特許第5777976号(P5777976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777976呼び線の牽引装置及び呼び線の架け渡し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777976
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】呼び線の牽引装置及び呼び線の架け渡し方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   H02G1/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-181902(P2011-181902)
(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公開番号】特開2013-46471(P2013-46471A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高木 伸之
【審査官】 児玉 崇晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−046184(JP,A)
【文献】 特開平02−155409(JP,A)
【文献】 特開昭56−112805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱間に架設されるとともに、一部に障害物が設けられた架空線を張り替える際に、前記架空線の張り替えに先行して、前記電柱間に架け渡される呼び線の牽引装置であって、
内面側に前記架空線を挿通させた状態で、前記架空線に沿って移動可能であるとともに、内面が前記障害物を乗り越え可能な形状に形成され、かつ、一部に前記呼び線の一端を接続させる接続部が設けられる本体と、該本体に設けられるとともに、該本体を前記架空線に沿って移動させる駆動源とを備え、
前記本体は、略半円筒状に形成される半筒部と、該半筒部の一端側に一体に設けられるとともに、先端に行くに従って順次大径となる略半円錐形状の半円錐部とからなることを特徴とする呼び線の牽引装置。
【請求項2】
前記半筒部の開口側には、駆動源支持部が設けられ、該駆動源支持部に前記駆動源が設けられ、前記駆動源支持部と前記駆動源とにより、前記本体の半筒部及び半円錐部の前記架空線上における姿勢が安定した状態に保たれることを特徴とする請求項1に記載の呼び線の牽引装置。
【請求項3】
前記駆動源は、回転可能に設けられるプロペラと、該プロペラを回転させるモータと、該モータの電源とからなることを特徴とする請求項2に記載の呼び線の牽引装置。
【請求項4】
電柱間に架設されるとともに、一部に障害物が設けられた架空線を張り替える際に、前記架空線の張り替えに先行して、前記電柱間に架け渡される呼び線の架け渡し方法であって、
内面側に前記架空線を挿通させた状態で、前記架空線に沿って移動可能であるとともに、内面が前記障害物を乗り越え可能な形状に形成され、かつ、一部に前記呼び線の一端を接続させる接続部が設けられる本体と、該本体に設けられるとともに、該本体を前記架空線に沿って移動させる駆動源とを備え、前記本体は、略半円筒状に形成される半筒部と、該半筒部の一端側に一体に設けられるとともに、先端に行くに従って順次大径となる略半円錐形状の半円錐部とからなる呼び線の牽引装置を用い、
該牽引装置の前記本体の接続部に呼び線の一端を接続し、前記駆動源により前記本体を前記架空線に沿って移動させて、前記架空線の障害物を乗り越えさせることにより、前記呼び線を電柱間に架け渡すことを特徴とする呼び線の架け渡し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼び線の牽引装置及び呼び線の架け渡し方法に関し、特に、電柱間に架設された架空線の張り替えに先行して、電柱間に呼び線を架け渡すのに有効な呼び線の牽引装置及び呼び線の架け渡し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物等の上空を通過した状態で、隣接する2本の電柱間に架け渡されている架空線(例えば、電線、支線等)を張り替える工法として、一方の電柱側で張り替え対象の旧線の一端に新線を接続し、他方の電柱側から旧線の他端を引っ張りながら、一方の電柱側から他方の電柱側に向けて新線を繰り出すことにより、隣接する電柱間に新線を架け渡すことが行われている。
【0003】
この場合、新線を繰り出す一方の電柱側において、例えば、新線が巻き付けられているドラムのブレーキを操作する等の方法によって旧線及び新線の張力を調整し、旧線及び新線の弛みが過大になって建造物等に接触するのを防止している。
【0004】
また、特許文献1には、弛度制御装置を用いて架空線(地線)を張り替える工法が開示されている。
