特許第5777680号(P5777680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ メキシケム、アマンコ、ホールディング、ソシエダッド、アノニマ、デ、カピタル、バリアブレの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777680
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20150820BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20150820BHJP
   C07C 19/08 20060101ALI20150820BHJP
   C07C 17/20 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20150820BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
   C07C19/08
   C07C17/20
   B01J31/02 Z
   B01J31/02 102Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-212564(P2013-212564)
(22)【出願日】2013年10月10日
(62)【分割の表示】特願2009-542198(P2009-542198)の分割
【原出願日】2007年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-37425(P2014-37425A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年11月8日
(31)【優先権主張番号】0625214.2
(32)【優先日】2006年12月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510127697
【氏名又は名称】メキシケム、アマンコ、ホールディング、ソシエダッド、アノニマ、デ、カピタル、バリアブレ
【氏名又は名称原語表記】MEXICHEM AMANCO HOLDING S.A. DE C.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、ポール、シャラット
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、エリオット、ロウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、チャールズ、マッカーシー
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/042451(WO,A1)
【文献】 特開平02−207038(JP,A)
【文献】 特表2005−504097(JP,A)
【文献】 KNUNYANTS I L,REACTIONS OF FLUORO OLEFINS. COMMUNICATION 13. CATALYTIC HYDROGENATION OF PERFLUORO OLEFINS,BULLETIN OF THE ACADEMY OF SCIENCES OF THE USSR,DIVISION OF CHEMICAL SCIENCES,1960年 1月 1日,P1312-1317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 19/08
C07C 21/18
C07C 19/10
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(CFCF=CHを製造するためのプロセスであって、該プロセスが、塩基の存在下で、式CFCFYCHたはCFCFHCYH式中、YはF、Cl、BrまたはIである)の化合物を脱ハロゲン化水素することを含んでなり、該プロセスが相間移動触媒の非存在下で行われ、該プロセスが極性非プロトン性溶媒中で行われる、プロセス。
【請求項2】
−50〜300℃の温度および0〜30baraの圧力で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
塩基が、金属水酸化物、金属アミドおよびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
塩基がアルカリ金属水酸化物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
塩基がアルカリ土類金属水酸化物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記極性非プロトン性溶媒が、ジグライム、スルホラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびN‐メチルピロリドン(NMP)から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン(CFCF=CFH、HFC‐1225ye)、2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(CFCF=CH、HFC‐1234yf)およびそれらの混合物から選択される(ヒドロ)フルオロプロペンを製造するための、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
CFCF=CHが、式CFCFYCHまたはCFCFHCYH(YはF、Cl、BrまたはIである)の化合物を脱ハロゲン化水素することにより製造される、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
CFCF=CHが、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパン(CHCFCF、HFC‐245ca)を脱フッ化水素および/または1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンを脱塩化水素することにより製造される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
CFCF=CHが、1,1,1,2,3‐ペンタフルオロプロパン(CHFCHFCF、HFC‐245eb)を脱フッ化水素および/または1,1,1,2‐テトラフルオロ‐3‐クロロプロパンを脱塩化水素することにより製造される、請求項または10に記載のプロセス。
【請求項13】
トリフルオロジクロロプロパン、ジフルオロトリクロロプロパンまたはフルオロテトラクロロプロパンをCHCFCF、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパン、CHFCHFCFおよび/または1,1,1,2‐テトラフルオロ‐3‐クロロプロパンへ変換する工程を含んでなる、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
