(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5777832
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】放射線量表示装置、放射線量表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20150820BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20150820BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20150820BHJP
G06F 3/048 20130101ALI20150820BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61N5/10 Q
A61B6/03 377
G06F3/048 651C
G09G5/00 510H
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-7842(P2015-7842)
(22)【出願日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年1月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712010876
【氏名又は名称】ペンギンシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100169753
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】神池 智生
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 伸也
(72)【発明者】
【氏名】仁衡 ▲琢▼磨
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−148495(JP,A)
【文献】
特開平07−320029(JP,A)
【文献】
特開2003−290213(JP,A)
【文献】
特開2001−299733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 − 7/12
A61B 6/00 − 6/14
A61N 5/10
G06F 3/01
G06F 3/048 − 3/0482
G06F 3/0485
G06F 3/0487− 3/0489
G06T 1/00 − 1/40
G06T 3/00 − 5/50
G06T 9/00 −11/40
G06T 15/00 −17/00
G06T 17/10 −17/30
G09G 5/00
G09G 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作するポインティングデバイスと、
放射線を照射対象に照射するときの前記照射対象における座標と、当該座標における放射線量と、の関係を示す放射線量データを取得する放射線量データ取得部と、
前記ポインティングデバイスに対するユーザの互いに異なる方向へのスライド操作に基づいて変更される、ディスプレイに表示する前記放射線量の上限値及び下限値からなる表示レンジを取得する表示レンジ取得部と、
前記表示レンジ取得部が取得した前記上限値と前記下限値との間の放射線量を、予め定めた数の範囲に分割し、分割した各範囲の前記放射線量に対して、互いに異なる色を割り当てる色決定部と、
各座標に照射される前記放射線量に割り当てられた色を、前記ディスプレイの当該座標に表示する制御を行う表示制御部と、を有し、
前記表示レンジ取得部が取得する前記表示レンジは、前記ポインティングデバイスに対して、前記ディスプレイの横方向及び縦方向のいずれか1方へのスライド操作により前記上限値が変更され、前記横方向及び前記縦方向の他方へのスライド操作により前記下限値が変更される、
放射線量表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記上限値に最も近い範囲に割り当てられた色を、前記上限値以上の放射線量の座標に表示する、
請求項1に記載の放射線量表示装置。
【請求項3】
前記照射対象の断層撮影画像を表示する断層撮影画像表示部を更に備え、
前記表示制御部は、前記断層撮影画像に重畳して、前記放射線量に対応する色を表示する、
請求項1又は2に記載の放射線量表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記色決定部が決定した色を付した矩形を前記放射線量の多い順に一方向に配列し、各色に割り当てられた前記放射線量の範囲の境界値を少なくとも一部表示させた表示スケールバーを更に表示する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線量表示装置。
【請求項5】
シミュレーション又は実測により予め得られた、前記放射線量データを記憶する記憶部を更に有し、
前記放射線量データ取得部は前記記憶部から前記放射線量データを取得し、
