特許第5777714号(P5777714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5777714-フィルムで被覆された成形品の製造法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777714
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】フィルムで被覆された成形品の製造法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/12 20060101AFI20150820BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20150820BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20150820BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   B32B7/12
   B29C51/10
   B32B27/08
   B29L9:00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-523741(P2013-523741)
(86)(22)【出願日】2011年7月12日
(86)【国際出願番号】JP2011065911
(87)【国際公開番号】WO2013008318
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2014年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康広
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/043087(WO,A1)
【文献】 特開平10−242635(JP,A)
【文献】 特開2005−205877(JP,A)
【文献】 特表2005−529767(JP,A)
【文献】 特開平03−260689(JP,A)
【文献】 特開2001−334575(JP,A)
【文献】 特開2005−059573(JP,A)
【文献】 特開2003−094541(JP,A)
【文献】 特開2007−230592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 49/00−51/46
B29C 63/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体を有し、その表面の一部又は全部がフィルムで被覆された成形品を製造する方法であって、該フィルムは接着層を有し、該接着層が該基体と接しており、該基体の該接着層と接している面の表面粗さ(A)が3〜20μmであり、該方法が、前記基体の表面の一部又は全部を前記フィルムで被覆する工程を含み、該被覆の前におけるフィルムの接着層の該基体と接する面の表面粗さ(B)が3〜20μmであり、該被覆が真空成形法または真空圧空成形法によって行われる、前記方法。
【請求項2】
前記被覆が真空圧空成形法によって行われ、該真空圧空成形法が、下記の順次の工程:
(a)前記フィルムを成形室内の中央部に置くこと、
(b)成形室内の該フィルムより下の部分である下室に前記基体を該フィルムと接するように設置すること、
(c)下室と成形室内の該フィルムより上の部分である上室を1KPa以下に減圧すること、
(d)該フィルムを加熱して軟化させること、および
(e)上室を150〜500KPaに加圧してフィルムと基体を密着させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被覆が真空成形法によって行われ、該真空成形法が、下記の順次の工程:
(a)前記フィルムを加熱して軟化させること、
(b)軟化したフィルムを前記基体に接するように置くこと、および
(c)該フィルムと該基体との間の空間を1KPa以下に減圧してフィルムを基体に密着させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着層が、ガラス転移点が−10〜50℃である接着剤からなる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記接着層が、ガラス転移点が−70〜−10℃である粘着剤からなる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記フィルムが熱可塑性樹脂層および接着層からなり、該熱可塑性樹脂層が、ポリ塩化ビニル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選択される1以上を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧フィルム等のフィルムにより表面が被覆された成形品に関する。