(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777720
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】タービン機械の部品の動作状態を監視する診断システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20150820BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
F02C7/00 A
F01D25/00 V
F01D25/00 W
【請求項の数】24
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-534931(P2013-534931)
(86)(22)【出願日】2011年10月3日
(65)【公表番号】特表2013-541668(P2013-541668A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011054541
(87)【国際公開番号】WO2012078239
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年10月2日
(31)【優先権主張番号】12/909,194
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル、デイヴィド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン、ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウレリッチ、ナンシー エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ゾンボ、ポール ジェイ
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−65803(JP,A)
【文献】
特表2010−513877(JP,A)
【文献】
特開平9−310604(JP,A)
【文献】
特開平2−23208(JP,A)
【文献】
特開昭59−60006(JP,A)
【文献】
特表2010−520961(JP,A)
【文献】
特開2010−175539(JP,A)
【文献】
特開2009−150883(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0177485(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0017821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン機械の部品の動作状態を監視する診断システムであって、
前記タービン機械の部品から間隔をとって前記タービン機械に対して配置され、前記タービン部品の動作状態を検出する非接触センサであって、該センサの視野によって決定される前記部品の規定された領域を監視して、前記動作状態を表すデータ信号を生成する非接触センサと、
前記タービン部品に搭載され、前記タービン部品上で該部品に対して所定の座標に配置された無線ポイントセンサであって、前記非接触センサと同じ動作状態を監視して、前記動作状態を表すデータまたはデータ信号を生成する少なくとも1つの無線ポイントセンサと、
前記非接触センサおよび前記無線ポイントセンサとデータ通信で連結されたデータ取得および処理コントローラであって、前記無線ポイントセンサからの前記動作状態データを使用して、前記非接触センサ、または前記非接触センサから受け取られたデータを較正するように構成されている該コントローラと、を備え
前記非接触センサは、第1の推定精度範囲で前記動作状態を検出し、前記無線ポイントセンサは、前記第1の推定精度範囲よりも高い第2の推定精度範囲で前記動作状態を検出するように構成されている診断システム。
【請求項2】
前記無線ポイントセンサが、前記タービン部品上で、前記非接触センサの視野の中で、かつ前記非接触センサによって監視される前記タービン部品の前記規定された領域の中に配置されている、請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
前記無線ポイントセンサの少なくとも1つが、前記タービン部品上で、前記非接触センサの視野の中で、かつ前記非接触センサによって監視される前記タービン部品の前記規定された領域の中に配置されている、請求項1に記載の診断システム。
【請求項4】
前記タービンの動作中に、前記部品が前記非接触センサの視野へ入り、および視野から出るように前記非接触センサに対して移動する、請求項1に記載の診断システム。
【請求項5】
前記部品が、前記タービン機械の回転軸の周りを回転する複数のタービン翼を1つのタービン段の中に含む前記タービン機械の動翼である、請求項4に記載の診断システム。
【請求項6】
前記動作状態が、前記部品の表面温度、振動モードまたはひずみである、請求項1に記載の診断システム。
【請求項7】
前記動作状態が、前記部品のひずみ、前記部品を横切るガスフローの化学組成、前記部品を横切るガス速度、前記部品を横切るガス圧、または部品の摩耗または亀裂である、請求項1に記載の診断システム。
【請求項8】
前記非接触センサが、前記規定された領域にわたる前記動作状態の複数の測定値に関連するデータを伝送し、1つまたは複数のこれらの測定値の座標が特定され、前記無線ポイントセンサの座標と同じであるか、または前記無線ポイントセンサ座標の所定の範囲内にある特定された座標を有する少なくとも1つのそのような測定値のデータが、前記無線ポイントセンサデータに基づいて較正される、請求項2に記載の診断システム。
【請求項9】
前記無線ポイントセンサ座標と同じ座標、または前記無線ポイントセンサ座標の所定の範囲内の座標を有する前記非接触センサからの前記1つまたは複数の測定値の前記較正されたデータの較正に基づいて、複数の前記非接触センサ測定値のデータが較正される、請求項1に記載の診断システム。
【請求項10】
前記データ取得および処理コントローラがリアルタイムで測定値およびデータ較正を提供するようにオンライン構成され、または前記データ取得および処理コントローラがオフラインで処理後の測定値およびデータ較正を提供するように構成されている、請求項1に記載の診断システム。
【請求項11】
タービン機械の部品の動作状態を監視する診断システムであって、
