【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、改良された脱塩・浄水システムを提供する。システムは、注入口と、予熱器と、脱気装置と、複数の蒸発室と、デミスタと、生成物凝縮器と、廃棄物排出口と、生成物排出口と、熱の伝達および回収のための複数のヒートパイプと、制御システムとを含むことができる。制御システムは、最小のユーザ介入または洗浄をもって浄水システムの連続動作を可能にする。システムは、汚染水サンプルから、微生物学的汚染物質、放射性汚染物質、金属、塩、揮発性有機物、および不揮発性有機物を含む複数種の汚染物質を除去することができる。システムの実施形態において、生成される水の量は、注入水の量の約20%〜約95%となり得る。システムは、蒸発室、凝縮器、および予熱器の垂直積層構造であって、コンパクトであり、したがって水製造1日当たり1000〜50000000ガロンの範囲で持ち運びできる垂直積層構造を備える。
【0008】
システムは、注入水のための流量コントローラを含むこともできる。流量コントローラは、圧力調整器、ポンプ、ソレノイド、バルブ、アパーチャなどを含むことができる。圧力調整器は、約0kPa〜250kPa(0〜36psi)の水圧を維持することができる。流量コントローラは、0.5〜3500ガロン/分の水流量を維持できる。システムは、堆積物トラップやサンドフィルタなどを含むことができる。また、システムは停止制御器を更に含むことができる。停止制御器は、例えば、手動制御器、氾濫制御器、タンク容量制御器、蒸発室容量制御器、または同様の制御装置であってもよい。フィードバック制御システムは、例えば、生産水タンク内の水の量、生成物排出口を通る生産水の流れ、水流の時間、水流がない時間、蒸発室内の水の量、漏れの検出、蒸発室圧力、排出口水質(総溶解固形分)、蒸発室内の圧力差、および蒸発室越流堰フロート等に基づくことができる。
【0009】
また、システムは、脱気装置で必要とされる温度まで流入水を加熱する予熱器を有することができる。予熱器から出る水は、少なくとも約96℃の温度を有することができる。予熱タンクは、流入水がタンク内で数回転循環するように螺旋配列の羽根を有してもよく、それにより、予熱を行なうための滞留時間が与えられる。流入供給水は、予熱器内に接線方向で入って、必要とされる温度に達するまでヒートパイプによって徐々に予熱され、脱気装置と接続する或いは脱気が不要な場合には下側蒸発室と直接に接続する降水管を通じて予熱器から出る。
【0010】
脱気装置は、略垂直方向に向くことができ、上端および下端を有する。予熱された水は脱気装置の上端に入り、また、脱気された水は脱気装置の下端近傍から出る。システムにおいて、最も高い蒸発室からの蒸気は、脱気装置の下端近傍に入ることができるとともに、脱気装置の上端近傍から出ることができる。脱気装置は、水と蒸気との混合を促進させるように適合されているマトリクスを含むことができ、それにより、脱気装置内でガスの反対方向の流れに抗して注入水を逆流させることによってほぼ全ての有機物、揮発性物質、およびガスを注入水から取り除く。ガスは、例えば、蒸気、空気、窒素などであってもよい。マトリクスは略球状の粒子を含むことができる。しかしながら、マトリクスは非球状の粒子を含むこともできる。マトリクスは、脱気装置内で均一な充填を可能にするように選択されるサイズを有する粒子を含むことができる。マトリクスが異なるサイズの粒子を含むこともでき、粒子をサイズ勾配を成して脱気装置内に配置することができる。水は、有機物および揮発性ガスを実質的に伴わずに脱気装置から出ることができる。
【0011】
上側蒸発室は、複数の熱伝達パイプを収容する多孔底部を有する円筒形または長方形タンクを含むことができる。上側蒸発室は、下側蒸発室と流体連通する或いは蒸発室の底部にある或いはこれらの両方である降水管であってもよい中心排水管を含むこともできる。蒸発室は複数の粒子を含む自浄媒体を含むこともでき、排水管は開口を有し、開口は、粒子が底部排水管を通過できないようにするサイズを有し、更に、開口は、粒子の形状に対して相補的でない形状を有する。蒸発室は、少なくとも蒸発室の加熱域の近傍の領域で沈殿の蓄積を妨げるための自浄媒体を含むことができる。媒体は複数の粒子を含むことができる。粒子は略球状であってもよい。粒子は、蒸発室内の水の沸騰による粒子の略連続的な攪拌を可能にする特性を含むことができる。特性は、例えば、比重、サイズ、形態、個体数などであってもよい。粒子は選択された硬度を有し、それにより、硬度は、粒子または蒸発室を実質的に腐食させることなく粒子による蒸発室の汚れ落としを可能にする。また、粒子は、セラミック、金属、ガラス、または石から構成されることができる。粒子は、約1.0よりも大きく且つ約8.0よりも小さい、またはより好ましくは約2.0〜約5.0の比重を有することができる。
