(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は、従来の型締め工程における型締力の目標値および検出値の経時変化を示す図である。
図5において、実線は型締力の目標値の経時変化、2点鎖線は型締力の検出値の経時変化を示す。
【0006】
型締め開始時(時刻t0)で型締力の目標値は0(ゼロ)から設定値S0に不連続に変更され、その後、型締力の目標値は設定値S0で維持され、設定値S0と検出値との差に応じた電流が型締駆動部に供給される。型締駆動部への供給電流は、目標の型締力が発生するようにフィードバック制御される。
【0007】
型締め開始時には、型締力の立ち上がりを向上するため、定格電流値(型締力の設定値S0に対応する電流値)を上回る電流値の電流が型締駆動部に供給される。型締力が設定値S0に到達したことを検出した後、型締駆動部への供給電流の電流値が定格電流値に下げられる。
【0008】
ところで、型締力が設定値S0に到達したことを検出した後、型締駆動部への供給電流の電流値は直ちに定格電流値に下がらない。供給電流は、フィードバック制御の遅れの影響等を受けるためである。このフィードバック制御の遅れは、供給電流を制御するPI制御(比例制御、積分制御)における積分制御の作用により発生することが知られている。
【0009】
型締力が目標値に到達した後も供給電流が直ちに下がらないので、型締力が設定値S0を超えてオーバーシュートする。そのため、金型装置等に過度な負荷がかかるので、金型装置等が損傷しやすい。また、型締力が変動するので、成形品の品質が悪くなる。
【0010】
一方、型締め終了時に、型締力の目標値は設定値S0から0(ゼロ)に不連続に変更される。その後、型締力の検出値と目標値との差に関係なく、型締駆動部への電流供給が遮断され、型締力は型締駆動部の応答遅れに応じた速度で低下する。型締力の低下速度が速すぎると、金型装置等
にかかる負荷の変動が大きく、金型装置等に加わる衝撃が大きいので、金型装置等が損傷しやすい。また、型締力の低下速度が速すぎると、成形品がむしられ、成形品の品質が悪くなる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、型締力を変更する際に、金型装置等の損傷を抑制できると共に、成形品の品質を向上できる射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による射出成形機は、
型締力を発生させる型締駆動部と、
前記型締力を検出する型締力検出部と、
前記型締力の目標値の経時変化を定めたデータパターンを記憶する記憶部と、
前記型締力検出部によって検出される型締力の検出値と、前記記憶部に記憶された前記目標値との差に基づいて、前記型締駆動部の動作を制御する型締処理部とを備え、
前記データパターンにおいて前記目標値が第1設定値から第2設定値まで経時的に徐々に
低下
し、その後、前記型締処理部が、前記型締力を発生させる電磁石に供給する電流の向きを逆向きにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型締力を変更する際に、金型装置等の損傷を抑制できると共に、成形品の品質を向上できる射出成形機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方として説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機の型閉じ時の状態を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図である。
【0017】
図において、10は射出成形機、Frは射出成形機10のフレーム、Gdは該フレームFr上に敷設される2本のレールよりなるガイド、11は固定プラテンである。固定プラテン11は、型開閉方向(図において左右方向)に延びるガイドGdに沿って移動可能な位置調整ベースBa上に設けられてよい。尚、固定プラテン11はフレームFr上に載置されてもよい。
【0018】
固定プラテン11と対向して可動プラテン12が配設される。可動プラテン12は可動ベースBb上に固定され、可動ベースBbはガイドGd上を走行可能である。これにより、可動プラテン12は、固定プラテン11に対して型開閉方向に移動可能である。
【0019】
固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と平行にリヤプラテン13が配設される。リヤプラテン13は、脚部13aを介してフレームFrに固定される。
【0020】
固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。タイバー14を介して固定プラテン11がリヤプラテン13に固定される。タイバー14に沿って可動プラテン12が進退自在に配設される。可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。尚、ガイド穴の代わりに、切欠部を形成するようにしてもよい。
【0021】
タイバー14の前端部(図において右端部)には図示されないネジ部が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0022】
固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ取り付けられ、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。尚、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、キャビティ空間に溶融した樹脂が充填される。固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0023】
