(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777819
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】破砕ハンマの工具、破砕ハンマおよびその使用
(51)【国際特許分類】
B25D 17/02 20060101AFI20150820BHJP
B25D 17/08 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
B25D17/02
B25D17/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-529042(P2014-529042)
(86)(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公表番号】特表2014-525356(P2014-525356A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】FI2012050881
(87)【国際公開番号】WO2013038059
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】20115904
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】506286478
【氏名又は名称】サンドビク マイニング アンド コンストラクション オサケ ユキチュア
【氏名又は名称原語表記】SANDVIK MINING AND CONSTRUCTION OY
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】カハラ、 オッシ
【審査官】
石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−142885(JP,A)
【文献】
特開2005−349480(JP,A)
【文献】
特開昭48−102365(JP,A)
【文献】
実開昭60−172681(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第03526162(DE,A1)
【文献】
特開2009−299504(JP,A)
【文献】
特表平03−502783(JP,A)
【文献】
特開2006−015484(JP,A)
【文献】
特開2008−012665(JP,A)
【文献】
特開2008−114298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/02
B25D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップを備えた第1のヘッドと、
破砕ハンマの打撃ピストンから衝撃パルスを受けるように配設された衝撃面を備えた第2のヘッドと、
少なくとも1つの緊締面とを含む長尺状部材としての破砕ハンマ工具において、
該工具の衝撃面は少なくとも1つの曲形状面を含み、
該曲形状面は、少なくとも1つの平面においてのみ曲状であり、該曲形状面は球面状面とは異なることを特徴とする破砕ハンマ工具。
【請求項2】
請求項1に記載の工具において、
前記曲形状面は円柱セグメントの形状を有することを特徴とする破砕ハンマ工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工具において、
前記曲形状面は、該工具の軸方向長より大きい曲率半径を有することを特徴とする破砕ハンマ工具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の工具において、
前記曲形状面は、少なくとも1つの曲率半径および少なくとも1つの中心軸を有し、
工具端部間の軸の外表面は少なくとも1つの緊締用凹部を有し、該凹部は、該工具の1つの端部の部分において前記衝撃面からある距離に位置し、
該緊締用凹部は平坦面を含み、
前記中心軸の方向は該平坦面に平行であることを特徴とする破砕ハンマ工具。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の工具において、
