特許第5777721号(P5777721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5777721-伸縮性編地および衣服 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777721
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】伸縮性編地および衣服
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/18 20060101AFI20150820BHJP
   D04B 1/18 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   D04B21/18
   D04B1/18
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-535967(P2013-535967)
(86)(22)【出願日】2012年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2012062950
(87)【国際公開番号】WO2013046796
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2013年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-215038(P2011-215038)
(32)【優先日】2011年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046303
【氏名又は名称】旭化成せんい株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】野津 真有美
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−189795(JP,A)
【文献】 特開2004−211254(JP,A)
【文献】 特開2004−124315(JP,A)
【文献】 特開2010−281013(JP,A)
【文献】 特開2004−232100(JP,A)
【文献】 特開昭58−081661(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1087047(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00〜 1/28
21/00〜21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、弾性糸を40g/m2以上含有し、編地を経緯両方向に30%伸長させた時の編組織一単位中の弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さとを加えた長さLaと、編地を経緯いずれか1方向にさらに伸長させて50%伸張させた場合の編組織一単位中の弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さとを加えた長さLbとの比(Lb/La)が下式(1)を満足し、編地の経緯少なくとも一方向の100%伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とする伸縮性編地。
1.2≦Lb/La≦1.8 (1)
【請求項2】
編地の経緯少なくとも一方向の下記方法で測定された95%伸長時の編地パワーが2.5N以上であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性編地。
95%伸長時編地パワーの測定:編地を初期長から30%伸長させた状態でテンシロン引張り試験機にセットし、このときの応力値を0とし、このセット長を基準としてさらに50%伸長した時(編地初期長から通算で95%伸長されている)の応力値(N)を測定し、これを95%伸長時の編地パワーとする。
【請求項3】
下記式で表される伸長発熱指数が0.5〜4.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性編地。
伸長発熱指数=(弾性糸重量 × 95%伸長時編地パワー)/編地伸度
(上記式において、弾性糸重量は編地単位面積当りの弾性糸重量(g/m2)であり、95%伸長時編地パワーは前記方法で測定された95%伸長時編地パワー(N)であり、編地伸度は9.8N/編地2.5cm巾荷重下での編地伸度(%)である。)
【請求項4】
9.8N荷重下で、伸長発熱する方向の編地伸度が70〜200%であり、かつ、編地経緯伸度の和が170〜450%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
【請求項5】
弾性糸の少なくとも一部がルーピング組織で編成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
【請求項6】
弾性糸相互が弾性糸の交差部で固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
【請求項7】
弾性糸の100%伸長時のパワーが0.04〜0.20cN/dtexであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の伸縮性編地を使用してなる、身体に密着し、少なくとも関節部を覆う衣服。
【請求項9】
衣服がボトム類、トップス類、レッグ類、サポーター類および手袋から選ばれた一種である請求項8に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性糸を含有する布帛において、伸長時瞬間的に温度が上昇する伸縮性編地および該編地を使用した暖かい衣服を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保温衣料等、着用時に温度が上昇する衣服として、セルロース等の吸湿発熱繊維を混合した布帛により衣服を製造し、着用時の人体からの不感蒸泄や発汗により発熱させる衣服が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、吸湿発熱繊維は、繊維の吸湿量が飽和に達すればそれ以上発熱することは無く、発熱時間が短いばかりでなく、吸湿量が飽和に達した後は、繊維中の水分により冷感を感じることさえあった。さらに、吸湿発熱以外の発熱布帛および発熱衣服として、面状発熱体および線状発熱体などのヒーターを衣服に組み込むことなどが知られているが、いずれも、電気により発熱するもので、衣服とした際は重くなり、電極も必要で動きにくい衣服となる。
【0003】
この様に、現在、着用時温度が上昇する衣服で、動きやすくて軽い衣服としては、吸湿発熱以外は見あたらないが、吸湿発熱する布帛は吸湿という制約があるため吸湿発熱に限界があり、衣服として着用していて永続的に発熱し、しかも、軽くて動きやすい衣服は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、弾性糸を含有する編地において、伸長時瞬間的に温度が上昇し、編地の伸縮を繰り返せば永続的に伸長時発熱する伸縮性編地を提供することである。また、この伸縮性編地を、インナー、スポーツウェアなどの衣服に縫製することにより、保温性、伸長部位の筋肉や関節を暖めることによる怪我の防止、および脂肪燃焼効果を期待できる製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、100%伸長時の瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とする伸縮性編地により上記目的が達成出来ることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
(1)非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、編地の経緯少なくとも一方向の100%伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とする伸縮性編地。
(2)弾性糸を40g/m2以上含有し、編地の経緯少なくとも一方向の下記方法で測定された95%伸長時の編地パワーが2.5N以上であることを特徴とする上記(1)に記載の伸縮性編地。
95%伸長時編地パワーの測定:編地を初期長から30%伸長させた状態で引張り試験機にセットし、このときの応力値を0とし、このセット長を基準としてさらに50%伸長した時(編地初期長から通算で95%伸長されている)の応力値(N)を測定し、これを95%伸長時の編地パワーとする。