この工法では、隣接する2本の電柱の各々に近接するように2台の高所作業車を配置し、各高所作業車のバケット内に弛度制御装置をそれぞれ設置し、各高所作業車のバケットを各電柱の腕金の上方に位置決めする。
【0005】
そして、2本の電柱間に架設されている旧地線の両端に巻き付けグリップをそれぞれ取り付け、各巻き付けグリップに各バケットの弛度制御装置のドラムに巻き付けたロープのフックをそれぞれ引っ掛け、この状態で旧地線の両端を切断して両電柱間から切り離し、旧地線の両端を両バケットの両弛度制御装置のドラム間で支持する。
【0006】
次に、両弛度制御装置のドラムを回転させて、旧地線の張力、弛度を調整しながら、両高所作業車を操作して、両バケットを所望の方向に移動させることにより、高圧架空配電線との接触を避けながら、旧地線を地上に下ろす。
【0007】
地上においては、旧地線の両端から巻き付けグリップを外し、この巻き付けグリップを新地線の両端に取り付け、両巻き付けグリップに両バケットの弛度制御装置のドラムに巻き付けたロープのフックをそれぞれ引っ掛ける。
【0008】
この状態で、両弛度制御装置のドラムを回転させて、新地線の張力、弛度を調整しながら、旧地線を取り外した場合と逆の手順を辿って、新地線を2本の電柱間に架設する。
【0009】
さらに、架空線を張り替える工法として、張り替え対象の架空線(旧線)に自走機をセットし、この自走機に新線を接続し、この状態で自走機を旧線に沿って走行させることにより、新線を電柱間に架設する工法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−49128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記の何れの工法にあっても、張り替え対象の架空線(旧線)に錆びが生じている場合には、旧線に張力を付加したり、旧線に荷重を付加することにより、旧線が断線するおそれがあり、断線した旧線によって作業者を傷付けたり、建造物等を損傷させたりするおそれがある。
【0012】
また、旧線に沿って自走機を走行させる工法は、張り替え対象の架空線の一部に碍子等の障害物がある場合には、自走機が障害物を乗り越えることができないために適用することができない。
【0013】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、張り替え対象の架空線(旧線)に錆びが発生している場合であっても、旧線が断線して作業者を傷付けたり、建造物等を損傷させたりするおそれがなく、また、張り替え対象の架空線(旧線)に碍子等の障害物があっても、張り替えが可能な呼び線の牽引装置及び呼び線の架け渡し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、電柱間に架設されるとともに、一部に障害物が設けられた架空線を張り替える際に、前記架空線の張り替えに先行して、前記電柱間に架け渡される呼び線の牽引装置であって、内面側に前記架空線を挿通させた状態で、前記架空線に沿って移動可能であるとともに、内面が前記障害物を乗り越え可能な形状に形成され、かつ、一部に前記呼び線の一端を接続させる接続部が設けられる本体と、該本体に設けられるとともに、該本体を前記架空線に沿って移動させる駆動源とを備え、前記本体は、略半円筒状に形成される半筒部と、該半筒部の一端側に一体に設けられるとともに、先端に行くに従って順次大径となる略半円錐形状の半円錐部とからなることを特徴とする。
【0015】
本発明の呼び線の牽引装置によれば、駆動源により、本体を対象の架空線に沿って移動させることにより、本体に接続した呼び線を電柱間に架け渡すことができる。この場合、本体は、内面が架空線の障害物を乗り越えることが可能な形状に形成されているので、具体的には、本体は、略半円筒状に形成される半筒部と、該半筒部の一端側に一体に設けられるとともに、先端に行くに従って順次大径となる略半円錐形状の半円錐部とから構成されているので、本体の半筒部及び半円錐部の内側に対象の架空線を挿通させた状態で、本体を対象の架空線に沿って移動させることにより、半円錐部が対象の架空線の障害物を先に乗り越え、半円錐部に連続する半筒部が続いて障害物を乗り越えることにより、本体の全体が障害物を乗り越えることができる。従って、本体の移動が障害物で阻害されるようなことはなく、呼び線を電柱間に架け渡すことができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記半筒部の開口側には、駆動源支持部が設けられ、該駆動源支持部に前記駆動源が設けられ、前記駆動源支持部と前記駆動源とにより、前記本体の半筒部及び半円錐部の前記架空線上における姿勢が安定した状態に保たれることとしてもよい。
【0019】
本発明の呼び線の牽引装置によれば、駆動源支持部と、駆動源支持部に設けられる駆動源とにより、本体の半筒部及び半円錐部の架空線上における姿勢が安定した状態に保たれることになる。
【0020】
さらに、本発明において、前記駆動源は、回転可能に設けられるプロペラと、該プロペラを回転させるモータと、該モータの電源とからなることとしてもよい。
