【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1に係るバッテリ充電システムの構成を示す図である。
図1に示すように、バッテリ充電システムは、バッテリ充電装置(レギュレータ)100と、発電機101と、ランプ(負荷)102と、バッテリ103と、ヒューズ104と、を備える。このバッテリ充電システムは、例えば、自動二輪車に搭載される。
【0023】
発電機101は、発電コイル101aを有し、当該発電コイル101aの一端T1及び他端T2間から第1の交流電圧Vac1を出力すると共に、当該発電コイル101aの中間タップTc及び他端T2間から第2の交流電圧Vac2を出力する。つまり、第2の交流電圧Vac2は、中間タップTcによって第1の交流電圧Vac1が分圧された電圧である。この発電機101は、例えば、単相磁石式交流発電機である。
【0024】
バッテリ103は、ヒューズ104を介して、バッテリ充電装置100に接続されている。このバッテリ103は、充放電可能であり、発電機101により充電されるようになっている。このバッテリ103には、例えば、バッテリ103から電力が供給されるストップランプ等の他の負荷(図示せず)が接続されている。
【0025】
ランプ102は、発電機101により電力が供給されるようになっている。ランプ102は、例えば、自動二輪車のヘッドライトである。
【0026】
バッテリ充電装置100は、発電機101から出力された第1の交流電圧Vac1を整流してバッテリ103を充電すると共に、発電機101から出力された第2の交流電圧Vac2を制御してランプ102に供給する。
【0027】
バッテリ充電装置100は、チャージ端子Aと、負荷端子Lと、バッテリ端子Bと、アース端子Eと、第1のサイリスタ(第1のスイッチ素子)S1と、第2のサイリスタ(第2のスイッチ素子)S2と、第3のサイリスタ(第3のスイッチ素子)S3と、負荷制御部11と、バッテリ制御部12と、過電圧制御部13と、を備える。
【0028】
チャージ端子Aは、発電コイル101aの一端T1が接続される。負荷端子Lは、発電コイル101aの中間タップTcとランプ102の一端とが接続される。バッテリ端子Bは、ヒューズ104を介してバッテリ103の一端(正極側の端子)が接続される。アース端子Eは、発電コイル101aの他端T2と、ランプ102の他端と、バッテリ103の他端(負極側の端子)とが接続される。
【0029】
第1のサイリスタS1は、アース端子Eにアノード(入力端子)が接続され、負荷端子Lにカソード(出力端子)が接続されている。
第2のサイリスタS2は、チャージ端子Aにアノード(入力端子)が接続され、バッテリ端子Bにカソード(出力端子)が接続されている。
第3のサイリスタS3は、負荷端子Lにアノード(入力端子)が接続され、アース端子Eにカソード(出力端子)が接続されている。
【0030】
負荷制御部11は、負荷端子Lの第2の交流電圧Vac2に応じて、第1のサイリスタS1または第3のサイリスタS3をオンまたはオフにする。即ち、負荷制御部11は、ランプ102を短絡制御する。
【0031】
具体的には、負荷制御部11は、4つの端子T11a,T11b,T11c,T11dを有する。端子T11aは、負荷端子Lに接続されている。端子T11bは、第1のサイリスタS1のゲートに接続されている。端子T11cは、第3のサイリスタS3のゲートに接続されている。端子T11dは、アース端子Eに接続されている。
【0032】
負荷制御部11は、負荷端子Lの第2の交流電圧Vac2(即ち、端子T11aと端子T11dとの間の電位差)が負の第1の所定値(ランプ電圧下限値)以下の時、端子T11bから第1のサイリスタS1のゲートに電流を流すことにより、第1のサイリスタS1をオンにする。負荷制御部11は、第2の交流電圧Vac2が第1の所定値より高い時、端子T11bから第1のサイリスタS1のゲートへの電流を遮断することにより、第1のサイリスタS1をオフにする。
【0033】
また、負荷制御部11は、第2の交流電圧Vac2が正の第3の所定値(ランプ電圧上限値)以上の時、端子T11cから第3のサイリスタS3のゲートに電流を流すことにより、第3のサイリスタS3をオンにする。負荷制御部11は、第2の交流電圧Vac2が第3の所定値未満の時、端子T11cから第3のサイリスタS3のゲートへの電流を遮断することにより、第3のサイリスタS3をオフにする。
【0034】
第1の所定値及び第3の所定値は、ランプ102に過電圧が加えられない電圧値に設定されている。即ち、負荷制御部11は、第1の所定値以上または第3の所定値以下の過電圧がランプ102に加えられないように制御して、ランプ102を保護しつつ点灯させることができる。
【0035】
