特許第5777796号(P5777796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777796電動機付き過給機および電動機付き過給機を備えるエンジン装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777796
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】電動機付き過給機および電動機付き過給機を備えるエンジン装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20150820BHJP
   F02B 39/10 20060101ALI20150820BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20150820BHJP
   F02B 37/04 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   F02B39/00 B
   F02B39/00 C
   F02B39/10
   F02B37/00 302D
   F02B37/04 C
   F02B37/00 302F
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-501344(P2014-501344)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(86)【国際出願番号】JP2012080367
(87)【国際公開番号】WO2014080501
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2014年1月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安 秉一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
(72)【発明者】
【氏名】林 慎之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直道
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−248799(JP,A)
【文献】 特開2007−009702(JP,A)
【文献】 特開2012−102700(JP,A)
【文献】 特開2009−041556(JP,A)
【文献】 特開2007−292041(JP,A)
【文献】 特開2010−180710(JP,A)
【文献】 特開2010−196478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F02B 39/10
F02B 37/00
F02B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の一端部に固定されたコンプレッサホイールと、
前記コンプレッサホイールを収容するコンプレッサハウジングと、
前記回転軸に固設されたモータ回転子及び該モータ回転子の周囲に配置されたモータ固定子を含み、前記回転軸に回転力を付与する電動機と、
前記電動機を収容するモータハウジングと、
前記回転軸を回転可能に支持する第1グリース封入軸受と、
前記第1グリース封入軸受の前記モータ回転子を挟んだ反対側に配置された、前記回転軸を回転可能に支持する第2グリース封入軸受と、
前記第1グリース封入軸受を収容し、前記コンプレッサハウジング及び前記モータハウジングの間に配置される軸受ハウジングと、を備える電動機付き過給機であって、
前記軸受ハウジングの内部には、液体からなる冷却媒体が流れる冷却通路が、前記第1グリース封入軸受の外周側において周方向に設けられ、
前記モータハウジングは、前記電動機とともに前記第2グリース封入軸受を収容する単一のハウジング部材として構成されるとともに、
前記モータハウジングの内部には、液体からなる冷却媒体が流れるモータ側冷却通路が、前記モータ固定子および前記第2グリース封入軸受の外周側において周方向に設けられていることを特徴とする電動機付き過給機。
【請求項2】
前記回転軸は、前記電動機の他に排気タービンの駆動によっても回転力が付与されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機付き過給機。
【請求項3】
前記モータ側冷却通路と前記冷却通路とが接続通路によって通水可能に接続されているとともに、
前記冷却通路は、軸直交方向を視認した一断面において、該冷却通路がリブによって分割されたC字状に形成されており、該C字状の一端部には該冷却通路と外部とを連通する通水孔が接続され、該C字状の他端部には前記接続通路が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機付き過給機。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の電動機付き過給機を備えるエンジン装置であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスによって駆動するターボチャージャと、を備え、
前記ターボチャージャで圧縮された吸気ガスが、前記電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給されるように構成されていることを特徴とするエンジン装置。
【請求項5】
請求項1またはに記載の電動機付き過給機を備えるエンジン装置であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスによって駆動するターボチャージャと、を備え、
前記ターボチャージャで圧縮された吸気ガスが、前記電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給されるように構成されるとともに、
