特許第5777979号(P5777979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777979
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】はんだ合金
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20150827BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20150827BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20150827BHJP
   B23K 35/22 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
   B23K35/26 310A
   C22C13/00
   H05K3/34 512C
   !B23K35/22 310A
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-187975(P2011-187975)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-49073(P2013-49073A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390018577
【氏名又は名称】日本アルミット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】澤村 貞
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 岳夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 由紀雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 和彦
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−254298(JP,A)
【文献】 特開2008−188672(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/105141(WO,A1)
【文献】 特表2009−506203(JP,A)
【文献】 特開2007−331028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素が0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金。
【請求項2】
Cr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選んだ1種の元素を0.5重量%以下含有することを特徴とする請求項に記載のはんだ合金。
【請求項3】
P、GaおよびGeからなる群から選んだ1種または2種以上の元素を合計で0.001〜0.1重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のはんだ合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ag含有率が低いはんだ合金でありながら、強度を向上させたはんだ合金を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、Pbをほとんど含まない、いわゆる鉛フリーはんだ合金として、特許文献1により提案されたSn−Ag−Cuはんだ合金が広く用いられている。
また、非特許文献1により、近年ではAgの価格高騰を受け、Ag含有率を低減させたSn−Ag−Cuはんだ合金も提案されていることが報告されている。
【特許文献1】特許3027441号公報
【非特許文献1】JEITA ETR−7023 第2世代フローはんだ標準化プロジェクト活動成果報告
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年のAg価格高騰を受け、Ag含有率が低いSn−Ag−Cuはんだ合金が提案されているが、安価であるものの、強度が低い課題があった。
そこで、本発明は、Ag含有率が低いはんだ合金でありながら、強度を向上させた鉛フリーはんだ合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
【0005】
また、上記目的を達成するために、本発明のはんだ合金は、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
【0007】
また、鉛フリーはんだ合金の主成分であるSnにAgが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%同時に添加することで、Ag含有率が低いはんだ合金でありながら、強度を向上させることが可能となる。
【0008】
【0009】
上記の如く、本発明の鉛フリーはんだ合金は、その組成中に0.005〜0.1重量%のY、GdおよびDyを含有している点に大きな特徴を有している。上記添加元素がはんだ合金中のSnと金属間化合物を作り、はんだ合金中に点在することで、SnとAgの金属間化合物およびSnとCuの金属間化合物の結晶が粗大化するのを抑制する。これら金属間化合物の結晶が微細なままとどまることにより、機械的強度が向上し、接合強度が向上する。
【0010】
上記組成を採用することで、本発明の鉛フリーはんだ合金は、安価であるものの強度が低いというAg含有率が低いSn−Ag−Cuはんだ合金の弱点を克服し、安定した接合強度を保持できるものとなっている。
【0011】
【0012】
上記Y、GdおよびDyの合計量がはんだ全量の0.005重量%未満である場合、はんだ合金の強度向上は少なく効果が不十分である。また、0.1重量%を超えて添加すると、液相線温度の上昇および酸化によるドロスの発生量を増加させるため、はんだ付け性を低下させることとなり、結果的に接合強度を低下させることとなる。その上、Y、GdおよびDyは希少金属であり、Ag同様に近年価格が高騰しているため、多量に含有させることは好ましくない。
【0013】
Cr、Mn、Fe、CoおよびNiは、はんだ合金の凝固組織の結晶を微細化し、機械的な強度を向上させる。Cr、Mn、Fe、CoおよびNiはごく微量の添加であっても効果が期待できるが、これらの合計量がはんだ全量の0.5重量%以上になると、液相線温度の上昇および酸化によるドロスの発生量を増加させるため、はんだ付け性を低下させることとなり、結果的に接合強度を低下させることとなる。
【0014】
