【実施例】
【0071】
実施例1:補給物溶液の調製
補給物は以下の成分からなる。
コエンザイムQ10
* 100mg (CoQ10P40 250mg)
リボフラビン 40mg (リボフラビン40mg等量)
L-シスチン 500mg
ナイアシン 20mg
アスコルビン酸 940mg
コハク酸 100mg
フマル酸 100mg
L-グルタミン 950mg
【0072】
コエンザイムQ10以外の補給物の成分は、シグマアルドリッチジャパン(Sigma Aldrich Japan)社(東京、日本)から購入した。
*CoQ10P40(日清ファルマ社、東京、日本)をコエンザイムQ10として使用した。CoQ10P40は40重量%のコエンザイムQ10を含有する。
【0073】
実施例2:リゾチームの活性試験
リゾチームの活性試験は、効率的な試験システムと考えられた。
【0074】
リゾチームが生化学的、物理化学的、結晶学的、および放射線生物学的な観点から十分に特性解析されたタンパク質であるという理由で酵素リゾチームは選択された。また、リゾチームは、生体における細菌感染に対する自己防御システムの一例である。未照射リゾチームおよび照射されたリゾチームの構造と機能は詳細に特性解析されている。以前に発表された論文から以下の通り、選択されたタンパク質の特性(例えば、アミノ酸組成、3D構造)によって徐々に違いが生じる、任意の他のタンパク質も同様に使用することができる。この挙動は、電離放射線と生体分子の相互作用の原理が、一方ではROSの酸化作用と、他方では抗酸化物質のスカベンジング能力とによって支配され、その近傍の生体分子に関係ないという事実に起因しうる。スカベンジャーがタンパク質を保護することができる場合には、それはまた、適用された抗酸化物質の溶解性の程度に応じてその他の分子、例えばDNA、脂質、膜などを保護することができると考えられる。
【0075】
ニワトリの卵白リゾチームはServa社(ハイデルベルク、ドイツ)から購入し、添加物および他のすべての物質は入手可能な最高グレードのものであった。リゾチーム(0.1mg/ml)および添加物(他に明記しない場合は、10mM)を希薄な空気飽和1mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5中に溶解し、25℃で添加物の非存在下または存在下でX線(0〜1kGy)を照射した。リゾチームの活性試験は、Shugar, 1952, The measurement of lysozyme activity and the ultra-violet inactivation of lysozyme. Biochim. Biophys. Acta 8, 302-309に記載される通りに実施し、Jasco UV/VIS分光光度計V-530で記録した。
【0076】
リゾチームの活性試験は単純かつ簡単である。Shugarにより記載された方法は、希釈された未照射酵素または希釈され照射された酵素、および特別な活性緩衝液(17mM NaClを含む66mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0)中のミクロコッカス・リゾデイクティカス(Micrococcus lysodeikticus)の細胞懸濁液を使用する。この細菌を三角フラスコ内で活性緩衝液中に0.2mg/mlの濃度で懸濁する。細菌懸濁液を試験に使用する前に、キュベットへの均質なピペッティングを確保するためにフラスコを旋回させる必要がある。素早く作業して、酵素試料をピペットで採取して細菌液に入れ、パラフィルムを用いてキュベットをしっかりと密封し、均一に手動混合した。典型的な試験混合物(合計3ml)は、試料の合理的な取り扱いを可能にするために、添加物の非存在下または存在下での0.02mlの未照射酵素試料を加えた2.98mlの細菌液、および添加物の非存在下での0.05mlの照射された酵素(250Gy)を加えた2.95mlの細菌液、および添加物の非存在下での0.4mlの照射された酵素(1000Gy)を加えた2.6mlの細菌液からなっていた。酵素による細菌の破壊に起因する吸光度の減少を、3mlキュベット中で450nmの波長にて分光光度計により25℃で3分間連続して測定する。
【0077】
