の微細空孔を有し、該空孔の孔径が該透明導電性薄膜層と接する面より反対側の面の方が大きいことを特徴とする透明導電性基材。
【0015】
項2.前記透明金属酸化物層の前記透明導電性薄膜層と接していない面における平均孔径が100〜1000 nmであることを特徴とする、項1に記載の透明導電性基材。
【0016】
項3.前記透明金属酸化物層の前記透明導電性薄膜層と接していない面における表面空孔率が5〜90%であることを特徴とする、項1又は2に記載の透明導電性基材。
【0017】
項4.更に前記透明導電性薄膜層の上に金属電極を積層した、項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電性基材。
【0018】
項5.項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えたタッチパネル。
【0019】
項6.項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた太陽電池用電極。
【0020】
項7.項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えたヒーター。
【0021】
項8.項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた電磁波/静電シールド用基材。
【0022】
項9.項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電性基材の製造方法であって、前記透明導電性薄膜層の表面に前記透明金属酸化物層を斜め蒸着法によって形成することを特徴とする、透明導電性基材の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の透明導電性基材は、透明導電性薄膜層と金属電極間の導電性が高い上に、透明性、耐擦傷性、及び水の濡れ性に優れ、エッチングも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の透明導電性基材の断面図である。
図2】本発明の透明金属酸化物層の拡大した断面図である。
図3】本発明の透明金属酸化物層の上面図である。
図4】本発明の透明金属酸化物層の拡大した上面図である。
図5】静電容量方式タッチパネルの一例の断面を示す模式図である。
図6】投影静電容量方式タッチパネルの一例を示す模式図である。
図7】本発明の透明導電性基材の製法例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の透明導電性基材及び透明導電性基材の製造方法について詳細に説明する。
【0026】
透明導電性基材
本発明の透明導電性基材は、基材の片面又は両面に透明導電性薄膜層、透明金属酸化物層をこの順で積層した透明導電性基材であり、該透明金属酸化物層が表裏面に貫通する多数の微細空孔を有することを特徴とする。
【0027】
本発明の透明導電性基材の一例を図1に示す。
【0028】
(基材)
本発明において基材としては、ガラスや透明性を有する各種のプラスチックフィルム及びシート(板)を使用でき、プラスチックフィルム及びシートとしては、例えば樹脂成分としてポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等を含むものが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルが特に好ましく、ポリエステルの中でもポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0029】
基材の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、フィルムの場合は通常6〜400μm、好ましくは20〜200μm程度であり、シート(板)状の場合は通常厚み400μm〜5 mm程度である。
【0030】
透明導電性薄膜の密着性を向上させるため、基材上に透明導電性薄膜層を形成する前に予備処理として、基材表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施しても良い。また、基材の片面又は両面にハードコート層を形成したものであっても良い。透明導電性薄膜層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、洗浄化しても良い。
【0031】
(透明導電性薄膜層)