前記衝撃面の最外縁は斜面を有することを特徴とする破砕ハンマ工具。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の工具において、
前記衝撃面は、その最外側軸方向部分において該工具の長手方向軸に垂直な平坦面を有し、
前記衝撃面の最外縁部と前記平坦面の間の部分は曲形状面を有することを特徴とする破砕ハンマ工具。
【請求項7】
本体と、
破砕ハンマが作業機械のブームに平行になるように該破砕ハンマを該ブームに連結する連結部と、
衝撃方向および戻り方向に往復動して衝撃パルスを発生するように配設された打撃ピストンを含む打撃装置と、
前記衝撃方向から見て該打撃ピストンの前に位置し、該打撃ピストンの衝撃を受けるための衝撃面を含む工具と、
該工具を着脱可能に前記本体に緊締する緊締部材とを含み、
該緊締部材によって、前記工具の軸方向の制限された動きを許容し、該工具がその長手方向軸を中心として回転するのを防ぎ、
前記工具の衝撃面は少なくとも1つの曲形状面を含む破砕ハンマにおいて、
前記工具の曲形状面は少なくとも1つの平面においてのみ曲状であり、該曲形状面は球面状面とは異なることを特徴とする破砕ハンマ。
【請求項8】
請求項7に記載の破砕ハンマにおいて、
前記曲形状面は円柱セグメントの形状を有し、
前記工具は、前記本体に緊締されて、前記円柱セグメントの中心軸の方向が前記ブームの長手方向における垂直面を横断していることを特徴とする破砕ハンマ。
【請求項9】
破砕ハンマの使用において、該破砕ハンマは請求項7に記載のハンマであり、
該破砕ハンマを使用して岩盤洞穴を掘削し、
該破砕ハンマを水平に使用し、
該破砕ハンマの打撃ピストンで前記工具の曲状衝撃面に衝撃を与えることを特徴とする破砕ハンマの使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用において、
前記工具の長手方向軸と前記打撃ピストンの長手方向軸の間の角度差は、前記ブームの長手方向軸を垂直に通る垂直面の方向における角度差が該垂直面以外の方向における角度差より大きな角度差を許容されることを特徴とする破砕ハンマの使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、破砕ハンマ用工具に関するものである。破砕ハンマ用工具は衝撃面を有し、この面に、破砕ハンマの打撃装置で衝撃パルスを与えることができる。工具の反対側の端部にはチップがあり、これは衝撃の影響によって岩盤に侵入してこれを破壊する。工具はさらに、破砕ハンマに緊締するための緊締面を有している。
【0002】
本発明はさらに、破砕ハンマとその使用に関する。本発明の分野は、本特許出願の独立請求項の前段に詳細に記載されている。
【0003】
典型的には、破砕ハンマは、例えば、岩盤、コンクリートまたは何らかの他の比較的固い材料を破砕しようとする場合、掘削機または他の作業機械の装着装置として使用される。破砕ハンマは打撃装置を有し、これによって、破砕ハンマに緊締された工具に衝撃を与えることができ、衝撃パルスを被破砕材料へ伝達する。打撃装置は往復動する打撃ピストンを有し、工具の先端部で衝撃面を打つ。打撃ピストンで衝撃が発生すると同時に、工具は被破砕材料に押圧され、衝撃と押圧の影響により工具が被破砕材料内へ侵入し、これを破砕する。一般に、大きな岩や地面を破砕する際、破砕ハンマは直立姿勢で使用される。破砕ハンマの工具は、軸受ブッシュによって破砕ハンマの本体に支持されている。軸受ブッシュは使用中に摩耗し、その結果、時間とともに打撃ピストンと工具の間に角度差が生ずる。この角度差の結果、打撃ピストンおよび工具の両衝撃面が打撃動作中に損傷することがある。
【0004】
本発明は、新規で改良された破砕ハンマの工具、破砕ハンマおよびその使用を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の工具において、工具の衝撃面は、1つの方向にのみ曲率を有する少なくとも1つの曲形状面を含み、この曲形状面は球面状面とは異なることを特徴とする。