吸光度の異なる減少は異なる活性を反映している。この試験はまた、抗酸化物質の存在下でリゾチームに適用することもできる。というのは、この試験での試料(リゾチーム+抗酸化物質)の高希釈および使用する波長のために、抗酸化物質が活性測定の結果を妨害しないからである。さらなる分離技術は必要でない。
【0078】
照射は小さな2mlプラスチックカップ内で25℃にて実施した。X線の線量測定は、フリッケ(Fricke)線量計(硫酸第一鉄線量計)により得られた。
【0079】
実施例3:試験添加物の適用後に照射されたリゾチームの活性
本実験では、リゾチームを次の添加物と混合した:実施例1の組成物、アスコルビン酸(10mM)、グルタチオン(10mM)、チオ尿素(10mM)、ギ酸ナトリウム(10mM)、またはマンニトール(10mM)。その後、リゾチーム-添加物混合物に、それぞれ500Gyおよび1000Gyのエネルギー量のX線を照射した。また、リゾチームには、添加物の存在なしに250、500、750、および1000Gyのエネルギー量のX線を照射した。
【0080】
その後、照射されたリゾチームは、リゾチームの活性を測定するために、実施例2に記載した活性アッセイにおいて用いた。比較のために、活性はパーセントで表される。天然の未照射リゾチームが基準として使用され、100%の活性を有するとみなされる。
【0081】
表1は、照射前に添加される異なる添加物の非存在下または存在下でかつ異なるX線量で照射されたリゾチーム(c=0.1mg/ml)を用いた実験の結果を示す。
【0082】
添加物の非存在下でのX線照射は、適用された線量が十分に高い(1000Gy)場合、ほぼ完全な活性低下をもたらす。より低い線量での照射は、より顕著でない損傷をもたらす。実施例1に記載の組成物の存在は、X線照射に対して強力な保護を示す。より低い線量の適用では、保護がより顕著である。
【0083】
リゾチームの活性の低下は、照射による放射線分解によって生成されるラジカルの発生と相関する。実施例1に記載の組成物の適用は、スカベンジャーとしての役割を果たし、そのため、リゾチームの高い活性によって示されるリゾチームの保護をもたらす。
【0084】
(表1)照射されたリゾチームの活性に及ぼす添加物の影響
S=実施例1に記載の組成物;a.r.=ante radiationem=照射前;グレイ(Gy)は、任意の種類の物質1キログラムに1ジュールのエネルギーを付与するために必要な放射線の量を表す。
【0085】
実施例4:可変濃度の組成物の適用後に照射されたリゾチームの活性
本実験では、リゾチームを種々の濃度の実施例1の組成物と混合した。その後、リゾチーム-添加物混合物に250Gyのエネルギー量のX線を照射した。また、リゾチームには、添加物の存在なしに250Gyのエネルギー量のX線を照射した。
【0086】
その後、リゾチームの活性を測定するために、照射されたリゾチームを、実施例2に記載した活性アッセイ法において用い、リゾチーム活性の測定を照射の24時間後に繰り返した。比較のために、活性はパーセントで表される。天然の未照射リゾチームが基準として使用され、100%の活性を有するとみなされる。
【0087】
表2は、実施例1に記載の組成物の可変濃度を用いてX線照射されたリゾチーム(c=0.1mg/ml)の結果をまとめたものである。このために、250Gyの線量を適用して、1000Gyでよりも正確な結果の登録を可能にした。組成物の非存在下では、不活性化が起こり、これは照射後の段階(照射の24時間後にモニタリング)でさらに強化される。
【0088】
組成物のすべての濃度は(1:10000の希釈物でさえも)、照射時のリゾチームの保護と、24時間保存中のさらなる不活性化に対するリゾチームの保護とを提供する。最も顕著な作用は最高の組成物濃度を使用する場合に得られる。
【0089】
リゾチームの活性の低下は、照射による放射線分解によって生成されるラジカルの発生と相関する。実施例1に記載の組成物の適用は、スカベンジャーとしての役割を果たし、そのため、リゾチームの高い活性によって示されるリゾチームの保護につながる。
【0090】
(表2)照射リゾチームの活性に及ぼす組成物の影響
S=実施例1に記載の組成物;a.r.=ante radiationem=照射前;グレイ(Gy)は、任意の種類の物質1キログラムに1ジュールのエネルギーを付与するために必要な放射線の量を表す。