透明導電性薄膜の材料は、透明性と導電性を有しているものであれば特に限定されないが、例えば、酸化錫を含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0032】
透明導電性薄膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの従来公知の技術を使用することができる。
【0033】
透明導電性薄膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常5〜2000 nm、好ましくは10〜1000 nmである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。
【0034】
また、透明金属酸化物層の密着性を向上させるため、透明導電性薄膜層上に透明金属酸化物層を形成する前に予備処理として、透明導電性薄膜表面にプラズマ処理等を施しても良い。
【0035】
(透明金属酸化物層)
本発明の透明金属酸化物層は表裏面に貫通する多数の微細空孔を有することを特徴としている。
【0036】
透明導電性薄膜層に接する面(以下、裏面ともいう。図1の3b)の微細空孔の平均孔径は10nm〜200 nm、好ましくは50 nm〜100 nmであり、透明導電性薄膜層と接していない面(以下、表面ともいう。図1の3a)の微細空孔の平均孔径は100 nm〜1000 nm、好ましくは350 nm〜700 nmである。図2に示すように微細空孔の孔径が裏面より表面の方が大きいことが好ましく、これには表裏面で略同径のものは含まれない。これは、略同径で貫通する微細空孔とするためには、斜め蒸着法で形成する場合、スリット等で蒸着入射角を狭く限定し、蒸着面積を小さくする必要があり、膜形成速度が遅く、生産性が悪いこと、及び略同径で貫通する微細空孔とした場合、孔径が大きくなるにつれて透明導電性薄膜と透明金属酸化物層の接触面積が少ないため密着力が弱くなるという理由からである。表面の平均孔径は、裏面の平均孔径の通常3〜70倍、好ましくは7〜15倍、より好ましくは7〜10倍である。
【0037】
微細空孔は、図3及び4に示すように、細長い形状を有し、通常、TD方向(幅方向)の孔径kがMD方向(長手方向)の孔径tより長い形状をしている。この場合、上記平均孔径は、TD方向の孔径kの平均値を意味している。
【0038】
本発明の透明金属酸化物層の表面の表面空孔率は、〔孔面積/透明金属酸化物層の表面積〕×100(%)として求めることができ、表面の表面空孔率は、通常5〜90%、好ましくは40〜90%の範囲で適宜設定することができる。
【0039】
透明金属酸化物層の表面における微細空孔の個数としては、通常4〜10個/0.5μm角、好ましくは5〜7個/0.5μm角であればよいが、特にこの範囲に限定されない。
【0040】
また、透明金属酸化物層の厚さは、通常50 nm〜300 nm、好ましくは75 nm〜120 nmの範囲であればよい。
【0041】
透明金属酸化物層の材質としては、微細空孔を有する透明な金属酸化物の層を形成できるものであればよく、例えば、TiO2、Ta2O5、ZrO2、SiO、SiO2、Al2O3、SnO2、In2O3、MgO、MoO3などが挙げられるが、透明金属酸化物層の光の屈折率n1が透明導電性薄膜層の光の屈折率n2より小さくなるもの、例えばMoO3、SiO、SiO2、Al2 O3等が透過率向上効果もあり好ましい。これらの1種を単独又は2種以上を混合して使用してもよい。また、透明金属酸化物層は、例えば後述する方法により形成できる。
【0042】
(金属電極)
本発明の透明導電性基材は、透明金属酸化物層上に金属電極が積層されているものであってもよい。
【0043】
金属電極の材料としては、例えば、Cu、Ag、Al、Au、Ni、Ni/Cr、Cr、Ti等の単体又は2種以上からなる合金や金属ペーストが挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0044】
金属電極の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常0.01〜50μm、好ましくは0.02〜25μmである。
【0045】
金属電極の形成には、従来公知の方法を使用でき、例えば、メッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法等を使用でき、金属ペーストには印刷、塗工する方法等を使用できる。
【0046】
また、必要に応じて、上記金属電極の保護を目的に、金属電極の下及び上にNi、Ni/Cr、Cr、Ti、Mo、C等の層及びこれらの酸化物の層を設けても良い。