前記タービン機械の部品から間隔をとって前記タービン機械に対して配置され、前記タービン部品の動作状態を検出する非接触センサであって、該センサの視野によって決定される前記部品の規定された領域を監視して、前記動作状態を表すデータ信号を生成する非接触センサと、
前記タービン部品の上に搭載され、前記タービンの上で、前記部品に対して所定の座標に、かつ前記非接触センサによって監視される規定された領域の中に配置された無線ポイントセンサであって、前記非接触センサと同じ動作状態を監視して、前記動作状態を表すデータ信号を生成する少なくとも1つの無線ポイントセンサと、
前記非接触センサおよび前記無線ポイントセンサとデータ通信で連結されるデータ取得および処理コントローラであって、前記無線ポイントセンサによって生成された高忠実データまたはデータ信号と比較して、前記非接触センサによって生成された低忠実データまたはデータ信号を較正するように構成されている該コントローラと、を備え
前記非接触センサは、前記無線ポイントセンサによって生成されたデータまたはデータ信号と比較して低忠実なデータまたはデータ信号を提供し、前記無線ポイントセンサは、前記非接触センサによって生成されたデータまたはデータ信号と比較して高忠実な信号を提供するように構成されている診断システム。
【請求項12】
前記データ取得および処理コントローラが、タービン部品プロフィールに関連するデータを備え、該データは前記プロフィールの座標および前記部品上の前記無線ポイントセンサの座標データを含み、前記コントローラが、前記非接触センサによって受け取られた低忠実データまたはデータ信号を較正するため、前記無線ポイントセンサの前記座標データと同じであるかまたは該座標データの所定の範囲内にある前記非接触センサから受け取った前記動作状態データの座標を特定するように構成されている、請求項11に記載の診断システム。
【請求項13】
前記非接触センサから受け取った動作状態データが、前記規定された領域にわたって検出された動作状態の複数の測定値を含み、前記無線ポイントセンサの同じ座標または所定の範囲の中の座標を有する前記動作状態の較正に基づいて、前記複数の測定値に関連づけられたデータが較正される、請求項12に記載の診断システム。
【請求項14】
前記タービン部品が前記タービンの単一段中の複数の部品を含み、前記非接触センサが、前記タービン段の中の同じ1つまたは同じ複数の部品の動作状態を、前記段の中の前記部品の各々についての前記検出された動作状態を表すものとして検出する、請求項11に記載の診断システム。
【請求項15】
前記部品が、タービンもしくはコンプレッサの静翼、またはタービンもしくはコンプレッサの回転中の動翼である、請求項14に記載の診断システム。
【請求項16】
タービン機械の部品の動作状態を監視する診断方法であって、
タービン機械の部品の規定された領域にわたり前記部品から間隔をとった固定位置から前記部品に関連する動作状態を検出するステップと、
前記部品上で、前記規定された領域の中に所定の座標を有する前記部品上の少なくとも1つの位置から、前記部品に関連する同じ動作状態を検出するステップと、
前記固定位置および間隔をとった位置から、前記動作状態を表す低忠実データまたはデータ信号を生成するステップと、
前記部品上の前記少なくとも1つのポイントから、前記同一動作状態を表す高忠実データまたはデータ信号を生成するステップと、
前記高忠実データおよびデータ信号と比較して前記低忠実データおよびデータ信号を較正するため、前記低忠実データまたはデータ信号と高忠実データおよびデータ信号を処理するステップと、を含む診断方法。
【請求項17】
前記タービン機械が複数の段を備え、かつ各々の段で複数の同様な部品を含み、該複数の同様な部品が同期して働いて前記タービン機械の動作のために所望の機能を遂行し、さらに、
前記部品に対し各々の部品から間隔をとった1つまたは複数の固定位置から、複数の前記同様な部品の上の動作状態を、各々のそのような部品の規定された領域にわたり検出するステップと、
前記複数の部品の1つまたは複数の上で、前記規定された領域の中に所定の座標を有する前記部品上の位置から、前記1つまたは複数の部品に関連する同じ動作状態を検出するステップと、を含む、請求項16に記載の診断方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数の同様な部品上の1つのポイントで前記動作状態を検出する前記ステップが、1つだけの部品の上で前記動作状態を検出することを含む、請求項17に記載の診断方法。
【請求項19】
前記の同様な部品が、前記動作状態が検出される前記固定位置に対して相対的に移動する、請求項17に記載の診断方法。
【請求項20】
前記の同様の部品が、前記動作状態が検出される前記固定位置に対して静止している、請求項17に記載の診断方法。
【請求項21】
前記部品上の1つのポイントで前記動作状態を検出する前記ステップが、全ての部品ではなく少なくとも1つの部品上で前記動作状態を検出することを含む、請求項17に記載の診断方法。
【請求項22】
前記低忠実データまたはデータ信号と高忠実データおよびデータ信号を処理するステップが、前記高忠実データと比較して前記低忠実データを較正するため、前記の同様な部品の1つについて動作状態を表す前記低忠実データおよび前記の同様な部品の他の1つについて同じ動作状態を表す前記高忠実データを処理することを含む、請求項16に記載の診断方法。
【請求項23】
前記高忠実データを生成するために前記動作状態が検出される前記位置座標と同じ座標または所定の範囲内の座標を有する前記動作状態の測定値を表す低忠実データの座標を特定するステップと、
前記高忠実データと比較して前記特定された座標における前記低忠実データを較正するステップと、の各ステップをさらに含む、請求項16に記載の診断方法。
【請求項24】
