(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の構成では、ギア係止部の直線部に連結部の長孔を係合させてギア部品をトラバースカム軸に一体回転可能に連結している。この長孔は、プレス加工により打ち抜いて形成されているため、長孔の直線部に抜きだれが生じる。このため、機械加工で形成されたギア係止部の直線部とプレス加工で形成された長孔との間に隙間が生じ、ギア部品とトラバースカム軸との間に回転方向にガタツキが生じる。このような回転方向のガタツキが生じると、回転フィーリングの悪化を招く。
【0006】
本発明の課題は、ギア部品とトラバースカム軸との間の回転方向のガタツキを簡素な機械加工により抑えることができるようにすることにある
。
【0007】
発明1に係る釣り用リールのギア装着構造は、釣り用リールの往復移動機構に用いられ、ハンドルの回転が伝達される構造である。ギア装着構造は、トラバースカム軸と、ギア部品と、を備えている。トラバースカム軸は、軸本体と、ギア支持部と、ギア係止部と、を有している。軸本体は、外周面に交差する螺旋状溝が形成されたものである。ギア支持部は、軸本体の一端側に設けられ円形断面を有する。ギア係止部は、一対の対向部及び一対の直線部を含む非円形断面である。一対の対向部は、ギア支持部と同一の径方向位置又はギア支持部を超えた径方向位置に対向して配置されている。一対の直線部は、一対の対向部の両端に連結されている。ギア部品は、金属製であり、ギア部と、芯出し部と、連結部と、を有している。ギア部は、外周面に形成されハンドルの回転が伝達されるものである。芯出し部は、内周面に形成されギア支持部に嵌合してトラバースカム軸に対して芯出しされるものである。連結部は、一端面に形成され直線部に係合するスロットを有し、ギア係止部に一体回転可能に連結されるものである。
ギア部品は、ギア部の端面から突出して形成され、一端面を有するボス部をさらに有し、スロットは、ボス部の一端面に、対向して配置される一対の平面部のみで形成されている。
【0008】
このギア装着構造では、トラバースカム軸のギア支持部にギア部品の芯出し部が嵌合しギア部品がトラバースカム軸に対して芯出しされる。また、トラバースカム軸のギア係止部の一対の直線部に連結部のスロットが係合してギア部品とトラバースカム軸とが一体回転する。ここでは、ギア係止部の直線部に係合する連結部を長孔ではなくスロットで構成したので、連結部を機械加工により容易に形成することができる。このため、スロットと直線部との隙間を可及的に小さくでき、ギア部品とトラバースカム軸との間の回転方向のガタツキを簡素な機械加工により抑えることができる。スロットが突出するボス部に形成されているので、スロットを機械加工により形成してもギア部品のギア部に影響を与えなくなる。
【0009】
また、スロットが突出するボス部に形成されているので、スロットを機械加工により形成してもギア部品のギア部に影響を与えなくなる。
【0010】
発明2に係る釣り用リールのギア装着構造は、発明1に記載の構造において、ギア係止部は、ギア支持部と軸本体との間に配置され、スロットは、軸本体に近い側の一端面に形成されている。この場合には、ギア係止部がギア支持部より軸本体側に配置されるので、ギア支持部側からギア部品を装着することができかつギア係止部の直線部の長さをギア支持部より大きくすることができる。これにより、ギア部品のスロットとトラバースカム軸のギア係止部の直線部との間に隙間が生じても、ギア部品とトラバースカム軸とが回転方向にガタツキにくくなる。
【0011】
発明3に係る釣り用リールのギア装着構造は、発明2に記載の構造において、直線部の長さがギア支持部の直径より大きい。これにより、ギア部品のスロットとトラバースカム軸のギア係止部の直線部との間に隙間が生じても、ギア部品がトラバースカム軸に対して回転方向に傾きにくくなり、ギア部品とトラバースカム軸とが回転方向にさらにガタツキにくくなる。
【0012】
発明4に係る釣り用リールのギア装着構造は、発明1に記載の構造において、ギア支持部は、ギア係止部と軸本体との間に配置され、スロットは、軸本体に遠い側の一端面に形成されている。この場合には、ギア係止部の大きさがギア支持部と同じになるが、スロットによりギア係止部の直線部と係合するので、スロットと直線部との隙間を可及的に小さくでき、ギア部品とトラバースカム軸との間の回転方向のガタツキを簡素な機械加工により抑えることができる。
【0013】