【0047】
また、必要に応じて本発明の透明導電性基材の透明導電性薄膜層と反対側の基材面にハードコート層やアンチグレア層を設けても良く、透明粘着層等を設けて、他の基板に張り合わせても良い。また、基材両面に本発明の透明導電性薄膜層/透明金属酸化物層をそれぞれ設けても良い。
【0048】
本発明の透明導電性基材は、タッチパネル、太陽電池用電極、ヒーター、電磁波/静電シールド用基材などの透明電極として用いることができる。具体的には、本発明の透明導電性基材を抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルの上部電極及び/又は下部電極として用いることができ、このタッチパネルを液晶ディスプレイの前面に配置することでタッチパネル機能を有する表示装置が得られる。中でも本発明の透明導電性基材は静電容量方式のタッチパネルの電極として好適に使用でき、特に投影静電容量方式のタッチパネルの電極として好適に使用できる。
【0049】
図5は、本発明の透明導電性基材を用いた一般的な静電容量式タッチパネルの断面を示す模式図である。図中、4は透明導電性基材を、6はガラスをそれぞれ示す。駆動時にはユーザーが透明導電性基材上の任意の位置を指で触れることで、タッチパネル電極表面の電荷変化により位置を検出する。
【0050】
また、図6に、本発明の透明導電性基材を用いた一般的な投影静電容量方式のタッチパネルの模式図を示す。図6に示すようなマトリクス状の導電パターンを用いた静電容量方式のタッチパネルとすることで、上の導電パターンは縦に接続されているので縦位置を検出し、下の導電パターンは横に接続されているので横位置を検出して、交点を押された位置として認識できる。
【0051】
透明導電性基材の製造方法
本発明の透明導電性基材の製造方法は、上記透明導電性基材の製造方法であって、透明導電性薄膜層の表面に透明金属酸化物層を斜め蒸着法によって形成することを特徴とする。
【0052】
斜め蒸着法としては、公知の斜め蒸着法の技術を使用できる。例えば、特開平8−27561号公報に記載の方法が挙げられ、真空蒸着装置を用いること、ロールで送り出される支持体上に蒸着材料を蒸着させて行うこと、蒸発源と基材との間に部分的な遮へい板を設けることによって該基材上に蒸着材料を斜め蒸着させること等の方法を採用することが好ましい。
【0053】
本発明の透明導電性基材の製造方法の一例を図7に示す。図7に示される方法では、真空にした容器(チャンバー)の中で、蒸着材料を蒸発源40として加熱し気化又は昇華し、防着板30を用い、蒸着材料を透明導電性薄膜層が形成された基材10(以下、基材10ともいう)に対して傾斜させて、離れた位置に置かれた基材10の表面に付着させる。蒸着材料を基材10に対して傾斜し蒸着させることで、表裏面に貫通する多数の微細空孔を有する透明金属酸化物層が形成される。基材10は回転ロール20で送り出される。
【0054】
ここで、微細空孔の平均孔径、表面空孔率、微細空孔の個数については、基材10表面の凹凸部の大きさ、形状、方向性などに応じて、蒸着時の入射角αなどを適宜設定することにより、いずれも、前記した範囲内の値に適宜調整することができる。また、透明金属酸化物層の厚さについては、蒸着する金属酸化物に応じ、所定の蒸着速度及び蒸着時間を設定することにより、適宜調整することができる。透明金属酸化物層の蒸着形成時、膜厚増加と共に蒸着入射角を連続的に小さくする(出来るだけ0度にする)ことにより、透明金属酸化物層の裏面の空孔の孔径より表面の孔径を大きくすることができる。
【0055】
斜め蒸着を行う際の真空度は、10-3Torr以下、好ましくは10-4Torr以下、より好ましくは10-7〜2×10-4 Torrである。蒸着材料の蒸着は、該蒸着材料を加熱・気化できる公知の方法を使用でき、例えば、抵抗加熱、エレクトロンビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法が挙げられ、好ましくは、エレクトロンビームによる加熱・気化である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0057】
実施例1
片面ハードコート処理したPETフィルムのPET面上に、SnO2を5 wt%含有するITOターゲットを用い、約2%のO2ガスを含むArガス雰囲気中、真空度3×10-3 Torrでスパッタ蒸着により表面抵抗R=100(Ω/□)のITO膜(厚さ約60 nm)を形成した。次いで、上記ITO膜上に図7に示す装置により、真空度<2×10-4 Torrでエレクトロンビーム蒸着法により入射角θ<90°以下(θ = 90〜0°)で厚さ約100 nmのSiO2膜を形成し、目的とする透明導電性フィルムを作成した。
