【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
光伝送路中に設置され、光ファイバ素線または光ファイバ心線のいずれか一方の状態にされた光伝送路の被覆除去部を保持する光漏洩部品と、前記光伝送路とは別個の、測定時に光漏洩部品を収納して保持し、その一部と互いに嵌合し、その嵌合状態を安定的に保持する保持構造を具備した光検出器とを備え、
光検出器は、嵌合時のみに光漏洩部品中の被覆除去部の一部を湾曲させることにより形成される光伝送路湾曲部から漏洩する伝送光信号を計測する受光素子を有し、
光漏洩部品および光検出器のいずれか一方に設けられた、嵌合時に光伝送路湾曲部の湾曲形状を形成する湾曲形成部と、
光漏洩部品および光検出器のいずれか一方に設けられた、嵌合時に光伝送路湾曲部を湾曲形成部に押さえ付け、湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させる光ファイバ押さえを備え、
被覆除去部は、両端部が光漏洩部品の長さ方向の両側に構成された一対の光ファイバ固定部に固定されて、一対の光ファイバ固定部間に所定の余長を持って所定の長さで遊動自在に保持され、
光漏洩部品は、湾曲形成部によって形成される光伝送路湾曲部に相当する箇所とその両側の光ファイバ固定部との間に、被覆除去部を光伝送路湾曲部から光ファイバ固定部に導く光ファイバ処理領域を備えていることを特徴とする、光伝送路中を伝搬する光信号の伝送状態を判別する光伝送判別器を構成した。
【0032】
この構成によれば、光ファイバ素線または光ファイバ心線のいずれか一方の状態にされた光伝送路の被覆除去部は、光漏洩部品によって光伝送路中に保持される。光漏洩部品によって保持された被覆除去部は、光信号の伝送状態判別時、光ファイバ押さえによって湾曲形成部に押さえ付けられることで、湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させられ、伝送路湾曲部を形成する。この伝送路湾曲部からは光伝送路を伝搬する光信号が漏洩し、漏洩した光信号は、光伝送路とは別個の光検出器に備えられた受光素子によって計測される。
【0033】
このため、漏洩光の計測は、光ファイバ素線または光ファイバ心線のいずれか一方の状態にされた光伝送路の被覆除去部から漏洩する光信号に対して行われるため、特許文献1や特許文献2等に開示された従来の心線対照用光検出器を単に用いた場合より、光検出効率を大幅に向上させ、かつ安定させることが可能となる。
【0034】
また、光漏洩部品における光伝送路の被覆除去部は、一対の光ファイバ固定部間に所定の予長を持った開放状態で遊動自在に両端が固定され、光伝送路湾曲部が湾曲形成部によって形成される箇所とその両側の光ファイバ固定部との間に光ファイバ処理領域を備えることにより、伝送状態判別時に、被覆除去部で不要な伸張応力、圧縮応力や、局所的な屈曲を生じない状態が安定して確保される。また、伝送状態非判別時における被覆除去部の湾曲半径を一定以上に大きく確保することが可能となり、非判別時の湾曲に依存する光損失増加の発生を安定的に防止することが可能となり、局所的な屈曲を生じない状態が安定して確保される。
【0035】
通常、光ファイバコネクタの内部では光ファイバ素線は固定されていない。これは、光ファイバコネクタの接続時と開放時との光ファイバコネクタ内でのフェルールの位置の僅かな違いにより、光ファイバ心線に圧縮歪みが加わり、局所的な屈曲を生じて、光損失の増加の要因となることを避けるためである。当初の本発明による光漏洩部品では、光ファイバコネクタと同様にその内部で光ファイバ素線を固定せずに試作を行ったが、この場合には測定の繰り返しにより予長が変化し、返って光ファイバ素線の屈曲の要因となることが判明した。そこで、光漏洩部品内部の両側の光ファイバ固定部で、光ファイバ素線の固定を試みた処、光ファイバ素線の屈曲の発生が根本的に抑制された。これにより本発明の光伝送判別器の新規な構成の提案に至った。
【0036】
