(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、比較例1に係る通信モジュールについて説明する。
図1は、比較例1に係る通信モジュールの断面模式図の例である。
図2(a)は、比較例1に係る通信モジュールに備わる第1分波器の送信フィルタの断面模式図の例であり、
図2(b)は、第1分波器の受信フィルタの断面模式図の例である。
図1を参照に、比較例1に係る通信モジュールは、プリント基板200上に実装された2つの分波器、第1分波器220と第2分波器230とを有する。第1分波器220の送受信帯域と第2分波器230の送受信帯域とは互いに異なる。
【0020】
第1分波器220は、基板202上に実装された第1送信フィルタ222と第1受信フィルタ224とを有する。第1送信フィルタ222と第1受信フィルタ224とは別々のチップで設けられ、封止部204により封止されている。第1送信フィルタ222と第1受信フィルタ224とは、例えば弾性表面波フィルタである。
図2(a)を参照に、第1送信フィルタ222は、圧電基板206上にIDT電極208とその両側に反射電極210とが設けられている。第1送信フィルタ222のIDT電極208と反射電極210とは、例えば圧電基板206側からTi、Al−1%Cuが順に積層された2層構造の電極である。
図2(b)を参照に、第1受信フィルタ224も同様に、圧電基板206上にIDT電極208と反射電極210とが設けられている。第1受信フィルタ224のIDT電極208と反射電極210とは、例えばAl−1%Cuの単層構造の電極である。なお、Al−1%Cuとは、AlにCuが1重量%混合した合金をいう。
【0021】
第2分波器230は、基板202上に実装された第2送信フィルタ232と第2受信フィルタ234とを有する。第2送信フィルタ232と第2受信フィルタ234とは別々のチップで設けられ、封止部204により封止されている。第2送信フィルタ232と第2受信フィルタ234とは、例えば弾性表面波フィルタである。第2送信フィルタ232及び第2受信フィルタ234の断面模式図は、第1送信フィルタ222及び第1受信フィルタ224と同様であり、
図2(a)及び
図2(b)に示しているため、ここでは説明を省略する。
【0022】
送信フィルタは高耐電力であることが求められる。このため、第1送信フィルタ222と第2送信フィルタ232とのIDT電極は、高耐電力を実現可能とすべく、TiとAl−1%Cuとの2層構造の電極を採用する。一方、受信フィルタは送信フィルタほど高耐電力を求められていない。このため、第1受信フィルタ224と第2受信フィルタ234とのIDT電極は、低損失となるよう電気抵抗を低くすべく、Al−1%Cuの単層構造の電極を採用する。
【0023】
比較例1に係る通信モジュールによれば、第1分波器220と第2分波器230とにおいて、送信フィルタは高耐電力を実現でき、受信フィルタは低電気抵抗による低通過損失を実現できる。また、弾性表面波フィルタは、周波数帯によってIDT電極の最適な膜厚が異なるが、第1分波器220と第2分波器230とで送信フィルタ及び受信フィルタをそれぞれ別チップで設けているため、IDT電極を最適な厚さにできる。しかしながら、第1分波器220と第2分波器230とにおいて、送信フィルタと受信フィルタとを別々に製造し、且つ別々に実装するため、製造・実装工程が増え、コストが増大してしまう。
【0024】
次に、比較例2に係る通信モジュールについて説明する。
図3は、比較例2に係る通信モジュールの断面模式図の例である。
図4は、比較例2に係る通信モジュールに備わる第1分波器の送受信チップの断面模式図の例である。
図3を参照に、比較例2に係る通信モジュールは、第1分波器220と第2分波器230とにおいて、送信フィルタと受信フィルタとが1チップ化されている(以下において、送信フィルタと受信フィルタとが1チップ化されたものを送受信チップと称す)点で、比較例1に係る通信モジュールと異なる。第1分波器220の送受信チップを第1送受信チップ226と称し、第2分波器230の送受信チップを第2送受信チップ236と称す。
【0025】
図4を参照に、第1送受信チップ226は、単一の圧電基板206上に、送信フィルタのIDT電極208Aと反射電極210A及び受信フィルタのIDT電極208Bと反射電極210Bが設けられている。この場合、送信フィルタのIDT電極208Aと受信フィルタのIDT電極208Bとは一般的に同時に形成されることから、送信フィルタのIDT電極208Aと受信フィルタのIDT電極208Bとは、同じ材料且つ同じ膜厚となる。なお、第2送受信チップ236についても、第1送受信チップ226と同様の断面模式図であり、
図4に示しているため、ここでは説明を省略する。
【0026】
送信フィルタは高耐電力であることが求められ、これはアンテナ分波器にとって必須の要件である。したがって、第1送受信チップ226と第2送受信チップ236とにおいて、送信フィルタのIDT電極208Aは、高耐電力を実現可能とすべく、TiとAl−1%Cuとの2層構造の電極を採用する。また、受信フィルタのIDT電極208Bは送信フィルタのIDT電極208Aと同時に形成されることから、受信フィルタのIDT電極208Bも、TiとAl−1%Cuとの2層構造の電極となる。
【0027】
比較例2に係る通信モジュールによれば、送信フィルタと受信フィルタとが1チップ化され、且つ送信フィルタと受信フィルタとのIDT電極が同時に形成されるため、製造・実装工程を簡略化することができる。また、第1分波器220と第2分波器230とにおいて、送信フィルタは高耐電力を実現できる。しかしながら、受信フィルタのIDT電極208BもTiとAl−1%Cuとの2層構造の電極となるため、比較例1のように受信フィルタのIDT電極をAl−1%Cuの単層構造の電極とした場合に比べて、電気抵抗が高くなり、通過損失が悪化してしまう。
【0028】
次に、比較例3に係る通信モジュールについて説明する。比較例3に係る通信モジュールの断面模式図は、比較例2に係る通信モジュールの断面模式図と同じであり、
図3で説明しているので、ここでは説明を省略する。
図5は、比較例3に係る通信モジュールに備わる第1分波器の送受信チップの断面模式図の例である。なお、第2分波器の送受信チップについても、第1分波器の送受信チップと同様の断面模式図であるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