【0058】
尚、片面ハードコート処理したPETフィルム基材の全光線透過率は約91%であった。
【0059】
実施例2
エレクトロンビーム蒸着法の入射角をθ<60°(θ = 60〜0°)にした以外は実施例1と同様な方法で目的とする透明導電性フィルムを形成した。
【0060】
実施例3
エレクトロンビーム蒸着法の入射角をθ<45°(θ = 45〜0°)した以外は実施例1と同様な方法で目的とする導電性フィルムを形成した。
【0061】
比較例1
ITO膜上にSiO2膜を形成しない以外は実施例1と同様な方法で、片面ハードコート処理したPETフィルムのPET面上に、SnO2を5 wt%含有するITOターゲットを用い、約2%のO2ガスを含むArガス雰囲気中、真空度3×10-3 Torrでスパッタ蒸着により表面抵抗R=100(Ω/□)のITO膜を形成し、透明導電性フィルムを作成した。
【0062】
比較例2
エレクトロンビーム蒸着法の入射角をθ = 90±10°(垂直入射)にした以外は実施例1と同様な方法で透明導電性フィルムを形成した。
【0063】
比較例3
エレクトロンビーム蒸着法によるSiO2膜の形成に代えて、Siターゲットを用いたスパッタ蒸着法を用いてITO膜上にO2ガスを含むArガス雰囲気中、真空度3×10-3 Torrでスパッタ蒸着によりSiO2層を形成した以外は実施例1と同様な方法で透明導電性フィルムを形成した。この時のSiO2の蒸着入射角θは約90°であった。
【0064】
比較例4
防着板(入射角調整板)に隙間を開けて、この隙間を介して、蒸着入射角が40〜50°の範囲になる様に蒸着した以外は実施例1と同様な方法で透明導電性フィルムを形成した。SiO2膜の蒸着速度は実施例3の半分程度遅かった。蒸着方法は、特許文献3(特開平8−27561号公報)に記載の方法に対応する。
【0065】
得られた透明導電性フィルムについて、以下の評価を行い、得られた結果を表1に示した。
【0066】
評価方法
1)SiO2膜の空孔の寸法観察:
ITO膜上から蒸着SiO2膜の表面まで任意厚み方向でTEM(電子走査顕微鏡)観察を行い、(a)平均孔径:(TD方向の孔径Aの平均値)、(b)表面空孔率:(TD方向の孔径A×MD方向の孔径B×孔の個数/処理膜表面積)×100(%)を求めた。
【0067】
任意の厚み方向でのTEM観察は、SiO2膜表面からArイオンスパッタ法でSiO2膜のエッチングを行い、SiO2膜を任意の厚みになるまで削り、その表面をTEM観察することにより行った。またそのときのSiO2膜の断面観察も行った。尚、SiO2膜厚約5 nm部分の分析値をITO表面部分とした。
【0068】
2)表面抵抗R0(Ω/□):
4端子測定法を用いて、ITO膜上又はSiO2膜上より表面抵抗を測定し、それぞれの膜の表面抵抗R0とした。
【0069】
3)電極とITO間の接触電気抵抗Rs(Ω):
上記透明導電性フィルムを5 cm幅に切断し、幅方向に幅10 mmのAgペースト電極(約10μm厚:藤倉化成(株)ドータイトFA401CA 使用、印刷後キュアー温度は約150℃×30分)又は通常のスパッタ蒸着によるCu電極(10 mm幅、約180 nm厚)を電極間距離がそれぞれ5 cmとなるよう2本形成し、両電極間の抵抗Raを2端子法で測定し、Rs = Ra - R0で求めた。
【0070】
4)全光線透過率
スガ試験機(株) HGM-2DPを用いて、透明導電性フィルムの全光線透過率を測定した。
【0071】
5)ITO膜のエッチング試験:
関東化学:ITO-07N(シュウ酸系ITO用エッチング液)を用いて、液温20℃及び50℃の場合に、ITO膜がエッチングされる(目視及び膜表面の電気抵抗が>1×106Ωになる)までの時間を測定した。
【0072】
6)耐擦傷性:
新東科学社製のヘイドン表面性測定機を用いて、(a)殺傷子:ガーゼ(日本薬局方タイプΙ)、(b)加重:100 g/cm2、(c)擦傷速度:30 cm/分、(d)擦傷回数:100回(往復50回)の条件で薄膜表面を擦ったのちに膜表面抵抗Rbを測定し、初期の膜表面抵抗R0に対する変化率(Rb/R0)を求めて、耐擦傷性を評価した。尚、表面抵抗測定は、上記透明導電性フィルムを1 cm幅に切断し通常のスパッタ蒸着によるCu電極(10 mm幅、約180 nm厚)を電極間距離がそれぞれ1cmとなるよう2本形成し、両電極間の抵抗Raを2端子法で測定することにより行った。
【0073】
7)膜表面の水の濡れ性(水の接触角):