前記冷却通路を流れる冷却媒体が冷却水からなることを特徴とするエンジン装置。
【請求項6】
前記エンジンに供給される吸気ガスを冷却水により冷却するインタークーラをさらに備え、
前記冷却通路を流れる冷却媒体が、前記インタークーラで用いられる冷却水からなることを特徴とする請求項に記載のエンジン装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の電動機付き過給機を備えるエンジン装置であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスの一部を前記エンジンの吸気通路に再循環するEGR装置と、を備え、
前記EGR装置で再循環された排気ガスを含む吸気ガスが、前記電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給されるように構成されていることを特徴とするエンジン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機によって回転軸を回転させ、回転軸の一端部に固定されたコンプレッサホイールによってエンジンに供給する吸気ガスを過給する電動機付き過給機および電動機付き過給機を備えるエンジン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジン装置において、エンジン出力の向上を図るため、エンジンから排出される排気ガスによって排気タービンを駆動させ、これにより吸気通路に配置されているコンプレッサを同軸駆動させて、エンジンに供給する吸気ガスを圧縮する「過給」が行われている。
【0003】
このターボチャージャによる過給では、ターボラグと呼ばれるエンジン低速回転時における応答遅れが問題となる。このターボラグによる応答遅れを補完する技術として、排気ガスによって駆動するターボチャージャ及び電動機によって駆動する電動過給機を備える二段過給システムが公知である。また、ターボチャージャに電動機を取り付け、低速回転時には電動機を稼働させてコンプレッサを駆動させることでターボラグを解消するようにした電動アシストターボもまた公知である(特許文献1)。
【0004】
なお、以下の本明細書では、電動機によってコンプレッサを駆動可能に構成した過給機を「電動機付き過給機」と呼ぶ。この電動機付き過給機には、排気タービンを備えておらず、電動機によってのみコンプレッサが駆動される「電動過給機」、及び電動機の他に排気タービンの駆動によってもコンプレッサが駆動される「電動アシストターボ」も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2008−020511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した電動機付き過給機において、軸受構造の簡素化などを目的としてグリース潤滑方式の軸受(以下、「グリース封入軸受」と言う)の採用を検討する時に、軸受に封入されているグリースの高温劣化が問題となることを本発明者らは発見した。また、本発明者らは、このグリースの高温劣化が、電動機付き過給機を二段過給システムの高圧段過給機として用いた場合に、そのコンプレッサホイールの近傍に配置される軸受において特に問題となることを見出した。また本発明者らは、グリースの高温劣化が、EGRを備えたエンジン装置において電動機付き過給機より上流に排気ガスの一部を再循環させた場合に、そのコンプレッサホイールの近傍に配置される軸受において特に問題となることを見出した。
【0007】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、上述したような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、軸受の潤滑方式としてグリース潤滑方式を採用する場合において、その軸受の冷却性能を向上させた電動機付き過給機および電動機付き過給機を備えるエンジン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の電動機付き過給機の少なくとも一つの実施形態は、
回転軸と、
前記回転軸の一端部に固定されたコンプレッサホイールと、
前記コンプレッサホイールを収容するコンプレッサハウジングと、
前記回転軸に固設されたモータ回転子及び該モータ回転子の周囲に配置されたモータ固定子を含み、前記回転軸に回転力を付与する電動機と、
前記電動機を収容するモータハウジングと、
前記回転軸を回転可能に支持する第1グリース封入軸受と、
前記第1グリース封入軸受を収容し、前記コンプレッサハウジング及び前記モータハウジングの間に配置される軸受ハウジングと、を備える電動機付き過給機であって、
前記軸受ハウジングの内部には、冷却媒体が流れる冷却通路が、前記第1グリース封入軸受の外周側において周方向に設けられていることを特徴とする。
【0009】
このような電動機付き過給機によれば、軸受ハウジングの内部において、その第1グリース封入軸受の外周側の位置に、周方向に延在する冷却通路が設けられている。このため、この冷却通路に大気から直接得られる空気やエンジンの吸気経路中の吸気ガス、水などの冷却媒体を流すことで、第1グリース封入軸受を効果的に冷却することが出来る。
【0010】
また、本発明の一実施形態では、
前記回転軸は、前記電動機の他に排気タービンの駆動によっても回転力が付与されるように構成されている。
【0011】
このように、本発明の電動機付き過給機は、電動機の他に排気タービンの駆動によってもコンプレッサが駆動される「電動アシストターボ」であってもよいものである。
【0012】
また、本発明の一実施形態では、
前記モータハウジングは、前記第1グリース封入軸受の前記モータ回転子を挟んだ反対側に配置された、前記回転軸を回転可能に支持する第2グリース封入軸受を収容する。
【0013】
このような構成によれば、回転軸を2つの軸受で支持する両持ち構造となり、低い摩擦抵抗で安定的に回転軸を支持することが出来る。
【0014】
また、本発明の一実施形態では、前記冷却媒体は気体からなる。
【0015】