図5を参照に、第1送受信チップ226は、送信フィルタのIDT電極208A及び反射電極210Aが、TiとAl−1%Cuとの2層構造の電極であり、受信フィルタのIDT電極208B及び反射電極210Bが、Al−1%Cuの単層構造の電極である点で、比較例2に係る通信モジュールと異なる。
【0030】
図6(a)から
図7(c)は、第1送受信チップ226の製造方法を示す断面模式図の例である。
図6(a)を参照に、圧電基板206上に、例えばスパッタ法を用いて、Ti膜212とAl−1%Cu膜214とを順に成膜する。
図6(b)を参照に、Al−1%Cu膜214上にレジスト216を形成し、レジスト216のパターニングを行う。このとき、送信フィルタのIDT電極208A及び反射電極210Aとなるべき領域が保護されるように、レジスト216のパターニングを行う。
【0031】
図6(c)を参照に、レジスト216をマスクとして、Ti膜212とAl−1%Cu膜214とに対してエッチングを行う。これにより、送信フィルタのIDT電極208Aと反射電極210Aとが形成される。また、受信フィルタの領域においては、Ti膜212とAl−1%Cu膜214とが全て除去されて、圧電基板206の表面が露出する。
【0032】
図7(a)を参照に、圧電基板206、IDT電極208A、及び反射電極210Aの上にレジスト216を形成し、レジスト216のパターニングを行う。このとき、圧電基板206上であって受信フィルタのIDT電極208Bと反射電極210Bとが形成されるべき領域が露出するように、レジスト216のパターニングを行う。
【0033】
図7(b)を参照に、圧電基板206上及びレジスト216上に、例えば蒸着法を用いて、Al−1%Cu膜214を成膜する。
図7(c)を参照に、リフトオフをすることにより、レジスト216及びレジスト216上のAl−1%Cu膜214を除去する。これにより、受信フィルタのIDT電極208Bと反射電極210Bとが形成される。以上により、第1送受信チップ226が製造される。なお、受信フィルタのIDT電極208Bと反射電極210Bとをエッチング法によって形成してもよく、また、送信フィルタのIDT電極208Aと反射電極210Aとをリフトオフ法によって形成してもよい。
【0034】
比較例3に係る通信モジュールによれば、送信フィルタと受信フィルタとが1チップ化されているため、実装工程を簡略化することができる。また、第1分波器220と第2分波器230とにおいて、送信フィルタは高耐電力を実現でき、受信フィルタは低電気抵抗による低通過損失を実現できる。しかしながら、
図6(a)から
図7(c)で説明したような製造工程を経るため、製造工数が多くなりコストが増大してしまう。
【0035】
そこで、上記事情を鑑みて、コストを増大させることなく、送信フィルタの高耐電力と受信フィルタの低通過損失とを実現することが可能なアンテナ分波器を備える通信モジュールについて説明する。
【実施例1】
【0036】
図8は、実施例1に係る通信モジュールを用いた無線部の構成を示すブロック図の例である。
図8を参照に、無線部は、アンテナ10と、アンテナスイッチ12と、実施例1に係る通信モジュール14と、パワーアンプ16と、ローノイズアンプ18と、フィルタ20及び21と、RFIC22と、を有する。実施例1に係る通信モジュール14は、第1分波器40と第2分波器50とを有する。第1分波器40は、第1送信フィルタ42と第1受信フィルタ44とを有し、第2分波器50は、第2送信フィルタ52と第2受信フィルタ54とを有する。第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とは、例えばラダー型の弾性表面波フィルタであり、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とは、例えばダブルモード結合型の弾性表面波フィルタである。
【0037】
第1分波器40の送受信帯域と第2分波器50の送受信帯域とは互いに重ならずに異なる。即ち、第1送信フィルタ42の送信帯域と第2送信フィルタ52の送信帯域とは互いに重ならずに異なり、第1受信フィルタ44の受信帯域と第2受信フィルタ54の受信帯域とは互いに重ならずに異なる。例えば、第1分波器40は、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式におけるバンド5の分波器であり、第2分波器50は、WCDMA方式におけるバンド8の分波器である。つまり、第1送信フィルタ42の送信帯域は824〜849MHzで、第1受信フィルタ44の受信帯域は869〜894MHzである。第2送信フィルタ52の送信帯域は880〜915MHzで、第2受信フィルタ54の受信帯域は925〜960MHzである。
【0038】
第1分波器40と第2分波器50とはそれぞれアンテナ端子(Band5及びBand8)を介して、アンテナスイッチ12に接続する。アンテナスイッチ12は、アンテナ10に接続している。これにより、アンテナスイッチ12にて、第1分波器40と第2分波器50とのうちアンテナ10に電気的に接続する分波器を選択できる。
【0039】
第1送信フィルタ42及び第2送信フィルタ52は、パワーアンプ16とフィルタ20とを介してRFIC22に接続している。第1送信フィルタ42に接続するフィルタ20は、第1送信フィルタ42の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。第2送信フィルタ52に接続するフィルタ20は、第2送信フィルタ52の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。
【0040】
第1受信フィルタ44及び第2受信フィルタ54は、ローノイズアンプ18とフィルタ21とを介してRFIC22に接続する。第1受信フィルタ44に接続するフィルタ21は、第1受信フィルタ44の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。第2受信フィルタ54に接続するフィルタ21は、第2受信フィルタ54の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。
【0041】