協和界面科学(株)製のCONTACT-ANGLE METERを用いて、膜表面の水の接触角θを測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
(考察)
実施例1
入射角θ<90°の場合、4端子測定法による表面抵抗値は高いが、Agペースト、Cu電極法により電気的接続が出来ることが分かった。これはSiO2層の断面状態観察より、平均孔径と表面空孔率はそれぞれITO面上で10 nm、<1%、50 nm部で100 nm、5%、SiO2膜表面で700 nm、90%となり、SiO2膜下層から表面層側に拡大している多数の孔に起因していた。
【0076】
この金属酸化物層により、ITO膜のエッチング処理も初めて可能となった。またSiO2膜によるITO膜の耐擦傷性も高かった。一方、Agペースト電極との接触抵抗が200Ωと高く、Agペースト電極使用の場合には用途が限定される(今回使用したAgペーストのAg平均粒径は2〜5μm程度と一般的なものであり、Ag粒子を小さくしたAgペースト製品を用いればさらに接触抵抗は小さくなるものと考えられる)。
【0077】
一方、Cuスパッタ蒸着電極とITO間の接触抵抗は0Ωとなり、Cuの原子状態で蒸着形成される膜では、本実施例の金属酸化物層の孔径に比べてCu蒸着粒子径の方が十分に小さいため、接触抵抗は0Ωとなったものと考えられる。
【0078】
実施例2
入射角θ<60°の場合、実施例1に比べ、SiO2層の孔の平均孔径と表面空孔率は共に大きくなって、Agペースト電極との接触抵抗も100Ω程度に減少しており、好ましい範囲であることが分かった。またITO膜のエッチング性も短時間化出来ることが分かった。
【0079】
実施例3
入射角θ<45°の場合、実施例1、2に比べ、SiO2層の孔の平均孔径と表面空孔率は共に大きくなることが分かった。これにより、Agペースト電極とITO膜の接触抵抗はさらに減少し、ITO膜のエッチング性も良く、表面の水の接触角も大幅に改善されることが分かった。
【0080】
比較例1
ITO層上にSiO2層の無い透明導電性フィルムであり、Agペースト電極及び蒸着Cu電極との接触抵抗、並びにITO膜のエッチング性は問題ないが、透明性は78%と低く、ITO膜の対擦傷性も悪かった。また、水の濡れ性が70°と高く印刷性が悪いことも分かった。
【0081】
また、ITO膜エッチング後、ITO膜部(全光線透過率78%)とITO膜無し部(全光線透過率91%)が明確に目視観察でき改良が必要なことが分かる。
【0082】
比較例2、3
ITO膜上に通常の方法でSiO2(無孔)膜を形成した透明導電性フィルムであるが、Agペースト及び蒸着Cu電極との接触抵抗が高かったため、電極導通出来ない。またITO膜のエッチング処理が出来なかったため、タッチパネル、透明ヒーター等電子回路分野への適用が出来ない。また水の接触角も14°と十分なものでなかった。
【0083】
比較例4
SiO2層の孔径がITO側とSiO2膜表面側をほぼ同一であり、微細空孔が表裏面に直線的に且つ略同径で貫通するように形成した例である(実施例3と入射角θは似ているが、θ=40〜50°に限定した)。透明性、耐擦傷性、及び水の接触角は改良出来るものの、孔径及び空孔率が少ないため、電極とITO膜の接触抵抗が非常に高かった。また、ITO膜のエッチング性も著しく悪かったことから上記電子回路分野への使用が出来ないことが分かった。
【0084】
また、θ = 3°程度にすると、孔径及び空孔率が大きくなり、電極との接触抵抗、及びエッチング性も改善されると予想されるが、ITO膜とSiO2層との接触面積が著しく小さくなり(SiO2膜裏側と表面側とほぼ同一の孔径のため)ITO膜とSiO2膜の密着力が低下し、本発明の目的とする用途ではSiO2膜剥離が発生し使用出来ない。また、本発明の方法と比べると蒸着入射角(蒸着面積)が狭い範囲に限定されるため、SiO2膜処理速度は著しく遅くなり、本発明が目標とする用途においては、生産性の面でも好ましく無い。
【0085】
(タッチパネル)
実施例1〜3の透明導電性基材を使用することにより、図5に示す構成のタッチパネルを作製することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 基材
2 透明導電性薄膜層
3 透明金属酸化物層
3a 透明金属酸化物層の表面
3b 透明金属酸化物層の裏面
4 透明導電性基材
5 微細空孔
6 ガラス
10 透明導電性薄膜層が形成された基材
20 回転ロール
30 防着板
40 蒸発源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7