このような構成によれば、所謂空冷式により軸受を冷却するため、電動機付き過給機を簡素な構成によって冷却することが出来る。
【0016】
また、本発明の一実施形態では、
前記冷却通路の内周面に、外周側に突出するフィン部が設けられている。
【0017】
このような構成によれば、伝熱面積が増えるため、冷却効率が向上する。
【0018】
また、本発明の一実施形態では、前記冷却媒体は液体からなる。
【0019】
このような構成によれば、所謂水冷式により軸受を冷却するため、冷却性能に優れる。
【0020】
また、本発明の一実施形態では、
前記モータハウジングの内部には、冷却媒体が流れるモータ側冷却通路が設けられており、該モータ側冷却通路と前記冷却通路とが通水可能に接続されている。
【0021】
このような構成によれば、軸受ハウジングに収容されている第1グリース封入軸受、及びモータハウジングに収容されている電動機、コイル、第2グリース封入軸受等を、冷却通路とモータ側冷却通路とからなる一つの冷却媒体経路によって冷却することが出来る。
【0022】
また、本発明のエンジン装置の少なくとも一つの実施形態は、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動機付き過給機を備えるエンジン装置であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスによって駆動するターボチャージャと、を備え、
前記ターボチャージャで圧縮された吸気ガスが、前記電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給されるように構成されていることを特徴とする。
【0023】
このようなエンジン装置は、ターボチャージャで過給された吸気ガスが電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給される、いわゆる二段過給システムにおいて、電動機付き過給機械がその高圧段過給機として構成されている。このように、二段過給システムの高圧段過給機として電動機付き過給機を用いる場合、高圧段で圧縮された吸気ガスはさらに高温となるため、電動機付き過給機のコンプレッサホイールの近傍に配置される第1グリース封入軸受は、特に高温の吸気ガスの熱影響を受け易くなる。これに対して、本実施形態の電動機付き過給機は、冷却媒体が流れる冷却通路が軸受ハウジングの内部に設けられているため、コンプレッサホイールの近傍に配置される第1グリース封入軸受に対する冷却性能に優れている。
【0024】
このように、本実施形態のエンジン装置は、その電動機付き過給機を二段過給システムの高圧段過給機として用いる場合において、特に好適に用いられるものである。
【0025】
また、本発明のエンジン装置の少なくとも一つの実施形態は、
請求項3または4に記載の電動機付き過給機を備えるエンジン装置であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスによって駆動するターボチャージャと、を備え、
前記ターボチャージャで圧縮された吸気ガスが、前記電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給されるように構成されるとともに、
前記冷却通路を流れる冷却媒体が、前記エンジンに供給される吸気ガス、又は空気からなることを特徴とする。
【0026】
このようなエンジン装置は、上述したように、その電動機付き過給機を二段過給システムの高圧段過給機として用いる場合において好適に用いられる。しかも、冷却通路を流れる冷却媒体が、エンジンに供給される吸気ガス、又は空気からなることから、冷却媒体を効率よく冷却通路に供給することが出来る。
【0027】
また、本発明の一実施形態では、
前記冷却通路を流れる冷却媒体が、前記エンジン装置の外部から導入され、前記ターボチャージャで圧縮される前の吸気ガスからなる。
【0028】
このような構成によれば、ターボチャージャで圧縮される前の低温の吸気ガスを冷却媒体として用いるため、冷却効果に優れている。
【0029】
また、本発明のエンジン装置の少なくとも一つの実施形態は、
請求項5または6に記載の電動機付き過給機を備えるエンジン装置であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスによって駆動するターボチャージャと、を備え、
前記ターボチャージャで圧縮された吸気ガスが、前記電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給されるように構成されるとともに、
前記冷却通路を流れる冷却媒体が冷却水からなることを特徴とする。
【0030】
このようなエンジン装置は、上述したように、その電動機付き過給機を二段過給システムの高圧段過給機として用いる場合において好適に用いられる。しかも、冷却通路を流れる冷却媒体が冷却水からなり、冷却効果に優れる。
【0031】
また、本発明の一実施形態では、
前記エンジンに供給される吸気ガスを冷却水により冷却するインタークーラをさらに備え、前記冷却通路を流れる冷却媒体が、前記インタークーラで用いられる冷却水からなる。
【0032】
このような構成によれば、冷却通路を流れる冷却媒体がインタークーラから導入された冷却水からなり、インタークーラで用いられる冷却水を有効利用することで、エンジン装置における冷却システムを簡素な構成にすることが出来る。
【0033】
なお、インタークーラで用いられる冷却水量に余裕がない場合などには、冷却通路へ冷却水を供給するための冷却系統を別途追加してもよい。
【0034】
また、本発明のエンジン装置の少なくとも一つの実施形態は、
請求項1から11のいずれか1項に記載の電動機付き過給機を備えるエンジン装置であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスの一部を前記エンジンの吸気通路に再循環するEGR装置と、を備え、
前記EGR装置で再循環された排気ガスを含む吸気ガスが、前記電動機付き過給機のコンプレッサホイールへと供給されるように構成されていることを特徴とする。