(3)編地を経緯両方向に30%伸長させた時の編組織一単位中の弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さとを加えた長さLaと、編地を経緯いずれか1方向にさらに伸長させて50%伸張させた場合の編組織一単位中の弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さとを加えた長さLbとの比(Lb/La)が下式(1)を満足することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の伸縮性編地。
1.2≦Lb/La≦1.8 (1)
(4)下記式で表される伸長発熱指数が0.5〜4.0であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
伸長発熱指数=(弾性糸重量 × 95%伸長時編地パワー)/編地伸度
(上記式において、弾性糸重量は編地単位面積当りの弾性糸重量(g/m2)であり、95%伸長時編地パワーは前記方法で測定された95%伸長時編地パワー(N)であり、編地伸度は9.8N/編地2.5cm巾荷重下での編地伸度(%)である。)
(5)9.8N荷重下で、伸長発熱する方向の編地伸度が70〜200%であり、かつ、編地経緯伸度の和が170〜450%であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
(6)弾性糸の少なくとも一部がルーピング組織で編成されていることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
(7)弾性糸相互が弾性糸の交差部で固定されていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
(8)弾性糸の100%伸長時のパワーが0.04〜0.20cN/dtexであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の伸縮性編地。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の伸縮性編地を使用してなる、身体に密着し、少なくとも関節部を覆う衣服。
(10)衣服がボトム類、トップス類、レッグ類、サポーター類および手袋から選ばれた一種である上記(9)に記載の衣服。
【発明の効果】
【0008】
本発明の伸縮性編地が配された衣服は、膝や腕の曲げ伸ばしにより編地が1℃以上発熱して暖かく、保温性に優れると共に、伸長部位の筋肉を暖めることにより怪我の防止効果を有し、また脂肪燃焼効果も有する。さらに、冬季運動時に着用すると、発熱により筋肉温度低下を防止でき、筋肉温度低下による運動機能低下の防止を期待でき、また、膝痛等の故障痛の防止及び緩和を期待できる。さらに、着用時および洗濯時の型崩れも少ない衣服とすることが可能となった。ここで着用時および洗濯時の型崩れについては、JIS L0217 103法で洗濯による寸法変化を評価し、この洗濯による寸法変化率が、経方向および緯方向とも3.0%以内であれば、着用時および洗濯時ともに型崩れが少ないと判断する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非弾性糸のニードルループの長さと弾性糸のシンカーループの長さを測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の伸縮性編地は、経編機または丸編機により製造される非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、少なくとも編地の経または緯方向いずれか一方向の100%伸長時の瞬間発熱温度(以降伸長発熱と称す)が1.0℃以上であることを特徴とする。
本発明における瞬間発熱温度とは、伸縮以外に外部からのエネルギー供給を受けない条件下で、伸縮性編地を100%伸長し、次いで緩和してもとの長さに戻す工程を1回とする繰り返し伸縮を100回行う間に編地が示す最高温度をサーモグラフィで測定し、試験開始前の編地温度との差から算出された値である。
【0011】
100回の100%伸縮中または伸縮完了直後に、編地温度が試験開始前編地温度より高くなれば、瞬間発熱していることを示す。本発明の伸縮性編地は、この方法により測定した瞬間発熱温度が、1.0℃以上あることが必要である。1.0℃未満の瞬間発熱温度では、ほとんど発熱を感じられず、発明の目的が達成できない。瞬間発熱温度は好ましくは1.5℃以上、より好ましくは2.0℃以上である。瞬間発熱温度が高いほど好適であり、人体に悪影響を与えない範囲であれば上限は特に限定されないが、瞬間発熱温度を高くするために弾性繊維の含有量が多くなりすぎると編地がハイパワーとなって衣料として動き難くなるため、瞬間発熱温度は10℃以下であることが好ましい。また、編地経緯方向のうち、少なくとも一方向の100%伸長時の瞬間発熱温度が1.0℃以上であればよく、編地の経および緯方向とも瞬間発熱温度が1.0℃以上の編地の場合は、製品縫製時の型入れ方向を特に考慮しなくても良いが、一方向のみ瞬間発熱する編地の場合は、人体の関節で特に皮膚伸びが大きい方向を、瞬間発熱が大きい編地の方向と一致させれば、運動動作時暖かい衣服を製造できる。
なお、発熱温度の測定については、実施例にて具体的に示す。
【0012】
弾性糸を含有する従来の編地は、編地に伸縮性を持たせ衣服着用時に心地よいフィット感を付与するもので、これにより、スリムな審美性の衣服を得たり、運動機能を向上させたりするものであった。これに対し本発明は、伸縮により発熱をする編地を得るものであり、従来品とは全く異なる発想の編地である。100%伸長時の瞬間発熱温度を1℃以上とするには、弾性糸の含有量、編地のパワーおよびループ構造等の編地設計と伸長発熱を効率的に発揮するための編地製造方法が重要であり、本発明により初めて100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上である伸縮性編地が得られ、衣服として着用した時に、着用時の人体関節の伸長量である僅か30〜50%の伸長でも高く発熱し、着用時に発熱が実感できるようになったものである。
【0013】
本発明における伸縮性編地において、100%伸長時の瞬間発熱温度を1℃以上とするには、編地中に弾性糸を40g/m2以上含有させることが好ましく、弾性糸を多く含有するほど発熱温度が高くなり、より好ましくは50g/m2以上、さらに好ましくは55g/m2以上である。しかし、弾性糸の含有量が多くなり過ぎると編地重量が増し、また、編地がハイパワーとなって衣料として動き難くなるため、200g/m2以下が好ましい。
【0014】
また、編地中の弾性糸と非弾性糸の比率については特に限定されないが、弾性糸の比率(混率)が20〜65%であることが好ましく、より好ましくは25〜60%、さらに好ましくは30〜55%である。弾性糸の比率が65%を超えると染色堅牢度が低下したり、編地の強度が十分に得られないことがあり、弾性糸の比率が20%未満では、十分な伸長発熱効果が発揮できない。
【0015】
本発明の伸縮編地は、上記の弾性糸含有量のみにより発明の効果を発揮できるものではなく、衣服として着用時の動作により弾性糸が効率よく伸長されることが重要である。すなわち、弾性糸を含有する従来の編地では、弾性糸が編地中に蛇行や湾曲しており、編地伸長時に、まず弾性糸の蛇行あるいは湾曲が伸ばされ、弾性糸が真っ直ぐになる。さらに、ニードルループとシンカ-ループの交差部でループのズレも生じ、伸長方向によりニードルループまたはシンカーループが小さくなる、すなわち、ニードルループとシンカーループの長さは変わらずループ変形が生じる。それらの変化の後、弾性糸が伸長されるため、本発明の求める伸長時の発熱を得るには非常に効率の悪い構造である。
【0016】
これに対し本発明の伸縮性編地では、編地中の弾性糸の蛇行や湾曲が極めて小さく、編地の伸長が効率よく弾性糸を伸長することになり、その結果、伸長時高い発熱の編地となる。従来編地と本発明の伸縮編地とのこれらの構造的な差異は、次の方法により明確にできる。
【0017】
