特許第5777638号(P5777638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777638
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】非侵襲性分光光度計及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20150820BHJP
   A61B 5/117 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   A61B3/10 ZZDM
   !A61B5/10 320Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-549421(P2012-549421)
(86)(22)【出願日】2011年1月19日
(65)【公表番号】特表2013-517825(P2013-517825A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】GB2011050087
(87)【国際公開番号】WO2011089427
(87)【国際公開日】20110728
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】1000973.6
(32)【優先日】2010年1月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503327842
【氏名又は名称】クリストファー・グリン
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー グリン
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136541(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0278688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者又は被験動物の眼の非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリングで使用するデバイスであって、
照明光を前記眼の後眼房内の構造からの直接又は拡散反射率又はそれ以外の反射率を得るために前記後眼房内の構造に選択的に誘導するため、及び1つ又は複数のパルスの前記照明光を提供するための照明手段と、
前記照明光による照明の結果として前記眼から戻る光を受光するための、前記後眼房内の構造から戻る直接反射光と拡散反射光とを、前記直接又は拡散反射光の分析のために区別するように、前記戻る光を前記照明光のパルスに対して選択されたタイミングで間欠的に記録するように構成された受光手段とを備える第1の光学システムを有し、
積分球としての役割を果たす前記眼からの直接反射率と拡散反射率とを区別するように構成され、しきい値波長に基づいて光を区別するように構成され、前記後眼房を調べるための前記しきい値波長が1400nm程度である、デバイス。
【請求項2】
前記受光手段が、照明光の各パルスの後の記録期間に記録するように構成され、前記記録期間が、照明光のパルスの終了時又は照明光のパルスの終了の前又は後の所定時間に開始する、請求項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記照明手段が、前記照明光を前記後眼房内の構造に合焦させるように構成された、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記受光手段が、前記後眼房内の構造から戻る選択された波長の光の強度をモニタするように構成された、請求項1からのいずれか1項以上に記載のデバイス。
【請求項5】
前記受光手段が、前記後眼房内の構造から戻る異なる波長の光の強度をモニタするように構成され、それにより前記構造の吸光度/反射特性を決定できるようにした、請求項1からのいずれか1項以上に記載のデバイス。
【請求項6】
前記後眼房内の構造の場所を決定するように構成された第2の光学システムを備える、請求項1からのいずれか1項以上に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2の光学システムが、虹彩識別又はDNAによって前記被験対象を識別するように構成された、請求項に記載のデバイス。