ここで、WCDMAの送受信信号の送受信について説明する。RFIC22は、高周波数の送信信号をフィルタ20に出力する。フィルタ20は、送信信号をフィルタリングし、パワーアンプ16に出力する。パワーアンプ16は、送信信号を増幅し、第1分波器40(又は第2分波器50)に出力する。第1分波器40(又は第2分波器50)は、送信信号をフィルタリングし、アンテナスイッチ12のアンテナ端子に出力する。アンテナスイッチ12は、アンテナ端子に受信信号を出力する。第1分波器40(又は第2分波器50)は、受信信号をフィルタリングし、ローノイズアンプ18に出力する。ローノイズアンプ18は、受信信号を増幅し、フィルタ21に出力する。フィルタ21は、受信信号をフィルタリングし、RFIC22に出力する。フィルタ21は、平衡信号を出力してもよい。このように、第1分波器40及び第2分波器50それぞれの送信フィルタは、RFIC22から出力された送信信号を通過させるが、アンテナ端子に入力された受信信号は通過させない。また、第1分波器40及び第2分波器50それぞれの受信フィルタは、アンテナ端子に入力された受信信号を通過させるが、RFIC22から出力された送信信号は通過させない。
【0042】
図9は、実施例1に係る通信モジュール14の断面模式図の例である。
図9を参照に、実施例1に係る通信モジュール14は、プリント基板24上に、送信パッケージ46と受信パッケージ56とが実装されている。送信パッケージ46は、送信チップ48が、例えばAuからなるバンプ26を用いて、例えばHTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)からなる基板28上にフリップチップ実装されている。同様に、受信パッケージ56は、受信チップ58が、バンプ26を用いて、基板28上にフリップチップ実装されている。送信チップ48と受信チップ58とは、例えばモールド樹脂からなる封止部30によって封止されている。なお、基板28は、HTCC以外の基板を用いても良く、例えばLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)からなる基板やプリント基板を用いてもよい。また、送信チップ48と受信チップ58とは、モールド樹脂の代わりに、送信チップ48と受信チップ58の上に例えば樹脂からなる天板を設けて封止してもよい。
【0043】
次に、送信チップ48と受信チップ58とについて説明する。
図10(a)は、送信チップ48の断面模式図の例であり、
図10(b)は、受信チップ58の断面模式図の例である。
図10(a)を参照に、送信チップ48は、例えばLT(タンタル酸リチウム)又はLN(ニオブ酸リチウム)からなる単一の圧電基板32上に、第1送信フィルタ42のIDT電極34と反射電極36及び第2送信フィルタ52のIDT電極34と反射電極36が設けられている。反射電極36は、弾性波の伝搬方向におけるIDT電極34の両側に設けられている。IDT電極34及び反射電極36は、例えば圧電基板32側からTi、Al−1%Cuが順に積層された2層構造をしている。IDT電極34及び反射電極36の膜厚は、例えばTiが160nmでAl−1%Cuが210nmの計370nmである。このように、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34は、単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ層数且つ同じ膜厚で設けられている。
【0044】
弾性表面波フィルタにおいては、周波数によってIDT電極の最適な膜厚が異なる。第1送信フィルタ42の送信帯域は824〜849Mzであり、第2送信フィルタ52の送信帯域は880〜915MHzであることから、厳密には、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とで、IDT電極34の最適な膜厚は異なる。しかしながら、第1送信フィルタ42の送信帯域と第2送信フィルタ52の送信帯域は近接しており、IDT電極の最適な膜厚も近いため、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34を同じ膜厚で形成できる。なお、この場合、第1送信フィルタ42の送信帯域に対するIDT電極の最適な膜厚と第2送信フィルタ52の送信帯域に対するIDT電極の最適な膜厚との平均値を、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34の膜厚とすることが好ましい。
【0045】
図10(b)を参照に、受信チップ58は、例えばLT又はLNからなる単一の圧電基板32上に、第1受信フィルタ44のIDT電極34と反射電極36及び第2受信フィルタ54のIDT電極34と反射電極36が設けられている。反射電極36は、弾性波の伝搬方向におけるIDT電極34の両側に設けられている。IDT電極34及び反射電極36は、例えばAl−1%Cuの単層構造をしている。IDT電極34及び反射電極36の膜厚は、例えばAl−1%Cuが372.5nmである。このように、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34は、単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ層数且つ同じ膜厚で設けられている。
【0046】
第1受信フィルタ44の受信帯域(869〜894MHz)と第2受信フィルタ54の受信帯域(925〜960MHz)とは近接している。このため、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34の最適な膜厚が近く、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34を同じ膜厚で形成できる。なお、この場合、第1受信フィルタ44の受信帯域に対するIDT電極の最適な膜厚と第2受信フィルタ54の受信帯域に対するIDT電極の最適な膜厚との平均値を、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34の膜厚とすることが好ましい。
【0047】
次に、送信チップ48の製造方法について説明する。なお、受信チップ58についても同様の製造方法により製造できるため、ここでは受信チップ58の製造方法については説明を省略する。
図11(a)から
図11(c)は、送信チップ48の第1の製造方法を示す断面模式図の例である。
図11(a)を参照に、圧電基板32上に、例えばスパッタ法を用いて、Ti膜60とAl−1%Cu膜62とを順に成膜する。
【0048】