発明5に係る釣り用リールのギア装着構造は、発明2又は3に記載の構造において、スロットの幅は、芯出し部の内径を超えた長さである。スロットの幅が芯出し部の内径を超えているので、スロットと芯出し部とが干渉しなくなり、これらの機械加工が容易である。
【0014】
発明
6に係る釣り用リールのギア装着構造は、発明1から
5のいずれかに記載の構造において、一対の対向部は、ギア支持部と同一の外径又はギア支持部を超える外径を有する一対の円弧部を有する。この場合には、ギア支持部の外径以上の外径の円弧部で対向部を構成しているので、対向部及び直線部の形成が容易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ギア係止部の直線部に係合する連結部を長孔ではなくスロットで構成したので、連結部を機械加工により容易に形成することができる。このため、スロットと直線部との隙間を可及的に小さくでき、ギア部品とトラバースカム軸との間の回転方向のガタツキを簡素な機械加工により抑えることができる。
【0016】
本発明の別の態様によれば、ギア係止部がギア支持部より軸本体側に配置されるので、ギア支持部側からギア部品を装着することができかつギア係止部の直線部の長さをギア支持部より大きくすることができる。これにより、ギア部品のスロットとトラバースカム軸のギア係止部の直線部との間に隙間が生じても、ギア部品とトラバースカム軸とが回転方向にガタツキにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
<全体構成>
図1において、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、ハンドル組立体1と、ハンドル組立体1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0019】
ハンドル組立体1は、
図1及び
図2に示すように、後述するドライブギア軸10に螺合する部材であり、T字状の把手部1aと、先端に把手部1aが回転自在に装着されたL字状のクランクアーム1bとを有している。クランクアーム1bは、アーム部7aと、アーム部7aの基端を揺動自在に装着した軸部7bと、軸部7bをドライブギア軸10にネジ込むための筒状部材7cとを有している。軸部7bは、断面が棒状の部材であり、先端(
図2右端)には、右ネジ(時計回りに回すと締まるネジ)の第1雄ネジ部8aと、第1雄ネジ部8aより大径の左ネジ(反時計回りに回すと締まるネジ)の第2雄ネジ部8bとが軸方向に並べて同芯に形成されている。これによりハンドル組立体1は、
図1に示すリール本体2の右位置と
図2に示す左位置とのいずれにも装着可能である。
【0020】
リール本体2は、側部に開口2cを有するリールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に一体で延びるT字状の竿取付脚2bとを有している。開口2cは、蓋部材2dにより塞がれている。
【0021】
リールボディ2aは、内部に開口2cに連なる機構装着用の空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル組立体1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6(釣り用リールの往復移動機構の一例)とが設けられている。
【0022】
図2に示すように、リールボディ2aの右側面には、筒状のボス部17aが形成されている。ボス部17aは、ドライブギア軸10の右端を支持する軸受16aを収納するためにリールボディ2aの内方に突出して形成されている。蓋部材2dのボス部17aに対向する位置には、ボス部17bが形成されている。ボス部17bはドライブギア軸10の左端を支持する軸受16bを収納するために蓋部材2dの内方に突出して形成されている。ハンドル組立体1が装着された側と逆側のボス部(
図2ではボス部17a)は、キャップ19により閉塞されている。
【0023】
ロータ駆動機構5は、
図1及び
図2に示すように、ハンドル組立体1が回転不能に装着されたドライブギア組立体9と、ドライブギア組立体9に噛み合うピニオンギア12とを有している。
【0024】
ドライブギア組立体9は、
図2に示すように、ドライブギア軸10と、ドライブギア軸10に一体回転可能に固定されるドライブギア11と、を有している。
【0025】
ドライブギア軸10は、ステンレス製の中空の部材であり、その両端は、軸受16a,16bを介してリールボディ2a及び蓋部材2dに回転自在に支持されている。軸受16a,16bは、耐食性を有する転がり軸受である。