【0091】
実施例5:可変濃度の組成物の適用前に照射されたリゾチームの活性
本実験では、リゾチームに250Gyのエネルギー量のX線を最初に照射した。その後、リゾチームを1:2または1:10の希釈の実施例1の組成物と混合した。また、リゾチームには、添加物の存在なしに250Gyのエネルギー量のX線を照射した。
【0092】
その後、リゾチームの活性を測定するために、照射されたリゾチームを実施例2に記載した活性アッセイにおいて用い、リゾチーム活性の測定を照射の24時間後に繰り返した。比較のために、活性はパーセントで表される。天然の未照射リゾチームが基準として使用され、100%の活性を有するとみなされる。
【0093】
表3は、実施例1の組成物の非存在下でX線照射されたが、照射後にこの組成物を供給されたリゾチーム(c=0.1mg/ml)の結果を示す。活性の測定は、照射および組成物の添加の24時間後に実施した。結果は、保存(24時間)中の不活性化に対する組成物による保護、および著しい回復挙動を示している。
【0094】
リゾチームの活性の低下は、照射による放射線分解によって生成されるラジカルの発生と相関する。実施例1に記載の組成物の適用は、スカベンジャーとしての役割を果たし、リゾチームの高い活性によって示されるリゾチームの回復につながる。
【0095】
(表3)組成物の適用によるリゾチーム活性の回復
S=実施例1に記載の組成物;p.r.=post radiationem=照射後;グレイ(Gy)は、任意の種類の物質1キログラムに1ジュールのエネルギーを付与するために必要な放射線の量を表す。
【0096】
実施例6:補給物溶液の調製
補給物は以下の成分からなる。
コエンザイムQ10
* 100mg (CoQ10P40 250mg)
リボフラビン 40mg (リボフラビン40mg等量)
L-シスチン 500mg
ナイアシン 20mg
アスコルビン酸 940mg
コハク酸 100mg
フマル酸 100mg
L-グルタミン 950mg
【0097】
コエンザイムQ10以外の補給物の成分は、シグマアルドリッチジャパン社(東京、日本)から購入した。
*CoQ10P40(日清ファルマ社、東京、日本)をコエンザイムQ10として使用した。CoQ10P40は40重量%のコエンザイムQ10を含有する。
【0098】
上記のそれぞれの成分を50mlの水と混合し、その後pHを調整するために、かつシスチンの溶解性の理由で84mgの重炭酸ナトリウムを添加した。この溶液をその後0.6mg/μlおよび0.3mg/μlに希釈した。
【0099】
実施例7:本発明の組成物またはビタミンCで前処理したマウスの照射後の血液中過酸化水素レベル
マウス:
以下の実験のために、C57BL/6マウス(体重21グラム)を日本SLC社(静岡、日本)から購入した。マウスは8週齢で実験に使用した。
【0100】
本実験では、6群が構成された。各群は6匹のマウスを含む。
(a)第1群のマウスは未処理であり、陰性対照を構成し、
(b)第2群のマウスは陽性対照を構成し、それゆえ、マウスを6Gyの放射線で処理して、照射の72時間後に採血を行い、
(c)第3群のマウスは体重1kgあたり150mgのビタミンCで処理し、
(d)第4群のマウスは体重1kgあたり15mgのビタミンCで処理し、かつ
(e)第5群のマウスは体重1kgあたり15mgの実施例6の組成物で処理した。
【0101】
以下の実験では、第1群、第2群、および第5群については3回の独立した実験、第3群については2回の独立した実験、第4群については1回の実験を行った。
【0102】
十分に換気されたアクリル容器に各マウスを入れた。実施例6の組成物およびビタミンCを、それぞれ0.5mlの水に懸濁させて、第3群〜第5群のマウスに24時間間隔で3回経口投与した。3回目の投与の24時間後、150kVおよび5mAで0.45Gy/分の線量率にて与えた(日立MBR-1505R2、東京、日本)、6Gyの全身照射(WBI)にマウスを曝した。ビームは2mmアルミ板を通してフィルタリングした。照射の72時間後、採血を行った。
【0103】
血液試料中のフリーラジカルの測定:
Free Carpe Diem測光分析システム(Diacron社、グロッセート、イタリア)を用いることによるd-ROM(活性酸素代謝物)試験を、マウスの血液試料中のフリーラジカル代謝物の測定に使用した。これは、ヒドロペルオキシドが脂質、ペプチド、およびアミノ酸の中間酸化生成物であることから、総ヒドロペルオキシドレベルを測定することによって全体的な酸化ストレスを評価する分光光度法である。簡単に説明すると、0.02mlの血漿を1mlの酢酸緩衝液で希釈した。ヒドロペルオキシド基は、酸性媒体中でタンパク質から遊離された遷移金属イオンと反応して、フェントン反応(Fenton reaction)に従ってアルコキシルおよびペルオキシルラジカルに変換される。量が過酸化物の量に正比例する、これらの新しく形成されたラジカルは、0.02mlの色原体(N,N-ジエチル-パラフェニレンジアミン)により化学的に捕捉され、この色原体のラジカルカチオンの形成をもたらす。この反応から経時的に生じる紫色を、505nmで分光光度計(Wismarll FRAS4、東京、日本)でモニタリングした。この方法の結果は、1リットルあたりのμmolで表した。
【0104】
(表4)前処理および照射の後のマウスの血液中の過酸化水素濃度
【0105】
未処理マウスの血液中の過酸化水素濃度で表される陰性対照と比較して、6Gyでの照射に起因するマウスの血液試料中の過酸化水素濃度の増加は、19.7μmol/lであった。マウスを体重1kgあたり150mgのビタミンCで、照射前に24時間間隔で3回、前処理した場合、過酸化水素の濃度は3.8μmol/l減少し、したがって、減少率は19.29%であり、体重1kgあたり15mgの実施例6の組成物で前処理した場合には、過酸化水素の濃度が9.7μmol/l減少し、したがって、減少率は49.24%である。対照的に、体重1kgあたり15mgのビタミンCでの前処理は、過酸化水素の濃度を5.1μmol/l増加させ、したがって、増加率は25.89%である。
【0106】
したがって、本実験は、照射前に本発明による組成物を投与すると、フリーラジカルのレベル、すなわち細胞損傷およびラジカルに由来する疾患を引き起こす過酸化水素のレベルが低下することを示している。
【0107】
実施例8:本発明による組成物の調製
以下の混合物を水に入れて、全成分が完全に溶解するまでよく振とうさせた。
【0108】
次いで、リン酸リボフラビンナトリウム(注射用)2ml(40mg)を混合した。最終溶液は以下の成分を含有する。
【0109】
実施例9:さまざまな濃度の実施例8の組成物を用いたマウスにおける過酸化水素血中レベルに及ぼす該組成物の作用
マウス:
以下の実験のために、C57BL/6マウス(体重21グラム)を日本SLC社(静岡、日本)から購入した。マウスは8週齢で実験に使用した。
【0110】
本実験では、8群が構成された。
(a)第1群のマウスは、5匹のマウスを含む陽性対照を構成し、それゆえ、マウスを6Gyの放射線で処理して、照射の72時間後に採血を行った。
(b)第2群のマウスは、5匹のマウスを含む陰性対照を構成し、それゆえ、マウスは未処理であった。
(b)第3群〜第8群のマウスは、体重1kgあたり5、10、15、20、25、または30mgの実施例8の組成物で処理した。第3群〜第6群はそれぞれ10匹のマウスを含み、第7群は8匹のマウスを含み、かつ第8群は6匹のマウスを含む。
【0111】
十分に換気されたアクリル容器に各マウスを入れた。実施例8の組成物を第3群〜第8群のマウスに、それぞれの濃度で、すなわち体重1kgあたり5、10、15、20、25、または30mgの組成物を、24時間間隔で3回経口投与した。3回目の投与の24時間後、150kVおよび5mAで0.45Gy/分の線量率にて与えた(日立MBR-1505R2、東京、日本)、6Gyの全身照射(WBI)にマウスを曝した。ビームは2mmアルミ板を通してフィルタリングした。照射の72時間後、採血を行った。
【0112】
血液試料中のフリーラジカルの測定:
Free Carpe Diem測光分析システム(Diacron社、グロッセート、イタリア)を用いることによるd-ROM(活性酸素代謝物)試験を、上記の実施例7に記載した通りにマウスの血液試料中のフリーラジカル代謝物の測定に使用した。
【0113】
(表5)実施例8に記載の組成物のさまざまな濃度による前処理および照射の後のマウスの血液中の過酸化水素濃度
【0114】