【0035】
このようなエンジン装置では、再循環された排気ガスを含む吸気ガスはさらに高温となるため、電動機付き過給機のコンプレッサホイールの近傍に配置される第1グリース封入軸受は、特に高温の吸気ガスの熱影響を受け易くなる。これに対して、本実施形態の電動機付き過給機は、上述したように、冷却媒体が流れる冷却通路が軸受ハウジングの内部に設けられているため、コンプレッサホイールの近傍に配置される第1グリース封入軸受に対する冷却性能に優れている。
【0036】
このように、本実施形態のエンジン装置は、その電動機付き過給機をEGR装置付きエンジン装置の過給機として用いる場合において、特に好適に用いられるものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、軸受の潤滑方式としてグリース潤滑方式を採用する場合において、その軸受の冷却性能を向上させた電動機付き過給機および電動機付き過給機を備えるエンジン装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の電動機付き過給機の一実施形態にかかる電動過給機を示した部分破断側面図である。
図2図1のA−A線における断面図である。
図3図1の電動過給機の部分側面図である。
図4図1の電動過給機の部分拡大断面図である。
図5A】本発明の電動機付き過給機の一実施形態にかかる電動過給機であって、図6のC−C線に対応する位置の部分破断側面図である。
図5B図5Aの実施形態における冷却媒体の流れを示した模式図である。
図6図5AのB−B線における断面図である。
図7図5Aの電動過給機の部分拡大断面図である。
図8】本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、ターボチャージャで圧縮する前の吸気ガスを冷却媒体として用いる場合を示した図である。
図9A】本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、ターボチャージャで圧縮した後の吸気ガスを冷却媒体として用いる場合を示した図である。
図9B図9Aに示したシステム構成図の一変形例である。
図9C図9Aに示したシステム構成図の一変形例である。
図10】本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、電動過給機とエアクリーナとを同じカバーで覆うように配置した場合を示した図である。
図11】本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、空気を冷却媒体として用いる場合を示した図である。
図12】本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、インタークーラで用いられる冷却水を冷却媒体として用いる場合を示した図である。
図13】本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、EGR装置を備えた単段過給システムの一例を示した図である。
図14】本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、EGR装置を備えた二段過給システムの一例を示した図である。
図15】本発明の一実施形態にかかる電動過給機を二段過給システムの低圧段過給機として用いた場合のエンジン装置のシステム構成図であって、低圧段過給機によって圧縮される前の吸気ガスを冷却媒体として用いる場合を示した図である。
図16】本発明の一実施形態にかかる電動過給機を二段過給システムの低圧段過給機として用いた場合のエンジン装置のシステム構成図であって、冷却水を冷却媒体として用いる場合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0040】
図1は、本発明の電動機付き過給機の一実施形態にかかる電動過給機を示した部分破断側面図である。図2は、図1のA−A線における断面図である。図3は、図1の電動過給機の部分側面図である。図4は、図1の電動過給機の部分拡大断面図である。先ず、図1図4を基にして、本発明の一実施形態にかかる電動過給機の構成について説明する。
【0041】
本実施形態の電動過給機1aは、回転軸12の一端部に固定されたコンプレッサホイール10によってエンジンに供給する吸気ガスを過給するように構成されている。電動過給機1aは、図1に示したように、コンプレッサホイール10を収容するコンプレッサハウジング2と、コンプレッサハウジング2とボルト13aによって締結された軸受ハウジング4aと、軸受ハウジング4aとボルト13bによって締結されたモータハウジング6aとからなる。そして、軸受ハウジング4aは、モータハウジング6aとコンプレッサハウジング2との間に配置されている。
【0042】
軸受ハウジング4aは、回転軸12を回転可能に支持する第1転がり軸受20Aを収容する。本実施形態の転がり軸受20Aは、図4に拡大して示したように、同心に配置された内輪20c及び外輪20dと、これら内輪20cと外輪20dとの間に配置された保持器20bによって保持される複数の転動体20aからなり、少なくともこの転動体20aの周囲に潤滑材としてグリースが封入されたグリース潤滑方式の軸受20A(第1グリース封入転がり軸受20A)として構成されている。
【0043】
また図4に示したように、第1グリース封入転がり軸受20Aの外周には、軸受スリーブ28が配置されている。また、第1グリース封入転がり軸受20Aは、スリーブ部材24a,24bを介して、コンプレッサホイール10に近接した位置に配置されている。このため、第1グリース封入転がり軸受20Aは、コンプレッサホイール10で圧縮される高温の吸気ガスの熱影響を受け易い状態にある。
【0044】
モータハウジング6aは、少なくとも、モータ回転子14とモータ固定子16とからなる電動機15と、上述した第1グリース封入転がり軸受20Aとともに回転軸12を回転可能に支持している第2グリース封入転がり軸受20Bとを収容している。また、モータハウジング6aの後端部には、インバータを収容するインバータ収容部8が一体的に設けられている。