前記ポインティングデバイスに対するユーザの前記スライド操作を検出したときに、前記スライド操作に基づいて、前記表示レンジ取得部は前記表示レンジを取得し、前記色決定部は前記表示レンジを分割した各範囲の前記放射線量に対して互いに異なる色を割り当て、前記表示制御部は前記放射線量に割り当てられた色を前記ディスプレイの各座標に表示する制御を行う、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線量表示装置。
【請求項6】
放射線を照射対象に照射するときの前記照射対象における座標と、当該座標における放射線量と、の関係を示す放射線量データを取得する放射線量データ取得ステップと、
ポインティングデバイスに対するユーザの互いに異なる方向へのスライド操作に基づいて変更される、ディスプレイに表示する前記放射線量の上限値及び下限値からなる表示レンジを取得する表示レンジ取得ステップと、
前記表示レンジ取得ステップで取得した前記上限値と前記下限値との間の放射線量を、予め定めた数の範囲に分割し、分割した各範囲の前記放射線量に対して、互いに異なる色を割り当てる色決定ステップと、
各座標に照射される前記放射線量に割り当てられた色を、前記ディスプレイの当該座標に表示する制御を行う表示制御ステップと、を有し、
前記表示レンジ取得ステップで取得する前記表示レンジは、前記ポインティングデバイスに対して、前記ディスプレイの横方向及び縦方向のいずれか1方へのスライド操作により前記上限値が変更され、前記横方向及び前記縦方向の他方へのスライド操作により前記下限値が変更される、
放射線量表示方法。
【請求項7】
コンピュータを、
放射線を照射対象に照射するときの前記照射対象における座標と、当該座標における放射線量と、の関係を示す放射線量データを取得する放射線量データ取得部、
ポインティングデバイスに対するユーザの互いに異なる方向へのスライド操作に基づいて変更される、ディスプレイに表示する前記放射線量の上限値及び下限値からなる表示レンジを取得する表示レンジ取得部、
前記表示レンジ取得部が取得した前記上限値と前記下限値との間の放射線量を、予め定めた数の範囲に分割し、分割した各範囲の前記放射線量に対して、互いに異なる色を割り当てる色決定部、
各座標に照射される前記放射線量に割り当てられた色を、前記ディスプレイの当該座標に表示する制御を行う表示制御部、
として機能させるプログラムであって、
前記表示レンジ取得部が取得する前記表示レンジは、前記ポインティングデバイスに対して、前記ディスプレイの横方向及び縦方向のいずれか1方へのスライド操作により前記上限値が変更され、前記横方向及び前記縦方向の他方へのスライド操作により前記下限値が変更される、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線量の分布を表示する放射線量表示装置、放射線量表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療(Radiation Therapy: RT)を有効に行うために、治療対象に対して照射する放射線量を実測し、又は、治療前に放射線照射のシミュレーションを行う場合がある。例えば、治療対象体の外周の複数の方向から放射線を照射させる場合の、治療対象体内部の放射線量の分布を実測又はシミュレーションする。
【0003】
このとき、治療対象体の診断用X線CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)の画像に、実測又はシミュレーション結果の放射線量の分布を重ね合わせて表示することにより、治療対象部位に正確に放射線が照射されていることを確認することができるシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の放射線治療情報提供システムは、放射線治療中に治療放射線の散乱光を検出器で検出して取得した散乱線量データを、吸収線量データに変換し、吸収線量の画像を生成する。生成された吸収線の量画像は、CT画像と合成されて表示されるため、治療対象部位に対する放射線照射量を明確に表示することができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−148495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線治療において、放射線を照射する治療対象部位が所定の広さを有している場合がある。この場合、その部位全体に効率的に放射線を照射できるように、放射線照射器の出力強度、照射方向を最適化する必要がある。また、放射線照射による他の部位への影響も考慮する必要がある。
【0007】
ここで、治療対象部位へ正確に照射されていることを確認する用途や、他の部位への影響を確認する用途等の各用途に応じて放射線量の最適な表示レンジ(範囲)が異なる。
【0008】
特許文献1に示すような、治療対象体内部の放射線量の分布を実測又はシミュレーションした結果を表示する放射線量表示装置は、各用途に応じて、放射線量の表示レンジを容易に変更できる機能があるのが望ましいが、従来の表示装置はそのような機能を有するものがないか、または操作性が低いものであった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、放射線量分布を表示する際に簡便な操作で表示レンジを変更することのできる放射線量表示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る放射線量表示装置は、
ユーザが操作するポインティングデバイスと、