即ち、編地を経緯両方向に30%伸長させた時の編組織一単位中の弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さとを加えた長さをLaとする。さらに、編地を経緯いずれか一方に50%伸張させた場合の編組織一単位中の弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さとを加えた長さをLbとする。伸長時高い発熱の編地とするためには、LaおよびLbが、1.2≦Lb/La≦1.8を満足することが好ましい。Lb/Laをこの範囲に調整するには、編組織あるいは染色加工工程条件の調整により可能である。Lb/Laがこの範囲内であれば着用感を損なうことなく編地は伸長時に発熱する。なお、Lb/Laが1.2未満であれば、編地中の弾性糸の伸長率が低く、その結果、伸長時の発熱温度も実感できないほど低い。さらに、弾性糸の伸長および伸長回復が悪く、伸長した編地が元に戻らず編地が波打って型崩れが生じ易い。また、1.8より大きい場合は、弾性糸のパワーが高くなりすぎるため着用し難かったり、動き難い衣服となるばかりでなく、編地の変形が大きく、弾性糸と共に非弾性糸の変形も大きくなりすぎる結果、伸長回復性が不足し、伸長緩和時に編地が波打ったり、洗濯による寸法変化が生じたりして、型崩れの原因となる。従って、LaとLbは、1.2≦Lb/La≦1.8を満足することが好ましく、さらに好ましくは、1.3≦Lb/La≦1.7を満足することである。その結果、伸長により発熱するとともに、着用時および洗濯時に型崩れもない衣服とすることが可能となる。
【0018】
本発明において、LaおよびLbは、編地のニードルループ側(テクニカルフェース)から撮影した拡大画像を用いて以下に記載する方法で測定した、編組織一単位中の弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さから求める。ここで、本来ならニードルループも弾性糸の長さを測定するのが好ましいが、弾性糸のニードルループは非弾性糸により覆われていることが多く、はっきりループ長を測定することが困難である。従って、非弾性糸のニードルループの下に隠れて弾性糸のニードルループが存在していると確認できる箇所を選択し、伸長時に弾性糸とほぼ同じ動きをする非弾性糸のニードルループの長さを測定して、編地伸長による弾性糸のニードルループ長変化の代用とする。無論、拡大画像を撮影する箇所として、非弾性糸に下に隠れて弾性糸のニードルループが存在しない箇所は選択しない。
【0019】
各ループ長の測定方法について、図1を用いて以下に説明する。編地の経緯両方向へ30%伸長し、この状態で編地のニードルループ側を拡大観察する。図1に示すように、非弾性糸のニードルループの下部両側で観察可能なニードルループの最下部2カ所をそれぞれ、始点2(○印)と終点3(○印)とし、始点2から終点3に至るループ長を測定して、非弾性糸のニードルループ(1)の長さとする。シンカーループについては、図1に示すように、2ウェール間で観察されるニードルループとニードルループ間の弾性糸について、弾性糸の両端をシンカーループの始点5(○印)と終点6(○印)とし、その間の長さを測定し、弾性糸のシンカーループ(4)の長さとする。
【0020】
丸編やカバーリング糸を使用している場合等、弾性糸が非弾性糸に覆われている場合は、弾性糸の所在する部位を推定して弾性糸の長さを測定する。この場合、非弾性糸で覆われている部分の弾性糸は直線状に存在するものとして測定する。また、弾性糸が経編のコード組織や丸編のウエルト組織によりシンカーループが2ウェール以上に跨っている場合は、シンカーループの途中に存在するニードルループに隠されている部分のシンカーループは測定せずに表面から観察されるシンカーループのみの長さを測定し、各ウェールのシンカーループ長の和をシンカーループ(4)長とする。
【0021】
弾性糸および非弾性糸、いずれも繊維束の幅方向中央部の長さを測定する。それぞれ測定後に非弾性糸のニードルループ(1)の長さに弾性糸のシンカーループ(4)の長さを加え、編組織一単位中のループの長さの合計を求めてLaとする。次いで、編地をさらに経方向、または緯方向へ50%伸長し、同様にして編組織一単位中のループの長さの合計を求めてLbとする。このような測定を経方向および緯方向の両方で行ない、経方向伸長あるいは緯方向伸長いずれかの方向において、1.2≦Lb/La≦1.8となればよい。なお、一方向しか伸長できない編地の場合は、伸長可能な方向のみを測定してループの長さとする。
なお、LaおよびLbの測定において、各ループの長さとして少なくとも小数点2桁目までの長さを求め、任意に10カ所測定した平均長さを求める。この平均長さに基づいてLb/Laを計算し、小数点2桁目を四捨五入し、1.2≦Lb/La≦1.8となるように設定する。
【0022】
また、編組織一単位とは、ニードルループとシンカーループとの組織で、繰り返される一単位をいい、例えば、経編のデンビー組織では、ニードルループ1ループとシンカーループ1ループとの長さの和が編組織一単位である。また、丸編でウェール方向にニットとタックを繰り返す場合は、ニードルループとして、ニットループ1ループとタックループ1ループとの和が一単位のニードルループであり、これに、シンカーループ2ループを加えた長さがLaまたはLbとなる。なお、編組織がウエルト(ミス)の場合は、非弾性糸によるニードルループの幅を、ウエルト組織時のニードルループ長とする。
【0023】
また、経方向に50%伸長した場合、主にニードルループが伸長され、シンカーループの伸長は少ない。一方、緯方向に50%伸長した場合は、主にシンカーループが伸長されニードルループの伸長は少ないのが一般的である。従って、伸長時の発熱は、経方向の伸長時にはニードルループが大きく寄与し、逆に、緯方向の伸長時にはシンカーループが大きく寄与している。これらの各ループのみに注目し、LaおよびLb測定時のニードルループの変化量のみを取り出した場合、経方向50%伸長時のニードルループの変化量は、伸長前に比べて1.2〜1.7倍が好ましく、緯方向50%伸長時のシンカーループ変化量は伸長前に比べて、1.8〜4.0倍が好ましい。なお、この場合、編地伸長量よりも変化量が大きくなるのは、シンカーループが伸長により長くなるのは当然であるが、本発明の伸縮性編地ではニードルループ部分は伸長してもしっかり固定されていることが多く、ニードルループ部分が緯方向に伸長され難く、その分シンカ−ループが編地伸長量以上に伸ばされることになり、その結果、編地伸長量よりもシンカーループの変化量が多くなるのである。
【0024】
本発明による伸縮編地で、ループ長の変化比Lb/Laを1.2≦Lb/La≦1.8とするには、ノックオーバーの深さ(度目)、シンカー形状変更および糸の供給量調整により弾性糸の湾曲や蛇行を減らすこと、さらに、特に染色加工時の密度コントロールにより可能である。すなわち、丸編や経編(トリコット)の生機は染色加工により密度が大きく増加し、生機の状態より1.3〜1.8倍程度密度アップすることが一般的である。これは、弾性糸を含有する従来の編地は伸縮性付与が大きな目的で、密度アップをこの程度にすることにより、良好な伸縮性を有する編地が得られるからである。これに対し本発明の伸縮性編地は、伸長時に発熱させることが目的で、編地の伸長時、編地中の弾性糸が効率よく伸長される必要がある。従って、染色加工上がりの編地の弾性糸はほぼ真っ直ぐな状態となるよう、染色加工後の編地の密度は生機とほぼ同じ状態に仕上げるのが望ましく、特にプレセット時に生機と同じ状態となるよう密度コントロールすれば良い。
【0025】
本発明の伸縮性編地は、さらに編地が伸長される際のパワーの影響が大きく、着用時相当の伸長状態における編地パワーが特定の範囲であることが好ましい。具体的には、編地は着用時に30%程度伸長され、さらにこの状態から着用後の動作によって50%程度伸長されることから、下記の方法で測定した、編地の経緯少なくとも一方向の95%伸長時の編地パワーが2.5〜8.0Nであることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜7.0Nであり、特に好ましくは3.0〜6.0Nである。
【0026】
ここで、95%伸長時の編地パワーは以下の方法で測定する。
(i)編地を初期長から30%伸長させた状態で引張り試験機にセットし、このときの応力値を0(ゼロ)Nとする。
(ii)このセット長を基準としてさらに50%伸長した時(編地初期長から通算で95%伸長されている)の応力値(N)を測定し、これを95%伸長時編地パワーとする。
【0027】
95%伸長時編地パワーが2.5N未満では動き易いが伸長時の発熱性に乏しく、逆に編地パワーが高すぎると動き難くなり、特に、7.0Nより大きい場合は伸縮性が乏しく、着用時に突っ張り感を感じる不快な衣服となる。従って、伸長発熱する方向の95%伸長時の編地パワーは2.5〜7.0Nであることが好ましい。なお、編地の経緯両方向ともに、95%伸長時の編地パワーが2.5〜7.0Nであることが好ましいが、経緯どちらかの編地方向の95%伸長時の編地パワーが2.5〜7.0Nであればよい。経方向と緯方向のパワーが異なる編地の場合、例えば足首までのレギンス調のボトムを縫製するに際し、編地の高パワー方向に足を入れる方向で縫製すれば発明の効果が発揮しやすくなる。なお、編地のパワー測定は、実施例に記載する方法により行う。