トリフルオロジクロロプロパンが、1,1,1‐トリフルオロ‐2,2‐ジクロロプロパン(CFCClCH)および1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパン(CFCHClCHCl)から選択される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
トリフルオロジクロロプロパンがCFCHClCHClであって、該CFCHClCHClを製造するために、3,3,3‐トリフルオロプロペンを塩素化する工程を含んでなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
3,3,3‐トリフルオロプロペンを製造するために、1,1,1,3‐テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素する工程を含んでなる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
1,1,1,3‐テトラフルオロプロパンを製造するために、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンをフッ素化する工程を含んでなる、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを製造するために、四塩化炭素およびエチレンをテロマー化する工程を含んでなる、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
CFCClCHを製造するために、1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンをフッ素化する工程を含んでなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項20】
1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンを製造するために、1,1,1‐トリクロロアセトン(CClC(O)CH)を塩素化する工程を含んでなる、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
1,1,1‐トリクロロアセトン(CClC(O)CH)を製造するために、アセトン(CHC(O)CH)を塩素化する工程を含んでなる、請求項20に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ヒドロ)フルオロアルケン類を製造するためのプロセス、特にヒドロ(ハロ)フルオロアルカンの脱ハロゲン化水素によりC3‐7(ヒドロ)フルオロアルケン類を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(ヒドロ)フルオロアルケン類を製造するための既知プロセスは、典型的には、低収率、および/または毒性および/または高価試薬の取扱い、および/または極端条件の使用、および/または毒性副産物の生成のような欠点を有している。これは2,3,3,3‐テトラフルオロプロペンのようなC3‐7(ヒドロ)フルオロアルケン類を製造するための既知方法を考察することで例示される。2,3,3,3‐テトラフルオロプロペンの製造のための方法は、例えばJournal of Fluorine Chemistry(82),1997,171-174で記載されていた。この論文において、2,3,3,3‐テトラフルオロプロペンは四フッ化イオウとトリフルオロアセチルアセトンとの反応により製造されている。しかしながら、この方法は試薬の取扱いに伴う危険性とそれらの費用のために学問的興味にすぎない。2,3,3,3‐テトラフルオロプロペンの製造のための他の方法がUS2931840で記載されている。この場合に、テトラフルオロエチレンとのまたはそれなしのC1クロロフルオロカーボン類の熱分解で、2,3,3,3‐テトラフルオロプロペンを生じると称されていた。しかしながら、記載された収率は非常に低く、しかも極端条件下で危険な化学物質を取扱う必要があった。このようなプロセスは様々な非常に毒性の強い副産物を生じることも予想される。既知方法の欠点に取り組むことに加えて、易利用性原料のみを用いる(ヒドロ)フルオロアルケン類の製造のための新方法を提供することが望まれるであろう。
【0003】
この明細書における既公開文書の掲載または考察は、該文書が業界水準の一部であるかまたは共通一般知識であることの承認として必ずしもうけとるべきでない。
【発明の具体的説明】
【0004】
本発明は、式CFCF=CHX、CHXCX=CXの化合物あるいは線状または分岐C4‐7(ヒドロ)フルオロアルケン(各Xは独立してHまたはFであるが、但しCHXCX=CXにおいて少なくとも1つのXはFである)を製造するためのプロセスを提供することにより、(ヒドロ)フルオロアルケン類を製造するための既知ルートの前記欠陥に取り組み、該プロセスは、塩基の存在下で、式CFCFYCHX、CFCFHCYHX、CHXCXYCXHまたはCHXCXHCXYの化合物あるいは線状または分岐C4‐7ヒドロ(ハロ)フルオロアルカン(各Xは独立してHまたはFであるが、但しCHXCXYCXHおよびCHXCXHCXYにおいて少なくとも1つのXはFであり、YはF、Cl、BrまたはIである)を脱ハロゲン化水素することを含んでなる。別記されていなければ、これは以下で本発明のプロセスと称されることになる。
【0005】
この塩基媒介脱ハロゲン化水素プロセスは、ヒドロ(ハロ)フルオロアルカンを塩基、例えば金属水酸化物またはアミド(好ましくは塩基性金属水酸化物またはアミド、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物またはアミド)と接触させることを含んでなる。
【0006】
別記されていなければ、ここで用いられているような(ヒドロ)フルオロアルケンは、水素原子の少なくとも1つがフッ素で置き換えられた線状または分岐アルケンである。疑義の回避のために、ここで定義されている式CFCF=CHX、CHXCX=CX、CXCXCX=CX、(CX)(CX)C=CX、CFX=CXCXCXCX、CH=CXCXCXCX、CXCF=CXCXCX、CXCX=CXCXCXH、(CX)(CX)CXCX=CX、(CXCX)(CX)C=CX、(CX)(CX)C=CXCX、CX=CX(CXCX、CXCX=CX(CXCX、CXCXCX=CXCXCX、(CX)(CX)CXCF=CXCXおよび(CX)(CX)CXCX=CFCXの化合物が(ヒドロ)フルオロアルケン類である。
【0007】
別記されていなければ、ここで用いられているようなヒドロ(ハロ)フルオロアルカンは、少なくとも1つの、但し全部ではない水素原子がフッ素で置き換えられ、場合により少なくとも1つの水素原子が塩素、臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンで置き換えられた線状または分岐アルカンである。そのため、ヒドロ(ハロ)フルオロアルカン類は、少なくとも1つの水素、少なくとも1つのフッ素と、場合により塩素、臭素およびヨウ素から選択される少なくとも1つのハロゲンを含有している。換言すると、ヒドロ(ハロ)フルオロアルカンの定義にはヒドロフルオロアルカン、即ち少なくとも1つの、但し全部ではない水素原子がフッ素で置き換えられたアルカンを含む。例えば、ここで定義されている式CFCFYCHX、CFCFHCYHX、CHXCXYCXHおよびCHXCXHCXYの化合物がヒドロ(ハロ)フルオロアルカン類(ヒドロ(ハロ)フルオロプロパン類)である。
