(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777918
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ジョイントブーツ
(51)【国際特許分類】
F16D 3/84 20060101AFI20150820BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20150820BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
F16D3/84 M
F16D3/84 K
F16J3/04 B
F16J15/52 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-75950(P2011-75950)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-207768(P2012-207768A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(72)【発明者】
【氏名】大下 武範
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−108591(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01273834(EP,A1)
【文献】
特開2010−127407(JP,A)
【文献】
特開2009−085266(JP,A)
【文献】
特表2006−505753(JP,A)
【文献】
特開平11−051185(JP,A)
【文献】
特開2004−092829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/84
F16J 3/04
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに取り付けられる小径側取付部と、アウターケースに取り付けられ前記小径側取付部より大径筒状の大径側取付部と、前記小径側取付部と前記大径側取付部とを連結する蛇腹部とを備え、前記大径側取付部の内周には、径方向内方に張り出した張出部が周方向に複数箇所設けられたジョイントブーツにおいて、
前記張出部と前記蛇腹部とを連結する連結部の内面には、前記張出部より径方向外方に陥没する溝部が形成され、
前記溝部は、その底部に設けられたジョイントブーツの軸方向に延びる平坦面と、前記平坦面の蛇腹部側端部から前記蛇腹部へ向かうほど径方向内方に立ち上がる蛇腹側傾斜面と、前記平坦面の張出部側端部から前記張出部へ向かうほど径方向内方に立ち上がる張出側傾斜面とを備え、
前記連結部は、前記平坦面における肉厚が、前記蛇腹部の肉厚よりも厚いことを特徴とするジョイントブーツ。
【請求項2】
前記張出側傾斜面が、径方向に対する傾斜角度が30°以上60°以下に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のジョイントブーツ。
【請求項3】
前記大径側取付部は、前記張出部以外の肉厚xに対する前記張出部の肉厚yの比y/xが1.9以上3.2以下に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のジョイントブーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトリポートタイプの等速ジョイントなどに用いられる蛇腹状のジョイントブーツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドライブシャフト等に用いられる等速ジョイントの一つとして、トリポートタイ
プのジョイントが知られている。
【0003】
トリポートタイプの等速ジョイントは、例として、
図5,6に示すように、入力側と出力側の一方のシャフト1に、ローラ2を持つ3本のトラニオン3を軸直角方向に突設して構成したトリポート4と、他方のシャフト5の端部に設けたアウターケース6とからなる。アウターケース6は、その内周にトリポート4に対応する軸方向の3本の摺動溝6aを有する。等速ジョイントは、トリポート4のローラ2を摺動溝6aに対して軸方向に摺動可能に嵌め合わせることにより、両シャフト1,5の角度付けを可能にしながら、回転トルクを伝達できるように構成されている。
【0004】
このような等速ジョイントにおいては、ジョイント内部への塵埃や異物の侵入防止のため、あるいはまた封入されているグリースを保持するために、一般に、アウターケース6からトリポート4側のシャフト1の部分を覆うように適度に伸縮や曲げ変形が可能な蛇腹状をなすジョイントブーツ100が装着されている。ジョイントブーツ100は、軸方向の一端部がアウターケース6の外周に嵌着されてリング状バンド等の締付部材7により固定される大径側取付部101として形成され、他端部がトリポート4側のシャフト1の外周にリング状バンド等の締付部材8により固定される小径側取付部102として形成され、大径側取付部101及び小径側筒部102が蛇腹部103により一体に連結されて構成されている。蛇腹部103は、大径側取付部101側から順に、第1谷部105A、第1山部106Aを含む複数(例えば3つ)の谷部と山部とが交互に連続してなる形状に形成されている。