【請求項8】
被験者又は被験動物の眼の非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリング方法であって、
照明光の1つ又は複数のパルスを、前記眼の後眼房内の構造からの直接又は拡散反射率又はそれ以外の反射率を得るために、前記後眼房内の構造に選択的に誘導し、
そのような照明の結果として前記眼から戻る光を、前記後眼房内の構造から戻る直接又は拡散反射光を分析するために前記直接又は拡散反射光とその他の反射光とを区別するように、前記1つ又は複数のパルスに対するタイミングで間欠的に記録し、
積分球としての役割を果たす前記眼からの直接反射率と拡散反射率とを区別し、しきい値波長に基づいて光を区別し、前記後眼房を調べるための前記しきい値波長を1400nm程度とした、方法。
【請求項9】
被験者又は被験動物の眼の非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリング方法であって、
照明光の1つ又は複数のパルスを、前記眼の前眼房内構造からの直接及び/又は拡散反射率又はそれ以外の反射率を得るために、前記前眼房内の構造に選択的に誘導し、
そのような照明の結果として前記眼の前眼房から戻る光を、前記前眼房内の選択された構造から戻る直接及び/又は拡散反射光を分析するために前記直接及び/又は拡散戻り反射光と他の反射光とを区別するように、前記1つ又は複数のパルスに対するタイミングで間欠的に記録し、
積分球としての役割を果たす前記眼からの直接反射率と拡散反射率とを区別し、しきい値波長に基づいて光を区別し、前記しきい値波長を1400nm程度とした、方法。
【請求項10】
請求項2からのいずれか1項以上に記載のデバイスを使用するように構成された、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲性分光光度計に関し、特に、被験者又は被験動物の眼の身体的及び生理学的特徴及び/又は身体機能の生体非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリングで用いる関連方法に関する。デバイス及び方法は、例えば、被験対象の眼の様々な部位に誘導され、そこから戻る1つ又は複数の光ビームを用いて分析可能なデータを提供する検査、測定及びモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
人間又は動物の身体の特徴及び機能の測定及び/又はモニタリングは、多くの様々な状況で必要であることが分かる。以前は、患者又は動物から血液試料が採取され、その成分が分光測定法によって測定されてきた。また、例えば、改造したコンタクトレンズシステムを用いることで、患者又は動物に接触させることで血液内の成分を測定する方法も公知である。眼は、光を透過させるように設計された身体の唯一の部分であり、したがって、時間微分された分光光度計のキュベット又は積分球の両方としての役割を果たすことができる。
【0003】
WP90/12534は、光を眼に誘導してそこから戻る光を分析することで身体機能をモニタする装置を記載している。この文献は、また、瞳のサイズを測定する瞳孔計を記載している。WO02/071932は、アライメント手段が瞳孔計を用いて瞳の中心位置を決定して光を眼に誘導する光学システムのアライメントを支援する改良型の上記装置を記載している。上記明細書のこの開示は、本明細書に組み込むものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、人間又は動物の身体、特にその眼を検査、測定及び/又はモニタし、公知の同様のデバイス及び方法と比較して利点を有するデバイス及びそれに関連する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、被験者又は被験動物の眼の非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリングで使用するデバイスであって、照明光を眼の選択された構造上に選択的に誘導してそこからの直接反射率又はそれ以外の反射率を得て1つ又は複数のパルスの照明光を提供する照明手段と、照明光による照明の結果として眼から戻る光を受光し、戻る光を照明光のパルスに対して選択されたタイミングで間欠的に記録して選択された構造から戻る直接反射光と拡散反射光とを区別して上記直接及び拡散戻り反射光の両方を分析するように構成された受光手段とを備える第1の光学システムを有するデバイスが提供される。