この結果、特許文献4〜6に開示された技術を光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等に適用するための、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等の詳細な新規な保持構造、光伝送状態判別時のみに漏洩光を発生させ、非判別時には光損失増加を発生させないための新規な構造、検出光が安定するために光検出器に要求される新規な構造、および、長期信頼性に優れた構造を備えた光伝送判別器が提供されることとなる。
【0037】
従って、従来の欠点である、測定値の再現性に乏しく、安定性にも劣っていた特性が改善される。また、伸張応力、屈曲等による伝送損失の増加や断線が克服され、長期信頼性にも優れる。
【0038】
また、本発明は、湾曲形成部が光漏洩部品に備えられ、光ファイバ押さえが光検出器に備えられていることを特徴とする。
【0039】
この構成によれば、湾曲形成部が光漏洩部品に備えられることで、光伝送路の被覆除去部は湾曲形成部と共に光漏洩部品に安定して保持される。このため、伝送状態判別時に、光伝送路湾曲部を湾曲形成部に沿って安定的に湾曲させることが可能となり、挿入損失特性や光信号受信効率を再現性良く、安定化することが可能となる。また、光ファイバ押さえが光検出器に備えられていることで、光伝送判別器の小型化、低価格化が可能になると共に、操作性に優れた光伝送判別器の提供が可能となる。
【0040】
また、本発明は、湾曲形成部および光ファイバ押さえが光検出器に備えられていることを特徴とする。
【0041】
この構成によれば、光漏洩部品によって保持された被覆除去部は、光信号の伝送状態判別時、光検出器に備えられた光ファイバ押さえにより、同じく光検出器に備えられた湾曲形成部に押さえ付けられることで、湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させられる。そして、湾曲した被覆除去部分から漏洩した光信号が、光伝送判別に供される。
【0042】
このように湾曲形成部および光ファイバ押さえが共に光検出器に備えられることで、光伝送システムの光伝送路中に設置される光漏洩部品の構造が単純になり、精密な加工精度が必要とされなくなる。このため、光伝送判別器の性能を維持したまま、更なる低価格化が可能となる。また、光伝送路中に光伝送路の被覆除去部を保持する光漏洩部品を予め設けておくことで、既に光伝送システムに設置されている光漏洩部品を交換することなく、光検出器に備えられた湾曲形成部を交換することにより、湾曲形成部が有する湾曲形状を変更し、光伝送判別器の挿入損失や光信号受信効率等を適宜変更することが可能となる。また、光伝送判別器を光伝送路の中長期的な安定性を監視する光モニターに適用する場合、異なる要求仕様に柔軟に対応することが可能となる。
【0043】
また、本発明では、被覆除去部は、長さが光漏洩部品と光検出器との嵌合時の湾曲形状により決定される長さに設定され、それにより決定される余長を持って光ファイバ固定部間に遊動自在に保持されることを特徴とする。
【0044】
この構成によれば、被覆除去部の予長が最適値に設定されるため、被覆除去部が光ファイバ固定部間に遊動自在に適切に保持固定されることにより、伝送状態判別時に被覆除去部に伸張応力や圧縮応力が生じないことが基本的に保証される。また、余長が必要最小限の長さに決定されるため、伝送状態非判別時に曲げ等により生じる損失の発生が効果的に抑制される。
【0045】
また、本発明は、湾曲形成部の曲率半径が1.5mm以上で、かつ5.5mm以下であることを特徴とする。
【0046】
この構成によれば、測定時に湾曲により伝送路湾曲部に物理的なダメージを与えることなく、伝送路湾曲部で生じる挿入損失の波長依存性を最小限に抑えることが可能となり、例えば波長1.55μmでの挿入損失を0.5dB以下に抑えながら、同時に波長1.31μmでの信号光強度の検出限界を−40dB以下にすることが可能となる。