【0045】
モータ回転子14は、回転軸12に固設されている。モータ固定子16は、この回転軸12に固設されたモータ回転子14の周囲に配置されている。そして、コイルに電流が流れることで、モータ回転子14とモータ固定子16との相互作用により回転モーメントが発生し、回転軸12に回転力が付与される。また、上述したインバータは、電源から供給される電流を交流に変換するとともに、電圧及び周波数を任意に変更することで、電動機15の回転速度を制御するように構成されている。
【0046】
第2グリース封入転がり軸受20Bは、上述した第1グリース封入転がり軸受20Aと同様の構成を有している。そして、第1グリース封入転がり軸受20Aのモータ回転子14を挟んだ反対側に位置している。これにより、本実施形態の電動過給機1aは、回転軸12を2つの軸受20A,20Bで支持する両持ち構造として構成され、低い摩擦抵抗で安定的に回転軸12が支持される。
【0047】
また、図1に示したように、モータハウジング6aの外周面には複数の放熱フィン38が設けられている。そして、この複数の放熱フィン38に風を当てることで、モータハウジング6a内に収容されているコイルや電動機15、及びこれらに近接して配置されている第2グリース封入転がり軸受20B等が冷却される。
【0048】
また、上述した軸受ハウジング4aの内部には、その第1グリース封入転がり軸受20Aの外周側の位置に、空気などの気体からなる冷却媒体が流れる冷却通路18aが形成されている。この冷却通路18aは、図2に示したように、回転軸12に対して周方向に延在して設けられている。また、図3に示したように、軸受ハウジング4aの外周面には、複数の通気口17が周方向に並んで開口している。各通気口17は冷却通路18aと連通している。そして、この通気口17を介して、冷却通路18aに空気や低温の吸気ガス等の冷却媒体が供給され、または排出されるようになっている。
【0049】
また、図2に示したように、軸受ハウジング4aの内部には、軸受ハウジングの中央部分を支持するための強度部材であるリブ11aが径方向に延在している。このリブ11aは、軸方向に所定の長さで形成されており、これにより冷却通路18aが上下に2分割されている。このようなリブ11aが設けられることで、図2の矢印で示したように、上下に2分割された冷却通路18aのそれぞれにおける冷却媒体が互いに干渉することなく流れるため、冷却性能に優れる。
【0050】
なお、冷却通路18aは、リブ11aによって必ずしも分割されていなくともよい。A−A断面の軸方向の前後位置においてリブ11aが設けられておらず、冷却通路18aが環状に形成されていてもよいものである。
【0051】
また、図1及び図4に示したように、冷却通路18aの内周面には、外周側に向かって突出するフィン部22が設けられている。このようなフィン部22を設けることで、冷却通路18aの内周面の伝熱面積が増加し、冷却効率が向上する。フィン部22の設置数は、冷却通路18aのスペース等に応じて適宜決定すればよい。また、フィン部22の突出高さは、冷却通路18aを流れる冷却媒体の流れが阻害されない程度に適宜設定すればよい。本実施形態では、1条のフィン部22が冷却通路18aの内周面の全周に沿って延在して設けられている。
【0052】
このように構成される本実施形態の電動過給機1aによれば、軸受ハウジング4aの内部において、その第1グリース封入転がり軸受20Aの外周側の位置に、周方向に延在する冷却通路18aが設けられている。このため、この冷却通路18aに空気や低温の吸気ガス等の冷却媒体を流すことで、高温の吸気ガスの熱影響を受ける第1グリース封入転がり軸受20Aを効果的に冷却することが出来るようになっている。
【0053】
次に、本発明の他の一実施形態にかかる電動過給機1bについて図5A図7を基に説明する。図5Aは、本発明の電動機付き過給機の一実施形態にかかる電動過給機であって、図6のC−C線に対応する位置の部分破断側面図である。図5Bは、図5Aの実施形態における冷却媒体の流れを示した模式図である。図6は、図5AのB−B線における断面図である。図7は、図5Aの電動過給機の部分拡大断面図である。なお、本実施形態の電動過給機1bは、上述した実施形態の電動過給機1aと基本的には同様の構成であり、同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
上述した実施形態の電動過給機1aでは、その冷却通路18aを流れる冷却媒体が空気や吸気ガス等の気体であるものとして構成されていた。これに対して、本実施形態の電動過給機1bでは、その冷却通路18bを流れる冷却媒体が水などの液体であるものとして構成されている点が、上述した実施形態とは大きく異なっている。
【0055】
図5Aに示したように、本実施形態の電動過給機1bでは、軸受ハウジング4bの内部に、水などの液体からなる冷却媒体が流れる冷却通路18bが形成されている。冷却通路18bは、上述した実施形態の冷却通路18aと同様に、第1グリース封入転がり軸受20Aの外周側の位置に形成されている。また、図6に示したように、回転軸12に対して周方向に延在して設けられている。しかしながら、この冷却通路18bには、上述した冷却通路18aとは異なり、その内周面にフィン部22は設けられていない。なお、図6に示したB−B断面図では、冷却通路18bはリブ11bによって左右に2分割されているが、B−B断面の前後断面にはリブ11bは設けられておらず、冷却通路18bは環状に形成されている。
【0056】
また、図5Aに示したように、本実施形態のモータハウジング6bでは、上述した実施形態のモータハウジング6aとは異なり、その外周側に放熱フィン38は設けられていない。その代わりに、モータハウジング6bの内部に、冷却媒体である水が流れるモータ側冷却通路30が形成されている。このモータ側冷却通路30は、モータ固定子16の外周側の位置において、周方向に延在して設けられている。そして、接続通路34を介して、上述した軸受ハウジング4bの冷却通路18bに接続している。