【0021】
本発明の呼び線の牽引装置によれば、モータを作動させてプロペラを回転させることにより、プロペラの推進力によって本体が対象の架空線に沿って移動することになる。
【0022】
さらに、本発明は、電柱間に架設されるとともに、一部に障害物が設けられた架空線を張り替える際に、前記架空線の張り替えに先行して、前記電柱間に架け渡される呼び線の架け渡し方法であって、内面側に前記架空線を挿通させた状態で、前記架空線に沿って移動可能であるとともに、内面が前記障害物を乗り越え可能な形状に形成され、かつ、一部に前記呼び線の一端を接続させる接続部が設けられる本体と、該本体に設けられるとともに、該本体を前記架空線に沿って移動させる駆動源とを備え、前記本体は、略半円筒状に形成される半筒部と、該半筒部の一端側に一体に設けられるとともに、先端に行くに従って順次大径となる略半円錐形状の半円錐部とからなる呼び線の牽引装置を用い、該牽引装置の前記本体の接続部に呼び線の一端を接続し、前記駆動源により前記本体を前記架空線に沿って移動させて、前記架空線の障害物を乗り越えさせることにより、前記呼び線を電柱間に架け渡すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上、説明したように、本発明の呼び線の牽引装置及び呼び線の架け渡し方法によれば、駆動源により、本体を対象の架空線に沿って移動させることにより、本体に接続した呼び線を電柱間に架け渡すことができる。この場合、本体は、内面が架空線の障害物を乗り越えることが可能な形状に形成されているので、具体的には、本体は、略半円筒状に形成される半筒部と、該半筒部の一端側に一体に設けられるとともに、先端に行くに従って順次大径となる略半円錐形状の半円錐部とから構成されているので、本体の半筒部及び半円錐部の内側に対象の架空線を挿通させた状態で、本体を対象の架空線に沿って移動させることにより、半円錐部が対象の架空線の障害物を先に乗り越え、半円錐部に連続する半筒部が続いて障害物を乗り越えることにより、本体の全体が障害物を乗り越えることができ、本体の移動が障害物で阻害されるようなことはなく、呼び線を電柱間に架け渡すことができる。
従って、対象の架空線を張り替える場合に、例えば、呼び線を電柱間に架け渡した後に、呼び線を利用して、リング工法によって電柱間に本線を架け渡し、本線を利用して電柱間から対象の架空線(旧線)を取り外し、電柱間に新線を架け渡すことができる。
この結果、対象の架空線に錆が発生していても、対象の架空線が断線するようなことはなく、断線した線によって作業者を傷付けたり、建造物等を損傷させたりするようなことはなく、架空線の張り替え作業を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による牽引装置の一実施の形態を示した概略図である。
図2図1の左側面図である。
図3】牽引装置が支線に沿って移動している状態を示した説明図であって、玉碍子が設けられていない支線の部分を移動している状態を示した説明図である。
図4】牽引装置が玉碍子が設けられている支線の部分を移動している状態を示した説明図である。
図5】牽引装置が玉碍子が設けられている支線の部分を移動している状態を示した説明図である。
図6】牽引装置が玉碍子が設けられている支線の部分を移動している状態を示した説明図である。
図7】牽引装置により呼び線を電柱間に架け渡している状態を示した説明図である。
図8】電柱間への呼び線の架け渡しが完了した状態を示した説明図である。
図9】電柱間に本線を架け渡している状態を示した説明図である。
図10】電柱間への本線の架け渡しが完了した状態を示した説明図である。
図11】電柱間から旧支線を取り外し、旧支線の代わりに新支線を架け渡している状態を示した説明図である。
図12】電柱間へ新支線の架け渡しが完了した状態を示した説明図である。
図13】電柱間から本線を取り外している状態を示した説明図である。
図14】電柱間から本線の取り外しが完了した状態を示した説明図である。
図15】リングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1図6には、本発明による呼び線の牽引装置の一実施の形態が示されている。本実施の形態の呼び線の牽引装置1は、電柱20、21間に架設された架空線22(例えば、電線、支線等)の張り替えに適用可能なものであって、特に、架空線22の一部に障害物23(例えば、碍子、接続スリーブ等)が設けられている場合に有効なものである。
なお、本実施の形態においては、電柱20、21間に架設されている、一部に障害物としての絶縁用の玉碍子23が設けられた支線22を対象としている。
【0026】
本実施の形態の呼び線の牽引装置(以下、牽引装置1という。)は、図1及び図2に示すように、内面側に支線22を挿通させた状態で、支線22に沿って移動可能な本体2と、本体2に一体に設けられる駆動源支持部6と、駆動源支持部6に設けられるとともに、本体2を支線22に沿って移動させる駆動源16とを備えている。