P、GaおよびGeは非常に酸化しやすい元素である。そのため、Y、Gd、DyおよびCr、Mn、Fe、Co、Niが酸化し、ドロスと呼ばれる酸化物になるのを抑制する代替酸化元素としての効果がある。これにより、、Gd、DyおよびCr、Mn、Fe、Co、Niをはんだ合金中に安定してとどめることが可能である。
【0015】
上記P、GaおよびGeからなる群から選んだ1種または2種以上の元素の合計量がはんだ全量の0.001重量%未満である場合、代替酸化元素としての効果が少なく不十分である。また、0.1重量%を超えて添加すると、液相線温度の上昇または展性が減少し脆くなるため、はんだ付け性を低下させる。
【0016】
【0017】
このため、本発明は、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金であり、このはんだ合金は、高価なAgを多量に含有せず、Ag含有率が低いはんだ合金でありながら、接合強度に優れている。
【0018】
【0019】
また、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金に、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選んだ1種の元素を0.5重量%以下含有させることで、上記はんだ合金の接合強度をさらに向上させることができる。
【0020】
【0021】
また、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金、又は上記はんだ合金にCr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選んだ1種の元素を0.5重量%以下含有させたはんだ合金に、P、GaおよびGeからなる群から選んだ1種または2種以上の元素を合計で0.001〜0.1重量%含有させることで、上記はんだ合金中の添加元素をはんだ合金中に安定してとどめることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施例に基づいて説明する。
SnにAg、Cuおよび、Gd、Dyからなる群から選んだ1種の元素を同時に添加したはんだ合金を用いて、プッシュプル試験を実施した。
また、SnにAg、Cuおよび、Gd、Dyからなる群から選んだ1種の元素およびCr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選んだ1種の元素を同時に添加したはんだ合金を用いて、プッシュプル試験を実施した。
【0023】
また、SnにAg、Cu、および、Gd、Dyからなる群から選んだ1種の元素およびP、GaおよびGeからなる群から選んだ1種の元素を同時に添加したはんだ合金を用いて、ドロスの発生量を確認した。
【0024】
プッシュプル試験は、チップ部品搭載用プリント基板にフラックスを塗布し、チップ部品を搭載する銅ランド上に、あらかじめ実施例および比較例のはんだ合金を予備はんだ付けしておいた。その後、あらかじめ予備はんだ付けしておいたはんだ合金の上に3216型チップ部品を搭載し、熱板にてはんだを再溶融させてはんだ付を行った。はんだ付後、プッシュプル試験機により、1mm/分の速度でプリント基板と平行方向にチップ部品を押し込んだ。試験結果を表1に示す。
【0025】
ドロス発生量確認試験は、噴流はんだ槽を用いて、はんだ合金を連続的に噴流させ、1時間おきに発生したドロスを全て回収した。回収したドロスの重量を測定し、各はんだ合金のドロス発生量を確認した。これを6時間繰り返し行った。実施例および比較例のはんだ合金組成を表2に示す。試験結果を表3に示す。
【0026】
(表1) 各はんだ合金におけるプッシュプル試験結果
【表1】
【0027】
(表2) ドロス量確認試験のはんだ合金組成
【表2】
【0028】
(表3) ドロス量確認試験結果
【表3】
【0029】
SnにAgが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%を添加したはんだ合金の接合強度は4.8〜6.4kgfであった。
【0030】
また、SnにAgが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%添加したはんだ合金の接合強度は5.1〜7.7kgfであり、いずれの配合比率においても接合強度が向上していることが確認された。
【0031】
この結果、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金は、接合強度が向上していることが明らかとなった。
【0032】
【0033】
【0034】
また、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金に、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選んだ1種の元素を0.5重量%以下含有するはんだ合金は、接合強度が向上していることが明らかとなった。
【0035】
また、SnにAgを1.0重量%、Cuを3.0重量%、Ceを0.5重量%添加したはんだ合金(比較例6)のドロス発生量の平均は26.37g/時間であった。
【0036】
また、SnにAgを1.0重量%、Cuを3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素を0.1重量%、P、GaおよびGeからなる群から選んだ1種または2種以上の元素を合計で0.001〜0.1重量%添加したはんだ合金のドロス発生量の平均は10.05(実施例241)〜15.59(実施例130)g/時間であり、ドロスの発生量が抑制されていることが確認された。
【0037】
【0038】
【0039】
また、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素が0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金にP、GaおよびGeからなる群から選んだ1種または2種以上の元素を合計で0.001〜0.1重量%含有させたはんだ合金は、ドロスの発生量が抑制されていることが明らかとなった。
【0040】
【0041】
また、Agが0.1〜1.0重量%、Cuが0.5〜3.0重量%、Y、GdおよびDyからなる群から選んだ1種の元素が0.005〜0.1重量%、および残部がSnおよび不可避不純物よりなることを特徴とするはんだ合金、および上記はんだ合金にCr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選んだ1種の元素を0.5重量%以下含有させたはんだ合金に、P、GaおよびGeからなる群から選んだ1種または2種以上の元素を合計で0.001〜0.1重量%含有させたはんだ合金は、ドロスの発生量が抑制されていることが明らかとなった。
【0042】
本発明は、Ag含有率が低いはんだ合金でありながら、接合強度を向上させたはんだ合金であり、やに入りはんだ、ソルダペースト、棒はんだ、および線状はんだとして使用される。