【0008】
別記されていなければ、ここで用いられているような、(C3‐7)(ヒドロ)フルオロアルケン、ヒドロフルオロアルカンまたはヒドロ(ハロ)フルオロアルカンへの言及は、3〜7の炭素原子を有する線状または分岐(ヒドロ)フルオロアルケン、ヒドロフルオロアルカンまたはヒドロ(ハロ)フルオロアルカン、即ちヒドロ(ハロ)フルオロ‐プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンあるいは(ヒドロ)フルオロ‐プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセンまたはヘプテンに関する。
【0009】
本発明のプロセスにより製造される(ヒドロ)フルオロアルケン類は二重結合を含有し、そのため各個別二重結合でE(entgegen)およびZ(zusammen)幾何異性体として存在しうる。すべてのこのような異性体およびその混合物が本発明の範囲内に含まれる。
【0010】
別記されていなければ、ここで用いられている“脱ハロゲン化水素”(または脱ハロゲン化水素する)という用語について、我々は、例えばヒドロ(ハロ)フルオロアルカンから、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl、HBrまたはHI)の除去に関する。このように、用語“脱ハロゲン化水素”には、ヒドロ(ハロ)フルオロアルカンの“脱フッ化水素”、“脱塩化水素”、“脱臭化水素”および“脱ヨウ化水素”を含む。
【0011】
別記されていなければ、ここで用いられている“アルカリ金属水酸化物”という用語について、我々は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムから選択される化合物または化合物の混合物に関する。同様に、“アルカリ金属アミド”という用語について、我々はリチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドから選択される化合物または化合物の混合物に関する。
【0012】
別記されていなければ、ここで用いられている“アルカリ土類金属水酸化物”という用語について、我々は水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムから選択される化合物または化合物の混合物に関する。同様に、“アルカリ土類金属アミド”という用語について、我々はベリリウムアミド、マグネシウムアミド、カルシウムアミド、ストロンチウムアミドおよびバリウムアミドから選択される化合物または化合物の混合物に関する。
【0013】
本発明のプロセスはいずれか適切な装置、例えばスタティックミキサー、攪拌タンクリアクターまたは攪拌気液分離容器で行われる。本プロセスはバッチ式でもまたは連続的でも行える。バッチ式プロセスまたは連続プロセスはいずれも“ワンポット”式で、または2以上の別々な反応ゾーンおよび/または反応器を用いて行われる。
【0014】
典型的には、本発明のプロセスは−50〜300℃の温度で行われる。好ましくは、本プロセスは20〜250℃、例えば50〜200℃の温度で行われる。
【0015】
本発明のプロセスは0〜30baraの圧力で行われる。
【0016】
本発明のプロセスにおける反応時間は広範囲にわたる。しかしながら、反応時間は典型的には0.01〜100時間、例えば0.1〜50時間、例えば1〜20時間の範囲である。
【0017】
もちろん、本発明のプロセスを行うために好ましい条件(例えば、温度、圧力および反応時間)は、脱ハロゲン化水素されるヒドロ(ハロ)フルオロアルカン、用いられる塩基、および/または触媒の存在などのようないくつかのファクターに応じて変わる、と当業者であれば理解するであろう。
【0018】
本発明のプロセスは、溶媒の存在下または不在下で行われる。溶媒が用いられないならば、ヒドロ(ハロ)フルオロアルカンは、例えば管形反応器において、融解塩基または熱塩基中または上に通される。溶媒が用いられるならば、一部の態様において好ましい溶媒は水であるが、多くの他の溶媒も用いうる。一部の態様では、アルコール(例えばプロパン‐1‐オール)、ジオール(例えばエチレングリコール)およびポリオール、例えばポリエチレングリコール(例えばPEG200またはPEG300)のような溶媒も好ましい。これらの溶媒は単独でまたは組合せで用いられる。別な態様では、極性非プロトン性溶媒として知られるクラスの溶媒が好ましい。このような極性非プロトン性溶媒の例としては、ジグライム、スルホラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびN‐メチルピロリドン(NMP)がある。溶媒の沸点は、好ましくは、反応条件下で過剰圧力を生じないようなものである。
【0019】
好ましい塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、更に好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選択されるアルカリ金属水酸化物、最も好ましくは水酸化カリウムである。
【0020】
他の好ましい塩基は、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムからなる群より選択されるアルカリ土類金属水酸化物、更に好ましくは水酸化カルシウムである。
【0021】
塩基は、典型的には、本発明のプロセスを構成する諸成分の総重量ベースで、1〜50重量%の量で存在する。好ましくは、塩基は5〜30重量%の量で存在する。
【0022】
塩基対ヒドロ(ハロ)フルオロアルカンのモル比は、典型的には1:20〜50:1、好ましくは1:5〜20:1、例えば1:2〜10:1である。
【0023】
上記のように、本発明のプロセスでは好ましくは溶媒として水を用いうる。このように、脱ハロゲン化水素反応では、共溶媒または希釈液の必要性なく、好ましくは少なくとも1種の塩基、例えばアルカリ(またはアルカリ土類)金属水酸化物の水溶液を用いる。しかしながら、共溶媒または希釈液は、例えば系粘度を調整するために、反応副産物に好ましい相として作用するために、または熱質量を増すために用いうる。有用な共溶媒または希釈液としては、本プロセスの平衡または動態と反作用しないまたはそれに負の影響を与えないものであり、アルコール、例えばメタノールおよびエタノール;ジオール、例えばエチレングリコール;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル;エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチルなど;線状、分岐および環状アルカン、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、;フッ素化希釈液、例えばヘキサフルオロイソプロパノール、ペルフルオロテトラヒドロフランおよびペルフルオロデカリンがある。