【0047】
図1は本発明に至った調査結果の1つで、光ファイバ素線を一定の曲率半径で湾曲させた場合の、波長1.55μmでの曲げ損失を基準として、波長1.31μmでの相対的な曲げ損失の曲率半径依存性を測定した実験結果である。全般に波長1.31μmでの曲げ損失は波長1.55μmでの値に比し大幅に小さく、曲率半径が小さい方が波長1.31μmでの挿入損失が波長1.55μmでの挿入損失により近い値を示している。
【0048】
ここで、波長1.55μmでの挿入損失の光伝送に異常を生じない上限値を0.5dBと仮定し、光強度−40dBmの光伝送を高感度受光素子を用いて−80dBmまで光強度を検出できるとした場合、検出効率の最も良い値は−14dB程度なので、必要となる波長1.31μmでの曲げ損失の最低値は0.01dB程度となる。この値を用いて、
図1の調査結果から類推すれば、湾曲による曲率半径は5.5mm以下である必要があると判断される。また、湾曲部の曲率半径の下限は主に光ファイバ心線に物理的なダメージを与えない範囲で規定され、半径1.5mmがほぼ限界と推定される。
【0049】
通常使用される心線対照器における湾曲の曲率半径は約10mm程度あるので、この結果だけから判断しても、通用の心線対照器を活線の判別に使用する場合は測定限界に制限があり、実用的でないと判断される。
【0050】
また、本発明は、光ファイバ処理領域は、湾曲形成部に連続して形成され、嵌合時に被覆除去部が湾曲形成部の湾曲方向と反対に湾曲される光ファイバ折り返し領域と、光ファイバ折り返し領域と光ファイバ固定部との間に形成され、嵌合時に光ファイバ固定部に保持された被覆除去部を光ファイバ固定部から屈曲することなく直線状に保持し、かつ非嵌合時に被覆除去部が湾曲構造を形成する空間の一部となる、所定の長さの光ファイバ整列領域を備えることを特徴とする。
【0051】
この構成によれば、伝送状態判別時における一対の光ファイバ固定部間の被覆除去部は、湾曲形成部と光ファイバ押さえにより強制的に湾曲形成部の湾曲形状に沿った形状に変形させられ、各光ファイバ整列領域における各被覆除去部は直線状に近い状態で保持される。一方、伝送状態非判別時における一対の光ファイバ固定部間の被覆除去部は、それらの応力から解放され、所定の予長を持った状態で両端が固定されているため、特定の曲率で湾曲したまま保持される。この時の湾曲曲率は、光ファイバ整列領域にある被覆除去部分の寄与により、湾曲形成部や光ファイバ折り返し領域での湾曲曲率より十分に大きな曲率となる。もし、光ファイバ整列領域を設けなかった場合を考えると、被覆除去部が湾曲して保持される特定の曲率半径は、測定時の光伝送路湾曲部の曲率半径と光ファイバ折り返し領域での被覆除去部の曲率半径の中間の値を示すことになる。この曲率半径を大きくし、湾曲状態での被覆除去部の長期信頼性の劣化を防止するためには、光ファイバ整列領域の設定が必要となる。
【0052】
従って、光ファイバ整列領域は、伝送状態非判別時に、光漏洩部品内の被覆除去部が過剰な湾曲を受けて光信号の挿入損失を生じさせることを安定的に防止する効果を発揮する。
【0053】
また、本発明は、嵌合時に光伝送路湾曲部が形成する弧の中心角が、嵌合時のその両側の光ファイバ折り返し領域の被覆除去部が形成する弧の各中心角の和に等しいことを特徴とする。
【0054】
この構成によれば、伝送状態判別時における光漏洩部品内の一対の光ファイバ固定部間で、被覆除去部は、湾曲形成部によって中央に形成させられる光伝送路湾曲部の弧の中心角が、この光伝送路湾曲部の両側に光ファイバ折り返し領域によって等しく形成させられる各湾曲部の弧の各中心角の和に等しくなって、湾曲させられる。このため、伝送状態判別時における光漏洩部品内で、光ファイバ折り返し領域での各湾曲部の両外側の光ファイバ固定部付近における被覆除去部は、一直線上に保持される。従って、伝送状態判別時に、光ファイバ固定部付近で被覆除去部に更に屈曲応力が加わることがなく、光損失の余分な増加や光伝送路の物理的な劣化要因が生じなくなる。