特に、化粧フィルムによりその表面が被覆された、自動車の内装品や外装品、および冷蔵庫などの家電製品やパソコン、スマートフォンなどの情報電子機器の筐体などの成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインスツルメントパネル等の部品には、耐擦傷性、耐候性、耐久性、耐汚染性、防食性および意匠性などの機能を付与するために、その部品の材質に合わせて、メラミン系樹脂、イソシアネート系樹脂およびウレタン系樹脂などの硬化性樹脂塗料の直接塗工が施されてきた。
【0003】
また、家電製品筐体などには、耐擦傷性、耐久性、耐汚染性および意匠性などの機能を付与するために、紫外線硬化型のアクリル樹脂などのハードコート塗料の直接塗工が行われてきた。
【0004】
しかし、このような直接塗工には、非塗工面のマスキング、塗布、硬化および仕上げ等の多数の工程を有すること、塗料の溶剤に対処するための作業環境整備や安全衛生管理を行う必要があること、均一に欠陥なく塗工するためには熟練を要すること、スプレー塗布では意匠性の幅に制限のあることなどの問題点があった。また、紫外線硬化型のハードコート塗料は紫外線による劣化が起きやすく、満足な耐候性が得られないという問題があった。
【0005】
そのため、塗料の直接塗工に代えて、片面に粘着剤層を有する化粧フィルムを、真空成形等によって自動車部品等の成形品の表面に貼ることが提案されている(例えば特許文献1〜3)。化粧フィルムを貼付することは、直接塗工における作業性、環境安全性および意匠性等の問題を解決するものの、成形品の、化粧フィルムが貼付されるところの表面と化粧フィルムとの間に空気が残留し、その結果、フィルムで被覆された成形品(以降、被覆成形品ということがある)の表面に「膨れ」を生じ、被覆成形品の外観を損なうという問題があった。この膨れは、被覆直後には目立たない程度の大きさであったとしても、高温環境に曝されると残留空気が大きく膨張し、それにより顕著に外観を損なうことになるため、実に厄介な問題であった。
【0006】
この問題を解消するために、化粧フィルムの粘着剤層に連通溝や脱気通路を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献4および5)。
【0007】
しかしながら、化粧フィルムの粘着剤層に溝等が存在すると、化粧フィルムを被覆した後、フィルム表面の上記溝に対応する部分が落ち込んで被覆成形品の表面に凹凸が浮き出てしまうという問題があった。また、被覆後も溝の中には空気が存在しているため、フィルム表面を手で触れることにより空気が移動して被覆成形品の表面に凹凸が生じるという問題や、被覆成形品が高温環境に晒された場合には空気が大きく膨張して被覆成形品の表面を膨らませて著しく外観性を損ねるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭56−45768号公報
【特許文献2】特許第3016518号公報
【特許文献3】特許第3733564号公報
【特許文献4】特開2004−237510号公報
【特許文献5】特開2000−157346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、基体を有し、その表面がフィルムで被覆された成形品であって、良好な外観を有し、高温環境などの厳しい実使用環境下においても外観が損なわれない成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究した結果、フィルムで被覆されるところの基体の表面粗さを特定の範囲に制御することにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は、基体を有し、その表面の一部又は全部がフィルムで被覆された成形品の製造法において、該フィルムは接着層を有し、該接着層が該基体と接しており、該基体の該接着層と接している面の表面粗さ(A)が3〜20μmであり、該方法が、前記基体の表面の一部又は全部を前記フィルムで被覆する工程を含み、該被覆の前におけるフィルムの接着層の該基体と接する面の表面粗さ(B)が3〜20μmであり、該被覆が真空成形法または真空圧空成形法によって行われる、前記方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、フィルムで被覆された成形品は、フィルムと基体との間に空気の残留がないので、優れた表面外観を有し、かつ、高温環境など厳しい実使用環境下においても外観が損なわれず、優れた耐久性を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】真空成形法を説明する図である。