バッテリ制御部12は、バッテリ端子Bのバッテリ電圧VBに応じて、第2のサイリスタS2をオンまたはオフにする。具体的には、バッテリ制御部12は、4つの端子T12a,T12b,T12c,T12dを有する。端子T12aは、チャージ端子Aに接続されている。端子T12bは、第2のサイリスタS2のゲートに接続されている。端子T12cは、バッテリ端子Bに接続されている。端子T12dは、アース端子Eに接続されている。
【0036】
バッテリ制御部12は、バッテリ端子Bのバッテリ電圧VB(即ち、端子T12cと端子T12dとの間の電位差)が正の第2の所定値(満充電値)未満の時、端子T12bから第2のサイリスタS2のゲートに電流を流すことにより、第2のサイリスタS2をオンにする。第2の所定値は、バッテリ103が過充電されない電圧値に設定されている。これにより、バッテリ103が十分に充電されていない場合、第1の交流電圧Vac1が正の期間に、オンとなった第2のサイリスタS2を介してチャージ端子Aからバッテリ端子Bに電流が流れてバッテリ103は充電される。
【0037】
また、バッテリ制御部12は、バッテリ電圧VBが第2の所定値以上の時、端子T12bから第2のサイリスタS2のゲートへの電流を遮断することにより、第2のサイリスタS2をオフにする。これにより、バッテリ103が十分に充電されている場合、第2のサイリスタS2は電流を流さないので、バッテリ103は過充電されない。
【0038】
より詳細には、バッテリ制御部12は、バッテリ電圧VBが第2の所定値未満の時、端子T12aと端子T12bとを短絡することにより、第2のサイリスタS2のアノードとゲートとを短絡する。また、バッテリ制御部12は、バッテリ電圧VBが第2の所定値以上の時、端子T12aと端子T12bとを開放することにより、第2のサイリスタS2のアノードとゲートとを開放する。
【0039】
過電圧制御部13は、バッテリ電圧VBが第2の所定値より高い第4の所定値(バッテリ電圧上限値)以上の時、第3のサイリスタS3をオンにする。具体的には、過電圧制御部13は、3つの端子T13a,T13b,T13cを有する。端子T13aは、第3のサイリスタS3のゲートに接続されている。端子T13bは、バッテリ端子Bに接続されている。端子T13cは、アース端子Eに接続されている。
【0040】
過電圧制御部13は、バッテリ電圧VB(即ち、端子T13bと端子T13cとの間の電位差)が第4の所定値以上の時、端子T13aから第3のサイリスタS3のゲートに電流を流すことにより、第3のサイリスタS3をオンにする。第4の所定値は、バッテリ端子Bに接続されたストップランプ等の他の負荷に過電圧が加えられない電圧値に設定されている。
【0041】
これにより、過電圧制御部13は、バッテリ端子Bに過電圧が加えられないようにして、バッテリ端子Bに接続されているストップランプ等の他の負荷を破壊しないようにできる。つまり、バッテリ端子Bにバッテリ103が接続されておらず、第1の交流電圧Vac1が直接他の負荷に供給される場合であっても、他の負荷を保護できる。
【0042】
次に、
図2を参照してバッテリ充電システムの動作を説明する。
図2は、実施例1に係るバッテリ充電システムの動作を説明する波形図である。
図2は、第1の交流電圧Vac1の時間変化を、発電機101の端子T1及び端子T2が解放されていると仮定した場合に発電機101が端子T1及び端子T2間から出力する電圧Vac1’の時間変化に重ねて示している。
【0043】
時刻t0以降、第1の交流電圧Vac1が0Vから負に低下する。このとき、ランプ102は、第1の交流電圧Vac1が分圧された負の第2の交流電圧Vac2(図示せず)が加えられて点灯する。時刻t1において、第2の交流電圧Vac2が負の第1の所定値以下になると、負荷制御部11は第1のサイリスタS1のゲートに電流を流して、第1のサイリスタS1をオンにする。これにより、負荷端子Lとアース端子E間が短絡されるため、第2の交流電圧Vac2はほぼ0Vになり、第1の交流電圧Vac1は、絶対値が低下して発電コイル101aの一端T1と中間タップTc間(即ち、チャージ端子Aと負荷端子L間)の電圧となる。第2の交流電圧Vac2はほぼ0Vになるため、ランプ102は消灯する。そして、第2の交流電圧Vac2が負の第1の所定値より高くなるので、負荷制御部11は第1のサイリスタS1のゲートの電流を遮断する。
【0044】
時刻t2において、バッテリ電圧VBが第2の所定値未満であるとする。すると、第2のサイリスタS2は、正になった第1の交流電圧Vac1よってゲートに電流が流れてオンする。これにより、第1の交流電圧Vac1が第2のサイリスタS2を介してバッテリ103に供給され、バッテリ103は充電される。時刻t2以降のバッテリ103が充電されている間、第1の交流電圧Vac1はバッテリ電圧VBの影響によりほぼ一定となる。
【0045】
第1のサイリスタS1に流れる電流の位相が第1の交流電圧Vac1の位相より遅れるため、時刻t2から遅れた時刻t3において、第1のサイリスタS1のアノードからカソードに流れる電流が0Aになり、第1のサイリスタS1はオフになる。これにより、ランプ102は、第1の交流電圧Vac1が分圧された正の第2の交流電圧Vac2が加えられて再び点灯する。また、第1の交流電圧Vac1は、発電コイル101aの一端T1と他端T2間から供給される。