【0055】
また、本発明は、遊動自在に固定された光ファイバ固定部間の被覆除去部の非嵌合時における湾曲曲率が、被覆除去部を形成する光ファイバ素線または光ファイバ心線の長期信頼性に規定された曲率で保持され、光ファイバ整列領域の幅はその曲率から換算され、設定されていることを特徴とする。
【0056】
この構成によれば、非測定時の被覆除去部の長期信頼性が確保される。光伝送路に使用される光ファイバは長期信頼性の観点から常時の保持される場合の曲率半径の最小値が規定されており、例えば、従来からある標準的な単一モード光ファイバ素線の場合で30mm、FTTH等に使用される曲げに強い光ファイバ素線の場合で15mmとなっている。従って、本発明による伝送路判別器の光漏洩部品においても非測定時の被覆除去部はこれらの仕様に従った値を守る必要がある。ただし、これらの値は光ファイバの種類等に依存するので、最小曲率半径はこれらの値に限定されるものではない。
【0057】
また、本発明は、光ファイバ押さえは、湾曲形成部と嵌合する領域に、光信号が通過する所定の光通過部材部または隙間として光ファイバ押え隙間部が形成され、かつ各光ファイバ折り返し領域の少なくとも一部と嵌合する構造を有することを特徴とする。
【0058】
この構成によれば、伝送状態判別時に、被覆除去部は、光ファイバ押さえが各光ファイバ折り返し領域の少なくとも一部と嵌合することで、湾曲形成部によってその湾曲形状に沿って湾曲させられ、設計に沿った光挿入損失を発生させると共に、光信号の一部を光伝送路の外部に放射させる。この際、光ファイバ押さえ部が湾曲形成部と嵌合する領域に、光信号が通過する所定の光通過部材部または隙間として光ファイバ押え隙間部が形成され、光伝送路湾曲部から漏洩する光信号を遮断しないため、湾曲形成部に当接する被覆除去部から光伝送路の外部に放射された光信号は光ファイバ押さえ部に遮られることなく、光検出器の受光素子で効率的に計測される。
【0059】
また、その際、光ファイバ押さえが各光ファイバ折り返し領域の少なくとも一部と嵌合することで、光ファイバ押さえが湾曲形成部と各光ファイバ折り返し領域全体の光ファイバをこれらの形状に沿って変形させることができるので、湾曲形成部以外の領域で光ファイバの伝送損失の増加を防ぎながら、光伝送路湾曲部を形成することができる。従って、光ファイバ押えは必ずしも光伝送路湾曲部を直接押える必要は無いが、少なくとも光ファイバ折り返し領域の一部と嵌合し、光伝送路湾曲部と被覆除去部の光ファイバ折り返し領域の湾曲形状を効率的に形成することが可能となる。
【0060】
また、本発明は、光ファイバ折り返し領域の光ファイバ押さえと嵌合する部分で、被覆除去部に接触する曲面の曲率半径が、湾曲形成部の曲率半径の1.3倍以上であることを特徴とする。
【0061】
この構成によれば、伝送状態判別時における、光ファイバ折り返し領域での被覆除去部の曲げによる光損失の発生を最小限に抑えることが可能となり、光伝送状態への影響を最小限とすることが可能となる。
【0062】
例えば、
図2は本発明に至った実験的な調査結果の1つで、単一モード光ファイバ素線を用いて波長1.55μmで測定した曲げ損失の曲率半径依存性を測定した実験結果であり、曲率半径が減少するに伴い曲げ損失が指数的に上昇した。ここで曲げの中心角は一定としている。同図を参照すると、光伝送路湾曲部の湾曲曲率半径を5.5mm、その時に発生する曲げ損失を0.5dBと仮定した場合、光ファイバ折り返し領域での被覆除去部湾曲の曲率半径をその1.3倍の7.15mm以上に設定すれば、光ファイバ折り返し領域の被覆除去部で発生する曲げ損失を0.1dB以下に抑制することが可能となることが判る。相対的に伝送路湾曲部以外の被覆除去部で発生する損失を0.1dB以下に抑えることは、実用上必須であると判断される。
【0063】
また、本発明は、光ファイバ折り返し領域に、湾曲形成部の湾曲方向と反対に湾曲した、湾曲形成部の湾曲に連続する湾曲面を持つ光ファイバ折り返し部が、湾曲形成部の両側に形成され、その光ファイバ折り返し部が嵌合時に光ファイバ押さえと対向して嵌合し、それらの間に被覆除去部の一部を安定的に保持することを特徴とする。