【0057】
また、図5Aに示したように、モータハウジング6bの外周面には、外部とモータ側冷却通路30とを連通する通水口32が設けられている。また、図6に示したように、軸受ハウジング4bの外周面には、外部と冷却通路18bとを連通する通水孔36が設けられている。そして、通水孔36から冷却通路18bに水が供給されると、図5Bに模式的に示したように、供給された水が冷却通路18bを循環することで、冷却通路18bの内周側に配置されている第1グリース封入転がり軸受20Aが冷却される。そして、冷却通路18bを循環した水は、接続通路34を介して、モータ側冷却通路30へと供給される。そして、供給された水がモータ側冷却通路30を循環することで、モータハウジング6b内に収容されているコイルや電動機15等が冷却される。また、モータ側冷却通路30を循環した水は、図5Aに示したように、通水口32から外部へと排出されるようになっている。
【0058】
なお、上述した水の循環方向は特に限定されない。モータ側の発熱量が大きい場合には、上述した循環方向とは逆方向に、すなわち通水口32から水を供給して通水孔36から排出するように構成してもよいのは勿論である。
【0059】
このように構成される本実施形態の電動過給機1bによれば、第1グリース封入転がり軸受20Aを収容する軸受ハウジング4bの内部に、第1グリース封入転がり軸受20Aの外周側において周方向に延在する冷却通路18bが設けられている。このため、この冷却通路に水などの冷却媒体を流すことで、高温の吸気ガスの熱影響を受ける第1グリース封入転がり軸受20Aを効果的に冷却することが出来るようになっている。
【0060】
また、本実施形態の電動過給機1bでは、軸受ハウジング4bに収容されている第1グリース封入転がり軸受20A、及びモータハウジング6bに収容されているコイル、電動機15、第2グリース封入転がり軸受20B等を、モータ側冷却通路30、接続通路34、及び冷却通路18bからなる一つの冷却媒体経路によって冷却している。このため、冷却通路18b及びモータ側冷却通路30に対する冷却水の供給および排水をそれぞれ一つのラインで行えるため、冷却通路18b及びモータ側冷却通路30に対してそれぞれ冷却水を供給又は排水する場合と比べて、後述するエンジン装置の冷却システムを簡素に構成することが可能となる。
【0061】
次に、上述した電動過給機1a,1bを備えるエンジン装置の構成について、図8図12を基に説明する。図8図12は、電動過給機1a,1bを二段過給システムの高圧段過給機として用いた場合におけるエンジン装置の実施形態を示しており、図8図11は、空気または排気ガスを冷却媒体とした場合、図12は、水を冷却媒体とした場合の実施形態を示している。
【0062】
図8は、本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、ターボチャージャで圧縮する前の吸気ガスを冷却媒体として用いる場合を示した図である。
この図8に示した実施形態のエンジン装置50aは、図示したように、エンジン52、エンジン52に供給される吸気ガスが流れる吸気通路56、エンジン52から排出される排気ガスが流れる排気通路54、ターボチャージャ60、及び上述した電動過給機1a等を備えている。
【0063】
ターボチャージャ60は、排気通路54に配置された排気タービン64、吸気通路56に配置されたコンプレッサ62、及びこれら排気タービン64とコンプレッサ62とを連結するタービン軸63とからなる。そして、エンジン52から排出された排気ガスによって排気タービン64が駆動し、タービン軸63を介してコンプレッサ62が同軸駆動することで、吸気通路56を流れる吸気ガスを過給するように構成されている。
【0064】
また、排気通路54には、排気タービン64を迂回するバイパス排気通路55が接続している。このバイパス排気通路55には、ウエストゲートバルブ74が配置されている。そして、ウエストゲートバルブ74の弁開度を調節することにより、排気タービン64に流れる排気ガスの流量が制御される。
【0065】
電動過給機1aは、そのコンプレッサ2Aが、コンプレッサ62の下流側に位置する吸気通路56bに配置されている。そして、ターボチャージャ60のコンプレッサ62で圧縮された吸気ガスが、電動過給機1aのコンプレッサ2A(コンプレッサホイール10)へと供給されるように構成されている。すなわち、本実施形態のエンジン装置50aは、ターボチャージャ60を低圧段過給機、電動過給機1aを高圧段過給機として配置した二段過給システムとして構成されている。
【0066】
また、吸気通路56bには、コンプレッサ2Aを迂回するバイパス吸気通路57が接続している。このバイパス吸気通路57には、バイパスバルブ72が配置されている。そして、バイパスバルブ72の弁開度を調節することにより、コンプレッサ2Aに流入する吸気ガスの流量が制御される。
【0067】
また、電動過給機1aの軸受ハウジング4a及びモータハウジング6a等は、ターボチャージャ60のコンプレッサ62の上流側に位置する吸気通路56aに配置されている。これら軸受ハウジング4a及びモータハウジング6aは、カバー82によって覆われている。そして、図中の矢印iで示したように、エンジン装置50aの外部から導入された吸気ガスが、カバー82の中を通過し、吸気通路56aに流入するように構成されている。
【0068】
また、吸気通路56aには、外部から導入した吸気ガスを洗浄するエアクリーナ66が配置されている。また、吸気通路56bのコンプレッサ2Aの下流側には、エンジン52に供給する吸気ガスを冷却するインタークーラ70が配置されている。
【0069】
このように構成されるエンジン装置50aは、上述したように、ターボチャージャ60を低圧段過給機、電動過給機1aを高圧段過給機として配置した二段過給システムとして構成されている。二段過給システムの高圧段過給機として電動過給機1aを用いる場合、低圧段での圧縮後、高圧段でさらに圧縮される吸気ガスは、極めて高温になる。このため、電動過給機1aのコンプレッサホイール10の近傍に配置される第1グリース封入転がり軸受20Aは、高温の吸気ガスの熱影響を受け易い状態にある。これに対して、上述した実施形態の電動過給機1aは、冷却媒体が流れる冷却通路18aが軸受ハウジング4aの内部に設けられているため、コンプレッサホイール10の近傍に配置される第1グリース封入転がり軸受20Aに対する冷却性能に優れている。