【0024】
本発明のプロセスは、好ましくは触媒の存在下で行われる。触媒は、好ましくは、例えば水相から、有機相へのイオン化合物の移動を促す、相間移動触媒である。水が溶媒として用いられるならば、水または無機相はアルカリ金属水酸化物の結果として存在し、有機相はフルオロカーボンの結果として存在する。相間移動触媒はこれら異種成分の反応を促進する。様々な相間移動触媒が異なる様式で機能しうるが、それらが脱ハロゲン化水素反応を促進するのであれば、それらの作用メカニズムは本発明においてそれらの有用性を決定するものではない。相間移動触媒はイオン性でもまたは中性でもよく、典型的にはクラウンエーテル、オニウム塩、クリプタンドおよびポリアルキレングリコールとそれらの誘導体(例えば、それらのフッ素化誘導体)からなる群より選択される。
【0025】
所望の反応を行い、所望生成物への選択性に影響を及ぼし、または他よりもある好ましいアルケン異性体、例えばE‐1225yeよりもZ‐1225yeの収率を高めるために、有効量の相間移動触媒が用いられるべきである(下記参照);反応物、プロセス条件および相間移動触媒が選択されたら、限定実験でこのような量が定められる。典型的には、存在するヒドロ(ハロ)フルオロプロパンの量と比較して用いられる触媒の量は0.001〜20モル%、具体的には0.01〜10モル%、例えば0.05〜5モル%である。
【0026】
クラウンエーテルは、エーテル基がジメチレン結合鎖でつながれた環状分子である。クラウンエーテルは、水酸化物のアルカリ金属イオンを受容または保持して、それにより反応を促進しうると考えられる分子構造を形成している。特に有用なクラウンエーテルとしては、18‐クラウン‐6(特に水酸化カリウムとの組合せ)、15‐クラウン‐5(特に水酸化ナトリウムとの組合せ)および12‐クラウン‐4(特に水酸化リチウムとの組合せ)がある。
【0027】
上記クラウンエーテルの誘導体、例えばジベンジル‐18‐クラウン‐6、ジシクロヘキサニル‐18‐クラウン‐6、ジベンジル‐24‐クラウン‐8およびジベンジル‐12‐クラウン‐4も有用である。クラウンエーテルと類似して同目的に有用な他の化合物は、他種のドナー原子、例えばNまたはSによる酸素原子の1以上の置換えという点で異なる化合物である。上記すべてのフッ素化誘導体も用いうる。
【0028】
クリプタンドは、相間移動触媒として本発明で有用な他クラスの化合物である。これらは、適正間隔のドナー原子を含有した鎖で橋頭構造を結合させることにより形成された、三次元ポリ大環状キレート剤である。橋のドナー原子はすべてO、NまたはSでもよく、あるいは該化合物は橋鎖がこのようなドナー原子の組合せを含む混合ドナーマクロサイクルでもよい。適切なクリプタンドとしては、窒素橋頭を(‐OCHCH‐)基の鎖と結合させて生じる二環式分子、例えば〔2.2.2〕クリプタンド(4,7,13,16,21,24‐ヘキサオキサ‐1,10‐ジアザビシクロ〔8.8.8〕ヘキサコサン、商標名Kryptand 222およびKryptofix 222で市販)がある。
【0029】
本発明の塩基媒介プロセスで触媒として用いられるオニウム塩としては、式RおよびRで各々表わされる、四級ホスホニウム塩および四級アンモニウム塩がある。これらの式において、R、R、RおよびRの各々は典型的には独立してC1‐10アルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチルまたはピリジニル)またはアリールアルキル基(例えば、ベンジルまたはC1‐10アルキル置換フェニル)を表わし、Zはハライドまたは他の適切な対イオン(例えば、硫酸水素)である。
【0030】
このようなホスホニウム塩および四級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(商標名Aliquat 336およびAdogen 464で市販)、テトラ‐n‐ブチルアンモニウムクロリド、テトラ‐n‐ブチルアンモニウムブロミド、硫酸水素テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、テトラ‐n‐ブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミドおよびトリフェニルメチルホスホニウムクロリドがある。ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが強塩基条件下で使用上好ましい。
【0031】
他の有用なオニウム塩としては、高温安定性(例えば、約200℃まで)を示すもの、例えば4‐ジアルキルアミノピリジニウム塩、テトラフェニルアルソニウムクロリド、ビス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン〕イミニウムクロリドおよびテトラキス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンイミノ〕ホスホニウムクロリドがある。後者の2化合物は熱濃水酸化ナトリウムの存在下でも安定であると報告されており、したがって特に有用である。
【0032】
相間移動触媒として有用なポリアルキレングリコール化合物は式RO(RO)でで表わされ、ここでRはC1‐10アルキレン基であり、RおよびRの各々は独立してH、C1‐10アルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチルまたはピリジニル)またはアリールアルキル基(例えば、ベンジルまたはC1‐10アルキル置換フェニル)であり、mは少なくとも2の整数である。好ましいRおよびRは双方が同一であり、例えばそれらは双方ともHである。
【0033】
このようなポリアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ジイソプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびテトラメチレングリコール、モノアルキルグリコールエーテル、例えばこのようなグリコール類のモノメチル、モノエチル、モノプロピルおよびモノブチルエーテル、ジアルキルエーテル、例えばテトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびペンタエチレングリコールジメチルエーテル、このようなグリコール類のフェニルエーテル、ベンジルエーテル、およびポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール(平均分子量約300)およびポリエチレングリコール(平均分子量約400)、およびこのようなポリアルキレングリコール類のジアルキル(例えば、ジメチル、ジプロピル、ジブチル)エーテルがある。
【0034】