【0028】
本発明の伸縮性編地は、編組織や、糸使いを変更したり、または樹脂プリント等を施すことにより、点状、直線状、あるいは曲線状等の部分的にパワーが異なり高パワー部と低パワー部が混在していてもよい。この場合、編地中の一部分でも本性能を満足すればよい。例えば、95%伸長時の編地パワーが8N程度の高パワー編地において、衣服等の着用時に動きにくくなる可能性があるような場合、膝など伸長発熱効果が欲しい部分のみ高パワーとし、他の部分は、発熱性は劣るがよく伸びる低パワー構造とすることができる。
なお、編地パワーは95%伸長時のパワーを測定し、伸長発熱は100%伸長により測定して矛盾しているようであるが、伸長発熱の測定を100%としているのは、伸長発熱の効果をより明確に出来るためである。
【0029】
本発明の伸縮性編地の発熱についてさらに検討した結果、発熱は下記式で表される伸長発熱指数により大きく影響されることが判った。すなわち、下記式で表される伸長発熱指数を0.5〜4.0とすれば、伸長時良好に発熱する本発明の編地が得られる。
伸長発熱指数=(弾性糸重量 × 95%伸長時編地パワー)/編地伸度
ここで、弾性糸重量は編地単位面積当りの弾性糸重量(g/m2)であり、95%伸長時編地パワーは前述の方法で測定される編地パワー(N)であり、編地伸度は9.8N/2.5cm荷重下での編地伸度(%)で、経緯それぞれの方向の伸長発熱指数を計算し、経方向は経方向の編地パワー、編地伸度を用い、緯方向も同様に緯方向の編地パワー、編地伸度より求める。なお、一方向しか伸長できない場合は、伸長可能な方向のみの伸長発熱指数を求める。
【0030】
伸長発熱指数が大きいほど伸長発熱温度が高くなるが4.0より大き過ぎると発熱温度は高いが衣服着用時に動き難い衣服となり、逆に伸長発熱指数が0.5より小さいと伸長発熱温度が低い編地となる。従い、伸長発熱指数が0.5〜4.0、好ましくは0.7〜3.8となるように編地設計および染色加工を行えばよい。ここで、編地の経緯両方向ともに伸長発熱指数が0.5〜4.0であることが好ましいが、経緯どちらかの編地方向の伸長発熱指数が0.5〜4.0であればよい。なお、本願実施例における伸長発熱指数は、伸長発熱温度が高い方向の値を示す。
【0031】
伸長発熱指数を0.5〜4.0とするには、上記式を構成するそれぞれの要因の調整により可能である。伸長発熱指数を大きくするには、(1)弾性糸の重量を増す、(2)編地のパワーを高くする、(3)編地伸度を低くする、の3条件のうち一つまたは複数の条件を調整すればよい。弾性糸の重量を増す方法としては、太い弾性糸を使う方法、編機ゲージアップや弾性糸のループを小さくすることによる編地密度を高くする方法、弾性糸の編組織を、例えばトリコットでは2目編またはコード組織等振りの多い組織にして緻密にする方法、弾性糸編成時の弾性糸供給量を多くして(ドラフト率を小さくして)編成する方法、および染色加工時に編地を伸長せず、セット時に追い込み加工して密度を上げる方法等がある。また、編地のパワーを高くする方法には、前記の弾性糸の重量を増す方法と同様の方法に加え、非弾性糸を太くする方法、編組織におけるループを多くする方法がある。編組織については、例えば丸編ではタックループ、ウエルト(ミス)ループまたは挿入組織を編地中に配し、これらのループが多くなるほど編地のパワーが高くなり、編地中に占めるニットループの割合を30〜70%とすることが好ましい。経編では、チェーン、デンビー、挿入組織により編地のパワーが高くすることが可能で、いずれも、伸びにくい組織が効果的である。さらに、編地パワーを高くするには、染色加工時に若干粗密度で仕上げる方法等が行える。編地の伸度を低くするには、編地のパワーを高くする方法と同様の方法により可能である。伸長発熱指数を0.5〜4.0とするには、弾性糸の重量を増す、編地のパワーを高くする、編地伸度を低くする事により達成しやすくなるが、いずれの要因も密接に関連している為、伸長発熱指数が0.5〜4.0となるよう、適切な編地設計を行えば効果的に伸長発熱する編地が得られる。
【0032】
さらに本発明の伸縮性編地は、後述する方法で測定した編地中の弾性糸のパワーが100%伸長時に0.04〜0.20cN(センチニュートン=N×0.01)/dtexであることが好ましい。弾性糸のパワーにより伸長発熱性が大きく左右され、弾性糸のパワーが0.04cN/dtex未満では十分な伸長発熱性が得られず、0.20cN/dtexより大きくなると、編地が伸び難くなり、衣服縫製した際は動きにくくなり好ましくない。従って、弾性糸のパワーは0.04〜0.20cN/dtex、より好ましくは0.05〜0.18cN/dtex、特に好ましくは0.10〜0.17cN/dtexである。
【0033】
弾性糸のパワー測定については、編地中の弾性糸を抜き出し、テンシロン引張り試験機で100%まで伸長した際のパワーを測定し、繊度で除した数値を弾性糸パワーとするが、抜き出した弾性糸が捲縮されている場合もあり、この場合は、テンシロン引張り試験機で伸長し、荷重が0(ゼロ)になる所を起点に100%伸長して弾性糸パワーを測定する。また、弾性糸を抜き出すには、編地を解いて抜き出す方法、非弾性糸を切断して弾性糸を編地中から抜き出す方法、あるいは、非弾性糸を溶解して弾性糸のみとして弾性糸を抜き出す方法が行え、これらを単独あるいは組み合わせて弾性糸を抜き出して弾性糸パワーを測定する。なお、弾性糸の繊度については、抜き出した弾性糸の捲縮を伸ばして真っ直ぐにし、引張り試験機で伸長し、荷重が0(ゼロ)になる時の長さと重量を10本測定して、平均値を繊度とする。さらに、弾性糸相互が融着している等により編地中から弾性糸を抜き出せない場合は、弾性糸のみの編地1ウェールあるいは1コース分を裁断し、コース方向、あるいはウェール方向にニードルループが連続してつながった状態を1本の繊維(ループ繊維と称す)とし、この状態で長さと重量よりループ繊維の繊度(ループ繊度と称す)を求め、さらに、このループ繊維の100%伸長時のパワーを測定して弾性糸パワーの代用とするが、ループの交絡部によるパワーアップが見られるため、次式により補正して弾性糸パワーとする。
抜き出せない場合の弾性糸パワー=(1ウェール(1コース)分のループ繊維の
弾性糸パワー×0.8)/ループ繊度
この際の弾性糸ループ繊度は、抜き出した弾性糸のループ繊維の捲縮を伸ばして真っ直ぐにし、引張り試験機で伸長し、荷重が0(ゼロ)になる時の長さと重量を10本測定して平均値をループ繊度とする。
【0034】
本発明の伸縮性編地に用いられる弾性糸としては、ポリウレタン系弾性糸やポリエーテルエステル系弾性糸が挙げられるが、上記パワーを有する弾性糸として、ポリウレタン弾性糸が好ましい。なかでも、ソフトセグメントがウレタン構造、ハードセグメントがウレア構造からなるポリウレタンウレア弾性糸であることが好ましい。
【0035】
編地中におけるパワーが高い弾性糸を得るには、弾性糸の分子量を上げる方法がある。他の方法としては、例えば特開2001−140127号公報に示される、第1級アミンまたは第2級アミンのいずれかの1官能性アミン、水酸基、及び第3級窒素または複素環状窒素から選ばれた少なくとも1種を含む窒素含有化合物と有機ジイソシアナートとが反応して得られる、1分子あたりの平均ウレア結合単位数が4〜40個であるウレタンウレア化合物、特許4343446号公報に示される、第1級アミン及び第2級アミンのうちの少なくとも1種から選ばれる2官能性アミノ基と第3級窒素および複素環状窒素のうちの少なくとも1種から選ばれる窒素含有基とを含む窒素含有化合物と、有機ジイソシアナート、モノ又はジアルキルモノアミン、アルキルモノアルコール、有機モノイソシアナートの群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを反応させて得られるウレア化合物、特開平7−316922号公報に示される、ポリアクロニトリル系ポリマー、低分子ジオールおよびポリマージオールの混合物と有機ジイソシアナートとの反応で得られる末端水酸基構造であるポリウレタン、またはスチレン−無水マレイン酸共重合体等を添加して紡糸する方法がある。上記末端水酸基構造であるポリウレタンとしては、炭素原子数2〜10の直鎖状又は分岐状アルキレン基もしくは二価の脂環式炭化水素の両末端に水酸基を有する低分子ジオールおよび数平均分子量400〜3000の高分子ジオールの混合物(モル比1〜99)と有機ジイソシアナートとの反応物であって、末端が水酸基でありウレタン基濃度が3ミリ当量/g以上である数平均分子量10000〜40000のポリウレタン重合体であることが好ましい。これらを単独、あるいは2種以上混合して弾性糸中に添加すればよいが、添加量が少ないと伸長発熱温度効果が低く、逆に添加量が多いと、編地伸長回復性が低下し、着用、洗濯により型崩れが生じやすくなるため、添加量は、弾性糸重量に対して2.0〜15.0%、好ましくは、2.5〜8.0%とする。