図2】真空圧空成形法を説明する図である。
図3】本発明の成形品の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の成形品は、基体を有し、その表面の一部または全部がフィルムで被覆されたものである。上記フィルムは基材層と接着層を有し、接着層が基体と接することにより基体を被覆している。
【0015】
本発明の成形品は、上記フィルムの接着層と接するところの基体表面の表面粗さ(A)が3〜20μm、好ましくは6〜15μmであることを必要とする。上記基体表面の表面粗さ(A)が上記範囲であることにより、上記基体表面にフィルムを貼ったとき、上記基体表面とフィルムとの間の空気が十分に抜けて残留しないので、得られる成形品は、良好な外観を有し、また、高温環境に曝されても良好な外観が損なわれない。上記表面粗さ(A)が3μm未満では、十分な空気抜け効果が得られない。上記表面粗さ(A)が20μmを超えると、被覆した後のフィルムの表面に基体表面の形状が凹凸模様として浮き出て外観性を損ねるとともに、フィルムと基体との接着性が低下する。更には、フィルムと基体との間に空気が残留し易くなり、高温環境において膨れが発生し易くなる。なお、基体の、上記フィルムで被覆されない部分の表面形状は任意であり、平滑であってもよく、より大きな表面粗さを有していてもよい。
【0016】
なお、本明細書における表面粗さは、最大高さ平均(Rtm)である。最大高さ平均は、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、その測定長さLを5等分し、5等分された各々の区間の最大高さを平均した値である。
【0017】
上記基体の材質は、自動車部品や家電製品筐体等に通常使用されるものであれば特に制限されない。自動車部品や家電製品筐体等の表面への化粧フィルムによる被覆は通常、真空成形法や真空圧空成形法で行われ、したがって、基体の材質は一般に、そのような成形法に耐えうるものである。例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの金属材料ならびに、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、アクリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂などから選択される1以上の樹脂材料を適宜選択することができる。
【0018】
基体の材質が金属材料の場合には、絞り加工等により所望の形状の基体を得ることができ、樹脂材料の場合には、射出成形等により所望の形状の基体を得ることができる。こうして得られる基体の表面は平滑であり、表面粗さは3μm未満である。
【0019】
所望の形状を有する基体は、特定の表面粗さ(A)を有するように、表面が粗面化される。粗面化する方法は特に制限されない。基体の表面を直接的に粗面化する方法として、サンドブラスト、サンダー、エッチング、エンボス、艶消し塗装などの方法を挙げることが出来る。また、基体を射出成型により、あるいはダイカスト成型により得る際に、金型として、その表面をサンドブラスト、サンダー、エッチングなどの方法で粗面化されたものを使用することにより、金型の面を転写させて基体の表面を粗面化する方法を挙げることが出来る。
【0020】
本発明の成形品は、基体の表面にフィルムの接着層が接するようにフィルムを貼ることにより得ることができる。このとき、貼り付けの前におけるフィルムの接着層の表面粗さ(B)が3〜20μmであることが好ましく、より好ましくは6〜15μmである。上記表面粗さ(B)が上記範囲にあると、フィルムを基体に貼り付けるときに良好な空気抜け効果が得られ、かつ接着性および耐久性は良好に保持されたままである。上記表面粗さ(B)が3μm未満では十分な空気抜け効果が得られない場合がある。また、20μmを超えると、被覆した後のフィルムの表面に接着層の表面形状が凹凸模様として浮き出てしまい、外観性を損ねることがある。また、フィルムと基体の接着性が低下し易くなる。更には、フィルムと基体との間に空気が残留し易くなり、高温環境において膨れが発生し易くなる。
【0021】
接着層の表面粗さを制御する方法としては、剥離フィルムの剥離面を粗面化し、それを接着層に転写する方法を挙げることができる。剥離面が粗面化された剥離フィルムを得る方法としては、剥離フィルムのための基材フィルム表面をサンドブラスト、サンダー、エッチング、エンボスおよび艶消し塗装などの方法により粗面化した後、剥離剤を塗布する方法、及び剥離フィルムのための基材フィルム表面に剥離剤を塗布し、乾燥・硬化した後、エンボスにより粗面化する方法などを挙げることができる。また、真空成形等によるフィルム被覆成形の直前に、接着層表面を直接エンボスする方法を挙げることができる。