【0026】
ドライブギア軸10の中心部には、第1雄ネジ部8aに螺合する第1雌ネジ部10aと、第2雄ネジ部8bに螺合する第2雌ネジ部10bと、が軸方向に間隔を隔てて同芯に形成されている。
【0027】
ピニオンギア12は、
図1に示すように、筒状の部材であり前後方向に沿って配置されリールボディ2aに回転自在に装着されている。ピニオンギア12の先端部12aはロータ3の中心部を貫通しており、この貫通部分でナット33によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、軸方向の中間部と後端部とでそれぞれ第1軸受14a及び第2軸受14bを介してリールボディ2aに回転自在に支持されている。このピニオンギア12の内部をスプール軸15が貫通している。ピニオンギア12は、ドライブギア11に噛み合うとともにオシレーティング機構6にも噛み合っている。
【0028】
<オシレーティング機構の構成>
オシレーティング機構6は、
図1及び
図2に示すように、スプール軸15の略直下方に平行に配置された、例えば快削黄銅製のトラバースカム軸21と、スライダ22と、例えばアルミニウム合金製の従動ギア23(ギア部品の一例)と、を有している。この、トラバースカム軸21と、従動ギア23とにより本発明の一実施形態による釣り用リールのギア装着構造20が構成されている。
【0029】
トラバースカム軸21は、
図3及び
図4に示すように、外周面に交差する螺旋状溝25aが形成された軸本体25と、ギア支持部26と、ギア係止部27と、を有している。軸本体25は、大径の部分であり、その後端(
図4右端)には、リールボディ2aの後部に軸受18により回転自在に支持される小径の第1支持部25bが形成されている。軸本体25の前端には、小径のつなぎ部25cが形成されている。
【0030】
ギア支持部26は、円形断面を有しており、ギア係止部27を挟んで軸本体25の前端側に設けられている。ギア支持部26は、ギア係止部27より小径である。ギア支持部26の前端には、リールボディ2aの前部に軸受(図示せず)により回転自在に支持される小径の第2支持部26aが形成されている。
【0031】
ギア係止部27は、従動ギア23をトラバースカム軸21と一体回転可能に係止するために設けられている。ギア係止部27は、軸本体25と概ね同径に形成された非円形断面を有している。ギア係止部27は、対向して配置された対向部としての一対の円弧部27aと、円弧部27aの両端に連結された一対の直線部27bと、を有している。円弧部27aは、軸本体25と概ね同径に形成されており、トラバースカム軸21の軸芯と同芯に形成されている。一対の直線部27bは、切削加工により円形の外周面を平行に削って形成されており、ギア支持部26の径方向外方に配置されている。従って、第1実施形態では、ギア係止部27の一対の円弧部27a及び直線部27bは、ギア支持部26を超えた径方向位置に対向して配置されている。言い換えれば、
図4に示すように、直線部27bの長さLは、ギア支持部26の外径D1より大きい(D1<L)。
【0032】
スライダ22は、
図1及び
図2に示すように、トラバースカム軸21の回転に係合して前後方向に往復移動する。スライダ22は、トラバースカム軸21と平行に配置された2本のガイド軸24(
図2参照)に移動自在に支持されている。スライダ22には、内部にトラバースカム軸21の外周面に形成された交差する螺旋状溝25aに係合する係合部材22aが装着されている。スライダ22には、スプール軸15の後端が回転不能に固定されている。
【0033】
従動ギア23は、
図3、
図5及び
図6に示すように、ピニオンギア12に噛み合うギア部28と、芯出し部29と、連結部30と、を備えている。従動ギア23は、トラバースカム軸21のギア係止部27に一体回転可能に係止されている。ギア部28は、ピニオンギアに噛み合うはす歯であり、従動ギア23の外周面に形成されている。芯出し部29は、従動ギア23の内周面に形成され、ギア支持部26に嵌合してトラバースカム軸21に対して芯出しされるものである。連結部30は、従動ギア23の後端面(一端面の一例)に後方に突出して形成されたボス部31に形成されたスロット30aを有している。スロット30aは、ボス部31の突出部分の基端部から僅かに突出した位置まで形成されている。スロット30aは、ボス部31を横断するように形成されている。
図6に示すように、スロット30aの幅Wは、芯出し部29の内径D2を超えた長さを有している。スロット30aは、Tスロット工具又はフライス工具等を用いた簡単な機械加工により高精度に形成されている。