図11(b)を参照に、Al−1%Cu膜62上にレジスト64を形成し、レジスト64のパターニングを行う。このとき、第1送信フィルタ42のIDT電極34及び反射電極36と第2送信フィルタ52のIDT電極34及び反射電極36となるべき領域が保護されるように、レジスト64のパターニングを行う。
【0049】
図11(c)を参照に、レジスト64をマスクとして、Ti膜60とAl−1%Cu膜62とをエッチングする。これにより、第1送信フィルタ42のIDT電極34及び反射電極36と第2送信フィルタ52のIDT電極34及び反射電極36とが、単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ層数且つ同じ膜厚で同時に形成される。
【0050】
図12(a)から
図12(c)は、送信チップ48の第2の製造方法を示す断面模式図の例である。
図12(a)を参照に、圧電基板32上にレジスト64を形成し、レジスト64のパターニングを行う。このとき、第1送信フィルタ42のIDT電極34及び反射電極36と第2送信フィルタ52のIDT電極34及び反射電極36とが形成されるべき領域の圧電基板32が露出するように、レジスト64のパターニングを行う。
【0051】
図12(b)を参照に、圧電基板32上及びレジスト64上に、例えば蒸着法を用いて、Ti膜60とAl−1%Cu膜62とを順に成膜する。
図12(c)を参照に、リフトオフをすることにより、レジスト64とレジスト64上のTi膜60及びAl−1%Cu膜62とを除去する。これにより、第1送信フィルタ42のIDT電極34及び反射電極36と第2送信フィルタ52のIDT電極34及び反射電極36とが、単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ層数且つ同じ膜厚で同時に形成される。
【0052】
図9に戻り、プリント基板24と基板28とには内部配線38が設けられていて、送信チップ48と受信チップ58とは、バンプ26を介して内部配線38に電気的に接続する。プリント基板24の裏面には、内部配線38に電気的に接続し、外部回路との接続に使用される接続端子39が設けられている。外部回路から接続端子39に送信信号が入力されると、送信信号は内部配線38を介して送信チップ48に伝搬される。また、受信チップ58から受信信号が出力されると、受信信号は、内部配線38を介して接続端子39に伝搬される。
【0053】
以上説明してきたように、実施例1に係る通信モジュール14によれば、
図8のように、送信帯域同士が互いに重ならずに異なり且つ受信帯域同士が互いに重ならずに異なる2つの分波器、第1分波器40と第2分波器50とを備える。そして、
図10(a)のように、第1分波器40と第2分波器50との送信フィルタである第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34が、単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられている。
図10(b)のように、第1分波器40と第2分波器50との受信フィルタである第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34が、単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられている。
【0054】
このように、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とを1チップ化して送信チップ48とし、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とを1チップ化して受信チップ58とすることで、比較例1の場合と比べて、実装工程を簡略化することができる。また、
図11(a)から
図11(c)及び
図12(a)から
図12(c)で説明したように、送信チップ48と受信チップ58の製造は、
図6(a)から
図7(c)で説明した第1送受信チップ226の製造に比べて、少ない製造工数によって製造することができる。これらのことから、実装コスト及び製造コストを抑えることができる。
【0055】
また、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とを1チップ化し、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とを1チップ化することで、送信フィルタと受信フィルタとでIDT電極の材料、層数、膜厚等を異ならせることができる。即ち、送信フィルタのIDT電極を、高耐電力を実現すべく、例えばTiとAl−1%Cuとの2層構造とし、受信フィルタのIDT電極を、低電気抵抗を実現すべく、例えばAl−1%Cuの単層構造とすることができる。このため、送信フィルタの高耐電力と受信フィルタの低通過損失とを実現することができる。
【0056】
以上のことから、実施例1によれば、コストを増大させることなく、高耐電力且つ低通過損失のアンテナ分波器を有する通信モジュールを得ることができる。
【0057】
また、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とをまとめて送信チップ48とし、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とをまとめて受信チップ58とすることで、送信フィルタと受信フィルタとを分離して配置できる。これにより、送信フィルタと受信フィルタとの間のアイソレーション特性を改善することができる。
【0058】
第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34は、TiとAl−1%Cuとの2層構造の電極で、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34は、Al−1%Cuの単層構造の電極である場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34は、送信フィルタとして求められる特性を満たすような材料、層数、膜厚等を有する構造の電極である場合が好ましい。第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34は、受信フィルタとして求められる特性を満たすような材料、層数、膜厚等を有する構造の電極である場合が好ましい。具体的には、送信フィルタは高耐電力であることが求められ、受信フィルタは送信フィルタほど高耐電力であることは求められず、低通過損失のために低電気抵抗であることが求められる。したがって、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34は、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34に比べて耐電力が高いことが好ましい。また、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34は、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34に比べて電気抵抗が低いことが好ましい。