前記動作状態を表す低忠実データを生成する前記ステップが、前記動作状態の複数の測定値を生成することを含み、前記低忠実データの座標を特定する前記ステップが、前記動作状態の少なくとも1つの測定値の座標を特定することを含み、前記低忠実データを較正する前記ステップが、前記動作状態の複数の測定値を表すデータを較正することを含む、請求項23に記載の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にタービンの動作環境を監視することに関し、具体的には、個々の部品の状態に関するデータの伝送が可能な部品の動作状態を監視することに関する。加えて、本発明は、タービン機械の部品の動作状態を監視する非侵入測定システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼タービンは、多様な応用、例えば、発電プラントにおける発電機の駆動、または船舶もしくは航空機の推進に使用される。現代のガスタービンエンジンの中の燃焼温度は、より高い効率のエンジンに対する需要に応じて上昇し続けている。ガスタービンエンジンの中に存在する腐食性高温環境に耐えるため、超合金材料が開発された。しかしながら、超合金材料でも、何らかの形態の冷却および/または熱絶縁なしに、現世代のガスタービンエンジンの高温燃焼ガスへの長時間の露出に耐え得ない。
【0003】
ガスタービンエンジンの様々な高温ガス路部品を保護するため、断熱コーティングが広く使用されている。そのようなコーティングの信頼性は、機械の全体的信頼性に対して極めて重要である。そのようなコーティングの設計限界は、主として実験室データによって決定される。しかしながら、実際のガスタービン環境の応力および温度へ供されたときの断熱コーティング挙動の検証は、コーティング限界の一層良好な理解に必須である。そのような現実世界の動作環境データは、特にエンジンの動作中に移動する部品、例えば、タービンの動翼について、取得するのが非常に困難である。
【0004】
現代のタービンエンジン、例えば、発電用ガスタービンまたは商用および軍用航空機エンジンの極度の精巧さにも拘らず、設計者および運転者は、動作中のタービンエンジン部品の内部状況に関してほとんど情報を有しない。これは過酷な動作条件に起因する。この過酷な動作条件は、極めて重要なエンジン部品の信頼性のある情報を収集する従来のセンサの使用を妨げてきた。
【0005】
改善された燃料効率および性能(増加されたスラスト)を介してガスタービン効率を増加させるための現在も続く探究は、タービンエンジンのエンジン動作温度の上昇を要求する。改善されたエンジン設計および高温性能を有する材料の使用は、燃料効率および性能への解決を提供するが、信頼性の問題が残る。高温ガス路に曝される材料は、材料の設計マージンへ一層接近して動作するようになってきており、ゆえに、設計モデルの検証および材料予測の開発を必要とする。
【0006】
タービンエンジンは、様々な露出温度、故障モード、および使用法を有する広範囲の部品材料から成っている。さらに、ガスタービン環境は、高い温度、回転要素への高い求心性加速度によって特徴づけられ、しばしば高伝導性金属材料によって取り囲まれている。これは、極めて重要な要素、例えば、回転中のディスクおよび動翼を含めて、部品のリアルタイム状態を監視するセンサの導入を複雑にしている。回転部品、例えば、回転中の動翼から設計データを取得するための現在の技術水準には、動翼からスリップリングへリード線を送るためのディスクおよびロータの修正あるいは翼よりも低い温度および遠心荷重を有するロータ端部に置かれた遠隔測定システムが含まれる。ディスクおよびロータは、高価で長期リードタイムのタービン部品である。その修正は、しばしばロータ寿命の大幅な低減を引き起こし得る。ロータの変更には数百万ドルのコストがかかり、タービンエンジンの完全分解が必要となり、一カ月を超える長期の機能停止を必要とする。電力会社は、タービンが発電しないとき、典型的には一日に約百万ドルを失う。この理由によって、長期の機能停止は望ましくない。
【0007】
表面マッピング技法、例えば、赤外線およびマイクロ波による反応測定技法が、ディスクおよびロータを修正する必要なしに、タービンのコンプレッサおよびタービン部分の中の回転部品からリアルタイム情報を取得するために使用される。例えば、赤外線カメラは、回転中の動翼および静翼を含む様々な部品の温度マッピングデータを取得するために使用される。加えて、翼端タイミング測定(blade tip-timing measurement)としても知られる非侵入応力測定システムは、電磁放射、多くの場合、赤外線またはマイクロ波を使用して、回転中の動翼の偏位または振動モードを測定する反応測定技法を提供する。しかしながら、局所的な較正なしには、そのような表面測定技法の感度および正確性は十分でない。
【0008】
タービン部品の上に直接搭載されたポイントセンサを含む、無線遠隔測定システムは、部品温度および振動の一層正確な測定を提供することができる。しかしながら、そのようなシステムは、それらのシステムが常在するポイント場所についてのみ、およびこれらのシステムが置かれた部品についてのみの情報を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示および特許請求される発明の実施形態は、複数のポイントセンサによって取得された高忠実データを、複数の同じ部品に関連づけられ、表面測定技法によって同時に取得された広区域データと結合する診断システムから成る。複数の同じ部品の上の視野に置かれた複数のポイントセンサによる表面測定技法の較正により、複数のタービン部品の広い表面区域から高忠実データが得られる。これまで、そのような複数の無線ポイントセンサを用いて複数のタービン部品から取り出されたデータを、非侵入診断機器を介して取得されたデータと結合して、一層正確な表面マッピング技法を提供することはなかった。
本発明の主なる手段は、特許請求の範囲における請求項1,11および16に記載されたとおりである。即ち、
「タービン機械の部品の動作状態を監視する診断システムであって、前記タービン機械の部品から間隔をとって前記タービン機械に対して配置され、前記タービン部品の動作状態を検出する
非接触センサであって、該センサの視野によって決定される前記部品の規定された領域を監視して、前記動作状態を表すデータ信号を生成する
非接触センサと、前記タービン部品に搭載され、前記タービン部品上で該部品に対して所定の座標に配置された無線ポイントセンサであって、前記
非接触センサと同じ動作状態を監視して、前記動作状態を表すデータまたはデータ信号を生成する少なくとも1つの無線ポイントセンサと、前記
非接触センサおよび前記無線ポイントセンサとデータ通信で連結されたデータ取得および処理コントローラであって、前記無線ポイントセンサからの前記動作状態データを使用して、前記
非接触センサ、または前記
非接触センサから受け取られたデータを較正するように構成されている該コントローラと、を備え
前記
非接触センサは、第1の推定精度範囲で前記動作状態を検出し、前記無線ポイントセンサは、前記第1の推定精度範囲よりも高い第2の推定精度範囲で前記動作状態を検出するように構成されている診断システム。」