【0046】
バッテリ103の充電が進むに従い、バッテリ電圧VBは上昇する。そして、時刻t4において、バッテリ電圧VBが第4の所定値以上になると、過電圧制御部13は、第3のサイリスタS3のゲートに電流を流して第3のサイリスタS3をオンにする。これにより、負荷端子Lとアース端子E間が短絡されるため、第2の交流電圧Vac2はほぼ0Vになり、第1の交流電圧Vac1は、発電コイル101aの一端T1と中間タップTc間から供給される。その後、バッテリ電圧VBが第4の所定値未満になると、過電圧制御部13は第3のサイリスタS3のゲートの電流を遮断する。
【0047】
その後、第1の交流電圧Vac1が低下する時刻t5までバッテリ103は充電される。
【0048】
時刻t6において、第3のサイリスタS3のアノードからカソードに流れる電流が0Aになり、第3のサイリスタS3はオフになる。これにより、ランプ102に負の第2の交流電圧Vac2が加えられ、ランプ102は再び点灯する。また、第1の交流電圧Vac1は、絶対値が増加して発電コイル101aの一端T1と他端T2間(即ち、チャージ端子Aとアース端子E間)の電圧となる。
【0049】
このように、バッテリ103の充電開始のタイミング(時刻t2)が第1のサイリスタS1のオン(時刻t1からt3)に影響されず、その上、バッテリ103の充電終了のタイミング(時刻t5)が第3のサイリスタS3のオン(時刻t4からt6)に影響されない。よって、バッテリ103を充電可能な期間TB(時刻t2からt5)は、第1の交流電圧Vac1が正の期間とほぼ等しくなる。
【0050】
時刻t6以降も、以上の説明と同様に動作する。
【0051】
なお、バッテリ電圧VBが第2の所定値以上に保持されている時に第1の交流電圧Vac1が負から正になっても、第2のサイリスタS2はオフを保つため、第1の交流電圧Vac1はバッテリ103に加えられない。よって、この場合、第1の交流電圧Vac1はバッテリ電圧VBより高くなる。しかし、第1の交流電圧Vac1がバッテリ電圧VBより高くなり、これにより第2の交流電圧Vac2が第3の所定値以上になると、負荷制御部11が第3のサイリスタS3をオンにする。これにより、第2の交流電圧Vac2はほぼ0Vになり、ランプ102に過電圧が加えられることはない。
【0052】
以上で説明した様に、本実施例によれば、アース端子Eにアノードが接続され、負荷端子Lにカソードが接続された第1のサイリスタS1を設け、負荷端子Lの第2の交流電圧Vac2に応じて第1のサイリスタS1をオンまたはオフに制御するようにしている。これにより、第1のサイリスタS1のオン期間において、負荷端子Lとアース端子Eとの間は短絡されてランプ102には電圧がほとんど加えられないが、負荷端子Lとチャージ端子Aとの間は短絡されないので、発電機101から出力された負荷端子Lとチャージ端子Aとの間の電圧を用いてバッテリ103を充電できる。即ち、バッテリ103の充電タイミングが、第1のサイリスタS1のオンに影響されない。
【0053】
また、負荷端子Lにアノードが接続され、アース端子Eにカソードが接続された第3のサイリスタS3を設け、第2の交流電圧Vac2またはバッテリ端子Bのバッテリ電圧VBに応じて第3のサイリスタS3をオンまたはオフに制御するようにしている。これにより、第3のサイリスタS3のオン期間において、負荷端子Lとアース端子Eとの間は短絡されてランプ102には電圧がほとんど加えられないが、負荷端子Lとチャージ端子Aとの間は短絡されないので、発電機101から出力された負荷端子Lとチャージ端子Aとの間の電圧を用いてバッテリ103を充電できる。即ち、バッテリ103の充電タイミングが、第3のサイリスタS3のオンに影響されない。
【0054】
以上から、本実施例によれば、ランプ102を保護しつつバッテリ103を充電可能な期間TBを長くできる。よって、バッテリ103が充電不足になる可能性を低くできる。
【0055】
なお、バッテリ端子Bに接続されているストップランプ等の他の負荷に過電圧が加えられる恐れが無い場合には、バッテリ充電装置100aは、第3のサイリスタS3と過電圧制御部13を備えなくてもよい。この場合でも、第1のサイリスタS1がオンした時にランプ102に過電圧が加えられない上、バッテリ103の充電タイミングが第1のサイリスタS1のオンに影響されないので、ランプ102を保護しつつバッテリ103を充電可能な期間TBを長くできる。
【0056】
以上、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
例えば、実施例1では3つのサイリスタS1,S2,S3を備える一例について説明したが、サイリスタS1,S2,S3のかわりにバイポーラトランジスタやMOSFETなどのスイッチ素子を用いてもよい。