吸着板22は、可動プラテン12と平行に配設される。吸着板22は取付板27を介してスライドベースSbに固定され、スライドベースSbはガイドGd上を走行可能である。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13よりも後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。尚、取付板27はなくてもよく、この場合、吸着板22はスライドベースSbに直に固定される。
【0024】
ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に吸着板22が前進するのに伴って前進させられて可動プラテン12を前進させ、型開き時に吸着板22が後退するのに伴って後退させられて可動プラテン12を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分にロッド39を貫通させるためのロッド孔41が形成される。
【0025】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるための型開閉駆動部であって、例えば可動プラテン12に連結された吸着板22とフレームFrとの間に配設される。尚、リニアモータ28は可動プラテン12とフレームFrとの間に配設されてもよい。
【0026】
リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備える。固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、スライドベースSbの移動範囲に対応させて形成される。可動子31は、スライドベースSbの下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0027】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。尚、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。可動子31の位置を検出する位置センサ53が配置される。
【0028】
リニアモータ28のコイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられる。それに伴って、吸着板22及び可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。リニアモータ28は、可動子31の位置が設定値になるように、位置センサ53の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
【0029】
尚、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0030】
尚、型開閉駆動部として、リニアモータ28の代わりに、回転モータ及び回転モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構、又は油圧シリンダ若しくは空気圧シリンダなどの流体圧シリンダなどが用いられてもよい。
【0031】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13と吸着板22との間に吸着力を生じさせる。この吸着力は、ロッド39を介して可動プラテン12に伝達し、可動プラテン12と固定プラテン11との間に型締力が生じる。
【0032】
尚、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39などによって型締装置が構成される。
【0033】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された型締駆動部としての電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。吸着部51は、吸着板22の吸着面(前端面)の所定の部分、例えば、吸着板22においてロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の吸着面(後端面)の所定の部分、例えば、ロッド39のまわりには、電磁石49のコイル48を収容する溝45が形成される。溝45より内側にコア46が形成される。コア46の周りにコイル48が巻装される。リヤプラテン13のコア46以外の部分にヨーク47が形成される。
【0034】
尚、本実施形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部51を設けてもよい。また、電磁石49のコイル48の数は、複数であってもよい。
【0035】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0036】
制御部60は、例えばCPU、及びメモリ等を備え、メモリに記録された制御プログラムをCPUによって処理することにより、リニアモータ28及び電磁石49の動作を制御する。尚、リニアモータ28の動作は、一般的なものであるので、説明を省略する。
【0037】