【0070】
このように、本実施形態のエンジン装置50aは、その電動過給機1aを二段過給システムの高圧段過給機として用いる場合において、特に好適に用いられるものである。
【0071】
また上述したように、電動過給機1aの軸受ハウジング4a及びモータハウジング6aが吸気通路56aに配置されていることから、冷却媒体(吸気ガス)を冷却通路18aに効率よく供給することが出来る。
【0072】
しかも、冷却通路18aを流れる冷却媒体が、エンジン装置50aの外部から導入され、ターボチャージャ60のコンプレッサ62で圧縮される前の低温の吸気ガスからなることから、冷却効果にも優れている。
【0073】
図9Aは、本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、ターボチャージャで圧縮した後の吸気ガスを冷却媒体として用いる場合の実施形態を示した図である。この図9Aに示した実施形態のエンジン装置50bは、基本的には上述した実施形態と同様の構成である。よって、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0074】
図9Aに示した実施形態のエンジン装置50bは、図示したように、電動過給機1aの軸受ハウジング4a及びモータハウジング6aが、コンプレッサ62の下流側に配置されている。そして、コンプレッサ62の下流側に位置する吸気通路56bと接続通路58a,58bを介して接続されて配置されている。軸受ハウジング4a及びモータハウジング6aは、カバー82によって覆われており、このカバー82内に、接続通路58a,58bを介して、排気通路56bからコンプレッサ62で圧縮された吸気ガスが供給される。そして、コンプレッサ62によって圧縮された吸気ガスが、冷却媒体として、軸受ハウジング4aの冷却通路18aを流れるように構成されている。
【0075】
このように、ターボチャージャ60のコンプレッサ62で圧縮された吸気ガスを冷却媒体として用いてもよい。この場合であっても、コンプレッサ62で圧縮された吸気ガスの温度は、電動過給機1aのコンプレッサ2Aでさらに圧縮される吸気ガスの温度よりは低いため、一定の冷却効果は期待できる。
【0076】
なお、図9Aに示したエンジン装置50bでは、接続通路58側の損失が大きい場合に、十分な量の吸気ガスが電動過給機1の軸受ハウジング4a及びモータハウジング6aへと流れない恐れがある。このような場合は、例えば図9Bに示したように、吸気通路56の接続通路58aと接続通路58bとの間の位置に絞り弁59を配置し、この絞り弁59の弁開度を調節することで、軸受ハウジング4a及びモータハウジング6aへ所望の吸気ガス量を確実に流すことができる。また、図9Cに示したように、接続通路58a,58bを設けずに、吸気通路56bを電動過給機1aの軸受ハウジング4a及びモータハウジング6に直接接続することで、コンプレッサ62で圧縮された吸気ガスの全量が冷却媒体として利用されるように構成することも出来る。
【0077】
図10は、本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、電動過給機とエアクリーナとを同じカバーで覆うように配置した場合の実施形態を示した図である。この図10に示した実施形態のエンジン装置50cは、基本的には上述した実施形態と同様の構成である。よって、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
図10に示した実施形態のエンジン装置50cは、図示したように、電動過給機1aとエアクリーナ66とが、一つのカバー84によって覆われている。そして、図中の矢印iで示したように、エンジン装置50cの外部から導入される吸気ガスがこのカバー84の中を通過した後に、吸気通路56aに流入するように構成されている。
【0079】
このように、電動過給機1aとエアクリーナ66とを同じカバー84で覆うように配置することで、上述した冷却効果に加えて、エンジン装置50cをコンパクトに構成することが可能となる。
【0080】
図11は、本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、空気を冷却媒体として用いる場合の実施形態を示した図である。この図11に示した実施形態のエンジン装置50dは、基本的には上述した実施形態と同様の構成である。よって、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
図11に示した実施形態のエンジン装置50dは、図示したように、電動過給機1aの全体が、カバー86によって覆われている。またカバー86には、ファン88が取り付けられている。そして、ファン88が回転することで、図中の矢印eで示したように、カバー86内の空気が外部に排出され、これに伴い、図中の矢印aで示したように、外部からカバー86内に空気が供給されるように構成されている。
【0082】
このような構成によれば、ファン88によって強制的に冷却媒体(空気)を冷却通路18aに供給するため、電動過給機1aの配置に関する制約を少なくなり、エンジン装置50dのレイアウトの自由度が向上する。しかも、冷却通路18aを流れる冷却媒体が、エンジン装置50aの外部から導入された低温の空気からなることから、冷却効果にも優れている。
【0083】
図12は、本発明のエンジン装置の一実施形態にかかるシステム構成図であって、インタークーラで用いられる冷却水を冷却媒体として用いる場合の実施形態を示した図である。この図12に示した実施形態のエンジン装置50eは、基本的には上述した実施形態と同様の構成である。よって、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