【0005】
図6に示すように、アウターケース6は、内周の摺動溝6aの配置に対応して、外周には周方向に3つの均等配置された凹状部6bを備え、従って、アウターケース6の外周形状は周方向に凹凸形状をなす非円形状に形成されている。そのため、アウターケース6に取り付けられるジョイントブーツ100の大径側取付部101は、その内周形状がアウターケース6の外周形状に対応した非円形状をなしている。すなわち、大径側取付部101の内周には、アウターケース6の凹状部6bに対応して周方向の3箇所において内方に凸状に張り出した張出部104が形成されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−118698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように大径側取付部101の内周から張出部104が張り出している場合、蛇腹部103の屈曲変形時に最も蛇腹部103側に位置する第1谷部105Aが伸縮あるいは曲げ変形するために、大径側取付部101に設けた張出部104と蛇腹部103との連結部分に
図7に示すような径方向外方へ陥没する溝部107が形成されている。この溝部107は、蛇腹部103へ向かうほど径方向内方に立ち上がる蛇腹側傾斜面107aと、張出部104へ向かうほど径方向内方に立ち上がる張出側傾斜面107bとで挟まれた略V字状をなしているため、次のような問題があることが判明した。
【0008】
すなわち、上記形状のジョイントブーツ100では、溝部107がアンダーカット形状となるため、金型を大径側取付部101から抜き取る脱型時に溝部107の底部107cを起点として大径側取付部101を径方向外方に折り曲げながら脱型する。また、アウターケース6からトリポート4側のシャフト1の部分を覆うように装着されたジョイントブーツ100の使用時には、蛇腹部103の屈曲変形に伴って大径側取付部101と蛇腹部103との連結部分に設けられた溝部107の底部107cを起点として大きく折れ曲がることとなる。つまり、溝部107の底部107cには、ジョイントブーツ100の脱型時だけでなくジョイントブーツ100の使用時にも曲げ応力が作用することとなり、ジョイントブーツ100の耐久性が損なわれやすいことが判明した。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、大径側取付部と蛇腹部との連結部分に設けられた溝部において、金型から脱型する際に曲げ応力が作用する位置と、ジョイントブーツの使用時に曲げ応力が作用する位置を異ならせ、耐久性に優れるジョイントブーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るジョイントブーツは、シャフトに取り付けられる小径側取付部と、アウターケースに取り付けられ前記小径側取付部より大径筒状の大径側取付部と、前記小径側取付部と前記大径側取付部とを連結する蛇腹部とを備え、前記大径側取付部の内周には、径方向内方に張り出した張出部が周方向に複数箇所設けられたジョイントブーツにおいて、前記張出部と前記蛇腹部とを連結する連結部の内面には、
前記張出部より径方向外方に陥没する溝部が形成され、前記溝部は、その底部に設けられたジョイントブーツの軸方向に延びる平坦面と、前記平坦面の蛇腹部側端部から前記蛇腹部へ向かうほど径方向内方に立ち上がる蛇腹側傾斜面と、前記平坦面の張出部側端部から前記張出部へ向かうほど径方向内方に立ち上がる張出側傾斜面とを備え
、前記連結部は、前記平坦面における肉厚が、前記蛇腹部の肉厚よりも厚いことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るジョイントブーツでは、大径側取付部に設けられた張出部と蛇腹部とを連結する連結部の内面に、ジョイントブーツの軸方向に延びる平坦面と、平坦面の蛇腹部側端部から蛇腹部へ向かうほど径方向内方に立ち上がる蛇腹側傾斜面と、平坦面の張出部側端部から張出部へ向かうほど径方向内方に立ち上がる張出側傾斜面とが設けられているため、脱型時には張出側傾斜面と平坦面との境界部分に、使用時には蛇腹側傾斜面と平坦面との境界部分に、それぞれ曲げ応力が異なる位置に作用することとなり、耐久性に優れる。
【0012】
また、本発明に係るジョイントブーツにおいて、前記張出側傾斜面が、径方向に対する傾斜角度が30°以上60°以下に設けられてもよく、これにより、金型をジョイントブーツから引き抜く方向に対して張出側傾斜面の傾きを緩やかに設けることができ、脱型しやすくなる。
【0013】
また、本発明に係るジョイントブーツにおいて、前記大径側取付部は、前記張出部以外の肉厚xに対する前記張出部の肉厚yの比y/xが1.9以上3.2以下に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、大径側取付部と前記蛇腹部とを連結する連結部の内周が径方向外方に陥没するジョイントブーツの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るジョイントブーツの断面図である。
【
図2】
図1に示すジョイントブーツを大径側取付部側から見た正面図である。
【