【0006】
本発明の破砕ハンマにおいて、工具の衝撃面は、1平面においてのみ曲率を有する少なくとも1つの曲形状面を含み、この曲形状面は球面状面とは異なることを特徴とする。
【0007】
本発明による使用は、破砕ハンマを使用して岩盤洞穴を掘削し、破砕ハンマを水平姿勢で使用し、破砕ハンマの打撃ピストンで工具の曲状衝撃面に衝撃を与えることを特徴とする。
【0008】
発想は、工具の衝撃面が1つ以上の曲形状面を有し、これが打撃ピストンからの衝撃を受けることができることにある。また、曲形状面の曲面部は1平面上にのみある。このように曲形状面は、例えば、球面形状面とは異なる方向性曲率を有している。
【0009】
1つの利点は、工具の曲形状面に起因して、いわゆる斜め衝撃が工具に向かう状況で打撃ピストン衝撃面の強度が実質的に改善できることである。曲形状によって、打撃ピストンと工具の衝撃面の間にエッジコンタクトが形成するのを防いでいる。工具の衝撃面の曲形状によって、衝撃面の間の接触面積が大きくなり、これによって、衝撃エネルギーを制限しなくても衝撃面に向かう歪を制御でき、強度が改善される。このような曲形状面に対向して平坦面を形成すると、方向性曲形状面と平坦面の間に線状接触が確立する一方、球面状面などのいくつかの平面で曲がった形状面と平坦面の間には、点状接触が形成される。したがって明らかに、方向性曲率を有する曲形状面の場合、各衝撃素子の間にはより大きな接触面積が得られ、これによって当然、衝撃面の強度が改善される。また、曲形状面によって、使用中、打撃ピストンおよび工具の両長手方向軸の間に角度差が形成され、これによって破砕ハンマの寿命が延び、その信頼性が改善される。工具の曲状衝撃面は、打撃ピストンの衝撃面を保護し、平易に言えば、自身を打撃ピストンに奉げることができる。工具の衝撃面が徐々に変形しても、重大な欠点は生じない。これは、そのチップ部分が摩耗するので、工具は打撃ピストンよりはるかに頻繁に交換する必要があるためである。
【0010】
一実施例の思想によれば、工具の衝撃面を曲状にして本質的に円柱セグメントの形をとるようにする。曲面の中心軸は、工具の中心線上にあってもよい。曲率半径の大きさによって衝撃面の曲率が決まる。円柱セグメントは1平面上でのみ曲がっていて、複数の平面上で曲がっている球面形状とは異なっている。
【0011】
一実施例の思想によれば、衝撃面の円柱形状の曲率半径は工具の長さより大きい。したがって、円柱セグメントの曲率は相対的に小さい。曲率が小さいので、衝撃面に向かう応力は合理的なレベルに維持できる。
【0012】
一実施例の思想によれば、各工具端部の間の軸の外表面は少なくとも1つの緊締用凹部を有し、これは、工具の1つの端部の一部分上にあって衝撃面からある距離に位置している。緊締用凹部は、工具の軸方向に長さを有する平坦面を含む。工具衝撃面の円柱セグメントの中心軸の方向は、前記平坦面に平行である。緊締面によって、破砕ハンマの本体に対する工具の位置が決まる。
【0013】
一実施例の思想によれば、方向性曲形状面は2つ以上の曲率半径を有する。
【0014】
一実施例の思想によれば、方向性曲形状面は、互いに滑らかに続く異なるいくつかの曲率を有し、曲率は機能に応じた表面でよい。
【0015】
一実施例の思想によれば、工具の衝撃面は、その最外側の軸方向部分に平坦面を有する。平坦面は工具の長手方向軸に垂直である。衝撃面の最外縁と前記平坦面の間の部分は曲形状面を有している。平坦面の大きさは、衝撃面の総表面積と比較して相対的に小さくてよい。さらに、衝撃面の最外縁の部分は斜面を有してよく、こうして衝撃面は、工具の縁部から見ると、斜面、1つ以上の曲状部分および平坦面を含む。
【0016】
一実施例の思想によれば、工具の衝撃面の最外縁は斜面を有している。この斜面は、工具の先端部を案内しこれを中心とする表面として機能することができる。
【0017】
一実施例の思想によれば、打撃装置は油圧式である。
【0018】
一実施例の思想によれば、打撃装置は電動式である。
【0019】
一実施例の思想によれば、打撃ピストンの衝撃端部は球面形状面を有している。
【0020】