これらの方法により、弾性糸のパワーを調整して、100%伸長時に0.04〜0.2cNとすればよい。
【0036】
本発明の伸縮性編地による伸長時の発熱は、編地の伸度による影響も大きい。すなわち、伸長発熱する方向の9.8N荷重下での編地伸度は70〜200%であることが好ましく、さらに好ましくは80〜180%である。70%未満の場合は、着用時の動きを阻害して動きにくい衣服となり、また、200%より大きいと、伸長時の発熱効果の小さい編地となる。さらに、編地経緯伸度の和も伸長発熱性と着用時の動き易さで重要であり、9.8N荷重下で編地経緯伸度の和が170〜450%であるのが好ましく、170%未満では、伸縮性が乏しく、着用時に突っ張り感を感じる不快な衣服となり、450%より大きい場合は、着用時動き易いが伸長時十分に発熱しない編地となる。より好ましくは180〜400%である。なお、編地中に編組織や糸使いの変更、あるいは樹脂プリント等により、点状や直線状、あるいは曲線状等の部分的に伸度が異なる高伸度部と低伸度部が混在していてもよく、編地中の一部分でも本性能を満足すればよい。
【0037】
編地の伸度調整は、編機のゲージ、編地の組織や密度調整、または、非弾性糸および弾性糸の繊度調整により可能である。なお、衣服製造時には、特に限定されないが、低伸度の編地方向を衣服着用時によく伸長する方向にあわせて衣服を製造すれば、伸長発熱効果が発揮されやすい衣服となる。
【0038】
さらに、本発明の伸縮性編地は、9.8N荷重下での経方向と緯方向の伸度比が0.6〜2.5である事が望ましく、この伸度比の伸縮性編地で衣服縫製した場合、適度な締め付け感があり、身体の曲げ伸ばしも楽に行える。伸度比が、0.6未満では、身体の曲げ伸ばし時、突っ張り感があり、着心地の良くない衣服となる。伸度比が2.5より大きい場合は、身体の曲げ伸ばし時にシワが発生したり、編地に弛みが生じる事があり好ましくない。従って、編地の経方向と横方向の伸度比が0.6〜2.5であることが好ましく、より好ましくは0.8〜2.3である。なお、本発明でいう伸度比は、上記伸度を経方向および緯方向とも測定し、次式により求める。
伸度比=(経方向伸度)/(緯方向伸度)
【0039】
本発明の伸縮性編地は編地の伸長回復率も重要で、伸長回復率は、経方向および緯方向ともに、85%以上の編地であることが好ましい。伸長回復率が85%未満の場合は、繰り返し伸縮時の発熱量の低下を招き好ましくない。なお、編地伸度および伸長回復率の測定法は、実施例にて具体的に示す。
【0040】
さらに本発明の伸縮性編地は、弾性糸の少なくとも一部がルーピング組織で編成されている事により編地伸長時の発熱が高くなり、本発明の目的が好適に達成できる。即ち、経編では少なくとも1枚の筬に供給される弾性糸のループ構造がルーピング組織であることが好ましく、複数枚の筬に弾性糸を使用する際も、少なくとも1枚の筬はルーピング組織とすることが好ましい。
【0041】
本発明における弾性糸のルーピング組織としては、例えば、チェーン(10/01)、デンビー(10/12)、コード(10/23、10/34)およびサテン(10/45、10/56)等のシンカーループの振り量を変えた組織、アトラス(例えば10/12/23/34/32/21、10/23/45/67/54/32)のような変化柄、およびオーバーラッピング時に2針に弾性糸を供給する2目編(例えば20/13、20/24)等が挙げられ、閉じ目組織以外にも開き目組織やそれらを混合しての使用も可能である。
【0042】
また、伸長発熱効果をさらに発揮するためには、弾性糸の振りを10/23、10/34等の2針以上の振りとするか、20/13、20/24等の2目編とすることが好ましい。また、弾性糸の糸配列については特に限定はなく、筬に総詰(オールイン)、弾性糸を1本おきに筬通しする1イン1アウトなど、任意な糸配列が可能であるが、筬に総詰(オールイン)で編成する方法は、弾性糸の含有量を増加しやすく、また、緻密で均一に発熱する編地となるので好ましい。また、編地を緻密化し、編地中の弾性糸の蛇行や湾曲を小さくするため、32ゲージ以上の編機を使用し、生機とほぼ同じ密度に仕上げれば、良好な伸長発熱と着用感に優れる衣服となり好ましい。
【0043】
本発明の伸縮性編地は丸編機によっても製造可能で、丸編地においても編成組織の少なくとも一部がルーピング組織であることが好ましい。ただ丸編地の場合は伸長時の発熱効果が小さいので、編地中の弾性糸で構成されるループの中で、ニットループが占める割合を30〜70%とする事により、より伸長時の発熱効果を高くする事が可能である。30%未満では編地伸度が不十分で着用時動き難く、70%より多い場合は高伸度編地となるが発熱効果が不十分となる。編地中に占めるニットループの割合が30〜70%であれば、すべてのループをニットループとするよりも動きを阻害しない編地となる。編地中のニットループ以外のループについては、タックループまたはウエルトループ(ミスループ)どちらか、あるいは両方とも組み合わせた選定が可能である。ニットループのみで弾性糸のループを構成すると、丸編では編地を伸長した際にループ変形が大きくて弾性糸の伸長は少なく、伸長発熱効果が十分発揮できない。タックループあるいはウエルトループを編地中に組み合わせることにより、編地伸長時には効果的に弾性糸が伸長して、発熱効果が大きくなる。なお、編地中のニットループの割合は、編組織の一完全組織内のニットループ、タックループおよびウエルトループのそれぞれのループ数より計算する。無論、編地中にニットループのみの部分と、タックループやウエルトループとが組み込まれニットループの占める割合が30〜70%の部分とが柄状に混在している場合も可能で、この場合、ニットループの占める割合が30〜70%の部分のみ伸長発熱するため、膝や肘部など伸縮する部位にこの部分を配置すればよい。
【0044】
また、編地中の弾性糸は、交差している部分で部分的に溶解し、弾性糸相互が融着して固定されている、あるいは、弾性糸の交差している部分が変形し、弾性糸相互が噛み合って固定されているなど、弾性糸相互が弾性糸の交差部で固定されているのが好ましく、このような状態であれば、伸長時の発熱効果が高くなる。なお、弾性糸が交差している部分には、ニードルループ相互が交差している部分、ニードルループとシンカーループが交差している部分、およびシンカーループ相互が交差している部分があるが、いずれか交差している弾性糸相互が固定されているものである。
【0045】
弾性糸相互を交差部で固定する方法については、熱により固定するのが簡単であり、染色加工時のピンテンター等を使用するヒートセットにおいて、185℃以上の高温にして編地を通せば弾性糸は固定し易くなり、固定が不十分な場合は、ヒートセット時間を長くするか、ヒートセット温度を200℃を超えない範囲で高くすれば良い。ヒートセット温度を200℃以上にして30秒以上の加熱を行なうと、弾性糸および非弾性糸ともに脆化や黄変する危険がある。また、100℃程度のスチームセットや180℃程度のヒートセットでセット効果の高く、弾性糸相互が固着する弾性糸を使用する方法でも、弾性糸相互の固着が可能である。
【0046】
弾性糸相互の交差部の固定状態を判別するには、経編地の場合は、編地中の非弾性糸を溶解し、弾性糸のみの編地とした後に、交差部が固定されているかどうか顕微鏡により判別可能であり、弾性糸相互の交差部が軽く伸長して簡単に剥離しない場合、またはニードルループとシンカーループのズレが生じない場合は固定されていると判断できる。編地の非弾性糸を溶解できない場合は、顕微鏡により観察して編地中の非弾性糸を切断して取り除き、弾性糸のみとして弾性糸相互の交差部が固定されているかどうかの判別が可能である。なお、弾性糸相互後の交差部が固定されている編地でも、編地中の全ループの交差部が固定されている必要はなく、編地面積の60%以上が固定されていれば良い。また、丸編地の場合は編地を編み終わり方向から非弾性糸と共に弾性糸を解いて抜き出し、弾性糸が10cm以上抜き出せる場合交差部が固定されていないと判断できる。
【0047】
本発明による伸縮性編地に使用する弾性糸は、ポリウレタン系およびポリエーテルエステル系の弾性糸で、例えばポリウレタン系弾性糸では、乾式紡糸又は溶融紡糸したものが使用でき、ポリマーや紡糸方法には特に限定されない。弾性糸の破断伸度は400%〜1000%程度のもので、かつ、伸縮性に優れ、染色加工時のプレセット工程の通常処理温度180℃近辺で伸縮性を損なわないことが好ましい。また、弾性糸に、特殊ポリマーや粉体添加により、高セット性、抗菌性、吸湿、吸水性等の機能性を付与した弾性糸も使用可能である。弾性糸の繊度については、10〜160dtex程度の繊維の使用が可能で、編地製造が容易な、20〜80dtex程度の弾性繊維の使用が好ましい。また、弾性糸に非弾性糸を巻きつけたカバーリング糸、撚糸した糸、および非弾性糸と弾性糸とを空気噴射等により混繊した混繊糸等の使用も可能である。