【0059】
第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34は、TiとAl−1%Cuとの2層構造の他に、例えばTiの下層とAlを主成分とする上層との2層構造としてもよい。第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34は、Al−1%Cuの単層構造の他には、例えばAlを主成分とする単層構造としてもよい。
【0060】
第1分波器40はWCDMA方式におけるバンド5の分波器で、第2分波器50はバンド8の分波器である場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。それぞれの送信フィルタの送信帯域が近接している場合であれば、送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で形成できる。それぞれの受信フィルタの受信帯域が近接している場合であれば、受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で形成できる。このことから、第1分波器40の送信帯域と第2分波器50の送信帯域とが互いに近接し、第1分波器40の受信帯域と第2分波器50の受信帯域とが互いに近接している場合が好ましい。
【0061】
表1に示すWCDMA方式における周波数帯を参照すると、送信帯域同士が互いに近接し且つ受信帯域同士が互いに近接しているバンドは、バンド1からバンド4及びバンド9との組み合わせ、バンド5、バンド6及びバンド8の組み合わせである。したがって、第1分波器40をバンド1からバンド4及びバンド9のいずれかの分波器とし、第2分波器50をバンド1からバンド4及びバンド9の他のいずれかの分波器とする場合でもよい。また、第1分波器40をバンド5、バンド6及びバンド8のいずれかの分波器とし、第2分波器50をバンド5、バンド6及びバンド8の他のいずれかの分波器とする場合でもよい。
【表1】
【0062】
しかしながら、送受信帯域が近接している場合であっても、受信帯域の比帯域幅((受信帯域の帯域幅/受信帯域の中心値)×100)が大きい場合や、送信帯域と受信帯域との間隔が狭い場合は、単一の圧電基板上にIDT電極を同じ材料且つ同じ膜厚で設けることが難しい場合がある。この点を考慮すると、第1分波器40と第2分波器50とは、バンド1とバンド2、バンド2とバンド3、バンド5とバンド8、のいずれかの組み合わせである場合が好ましい。
【0063】
実施例1では、
図10(a)及び
図10(b)のように、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とのIDT電極34が単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられ、且つ、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とのIDT電極34が単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられている場合を例に示した。言い換えると、互いに送信帯域が異なる第1分波器40と第2分波器50それぞれの送信フィルタのIDT電極が単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられ、且つ、互いに受信帯域が異なる第1分波器40と第2分波器50それぞれの受信フィルタのIDT電極が単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられている場合を例に示した。しかしながら、この場合に限られる訳ではない。第1分波器40と第2分波器50それぞれの送信フィルタのIDT電極及びそれぞれの受信フィルタのIDT電極の少なくとも一方が、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられている場合であればよい。
【0064】
上述したように、第1分波器40と第2分波器50それぞれの送信フィルタのIDT電極が、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられるには、第1分波器40と第2分波器50との送信フィルタの送信帯域が互いに近接している場合が好ましい。したがって、表1を参照すると、第1分波器40と第2分波器50との送信フィルタは、WCDMA方式におけるバンド1からバンド4及びバンド9のうちのいずれか2つのバンドの組み合わせ、又はバンド5とバンド6とバンド8のうちのいずれか2つのバンドの組み合わせに係る送信フィルタである場合が好ましい。また、比帯域幅や送信帯域と受信帯域との間隔を考慮すると、第1分波器40と第2分波器50との送信フィルタは、WCDMA方式におけるバンド1とバンド2、バンド2とバンド3、バンド2とバンド4、バンド5とバンド8、のいずれかの組み合わせの送信フィルタである場合が好ましい。
【0065】
同様に、第1分波器40と第2分波器50それぞれの受信フィルタのIDT電極が、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられるには、第1分波器40と第2分波器50との受信フィルタの受信帯域が互いに近接している場合が好ましい。したがって、表1を参照すると、第1分波器40と第2分波器50との受信フィルタは、WCDMA方式におけるバンド1からバンド4及びバンド9のうちのいずれか2つのバンドの組み合わせ、又はバンド5とバンド6とバンド8のうちのいずれか2つのバンドの組み合わせに係る受信フィルタである場合が好ましい。また、比帯域幅や送信帯域と受信帯域との間隔を考慮すると、第1分波器40と第2分波器50との受信フィルタは、WCDMA方式におけるバンド1とバンド2、バンド2とバンド3、バンド1とバンド4、バンド5とバンド8、のいずれかの組み合わせの受信フィルタである場合が好ましい。