一実施例の思想によれば、工具の長手方向軸と打撃ピストンの長手方向軸の間の角度差は、ブームの長手方向軸を通る垂直面の方向における角度差のほうが他の方向よりも大きな角度差を許容される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
いくつかの実施例を添付図面によってより詳細に説明する。
【
図2】岩盤洞穴と、岩盤洞穴の掘削における破砕ハンマの使用を示す概略図である。
【
図4】トンネル掘削時の工具、打撃ピストンおよびブームの相互位置関係を示す概略側面図である。
【
図5】工具および打撃ピストンの両長手方向軸間に角度差がある状況の概略側面図である。
【
図6】トンネル掘削工具の衝撃端部の概略側面図である。
【
図9】工具の衝撃面が球面形状曲面を有する実施例の概略側面図であり、さらに接触面積への効果も示す。
【
図10】工具の衝撃面が方向性曲形状面を有する実施例の概略側面図であり、さら接触面積への効果も示す。
【
図11a】工具の衝撃面の中心軸上に平坦面を有する実施例の概略側面図であり、平坦面と縁部の間に曲面がある。
【
図12】工具の衝撃面の曲面がいくつかの異なる曲率を有する他の実施例の概略図である。
【
図13】本願に開示のいくつかの特徴事項と発想を示す簡略図である。
【0022】
簡明にするため、各図には、いくつかの実施例を単純な形で示す。同様の参照符号は図面における同様の部分を示す。
【0023】
図1において、破砕ハンマ1が掘削機
2のブーム3の自由端に配設されている。破砕ハンマ1は、ブーム3によって被破砕材料4に押圧されると同時に、破砕ハンマ1に接続された工具6に対してハンマの打撃装置5で衝撃を発生させる。ハンマは、衝撃パルスを被破砕材料へ伝達する。掘削機2に代わって、何らかの移動可能な本体機に破砕ハンマ1を配置してもよい。
図1は破砕ハンマ1の従来の使用を示し、破砕ハンマ1は基本的に直立姿勢にある。この図は、ブーム3の長手方向Cも示している。
【0024】
図2は、岩盤に破砕ハンマ1で掘削可能な岩盤洞穴としてのトンネル7を示し、この場合、岩盤は比較的柔らかい。このタイプの掘削では、破砕ハンマ1は、図示のように主に水平に配置される。掘削は、トンネルの端部7aから岩石を破砕ハンマ1で剥がしながら進行する。そこで、トンネルの天井
7bおよび壁7cを整え、最後に、例えばコンクリートで補強してもよい。掘削するには、ブーム3は、破砕ハンマ1を水平方向に向け、また、必要により斜め上向きおよび斜め下向きにも回動可能である必要がある。破砕ハンマ1は、ブーム3に連結部で緊締される。図では、点線が破砕ハンマ1の打撃装置5とそれに属する打撃ピストン9を示す。
【0025】
図3は破砕ハンマ1の構造を示す。破砕ハンマ1は、先端部10aおよび底端部10bを有する長尺状本体10を有している。工具6は本体の底端部に配設されている。本体10は、それ自体で破砕ハンマ1を保護するハウジングを形成してもよく、または、保護ハウジングを本体10の周囲に配設してもよい。本体10内に打撃装置5のための空間を形成してもよく、打撃装置は、衝撃方向Aおよび戻り方向Bに可動の打撃ピストン9を有している。さらに、例えば油圧による加圧空間を打撃ピストン9の周囲に形成してもよい。打撃ピストン9はいくつかの肩部または他の表面を有してもよく、これに加圧空間内の油圧が作用することができる。さらに、
図3は制御弁11を示し、これは、破砕ハンマ1の構造体に配設してもよく、または別の外部装置であってもよい。制御弁11によって、油圧が打撃ピストン9の1つ以上の肩部に作用し、また肩部から離れるように、これを向けることができる。打撃ピストン9が衝撃方向Aに動かされると、衝撃面12の前端部が工具6の衝撃面13の後端部を打つ。衝撃の後、制御弁11は、打撃ピストン9を戻り方向Bへ動かし、この後、加圧媒体が破砕ハンマ1に供給される限り、作業サイクルが続く。しかし、この図と異なり、打撃装置5を電動のものとすることも可能である。
【0026】
図3は、破砕ハンマ1の底端部10bの構造の実施例も示す。工具6は、本体10に軸受ブッシュ14で支持してもよい。工具6および軸受ブッシュ14は、本体の底端部10bへ保持ピン15または同等物で固定してもよい。また、工具6の緊締部材16は、工具6の軸部に緊締面17を有してもよく、これによって工具6は、軸方向に所定の距離だけ動くことができる。