【0006】
本発明は、眼の特定の特徴を、眼の解剖学的及び生理学的特徴の検査及び/又は分析又は測定及びモニタリングのための分光光度計の一部として採用するように構成できる限り、特に有利であることが分かる。
【0007】
以下に詳述するように、被験者の眼、及びその様々な構造的特徴は、後眼房内の選択された構造からの直接反射率によって被験者の眼をモニタ/分析することが必要なときにキュベットとして機能することができる。その一方で、本発明は、有利には、積分球として機能するときに後眼房内からの拡散反射率を検査し、モニタするという選択肢を有する。
【0008】
本発明の別の態様によれば、被験者又は被験動物の眼の非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリング方法であって、照明光の1つ又は複数のパルスが眼のある構造上に選択的に誘導されてそこからの直接反射率又はそれ以外の反射率が得られ、そのような照明の結果として眼から戻る光が上記1つ又は複数のパルスに対するあるタイミングで間欠的に記録されて、選択された構造から戻る直接反射光と他の反射光とを区別して上記直接戻り反射光が分析される方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、被験者又は被験動物の眼の非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリング方法であって、照明光の1つ又は複数のパルスが前眼房内のある構造上に選択的に誘導されてそこからの直接及び/又は拡散反射率又はそれ以外の反射率が得られ、そのような照明の結果として前眼房から戻る光が上記1つ又は複数のパルスに対するあるタイミングで間欠的に記録されて、選択された構造から戻る直接及び/又は拡散反射光と他の反射光とを区別して上記直接及び/又は拡散戻り反射光が分析される方法が提供される。
【0010】
したがって、デバイスは、眼の特徴を照明し、戻り照明光パルスを記録して、眼又はその内部の異なる部分からの直接及び/又は拡散反射を明確に識別又は区別できるようにする照明光の1つ又は複数のパルスを提供するように構成することができる。記録期間は、照明パルスの終了後直ちに、又はその後の所定期間に開始してもよく、あるいは照明パルスの終了と重なっていてもよい。
【0011】
照明光パルスと受光パルスとの間の制御された関係によって必要な反射光とその他の反射光とを区別するステップに加えて、有利には、眼の内部の構造の光学的特性をさらに本発明に採用することができる。
【0012】
例えば、硝子体液内の水は、一般に1400nmを超える波長を吸収するように作用し、したがって、有利には、反射光を考慮するときに、これを天然のフィルタとして使用できる。光が水晶体と成人の眼の裏にある網膜との間を移動する約48mmの硝子体液の距離は、このフィルタの重要な側面である。
【0013】
例えば、反射光を受光し分析する際に、1400nmを超えるいかなる光も対象の部位ではなく、他の構造からの直接又は拡散反射率によって生成される。同様に、積分球としての眼の使用によって発生する任意の反射率を考慮すると、すなわち、拡散反射率を考慮すると、1400nmを超える波長の光は無視することができ、したがって、網膜からの拡散反射率の成分を構成しないであろう。
【0014】
したがって、積分球としての眼についての本発明のデバイス及び方法は、有利には、硝子体液内の液体の天然のフィルタリング能力を考慮した適切に選択された波長の光を使用できる。
【0015】
次に、戻り光の大部分が網膜からの戻り光、好ましくは瞳を通して出射する前に眼の内部で複数回反射した拡散光であるか、又は眼の1つ又は複数の特定の特徴から直接及び/又は拡散反射した光であるかを決定できる。したがって、必要であれば、眼の他の部分に直接又は拡散反射した照明光が処理されないか、あるいは眼の特定の特徴に反射した光だけが処理される構成が好ましい。次に、有利には、眼をキュベット及び/又は積分球として用いて、眼の照明が照明光の空間、角度又は偏光の変化に影響されないように役立てることができる。以下に詳述するように、これによって、照明と記録が同時に実行され、直接反射率が区別される公知のデバイスに対してさらに大きい利点を提供する。