【0064】
この構成によれば、伝送状態判別時における光伝送路の被覆除去部が、光ファイバ折り返し部と光ファイバ押さえとが対抗して嵌合することによって、湾曲形成部で湾曲させられる方向と反対に折り返して湾曲させられ、その形状が安定的に保持されことで、光漏洩部品内での被覆除去部の位置が安定し、光ファイバ固定部間の被覆除去部で局所的に屈曲が発生したりすることを抑えることが可能となり、被覆除去部の湾曲形状が長期的に安定化する。
【0065】
また、本発明は、有効深さが被覆除去部の外径±0.1mm以内で、有効幅が被覆除去部の外径以上でかつ受光素子の受光面の幅以下の溝が、湾曲形成部または光ファイバ押さえまたは光ファイバ折り返し部の少なくとも1箇所に光伝送路の長さ方向に形成されていることを特徴とする。
【0066】
ここで、有効深さとは、溝の断面が矩形の場合は深さそのものを表すが、断面がV字形状のV溝の場合は、V溝が無い部品表面にある場合とV溝に嵌った場合との溝深さ方向における被覆除去部の位置の相違を表す。また、同様に、溝の有効幅は、溝の断面が矩形の場合は溝幅自体を表すが、それ以外の形状の場合は、溝の中で被覆除去部が溝幅方向に移動できる距離から算出される。例えば、V溝の場合、被覆除去部は溝幅方向に移動できないので、有効溝幅は被覆除去部の幅と等しいと考えることになる。
【0067】
この構成によれば、伝送状態判別時における一対の光ファイバ固定部間の被覆除去部は、湾曲形成部または光ファイバ押さえまたは光ファイバ折り返し部の少なくとも1箇所に光伝送路の長さ方向に形成された溝により、被覆除去部の光ファイバに側面から応力が加わることなく、かつ光ファイバと受光素子との間の距離が増加することなく、光伝送路の長さ方向に整列させられる。このため、伝送状態判別時に被覆除去部に形成させられる湾曲部付近での光ファイバの位置を安定させることが可能となり、受光効率が位置的な要因で低下することが防げ、被覆除去部の湾曲部と受光素子との光結合度を安定的に向上させることが可能となる。
【0068】
また、本発明は、前記溝の断面形状が左右対称なV溝を基本とする形状であり、かつその溝内面の少なくとも1部に光反射面が形成されていることを特徴とする。
【0069】
ここで、V溝を基本とする形状とは、基本の形状はV溝であるが、厳密にV溝である必要は無く、例えばV溝の底の部分の形状はある程度自由で平らでも良く、また両端部はなだらかに湾曲していても良いということを示す。
【0070】
この構成によれば、検出部の受光素子に対峙した光ファイバ表面から放射される漏洩光だけでなく、光ファイバ表面から、それに対して垂直な方向に放射される漏洩光が効率よく受光素子に到達するため、光検出効率が大幅に上昇するだけでなく、光検出効率の偏波依存性が大幅に解消され、光ファイバ中を伝送する光信号の偏波状態に依存することなく、再現性と安定性に優れた光検出特性を得ることが可能となる。
【0071】
また、本発明は、嵌合時に湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させられた光伝送路湾曲部の表面と、受光素子の受光面との最短距離が2mm以下であることを特徴とする。
【0072】
この構成によれば、伝送状態判別時における、被覆除去部の光伝送路湾曲部と受光素子との間の距離が最小限に抑えられ、被覆除去部の光伝送路湾曲部と受光素子との光結合度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、本発明は、光ファイバ押えは、光通過部材部または光ファイバ押え隙間部の光ファイバ折り返し領域側の側面の少なくとも一部に光信号を受光素子側に反射する光反射面が形成されていることを特徴とする。
【0074】
この構成によれば、光ファイバ押さえの光ファイバ折り返し領域側の側面に光反射処理を施さない場合に比し、被覆除去部の光伝送路湾曲部と受光素子との光結合度を数dB以上向上させることが可能となる。