制御部60は、型締力を検出する型締力検出部61を備える。型締力検出部61は、例えば型締力に応じて伸びるタイバー14の歪み(伸び量)を検出する歪みセンサ55と接続されており、歪みセンサ55の検出結果に基づいて型締力を検出する。尚、型締力の検出には、歪みセンサ55の代わりに、ロッド39にかかる荷重を検出するロードセル等の荷重センサ、又は電磁石49の磁場を検出する磁気センサが用いられてもよく、型締力の検出に用いられるセンサの種類は多種多様であってよい。例えば、歪みセンサはタイバー14だけでなくロッド39にも適用可能である。ロッド39の歪み(縮み量)は型締力に比例するからである。
【0038】
また、制御部60は、型締力の目標値の経時変化を定めたデータパターンを記憶する記憶部62を備える。記憶部62としては、磁気記憶媒体、光記憶媒体、メモリ等の一般的なものが用いられる。データパターンは、予め試験等によって作製され、記憶部62に記憶される。データパターンは、必要に応じて読み出され、電磁石49のコイル48への供給電流の電流値の算出に用いられる。データパターンは、ユーザによって書き換え可能であってよい。
【0039】
さらに、制御部60は、型締力検出部61によって検出される型締力の検出値と、
記憶部62に記憶された目標値との差に基づいて電磁石49の動作を制御する型締処理部63を備える。型締処理部63は、電磁石49のコイル48への供給電流の電流値として、型締力の検出値と目標値との差を迅速に解消(補正)できるような電流値をPI制御(比例制御、積分制御)によって算出し、算出した電流値を示す信号を電流供給部70に出力する。電磁石49に供給する電流値は、電磁石49の応答遅れを考慮して算出される。例えば、型締め開始時に、電磁石49は、渦電流の影響等で、直ちに供給される電流に対応した型締力を作用させることはできず、型締力が目標値になるまで、ある程度の時間を要するからである。従って、型締処理部63によって算出される電流値は、型締力の検出値と目標値との差に対応して一意に定まる電流値ではなく、型締め開始時には当該電流値よりも大きな電流値となりうる。尚、型締処理部63は、電磁石49のコイル48への供給電流の電流値をPI制御によって算出するとしたが、PID制御(比例制御、積分制御、微分制御)によって算出してもよい。
【0040】
電流供給部70は、例えば複数のパワーモジュールを含むインバータ等によって構成され、型締処理部63から供給される信号に応じた電流を電磁石49のコイル48に供給する。電流供給部70は、電磁石49のコイル48に供給する直流電流の方向、及び強さ(大きさ)を変える機能を有してよい。
【0041】
次に、上記構成の射出成形機10の動作について説明する。射出成形機10の各種動作は、制御部60による制御下で行われる。
【0042】
制御部60は、型閉じ工程を制御する。
図2の状態(型開きの状態)において、制御部60は、コイル35に電流を供給して、リニアモータ28を駆動する。可動プラテン12が前進して、
図1に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、即ち電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。尚、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0043】
続いて、制御部60は、型締処理部63によって型締め工程を制御する。型締処理部63は、電磁石49のコイル48に電流を供給し、電磁石49に吸着部51を吸着する。この吸着力は、ロッド39を介して可動プラテン12に伝達し、可動プラテン12と固定プラテン11との間に型締力が生じる。
【0044】
型締処理部63は、型締力検出部61によって検出される型締力の検出値と、記憶部62に記憶された型締力の目標値との差に基づいて、電磁石49のコイル48に供給する電流を調整し、フィードバック制御する。
【0045】
型締め状態の金型装置19のキャビティ空間に溶融した樹脂が充填される。樹脂が冷却固化すると、型締処理部63は、電磁石49のコイル48に供給する電流を調整し、型締力を解除する。
【0046】
次いで、制御部60は、型開き工程を制御する。制御部60は、リニアモータ28を駆動して、可動プラテン12を後退させ、
図2に示すように、可動金型16が後退して型開きが行われる。
【0047】
次に、型締処理部63による処理の詳細について説明する。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態による射出成形機の型締力の目標値の
増加時の経時変化を定めたデータパターンを示す
図である。
図3に示すデータパターンP1〜P3は、型締力を第1設定値S1から第2設定値S2に向けて増加させるときに用いられ、例えば型締め開始時に用いられる。
図3において、横軸は、型締力の増加開始時からの経過時間を示す。
図3において、型締力の検出値は、型締力の目標値と略重なるので、図示を省略する。
【0049】
各データパターンP1〜P3において、型締力の目標値は、第1設定値S1(例えばS1=0)から第2設定値S2(S2>S1)まで経時的に徐々に増加する。そのため、型締力を増加させるとき、従来に比べて(
図5参照)、型締力の目標値と検出値との差の積分値が小さく、積分制御によるフィードバック制御の遅れの影響が低減される。よって、実際の型締力が第2設定値S2を超えてオーバーシュートするのを抑制することができる。その結果、金型装置19等に過度な負荷がかかるのを抑制することができ、金型装置19等の損傷を抑制することができる。また、成形品の品質を向上することができる。
【0050】