【0016】
以下の説明から分かるように、本発明を利用する光学システムは、パルス又は間欠光信号を記録する標準の分光光度計を変更することで提供できる。そのような分光分析技術を用いる一般原理が上記のWO90/12534に記載されている。
【0017】
眼は光を透過させる身体の唯一の部分であるため、分光法の分野では、眼は実際には身体のキュベット及び/又は積分球である。したがって、眼に反射した光の特性の測定は、眼の身体的及び生理学的特徴と身体機能一般の特徴との指標を与える。さらに、本発明は、眼が同時にキュベットと積分球として動作する能力を可能にする。
【0018】
好ましい構成では、デバイスは、例えば、米国特許第5,784,145号などに記載の標準の瞳孔計を変更することで、瞳のサイズを測定する第2の光学システムを備えてもよい。さらに、本明細書で瞳孔計を使用する一般原理は、本出願人の以前の国際特許出願WO90/12534号及びWO02/071932号に記載されている。
【0019】
好ましくは、デバイスは、例えば、手動で操作するレバー、ボタン、ジョイスティック、及び/又は1つ又は複数のコンピュータマウスを使用することで被験者が直接に、又は被験者から独立して制御可能な、WO02/071932に記載されているようなアライメント手段をさらに備える。アライメント手段は、システムに可変焦点機能を提供し、オプションとして、被験者又は臨床医の人的介在なしに自動的に動作できる。実際、そのようなアライメントの起動も、瞳の場所が決定されると、第1の光学システムによって自動的に開始できる。これは、検査又はモニタリングを必要とする眼の該当部分に出力光を誘導するために本発明の必要な「合焦」を達成する特に有利な構成である。
【0020】
一実施形態では、第2の光学システムは、瞳の中心を計算できるように、瞳の縁部の場所を決定するように構成されている。また、第2の光学システムを用いて被験者の識別を決定して記録する虹彩認識を提供することができる。
【0021】
本発明の幾つかの態様では、照明光は瞳面に合焦することが好ましいのは当然であるが、幾つかの実施態様では、これは実行する必要がなく、光を眼に向けて瞳を通して網膜を照明するだけでよい。このようにして、対象の部位を照明する光の量が制御される。代替的に又は追加的に、角膜、眼房水、水晶体、虹彩、硝子体液及び/又は網膜などの眼の特定の構造特徴に光を合焦させるという要件がある。
【0022】
一構成では、第1及び第2の光学システムは、眼に向けて光を伝送する1つ又は複数の光ファイバを備えてもよい。特に好しい構成では、光ファイバは、光入力手段と受光手段の両方として機能するように構成できる。
【0023】
第1の光学システムを眼の網膜から戻る選択した波長の光の強度をモニタするように構成できるのは言うまでもない。
【0024】
あるいは、第1の光学システムを眼の1つ又は複数の構造から異なる波長の光の強度をモニタするように構成して、構造、例えば、網膜の吸光度/反射特性を決定できるように構成することができる。
【0025】
第1及び第2の光学システムは部分を共有してもよい。したがって、例えば、同じユニットによって第1及び第2の受光手段を提供してもよい。同様に、所望であれば、第1及び第2の光学システムは同じ処理手段を使用してもよい。
【0026】
当然であるが、本発明のデバイスは、照明光を被験者又は被験動物の眼の所望の構造形成部分に誘導する有利に構成可能で正確な合焦手段を使用して、そのような構造要素の固有の特性の容易で正確なモニタリング、測定及び/又は分析を可能にすることが理解されよう。
【0027】
本発明の別の態様によれば、眼の内部の構造の身体的及び/又は生理学的な変化の非侵襲性検査、測定及び/又はモニタリングのための眼の1つ又は複数の構造の光学的検査、測定及び/又はモニタリングにおけるキュベット及び/又は積分球としての被験対象の眼の使用が提供される。
【0028】
本発明のその他の好ましい、又はオプションの特徴は、以下の説明と明細書の従属請求項とから明らかになろう。