放射線を照射対象に照射するときの前記照射対象における座標と、当該座標における放射線量と、の関係を示す放射線量データを取得する放射線量データ取得部と、
前記ポインティングデバイスに対するユーザの
互いに異なる方向へのスライド操作に基づいて変更される、ディスプレイに表示する前記放射線量の
上限値及び下限値からなる表示レンジを取得する表示レンジ取得部と
前記表示レンジ取得部が取得した
前記上限値と前記下限値との間の放射線量を、予め定めた数の範囲に分割し、分割した各範囲の前記放射線量に対して、互いに異なる色を割り当てる色決定部と、
各座標に照射される前記放射線量に割り当てられた色を、前記ディスプレイの当該座標に表示する制御を行う表示制御部と、を有
し、
前記表示レンジ取得部が取得する前記表示レンジは、前記ポインティングデバイスに対して、前記ディスプレイの横方向及び縦方向のいずれか1方へのスライド操作により前記上限値が変更され、前記横方向及び前記縦方向の他方へのスライド操作により前記下限値が変更されることを特徴とする。
【0012】
前記表示制御部は、前記上限値に最も近い範囲に割り当てられた色を、前記上限値以上の放射線量の座標に表示するようにしてもよい。
【0014】
前記照射対象の断層撮影画像を表示する断層撮影画像表示部を更に備え、
前記表示制御部は、前記断層撮影画像に重畳して、前記放射線量に対応する色を表示するようにしてもよい。
【0015】
前記表示制御部は、前記色決定部が決定した色を付した矩形を前記放射線量の多い順に一方向に配列し、各色に割り当てられた前記放射線量の範囲の境界値を少なくとも一部表示させた表示スケールバーを更に表示するようにしてもよい。
また、シミュレーション又は実測により予め得られた、前記放射線量データを記憶する記憶部を更に有し、
前記放射線量データ取得部は前記記憶部から前記放射線量データを取得し、
前記ポインティングデバイスに対するユーザの前記スライド操作を検出したときに、前記スライド操作に基づいて、前記表示レンジ取得部は前記表示レンジを取得し、前記色決定部は前記表示レンジを分割した各範囲の前記放射線量に対して互いに異なる色を割り当て、前記表示制御部は前記放射線量に割り当てられた色を前記ディスプレイの各座標に表示する制御を行うようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の第2の観点に係る放射線量表示方法は、
放射線を照射対象に照射するときの前記照射対象における座標と、当該座標における放射線量と、の関係を示す放射線量データを取得する放射線量データ取得ステップと、
ポインティングデバイスに対するユーザの
互いに異なる方向へのスライド操作に基づいて変更される、ディスプレイに表示する前記放射線量の
上限値及び下限値からなる表示レンジを取得する表示レンジ取得ステップと、
前記表示レンジ取得ステップで取得した
前記上限値と前記下限値との間の放射線量を、予め定めた数の範囲に分割し、分割した各範囲の前記放射線量に対して、互いに異なる色を割り当てる色決定ステップと、
各座標に照射される前記放射線量に割り当てられた色を、前記ディスプレイの当該座標に表示する制御を行う表示制御ステップと、を有
し、
前記表示レンジ取得ステップで取得する前記表示レンジは、前記ポインティングデバイスに対して、前記ディスプレイの横方向及び縦方向のいずれか1方へのスライド操作により前記上限値が変更され、前記横方向及び前記縦方向の他方へのスライド操作により前記下限値が変更されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
放射線を照射対象に照射するときの前記照射対象における座標と、当該座標における放射線量と、の関係を示す放射線量データを取得する放射線量データ取得部、
ポインティングデバイスに対するユーザの
互いに異なる方向へのスライド操作に基づいて変更される、ディスプレイに表示する前記放射線量の
上限値及び下限値からなる表示レンジを取得する表示レンジ取得部、
前記表示レンジ取得部が取得した
前記上限値と前記下限値との間の放射線量を、予め定めた数の範囲に分割し、分割した各範囲の前記放射線量に対して、互いに異なる色を割り当てる色決定部、
各座標に照射される前記放射線量に割り当てられた色を、前記ディスプレイの当該座標に表示する制御を行う表示制御部、
として機能させるプログラム
であって、
前記表示レンジ取得部が取得する前記表示レンジは、前記ポインティングデバイスに対して、前記ディスプレイの横方向及び縦方向のいずれか1方へのスライド操作により前記上限値が変更され、前記横方向及び前記縦方向の他方へのスライド操作により前記下限値が変更されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射線量分布を表示する際に簡便な操作で表示レンジを変更することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る放射線量表示装置を示すブロック図である。
【
図2】ディスプレイに表示するCT画像の例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係るCT画像及び放射線量分布画像の例を示す図である。
【