【0027】
本体2は、略半円筒状の半筒部3と、半筒部3の一端に一体に設けられるとともに、先端に行くに従って順次大径となる略半円錐状の半円錐部4とから構成され、本体2の半筒部3及び半円錐部4の内面側を支線22が挿通可能に構成されている。
【0028】
本体2は、例えば、塩化ビニル管等の絶縁性を有する材料から形成されるものであって、本実施の形態においては、塩化ビニル管を切断して、半円筒状に形成したものと半円錐状に形成したものとを、接着剤等によって一体に接合することにより、半筒部3と半円錐部4とを一体に形成している。
【0029】
本体2の半筒部3の内径、及び半円錐部4の最小内径は、支線22の一部に設けられる玉碍子23の外形よりも大きく形成されている。また、半円錐部4の最大内径は、本体2の内面側に支線22を挿通させて、半筒状3の内面側に支線22を接触させた状態で、玉碍子23の外形よりも僅かに大きくなるように、設定されている。
【0030】
本体2の半筒部3及び半円錐部4の内面には、低摩擦部材5が貼り付けられ、この低摩擦部材5により、本体2の半筒部3及び半円錐部4と支線22との間の摩擦抵抗が低減され、本体2を支線22に沿って円滑に移動させることができる。
【0031】
低摩擦部材5は、シート状又はテープ状をなすものであって、本体2の半円筒部3及び半円錐部4の内面の全体、又は一部(少なくとも支線22との接触部)に貼り付けられている。低摩擦部材5としては、例えば、フッ素樹脂、ナイロン、ニトリルゴム、シリコーンゴム等からなるシート又はテープが挙げられる。
【0032】
駆動源支持部6は、本体2の半筒部3の長手方向の両端の開口側に、それぞれ一体に設けられる一対の脚部7、7と、両脚部7、7の下面中央部に一体に設けられる取付部11とから構成され、取付部11に駆動源16が取り付けられている。
【0033】
各脚部7は、略コ形状をなすものであって、本体2の半筒部3の開口側の両縁部に一体に設けられる一対の帯板状の縦脚8、8と、両縦脚8、8の下端間に水平に架け渡される帯板状の横脚9とから構成されている。
【0034】
各脚部7の横脚9の両端は、両縦脚8、8間にねじ10を介して切り離し可能に連結され、横脚9を両縦脚8、8から切り離すことにより、本体2の半筒部3及び半円錐部4の内面側に支線22を挿通させることができる。
【0035】
取付部11は、2本の横枠12、12と、2本の縦枠13、13とを四方枠組みして一体に形成したものであって、上側の横枠12が両脚部7、7の両横脚9、9の下面中央部に一体に連結されている。下側の横枠12には、前側の縦枠13よりも水平方向前方に突出する突出部14が一体に設けられている。後側の縦枠13には、呼び線の一端を接続するための接続部15が設けられている。
【0036】
接続部15は、例えば、フック、縦枠13に設けた孔等であって、この接続部15に呼び線25の一端が結び付けられる。接続部15は、上記の構成のものに限らず、呼び線25の一端を接続できる機能を有するものであればよい。呼び線25は、例えば、合成樹脂製のロープであって、本実施の形態では、呼び線25にエスロンロープを用いている。
【0037】
駆動源支持部6と駆動源支持部6に設けられる駆動源16との重量により、本体2の半筒部3及び半円錐部4の支線22上での姿勢が安定した状態に保たれ、本体2の半筒部3及び半円錐部4の開口を下方に向けた状態で、本体2を支線22に沿って移動させることができる。
【0038】
駆動源16は、取付部11の突出部14に取り付けられるモータ17と、モータ17の回転軸に取り付けられるプロペラ18と、取付部11の下側の横枠12に取り付けられるモータ17の電源19とを備え、プロペラ18を回転させるモータ17は、無線による遠隔操作によってON−OFFが制御されている。
【0039】
そして、上記のように構成した本実施の形態の牽引装置1を用いて呼び線25を電柱20、21間に架け渡すには、まず、図3及び図7に示すように、取付部11の接続部15に呼び線25の一端を接続し、一方の電柱20側において、本体2の半筒部3及び半円錐部4の内面側に2本の電柱20、21間に架設されている支線22を挿通させる。この場合、駆動源支持部6と駆動源支持部6に設けられる駆動源16の重量とにより、本体2の半筒部3及び半円錐部4は開口側を下方に向けた姿勢に保たれる。
【0040】
そして、遠隔操作によって駆動源16のモータ17を作動させて、プロペラ18を回転させることにより、プロペラ18の推進力によって牽引装置1全体を支線22に沿って移動させ、牽引装置1を他方の電柱21側に到達させる。
【0041】
この場合、牽引装置1は、支線22の玉碍子23が設けられていない部分においては、図3に示すように、本体2の半筒部3の内面側に支線22が接触した状態で、支線22上を他方の電柱21の方向に移動する。
【0042】