または、「タービン機械の部品の動作状態を監視する診断システムであって、前記タービン機械の部品から間隔をとって前記タービン機械に対して配置され、前記タービン部品の動作状態を検出する非接触センサであって、該センサの視野によって決定される前記部品の規定された領域を監視して、前記動作状態を表すデータ信号を生成する非接触センサと、前記タービン部品の上に搭載され、前記タービンの上で、前記部品に対して所定の座標に、かつ前記
非接触センサによって監視される規定された領域の中に配置された無線ポイントセンサであって、前記
非接触センサと同じ動作状態を監視して、前記動作状態を表すデータ信号を生成する少なくとも1つの無線ポイントセンサと、前記非接触センサおよび前記無線ポイントセンサとデータ通信で連結されるデータ取得および処理コントローラであって、前記
無線ポイントセンサによって生成された高忠実データまたはデータ信号と比較して、前記
非接触センサによって生成された低忠実データまたはデータ信号を較正するように構成されている該コントローラと、を備え
前記非接触センサは、前記無線ポイントセンサによって生成されたデータまたはデータ信号と比較して低忠実なデータまたはデータ信号を提供し、前記無線ポイントセンサは、前記非接触センサによって生成されたデータまたはデータ信号と比較して高忠実な信号を提供するように構成されている診断システム。」
および「タービン機械の部品の動作状態を監視する診断方法であって、タービン機械の部品の規定された領域にわたり前記部品から間隔をとった固定位置から前記部品に関連する動作状態を検出するステップと、前記部品上で、前記規定された領域の中に所定の座標を有する前記部品上の少なくとも1つの位置から、前記部品に関連する同じ動作状態を検出するステップと、前記固定位置および間隔をとった位置から、前記動作状態を表す低忠実データまたはデータ信号を生成するステップと、前記部品上の前記少なくとも1つのポイントから、前記同一動作状態を表す高忠実データまたはデータ信号を生成するステップと、
前記高忠実データまたはおよびデータ信号と比較して前記低忠実データおよびデータ信号を較正するため、前記低忠実データまたはデータ信号と高忠実データおよびデータ信号を処理
するステップと、を含む診断方法。」である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態が使用される例示的な燃焼タービン、および燃焼タービンからの部品データを収集および解析する例示的監視および制御システムの断面図である。
【
図2】タービン動翼段、およびタービン動翼の動作状態を検出するために配置された非接触センサの略図である。
【
図3】無線遠隔測定ポイントセンサを搭載されたタービン動翼の略図である。
【
図4】部品の表面状態をマッピングするタービン部品の表面データマップ画像の略図であって、そのようなマップが、固有性、例えば、温度、ひずみ、振動周波数、ガス圧またはガス組成について、翼表面を横切る変化を表現する図である。
【
図5】タービン機械の部品の動作状態を監視する方法におけるステップを示すプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、例示的燃焼タービン10、例えば、発電に使用されるガスタービンを示す。この燃焼タービン10は、タービン機械10の複数の固定部品および可動部品の諸動作状態を監視して、これらの様々な部品の性能を診断すべく、様々な位置に置かれた非接触センサおよびポイントセンサを組み込んでいる。本発明の実施形態は、燃焼タービン10に関して、または多数の他の動作環境で、また、当業者によって認識される様々な目的に使用することができる。例えば、これらの実施形態は、固定部品および可動部品の様々な動作状態を監視するために飛行機エンジンおよび自動車産業で使用される。下記で一層詳細に説明されるように、複数のセンサが、温度構成、振動モード(たわみ、ねじれ、伸び、など)、ひずみ、加速度、そのような部品を横切りまたは越えて流れる流体のガス含有量、および様々な他の動作状態を監視するために使用される。特許請求および開示される本発明の実施形態を説明する目的で、部品の温度および振動モードを監視または測定することについて述べるが、当業者は、本発明の実施形態が、他の動作状態を監視するために使用できることを理解するであろう。
【0012】
図1へ戻ると、燃焼タービンエンジン10は、コンプレッサ12、少なくとも1つの燃焼器14(取り外されている)、およびタービン16を含む。コンプレッサ12、燃焼器14、およびタービン16は、時には、まとめてガスタービンエンジンまたは燃焼タービンエンジンまたはタービン機械と呼ばれる。タービン16は、回転可能な中心シャフト20へ固定された複数の動翼18を含む。複数の静翼22は動翼18の間に配置され、動翼18の上に空気を案内するために寸法および形状が決められている。動翼18および静翼22は、典型的には、ニッケル基またはコバルト基の合金であり、断熱コーティング26、例えば、イットリア安定化ジルコニアでコーティングされている。同様に、コンプレッサ12は、それぞれの静翼23の間に配置された複数の動翼19を含む。
【0013】
使用中、空気はコンプレッサ12を介して引き込まれる。空気はコンプレッサ12で圧縮され、燃焼器14の方へ駆動される。燃焼器14は空気を燃料と混合し、それに点火して作動ガスを形成する。この作動ガスは典型的には約1300℃を超える。このガスはタービン16を通って膨張し、静翼22によって動翼18を横切るように案内される。ガスがタービン16を通過するにつれて、それは動翼18およびロータシャフト20を回転し、シャフト20を介して使用可能な機械仕事を伝動する。燃焼タービン10は、さらに、冷却システム(図示されず)を含む。冷却システムは、クーラント、例えば、蒸気または圧縮空気を動翼18および静翼22へ供給するために寸法および形状が決められている。
【0014】
動翼18、19および静翼22、23が動作する環境は特に過酷であり、これらは高い動作温度および腐食性雰囲気に曝され、このことにより動翼18、19および静翼22、23の深刻な劣化が生じる場合がある。これは、断熱コーティング26が破断または劣化することがあれば、特に可能性がある。加えて、部品、例えば、動翼18は、3,600rpmのような高速で回転し、振動、ねじれ、伸び、および様々な他の機械的応力を受ける。
【0015】