【0034】
ロータ3は、
図1に示すように、ピニオンギア12に固定された円筒部3aと、円筒部3aの側方に互いに対向して設けられた第1ロータアーム3b及び第2ロータアーム3cと、釣り糸をスプール4に案内するためのベールアーム40とを有している。円筒部3aと第1ロータアーム3b及び第2ロータアーム3cとは、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。円筒部3aの先端中心部分が前述のようにナット33によりピニオンギア12の先端部12aに一体回転可能に固定されている。ベールアーム40は、釣り糸をスプール4に巻き付けるためのものであり、第1ロータアーム3b及び第2ロータアーム3cの先端に糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着されている。
【0035】
円筒部3aの前部には前壁42が形成されており、前壁42の中心部には、ボス部43形成されている。このボス部43の中心部にはピニオンギア12に一体回転可能に係止される貫通孔44が形成されており、この貫通孔44をピニオンギア12の先端部12a及びスプール軸15が貫通している。
【0036】
ボス部43に隣接して円筒部3aの内部には、逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、ピニオンギア12に回転不能に装着された内輪が遊転するローラ形のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0037】
スプール4は、
図1に示すように、ロータ3の第1ロータアーム3bと第2ロータアーム3cとの間に配置されており、スプール軸15の先端部にスプール4の中心部がドラグ機構60を介して連結されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻胴部4aと、糸巻胴部4aの後部に一体で形成されたスカート部4bと、糸巻胴部4aの前端に配置された前フランジ部4cとを有している。糸巻胴部4aは、円筒状の部材であり、外周面はスプール軸15と平行な周面で構成されている。
【0038】
<リールの操作及び動作>
キャスティング時にはベールアーム40を糸開放姿勢に反転させる。この状態で釣竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っ掛けながら釣竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。この状態でハンドル組立体1を糸巻取方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が糸巻取方向に回転するとともに、オシレーティング機構6により、スプール4が前後に往復移動し、ベールアーム40が図示しないベール反転機構により糸巻取位置に復帰し釣り糸がスプール4に巻き付けられる。
【0039】
このような構成のオシレーティング機構6では、トラバースカム軸21のギア係止部27に係止される従動ギア23の連結部30が機械加工により形成されたスロット30aを有している。このため、ギア係止部27にスロット30aを精度良く係止されることができる。このため、トラバースカム軸21と従動ギア23との間の回転方向のガタツキを簡素な機械加工により抑えることができる。
【0040】
<
参考例>
前記第1実施形態では、後方に突出するボス部31に連結部30のスロット30aを形成するとともに、ボス部31を横断するようにスロット30aを形成した。
参考例に係るギア装着構造120では、第1実施形態と同じ構成のトラバースカム軸21に対して、
図7に示すように、ボス部31を設けずにスロット130aを形成している。
【0041】
図7及び
図8に示すように、
参考例による従動ギア123は、従動ギア123の後端面に凹んで形成された連結部130を有している。連結部130は、長円形に凹んで形成されたスロット130aを有している。スロット130aの両端部は、従動ギア123の後端面を横断しておらず、スロット130aの幅Wを直径とする円弧状に形成されている。このため、スロット130aの幅を直径とするエンドミルを使用してスロット130aを容易に形成できる。
【0042】
このような構成の従動ギア123は、第1実施形態と同じトラバースカム軸21に装着可能である。スロット130aの幅W及び芯出し部129の直径D2は、第1実施形態とは同じである