【0048】
さらに本発明の伸縮性編地は、弾性糸に無機物質を含有する事が可能で、含有する無機物質の性能を加味した編地とすることが出来、例えば、酸化チタンを含有させると、編地の発熱を酸化チタンに蓄え、遠赤外線効果による保温性が付与できる。無機物質の含有法については、弾性糸の紡糸原液に無機物質を含有させて紡糸する方法が最も簡単に含有させることが可能である。本発明でいう無機物質とは、酸化チタン等のセラミックス、カーボン、カーボンブラック等の無機物単体及び/または無機化合物であり、弾性糸の紡糸の障害とならない様、微粉末状が好ましい。これら無機物質は弾性糸に1〜10重量%含有していることが好ましく、無機物質を含有することにより、編地の発熱時保温効果をより効果的に発揮する事が可能となる。なお、無機物質は少ないと保温効果が小さく、多すぎると紡糸時や伸長時に糸切れする事があるため、1〜10重量%の含有が好ましく、より好ましくは2〜5重量%の含有である。
【0049】
本発明に用いる非弾性糸としては、ポリエチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維並びにポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、さらに、キュプラ、レーヨン、綿および竹繊維等のセルロース系繊維、羊毛等の獣毛繊維等、あらゆる繊維の使用が可能である。また、これらのブライト糸、セミダル糸およびフルダル糸等を任意に使用でき、繊維の断面形状も丸型、楕円型、W型、繭型および中空糸等任意の断面形状の繊維が使用可能であり、繊維の形態についても特に限定されず、原糸および仮撚等の捲縮加工糸が使用できる。さらに、長繊維でも紡績糸でもよく、また、2種以上の繊維を撚糸、カバーリングおよびエアー混繊等により混合した複合糸の使用も可能である。さらには、繊維自体での混合ではなく、編機上での2種以上の繊維の混合も無論可能で、例えば経編機では2種以上の繊維をそれぞれに対応する筬を準備して編成すればよい。繊維の太さについては、15〜160dtex程度の繊維の使用が可能で、編地の破裂強度や厚み感から、20〜110dtex程度の繊維の使用が好ましい。なお、綿や羊毛使用時はそれぞれ換算式により使用繊維の太さを求めれば良い。
【0050】
本発明に用いる非弾性糸は無機物質を0.3〜5重量%含有していることが好ましく、特にポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維およびセルロース系繊維の場合は含有していることが好ましい。無機物質を含有することにより、弾性編地の発熱時、保温効果をより効果的に発揮する事が可能となる。なお、無機物質は、少ないと保温効果が小さく、多すぎると紡糸時や伸長時に糸切れする事があるため、0.5〜5重量%の含有がさらに好ましく、特に好ましくは0.4〜3重量%の含有である。
【0051】
本発明の伸縮性編地では、非弾性糸にセルロース等の吸湿発熱する素材を使用すれば、着用時吸湿により発熱し、運動することによっても発熱する事になり、本発明の効果をより発揮することが可能である。さらに、紡績糸の使用や起毛により発熱した熱を逃がし難くでき、保温効果を高めることも可能である。
【0052】
本発明による伸縮性編地は、トリコットおよびラッセルの経編機、あるいは、釜径が24〜38インチ程度の丸編機、8〜20インチ程度の小寸丸編機、4インチ程度のパンスト編機、ソックス編機等の丸編機により製造可能で、シングル編機およびダブル編機のいずれの使用も可能である。これらの編機のゲージについては、任意なゲージの編機が使用可能であるが、24〜40ゲージ程度の編機の使用が好ましく、ゲージが粗いと伸長発熱温度が低く、さらに、編地の審美性も良くなく、なるべくハイゲージの編機使用が好ましいが、ハイゲージになるほど伸縮性が不良となり、着用しにくい衣服となるため、度目等の調整が必要である。
【0053】
本発明の伸縮性編地の染色仕上げ方法は、通常の染色仕上げ工程が使用でき、使用する繊維素材に応じた染色条件とし、使用する染色機も液流染色機、ウインス染色機およびパドル染色機など任意で、吸水性や柔軟性を向上させる加工剤や、保温性を高める加工剤の使用も行える。
【0054】
本発明の伸縮性編地は、スパッツ、スポーツタイツ、コンプレッションタイツ、ガードル等のスポーツ、インナー用等ボトム類、肌着、シャツ、コンプレッションシャツ等のトップス類、パンティーストッキング、ソックス、タイツ、レギンス等のレッグ類、また、肘サポーター、膝サポーター、腰サポーター、足首カバー、アームカバー、レッグカバー、ニーカバー、エルボーカバー、等のサポーター類、手袋、これら着用動作時に編地が伸長される関節部を覆う衣服に縫製すれば、日常の動作、運動により暖かい衣服となる。
【0055】
特にコンプレッションウェア、すなわち、ジョギング、各種ゲーム、ウォ−キング等、主に運動時に肌に密着させて着用し、運動機能の向上、怪我の防止および保温を狙った長袖または半袖等の袖付きシャツ、膝上、膝下または足首までのスパッツ等では、目付けが150〜300g/m2程度の経編地からなり、弾性糸を40〜80g/m2含有し、かつ、9.8N荷重下での編地経緯伸度の和が170〜300%であり、また、少なくとも1枚の筬の弾性糸の編成組織がルーピング組織で、弾性糸相互が弾性糸の交差部で固定されている編地が適しており、この編地を肘、膝、股下または足首等の関節部へ使用すれば特に高い発熱効果が得られ、これら関節部に少なくとも本発明の編地が使用される様に縫製することが好ましい。
【0056】
また、例えば、丸編機により製造されるタイツ、レギンス、ソックス等の薄手のレッグ衣料、釜径が24〜38インチ程度の丸編機、8〜20インチ程度の小寸丸編機、10インチ程度のパンスト編機、ソックス編機等の丸編機により製造されるボトム衣料等においても、本発明の伸縮性編地は日常の動作および運動により暖かい衣服となる。さらに、非弾性糸の繊度が15〜60dtexであり、弾性糸を40〜60g/m2含有し、9.8N荷重下で編地経緯伸度の和が170〜300%で、弾性糸相互が弾性糸の交差部で固定され、かつ、編地ループ中のループにおいてニットループの占める割合を30〜70%とする編地は、ボトム衣料として、保温性に優れ、伸長部位の筋肉や関節を暖めることによる怪我の防止に効果を発揮する。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例における評価は以下の方法により行なった。
(1)サンプリング
以下の測定を行う場所は基本的にランダムで数箇所行なうが、編組織、糸使い、樹脂プリントの有無等によって布帛性能が部分的に異なる編地においては、本発明の性能を満たす部分が確認できない場合、本発明の性能が発現する可能性が高い箇所を優先して測定することができる。例えば、低パワー部(高伸度部)と高パワー部(低伸度部)が混在しているような場合、高パワー部(低伸度部)の比率が高くなるようにサンプリングすることが好ましく、経方向および緯方向それぞれの測定を行えるようサンプリングすればよい。
編組織、糸使い、樹脂プリントの有無等が均一である編地においては、サンプリング箇所はランダムでよく、経方向および緯方向それぞれの測定を行えるようサンプリングすればよい。
【0058】
(2)瞬間発熱温度
瞬間発熱温度の測定は、下記の繰り返し伸縮試験機を使用し、伸長および緩和(戻し)を規定速度で規定回数繰り返す間の試料表面温度を測定して求め、編地経方向、及び、緯方向の瞬間発熱温度を測定し、高い方向を瞬間発熱温度とする。
繰り返し伸縮機:デマッチャー試験機((株)大栄科学精器製作所製)
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅60mm
測定環境:温度20℃、湿度65%RHの恒温恒湿条件。伸縮以外に外部からのエネルギー供給を受けない状態で測定する。
伸長量:長さ方向に100%
繰り返し伸縮サイクル:1回/秒
発熱温度測定:繰り返し伸長100回中および伸長終了後の試料表面温度を連続的にサーモグラフィで測定する。サーモグラフィの放射率は1.0に設定する。
発熱温度評価:測定する試料表面が最高温となったときの温度を読み取り、伸縮前の温度と比べ上昇した温度を瞬間発熱温度とする。
【0059】
(3)弾性糸含有量
編地中の弾性糸含有量(g/m2)を、次の方法により求め、小数点一桁を四捨五入する。
編地中の非弾性糸を溶解等により除去し、弾性糸のみの重量を測定して単位面積当りの重量に換算する。非弾性糸を除去することが困難であれば、重量測定後の編地から、弾性糸を溶解等により除去し、非弾性糸のみの重量を測定して、重量減少した分を弾性糸重量とする。