【0012】
上側デミスタを蒸発室の上面近傍に位置させることができる。蒸発室からの蒸気は加圧下でデミスタに入ることができる。デミスタは圧力差を含むことができ、圧力差は125〜約2500Pa以上であってもよい。デミスタは、サイクロン作用によって或いはミスト粒子が蒸気によって運ばれるのを妨げる機械的障害を与えることによって、清浄蒸気を廃蒸気から分離するように適合されていてもよい。廃蒸気に対する清浄蒸気の比率は約10:1より大きくてもよい。制御システムは、蒸気品質を調整するためのパラメータを調整できる。蒸気品質は、例えば、清浄な蒸気純度、廃蒸気に対する清浄蒸気の比率などを含むことができる。パラメータは、清浄蒸気排出口の凹部位置、デミスタにわたる圧力差、蒸気注入口の流れに対する抵抗、および蒸気排出口の流れに対する抵抗などの少なくとも1つのパラメータを含むことができる。
【0013】
デミスタからの清浄な蒸気は、蒸気に対して円形動作を与えるための羽根を含む上側凝縮器に入り、したがって、凝縮器内でのその滞留時間が長くなり、完全な蒸気凝縮が確保される。凝縮器タンクは、複数のヒートパイプを収容する多孔上端部を有する円筒状または長方形状のタンクである。ヒートパイプは、蒸気の凝縮熱を除去して、そのような熱を上側予熱器または上側蒸発室に伝える。生産水は、生成物排出口を通じて生成物凝縮器から出ることができる。
【0014】
沸騰および凝縮の複数の段階を上側凝縮器の下側に与えることができ、したがって、蒸留の複数の段階のための熱が再循環される。底部蒸発室にある最後の段階を除き、各段階は、蒸発室、デミスタ、凝縮器、および複数のヒートパイプから成り、これらの全ては前述したものと同一である。
【0015】
底部蒸発室は、熱エネルギ源がその下側或いは蒸発室自体の内側に配置される点を除き、上側蒸発室と同じである。蒸発のための熱は、電気、天然ガス、石油、または他の炭化水素燃料、または約110℃以上の温度を与える任意の廃棄物源であってもよい。
【0016】
より詳細には、本開示は、注入口と、予熱器と、脱気装置と、複数の蒸発室と、デミスタと、ヒートパイプと、生成物凝縮器と、廃棄物排出口と、複数の生成物排出口と、加熱室と、制御システムとを備える浄水及び脱塩システムであって、凝縮熱が回収されて更なる蒸発のために再使用され、蒸留エネルギが、電気、油、炭化水素、または天然ガスの燃焼、または廃熱から成っていてもよく、制御システムが、ユーザ介入または洗浄を必要とすることなく浄水および脱塩の連続動作を可能にし、システムが、汚染水サンプルから、微生物学的汚染物質、放射性汚染物質、金属、塩、揮発性有機物、および不揮発性有機物を含む複数の汚染物質の種類を除去することができ、それにより、汚染された水に含まれる汚染物質種が表1のMCL列に示されるレベルの25倍以下のレベルを有するときに、システムで浄化された水に含まれる全ての汚染物質種のレベルが表1のMCL列に示されるレベルを下回る、浄水及び脱塩システムに関する。
【0017】
更なる態様において、システムは、注入水の量の約20%〜約95%である浄水量を生成する。
【0018】
更なる態様において、システムが少なくとも約2ヶ月の使用にわたって洗浄を必要としない。
【0019】
更なる態様において、システムが少なくとも約1年の使用或いはそれ以上にわたって洗浄を必要としない。
【0020】
更なる態様において、システムは、注入口を通じた水の流れを調節するための注入口スイッチを備える。
【0021】
更なる態様において、注入口スイッチは、ソレノイド、バルブ、およびアパーチャから成るグループから選択される機構を備える。
【0022】
更なる態様において、注入口スイッチが制御システムにより制御される。
【0023】
更なる態様において、システムは停止制御器を備える。
【0024】
更なる態様において、停止制御器は、手動制御器、氾濫制御器、凝縮器容量制御器、および蒸発室容量制御器から成るグループから選択される。
【0025】
更なる態様において、制御システムは、蒸発室内の温度センサ、凝縮器フロート、および氾濫検出器のうちの少なくとも1つからのフィードバックに基づいて注入口を制御する。
【0026】
更なる態様において、制御システムは、浄化システムからのフィードバックに基づいてスイッチを制御する。
【0027】
更なる態様において、フィードバックは、生産水容器内の水の量、生成物排出口を通る生産水の流れ、水流の時間、水流がない時間、蒸発室内の水の量、漏れの検出、蒸発室圧力、流出水水質(総溶解固形分)、蒸発室内の圧力差、および蒸発室越流堰フロートを横切る水の移動から成るグループから選択される少なくとも1つの特性に基づく。