本発明の実施形態は有利である。なぜなら、これらの実施形態により、燃焼タービン10の動作中に部品の状態を表すデータを伝送するように部品を構成することが可能になるからである。例えば、動翼18、19、静翼22、23、およびコーティング26は、部品に特有なデータを伝送する複数のポイントセンサ50を有するように構成され、これらのデータは、動作中に各々の部品のそれぞれの状態を決定して予防保全スケジュールを作成するために、データが直接監視される。下記で一層詳細に説明されるように、動翼18、19、静翼22、23、およびコーティング26は、これらの部品の特定の動作状態を検出する複数のポイントセンサを備えている。加えて、タービン機械10は、複数の非接触センサ24および31を含む非侵入測定システムを備えている。これらの非接触センサ24および31は、ポイントセンサ50によって監視される同じタービン機械部品の動作状態を同様に測定または監視する。下記で説明されるように、ポイントセンサ50は、非接触センサ24および31のためにリアルタイム較正を提供するために使用される。本発明の実施形態を説明する目的で、タービン静翼および動翼の動作状態を監視することについて述べるが、他のタービン部品、例えば、燃焼バスケット、燃焼ノズル、移送部品(例えば、ダクト)、および/またはリングセグメントを同様に監視することができる。
【0016】
図1は、さらに、本発明の様々な態様に従って使用される例示的監視およびデータ取得システム30の略図を示す。システム30は、アンテナ32、受信機33、プロセッサまたはCPU34、データベース36、およびディスプレイ38を含む。プロセッサ34、データベース36、およびディスプレイ38は通常の部品であり、アンテナ32および受信機33は、本発明の様々な実施形態の機能である性能仕様を有する。例えば、アンテナ32および受信機33は、下記で一層完全に説明されるように、燃焼タービン10の全体を通して様々な場所に配備された複数の送信機から伝送された無線遠隔測定データを受信するように選択される。
【0017】
本発明の実施形態により、複数のセンサが、燃焼タービン10の中の複数の部品のそれぞれのコーティングの中に埋め込まれる。代替の実施形態では、部品の上、特に、部品の断熱コーティングが不要な区域、例えば、コンプレッサ12の内部に含まれる部品の上に、センサが表面に搭載または堆積される。例示的なセンサ実施形態は、部品の物理的性能または動作特性および/または部品コーティングの特性ならびに燃焼タービンエンジン10の動作パラメータに関して、データをシステム30へ通信するために使用される。本発明は、さらに、上述の複数の非接触センサ24および31を備える。非接触センサ24および31は、一般的に、部品から間隔をとって配置され、部品の規定された領域または表面区域の上の動作状態を検出または測定する。埋め込まれたセンサまたは表面搭載されたセンサ(「ポイントセンサ」とも呼ばれる)の双方、および非接触センサは、動作状態測定値を表すデータまたはデータ信号を伝送するために取得システム30へ連結されている。
【0018】
例えば、例示的なポイントセンサおよび非接触センサは、部品の表面温度を検出し、部品コーティングを横断する燃焼ガスフローの中のガスの含有量もしくは濃度を測定し、部品の区域を横断するひずみを測定し、部品の振動もしくは偏向(たわみ、ねじれ、伸び)を測定し、または部品もしくはコーティングの中の亀裂形成を測定する。当業者は、本発明の態様に従って測定および/または検出される部品または部品コーティングの他の固有性および/または特性を認識するであろう。
【0019】
本発明の態様により、様々なセンサ構成が、断熱コーティング、例えば、タービン16の動翼18または静翼22の断熱コーティング26の中に埋め込み可能であることが理解されるであろう。参照として本明細書の一部である米国特許第6,838,157号明細書は、本発明の態様によればセンサを堆積するために利用されるガスタービン部品、例えば、動翼18および静翼22を計測する方法の様々な実施形態を説明している。この特許は、断熱コーティングの中に溝を形成し、そのコーティングの中にセンサを形成し、そして、そのコーティングを覆って溝の中に埋め戻し材料を堆積する様々な方法を開示している。これらの方法および部品の実施形態は、本明細書で開示される高性能部品を形成するために使用される。
【0020】
参照として本明細書の一部である米国特許第6,576,861号明細書は、本発明の態様による複数のセンサと、複数の送信機付きセンサコネクタの実施形態を配置するために使用される方法および装置を開示している。この点に関して、そこに開示された方法および装置は、マスクを使用する必要なしに、約100ミクロンから500ミクロンの微細なセンサおよび/またはコネクタ機構のパターン化に使用することができる。導電材料、抵抗材料、誘電材料、絶縁材料、および他の特定用途材料を使用してこれらの機構を堆積することにより、複数の多層電気回路およびセンサが形成される。本発明の態様による多層電気回路およびセンサを堆積するために、他の方法が使用されてもよいことが了解されるであろう。例えば、溶射、蒸着、レーザ焼結、および噴霧された堆積材料のより低温での養生が、当業者によって認識される他の適切な技法と同様に使用されてもよい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、部品に特有なまたはコーティングに特有な状態を監視するために、ならびに、燃焼タービン16の動作または性能に関する他のデータを収集するために、複数のポイントセンサ50を燃焼タービン10の中の多数の場所に配備されることが可能となる。例えば、
図1および
図3は、1つまたは複数のセンサ50が、タービン16の1つまたは複数の動翼18、19または静翼23のそれぞれの断熱コーティング26の中に埋め込まれることを示す。部品に特有なおよび/またはコーティングに特有なデータを取得すべきタービン10の他の部品の断熱コーティングの中に、センサ50が埋め込まれてもよいことが理解されるであろう。
【0022】