図4】
図1に示すジョイントブーツの斜視図である。
【
図5】従来のジョイントブーツを取り付けたトリポートタイプの等速ジョイントを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の一実施形態に係るジョイントブーツ10は、上記した
図5,6に示す自動車用のトリポートタイプの等速ジョイントに装着されるジョイントブーツであり、一端側の小径側取付部12と、この小径側取付部12と離間して同軸的に配置された他端側の大径側取付部14と、小径側取付部12と大径側取付部14とを一体に連結する中空状の蛇腹部16とを備えており、インジェクション成形などの公知の成形方法により一体に形成されている。
【0018】
小径側取付部12は、トリポート4側のシャフト1に外嵌固定される短円筒状をなしており、外周面にリング状の締付部材8を受け入れるための周方向に延びる固定用凹部18が設けられている。小径側取付部12の内周には全周にわたって環状のシール突起13が設けられており、シール突起13において小径側取付部12とシャフト1との面圧を高めてシール性を高めている。
【0019】
大径側取付部14は、アウターケース6に外嵌固定される短円筒状をなしており、小径側取付部12と同軸的に、即ち共通の中心軸Oを持つように配置されている。大径側取付部14にも、外周面にはリング状の締付部材7を受け入れるための周方向に延びる固定用凹部20が設けられている。また、大径側取付部14の内周には全周にわたって環状のシール突起15が設けられており、シール突起15において大径側取付部14とアウターケース6との面圧を高めてシール性を高めている。
【0020】
蛇腹部16は、両端に口径差のある断面円形の蛇腹体であり、その内部にグリース封入空間を形成する。蛇腹部16は、大径側取付部14側から順に、第1谷部21A、第1山部23Aを含む複数(例えば3つ)の谷部21A,21B,21Cと複数(例えば3つ)山部23A,23B,23Cとが交互に連なり、大径側取付部14から小径側取付部12へと順次に小径となるテーパ状に形成されている。
【0021】
図2に示すように、大径側取付部14は、外周形状が円形状をなしており、内周形状が周方向の複数箇所(例えば3箇所)において内方に湾曲面状に張り出した非円形状をなしている。これにより、大径側取付部14には、アウターケース6の円弧状の外周面に対向配置される円弧状部22と、アウターケース6の凹状部6bに嵌合される張出部24とが周方向に交互に設けられている。本実施形態では、円弧状部22の肉厚xに対する張出部24の肉厚(つまり、最も内方に突出する位置における張出部24の肉厚)yの比y/xが1.9〜3.2の範囲内に設定されている。
【0022】
そして、大径側取付部14に設けられた張出部24と蛇腹部16とを連結する連結部26の内側には、径方向外方へ陥没する溝部28が形成されている。溝部28の底部は中心軸O方向に沿って延びる平坦面28cをなしており、平坦面28cの蛇腹部側端部から蛇腹部16へ向かうほど径方向内方に立ち上がる蛇腹側傾斜面28aが設けられ、また、平坦面28cの張出部側端部から張出部24へ向かうほど径方向内方に立ち上がる張出側傾斜面28bが設けられている。これにより、連結部26の内側には、蛇腹側傾斜面28aと平坦面28cと張出側傾斜面28bからなる溝部28が連結部26の内側に設けられている。
【0023】
ここで、張出側傾斜面28bは、径方向rに対する傾斜角度θが30°〜60°の範囲であることが好ましい。張出側傾斜面28bの傾斜角度θが30°より小さくなると、金型をジョイントブーツ10から引き抜く方向に対する張出側傾斜面28bの傾きが大きくなり脱型しにくく成形性が損なわれ、傾斜角度θが60°より大きくなると、大径側取付部14の中心軸O方向の長さLが短くなりアウターケース6との間のシール性が損なわれる。
【0024】
以上のような構成を備えた本実施形態のジョイントブーツ10では、大径側取付部14に設けられた張出部24と蛇腹部16とを連結する連結部26の内側に径方向外方へ陥没する溝部28を設けたので、蛇腹部16の屈曲変形時に谷部21B,21C及び山部23A,23B,23Cだけでなく、最も大径側取付部14側に設けられた第1谷部21Aも伸縮あるいは曲げ変形することとなり、屈曲しやすさを確保することができる。
【0025】
また、連結部26に設けられた溝部28の底部が、中心軸O方向に沿って延びる平坦面28cをなしており、蛇腹部16に繋がる蛇腹側傾斜面28aと張出部24に繋がる張出側傾斜面28bとが平坦面28cの異なる位置で連結されているため、大径側取付部14を径方向外方に折り曲げながら金型を溝部28より脱型するジョイントブーツ10を脱型時と、蛇腹部16が屈曲変形するジョイントブーツ10の使用時とで、それぞれ異なる位置に曲げ応力が作用することとなり、ジョイントブーツ10の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
10…ジョイントブーツ
12…小径側取付部
13…シール突起
14…大径側取付部
15…シール突起
16…蛇腹部
18…固定用凹部
20…固定用凹部
21A…第1谷部
22…円弧状部
23A…第1山部
24…張出部
26…連結部
28…溝部
28a…蛇腹側傾斜面
28b…張出側傾斜面
28c…平坦面
O…中心軸