【0022】
上記接着層を構成する材料は、基体及びフィルム基材層に対して十分な粘着・接着強度を発現するものであればどのようなものでも良い。例えば、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、天然ゴム系、エポキシ樹脂系、ポリイソブチレン系、クロロプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系などの慣用の接着剤や粘着剤が使用可能である。なお、接着層は、フィルムと基体との貼合において、それらの間に空気が残留しないように十分に変形することができる程度の柔らかさを有する必要があり、かつ、不必要な流動等が起きない程度の硬さを有する必要がある。具体的には、接着剤の場合には、ガラス転移点が−10〜50℃であるものが好ましく、粘着剤の場合には、ガラス転移点が−70〜−10℃のものが好ましい。また粘着剤および接着剤の何れも、粘度は5~30Pa・s(25℃)のものが好ましい。接着剤としては東洋紡績株式会社製バイロン50ASなどを、粘着剤としては綜研化学株式会社製SKダイン1309などを好適に用いることが出来る。
【0023】
上記フィルムは、接着層の他に基材層を有する。上記基材層を構成する材料は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、非結晶性、低結晶性又は結晶性のポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)やスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル共重合樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合樹脂及びその水素添加物などのスチレン系樹脂、ポリアミド、アクリル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂のフィルム、及びこれらの熱可塑性樹脂を2種以上含む樹脂組成物のフィルムが挙げられ、無延伸フィルム、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムを包含する。真空成形法や真空圧空成形法への適性から、ポリ塩化ビニル樹脂や非結晶性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂の無延伸フィルムが特に好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂フィルムとしては、リケンテクノス株式会社製S12109 Fc1174、非晶性ポリエステル樹脂フィルムとしては、リケンテクノス株式会社製FET101、アクリル樹脂フィルムとしては住友化学株式会社製テクノロイS001Gを好適に用いることが出来る。
【0024】
本発明の成形品は、好ましくは真空成形法や真空圧空成形法により、上記基体表面を上記フィルムで被覆することにより製造される。
【0025】
真空成形法の一例を図1に示す。真空成形を行う場合、まず、図1(a)に示されるように、フィルム(1)を赤外線ヒーター(2)等で加熱し軟化させる。続いて、軟化したフィルム(1)を赤外線ヒーター(2)から外し、速やかに基体(3)の上に被覆する(図1(b))。この後、フィルム(1)と基体(3)の間の空間(4)を減圧にしてフィルム(1)を基体(3)に密着させて、フィルムで被覆された成形品(5)を得る(図1(c))。上記空間(4)の圧力は、10KPa以下であるのが好ましく、より好ましくは1KPa以下である。空間(4)をこのように減圧にすることにより、フィルム(1)と基体(3)とを十分密着させることができ、したがって、フィルムと基体との間に空気の残留を生じない。空間(4)の圧力が上記範囲よりも高いと、基体とフィルムとの間に空気が残留し易くなる。なお、密着力は、空間(4)の圧力が小さいほど大きくなるが、圧力を小さくするのは加速度的にコストがかかること、及び基体やフィルムの機械強度を考慮すれば、実用的には、空間(4)の圧力の下限は10−5KPa程度である。
【0026】