図3とは異なって、緊締部材16は、工具6の両側に配設してもよい。緊締部材16は、工具6を本体10へ軸方向に緊締する。また、緊締部材16は、工具6の長手方向軸18を中心とする回転を防ぎ、こうして緊締部材16は工具6の位置を確定する。
図3とは異なり、単一の軸受ブッシュ14でなく、2つの軸受ブッシュ、すなわち底部軸受と頂部軸受を使用することもできる。
図3の点線19がこれを示している。さらに
図3は、工具6の先端部に斜面20または同様の円錐状表面があり、対応する円錐状制御面21が軸受ブッシュ14の頂部または頂部軸受にあってよく、これによって工具6の先端部を所定の衝撃位置に向けることを示している。
【0027】
図4は、トンネル掘削時の破砕ハンマ1の使用状態を拡大して非常に簡略的に示している。このとき破砕ハンマ1は、主に水平方向で使用される。これは、掘削がトンネル線の方向に進行し、破砕ハンマ1を使用して岩石を端部7a、天井7bおよび壁から剥がすためである。破砕ハンマの工具6は、このときも水平であり、このためその軸受は不均一に摩耗する。掘削中、ブーム3は上下方向Dに動き、これによって工具6に横断方向の負荷がかかり、この負荷は工具の軸受を摩耗させる。操作者はしばしば、破砕中の岩盤に工具6を打ち込んだり捻じ込んだりもし、これによって軸受が摩耗する。重力も軸受の方向性摩耗に影響を与える。打撃ピストン9から工具6への衝撃パルスの伝達によって可能な限り衝撃面12および13に負荷がかからないようにするには、打撃ピストンの長手方向軸22および工具の長手方向軸18を平行に配列することである。しかし、製造上の許容誤差および摩耗によって、長手方向軸18、22が十分に平行であることはほとんどなく、そのため重い負荷が衝撃面12、13に生ずることがある。いわゆるエッジコンタクトによって、打撃ピストン9の衝撃端部が変形したり、衝撃面12の縁部から破片が剥がれ落ちたりすることさえある。破損した打撃ピストン9は安全上問題となることがあり、打撃ピストンを詰まらせたり、破砕ハンマ1の正常動作を阻害したりすることさえある。1つの問題点は、打撃ピストン9の端部が本体内にあって見えないため、打撃ピストン9の破損検出が困難なことである。別の問題点は、打撃ピストン9を交換するには、破砕ハンマ1の構体を外し、修理作業中は掘削を停止しなければならないことである。
【0028】
図5は、工具の長手方向軸18と打撃ピストンの長手方向軸22が同一線上になく両者の間に角度差Mがある場合をごく簡略に示している。この角度差Mは、軸受ブッシュ14a、14bと工具6の間の設計上の使用許容誤差、さらには、使用中の軸受ブッシュ14a、14bの摩耗に起因することがある。典型的には、前部軸受14aはその底縁部が、また後部軸受14bはその前縁部が摩耗する。そうすると、工具6は軸受に対して回転することがある。角度差Mの悪影響を補償するには、工具6の衝撃面13に円柱セグメントの形状の曲形状面を形成する。このような円柱形状面によって、打撃ピストン9の衝撃面12のエッジコンタクトとこれによって生ずる負荷を回避することができる。この場合、衝撃面12および13の間の接触面積は、より広くてもよい。打撃ピストン9の衝撃面12は、平坦でも、わずかに球面状でもよい。
【0029】
図6は工具6の衝撃端部の細部を示す。衝撃面13は、円柱形状曲面23を有し、その曲率半径Rは形状曲面23の曲率を規定している。曲率は比較的小さい値であり、すなわち曲率半径を大きく設定する。曲形状面23の中心軸Kは工具の長手方向軸18上にあり、その方向はブームの長手方向軸Cを通る垂直面を横断している。曲形状面23は中心軸Kに対してのみ曲がっていて、他の方向には曲がっていない。このように曲形状面23は、例えば球面状曲率とは異なる方向性曲率を有している。
【0030】
図6は工具緊締面17の他の実施例を示し、この緊締面は、工具の軸と同じ軸方向位置にあってその両側に形成してもよい。緊締面17は、平坦部24および曲状縁部25を有する凹部である。
【0031】
図7は工具の側面を示し、