【0029】
本明細書で使用する「被験者又は被験動物の身体機能」という表現は、医師又は獣医師が非侵襲的に検査、モニタ又は測定できる様々な異なる機能を含むことが意図されている。特に、網膜血のいずれかの物質及び変化と被験対象の網膜の細胞内のいずれかの生化学的(有機又は無機の)変化の測定及び/又はモニタリングを含むことが意図されている。さらに、上記いずれかの又はすべての変化を、網膜又は脳の電気的、生化学的又は病理学的活動の変化と共に、また眼の内部の身体的変化及び/又は生理学的変化に加えて測定及び/又はモニタすることができる。
【0030】
また、本明細書で使用する「光」という用語は、他に別段の指定がない限り、眼及び眼の内部に含まれる構造にとって有害でない可視波長及び赤外線、近赤外線及び紫外線などの不可視波長を含むように意図されている。直接反射率のためにキュベット内で不可視波長を使用することの利点は、眼がそのような波長を受光したときに瞳のサイズが変化しないという点である。拡散反射率の場合、その逆が利点となり、可視光が瞳の収縮を引き起こすため、積分球としての眼の効率を上げる。
【0031】
添付の図面を参照しながら詳細な説明によって本発明について詳述するが、単なる例示としてのものであって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】眼の構造的特徴の照明中の本発明のある実施形態の第1の光学システムの概略図である。
図2】光を後眼房からも反射させる必要があるが、前眼房から戻る光を受光している間の図1の第1の光学システムの概略図である。
図3】眼の後眼房の照明中の本発明のある実施形態の第1の光学システムの概略図である。
図4】眼から戻る直接及び拡散光の受光中の図3の第1の光学システムの概略図である。
図5】眼の照明中及び眼から戻る光の受光中の眼の第2の実施形態の第1の光学システムの概略図である。
図6】眼の照明中及び眼から戻る光の受光中の眼の第2の実施形態の第1の光学システムの概略図である。
図7】本発明の第3の実施形態の瞳孔計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に、光を、好ましくは、制御可能で選択的な方法で眼の任意の必要な構造的特徴及び/又は領域に合焦させるためにハウジング12内に装着された合焦手段15に光を誘導する第1の光源14を備える第1の光学システムが示されている。この例示としての実施形態では、選択された特徴は眼の水晶体9であるが、図3では、特徴は虹彩4、又はより具体的には、瞳13の平面であり(照明は瞳のサイズに依存しない)、眼の網膜10に光を誘導する。図2では、第1の受光手段17は、水晶体9又は前眼房内のその他の構造から戻る直接反射光16を受光する。前眼房の構造からの拡散反射光のための第2の受光手段は、カウル12上に45°の角度で着座している。
【0034】
図4に、デバイスから出力された光が図3の瞳13の平面に誘導されるときに、後眼房内の照明光が瞳13から出現し、発生する前のその照明光の複数の反射及び拡散が示されている。当然ながら、図3及び図4の構成の場合、照明光を網膜10へ誘導してそこから直接反射率を得るか、又は図4に示すように、必要に応じて拡散反射率を得ることができる。
【0035】
例示としての実施形態では、眼から戻る光を分析する処理手段17Aが提供される。処理手段17Aについて以下に詳述する。
【0036】
有利には、第1の光源14は、照明光の1つ又は複数のパルス、好ましくは、パルスストリームを提供するように構成され、受光/処理手段17は、眼から戻る光の周波数及び/又は強度を上記パルスに対して選択されたタイミングで間欠的に記録して、眼の角膜7、虹彩4及び水晶体9のうち1つ以上などの異なる構造からの直接反射光と拡散反射光とを有効に区別するか、又はデバイスに戻る拡散反射光と直接反射光とを区別するように構成されている。好ましい構成では、記録される光は最初、光源14が発光していないか又はオフの1つ又は複数の時間に記録される。これは、受光手段の間欠的な起動又はソフトウェアなどによる受信データの適切なサンプリングによって達成可能である。これは、記録される光の大半が選択的に、該当する構造からの直接反射又は拡散反射によって戻る光であるか、又は例えば、網膜10から戻り、眼の内部で複数回反射したため、拡散光を含む光であるということを意味する。このようにして、眼は、実際には眼のすべての構造の生理学的及び身体的変化をモニタリングするためのキュベット及び/又は積分球として選択的に使用されている。