【0075】
光伝送路湾曲部で発生する漏洩光は発散的に光ファイバの外部に放射されるため、受光素子が直接感知する漏洩光の割合は少なく、光結合度が低下する主要因はこの漏洩光の発散である。従って、これを補う手段として光ファイバ押さえの光通過部材部または光ファイバ押え隙間部の光ファイバ折り返し領域側の側面の少なくとも一部に光信号を受光素子側に反射する光反射面が形成されていることは光結合度を向上させるために非常に有効となる。また、光信号光の伝搬方向に依存して、集光に最適な位置は互いに異なるため、受光素子が1つ設置される場合は、この反射手段は更に有効となる。
【0076】
また、本発明は、未操作時に、光漏洩部品と光検出器との嵌合が保持される操作機構を備えることを特徴とする。
【0077】
この構成によれば、操作機構の未操作時に、光漏洩部品と光検出器との嵌合が保持され、操作機構による光ファイバ押さえおよび湾曲形成部に対する作用によって被覆除去部に光伝送路湾曲部が形成・保持され、光伝送路湾曲部に漏洩光が生じさせられて、漏洩光の計測が行われる。
【0078】
このため、光ファイバ押さえおよび湾曲形成部により被覆除去部に光伝送路湾曲部が形成されて行われる伝送状態の判別時には、操作機構が操作されないので、操作に起因して光ファイバ押さえと湾曲形成部との相対位置が変化することはなく、光ファイバ押さえと湾曲形成部との嵌合状態が安定し、漏洩光計測の再現性が向上する。従って、伝送状態判別時における光伝送路の挿入損失および光伝送路湾曲部と受光素子との光結合度が安定し、人的な要因によって生じる漏洩光の計測値の差異を最小限に抑えることが可能となる。また、伝送状態判別時の挿入損失および光信号受信効率が長期的に安定するので、光伝送路中の光信号の中長期的な安定性を測定する光モニターとして、光伝送判別器を使用することが可能となる。
【0079】
また、本発明は、光検出器が、受光素子を含む検出部と、受光素子で計測される光信号の伝送状態判別制御を行う制御回路を含む光検出器本体とに分離されていることを特徴とする。
【0080】
この構成によれば、光検出器が検出部と光検出器本体とに分離され、被覆除去部に形成された光伝送路湾曲部からの漏洩光を検出する受光素子を光検出器本体と別体の検出部に構成することで、検出部の大幅な小型化が可能となり、光伝送状態判別作業の作業性が大幅に向上する。また、光伝送路中の光信号の中長期的な安定性を測定する光モニターとして光伝送判別器が使用された場合、光伝送路近傍で光伝送判別器が占有する空間の体積が大幅に削減され、収納性、保持性に優れる光モニターが提供される。
【0081】
また、本発明は、光検出器は、予め測定された光結合効率から測定値を光伝送路を伝送する信号光強度に換算する機能を有することを特徴とする。
【0082】
この構成によれば、実用性のあるパワーチェッカーとして、光伝送路を伝送する信号光強度を接続替えすることなく簡易的に測定し、その結果を光検出器の表示部に表示することが可能となる。
【0083】
従来、心線対照器等で、光伝送路を伝送する信号光強度を測定することは出来なかった。これは、従来の心線対照器では検出光強度の再現性に乏しく、また安定性に欠けるため、測定結果の妥当性が低かったためである。
【0084】
本発明の技術では、測定対象が光ファイバ素線又は光ファイバ心線に限定されるため、光検出器の検出効率を予め補正することが可能で、その固体差は大幅に軽減される。
【0085】
従って、本発明の技術では、測定の再現性、安定性にも優れるため、測定時に測定波長を選択すれば、光伝送路を伝送する信号光強度を測定することが可能となる。
【0086】
また、検出部が光ファイバの種類(素線又は心線)に依存せず共通の場合には、光ファイバの種類を選択する必要を生じるが、この光ファイバの種類の選択は自動化が可能である。
【0087】
ここで、受光素子の受光効率の固体差、電気回路の固体差等は光検出器の固体差として予め補正され、光検出器の光漏洩部品の嵌合・把持機構の固体差は光検出器の検出効率として補正される。
