【実施例】
【0056】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0057】
実施例1
片面ハードコート処理したPETフィルムのPET面上に、SnO
2を5 wt%含有するITOターゲットを用い、約2%のO
2ガスを含むArガス雰囲気中、真空度3×10
-3 Torrでスパッタ蒸着により表面抵抗R=100(Ω/□)のITO膜(厚さ約60 nm)を形成した。次いで、上記ITO膜上に
図7に示す装置により、真空度<2×10
-4 Torrでエレクトロンビーム蒸着法により入射角θ<90°以下(θ = 90〜0°)で厚さ約100 nmのSiO
2膜を形成し、目的とする透明導電性フィルムを作成した。
【0058】
尚、片面ハードコート処理したPETフィルム基材の全光線透過率は約91%であった。
【0059】
実施例2
エレクトロンビーム蒸着法の入射角をθ<60°(θ = 60〜0°)にした以外は実施例1と同様な方法で目的とする透明導電性フィルムを形成した。
【0060】
実施例3
エレクトロンビーム蒸着法の入射角をθ<45°(θ = 45〜0°)した以外は実施例1と同様な方法で目的とする導電性フィルムを形成した。
【0061】
比較例1
ITO膜上にSiO
2膜を形成しない以外は実施例1と同様な方法で、片面ハードコート処理したPETフィルムのPET面上に、SnO
2を5 wt%含有するITOターゲットを用い、約2%のO
2ガスを含むArガス雰囲気中、真空度3×10
-3 Torrでスパッタ蒸着により表面抵抗R=100(Ω/□)のITO膜を形成し、透明導電性フィルムを作成した。
【0062】
比較例2
エレクトロンビーム蒸着法の入射角をθ = 90±10°(垂直入射)にした以外は実施例1と同様な方法で透明導電性フィルムを形成した。
【0063】
比較例3
エレクトロンビーム蒸着法によるSiO
2膜の形成に代えて、Siターゲットを用いたスパッタ蒸着法を用いてITO膜上にO
2ガスを含むArガス雰囲気中、真空度3×10
-3 Torrでスパッタ蒸着によりSiO
2層を形成した以外は実施例1と同様な方法で透明導電性フィルムを形成した。この時のSiO
2の蒸着入射角θは約90°であった。
【0064】
比較例4
防着板(入射角調整板)に隙間を開けて、この隙間を介して、蒸着入射角が40〜50°の範囲になる様に蒸着した以外は実施例1と同様な方法で透明導電性フィルムを形成した。SiO
2膜の蒸着速度は実施例3の半分程度遅かった。蒸着方法は、特許文献3(特開平8−27561号公報)に記載の方法に対応する。
【0065】
得られた透明導電性フィルムについて、以下の評価を行い、得られた結果を表1に示した。
【0066】
評価方法
1)SiO
2膜の空孔の寸法観察:
ITO膜上から蒸着SiO
2膜の表面まで任意厚み方向でTEM(電子走査顕微鏡)観察を行い、(a)平均孔径:(TD方向の孔径Aの平均値)、(b)表面空孔率:(TD方向の孔径A×MD方向の孔径B×孔の個数/処理膜表面積)×100(%)を求めた。
【0067】
任意の厚み方向でのTEM観察は、SiO
2膜表面からArイオンスパッタ法でSiO
2膜のエッチングを行い、SiO
2膜を任意の厚みになるまで削り、その表面をTEM観察することにより行った。またそのときのSiO
2膜の断面観察も行った。尚、SiO
2膜厚約5 nm部分の分析値をITO表面部分とした。
【0068】
2)表面抵抗R0(Ω/□):
4端子測定法を用いて、ITO膜上又はSiO
2膜上より表面抵抗を測定し、それぞれの膜の表面抵抗R0とした。
【0069】
3)電極とITO間の接触電気抵抗Rs(Ω):
上記透明導電性フィルムを5 cm幅に切断し、幅方向に幅10 mmのAgペースト電極(約10μm厚:藤倉化成(株)ドータイトFA401CA 使用、印刷後キュアー温度は約150℃×30分)又は通常のスパッタ蒸着によるCu電極(10 mm幅、約180 nm厚)を電極間距離がそれぞれ5 cmとなるよう2本形成し、両電極間の抵抗Raを2端子法で測定し、Rs = Ra - R0で求めた。
【0070】
4)全光線透過率
スガ試験機(株) HGM-2DPを用いて、透明導電性フィルムの全光線透過率を測定した。
【0071】
5)ITO膜のエッチング試験:
関東化学:ITO-07N(シュウ酸系ITO用エッチング液)を用いて、液温20℃及び50℃の場合に、ITO膜がエッチングされる(目視及び膜表面の電気抵抗が>1×10
6Ωになる)までの時間を測定した。
【0072】
6)耐擦傷性:
新東科学社製のヘイドン表面性測定機を用いて、(a)殺傷子:ガーゼ(日本薬局方タイプΙ)、(b)加重:100 g/cm