上記群の1つからの相間移動触媒の組合せと、2以上の群からの組合せまたは混合物も有用である。クラウンエーテルと四級アンモニウム塩、例えば18‐クラウン‐6およびそのフッ素化誘導体とベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが、触媒の現在好ましい群である。
【0035】
本発明のプロセスは、式CFCF=CHXまたはCHXCX=CXの化合物あるいは線状または分岐C4‐7(ヒドロ)フルオロアルケン(各Xは独立してHまたはFだが、但しCHXCX=CXにおいて少なくとも1つのXはFである)を製造するために用いられる。
【0036】
好ましくは、本プロセスは式CFCF=CHXまたはCHXCX=CXの化合物を製造するために用いられる。
【0037】
式CHXCX=CXの化合物はCHXCX=CFで表わされることもある。この化合物は式CHXCHXCYFまたはCHXCYXCHFの化合物を脱ハロゲン化水素することにより製造される。式CHXCX=CFの化合物としては、CHFCH=CF、CHFCF=CF、CHFCH=CF、CHFCF=CF、CHCF=CFがある。
【0038】
一方、式CHXCX=CXの化合物は末端=CF基を有しないこともある。このような化合物の例としては、CHFCH=CHF、CHFCF=CHF、CHFCF=CHがある。
【0039】
式CFCF=CHXの化合物は2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(CFCF=CH、HFC‐1234yf)および1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン(CFCF=CHF、HFC‐1225ye)である。
【0040】
本発明のプロセスは、線状および/または分岐C4‐7(ヒドロ)フルオロアルケンを製造するために用いてもよい。
【0041】
例えば、線状および/または分岐(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類または(ヒドロ)フルオロブタ‐2‐エン類が本発明のプロセスにより製造される。
【0042】
線状(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類は式CXCXCX=CXを有する化合物で表わされ、ここでXはHまたはFであり、少なくとも1つのX=Fである。(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エンの好ましい群は、15〜50℃の範囲で沸点を有している。
【0043】
線状(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類には、式CFCXCX=CX(X=HまたはF)の化合物がある。このような化合物の例としては、CFCFCF=CF、CFCFCF=CFH、CFCHFCF=CF、CFCFCH=CF、CFCFCF=CH、CFCFCH=CHFおよびCFCHFCF=CHFがある。
【0044】
別な線状(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類には、式CXCXCX=CF(X=HまたはF)の化合物がある。このような化合物の例としては、CHFCFCF=CF、CHFCFCF=CF、CHFCFHCF=CF、CHCFCF=CFがある。
【0045】
他群の線状(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類は式CXCXCX=CHF(X=HまたはF)で表わされる。このような化合物の例としては、CHF=CFCFCHF、CHF=CHCHFCF、CHF=CHCHFCF、CHF=CFCHFCHF、CHF=CHCFCHFおよびCHF=CFCHCFがある。
【0046】
更に他群の線状(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類は式CXCXCX=CHで表わされ、ここでX=HまたはFだが、但し少なくとも1つのXはFである。このような化合物の例としては、CH=CFCFCHF、CH=CHCFCF、CH=CHCFCHFおよびCH=CFCFHCFがある。
【0047】
もちろん、ある線状(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類は上記群の2以上に属することもある。
【0048】
分岐(ヒドロ)フルオロブタ‐1‐エン類(イソ(ヒドロ)フルオロブテン類)は式(CX)(CX)C=CXを有する化合物で表わされ、ここでX=HまたはFだが、但し少なくとも1つのXはFである。このような化合物の例としては、CH=C(CHF、CHF=C(CF)(CH)、CF=C(CHF)(CH)、CF=C(CF)(CH)、CH=C(CF、CH=C(CHF)(CF)およびCHF=C(CFがある。
【0049】
本発明のプロセスで製造される(ヒドロ)フルオロブタ‐2‐エン類の例としては、CFCF=CFCF、CFCF=CFCHF、CFCF=CHCF、CFCF=CHCH、CFCF=CFCH、CHFCF=CHCHF、CHFCF=CFCHFおよびCHFCF=CFCHFがある。
【0050】
線状および/または分岐(ヒドロ)フルオロペンタ‐1‐エン類または(ヒドロ)フルオロペンタ‐2‐エン類も本発明のプロセスにより製造される。
【0051】
本発明のプロセスで製造される線状(ヒドロ)フルオロペンタ‐1‐エン類の例としては、式CFX=CXCXCXCXの化合物(XはFまたはHである)および/または式CH=CXCXCXCXの化合物(XはFまたはHだが、但し少なくとも1つのX=Hおよび少なくとも1つのX=F)がある。
【0052】
本発明のプロセスで製造される線状(ヒドロ)フルオロペンタ‐2‐エン類の例としては、式CXCF=CXCXCXの化合物(XはFまたはHである)および/または式CXCX=CXCXCXHの化合物(XはFまたはHだが、但し少なくとも1つのX=F)がある。
【0053】
分岐(ヒドロ)フルオロペンタ‐1‐エン類は式(CX)(CX)CXCX=CXまたは(CXCX)(CX)C=CXを有する化合物で表わされ、ここでX=HまたはFだが、但し少なくとも1つのXはFである。分岐(ヒドロ)フルオロペンタ‐2‐エン類は式(CX)(CX)C=CXCXを有する化合物で表わされ、ここでX=HまたはFだが、但し少なくとも1つのXはFである。
【0054】
線状および/または分岐(ヒドロ)フルオロヘキサ‐1‐エン類または(ヒドロ)フルオロヘキサ‐2‐エン類または(ヒドロ)フルオロヘキサ‐3‐エン類も本発明のプロセスにより製造される。
【0055】
線状(ヒドロ)フルオロヘキサ‐1‐エン類は式CX=CX(CXCXで表わされ、ここでX=HまたはFだが、但し少なくとも1つのXはFである。
【0056】
線状(ヒドロ)フルオロヘキサ‐2‐エン類は式CXCX=CX(CXCXで表わされ、ここでX=HまたはFだが、但し少なくとも1つのXはFである。
【0057】
線状(ヒドロ)フルオロヘキサ‐3‐エン類は式CXCXCX=CXCXCXで表わされ、ここでX=HまたはFだが、但し少なくとも1つのXはFである。本発明のプロセスで製造される線状(ヒドロ)フルオロヘキサ‐3‐エン類としては、式CXCXCF=CXCXCXの化合物(XはFまたはHである)がある。