図12に示した実施形態のエンジン装置50eは、図示したように、インタークーラ70と電動過給機1bとが、送水管90,92を介して接続されている。そして、インタークーラ70の冷却水が、送水管90を介して、モータハウジング6bに形成されている通水口32に送水される。また、上述したモータ側冷却通路30及び冷却通路18bを循環した冷却水は、送水管92を介して、軸受ハウジング4bに形成されている通水孔36からインタークーラ70へと送水されるように構成されている。
【0085】
このような構成によれば、電動過給機1bの冷却通路18bを流れる冷却媒体がインタークーラ70から導入された冷却水からなり、インタークーラ70で用いられる冷却水を有効利用することが出来るため、エンジン装置50eにおける冷却システムを簡素に構成することが出来る。
【0086】
図13及び図14は、本発明の一実施形態にかかるエンジン装置のシステム構成図であって、EGR装置を備えたエンジン装置の一例を示した図である。図13はEGR装置を備えた単段過給システムのエンジン装置の一例を示し、図14はEGR装置を備えた二段過給システムのエンジン装置の一例を示している。これら図13及び図14に示した実施形態のエンジン装置50f,50gは、基本的には上述した実施形態と同様の構成である。よって、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
図13及び図14に示した実施形態のエンジン装置50f,50gは、図示したように、EGRバルブ75とEGR管76とからなるEGR装置77を備えている。そして、EGR装置77によって、エンジン52から排出される排気ガスの一部を吸気通路56bに再循環することができるように構成されている点が、上述した実施形態と異なっている。
【0088】
EGR管76は、排気通路54と、電動機付き過給機1bのコンプレッサ2Aの上流側の吸気通路56bとを接続している。そして、EGRバルブ75の弁開度を調節することで、弁開度に応じた流量の排気ガスが吸気通路56bに還流する。そして、この再循環した排気ガスを含む吸気ガスが、電動機付き過給機1bのコンプレッサホイール10へと供給されるようになっている。
【0089】
この際、再循環された排気ガスを含む吸気ガスは、高温の排気ガスが混入されることでさらに高温となる。このため、電動機付き過給機1bのコンプレッサホイール10の近傍に配置される第1グリース封入転がり軸受20Aは、特に高温の吸気ガスの熱影響を受け易くなる。
【0090】
これに対して、本実施形態の電動機付き過給機1bは、上述したように、冷却媒体が流れる冷却通路18bが軸受ハウジング4bの内部に設けられているため、コンプレッサホイール10の近傍に配置される第1グリース封入転がり軸受20Aに対する冷却性能に優れている。
このように、上述した電動機付き過給機1bは、EGR装置77を備える本実施形態のエンジン装置50g,50fにおいて、特に好適に用いられるものである。
【0091】
なお、上記説明では、冷却水を冷却媒体として用いる水冷式の電動機付き過給機1bを備えたエンジン装置を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、空冷式の電動機付き過給機1aを備えたエンジン装置に適用してもよい。
【0092】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、上述した実施形態では、本発明の電動機付き過給機の一実施形態として、電動機によってのみコンプレッサが駆動される電動過給機の場合を例に説明した。しかしながら、本発明の電動機付き過給機はこれに限定されず、電動機の他に排気タービンの駆動によってもコンプレッサが駆動する電動アシストターボとして構成されていてもよいものである。
【0094】
また、上述した実施形態では、本発明の一実施形態にかかる電動過給機を二段過給システムの高圧段過給機として配置した場合を例に説明した。しかしながら本発明の電動機付き過給機はこれに限定されない。図15及び図16に示したように、電動過給機1a,1bを二段過給システムの低圧段過給機として配置することも可能である。
【0095】
また、上述した実施形態では、本発明のグリース封入軸受の一実施形態として、グリース潤滑方式の転がり軸受(第1グリース封入転がり軸受20A)の場合を例に説明したが、本発明のグリース封入軸受はこれに限定されず、例えば、グリース潤滑方式のすべり軸受けにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、例えば自動車等のエンジン装置に搭載される電動機付き過給機として、特に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0097】
1a,1b 電動過給機
2 コンプレッサハウジング
2A コンプレッサ
4a,4b 軸受ハウジング
6a,6b モータハウジング
8 インバータ収容部
10 コンプレッサホイール
11a,11b リブ
12 回転軸
13a,13b ボルト
14 モータ回転子
15 電動機
16 モータ固定子
18a,18b 冷却通路
20A 第1グリース封入転がり軸受
20B 第2グリース封入転がり軸受
20a 転動体
20b 保持器
20c 内輪
20d 外輪
22 フィン部
24a,24b スリーブ部材
28 軸受スリーブ
30 モータ側冷却通路
32 通水口
34 接続通路
36 通水孔
38 放熱フィン
50a〜50e エンジン装置
52 エンジン
54 排気通路
55 バイパス排気通路
56 吸気通路
57 バイパス吸気通路
58 接続通路
59 絞り弁
60 ターボチャージャ
62 コンプレッサ
63 タービン軸
64 排気タービン
66 エアクリーナ
70 インタークーラ
72 バイパスバルブ
74 ウエストゲートバルブ
75 EGRバルブ
76 EGR管
77 EGR装置
82,84,86 カバー
88 ファン
90,92 送水管
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16