未処理マウスの血液中の過酸化水素濃度で表される陰性対照と比較して、6Gyでの照射に起因するマウスの血液試料中の過酸化水素濃度の増加は、31.8μmol/lであった。
【0115】
マウスを体重1kgあたり5mgの実施例8の組成物で、照射前に24時間間隔で3回、前処理した場合、過酸化水素の濃度は18.9μmol/l減少し、したがって、減少率は59.43%であり、体重1kgあたり10mgの実施例8の組成物で前処理した場合には、過酸化水素の濃度は20.5μmol/l減少し、したがって、減少率は64.47%である。最大の減少が達成され、マウスを体重1kgあたり15mgの実施例8の組成物で照射前に24時間間隔で3回前処理した場合に過酸化水素の濃度は24.9μmol/l減少し、したがって、減少率は78.3%であり、かつ、マウスを体重1kgあたり20mgの実施例8の組成物で照射前に24時間間隔で3回前処理した場合に過酸化水素の濃度は22.5μmol/l減少したが、したがって、減少率は70.75%である。実施例8の組成物の増加する濃度、すなわち25および30mg/kg体重を用いると、過酸化水素の減少が低下し、その結果、減少率はそれぞれ63.21%および16.98%に下がる。
【0116】
したがって、本実験は、照射前に本発明による組成物を投与すると、フリーラジカルのレベル、すなわち細胞損傷およびラジカルに由来する疾患を引き起こす過酸化水素のレベルが低下することを示している。
【0117】
実施例10:異なる投与形態および持続時間を用いたマウスの過酸化水素血中レベルに及ぼす実施例8の組成物の作用
マウス:
以下の実験のために、C57BL/6マウス(体重21グラム)を日本SLC社(静岡、日本)から購入した。マウスは8週齢で実験に使用した。
【0118】
本実験では、6群が構成された。
(a)27匹のマウスを含む第1群のマウスは、陽性対照を構成し、それゆえ、マウスを6Gyの放射線で処理して、照射の72時間後に採血を行い、
(b)28匹のマウスを含む第2群のマウス、12匹のマウスを含む第3群のマウス、および11匹のマウスを含む第4群のマウスは、体重1kgあたり15mgの実施例8の組成物で経口投与により処理し、
(c)12匹のマウスを含む第5群のマウスは、シスチンの代わりにシステインを体重1kgあたり15mg含有する、実施例8と同様の組成物で経口投与により処理し、かつ
(d)12匹のマウスを含む第6群のマウスは、体重1kgあたり15mgの実施例8の組成物で腹腔内投与により処理した。
【0119】
十分に換気されたアクリル容器に各マウスを入れた。陽性対照に相当するマウスは、150kVおよび5mAで0.45Gy/分の線量率にて与えた(日立MBR-1505R2、東京、日本)、6Gyの全身照射(WBI)に曝した。ビームは2mmアルミ板を通してフィルタリングした。照射の72時間後、採血を行った。
【0120】
実施例8の組成物は、第2群のマウスに体重1kgあたり15mgの組成物の濃度にて24時間間隔で3回経口投与した。すなわち、マウスは照射前に実施例8の組成物で3日間前処理された。3回目の投与の24時間後、陽性対照と同じ条件を用いてマウスに照射した。照射の72時間後、採血を行った。
【0121】
実施例8の組成物は、第3群のマウスに、陽性対照と同じ条件を用いて照射してから24時間後に開始して、24時間間隔で4回経口投与し、最後の経口投与の24時間後に採血を行った。第3群のマウスは、照射後に実施例8の組成物で4日間後処理された。
【0122】
第4群のマウスは、陽性対照と同じ条件を用いて照射する前に15mg/kgの実施例8の組成物を用いて24時間間隔で3回処理し、かつ照射の24時間後に開始して24時間間隔で4回処理し、最後の経口投与の24時間後に採血を行った。第4群のマウスは、照射前に実施例8の組成物で3日間前処理され、照射後に該組成物で4日間後処理された。
【0123】
第5群のマウスは、L-シスチンをL-システインに置き換えた、実施例8と同様の組成物で処理した。15mg/kg体重の濃度のこの組成物を、第5群のマウスに24時間間隔で3回経口投与した。3回目の投与の24時間後に、陽性対照と同じ条件を用いてマウスに照射し、照射の72時間後に採血を行った。
【0124】
第5群のマウスは、組成物を腹腔内に投与したことを除いて、第2群のマウスと同様に処理した。
【0125】
血液試料中のフリーラジカルの測定:
Free Carpe Diem測光分析システム(Diacron社、グロッセート、イタリア)を用いることによるd-ROM(活性酸素代謝物)試験を、上記の実施例に記載した通りにマウスの血液試料中のフリーラジカル代謝物の測定に使用した。
【0126】
(表6)マウスの血液中の過酸化水素濃度
【0127】
未処理マウスの血液中の過酸化水素濃度で表される陰性対照と比較して、6Gyでの照射に起因するマウスの血液試料中の過酸化水素濃度の増加は、19.62μmol/lであった。マウスを体重1kgあたり15mgの実施例8の組成物で照射前に24時間間隔で3回前処理した場合、過酸化水素の濃度は12.97μmol/l減少し、したがって、減少率は66.11%であり、体重1kgあたり15mgの実施例8の組成物による後処理の場合には、過酸化水素の濃度は16.01μmol/l減少し、したがって、減少率は82.08%である。15mg/kgの実施例8の組成物による3日間の前処理と4日間の後処理は、22.5μmol/lの過酸化水素濃度の減少、したがって、114.86%の減少率をもたらす。シスチンをシステインに置き換えたことを除いて実施例8に従う組成物による前処理は、21.4μmol/lの過酸化水素濃度の減少、したがって、109.07%の減少率をもたらす。さらに、実施例8の組成物の腹腔内投与は、経口投与と比べて(第2群参照)、23.7μmol/lの過酸化水素濃度のより大きい減少をもたらし、したがって、減少率は120.8%である。
【0128】
実施例11:エタノールで処理したマウスにおける過酸化水素血中レベルに及ぼす実施例8の組成物の作用
マウス:
以下の実験のために、C57BL/6マウス(体重21グラム)を日本SLC社(静岡、日本)から購入した。マウスは8週齢で実験に使用した。
【0129】
本実験では、7群が構成された。
(a)第1群のマウスは、14匹のマウスを含む陽性対照を構成し、それゆえ、マウスに7g/kg体重のエタノールを24時間間隔で2回腹腔内投与し、2回目の投与の24時間後に採血を行った。
(b)第2群のマウスは、4匹のマウスを含む陰性対照を構成し、それゆえ、マウスは未処理であった。
(c)第3群〜第7群のマウスは、体重1kgあたり10、15、20、25、または30mgの実施例8の組成物で処理した。第3群は9匹のマウスを含み、第4群は15匹を含み、第5群と第6群は8匹を含み、かつ第7群は10匹のマウスを含む。
【0130】
十分に換気されたアクリル容器に各マウスを入れた。実施例8の組成物は、それぞれの濃度で、すなわち、体重1kgあたり組成物10、15、20、25、または30mgで、第3群〜第6群のマウスに24時間間隔で5回経口投与した。7g/kg体重のエタノールを、4日目と5日目に、実施例8の組成物で処理してから1時間後に腹腔内注射した。実施例8の組成物による最終処理の24時間後に、採血を行った。
【0131】
血液試料中のフリーラジカルの測定:
Free Carpe Diem測光分析システム(Diacron社、グロッセート、イタリア)を用いることによるd-ROM(活性酸素代謝物)試験を、上記の実施例7に記載した通りにマウスの血液試料中のフリーラジカル代謝物の測定に使用した。
【0132】
(表7)マウスの血液中の過酸化水素濃度
【0133】
未処理マウスの血液中の過酸化水素濃度で表される陰性対照と比較して、エタノールの注射に起因するマウスの血液試料中の過酸化水素濃度の増加は、21.6μmol/lであった。
【0134】
マウスを体重1kgあたり10mgの実施例8の組成物で前処理した場合、過酸化水素の濃度は16.3μmol/l減少し、したがって、減少率は75.46%である。最高の減少が達成され、マウスを体重1kgあたり15mgの実施例8の組成物で24時間間隔にて5回前処理した場合に過酸化水素の濃度は17.5μmol/l減少し、したがって、減少率は81.02%であり、かつマウスを体重1kgあたり20mgの実施例8の組成物で24時間間隔にて3回前処理した場合に過酸化水素の濃度は17.35μmol/l減少したが、したがって、減少率は80.32%である。実施例8の組成物の濃度を増加させると、すなわち25および30mg/kg体重を用いると、過酸化水素の減少が低下し、その結果、減少率はそれぞれ78.01%および74.54%に下がる。