【0066】
実施例1では、
図9のように、送信チップ48を有する送信パッケージ46と受信チップ58を有する受信パッケージ56とを、プリント基板24上に実装する場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。例えば送信チップ48と受信チップ58とが直接プリント基板24上に実装されている場合でもよい。
図13は、実施例1の変形例1に係る通信モジュールの断面模式図の例である。
図13を参照に、送信チップ48は、バンプ26を用いて、プリント基板24上に直接フリップチップ実装されている。同様に、受信チップ58は、バンプ26を用いて、プリント基板24上に直接フリップチップ実装されている。送信チップ48と受信チップ58とは、プリント基板24上に設けられた封止部30によって封止されている。
【0067】
実施例1の変形例1によれば、基板28を用いずに済むため、実施例1に比べてコストを削減することができる。また、実施例1に比べて低背化を実現することができる。
【0068】
実施例1では、第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とはラダー型の弾性表面波フィルタで、第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とはダブルモード結合型の弾性表面波フィルタである場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。第1送信フィルタ42と第2送信フィルタ52とがダブルモード結合型の弾性表面波フィルタの場合でもよい。第1受信フィルタ44と第2受信フィルタ54とがラダー型の弾性表面波フィルタの場合でもよい。また、弾性表面波フィルタの他にも、弾性境界波フィルタやラブ波フィルタ等のようなIDT電極を有する弾性波フィルタの場合でもよい。
【実施例2】
【0069】
図14は、実施例2に係る通信モジュールを用いた無線部の構成を示すブロック図の例である。
図14を参照に、無線部は、アンテナ10と、アンテナスイッチ12と、実施例2に係る通信モジュール66と、パワーアンプ16と、ローノイズアンプ18と、フィルタ20及び21と、RFIC22と、GSM(Global System for Mobile Communications)の850MHz帯、900MHz帯、1800MHz帯、1900MHz帯の受信フィルタ68、70、72、及び74と、ローパスフィルタ76及び78と、を有する。ローパスフィルタ76は、GSMの850MHz帯と900MHz帯とに共通の送信フィルタの機能を有し、ローパスフィルタ78は、GSMの1800MHz帯と1900MHz帯とに共通の送信フィルタの機能を有する。
【0070】
実施例2に係る通信モジュール66は、WCDMA方式におけるバンド1の第3分波器80と、バンド2の第4分波器90と、バンド5の第5分波器100と、バンド8の第6分波器110と、を有する。第3分波器80は第3送信フィルタ82と第3受信フィルタ84とを有し、第4分波器90は第4送信フィルタ92と第4受信フィルタ94とを有する。第3送信フィルタ82の送信帯域は1920〜1980MHzで、第3受信フィルタ84の受信帯域は2110〜2170MHzである。第4送信フィルタ92の送信帯域は1850〜1910MHzで、第4受信フィルタ94の受信帯域は1930〜1990MHzである。
【0071】
第5分波器100は第5送信フィルタ102と第5受信フィルタ104とを有し、第6分波器110は第6送信フィルタ112と第6受信フィルタ114とを有する。第5送信フィルタ102の送信帯域は824〜849MHzで、第5受信フィルタ104の受信帯域は869〜894MHzである。第6送信フィルタ112の送信帯域は880〜915MHzで、第6受信フィルタ114の受信帯域は925〜960MHzである。このように、
図14に示す無線部は、WCDMAのバンド1、バンド2、バンド5、及びバンド8並びにGSMの850MHz帯、900MHz帯、1800MHz帯、及び1900MHz帯の送受信が可能な携帯電話端末用の無線部である。
【0072】
第3分波器80、第4分波器90、第5分波器100及び第6分波器110は、それぞれアンテナ端子(Band5、Band8、Band1、及びBand2)を介してアンテナスイッチ12に接続する。また、受信フィルタ68から74は、それぞれのアンテナ端子(GSM 850、GSM 900、GSM 1800、及びGSM 1900)を介してアンテナスイッチ12に接続する。さらに、ローパスフィルタ76及び78は、アンテナ端子(GSM_LB Tx及びGSM_HB Tx)を介してアンテナスイッチ12に接続する。アンテナスイッチ12は、アンテナ10に接続している。これにより、アンテナスイッチ12にて、アンテナ10に電気的に接続するアンテナ端子を選択することができる。
【0073】
第3送信フィルタ82、第4送信フィルタ92、第5送信フィルタ102及び第6送信フィルタ112は、パワーアンプ16とフィルタ20とを介してRFIC22に接続している。第3送信フィルタ82に接続するフィルタ20は、第3送信フィルタ82の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタであり、第4送信フィルタ92に接続するフィルタ20は、第4送信フィルタ92の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。同様に、第5送信フィルタ102に接続するフィルタ20は、第5送信フィルタ102の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタであり、第6送信フィルタ112に接続するフィルタ20は、第6送信フィルタ112の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。
【0074】