【0088】
測定精度は光漏洩部品の加工・組立て精度にも大きく依存するが、これらの固体差を実用的に抑制することにより、光伝送路を伝送する信号光強度を接続替えすることなく簡易的に測定するパワーチェッカーとして実用的な性能が得られる。
【0089】
また、測定精度を確保するためには、光漏洩部品を取付ける光伝送路として使用する光ファイバの特性や被覆色を適宜選別・限定することが望ましい。
【0090】
また、本発明は、前記光漏洩部品が、予め測定された光結合効率の光漏洩部品による固体差を補正する補正値を示す識別コードが表記されていることを特徴とする。
【0091】
この構成によれば、光漏洩部品をその光学特性により分類し、表示された光漏洩部品の補正値を示す識別コードを測定時に検出器に入力することにより、光伝送路を伝送する信号光強度の測定精度を更に向上させることが可能となる。
【0092】
この補正値では、使用する光ファイバの特性や被覆色の相違や光漏洩部品の加工・組立て精度に依存する個体差を補正することが可能となる。
【0093】
従って、基本的には使用する光ファイバの特性、被覆色、被覆材料等を測定精度向上のために限定する必要は無くなる。
【0094】
また、本発明は、光検出器が光線路モニター機能を有し、かつ光漏洩部品を把持した状態で中長期的に保持されることを特徴とする。
【0095】
ここで、光線路モニター機能とは、検出値とその検出時を特定する機能、これらのデータを解析する機能、判定基準値を設定することにより検出値の正常・異常を判断する機能のうち少なくとも1つ以上の機能を有し、かつ、これらの結果を保持・記憶する機能、これらの結果を出力する機能のうち少なくとも1つ以上の機能を有することを指す。
【0096】
この構成によれば、本光伝送路判別器を光伝送路の伝送特性の安定性等の健全性を調べることが可能となる。これにより、不測の伝送損失異常や瞬断、使用中の光源の出力安定性等をこれらの事態の発生とほぼ同時に解析することが可能となり、早期対応が可能となる。
【0097】
また、本発明は、光検出器が心線対照機能を有し、かつ光漏洩部品が最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバを用いた光ファイバコードに適用されることを特徴とする。
【0098】
ここで、最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバとはITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバを指す。
【0099】
この構成によれば、光ファイバコードに対して、従来の心線対照器に比し各段に光検出効率に優れるため、従来の心線対照器では困難であったITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバなど、曲げに強く、最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバを用いた光ファイバコードに対しても心線対照が確実に実施可能となる。更に、検出効率の波長依存性が大幅に抑制されるため、単一モード波長範囲のほぼ全域で低損失心線対照が可能になり、同時に活線判別も可能となるため、心線対照のために誤って現用線を断線させる事故を防ぐことが可能となる。
【0100】
我々は本発明の技術を同光ファイバコードに適用することにより、同光ファイバコードの心線対照が可能となり、優れた特性を示すことを実験的に確認し、本発明に至った。
【0101】
また、本発明は、光伝送路を形成する光伝送体であって、その少なくとも一部に上記に記載のいずれかの光漏洩部品が備えられていることを特徴とする光伝送体を構成した。
【0102】
この構成によれば、光伝送体が光漏洩部品を備えているため、本光伝送体を予め局舎、中継局等の必要な場所に配備することにより、本発明による光伝送判別が可能となる。