図2は、真空圧空成形法の一例を示す図である。真空圧空成形では、まず、成形室内の中央部にフィルム(1)を置き、中央下部に基体(6)を設置し、上記室を密閉し、上室(7)と下室(8)を同じ減圧度で減圧する(図2(a))。このときの上室(7)と下室(8)の圧力は、真空成形と同様に、好ましくは10KPa以下、より好ましくは1KPa以下である。十分に減圧されたところで赤外線等のヒーター(9)によりフィルム(1)を加熱して軟化させ、次いで、十分に軟化したフィルム(1)と基体(6)を接触させる(図2(b))。この後、下室(8)は減圧のままで、上室(7)のみを大気圧以上にしてフィルム(1)と基体(6)を十分密着させて(図2(c))、フィルムで被覆された成形品(10)を得る(図2(d))。図2(c)における上室(7)の圧力は、100〜1000KPaであるのが好ましく、より好ましくは150〜500KPaである。上室(7)をこのような圧力にすることにより、フィルム(1)と基体(6)とを十分密着させることができ、したがって、フィルムと基体との間に空気の残留を生じない。図2(c)において、上室(7)の圧力が上記範囲よりも小さかったり、下室(8)の圧力が10KPaより大きかったりした場合には、基体とフィルムとの間に空気が残留し易くなる。また、上室(7)の圧力が上記範囲よりも大きい場合には、真空圧空成形時に基体やフィルムが破損する場合がある。なお、密着力は、下室(8)の圧力が小さいほど大きくなるが、圧力を小さくするのは加速度的にコストがかかること、及び基体やフィルムの機械強度を考慮すれば、実用的には、下室(8)の圧力の下限は10−5KPa程度である。
【0027】
本発明の成形品および製造法は、表面保護や意匠付与を目的としてその表面がフィルムで被覆されるところの自動車インスツルメントパネル、窓ピラーやバンパーなどの自動車外装樹脂部品、テレビの筐体、パソコンやスマートフォン等情報電子機器の筐体等に適用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜32および比較例1〜6
基体の製造
(1)樹脂製基体(ア)の製造
テクノポリマー株式会社製のABS/PCアロイ樹脂(エクセロイ(商品名)CK50)を温度100℃で4時間かけて予備乾燥した後、三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社製の100トン射出成形機S−2000i 100Aを使用して、シリンダー温度260℃、金型温度70℃、射出速度250mm/sec、保持圧50MPaにて射出成形を行い、図3に示す形状の熱可塑性樹脂製の基体を得た。図3は、実施例1の成形品を写真撮影したものである。この基体の表面に、新東工業株式会社製のブラスト機(マイブラストMY−30D(商品名))を用いて、空気圧0.3MPaおよび角度30〜60°の条件で、ガラスビーズJ−220(中心粒度75〜45μm)を噴き付けた。噴き付け時間は、基体の表面が所定の表面粗さになるように1〜20秒程度の範囲で適宜調節した。噴き付けた後、基体を十分に水洗し、乾燥させて、所定の表面粗さ(A)を有する樹脂製基体(ア)を得た。
【0030】
(2)金属製基体(イ)の製造
コマツ産機株式会社製のプレス機(OBS80S(商品名))を使用して、日本軽金属株式会社製のアルミ板(A5052(商品名)、厚み2mm)の絞り加工を行い、基体(ア)と同様の形状を有する金属製の基体を得た。この基体の表面に、上記樹脂製基体と同様の方法でガラスビーズを噴き付けて所定の表面粗さ(A)を有する金属製基体(イ)を得た。
【0031】
表面粗さの測定
上記で得られた樹脂製および金属製の基体の表面粗さ(A)(最大高さ平均(Rtm))を、株式会社東京精密製の粗度計(ハンディサーフE−40A)を用いて測定した。後述するフィルムの表面粗さ(B)(最大高さ平均(Rtm))についても同様に測定した。
【0032】
フィルムの製造
(1)アクリル系粘着剤層を有するフィルム(α)の製造
綜研化学社製のアクリル系粘着剤(SKダイン1309(商品名)、組成:アクリル酸及びアクリル酸エステル)および綜研化学社製の硬化剤(L−45、組成:トリレンジイソシアネート)を、溶剤としてのトルエンおよび酢酸エチルと共に1000:6:100:100の重量比で混合し、室温にて2分間よく攪拌した。この混合物を、東レフィルム加工社製の剥離フィルム(セラピールWZ(商品名)、厚み38μm)に塗布し、100℃にて2分間乾燥させて厚み30μmの粘着剤層を得た。この粘着剤層の上に、基材層としての、リケンテクノス株式会社のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETG樹脂フィルム、SET329 FZ26401(商品名)、厚み100μm)を貼り合わせて、アクリル系粘着剤層を有するフィルム(α)を得た。なお、粘着剤のガラス転移点は−25℃、粘度は10Pa・s(25℃)であった。また、粘着剤層の剥離フィルムと接している面の表面粗さは、2μmであった。
【0033】
(2)種々の表面粗さを有するアクリル系粘着剤層を有するフィルム(α)の製造