【0037】
瞳のサイズが小さいほど、したがって、光の出口開口が小さいほど、大半の光が、瞳を通過して出射する前に複数回反射するため、出力光は拡散の度合いが高いことに留意されたい。必要に応じて眼の特定の構造特徴上又は瞳面に光を合焦させて、瞳を拡張させるか又は眼を操作するのではなく、小さい瞳を通して眼を照明する選択的合焦手段の使用は有利であることが分かる。
【0038】
理解されるように、本発明は、有利には、照明光が被験者又は被験動物の眼の一部の特定の構造へ正確に誘導され、被験対象の眼の生理学的及び/又は身体的特性、必要に応じて、それらの特性の変化の検査、測定及び/又はモニタリングのために本発明に従って分析可能な直接及び/又は拡散反射率を提供するデバイス及び方法を提供する。例えば、角膜、眼房水、水晶体、虹彩、硝子体液及び網膜などの眼の内部の様々な表面の直接反射率を照明光パルスと反射光パルスとのタイミング関係を正確に制御することで生成できる。これによって、そのような様々な表面構造から戻る直接反射率を区別して分析することが容易に可能となる。これらの構造からの拡散反射は、第2の受光手段によって分離される。
【0039】
そのような表面構造に関連する生理学的及び/又は身体的特性、またそれらの特性の変化を容易に検査、測定、モニタして、特定の波長の照明光パルスの選択的な使用によってさらに高レベルの区別を達成できる。上記のように、照明光パルスと反射光パルスのタイミング関係の適切な制御によって、積分球としての眼の動作、すなわち、拡散反射率のモニタリング、測定及び検査によって戻る光と、直接反射率だけの分析が必要なときにキュベットとして眼を使用することによって戻る光を容易に区別する。
【0040】
積分球は理想的な光学拡散装置であり、例えば、均一の照明が必須である放射測定で使用される。積分球に入力される光は均一に反射し、球の内部に散乱するので、出力は、入力光の空間、角度又は偏光の変化に影響されない均一の空間的に積分されたビームである。本発明の上記の説明で、光は瞳面に合焦するため、光源/強度は毎回同じである。個々の眼に関して光経路も一定している。眼の構成要素の運動によってビームの運動が発生する。個別の眼の角膜、眼房水、水晶体及び硝子体液の屈折度は空気経路と同様に不変である。
【0041】
積分球は、普通、その入力から出力までの直接の経路がないように設計される。したがって、普通、入力と出力とは異なる位置に置かれ、その間の直接の経路をふさぐバッフルが提供される。
【0042】
本発明は、眼それ自体をキュベット又は積分球として用いてデバイスが測定した測定値が光源の変動の影響を受けないという構成から恩恵を受ける。しかし、眼だけが瞳という単一の入力/出力ポートを有し、光は反射界面を通過して瞳を通って眼に進入しなければならないため、それらの界面によって直接又は拡散する形で反射する入力光が眼の内部で反射したか又は当然その逆の拡散光をあふれさせることを防止する手段を見つけなければならない。本発明は、パルス照明と、照明パルスに対して眼から戻る光の間欠記録の選択したタイミングとを用いて、また眼の天然のフィルタリング特性とその様々な構成要素の構造を利用するように所定の波長の光を選択的に用いることでこれを達成する。
【0043】
パルス照明光を用いることの別の重要な利点は、これが、網膜が光源14から過剰な照明を受けたときに発生する過熱による問題を低減する助けになるということである。過熱は、血液と細胞及び代謝活動の特性を変化させて眼に損傷を与えることがある。例えば、実験室などの慎重に制御された条件下での測定を可能にしながら安定した連続照明を使用することで、特に1日数回など、測定を頻繁に実施しなければならない場合に、実際のデバイス内の使用を除外することができる。
【0044】
さらに、比較的短い期間、例えば、数ミリ秒の期間にわたって照明パルスを提供し、この期間中に受光した光を記録することで、脈動成分、すなわち、網膜の血管内のパルス血流によって感知される量の変動を低減又は解消できる。これとは対照的に、網膜を連続して示す従来技術は、血流内のパルスで時間測定値を記録する複雑なシステムを提供して脈動成分を解消しなければならない。
