特許第5777822号(P5777822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5777822-シャーシ用軽量コンポーネント 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777822
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】シャーシ用軽量コンポーネント
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   B62D25/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-542727(P2014-542727)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公表番号】特表2014-533631(P2014-533631A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012004612
(87)【国際公開番号】WO2013075789
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年7月17日
(31)【優先権主張番号】102011119246.1
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・グナイティング
(72)【発明者】
【氏名】カマル・イドリーシ
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/025316(WO,A1)
【文献】 実開昭63−109271(JP,U)
【文献】 実開昭64−002676(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0086203(US,A1)
【文献】 特表2007−514592(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0080188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つのフレーム部(5、6、7、8)を有する実質的に四辺形に広がる支持フレーム(3)と、該支持フレーム(3)上に取り付けられるパネル(4)とを有する自動車(1)のシャーシ用軽量コンポーネント(2)であって、
前記支持フレーム(3)が繊維強化プラスチックから形成され、且つ生体工学的観点に基づいて形成され、1つ又は複数の交点(15、18)で連結され、且つ互いに垂直なフレーム部(5、6、7、8)のそれぞれ2つを互いに連結する少なくとも2つの交差するブレース(9、10、11、12、13、14、16、17、19、20)を具備し、
前記フレーム部(5、6、7、8)と前記ブレース(9、10、11、12、13、14、16、17、19、20)とが対称軸(S)に対して鏡面対称に配置されると共に、
前記支持フレーム(3)の一部分(21)が前記対称軸(S)の方向の一方の側ではほどんどブレース(9、10、11、12、13、14、16、17、19、20)がないように形成され、前記対称軸(S)の方向の他方の側の部分には、前記ブレース(9、10、11、12、13、14、16、17、19、20)の大部分、及び前記ブレース(9、10、11、12、13、14、16、17、19、20)の全ての交点(15、18)が並存して備えられることを特徴とする軽量コンポーネント。
【請求項2】
前記対称軸(S)が、前記自動車(1)の走行方向に延びることを特徴とする請求項1に記載の軽量コンポーネント(2)。
【請求項3】
前記支持フレーム(3)が、前記対称軸(S)の方向において前記対称軸(S)に対して垂直方向よりも長く形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軽量コンポーネント(2)。
【請求項4】
それぞれ3つのブレース(9、10、11、12、13、14)が、前記長フレーム部(6、8)のそれぞれから、少なくとも2つの別のブレース(9、10、11、12、13、14)とそれぞれ交差して共通の前記短フレーム部(7)へと延在することを特徴とする請求項3に記載の軽量コンポーネント(2)。
【請求項5】
前記長フレーム部(6、8)と、前記短フレーム部(7)の少なくとも1つのそれぞれから同じフレーム部(6、7、8)に戻るように延在する湾曲したブレース(16、17、19、20)が、前記ブレース(9、10、11、12、13、14)の間に存在することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の軽量コンポーネント(2)。
【請求項6】
前記交点(15、18)が補足的な繊維強化プラスチックによって補強されて形成されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の軽量コンポーネント(2)。
【請求項7】