上記(1)のフィルムの製造において、剥離フィルムとして、その表面が以下のように処理されたユニチカ株式会社製エンブレットS100を使用した以外は、上記フィルムの製造と同様にして、アクリル系粘着剤層を有し、かつ粘着剤層の剥離フィルムと接している面が種々の表面粗さを有するフィルム(α)を得た。剥離フィルムは、上記エンブレットS100の表面に、新東工業株式会社製のブラスト機(マイブラストMY−30D)を用いて空気圧0.3MPaおよび角度30〜60°の条件でガラスビーズJ−220(中心粒度75〜45μm)を噴き付け、水洗後乾燥し、上記表面をシリコーン処理したものである。噴き付け時間は、剥離フィルムの粘着剤層と接する面が所定の表面粗さ(B)になるように1〜20秒程度の範囲で適宜調節した。
【0034】
(3)ポリエステル系接着剤層を有するフィルム(β)の製造
上記(2)のフィルムの製造において、アクリル系粘着剤層に代えて、下記のポリエステル系接着剤層を使用した以外は、上記(2)のフィルムの製造と同様にして、ポリエステル系接着剤層を有するフィルム(β)を得た。上記接着剤層は、以下のようにして得た。酸成分としてのテレフタル酸、イソフタル酸およびアジピン酸を30:30:40のモル比で有し、グリコール成分としての1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールを25:75のモル比で有するように、これらの化合物を適当量配合し、触媒(テトラブチルチタネート)の存在下で加熱して、熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂を合成した。得られた熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂を溶剤(メチルエチルケトン)に溶解し、固形分30質量%の溶液とした。この溶液にポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、「コロネートHX」(ヘキサメチレンジイソシアネート)、固形分100%)を2当量加え、室温にて2分間よく攪拌した。この混合物を、上記(2)と同様の剥離フィルムに塗布して厚み30μmの接着剤層を得た。なお、ガラスビーズの噴き付け時間は、接着剤層の、剥離フィルムと接する面の表面粗さ(B)が13μmになるように調節した。また、接着剤のガラス転移点は23℃、粘度は25Pa・s(25℃)であった。
【0035】
上記のようにして得た基体およびフィルムを用い、図1に示す真空成形法または図2に示す真空圧空成形法によって、基体の表面がフィルムで被覆された成形品を得た。得られた成形品を室温で24時間以上放置した後、下記試験を行った。結果を、使用した基体、フィルムおよび成形法とともに、表1に示す。なお、表1において、真空圧空成形法の場合の下室(8)の圧力および上室(7)の圧力は、図2(c)における圧力である。
【0036】
試験
(1)外観性
成形品のフィルム表面の外観を下記の評価基準にしたがって目視評価した。
○:膨れや凹凸が認められない。
△:極僅かな膨れや凹凸が認められる。
×:指で触れて引っかかる程度の大きな膨れや凹凸が認められる。
【0037】
(2)接着性
成形品のフィルム表面に100×25mmの切り込みを入れ、一方の端部を引き剥がし、この端部と成形品の端部をA&D製テンシロンRTG−1310引張試験機のチャックに固定し、引張速度300mm/minで剥離強度を測定した。
○:剥離強度が30N/25mm以上
△:剥離強度が20N/25mm以上30N/25mm未満
×:剥離強度が20N/25mm未満
【0038】
(3)耐熱性(高温暴露後の外観性)
成形品を100℃のギヤーオーブンに168時間放置した後に取り出し、更に室温で1時間以上放置した後、成形品の外観を下記の評価基準にしたがって目視評価した。
○:成形品に膨れや凹凸などが認められない。
△:成形品に極軽微な膨れや凹凸などが認められる。
×:成形品に指で触れて引っかかる程度の大きな膨れや凹凸が認められる。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示されるように、本発明に従う成形品は、外観性、接着性および耐熱性に優れる。一方、基体の表面粗さ(A)が本発明の下限未満である比較例1、3および5の成形品は外観性および耐熱性に劣り、表面粗さ(A)が本発明の上限を超える比較例2、4および6の成形品は外観性、接着性および耐熱性に劣った。なお、実施例24は、真空圧空成形における上室(7)の圧力が1300KPaと高かったので、得られる成形品の基体に変形を生じた。
【符号の説明】
【0041】
1 フィルム
2 ヒーター
3 基体
4 フィルムと基体との間の空間
5 成形品
6 基体
7 上室
8 下室
9 ヒーター
10 成形品
図1
図2
図3