【0045】
照明の各パルスの長さと使用する波長は、測定される物質又は反応に応じて異なる。通常、各照明パルスは、0.1ミリ秒〜数秒の間継続する。照明パルスの間隔も測定される物質又は反応に応じて異なるが、通常、0.1ミリ秒〜数秒の間に収まる。
【0046】
単一のパルスも使用できるが、眼は、好ましくは少なくとも6つのパルスの列、好ましくはそれ以上の列によって照明され、測定値は各パルスの後で記録され、平均と標準偏差とが計算される。
【0047】
照明パルスのタイミングと記録期間は、次の3つの異なる体制で行うことができる。
1.照明期間0.1ミリ秒、パルス直後に記録、次に10ミリ秒間隔で6回繰り返す
2.照明期間0.1ミリ秒、照明後、記録を1ミリ秒オフ、次にこの周期を各周期の間に10ミリ秒間隔を空けて6回繰り返す
3.照明期間1ミリ秒、照明期間終了前0.1ミリ秒で記録を開始(1ミリ秒)、各周期の間に10ミリ秒間隔を空けて6周期分繰り返す
【0048】
このとき、時間間隔は、例えば以下のように設定される。即ち、各照明パルスと各記録間隔との間の間隔は、例えば、10ミリ秒に、照明パルスの継続時間は、例えば、0.1〜1.0ミリ秒に、記録期間の継続時間は、例えば、1.0ミリ秒に、照明パルスの終了と記録期間の開始との間の遅延は、例えば1.0ミリ秒に、照明パルスと記録期間の重なりすなわち、記録期間の開始と照明パルスの終了との間の間隔は、例えば、0.1ミリ秒に設定される。
【0049】
理解されるように、パルス間の関係は、有利には必要に応じて選択、制御されて、直接反射パルスと拡散反射パルスとが区別され、また、上記の直接反射光パルスと拡散反射光パルスとが区別される。
【0050】
第1の光学システムは自立型であってもよく、その前面に被験者が位置する装置の一部であってもよい。被験者は、照明光を受けるように眼の位置を決める。好ましくは、被験者が眼を向けるハウジング12の周囲に柔軟なカウル12Aが提供される。カウル12Aは、眼から外部光を除外する役割を果たし、周囲光はモニタされている周波数を含む。そのようなカウルは、他の光学機器でも、例えば、望遠鏡又は双眼鏡のレンズの周囲でも周知である。また、カウルは、デバイスに対して被験者の眼を位置付ける助けをし、デバイスと被験者の眼との距離を定義する。
【0051】
WO02/071932に記載するように、第2の光学システム(図示せず)を用いて瞳13の中心を配置できる。アライメント手段(図示せず)を用いて第1の光学システムからの照明光を整列させて光が瞳13の平面の瞳13の中心を通るようにする(マクスウェル視野で)ことができる。アライメント工程は、例えば、医師又は被験者自身によって操作可能なジョイスティック(図示せず)によって実行できる。このようにして、オペレータは、調査中の眼の画像を画面(図示せず)に表示し、ジョイスティックを用いて第1の光学システムを瞳13の中心に整列させることができる。このアライメント工程の詳細はWO90/12534から公知であるため詳述しない。
【0052】
しかし、デバイスは、第2の光学システムが自動的に動作する(すなわち、手動操作で)ように構成できる。したがって、第2の光学システムは、アライメント手段を直接起動して第1の光学システムを瞳に対して必要なときに整列させることができる。
【0053】
さらに、オペレータが眼の画像を画面表示する代わりに、画像を、例えば、第1の光学システム自体によって、オペレータの網膜又は必要な構造に直接転写することができる。
【0054】
図1図4に示すように、入力光14は、本明細書に記載するように、その照射元である光ファイバ20を介して、眼の前面、後面を問わず、眼の構造内の所望の部位へ向けて合焦手段15を通過するように誘導できる。図1で、光はレンズ上で合焦し、そこからの直接又は拡散反射率が得られる。図3で、光は瞳13の中心で合焦し、網膜10からの直接及び拡散反射率が得られ、図4に示すように反射する。瞳13を通して眼から戻る光16はその後デバイスへ戻り、ビーム17として1つ又は複数の光ファイバ21に沿って受光手段17へ移動する。
【0055】
検査、測定又はモニタされている反射率の性質から独立して、処理手段17Aはビームを分析して、例えば、網膜及び/又は網膜血管の吸光度/反射スペクトルを決定する。単色光又は白色光及び赤外線、近赤外線又は紫外線帯域内の波長の任意の組合せを使用できる。例えば、特定の選択された波長によって、眼の身体的及び生理学的特性と、必要に応じて、様々な血液成分の特性変化の最適な区別が可能であり、また様々な網膜生化学機能及び成分の最適な区別が可能である。