図3は、例として動翼18に結合された1つのセンサ50と、センサ50を送信機54と接続するコネクタ52とを有する動翼18の概略平面図を示す。送信機54は、電磁放射および対応する変圧器を使用して電力を誘導することによって、または、燃焼タービン10の動作中にタービン16の中の供給源、例えば、熱または振動から、エンジンの自然エネルギーを回収することによって、電力を与えられる。例えば、送信機54は、動翼18から隔てられて、例えば、複数の動翼18が取り付けられたディスク(図示されず)の内部に置くことができる。この点に関して、送信機54は、高温ガス路の外側の、より涼しい場所の中に維持される。これは、無線伝送に要求される回路の機能を可能にするであろう。動翼18から隔てられて送信機54を置くことにより、バッテリまたは誘導を使用しないで送信機54に電力を与える外部電源の使用が可能となる。追加の機能をセンサ50へ提供するため、パワーサプライをセンサ50に取り付けることもできる。この追加の機能は、センサ50からの出力に応答するフィードバックの結果としての機械的な作動を含み得る。そのような統合化システムは、部品、例えば、リングセグメントにリアルタイムのギャップ制御用に適用可能である。
【0023】
他の代替の実施形態において、コーティングが静翼23の表面上に堆積され、溝がこのコーティングの中に形成され、センサ50およびコネクタ52がこの溝の中に堆積される。保護コーティングがセンサ50および/またはコネクタ52を覆って堆積される。コネクタ52は、センサ50から終端場所、例えば、静翼23の周辺端部へ伸長することができるので、コネクタ52の遠位端53は送信機54への接続のために露出される。センサ50およびコネクタ52は静翼23の空気力学への悪影響を最小にするように静翼23の上に配置することができる。1つまたは複数のセンサ50、例えば、ひずみゲージまたはサーモカップルを、例えば、1つまたは複数のタービンまたはコンプレッサ翼18、19の上に堆積することができる。
【0024】
上述の計測器が取り付けられた部品、例えば、センサ50を含む静翼22、23および動翼18、19、ならびに、そのような計測器が取り付けられた部品の様々な実施形態は、同時係属米国特許出願第11/521,175号明細書で一層詳細に説明されている。この米国特許出願明細書の全体は、参照として本明細書の一部である。
【0025】
本発明の実施形態により、データ取得システム30が、燃焼タービン10の様々な動作状態に関する履歴データを収集および記憶することが可能となる。これは、例えば、タービン16またはコンプレッサ12の中で様々な部品によって経験される荷重条件および応力、振動周波数および温度を表す継続的なデータの流れを提供するように構成された圧電デバイスおよび/または他のセンサ50を堆積し、タービン16またはコンプレッサ12の状態を継続的に問い合わせることによって達成される。このデータは、部品の損耗を表すデータと関連付けられ、予防保全または他の補正行動に使用される。
【0026】
図1を再び参照し、かつ
図2を参照すると、非接触センサ24および31を含む非侵入測定システムが示されている。非接触センサ24および31は、タービン機械10のケーシング58に搭載され、作動部品、例えば、動翼18、19および静翼22、23に対応して配置される。そのような非侵入センサ24、31は、部品の表面温度を検出する赤外線カメラであるか、部品の振動モードに関連するデータを提供する赤外線デバイス、無線周波デバイス、またはマイクロ波デバイスである。しかしながら、他の動作状態を、タービン機械10の状態を診断する目的で監視することもできる。参照として双方共に本明細書の一部である米国特許第6,062,811号明細書および同第6,200,088号明細書で説明されているように、そのような非接触センサは、オンライン監視システムを提供するためにデータ取得システムへと連結することができる遠隔計測能力を提供する。
【0027】
タービン機械10の固定部品または回転部品に関しては、非接触センサ24および31は、決められた時間間隔で、および状態測定またはデータ検索が行われる所与の滞在時間すなわち持続時間の間、タービン段またはコンプレッサ段の中の複数の動翼18、19または静翼22、23の測定値を取得するように構成される。この診断システムは、それぞれのタービン段またはコンプレッサ段用の複数の非接触センサを含み、それぞれの段について複数の異なる動作状態を監視する。当業者に公知の通り、これらの非接触センサは典型的にはタービン段またはコンプレッサ段の中の動翼18、19または静翼23に対して配置されているので、センサ24、31が測定値を取得しているときの任意の持続時間の間に、複数の動翼または静翼がセンサの視野の中にある。このようにして、センサ24および31は所与の持続時間の間にタービン段またはコンプレッサ段の中の複数の同じタイプの部品について測定値を同時に取得することができる。
【0028】
一実施形態において、センサ24、31は、所与の段の中の動翼18、19または静翼22、23の予め決められた組合せの測定値を、動翼または静翼の全体の段の動作状態の代表的測定または監視して取得する。所与のタービン段において、72枚の動翼または静翼が存在し、センサ24、31は、1つのタービン段またはコンプレッサ段の中の1つまたは複数の動翼について測定値を取得するように構成される。好ましくは、測定値は、1段当たり四(4)枚から八(8)枚の動翼18、19または静翼22、23から取得され、測定値が取得されるたびに、同じ動翼または静翼から取得される。したがって、少なくとも回転中の動翼18、19に関して、これらの測定値は、タービン動翼段またはコンプレッサ動翼段の回転速度と調整することができるので、センサ24、31は、同じ動翼18または19、またはタービンまたはコンプレッサ段の中の同じ複数の動翼18または19の動作状態を検出する。当業者に公知の通り、シャフト20の上の各々の翼18、19の径方向位置(シャフト上のルート位置とも呼ばれる)は知られており、コンプレッサ12およびタービン16の動作中の所与の時間にシャフト20の回転速度(すなわち1分当たりの回転数)が分かれば、センサ24および31に対する動翼18、19の位置が正確に予測され、同じ動翼から測定値を取得することができる。
【0029】
動翼18、19がセンサ24、31の視野を通って回転する際に、これらのセンサは、動翼18、19の圧力側および真空側を含む部品の両側の動作状態を検出する。静翼23の動作状態を検出するために使用されるセンサ24および31に関しては、そのような部品の両側に対処するために多重センサを使用することができる。
図2で示されるように、センサ24、31の視野は動翼18、19または静翼22、23の表面に動作状態が検出される領域60、62を規定する。温度を検出するために使用される赤外線センサに関しては、この規定された領域は、
図2で示されるように動翼18、19または静翼23の側面全体を包含し、振動モードを検出する無線周波数センサまたはマイクロ波センサに関しては、規定された領域は
図2で示されるように動翼18、19または静翼22、23の先端を含む。