ここでは、後端面を横断せずにスロット130aを形成したので、ボス部を設けなくても、スロット形成のための機械加工時にギア歯に欠けなどの不具合が生じにくくなる。
【0043】
<第
1変形例>
第1実施形態及び
参考例では、芯出し部29及び芯出し部129の直径Dがスロット30a及びスロット130aの幅Wより小さい。しかし、第
1変形例に係るギア装着構造220では、
図10及び
図11に示すように、スロット230aの幅Wが芯出し部229の直径D2より小さい。このため、スロット230aの長さ方向の中間部分は、芯出し部229の内周面に連なるように円弧状に凹んでいる。
【0044】
また、
図9に示すように、トラバースカム軸221は、つなぎ部225c及びギア支持部226の直径が第1実施形態及び
参考例のものより大きい。一方、一対の直線部227bの間隔は、第1実施形態及び
参考例のものより小さい。このため、一対の直線部227bは、つなぎ部225c及びギア支持部226に対して凹んでいる。したがって、スロット230aの中間部分を除く両端部が一対の直線部227bに係止されている。これにより、従動ギア223は、ギア支持部226及びギア係止部227の円弧部227aにより支持可能になる。このため、従動ギア223が前後方向に倒れにくくなる。
【0045】
<第2実施形態>
第1実施形態では、トラバースカム軸21のギア係止部27がギア支持部26より大径であった。しかし、第2実施形態に係るギア装着構造320では、
図12に示すように、トラバースカム軸321のギア係止部327の円弧部327aの直径とギア支持部326の直径D1は同じである。したがって、ギア係止部327の直線部327bの長さLは、ギア支持部326の直径D1より小さい。
【0046】
また、従動ギア323において、
図13及び
図14に示すように、ボス部331は、従動ギア323の前端面(第1端面の一例)に前方に突出して形成されている。連結部330のスロット330aは、ボス部331に芯出し部329の直径D2より小さい幅Wで形成されている。芯出し部329は、従動ギア323の全長にわたって形成されておらず、ボス部331形成部分より僅かに突出する長さで形成されている。
【0047】
このような構成の第2実施形態に係るギア装着構造320では、スロット330aを機械加工により形成できるため、従動ギア323とトラバースカム軸321との回転方向のガタツキを抑えることができる。また、トラバースカム軸321が軸本体325から両端側に徐々に縮径しているので、トラバースカム軸321の機械加工が容易である。
【0048】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。なお、符号については、各項において、最初に表れた部材にのみ符号を付加する。
【0049】
(A)スピニングリールのギア装着構造20(又は120,220,320)は、スピニングリールのオシレーティング機構6に用いられ、ハンドル組立体1の回転が伝達される構造である。ギア装着構造は、トラバースカム軸21(又は221,321)と、ギア部品の一例である従動ギア23(又は123,223,323)と、を備えている。トラバースカム軸21は、軸本体25(又は225,325)と、ギア支持部26(又は226,326)と、ギア係止部27(又は227,327)と、を有している。ギア支持部は、外周面に交差する螺旋状溝25a(又は225a,325a)が形成されたものである。ギア支持部は、軸本体の一端側に設けられ円形断面を有する。ギア係止部は、一対の対向部としての円弧部27a(又は227a,327a)及び一対の直線部27b(又は227b,327b)を含んでいる。一対の円弧部は、ギア支持部と同一の径方向位置又はギア支持部を超えた径方向位置に対向して配置されている。一対の直線部は、一対の円弧部の両端に連結されている。
【0050】
従動ギアは、金属製であり、ギア部28(又は128,228,328)と、芯出し部29(又は129,229,329)と、連結部30(又は130,230,330)と、を有している。ギア部は、外周面に形成されハンドル組立体の回転が伝達されるものである。芯出し部は、内周面に形成されギア支持部に嵌合してトラバースカム軸に対して芯出しされるものである。連結部は、一端面に形成され直線部に係合するスロット30a(又は130a,230a,330a)を有し、ギア係止部に一体回転可能に連結されるものである。
【0051】