【0060】
(4)弾性糸相互の固定
弾性糸相互が交差部で固定されているかどうかを、次により判断する。
経編の場合、弾性糸相互の交差部の固定状態を顕微鏡で観察し、弾性糸相互の交差部をピンセット等で軽く伸長して、交差部が簡単に剥離しない場合、またはニードルループとシンカーループのズレが生じない場合は固定されていると判断し、計50ヶ所判断した結果を下記評価基準に従って判定し、○および△を合格とした。
○ : 交差部の80%以上が固定されている。
△ : 交差部の60%以上、80%未満が固定されている。
× : 交差部の固定が60%未満である。
【0061】
丸編地の場合、編み終わり方向から非弾性糸と共に弾性糸を解いて抜き出し、弾性糸相互の交差部が固定されているかどうかを下記評価基準に従って判定し、○および△を合格とした。なお、抜き出した弾性糸の長さは、抜き出した弾性糸の繊度を測定し、その繊度の1/100の荷重をかけて測長し、10本の平均値を抜き出せる長さとする。
○ : 弾性糸が20cm以上の長さで連続して抜き出せる。
△ : 弾性糸が10〜20cm未満の連続した長さで抜き出せる。
× : 弾性糸が10cm未満の連続した長さしか抜き出せない。
【0062】
(5)編地パワー
次の方法により編地の経緯方向のパワーを測定し、高い方向のパワーを編地パワーとする。
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅25mm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
初荷重:0.1N
引張り速度:300mm/分
引張り長:編地を30%伸長でセット後、伸長後の長さを基準にさらに50%伸長する。
測定:上記条件で伸長時のパワー(N)を求める。
【0063】
(6)弾性糸の100%伸長時パワー
次の方法により編地の弾性糸のパワーを測定する。
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
引張り速度:300mm/分
引張り長:弾性糸を120%まで伸長
測定:上記条件で弾性糸の荷重が0(ゼロ)になるところを基準に100%伸長した時のパワー(N)を求める。なお、弾性糸が抜き出せず、ループ繊維の状態で測定する場合は前述の換算式により算出する。
【0064】
(7)編地伸度および編地経緯伸度の和
編地伸度を次の方法により測定する。
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅25mm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
初荷重:0.1N
引張り速度:300mm/分
引張り長:9.8N荷重まで伸長。
測定:上記条件で伸長し、9.8N荷重での経方向および緯方向それぞれの伸度を求め、伸長発熱する方向の伸度を編地伸度とし、経伸度と緯伸度との和を編地経緯伸度の和とする。
【0065】
(8)伸長回復率
伸長回復率を次の方法により測定する。
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅25mm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
初荷重:0.1N
引張り速度:300mm/分
引張り長:80mm(80%伸長)
引張り回数:3回伸縮を繰り返す。
測定:上記条件で編地の繰り返し伸縮3回目の伸長回復率を、次式により求める。
伸長回復率(%)=[(180−a)/80]×100
a:繰り返し伸長3回目の応力が0になるときの試料長さ(100mm+残留歪)
【0066】
[実施例1]
32ゲージのトリコット経編機を使用し、バック筬に弾性糸44dtex(商品名ロイカCR:旭化成せんい(株)製)、フロント筬にナイロン原糸22dtex/7fを準備し、次の組織、条件で編成した。
フロント筬 10/23
バック筬 23/10
編成できた編地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで190℃で1分間生機密度とほぼ同じ密度となるよう巾、長さを調整してプレセットを行い、その後、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、プレセットと同じ密度で170℃で1分仕上げセットを行い編地とした。
得られた編地は特殊組織であり、弾性糸の混率が44%で通常のトリコット編地より高く、また、弾性糸含有量および編地パワーが高く、低い編地伸度である。この編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の編地は、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上で、目標とする編地となり、洗濯による寸法変化率は経−1.9%、緯−2.5%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0067】
[実施例2〜5、比較例1]
弾性糸の繊度を33dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)に変更(実施例2)、弾性糸の繊度を33dtexに、バック筬の組織を20/13に変更(実施例3)、さらに、弾性糸の繊度を22dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)に、バック筬の組織を12/10に変更(比較例1)したことを除いて、実施例1と同様に編地を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0068】
また、特開平7−316922公報の実施例4で用いられたポリウレタン重合体(A剤)、及び、特開2001−140127公報の実施例1で用いられたウレタンウレア化合物(B剤)を準備し、弾性糸44dtex(商品名ロイカCR:旭化成せんい(株)製)製造時の紡糸浴に、A剤を7wt%およびB剤を3wt%添加(実施例4)、A剤を3wt%およびB剤を3wt%添加(実施例5)してパワーが異なる弾性糸を製造し、これを使用したことを除いて、実施例1と同様に編地を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例2〜5による編地の洗濯による寸法変化率は経−0.6〜1.3〜%、緯−0.7〜1.9%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。一方、比較例による衣服は、洗濯による寸法変化率は経−3.2%、緯−4.2%であり、着用、洗濯による型崩れが生じ易い製品であった。
【0069】
[実施例6]
32ゲージのトリコット経編機を使用し、バック筬に弾性糸33dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)、ミドル筬に弾性糸33dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)、フロント筬にナイロン原糸33dtex/34fを準備し、次の組織で編成した。
フロント筬 10/23
ミドル筬 10/01
バック筬 10/23
編成できた編地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで190℃で1分間生機密度とほぼ同じ密度となるよう巾、長さを調整してプレセットを行い、その後、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、170℃で1分の条件で仕上げセットを行い編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の編地は、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上で、目標とする編地となり、洗濯による寸法変化率は経−0.3%、緯−0.4%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0070】
[実施例7]
28ゲージ(インチ)のラッセル経編機を使用し、バック筬に弾性糸33dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)、ミドル筬に弾性糸78dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)、フロント筬にナイロン原糸44dtex/34fを準備し、次の組織で編成した(トリコットの編成記号で示す)。
フロント筬 23/21/12/10/12/21