各データパターンP1〜P3において、型締力の目標値は、第1設定値S1の近傍(又は/及び第2設定値S2の近傍)での増加速度が第1設定値S1と第2設定値S2との中間での増加速度に比べて小さくなるよう設定されてよい。型締力の目標値と検出値との差の積分値をより小さくすることができる。
【0051】
複数のデータパターンP1〜P3は、型締力の目標値を第1設定値S1から第2設定値S2まで連続的に増加させるのに要する時間が異なる。増加に要する時間は、それぞれ、t1〜t3(t1<t2<t3)である。
【0052】
射出成形機10は、複数のデータパターンP1〜P3のいずれか1つを選択するユーザの操作を受け付ける入力部80を備えてよい。入力操作は、例えばディスプレに表示される操作メニュー画像をユーザが見て行う。操作メニュー画像には、例えば、「1:短」「2:中」及び「3:長」などの数字や文字が表示される。操作メニュー画像を見たユーザは、例えば入力部80の「1」を示すボタンを押せば、短い時間t1で型締力の目標値を第1設定値S1から第2設定値S2
まで増加できることがわかる。入力部80は、例えばキーボード等によって構成され、型締処理部63に接続されている。型締処理部63は、入力部80でのユーザの操作を示す操作信号に基づいて、複数のデータパターンP1〜P3のいずれか1つを選択し、選択したデータパターン(例えばデータパターンP1)に従って電磁石49のコイル48への供給電流の電流値を調整する。よって、ユーザの意思で、型締力の増加速度を決めることができる。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態による射出成形機の型締力の目標値の
低下時の経時変化を定めたデータパターンを示す
図である。
図4に示すデータパターンP4〜P6は、型締力を第3設定値S3から第4設定値S4に向けて低下させるときに用いられ、例えば型締め終了時に用いられる。
図4において、横軸は、型締力の低下開始時からの経過時間を示す。図
4において、型締力の検出値は、型締力の目標値と略重なるので、図示を省略する。
【0054】
各データパターンP4〜P6において、型締力の目標値は、第3設定値S3(例えばS3=S2)から第4設定値S4(S3>S4>0)まで経時的に徐々に低下する。そのため、型締力を低下させるとき、電磁石49のコイル48への供給電流の電流値が徐々に低下するので、従来に比べて(
図5参照)、型締力の低下速度が緩やかになる。よって、金型装置19等にかかる負荷の変動を抑制することができ、金型装置19等の損傷を抑制することができる。また、成形品の品質を向上することができる。
【0055】
各データパターンP4〜P6において、型締力の目標値は、第3設定値S3の近傍(又は/及び第4設定値S4の近傍)での低下速度が、第3設定値S3と第4設定値S4との中間での低下速度に比べて小さくなるよう設定されてよい。
【0056】
複数のデータパターンP4〜P6は、型締力の目標値を第3設定値S3から第4設定値S4まで連続的に低下させるのに要する時間が異なる。低下に要する時間は、それぞれ、t4〜t6(t4<t5<t6)である。
【0057】
複数のデータパターンP4〜P6のいずれか1つを選択するユーザの操作は、入力部80で受け付けられる。入力操作は、例えばディスプレに表示される操作メニュー画像をユーザが見て行う。操作メニュー画像には、例えば、「4:短」「5:中」及び「6:長」などの数字や文字が表示される。操作メニュー画像を見たユーザは、例えば入力部80の「4」を示すボタンを押せば、短い時間t4で型締力の目標値を第3設定値S3から第4設定値S4に低下できることがわかる。
【0058】
型締処理部63は、入力部80でのユーザの操作を示す操作信号に基づいて、複数のデータパターンP4〜P6のいずれか1つを選択し、選択したデータパターン(例えばデータパターンP4)に従って電磁石49のコイル48への供給電流の電流値を調整する。よって、ユーザの意思で、型締力の低下速度を決めることができる。
【0059】
型締力が第4設定値S4以下になると、金型装置19等にかかる負荷の変動による影響が十分に小さいので、型締処理部63は、型締力の検出値と目標値との差に関係なく、電磁石49のコイル48への電流供給を中止してもよい。その後、型締力は電磁石49の応答遅れに応じた速度で下がる。電磁石49の応答遅れは、電磁石49(例えばコア46等)に残る磁気の影響等によって生じる。
【0060】
残留磁気の影響が大きく、型締力の低下速度が遅い場合、型開き開始までの待ち時間を短くするため、型締力が第4設定値S4以下になったことを検出した後、型締処理部63は、所定の型締力(例えば型締力=S3)を発生させる方向と逆方向の直流電流を電磁石49のコイル48に供給してよい。電磁石49(例えばコア46等)に残る磁場を打ち消す方向の磁場が形成されるので、型締力の低下を促進することができる。
【0061】
残留
磁気の影響をより積極的に低減するため、型締処理部63は、逆方向の直流電流を電磁石49のコイル48に供給した後、電磁石49のコイル48に供給する直流電流の方向を1回以上反転してもよい。反転の度に、電磁石49のコイル48に供給する直流電流の強さ(大きさ)は小さく設定されてよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態等に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態等に種々の変形や置換を加えることができる。
【0063】
例えば、上記実施形態の型締駆動部は、電磁石49で構成されるが、トグル機構を駆動するモータ、又は流体圧シリンダ(油圧シリンダや空気圧シリンダ等)で構成されてもよく、射出成形機の型締動作に用いられる一般的な構成であってよい。