図8はその工具を方向Gから見たものである。工具6は軸方向長Lを有し、その第1の端部に岩盤破砕用チップ26を備えている。チップ26は、行なう掘削作業に応じて円錐状またはノミ状でよい。
図7および
図8を見ると、衝撃面13は一方向にのみ曲形状面23を有していることが分かる。
【0032】
注意すべきは、
図6〜
図8と異なって、保持ピン15の方向が図示の方向に垂直であってよく、その場合、工具6の緊締面17がこれに対応して整列していることである。
図6の点線27は保持ピンの別の方向を示す。さらに、これを考慮して、破砕ハンマの本体における保持ピン15の緊締も、整列している。この場合も、工具の緊締部材によって、工具6の長手方向軸に対する位置が規定され、工具の衝撃面13は円柱形状面23を有し、これは、ブームの長手方向を考慮して整列している。曲形状面23の中心軸Kは、ブームの長手方向軸を通る垂直面を横断している。
【0033】
図9は衝撃前の工具6および打撃ピストン9の端部を示す。この発明とは異なるが、工具6は、別々の平面上に曲率を有する球面形状曲面30を有している。これは矢印31で示されている。打撃ピストン9は平坦な衝撃面12を有してもよい。平坦な衝撃面12が球面形状面30と当接すると、両者の間に図示のような点状接触32が生ずる。しかし、工具6と打撃ピストン9の間の接触面は、打撃力の影響によっていくぶん圧迫され、これによって接触面が圧迫されて球面状接触面33となり、接触面積は元の表面積W1から圧縮下の表面積W2に広がる。この圧縮を同図には対向矢印で示す。
【0034】
図10は
図9と同様の状況を示すが、異なる点は、工具6が1平面上のみ、この場合は垂直面上に曲面部を有する円柱形状面23を有していることである。これは、同図に矢印34で示す。このような方向性形状面23と打撃ピストン9の平坦な衝撃面12の間には、線状接触35が生ずる。しかし、衝撃で生ずる圧縮力は、形状面23をある程度圧迫し、これによって線状形状面35は楕円状接触面36に変形し、これは、元の表面積W1より大きな表面積W2を有している。
図9と
図10を比較すると、
図10の方向性曲率によって明らかに大きな最終表面積W2が得られることが分かる。
【0035】
図11aは
図10と同様の方式を示すが、異なる点は、工具6の衝撃面13が平坦部37を有し、これが長手方向軸に垂直なことである。このタイプの平坦部37は、衝撃面13の全表面積に比べて比較的狭くてよい。それにも拘らず、平坦部37によって打撃ピストン9と工具6の間の接触面積が増す。平坦部37と工具6縁部の間には、
図11bに示すような曲形状面38がある。
図11bにおいて、各矢印は衝撃面13の様々な部分の形状を示すものである。最外縁には斜面20があってもよい。この実施例による方式も、工具6の使用中、例えば軸受の摩耗に起因して角度差が形成されてしまう。
【0036】
図12は工具衝撃面13を示し、これは方向性曲率を有する曲形状面23を有している。
図10に示す方式との相違点は、例えば、曲形状面23が別々の曲率を有することである。すなわち、縁部の曲状部23aは曲率半径R1を有し、また中央の曲状部23bは曲率半径R2を有してもよいことである。曲率半径R2は半径R1より長くてよく、その場合、中央部23bの曲率は小さい。または、これらの曲率は入れ替えてもよく、さらに、別のタイプの曲状部分をさらに多く設けてもよい。曲率半径Rを機能に応じて変えて、曲形状面23に様々な曲率の部分を設けることも可能である。
【0037】
図13は上述の各特徴のうちのいくつかを図式的に示す。
【0038】
本特許出願に示す工具は、打撃装置が従来の往復動打撃ピストンを有さない破砕ハンマへの使用にも適している。このタイプの打撃装置は、打撃素子を有してよく、これに加圧媒体または電気エネルギーによって高周波振動を与えると、これは打撃素子の衝撃面を通って工具の衝撃面に伝達される。
【0039】
場合によっては、本願に開示の各特徴事項は、他の特徴事項に無関係にそのまま使用してもよい。これに対して、本願に開示の各特徴事項を必要に応じて組み合わせて様々な組合せを形成してもよい。
【0040】
図面とその関連説明は、本発明の思想の説明のみを企図している。本発明の詳細は特許請求の範囲内で変えてもよい。