ミドル筬 00/11/00/11/00/11
バック筬 10/12
編成できた編地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで190℃で1分間生機密度とほぼ同じ密度となるよう巾、長さを調整してプレセットを行い、その後、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、170℃で1分の条件で仕上げセットを行い編地とした。得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の編地は、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上で、目標とする編地となり、洗濯による寸法変化率は経−1.1%、緯−2.4%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0071】
[実施例8]
32ゲージのシングル丸編機を使用し、弾性糸44dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)、とナイロン加工糸33dtex/24fを準備し、これらをプレーティング編により、ニットループとタックループとを繰り返す鹿の子組織で編成した。
編成できた編地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで190℃で1分間生機密度とほぼ同じ密度となるよう巾、長さを調整してプレセットを行い、その後、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、170℃で1分の条件で仕上げセットを行い編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の編地は弾性糸の含有量が高く、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上で、目標とする編地となり、洗濯による寸法変化率は経−2.2%、緯−1.9%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0072】
[比較例2]
弾性糸を22dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)に変更し、組織をすべて天竺で編成したことを除いて、実施例8と同様に編地を製造し、得られた編地の性能を評価した。結果を表1に示した。また、洗濯による寸法変化率は経−3.9%、緯−4.8%であり、衣服として、着用、洗濯による型崩れが生じ易い製品であった。
【0073】
[実施例9]
28ゲージのシングル丸編機を使用して、弾性糸78dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)、エステル加工糸56dtex/24fを準備し、これらをプレーティング編により、ニットループとウエルトループとを繰り返す次の組織で編成した(Kはニット、Wはウエルトを示す)。
編組織 編順1 K W K W
編順2 K W K W
編順3 W K W K
編順4 W K W K
編成できた編地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで190℃で1分間生機密度とほぼ同じ密度となるよう巾、長さを調整してプレセットを行い、その後、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、170℃で1分の条件で仕上げセットを行い編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の編地は、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上で、目標とする編地となり、洗濯による寸法変化率は経−1.3%、緯−2.1%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0074】
[実施例10]
釜径4インチ、針数400本のパンスト編機を使用して、弾性糸44dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)にナイロン加工糸13dtex/7fを巻きつけたカバーリング糸を使用し、ニットループとタックループとを繰り返す鹿の子組織で編成した。
編成できた編地をパドル染色機で精練および染色を行い、染色後に柔軟仕上げ剤および吸水剤を付与した後乾燥し、足型の枠にセットして120℃で30秒間スチームセットを行い編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の編地は通常のパンストと違う組織で、かつ、弾性糸の混率が高く、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上で、目標とする編地となった。編地の洗濯による寸法変化率は経−2.4%、緯−2.5%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0075】
[実施例11]
36ゲージのトリコット経編機を使用し、バック筬に弾性糸44dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)、フロント筬にナイロン原糸33dtex/36fを準備し、次の組織、条件で編成した。
フロント筬 10/23
バック筬 12/10
編成できた編地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで190℃で1分間生機密度とほぼ同じ密度となるよう巾、長さを調整してプレセットを行い、その後、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、プレセットと同じ密度で170℃で1分仕上げセットを行い編地とした。
得られた編地は特殊組織であり、弾性糸の混率が41%で通常のトリコット編地より高く、また、弾性糸含有量および編地パワーが高く、低い編地伸度である。この編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の編地は、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上で、目標とする編地となり、編地の洗濯による寸法変化率は経−0.2%、緯−0.9%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0076】
[実施例12〜13、比較例3]
実施例11において、特にプレセット時の密度を変更して仕上げ、比較例3では、通常の編地製造で使用される条件で仕上げた。仕上げた編地の性能評価結果を表1に示すが、実施例12および13では、編地の洗濯による寸法変化率は経−0.3〜−0.4%、緯−0.5〜−0.7%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。比較例3による衣服は、伸長時の発熱温度が低く、編地の洗濯による寸法変化率は経−3.1%、緯−3.6%であり、着用、洗濯による型崩れが生じ易い製品であった。
【0077】
[実施例14]
特開平7−316922公報の実施例4で用いられたポリウレタン重合体を準備し、弾性糸44dtex(商品名ロイカCR:旭化成せんい(株)製)製造時の紡糸浴に、4.0wt%添加してパワーが異なる弾性糸を製造し、これを使用したことを除いて、実施例1と同様に編地を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
得られた編地の洗濯による寸法変化率は経−1.2%、緯+0.3%であり、衣服として着用、洗濯を行っても、型崩れのない製品となった。
【0078】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の編地は、運動発汗時に編地が伸長時瞬間的に温度上昇する編地であり、この編地をスポーツタイツ、スパッツ、コンプレッションタイツ、ガードル等の等ボトム類、肌着、シャツ、コンプレッションシャツ等トップス類、パンティーストッキング、ソックス、タイツ、レギンス等レッグ類、また、膝サポーター、肘サポーター、アームカバー、レッグカバー、ニーカバー、エルボーカバー等のサポーター類、手袋など、関節部を覆う衣服に縫製することにより、着用運動時に編地が発熱し、暖かい衣服となる。
【符号の説明】
【0080】
1 非弾性糸のニードルループ
2 ニードルループの始点
3 ニードルループの終点
4 弾性糸のシンカーループ
5 シンカーループの始点
6 シンカーループの終点
図1