前記パネル(4)が透明、又は透明度及び/又はカラーを変更可能に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の軽量コンポーネント(2)。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の軽量コンポーネント(2)の、自動車ルーフとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に詳細に定義される種類の自動車のシャーシ用軽量コンポーネントに関する。本発明は更に、かかる軽量コンポーネントの好適な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシャーシのコンポーネントは一般的な先行技術から公知である。これらのコンポーネントは例えば、通常は個々のフレーム部からなる実質的に四辺形を形成するフレーム部材を具備する支持フレームから形成されることができる。支持フレームは、例えば金属薄板、軽量薄膜、透明プラスチック、ガラス、又はその類似物などの板材を備えている。これに関しては、例えば特許文献1、又は特許文献2を参照されたい。ここで軽量コンポーネントとは特に、通常使用されるスチールよりも軽い部材及び材料のことであり、それには軽量の金属合金又は繊維強化プラスチックが考えられる。これに関しては、例えば特許文献3を参照されたい。
【0003】
更なる先行技術は特許文献4を参照できる。これは、フレーム部材が実質的にX状のブレースによって補強され、次いでパネルで被覆される自動車用ルーフ構造を示している。同類の構造は更に特許文献5から公知であり、このルーフ構造はX材で補強された2つの領域の間に、例えばサンルーフ用の凹部を有している。更なる一般的な先行技術に関しては、断面がU字形に形成され、内側に補強材を有するようにブレースが形成された自動車用ルーフモジュールを示す特許文献6を参照されたい。最後に、特許文献7から、ハニカム構造の層を有し、透明な、又は半透明な自動車ルーフ、特にそのためのパネルとして使用可能なサンドイッチ構造のプラスチック材料が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第103 57 908 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2010 013 784 A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第199 36 882 A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第1 804 687 A号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2005 006 201 A号明細書
【特許文献6】独国特許発明第101 63 822 B4号明細書
【特許文献7】独国特許発明第102 00 750 B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が対処する問題は、極めて軽量で安定した構成が可能な自動車のシャーシ用の軽量コンポーネントを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の軽量コンポーネントは、請求項1の特徴記載部の特徴によって記載されている。軽量コンポーネントの更なる有利な実施形態は従属請求項に記載されている。更に、請求項8には、このような軽量コンポーネントの好適な使用が記載されている。
【0007】
本発明に係る軽量コンポーネントは、先行技術の軽量コンポーネントに相当する、実質的に四辺形を形成する4つのフレーム部を具備する支持フレームを含んでいる。この支持フレームは、例えば透明材料のパネルを備えている。本発明によれば、支持フレームは繊維強化プラスチックから形成され、且つ生体工学的な観点から形成されると共に、交点で連結され、互いに垂直なフレーム部の2つを互いに連結する少なくとも2つの交差するブレースを具備している。個々のブレースの設計、及びフレーム部へのブレースの接合は、生体工学的観点に基づいて行われる。すなわち、トランジション及び形状は概して連続的に延び、角度二等分線、正接関数などで形成されている。このような生体工学的観点は、原則として機械的な設計理論において知られている。このように形成されたブレースは、本発明に係る軽量コンポーネントの支持フレーム内で交差し、交点で互いに連結される。その際、ブレースは互いに垂直な2つのフレーム部を互いに連結する。それによって、曲げ及び捩じれに対する高い安定性が達成される。例えば炭素繊維強化されたプラスチックなどの繊維強化プラスチックは、ブレース及びフレーム部、及び特に移行部及び連結点内の力の推移曲線、又は少なくとも相当の力の成分が繊維の方向に延びるように形成することができる。それによって、最適化された材料投入で極めて高い強度を達成できるため、本発明に係る軽量コンポーネントは自動車のシャーシ用の従来の部材よりも軽量でしかも安定している。
【0008】
その際、フレーム部及びブレースは対称軸に対して鏡面対称に配置される。この対称軸はその過程で特に、自動車の走行方向に延びている。この鏡面対称の構造により高い捩じれ強さが保証され、捩じれ振動モードを改善することが可能になる。
【0009】
更に、支持フレームの一部分が対称軸の方向の一方の側ではほどんどブレースがないように形成され、対称軸の方向の他方の側の部分には、ブレースの大部分、及びブレースの全ての交点が併存して備えられている。支持フレームの一方の側にずらしたブレースを有するこのような構成によって更に、水平方向の曲げに対する剛性の最小限の損失で、捩じれ及び横曲げに対する極めて高い剛性が可能になる。実際にこの構造によって、閉鎖空間の一部をかなり開放する軽量コンポーネントの極めて安定した支持フレームが可能になる。それは特に、透明なパネルを使用する場合に決定的に有利であるが、その理由はそれによって、例えば自動車の大きい窓面が本発明に係る軽量コンポーネントによって実現可能になるからである。
【0010】