図4】ユーザのスライド操作を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1に係るCT画像及び放射線量分布画像の例を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係るCT画像及び放射線量分布画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1に示す本実施の形態に係る放射線量表示装置10は、CT画像(コンピュータ断層撮影画像)及び放射線量分布画像等を表示するものであり、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン等の情報端末により構成される。本実施の形態では、画面に接触することで操作入力する情報端末の場合について説明する。放射線量表示装置10は、
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)110、記憶部120、タッチスクリーン130を備える。
【0022】
記憶部120は、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリ等から構成される。記憶部120には、CT画像データや放射線量データ等の各種データが記憶される。その他、記憶部120には、CPU110が実行する制御プログラムも記憶される。
【0023】
タッチスクリーン130は、図形、文字、記号等の情報表示出力を行うディスプレイ131と、ディスプレイ131の表示面上に備えられたタッチパッド132と、から構成される。ディスプレイ131は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示デバイスから構成される。タッチパッド132は、操作者がタッチパッド132の表面に指等を接触し移動することによる選択、スライド、スクロール等の操作入力を検出するポインティングデバイスである。タッチパッド132は検出した操作入力に係る信号をCPU110に出力する。
【0024】
ディスプレイ131に表示する画像の一例を
図2に示す。この例では、治療対象体が人体であるときの3方向のCT画像211、212、213を並置して表示する。ディスプレイ131には、放射線量(DOSE)の分布を表示するか否かを切り替える表示切替スイッチ201も表示している。
図2は、表示切替スイッチ201をOFFにして、放射線量の分布を非表示にした状態を示している。
【0025】
また、放射線量のレベルと表示色の関係を示した表示スケールバー202も表示している。表示スケールバー202は、色決定部113が決定した色を付した矩形を放射線量の多い順に一方向に配列し、各色に割り当てられた放射線量の範囲の境界値を少なくとも一部表示させたものである。なお、
図2において表示スケールバー202は、塗りつぶしのパターンを互いに変えた矩形を配列したものを示しているが、実際の表示スケールバー202は互いに異なる色の矩形を配列したものである。
【0026】
表示切替スイッチ201をONにして、放射線量の分布を表示した状態を
図3に示す。このときの放射線量のデータは、例えば、3方向それぞれから放射線を照射したときの各放射線量を、3次元座標毎に積算したものである。表示スケールバー202の放射線量のレベルと表示色の関係に則って、各3次元座標における放射線量に対応する色を表示する。3方向から放射線を照射し、治療対象部位215で放射線量が最も多くなっている様子を把握することができる。
【0027】
CPU110は、記憶部120に記憶されている制御プログラムを実行することにより、情報処理、機器制御等を行う。CPU110は、本実施の形態に係る放射線量表示処理のプログラムを実行することにより、データ取得部111、表示レンジ取得部112、色決定部113、表示制御部114の各機能部として機能する。
【0028】
データ取得部111は、記憶部120より放射線量データを取得する。放射線量データは、治療対象体における3次元座標と、当該3次元座標における放射線量の値からなる。放射線量データは、実測により得られるデータ又はシミュレーションにより得られるデータである。
【0029】
実測のデータは、散乱光データから算出する手法等、従来の手法により実測して得られるデータである。一方、シミュレーションのデータは、治療対象体に放射線を照射する放射線照射器の出力強度及び照射器の位置及び方向からシミュレーションして得られるデータである。
【0030】
表示レンジ取得部112は、タッチパッド132が検出した操作者の操作入力に基づいて、放射線量の表示レンジを取得する。表示レンジは、ディスプレイ131に表示する放射線量の上限値と下限値で示される表示範囲である。
【0031】
表示レンジは、操作者が簡単に操作することにより変更可能であることが望ましい。本実施の形態では、
図4に示すように、タッチパッド132上に置いた指等を第1方向(画面横方向:X方向)にスライドさせる操作で上限値を変更し、第2方向(画面縦方向:Y方向)にスライドさせる操作で下限値を変更する。指等をスライド開始させる位置は、ディスプレイ131の表示画面内の任意の位置でよく、スライドした距離に応じて上限値又は下限値を変える。
【0032】
色決定部113は、データ取得部111が取得した放射線量データと、表示レンジ取得部112が取得した表示レンジに基づいて、各3次元座標に表示する色を決定する。まず、表示レンジの上限値と下限値との間の放射線量を予め定めた数の範囲に分割し、分割した放射線量の各範囲に互いに異なる色を割り当てる。そして、各3次元座標の放射線量に対応する色を決定する。
【0033】