【0058】
分岐(ヒドロ)フルオロヘキサ‐2‐エン類としては、式(CX)(CX)CXCF=CXCXを有する化合物(X=HまたはF)および/または式(CX)(CX)CXCX=CFCXの化合物(X=HまたはF)がある。
【0059】
例としておよび簡素化のために、別記されていなければ、明細書の残部ではHFC‐1234yfおよび/またはHFC‐1225yeの製造に関して本発明のプロセスを記載する。もちろん、本発明はこれら化合物の製造に限定されない、と当業者であれば理解するであろう。本発明は他の(ヒドロ)フルオロプロペン類と上記のような線状または分岐C4‐7(ヒドロ)フルオロアルケン類を製造するためにも用いられる。
【0060】
HFC‐1234yfおよび1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(CFCH=CHF、HFC‐1234ze)が本発明のプロセスで一緒に製造されることもある。一方、HFC‐1234yfおよびHFC‐1225yeが本発明のプロセスで別々に製造されることもある。
【0061】
HFC‐1234yfは式CFCFYCHまたはCFCFHCYHの化合物を脱ハロゲン化水素することにより製造され、ここでYはF、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClである。
【0062】
HFC‐1234yfは、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパン(CHCFCF、HFC‐245ca)または1,1,1,2,3‐ペンタフルオロプロパン(CHFCHFCF、HFC‐245eb)の脱フッ化水素を含んでなるプロセスにより製造される。HFC‐245caおよびHFC‐245ebはApollo Chemicals Limitedから得られる。一方、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパンは、例えば、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンおよび1,1,2,2‐テトラフルオロ‐1‐クロロプロパンのようなテトラフルオロクロロプロパン類、1,1,1‐トリフルオロ‐2,2‐ジクロロプロパン、1,1,2‐トリフルオロ‐1,2‐ジクロロプロパンおよび1,2,2‐トリフルオロ‐1,1‐ジクロロプロパンのようなトリフルオロジクロロプロパン類、2,2‐ジフルオロ‐1,1,1‐トリクロロプロパン、1,2‐ジフルオロ‐1,1,2‐トリクロロプロパンおよび1,1‐ジフルオロ‐1,2,2‐トリクロロプロパンのようなジフルオロトリクロロプロパン類と、1‐フルオロ‐1,1,2,2‐テトラクロロプロパンおよび2‐フルオロ‐1,1,1,2‐テトラクロロプロパンのようなフルオロテトラクロロプロパン類を含めた多数のヒドロクロロフルオロプロパン類のうち1種以上をフッ素化することにより製造される。1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパン(およびひいては最終的にHFC‐1234yf)は1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンから出発しても製造される。1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパンへ至る上記ヒドロハロ(フルオロ)プロパン前駆体のいずれにおいても、塩素置換基の1以上が臭素またはヨウ素で置き換えられる。
【0063】
HFC‐1234yfを製造するために好ましいヒドロ(ハロ)フルオロプロパン類としては、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3‐ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンおよび1,1,1‐トリフルオロ‐2,2‐ジクロロプロパンがある。1,1,1‐トリフルオロ‐2,2‐ジクロロプロパンがフッ素化されて1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンおよび/または1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパンを与えることは、当業者に理解されるであろう。1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンもフッ素化されて1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパンを生じ、これが次いで脱フッ化水素されてHFC‐1234yfを与える。
【0064】
一方、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンが脱塩化水素されるとHFC‐1234yfを与える。
【0065】
1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンおよび1,1,1‐トリフルオロ‐2,2‐ジクロロプロパンからHFC‐1234yfを製造するために上記された反応経路が以下で示されている。
【化1】
【0066】
別な態様において、HFC‐1234yfは1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンから出発して製造され、後者は1,1,1‐トリフルオロメチルプロペンを塩素化することで容易に製造される。以下で示されるように、1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンからHFC‐1234yfへ至る2つの主要ルートがある、と考えられる。
【化2】
【0067】
ルートBは1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンのフッ素化(例えば、場合によりクロミア含有触媒の存在下で、HFを用いる)経由で進行して1,1,1,2,3‐ペンタフルオロプロパン(HFC‐245eb)を与え、次いでこれが脱フッ化水素されてHFC‐1234yfを与える。一方、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐3‐クロロプロパン(HFC‐245ebへの1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンのフッ素化における中間体である)も脱塩化水素されるとHFC‐1234yfを与える。
【0068】