【0056】
このようにして、例えば、眼の生理学的特性及び身体的特性のモニタリングと検査を提供できる。
【0057】
図5及び図6は、図1図4に対応しているが、光学システムの一部が強膜コンタクトレンズ30上に装着されたデバイスを示す。デバイスを支援するためのそのようなレンズ30の使用は、WO90/12534に詳述されている。ハウジング31より先に延在するコンタクトレンズの部分30Aは、外部光がデバイスに進入するのを阻止する場合には黒色であってもよい。図5及び図6に示すデバイスの動作は、その他の点では図1図4に示すデバイスの動作と同様である。
【0058】
図7に概略的に示す別の構成では、照明手段40と受光手段41は眼から離れた位置にあってもよいが、照明を眼に誘導しそこから戻る光を受光する位置にある。処理手段41Aも示されている。この実施形態では、照明光は瞳面に合焦する必要はなく、眼に誘導される。
【0059】
上記のシステムは、人間又は動物の眼の生理学的及び身体的特性に関する広範囲の用途に使用できる。
【0060】
特に、虹彩認識と、例えば、重機を制御する、又は車を運転する人のための血中アルコールの測定用途がふさわしい。
【0061】
また、光の照明及び記録を様々な分析方法に用いて、例えば、特定の波長の吸光度をモニタし、拡散反射率分光法を実行し、ラマン分光法(照明光が検出される眼からの光の照射を刺激する)又はX線透視法又はテラヘルツ帯域の周波数の使用を実行することができる。
【0062】
さらに、このシステムを用いて任意の個人の一意的なDNAプロファイルを測定し、セキュリティチェックを提供することができる。例えば、現金を引き出したい人物の識別が網膜細胞又は眼の任意の構造内のその他の細胞の非侵襲性DNA分析を介して検査される現金自動支払機の一部として一眼のシステムを使用できる。代替的に又は追加的に、第2の光学システムを用いて虹彩識別によって被験者を識別することができる。
【0063】
このようにして、被験者の識別をセキュリティ及び/又は法的な理由から使用できる。また、処理手段17Aは、記録のためにこの識別を用いて被験者の識別を測定中の測定値に関連付けることができる。
【0064】
公知のように、一般的な動脈及び静脈疾患の指標である網膜の動脈及び静脈の変化を測定できる。したがって、通常、そのような一般的な動脈及び静脈疾患に罹患することがある糖尿病患者において、病気の進行を非侵襲的に図式化することができる。
【0065】
このシステムでは、正確な量の光を与えることができ、応答の振幅を評価できるため、従来の手段よりも正確に視覚的に再現された電位差を測定できる。これとは対照的に、従来は、応答の待ち時間のみが測定されていた。したがって、本発明のシステムによって、網膜の任意の電気的活動の評価が可能となり、脳の視覚領域の活動を評価することができる。
【0066】
また、本発明のシステムで可能になった測定は、リアルタイムの静的試料又は連続的試料の測定であってもよい。
【0067】
本発明は、有利には、眼の解剖学的及び生理学的特性を用いて、眼を分光光度計の構成要素として使用する際の効率と精度とを拡張できることが理解されよう。
【0068】
さらに、本発明は、角膜、虹彩、水晶体、眼房水、硝子体液及び網膜からの照明光の反射率を有利に区別し、上記いかなる構造からの反射率の変化も調査することが容易に実行できる。
【0069】
本発明は上記の具体的な実施形態の内容に限定されず、任意の適切な数の光源及び受光装置、例えば、それぞれ2つを適宜使用できることは当然である。さらに、有利には、本発明のデバイスの内部で使用する合焦システムを全象限に対して近づけるか又は遠ざけて光を適宜任意の特定の構造上に、また必要に応じて、瞳面に合焦させることができる。
【0070】
反射光から受け取った任意のデータはデバイス内で分析でき、又は任意の適切な有線若しくは無線の伝送手段によって遠隔位置まで伝送できる。本発明で使用する光は、適宜分極させて任意の適切な波長で提供できることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7