そして、本体2が玉碍子23が設けられている部分に達すると、図4に示すように、半円錐部4の先端側の内面に玉碍子23の上面側が接触し、本体2の進行に伴って玉碍子23の上面側が半円錐部4の内面側を半筒部3の方向に相対的に移動することにより、図5に示すように、本体2の先端がやや上方を向いた状態となり、この状態で本体2が更に進行することにより、図6に示すように、本体2の進行に伴って玉碍子23の上面側が半筒部3の内面側を半筒部3の後端の方向に相対的に移動する。そして、本体2の全体が玉碍子23を乗り越えた後に、図3に示す姿勢に戻り、この状態で他方の電柱21側に到着する。
【0043】
そして、この牽引装置1の本体2に追従して呼び線25の一端が他方の電柱21側に到達し、他方の電柱21側において、作業者が呼び線25の一端を接続部15から取り外すことにより、図8に示すように、呼び線25を2本の電柱20、21間に架け渡すことができる。
【0044】
そして、2本の電柱20、21間に呼び線25を架け渡した後に、図9に示すように、一方の電柱20側において、呼び線25の他端に、複数のリング27を取り付けた本線26の一端を接続し、他方の電柱21側で、作業者が呼び線25の一端を引っ張り、一方の電柱20側で、別の作業者が各リング27の内側に後述する切り離し部を介して張り替え対象の支線(旧支線22)を通しながら本線26を繰り出すことにより、呼び線25を2本の電柱20、21間から取り外し、図10に示すように、呼び線25の代わりに本線26を2本の電柱20、21間に架け渡し、本線26の複数のリング27によって旧支線22を支持する。
【0045】
ここで、各リング27は、図15に示すように、一部が切り離されたリング状の本体28と、本体の一部に一体に設けられる吊環29とから構成され、吊環29の内側に本線26を通すことにより本線26に取り付けられ、また、本体28の切り離し部を介して本体28の内側に旧支線22を通すことにより、各リング27の本体28の内側に旧支線22を挿通させることができる。また、本線26は、例えば、合成樹脂製のロープであって、旧支線22及び後述する新支線24を支持可能な強度を有するものが用いられる。
【0046】
そして、上記のように、2本の電柱20、21間に架け渡した本線26に複数のリング27を介して旧支線22を支持した状態で、図11に示すように、一方の電柱20側において、作業者が旧支線22の一端に新しい支線(新支線24)の一端を接続し、他方の電柱21側で作業者が旧支線22の他端を引っ張り、一方の電柱20側で作業者が新支線24を繰り出すことにより、図12に示すように、2本の電柱20、21間から旧支線22を取り外すとともに、2本の電柱20、21間に新支線24を架け渡す。
【0047】
そして、図13及び図14に示すように、本線26を両電柱20、21間から取り外すことにより、両電柱20、21巻に新支線24を架設することができる。
【0048】
上記のように構成した本実施の形態の牽引装置1にあっては、電柱20、21間に架設されている支線22を張り替える場合に、2本の電柱20,21間に架け渡した本線26の複数のリング27によって旧支線22及び新支線24を支持することができるので、旧支線22及び新支線24に弛みが生じて、2本の電柱20、21間の建造物等に接触するようなことはない。
【0049】
また、旧支線22に弛みが生じるのを防止するために張力を付加する必要がないので、旧支線22に錆びが生じていても、旧支線22が断線して作業者を傷付けたり、電柱20、21間の建造物等を損傷させたりするようなことはなく、支線22、24の張り替え作業を安全に行うことができる。
【0050】
さらに、旧支線22に絶縁用の玉碍子23が設けられていても、玉碍子23によって牽引装置1の移動が阻害されるようなことはなく、玉碍子23を乗り越えて牽引装置1を一方の電柱20側から他方の電柱21側に到達させることができるので、玉碍子23の存在に影響されることなく、2本の電柱20、21間に呼び線25を架け渡す作業、呼び線25を利用して本線26を架け渡す作業、本線26を利用して支線22、24を張り替える作業を安全に、かつ確実に行うことができる。
【0051】
なお、前記の説明においては、本発明による呼び線の牽引措置1を2本の電柱20、21間に架設させた支線22、24の張り替えに適用したが、接続スリーブ等によって接続されている電線の張り替え作業や、一部に障害物が設けられている地線の張り替え作業等に本発明を適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1 牽引装置
2 本体
3 半筒部
4 半円錐部
5 低摩擦部材
6 駆動源支持部
7 脚部
8 縦脚
9 横脚
10 ねじ
11 取付部
12 横枠
13 縦枠
14 突出部
15 接続部
16 駆動源
17 モータ
18 プロペラ
19 電源
20 電柱
21 電柱
22 架空線(旧支線)
23 障害物(玉碍子)
24 新支線
25 呼び線
26 本線
27 リング
28 本体
29 吊環
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15