【0030】
再び、
図1に関して、非接触センサ24および31は、部品動作状態測定値を表す信号および/またはデータを伝送するデータ取得および制御システム30へリンクされている。センサ24、31は電気リード線を介してシステム30へリンクされるか無線遠隔測定能力を装備され、データをシステム30へ伝送する。
【0031】
システム30はデータベース36を含み、センサ24、31または50から受け取られたデータは、データベース36の中に記憶される。加えて、このシステムはプロセッサ34を含み、プロセッサ34は、センサ24、31、または50から受け取られたデータを解析するようにプログラムされている。当業者に公知の通り、プロセッサは、非接触センサによって監視される規定された領域60または62の表面マップをリアルタイムで生成および表示するようにプログラムされ、この表面マップは、マップを横切って検出された動作状態を表示する。もし動作状態が、指示された持続時間内に複数の動翼18または19、または複数の静翼23について検出されるならば、プロセッサ34は、データを解析して1つのタービン段またはコンプレッサ段の中の個々の部品の状態および/またはタービン段またはコンプレッサ段の全体的状態を評価するように構成されてい
る。加えて、プロセッサ34は、経時的な動作状態を表す履歴データを考慮して、1つの部品の状態、またはその部品が機能する段の状態を評価する。例えば、プロセッサは、特定の動作状態に関連づけられた故障のリスクを診断し得る。
【0032】
非接触センサ24、31は、ポイントセンサ50によって生成される高忠実信号と比較して、大区域または表面区域の低忠実信号として特徴づけられる部品の動作状態を表す信号を生成する。「大区域」または「表面区域」の用語は、非接触センサ24または31の視野の中に配置されたポイントセンサ50によって監視される同一部品の区域よりもはるかに大きなその部品の規定された領域にわたって、動作パラメータを測定するセンサを説明するための用語である。すなわち、動翼18、19および静翼22、23の上に配置されたポイントセンサ50は、一層正確であるかまたは動作状態の真の測定値に一層近い小区域の高精度データである動作状態測定値を含む信号を生成し得る。例えば、動翼18、19または静翼22、23の上に搭載されたサーモカップルセンサまたはひずみゲージは、1インチ四方の1/4である区域を監視し、非接触センサ24および31によって生成されたデータに比べて、より正確な状態測定値、例えば、温度および振動データを生成する。赤外線カメラからデータを取得するとき、カメラによって記録された温度を較正するために、参照温度が必要となる。較正なしには、データの精度は±20℃であるが、カメラの視野内に較正サーモカップルを用いると、精度を±6℃とすることができる。これは温度測定における顕著な改善である。本発明の一実施形態において、ポイントセンサ50によって生成されたこの高忠実データは、非接触センサ24、31を較正するか、センサ24、31によって生成されたデータを較正して、一層詳細かつ高度に正確な表面マッピング解析または診断技法をリアルタイムで展開するために使用される。
【0033】
ポイントセンサ50から得られたデータを使用して、非接触センサ24、31の較正が遂行される。この場合、非接触センサ24、31から取得された測定値は、ポイントセンサ50から取得された測定値と比較される。一実施形態において、これらの2つの測定値は、好ましくは、測定された部品の表面プロフィールに与えられた同じ座標表示を有する。代替として、ポイントセンサ50から取得された測定値は、距離においてポイントセンサ50測定値と最も近い非接触センサ24、31から取得された測定値と比較される。いずれの場合でも、もし両方の測定値が等しくないか、または、もし非接触センサ24もしくは31からの測定値がポイントセンサ50の測定値の所定の範囲内になければ、非接触センサ24または31はポイントセンサ50の測定値へ較正される。
【0034】
図4で示されるように、プロセッサ34、またはデータ取得システム30の中に記憶されかつ非接触センサ24および31から受け取ったデータに応じたデータにアクセスし得る他の処理手段は、監視されている部品の表面のマップを表すデータを生成し得る。熱センサ24の場合には、
図4で示されるマップは、非接触センサ24の視野の中の規定された領域60の熱マップである。図示されているように、このマップは色符号化された区域A、B、およびCから成っている。ここで、各々の色は、個別の温度測定値および/またはその部品の表面の対応する区域の温度範囲を表す。図示されるように、
図4は、隣接するバー表示64で提供されるように、異なる色および温度測定値、または温度測定値の範囲を表す異なるマーキング/濃淡を含む。
【0035】
本発明を説明する目的で、非接触温度24センサから受け取られたデータから生成された熱マップ画像について述べたが、マップ画像は、他の非接触センサ、例えば、タービン部品の振動モードを検出するセンサ31から受け取られたデータから生成することができる。
【0036】
翼プロフィールすなわち翼形状に関連するデータは、シャフト20の回転軸に対応した静翼または動翼の翼プロフィールを表すデカルト座標系の形態で提供される。したがって、マップされた表面の各々の色区域A、B、またはCについて、1つまたは複数のX、Y、およびZ座標が存在する。これらの座標は、規定された領域内の1つの区域または1つのポイントの位置、および、その区域での温度測定値、または温度範囲を表す。こうして、プロセッサ34または他の処理手段は、部品についてマップされた状態測定値(すなわち、温度測定値)の1つまたは複数を、対応するX、Y、およびZ座標に関連づけるように構成される。
【0037】
加えて、部品の上の各々のポイントセンサ50は、一組のX、Y、およびZ座標に関連づけられる。このようにして、ポイントセンサ50測定値の座標に対応する1つまたは複数の非接触センサ24の測定値が特定される。ポイントセンサ50から受け取ったデータを使用して、プロセッサ34は、静止した非接触センサ24を較正して、動翼18または19の一層正確な表面マッピングを提供するように構成される。もし非接触センサ24の温度測定値が、ポイントセンサ50によって取得された温度測定値に等しくないかまたはその温度測定値の所定の範囲内になければ、非接触センサ24は較正され、それに対応した温度は、調整される。好ましい一実施形態において、非接触センサ24から受け取られてポイントセンサ50温度データと同じX、Y、およびZ座標を有する温度測定値データが調整されるだけでなく、熱マップを横断する全ての温度測定値が調整される。