ルートAは1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンの脱塩化水素により進行して3,3,3‐トリフルオロ‐2‐クロロプロペンを与え、次いでこれがフッ化水素化されて1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンを与える。これら2つの工程は触媒の存在下で1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンをHFと接触させることによりワンポットで行われる。しかしながら、2段階反応ゾーンが好ましいと考えられ、第一ゾーンでは脱塩化水素を促進するために比較的低いHF:有機物比(例えば、約1:1〜約5:1)を用い、第二ゾーンではフッ化水素化を促進するために比較的高いHF:有機物比(例えば、約5:1〜約30:1)を用いる。上記のように、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンはフッ素化されて1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパンを生じ(例えば、場合によりクロミア含有触媒の存在下で、HFを用いる)、次いでこれが脱フッ化水素されてHFC‐1234yfを与える。一方、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンも直接脱塩化水素されるとHFC‐1234yfを与える。
【0069】
要するに、HFC‐1234yfは式CFCFYCHまたはCFFHCYHの化合物、例えばHFC‐245ca、HFC‐245eb、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンまたは1,1,1,2‐テトラフルオロ‐3‐クロロプロパンを脱ハロゲン化水素することで製造される。
【0070】
1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンは市販されているが、安価原料の四塩化炭素(CCl)およびエチレンから出発する合成ルートを経て製造してもよい。これら2種の出発物質はテロマー化されて1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを生じ、次いでこれがフッ素化されて1,1,1,3‐テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1‐トリフルオロ‐3‐クロロプロパンを生じる(例えば、場合によりクロミア含有触媒の存在下で、HFを用いる)。次いで1,1,1,3‐テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1‐トリフルオロ‐3‐クロロプロパンの脱ハロゲン化水素(例えば、NaOHまたはKOHを用いる)で3,3,3‐トリフルオロプロペンを生じ、次いでこれが(例えば塩素で)容易に塩素化されて1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパンを生じる。この反応スキームが以下で要約されている(X=FまたはCl)。
【化3】
【0071】
上記のように、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパンは1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンから出発して製造してもよい。このルート(下記参照)では、1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンがフッ素化(例えば、場合によりクロミア含有触媒の存在下で、HFを用いる)されて1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンを生じ、次いでこれもフッ素化されて1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパンを生じ、次いで脱フッ化水素されてHFC‐1234yfを与える。一方、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンも直接脱塩化水素されるとHFC‐1234yfを与える。
【化4】
【0072】
1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンは、アセトンから出発してHFC‐1234yfへ至るルートで便利な中間体である。このような合成ルートにおいて、アセトンは塩素化(例えば、クロミア触媒で塩素を用いる)されて1,1,1‐トリクロロアセトンを生じ、次いでこれが更に塩素化されて(例えばPClを用いる‐Advanced Organic Chemistry(Ed.M.B.Smith and J.March),Fifth Edition,page 1195参照)、下記のように1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンを生じる。
【化5】
【0073】
HFC‐1225yeは式CFCFYCHFまたはCFCFHCYFHの化合物を脱ハロゲン化水素することで製造してもよく、ここでYはF、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはCl、最も好ましくはFである。このように、HFC‐1225yeは、現在最も好ましくは、下記のようにCFCFHCFH(HFC‐236ea)またはCFCFCHF(HFC‐236cb)の脱フッ化水素により製造される。
【化6】
【0074】
HFC‐1225yeは、下記のように2種の幾何異性体として存在する。
【化7】
【0075】
HFC‐236eaおよびHFC‐236cbは双方ともApollo Chemicals Ltd.から得られる。一方、HFC‐236eaは、例えば、下記のようにヘキサフルオロプロピレンを水素化することで、都合よく製造しうる。
CFCF=CF+H→CFCHFCHF
【0076】
本発明で製造される(ヒドロ)フルオロアルケン類は、例えば冷媒、モノマー、原料および溶媒のような多くのユーティリティを有している。
【0077】
本発明はここで下記実施例により説明されるが、但しそれらに限定されない。本発明は実施例の後で請求項により規定されている。
【実施例】
【0078】
例1〜7
溶媒(10g)、アルカリ金属水酸化物(10g)および(用いられる場合)触媒(0.25g)を温度および圧力計と十字型スターラー装備の50mL Hastalloy C反応器へ入れた。容器を密封し、窒素で圧力検査した。次いでCFCFHCFH(HFC‐236ea)またはCFCFCHF(HFC‐236cb)(10〜15g,97%)の原料を小型供給ボンベから入れ、内容物を表1に掲載された時間にわたり150℃で攪拌しながら加熱した。実験の最後に、揮発性生成物および未変換原料をGC‐MSによる解析のため蒸留により回収した。結果が表1で掲載されている。
【表1】
【0079】
例8〜22
塩基、溶媒および触媒を、用いられる場合は、反応器へ入れた。反応器を密封し、圧力検査し、排気した。次いで秤量済み有機原料を反応器へ移した。次いで反応器とその内容物を秤量してから、室温〜150℃で攪拌しながら45分間加熱した。この温度を1500rpmで攪拌しながら6時間維持した。この後、反応器とその内容物を30分間かけて10℃へ冷却し、攪拌の速度を200rpmに下げた。
【0080】