表示制御部114は、色決定部113で決定した各3次元座標の放射線量に対応する色を表示するようにディスプレイ132に制御信号を出力する。ここで、
図4において、各色(塗りつぶしパターン)を付した矩形を並置して表しているが、これは色の変化をわかりやすくするために矩形の大きさを大きくしたものである。実際は、微細な画素に色を付すため色の境界を連続的に表すことができる。
【0034】
以上のように構成された放射線量表示装置10の動作について、
図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0035】
CPU110が実行する放射線量表示処理は、表示切替スイッチ201がONになっているときに実行される。
【0036】
まず、表示レンジ取得部112が、表示レンジの上限値と下限値の初期値を記憶部120から取得する(ステップS101)。色決定部113は、取得した上限値と下限値の差を表示色数のNで分割し、分割したそれぞれの放射線量の範囲に色を割り当てる(ステップS102)。例えば表示色数Nは256階調等でもよい。
【0037】
表示制御部114は、表示スケールバー202に色を変える境界値である放射線量の値とステップS102で各範囲に割り当てた色を表示する(ステップS103)。また、データ取得部111が記憶部120から取得した放射線量と3次元座標のデータに基づいて、表示制御部114は、各3次元座標の放射線量に割り当てられた色をそれぞれの3次元座標に表示し、放射線量分布の画像を表示する(ステップS104)。
【0038】
ここで、放射線量が上限値を超えている3次元座標には、上限値に最も近い範囲に割り当てられた色を表示する。一方、放射線量が下限値を下回っている3次元座標には、色を表示しない。
【0039】
放射線量分布を表示している状態において、タッチパッド132がユーザによるスライド操作を検出するまで待機する。スライド操作がない場合は(ステップS105:No)、表示切り替えスイッチがONである限り(ステップS106:Yes)、スライド操作を検出するまで待機する(ステップS105)。
【0040】
タッチパッド132がスライド操作を検出したとき(ステップS105:Yes)、スライドの方向を判別し(ステップS107)、第1方向(例えばX方向)へのスライドであった場合には(ステップS107:X)、上限値を変更する(ステップS108)。一方、第2方向(例えばY方向)へのスライドであった場合には(ステップS107:Y)、下限値を変更する(ステップS109)。
【0041】
その後、ステップS102に戻り、再度放射線量の範囲に対して色の割り当てを行い(ステップS102)、表示スケールバー202と放射線量分布に色の表示を行う(ステップS103、S104)。
【0042】
以上のような放射線量表示処理を実行することにより、実測又はシミュレーションにより得られる放射線量の分布を様々な表示レンジで表示することができる。ユーザは表示された放射線量の分布により様々な情報を得ることができる。
【0043】
図3のように第2方向に指等をスライドさせることで放射線量(DOSE)の下限値を低く設定した場合、少量の放射線を受けている箇所を知ることができる。また、放射線照射器の放射線の照射方向を特定することができる。
【0044】
また、第1方向に指等をスライドさせて上限値を予め定めた所定値に設定することで、所定値以上の放射線が照射されている領域を特定することができる。
【0045】
また、
図6のように、第2方向に指等をスライドさせることで放射線量の下限値を高めに設定し、第1方向に指等をスライドさせることで放射線量の上限値を高めに設定した場合、放射線量が最も高い位置を特定することができる。その放射線量が最も高い位置を治療対象部位の中心に合わせるようにすることで、放射線照射器の放射線照射方向の設定を容易にすることができる。
【0046】
このように、第1方向、第2方向に指等をスライドさせるという簡便な操作のみで、様々な視点から放射線治療の最適化を行うことができる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態では、データ取得部111が3次元座標と当該3次元座標における放射線量からなる放射線量データを取得し、表示レンジ取得部112がディスプレイ131に表示する放射線量の上限値及び下限値を取得する。そして、色決定部113が上限値及び下限値の間の放射線量を複数の範囲に分割し、各範囲に表示する色を決定し、表示制御部114が決定した色を各3次元座標に表示する。このとき放射線量の上限値及び下限値は、ユーザがタッチパッド132に対して第1方向にスライドすることにより上限値を変更し、第2方向にスライドすることにより下限値を変更することとした。これにより、簡便な操作で多様な表示レンジで放射線量分布を表示することができる。
【0048】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
本実施の形態に係る放射線量表示装置10は、実施の形態1と同様の構成に加えて、
図7に示すような操作切替スイッチ203を更にディスプレイ131に表示する。操作切替スイッチ203は、スライド操作がCT画像の表示に対する操作か、又は、放射線量分布の表示に対する操作か、を切り替えるスイッチである。
【0050】
操作切替スイッチ203が「RT」つまり放射線量分布の表示の方を選択している場合は、実施の形態1で説明した放射線量表示処理を実行する。
【0051】