このギア装着構造では、トラバースカム軸のギア支持部に従動ギアの芯出し部が嵌合し従動ギアがトラバースカム軸に対して芯出しされる。また、トラバースカム軸のギア係止部の一対の直線部に連結部のスロットが係合して従動ギアとトラバースカム軸とが一体回転する。ここでは、ギア係止部の直線部に係合する連結部を長孔ではなくスロットで構成したので、連結部を機械加工により容易に形成することができる。このため、スロットと直線部との隙間を可及的に小さくでき、従動ギアとトラバースカム軸との間の回転方向のガタツキを簡素な機械加工により抑えることができる。
【0052】
(B)ギア装着構造20(又は120,220)において、ギア係止部27(又は227)は、ギア支持部26(又は226)と軸本体25(又は225)との間に配置され、スロット30a(又は130a,230a)は、軸本体に近い側の後端面に形成されている。この場合には、ギア係止部がギア支持部より軸本体側に配置されるので、ギア支持部側から従動ギア23(又は123,223)を装着することができ、かつギア係止部の直線部27b(又は227b)の長さをギア支持部より大きくすることができる。これにより、従動ギアのスロットとトラバースカム軸のギア係止部の直線部との間に隙間が生じても、従動ギアとトラバースカム軸21(又は121,221)とが回転方向にガタツキにくくなる。
【0053】
(C)ギア装着構造20(又は120,220)において、直線部27b(又は227b)の長さLがギア支持部26(又は226)との直径D1より大きい。これにより、従動ギア23(又は123,223)のスロット30a(又は130a,230a)とトラバースカム軸21(又は221)のギア係止部27(又は227)の直線部との間に隙間が生じても、従動ギアがトラバースカム軸に対して回転方向に傾きにくくなり、従動ギアとトラバースカム軸とが回転方向にさらにガタツキにくくなる。
【0054】
(D)ギア装着構造320において、ギア支持部326は、ギア係止部327と軸本体325との間に配置され、スロット330aは、軸本体325に遠い側の前端面に形成されている。この場合には、ギア係止部の大きさがギア支持部と同じになるが、スロットによりギア係止部の直線部と係合するので、スロットと直線部との隙間を可及的に小さくでき、従動ギアとトラバースカム軸との間の回転方向のガタツキを簡素な機械加工により抑えることができる。
【0055】
(E)ギア装着構造20(又は120)において、スロット30a(又は130a)の幅Wは、芯出し部29(又は129)の内径D2を超えた長さである。スロットの幅が芯出し部の内径を超えているので、スロットと芯出し部とが干渉しなくなり、これらの機械加工が容易である。
【0056】
(F)ギア装着構造20(又は220,320)において、従動ギア23(223,323)は、ギア部28(228,328)の後端面(又は前端面)から突出して形成され、後端面(又は前端面)を有するボス部
31(231,331)をさらに有し、スロット30a(又は230a,330a)は、ボス部の後端面(又は前端面)に形成されている。この場合には、スロットが突出するボス部に形成されているので、スロットを機械加工により形成しても従動ギアのギア部に影響を与えなくなる。
【0057】
(G)ギア装着構造20(又は120,220,320)において、一対の円弧部27a(127a,227a,327a)は、ギア支持部26(226,326)と同一の外径又はギア支持部を超える外径を有する。この場合には、ギア支持部の外径以上の外径の円弧部で対向部を構成しているので、対向部及び直線部の形成が容易である。
【0058】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
(a)前記実施形態では、釣り用リールの往復移動機構としてスピニングリールのオシレーティング機構を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、両軸受リールのレベルワインド機構及びスピンキャストリールのオシレーティング機構にも本発明を適用できる。
【0060】
(b)前記実施形態では、従動ギアがピニオンギアに直接噛み合っているが、従動ギアが減速機構を介してピニオンギアに噛み合う構成にも本発明を適用できる。
【0061】
(c)前記実施形態では、対向部としてトラバースカム軸21の軸芯と同芯に配置された円弧部を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば対向部が直線であってもよい。また、対向部がトラバースカム軸と異なる軸芯を中心とする円弧でもよい。例えば、直線部の間隔を直径とする円弧でもよい。