第4受信フィルタ94、第5受信フィルタ104及び第6受信フィルタ114は、ローノイズアンプ18とフィルタ21とを介してRFIC22に接続している。第4受信フィルタ94に接続するフィルタ21は、第4受信フィルタ94の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタであり、第5受信フィルタ104に接続するフィルタ21は、第5受信フィルタ104の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。同様に、第6受信フィルタ114に接続するフィルタ21は、第6受信フィルタ114の通過帯域と同じ帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタである。なお、第3受信フィルタ84に関してはローノイズアンプ18及びフィルタ21とを接続させなくてもよい。
【0075】
WCDMAの送受信信号の送受信については、実施例1で説明した送受信と同様であるため、ここでは詳しい説明を省略する。ここで、GSMの送受信信号の送受信について説明する。RFIC22は、高周波数の送信信号をパワーアンプ16に出力する。パワーアンプ16は、送信信号を増幅し、ローパスフィルタ76又は78に出力する。ローパスフィルタ76又は78は、送信信号をフィルタリングし、アンテナスイッチ12のアンテナ端子(GSM_LB Tx又はGSM_HB Tx)に出力する。850MHz帯と900MHz帯との送信信号は、同じアンテナ端子GSM_LB Txに出力され、1800MHz帯と1900MHz帯との送信信号は、同じアンテナ端子GSM_HB Txに出力される。アンテナスイッチ12は、アンテナ端子(GSM 850、GSM 900、GSM 1800又はGSM1900)に受信信号を出力する。受信フィルタ68から74は、受信信号をフィルタリングし、RFIC22に出力する。受信フィルタ68から74は、平衡信号を出力してもよい。RFIC22はローノイズアンプ18を有している。ローノイズアンプ18は、受信信号を増幅する。
【0076】
図15は、実施例2に係る通信モジュールのブロック図の例である。
図15を参照に、バンド1の送受信帯域とバンド2の送受信帯域とは近接している(実施例1の表1参照)。したがって、第3送信フィルタ82と第4送信フィルタ92とのIDT電極を、単一の圧電基板上に同じ材料(例えばTiとAl−1%Cuとの積層)且つ同じ膜厚で設けることができる(
図10(a)の構造を参照)。つまり、第3送信フィルタ82と第4送信フィルタ92とを1チップ化することができる。1チップ化された送信チップを搭載した送信パッケージをバンド1/2送信パッケージ86と称し、バンド1/2送信パッケージ86はプリント基板24上に実装されている。また、第3受信フィルタ84と第4受信フィルタ94とのIDT電極を、単一の圧電基板上に同じ材料(例えばAl−1%Cuの単層)且つ同じ膜厚で設けることができる(
図10(b)の構造を参照)。つまり、第3受信フィルタ84と第4受信フィルタ94とを1チップ化することができる。1チップ化された受信チップを搭載した受信パッケージをバンド1/2受信パッケージ88と称し、バンド1/2受信パッケージ88はプリント基板24上に実装されている。
【0077】
同様に、バンド5の送受信帯域とバンド8の送受信帯域とは近接している(実施例1の表1参照)。したがって、第5送信フィルタ102と第6送信フィルタ112とのIDT電極を、単一の圧電基板上に同じ材料(例えばTiとAl−1%Cuとの積層)且つ同じ膜厚で設けることができる(
図10(a)を参照)。つまり、第5送信フィルタ102と第6送信フィルタ112とを1チップ化することができる。1チップ化された送信チップを搭載した送信パッケージをバンド5/8送信パッケージ96と称し、バンド5/8送信パッケージ96はプリント基板24上に実装されている。また、第5受信フィルタ104と第6受信フィルタ114とのIDT電極を、単一の圧電基板上に同じ材料(例えばAl−1%Cuの単層)且つ同じ膜厚で設けることができる(
図10(b)を参照)。つまり、第5受信フィルタ104と第6受信フィルタ114とを1チップ化することができる。1チップ化された受信チップを搭載した受信パッケージをバンド5/8受信パッケージ98と称し、バンド5/8受信パッケージ98はプリント基板24上に実装されている。
【0078】
また、プリント基板24上には、バンド1/2送信パッケージ86とバンド1/2受信パッケージ88とバンド5/8送信パッケージ96とバンド5/8受信パッケージ98の周囲に、コンダクタやインダクタ等のチップ部品106が実装されている。
【0079】
このように、実施例2に係る通信モジュール66によれば、
図14のように、送信帯域同士が互いに異なり且つ受信帯域同士が互いに異なる4つの分波器、第3分波器80と第4分波器90と第5分波器100と第6分波器110とを備える。そして、
図15のように、4つの分波器のうちの2つの分波器、第3分波器80と第4分波器90との送信フィルタのIDT電極が単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられ、第3分波器80と第4分波器90との受信フィルタのIDT電極が単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられている。また、4つの分波器のうちの2つの分波器、第5分波器100と第6分波器110との送信フィルタのIDT電極が単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられ、第5分波器100と第6分波器110との受信フィルタのIDT電極が単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けられている。これにより、実施例1と同様に、実装工程・製造工程の製造工数を削減でき、コストを低減できる。また、送信フィルタのIDT電極を高耐電力を実現できる膜構成とし、且つ受信フィルタのIDT電極を低電気抵抗を実現できる膜構成とすることができる。よって、実施例2によっても、コストを増大させることなく、高耐電力且つ低通過損失のアンテナ分波器を有する通信モジュールを得ることができる。
【0080】
また、4つの分波器、第3分波器80と第4分波器90と第5分波器100と第6分波器110の中で、少なくとも送信帯域が最も近い2つの分波器、第5分波器100と第6分波器110との送信フィルタのIDT電極を、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることが好ましい。同様に、少なくとも受信帯域が最も近い2つの分波器、第5分波器100と第6分波器110との受信フィルタのIDT電極を、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることが好ましい。