一方、操作切替スイッチ203が「CT」つまりCT画像の表示の方を選択している場合は、ユーザのスライド操作に基づき、従来のCT画像のWL(Window Level)、WW(Window Width)の変更を行う。
【0052】
CT画像はグレースケールで表示し、例えば256階調の濃度スケールで表示する。ユーザがタッチパッド132に対して第1方向のスライド操作を行うことにより、CT値の中心レベル(WL値)の選択を行い、選択した中心レベルを濃度スケールの中心に設定する。また、ユーザが第2方向のスライド操作を行うことにより、CT値の表示幅(WW値)の選択を行い、選択した表示幅を濃度スケールの全幅に対応させる。
【0053】
このとき、CT値とグレースケールを対応づけた濃度スケールバー204を表示してもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態では、操作切替スイッチ203を更に備え、操作切替スイッチ203の切り替えにより放射線量分布の表示を選択したときは、スライド操作により放射線量分布の表示レンジを変更することとし、CT画像の表示を選択したときは、スライド操作によりCT値の濃度スケールを変更することとした。これにより、放射線量分布もCT画像もスライド操作という簡便な操作により表示レンジを任意に変更することができる。
【0055】
このように本発明は、放射線を照射対象に照射するときの照射対象における座標と、当該座標における放射線量と、の関係を示す放射線量データを取得し、ポインティングデバイスに対するユーザの操作によって変更可能な、ディスプレイに表示する放射線量の範囲を示す表示レンジを取得する。そして、取得した表示レンジ内の放射線量を、予め定めた数の範囲に分割し、分割した各範囲の放射線量に対して互いに異なる色を割り当て、各放射線量の放射線が照射される座標に割り当てられた色を表示することとした。これにより、放射線量分布を表示する際に、簡便な操作で表示レンジを変更することが可能になる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0057】
例えば、上記実施の形態において、タッチパッド131を備えた情報端末において、指等のスライド操作に応じて放射線量の上限値及び下限値を変更するとしたが、放射線量表示装置10がマウス等の他のポインティングデバイスを備えた情報端末の場合は、ポインティングデバイスの操作によるポインタの第1方向又は第2方向への移動に基づいて、放射線量の上限値又は下限値を変更するようにしてもよい。
【0058】
また、第1方向(X方向)のスライドで放射線量の上限値又はCT値のWL値を変更することとし、第2方向(Y方向)のスライドで放射線量の下限値又はCT値のWW値を変更することとしたが、スライド方向は互いに判別できる2方向であれば、X方向、Y方向に限られない。例えば、左下から右上に向かう方向と左上から右下に向かう方向でもよい。
【0059】
また、第1方向のスライドで放射線量の上限値を変更することとし、第2方向のスライドで放射線量の下限値を変更することとしたが、CT画像の操作と同様に、第1方向又は第2方向のスライドで、表示する放射線量の中央値(WL値)又は表示幅(WW値)を変更するようにしてもよい。
【0060】
また、実施の形態2において、操作切替スイッチ203によって放射線量の表示とCT画像の表示のいずれか一方を選択し、スライド操作による表示レンジ又は濃度スケールの変更を行うこととしたが、互いに判別できる4方向で、放射線量の表示レンジとCT画像の濃度スケールを変更するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態のCPU110が実行するプログラムを、既存のスマートフォンやタブレット端末等の情報端末に適用することで、当該端末を本発明に係る放射線量表示装置10として機能させることも可能である。
【0062】
このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disc)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、携帯電話網やインターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…放射線量表示装置
110…CPU
111…データ取得部
112…表示レンジ取得部
113…色決定部
114…表示制御部
120…記憶部
130…タッチスクリーン
131…タッチパッド
132…ディスプレイ
201…表示切替スイッチ
202…表示スケールバー
211、212、213…CT画像
203…操作切替スイッチ
204…濃度スケールバー
215…治療対象部位
【要約】
【課題】放射線量分布を表示する際に簡便な操作で表示レンジを変更することのできる放射線量表示装置等を提供する。
【解決手段】データ取得部111は3次元座標と当該3次元座標における放射線量からなる放射線量データを取得し、表示レンジ取得部112はディスプレイ131に表示する放射線量の上限値及び下限値を取得する。色決定部113は上限値及び下限値の間の放射線量を複数の範囲に分割し、各範囲に表示する色を決定する。表示制御部114は決定した色を各3次元座標の位置に表示する。放射線量の上限値及び下限値は、ユーザがタッチパッド132に対して第1方向にスライド操作することにより上限値を変更し、第2方向にスライド操作することにより下限値を変更する。
【選択図】
図1