したがって、本発明に係る軽量コンポーネントを使用することで、特に透明な、又は透明度及び/又はカラーに関して変更可能なパネルを自動車のルーフとして使用することができる。それはこの場合、高い剛性且つ軽量の特に上記の構成で、パネルだけを備え、そのため比較的大きな空き領域が達成され、したがって例えばこのような自動車ルーフを備える自動車において上方への良い視界が可能になるからである。
【0011】
本発明に係る軽量コンポーネントの更に有利な構成は、他の従属請求項に記載されており、図面を参照して以下に詳細に記載する実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、自動車ル−フとして本発明による軽量コンポーネントを有する自動車のシャーシの部分図である。
図2図2は、本発明による軽量コンポーネントの支持フレームの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の図面には基本的に示した自動車1の一部が図示されている。これは自動車1のいわゆる骨組みの一部、特にルーフ領域である。A、B、C、及びDで示されるものは、ルーフ領域と連結された、いわゆるAピラー、B−ピラー、C−ピラー、及びD−ピラーの延長部である。通常、この図に示す基本構造部分のルーフ領域は開放構造である。先行技術の構造では、基本構造部分は例えば横材、及び、パネルとしてその上に配置されたアルミニウム板によって閉鎖される。この図に示した例では、図1には黒で示される支持フレーム3、及び透明パネル4からなる軽量コンポーネント2がルーフとしての役割を果たす。透明パネルは例えば、プラスチック材、ガラス、又は、例えば透明度及び/又はカラーを電位の印加によって調整可能な材料などのいわゆる機能性材料から形成することができる。本発明ではパネルは二次的に重要なものなので、本明細書では詳細には言及しない。
【0014】
本明細書に記載された軽量コンポーネント1にとって支持フレーム3は非常に重要である。したがって、この支持フレーム3は更に図2の平面図で示される。これは対称軸Sに対して鏡面対称に形成され、4つのフレーム部5、6、7、及び8を具備している。支持フレーム3は好適には、一方向で、この場合は対称軸Sの方向において、この軸に対して横断する別の方向よりも大きい寸法で形成される。それに対応して、部分フレーム6、8は短い部分フレーム5、7よりも長く形成される。しかし4つの部分フレームの投影図は全体として四辺形あるいはルーフの湾曲に応じた四辺形である。4つのフレーム部5、6、7、及び8を補強するため、6つの補助ブレース9、10、11、12、13、14が備えられている。3つのブレース9、10、11は、長フレーム部6を起点に短フレーム部7まで延在し、別の3つのブレース12、13、14も長フレーム部8から短フレーム部7までそれぞれ延在している。ブレース9から14は互いに交差し、交点15で互いに連結される。ブレース9から14はフレーム部5から8と同様に生体工学的基準で構成されているため、材料中のトランジションは急激に行われるのではなく、生態学で知られている形態、例えば正接関数または、角度二等分線等で構築された多角形などの形態で緩やかに行われる。フレーム部6を起点にするブレース9、10、11と、フレーム部8を起点とするブレース12、13、14とが交差する交点15の領域で、これらのブレースは互いに連結される。この領域で、個々のブレース9から14は補足的な材料支持体を備えることができる。材料としては、好適には繊維強化プラスチック、特に炭素繊維強化プラスチックが使用される。それによって、概ね5mm未満の極めて薄い最大壁厚を実現できる。ブレース9から14、及び交差点15の領域で、繊維の方向は、繊維が予期される力の流れに対応し、したがって最小限の材料投入で支持フレーム3の最大強度を達成できるように向けることができる。
【0015】
それに加えて、両方の長フレーム部6、8にはそれぞれ湾曲したブレース16、17が位置し、これらのブレースは、それぞれのフレーム6、8を起点に対称軸の方向に向かい、交点18でブレース9、10、13のうちの1つと交差した後に、それぞれのフレーム部6、8に戻るように延びている。同様の構造の湾曲したブレースには参照符号19が付され、これは短フレーム部7の側に配置されている。湾曲したブレース19はその延長部でブレース9、14と一部が重なり、別のブレース10、11、12及び13とも交差する。この交点18も好適には補足的な繊維強化プラスチックによって補強することができる。参照符号20が付された更に別の湾曲したブレースは、一部が断たれたフレーム部7から上記の湾曲したブレース19とは反対の方向に突出している。
【0016】
全体として、構造は対称軸Sに対して鏡面対称に形成されている。それによって、図2の短フレーム部5側の端部の左側に比較的大きい空き領域21を形成できる。図1の図面から分かるように、この比較的大きい空き領域21は、AピラーとBピラーとの間の領域の上部に、又、部分的にBピラーとCピラーとの間の領域の上部に配設されている。特に、前述の透明又は少なくとも部分的に透明なパネル4によって、自動車1のルーフに軽量コンポーネント2、ひいては極めて大きい窓の開口を実現できる。支持フレーム3の構造によって、従来よりも極めて高い捩じれ強さ、及び特に広域の振動モード、特に捩じれモードを改善することが可能になる。それによって更に、横曲げに関し従来よりも極めて高い剛性が得られる。水平方向の曲げに関する剛性は最小限に低下するものの、それは捩じれ強さ及び横曲げに対する剛性が高いために許容範囲にあり、したがって従来のルーフ構造よりも明らかに軽量で、極めて安定し、快適さ、及び大きい窓開口を設ける可能性に関して自動車1の極めて有利なルーフを実現できる。その上、生体工学的な構造に対する配慮によって最適化された軽量コンポーネント2の構造は形状が極めて美しく、特に透明パネルを使用すればデザイン要素として使用することができる。
図1
図2