【0081】
図14に示すように、無線部は、GSM 1800MHz帯の受信フィルタ72を備える。受信フィルタ72の受信帯域は、WCDMA方式におけるバンド1とバンド2の分波器である第3分波器80と第4分波器90との受信フィルタの受信帯域と重ならずに異なるが、近接する。このため、第3分波器80と第4分波器90それぞれの受信フィルタのIDT電極と受信フィルタ72のIDT電極とを、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で形成することができる。
図16は、第3分波器80と第4分波器90それぞれの受信フィルタと受信フィルタ72とを1チップ化した受信チップの断面模式図の例である。
図16を参照に、第3分波器80の第3受信フィルタ84のIDT電極34と、第4分波器90の第4受信フィルタ94のIDT電極34と、受信フィルタ72のIDT電極34とが、単一の圧電基板32上に同じ材料且つ同じ膜厚で形成されている。このように、分波器の受信フィルタの受信帯域とは異なる受信帯域を有する受信フィルタを備えている場合、この受信フィルタのIDT電極と、分波器の受信フィルタのIDT電極とを、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けてもよい。
【0082】
実施例1に係る通信モジュール14では2つの分波器を備え、実施例2に係る通信モジュール66では4つの分波器を備えている場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。2つ、3つ、4つ、5つ等、複数の分波器を備えている場合であればよい。また、実施例1及び実施例2では、互いに送信帯域が異なる2つの分波器それぞれに含まれる送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、且つ互いに受信帯域が異なる2つの分波器それぞれに含まれる受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けた場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。通信モジュールに備わる複数の分波器のうちの3つの分波器、4つの分波器など、互いに送信帯域が異なる少なくとも2つの分波器それぞれに含まれる送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、且つ互いに受信帯域が異なる少なくとも2つの分波器それぞれに含まれる受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設ける場合でもよい。また、少なくとも2つの分波器に含まれる送信フィルタのIDT電極は、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、且つ少なくとも2つの分波器に含まれる受信フィルタのIDT電極は、別々の圧電基板上に設ける場合でもよい。反対に、少なくとも2つの分波器に含まれる受信フィルタのIDT電極は、単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、且つ少なくとも2つの分波器に含まれる送信フィルタのIDT電極は、別々の圧電基板上に設ける場合でもよい。
【0083】
図17(a)から
図17(c)は、複数の分波器を備えた通信モジュールのブロック図の例である。
図17(a)を参照に、通信モジュールは、バンド1、バンド2、バンド5及びバンド8の複数の分波器120を備える。バンド1とバンド2の送受信帯域は近接している。このため、バンド1とバンド2とのそれぞれの分波器120の送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることができる。また、バンド5とバンド8の送受信帯域は近接している。このため、バンド5とバンド8とのそれぞれの分波器120の送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることができる。
【0084】
図17(b)を参照に、通信モジュールは、バンド3、バンド1、バンド2、バンド5及びバンド8の複数の分波器120を備える。バンド1からバンド3の送受信帯域は近接する。このため、バンド1とバンド2とバンド3とのそれぞれの分波器120の送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることができる。また、バンド5とバンド8の送受信帯域は近接している。このため、バンド5とバンド8とのそれぞれの分波器120の送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることができる。
【0085】
図17(c)を参照に、通信モジュールは、バンド4、バンド1、バンド2、バンド5及びバンド8の複数の分波器120とGSM 1800MHz帯の受信フィルタ122とを備える。バンド1とバンド2とバンド4の送信帯域は近接する。このため、バンド1とバンド2とバンド4とのそれぞれの分波器120の送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることができる。また、バンド1とバンド2とバンド4とGSM 1800MHz帯との受信帯域は近接する。このため、バンド1とバンド2とバンド4とのそれぞれの分波器120の受信フィルタのIDT電極とGSM 1800MHz帯の受信フィルタ122のIDT電極とを単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることができる。さらに、バンド5とバンド8の送受信帯域は近接している。このため、バンド5とバンド8とのそれぞれの分波器120の送信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設け、受信フィルタのIDT電極を単一の圧電基板上に同じ材料且つ同じ膜厚で設けることができる。なお、
図17(a)から
図17(c)では、各分波器の受信フィルタ及びGSM 1800MHz帯の受信フィルタにマッチング回路124が接続されている場合を示している。
【0086】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。