【0038】
下記の表1では、非接触センサ24およびポイントセンサ50データ測定から受け取られたデータに従って、較正されていないデータ測定値が列挙される。
【0040】
示されているように、表1の左半分は、熱マップの色区域A、B、およびCの各々の温度測定値、および各々の測定値の代表座標を含む。右欄は、ポイントセンサ50から受け取った温度測定値、およびこれに対応する座標を含む。加えて、測定値が取得された日付および時間を表すデータがさらに提供されているので、ポイントセンサ50からの測定値が、非接触センサ24または31からの測定値と比較できる。プロセッサ34は、ポイントセンサ温度測定値またはデータを、対応するX、Y、およびZ座標を有する非接触センサ24温度測定値データと比較するようにプログラムされている。
【0041】
下記の表2は、ポイントセンサ50温度測定値に従って較正された温度測定値データを示す。
【0043】
上記の表2で示されるように、区域A、B、およびCの各々におけるデータ測定値は、ポイントセンサ50から受け取った温度測定値に従って較正されている。
【0044】
部品の振動モードを検出する非接触センサ31は、同じように較正することができる。すなわち、部品の表面を横切って振動測定値に関連する測定値データを提供するセンサ31から受け取ったデータから、3次元表面マップが生成される。加えて、表面区域データを較正するため、ポイントセンサ、例えば、ひずみゲージが使用される。データベース36は、回転のポイントまたは回転軸に対する部品プロフィールの方位を提供するデカルト座標系を含めて、監視されている部品のプロフィールを表すデータを含む。例えば、動翼18、19または静翼22、23についての動翼プロフィールのX、Y、およびZ座標は、シャフトの回転軸に対応して提供される。静止した、すなわち非動作状態における部品の表面プロフィールを表す翼プロフィールが提供される。この翼プロフィールは、部品のたわみ、ねじれ、または伸びを測定するための原点マップを表す。
【0045】
タービン機械の動作中に、非接触センサ31から受け取ったデータは、部品の3次元マップまたはプロフィールを生成するために使用される。このプロフィールはもとのプロフィールと比較され、部品の規定された領域62について、または規定された領域62の中の或る一定の座標に関して、変位の振幅または大きさを決定する。非接触センサ31から回収されたデータは、非接触センサデータを較正する目的で、ポイントセンサ50データと比較される。
【0046】
図5は、タービン機械の部品の動作状態を監視する方法のステップを含むフローチャートまたはプロセス図を示す。ステップ70において、非接触センサは、タービン機械の動作状態、例えば、コンプレッサまたはタービン内の静翼または動翼の動作状態を検出し、検出された動作状態の表面区域測定値を表すデータ信号を伝送する。ステップ72において、非接触センサから取得された測定値を表すデータは、説明されたように、データ取得および制御システムへ伝送される。ステップ74において、タービンまたはコンプレッサ部品の上に搭載されたポイントセンサ50は、非接触センサ24、31によって検出されたものと同じ動作状態を検出する。ステップ
76において、ポイントセンサ50によって取得された測定値を表すデータは、データ取得および制御システムへ伝送される。
【0047】
好ましい実施形態において、データ取得および制御システム30は、非接触センサ24、31およびポイントセンサ50から取得された日付および/または時間に関連づけてデータを記録するように構成されている。加えて、データ取得および制御システムは、非接触センサ24、31によって取得された1つまたは複数の測定値の位置およびポイントセンサ50によって取得された測定値を表す座標を特定するようにプログラムされている。したがって、ステップ78において、非接触センサ24、31に関連する測定値データが、ポイントセンサ50データと比較されるので、比較ステップ80では、日付、時間、および場所に関するデータが、非接触センサ24、31の較正を目的として比較できる。
【0048】
そのために、ステップ80において、データ制御システム30は、非接触センサ測定値データをポイントセンサ測定値データと比較する。もし非接触センサ測定値が、ポイントセンサ測定値データと等しくないか、またはポイントセンサ測定値データの所定の範囲の中になければ、非接触センサ24または31、およびこれらに対応する測定値データは、ステップ82に記述されるように、対応するポイントセンサ50測定値データに基づいて較正される。上記で説明されたように、非接触センサ24、31は、規定された領域にわたり多重の状態測定値を取得する。そのような測定値の各々は、ポイントセンサ50測定値データと、データ制御システム30によって特定される対応する非接触センサ24、31測定値データとに基づく。このようにして、監視された動作状態の一層正確な表面マップが生成される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態が本明細書の中で図示および説明されたが、そのような実施形態は単なる例として提供されたことは明らかである。本明細書の発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が当業者には可能であろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲の趣旨および範囲によってのみ限定されることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10 タービン機械、燃焼タービンエンジン
12 コンプレッサ
14 燃焼器
16 タービン
18 タービン機械部品、動翼
19 コンプレッサ機械部品、動翼
20 中央シャフト、ロータシャフト
22 タービン機械部品、静翼
23 コンプレッサ機械部品、静翼
24 非接触センサ、非侵入センサ、熱センサ
26 断熱コーティング
30 監視およびデータ取得システム、データ取得および制御システム
31 非接触センサ、非侵入センサ
32 アンテナ
33 受信機
34 プロセッサ、CPU
36 データベース
38 ディスプレイ
50 ポイントセンサ
52 コネクタ
54 送信機
58 ケーシング
60 規定された領域
62 規定された領域
A 色符号化区域、色区域
B 色符号化区域、色区域
C 色符号化区域、色区域