翌日、反応器とその内容物を再秤量し、次いで反応器を生成物回収のために50℃に再加熱した。生成物と未反応出発物質を秤量済み排気冷却(−78℃)サンプルボンベへ蒸留により回収した。回収された生成物の重量を調べてから、それらをGC‐MSで解析した。利用できるのであれば、原料および生成物サンプルを用いて、GC‐MSを校正した。平均相対感度係数を用いて未知物質を定量した。結果が表2〜4で掲載されている。
【表2】
【表3】
【表4】
【0081】
本発明は以下の態様を含むものである。
[項1]
式CFCF=CHX、CHXCX=CXの化合物あるいは線状または分岐C4‐7(ヒドロ)フルオロアルケン(各Xは独立してHまたはFであるが、但しCHXCX=CXにおいて少なくとも1つのXはFである)を製造するためのプロセスであって、 塩基の存在下で、式CFCFYCHX、CFCFHCYHX、CHXCXYCXH、CHXCXHCXYの化合物あるいは線状または分岐C4‐7ヒドロ(ハロ)フルオロアルカン(各Xは独立してHまたはFであるが、但しCHXCXYCXHおよびCHXCXHCXYにおいて少なくとも1つのXはFであり、YはF、Cl、BrまたはIである)を脱ハロゲン化水素することを含んでなるプロセス。
[項2]
−50〜300℃の温度および0〜30baraの圧力で行われる、項1に記載のプロセス。
[項3]
塩基が、金属水酸化物、金属アミドおよびそれらの混合物から選択される、項1または2に記載のプロセス。
[項4]
塩基がアルカリ金属水酸化物である、項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
[項5]
アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される、項4に記載のプロセス。
[項6]
塩基がアルカリ土類金属水酸化物である、項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
[項7]
アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである、項6に記載のプロセス。
[項8]
プロセスが溶媒中で行われる、項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
[項9]
溶媒が、水、アルコール、ジオール、ポリオール、極性非プロトン性溶媒およびそれらの混合物から選択される、項8に記載のプロセス。
[項10]
溶媒が水であり、プロセスが場合により共溶媒または希釈液の存在下で行われる、項9に記載のプロセス。
[項11]
プロセスが触媒の存在下で行われる、項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
[項12]
触媒がクラウンエーテルである、項11に記載のプロセス。
[項13]
クラウンエーテルが18‐クラウン‐6である、項12に記載のプロセス。
[項14]
触媒が四級アンモニウム塩である、項11に記載のプロセス。
[項15]
触媒がフッ素化されている、項11〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
[項16]
1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン(CFCF=CFH、HFC‐1225ye)、2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(CFCF=CH、HFC‐1234yf)およびそれらの混合物から選択される(ヒドロ)フルオロプロペンを製造するための、項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
[項17]
CFCF=CHが、式CFCFYCHまたはCFFHCYHの化合物を脱ハロゲン化水素することにより製造される、項1〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
[項18]
CFCF=CHが、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロプロパン(CHCFCF、HFC‐245ca)を脱フッ化水素および/または1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパンを脱塩化水素することにより製造される、項1〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
[項19]
CFCF=CHが、1,1,1,2,3‐ペンタフルオロプロパン(CHFCHFCF、HFC‐245eb)を脱フッ化水素および/または1,1,1,2‐テトラフルオロ‐3‐クロロプロパンを脱塩化水素することにより製造される、項16〜18のいずれか一項に記載のプロセス。
[項20]
トリフルオロジクロロプロパン、ジフルオロトリクロロプロパンまたはフルオロテトラクロロプロパンをCHCFCF、1,1,1,2‐テトラフルオロ‐2‐クロロプロパン、CHFCHFCFおよび/または1,1,1,2‐テトラフルオロ‐3‐クロロプロパンへ変換する工程を含んでなる、項18または19に記載のプロセス。
[項21]
トリフルオロジクロロプロパンが、1,1,1‐トリフルオロ‐2,2‐ジクロロプロパン(CFCClCH)および1,1,1‐トリフルオロ‐2,3‐ジクロロプロパン(CFCHClCHCl)から選択される、項20に記載のプロセス。
[項22]
CFCHClCHClを製造するために、3,3,3‐トリフルオロプロペンを塩素化する工程を含んでなる、項21に記載のプロセス。
[項23]
3,3,3‐トリフルオロプロペンを製造するために、1,1,1,3‐テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素する工程を含んでなる、項22に記載のプロセス。
[項24]
1,1,1,3‐テトラフルオロプロパンを製造するために、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンをフッ素化する工程を含んでなる、項23に記載のプロセス。
[項25]
1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを製造するために、四塩化炭素およびエチレンをテロマー化する工程を含んでなる、項24に記載のプロセス。
[項26]
CFCClCHを製造するために、1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンをフッ素化する工程を含んでなる、項21に記載のプロセス。
[項27]
1,1,1,2,2‐ペンタクロロプロパンを製造するために、1,1,1‐トリクロロアセトン(CClC(O)CH)を塩素化する工程を含んでなる、項26に記載のプロセス。
[項28]
1,1,1‐トリクロロアセトン(CClC(O)CH)を製造するために、アセトン(CHC(O)CH)を塩素化する工程を含んでなる、項27に記載のプロセス。
[項29]
一般的に実施例に関してここで記載されているような、式CFCF=CHX、CHXCX=CXの化合物あるいは線状または分岐C4‐7(ヒドロ)フルオロアルケンを製造するためのプロセス。