2、(c)擦傷速度:30 cm/分、(d)擦傷回数:100回(往復50回)の条件で薄膜表面を擦ったのちに膜表面抵抗Rbを測定し、初期の膜表面抵抗R0に対する変化率(Rb/R0)を求めて、耐擦傷性を評価した。尚、表面抵抗測定は、上記透明導電性フィルムを1 cm幅に切断し通常のスパッタ蒸着によるCu電極(10 mm幅、約180 nm厚)を電極間距離がそれぞれ1cmとなるよう2本形成し、両電極間の抵抗Raを2端子法で測定することにより行った。
【0073】
7)膜表面の水の濡れ性(水の接触角):
協和界面科学(株)製のCONTACT-ANGLE METERを用いて、膜表面の水の接触角θを測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
(考察)
実施例1
入射角θ<90°の場合、4端子測定法による表面抵抗値は高いが、Agペースト、Cu電極法により電気的接続が出来ることが分かった。これはSiO
2層の断面状態観察より、平均孔径と表面空孔率はそれぞれITO面上で10 nm、<1%、50 nm部で100 nm、5%、SiO
2膜表面で700 nm、90%となり、SiO
2膜下層から表面層側に拡大している多数の孔に起因していた。
【0076】
この金属酸化物層により、ITO膜のエッチング処理も初めて可能となった。またSiO
2膜によるITO膜の耐擦傷性も高かった。一方、Agペースト電極との接触抵抗が200Ωと高く、Agペースト電極使用の場合には用途が限定される(今回使用したAgペーストのAg平均粒径は2〜5μm程度と一般的なものであり、Ag粒子を小さくしたAgペースト製品を用いればさらに接触抵抗は小さくなるものと考えられる)。
【0077】
一方、Cuスパッタ蒸着電極とITO間の接触抵抗は0Ωとなり、Cuの原子状態で蒸着形成される膜では、本実施例の金属酸化物層の孔径に比べてCu蒸着粒子径の方が十分に小さいため、接触抵抗は0Ωとなったものと考えられる。
【0078】
実施例2
入射角θ<60°の場合、実施例1に比べ、SiO
2層の孔の平均孔径と表面空孔率は共に大きくなって、Agペースト電極との接触抵抗も100Ω程度に減少しており、好ましい範囲であることが分かった。またITO膜のエッチング性も短時間化出来ることが分かった。
【0079】
実施例3
入射角θ<45°の場合、実施例1、2に比べ、SiO
2層の孔の平均孔径と表面空孔率は共に大きくなることが分かった。これにより、Agペースト電極とITO膜の接触抵抗はさらに減少し、ITO膜のエッチング性も良く、表面の水の接触角も大幅に改善されることが分かった。
【0080】
比較例1
ITO層上にSiO
2層の無い透明導電性フィルムであり、Agペースト電極及び蒸着Cu電極との接触抵抗、並びにITO膜のエッチング性は問題ないが、透明性は78%と低く、ITO膜の対擦傷性も悪かった。また、水の濡れ性が70°と高く印刷性が悪いことも分かった。
【0081】
また、ITO膜エッチング後、ITO膜部(全光線透過率78%)とITO膜無し部(全光線透過率91%)が明確に目視観察でき改良が必要なことが分かる。
【0082】
比較例2、3
ITO膜上に通常の方法でSiO
2(無孔)膜を形成した透明導電性フィルムであるが、Agペースト及び蒸着Cu電極との接触抵抗が高かったため、電極導通出来ない。またITO膜のエッチング処理が出来なかったため、タッチパネル、透明ヒーター等電子回路分野への適用が出来ない。また水の接触角も14°と十分なものでなかった。
【0083】
比較例4
SiO
2層の孔径がITO側とSiO
2膜表面側をほぼ同一であり、微細空孔が表裏面に直線的に且つ略同径で貫通するように形成した例である(実施例3と入射角θは似ているが、θ=40〜50°に限定した)。透明性、耐擦傷性、及び水の接触角は改良出来るものの、孔径及び空孔率が少ないため、電極とITO膜の接触抵抗が非常に高かった。また、ITO膜のエッチング性も著しく悪かったことから上記電子回路分野への使用が出来ないことが分かった。
【0084】
また、θ = 3°程度にすると、孔径及び空孔率が大きくなり、電極との接触抵抗、及びエッチング性も改善されると予想されるが、ITO膜とSiO
2層との接触面積が著しく小さくなり(SiO
2膜裏側と表面側とほぼ同一の孔径のため)ITO膜とSiO
2膜の密着力が低下し、本発明の目的とする用途ではSiO
2膜剥離が発生し使用出来ない。また、本発明の方法と比べると蒸着入射角(蒸着面積)が狭い範囲に限定されるため、SiO
2膜処理速度は著しく遅くなり、本発明が目標とする用途においては、生産性の面でも好ましく無い。
【0085】
(タッチパネル)
実施例1〜3の透明導電性基材を使用することにより、
図5に示す構成のタッチパネルを作製することができる。