【0028】
更なる態様において、システムは流量コントローラを備える。
【0029】
更なる態様において、流量コントローラが圧力調整器を備える。
【0030】
更なる態様において、圧力調整器が約0kPa〜250kPa(0〜36psi)の水圧を維持する。
【0031】
更なる態様において、システムは堆積物トラップを備える。
【0032】
更なる態様において、予熱器から出る水が少なくとも約96℃の温度を有する。
【0033】
更なる態様において、脱気装置は、略垂直方向に向けられ、上端および下端を有する。
【0034】
更なる態様において、予熱器からの加熱水が脱気装置の上端近傍に入る。
【0035】
更なる態様において、加熱水が脱気装置の下端近傍から出る。
【0036】
更なる態様において、蒸発室からの蒸気が脱気装置の下端近傍に入る。
【0037】
更なる態様において、蒸気が脱気装置の上端近傍から出る。
【0038】
更なる態様において、脱気装置は、水と蒸気との混合を促進させるように適合されているマトリクスを備える。
【0039】
更なる態様において、マトリクスが略球状の粒子を備える。
【0040】
更なる態様において、マトリクスが非球状の粒子を備える。
【0041】
更なる態様において、マトリクスは、脱気装置内で均一な充填を可能にするように選択されるサイズを有する粒子を備える。
【0042】
更なる態様において、マトリクスが異なるサイズの粒子を備え、粒子がサイズ勾配を成して脱気装置内に配置される。
【0043】
更なる態様において、脱気装置から出る水が有機物および揮発性ガスを実質的に伴わない。
【0044】
更なる態様において、蒸発室は、下側の凝縮器から伝えられる熱を供給する複数のヒートパイプを含む。
【0045】
更なる態様において、蒸発室が排水管を更に備え、排水管が蒸発室にあり或いは蒸発室の中央の周囲にある。
【0046】
更なる態様において、蒸発室は、各ヒートパイプを取り囲む同心多孔円筒体内に封入される複数の粒子を備える自浄媒体を更に備える。
【0047】
更なる態様において、蒸発室は、少なくとも蒸発室内のヒートパイプの近傍の領域で沈殿の蓄積を妨げるための自浄媒体を備える。
【0048】
更なる態様において、媒体が複数の粒子を備える。
【0049】
更なる態様において、粒子が略球状である。
【0050】
更なる態様において、粒子は、蒸発室内の水の沸騰による粒子の略連続的な攪拌を可能にする特性を備える。
【0051】
更なる態様において、特性は、比重、サイズ、形態、個体数、および組成から成るグループから選択される。
【0052】
更なる態様において、粒子が選択された硬度を有し、硬度は、粒子または蒸発室を実質的に腐食させることなく粒子による蒸発室の汚れ落としを可能にする。
【0053】
更なる態様において、粒子は、セラミック、金属、ガラス、または石から構成される。
【0054】
更なる態様において、粒子が約1.0よりも大きく且つ約8.0よりも小さい比重を有する。
【0055】
更なる態様において、粒子が約2.0〜約5.0の比重を有する。
【0056】
更なる態様において、加熱室は、電気加熱素子、ガスまたは石油バーナー、または廃熱源からの熱を伝えるヒートパイプを更に備え、加熱室が蒸発室の底部に隣接する。
【0057】
更なる態様において、デミスタが蒸発室の上面近傍に位置される。
【0058】
更なる態様において、蒸発室からの蒸気が加圧下でデミスタに入る。
【0059】
更なる態様において、デミスタが圧力差を生み出すように構成され、圧力差が125〜2500Pa以上である。
【0060】
更なる態様において、デミスタは、サイクロン作用によって清浄蒸気を廃蒸気から分離するように適合されている。
【0061】
更なる態様において、蒸発室は、凝縮滴がデミスタに入ることをバッフルガードおよび金属溝によって防止する。
【0062】
更なる態様において、廃蒸気に対する清浄蒸気の比率が約10:1よりも大きい。
【0063】
更なる態様において、蒸気品質は、清浄な蒸気純度、廃蒸気に対する清浄蒸気の比率、および清浄蒸気の総量から成るグループから選択される少なくとも1つの品質を備える。
【0064】
更なる態様において、デミスタ制御パラメータは、清浄蒸気排出口の凹部位置、デミスタにわたる圧力差、蒸気注入口の流れに対する抵抗、および蒸気排出口の流れに対する抵抗から成るグループから選択される少なくとも1つのパラメータを備える。
【0065】
更なる態様において、システムは、凝縮器生成物を冷却するためのヒートパイプを備える。
【0066】
更なる態様において、生産水が生成物排出口を通じて生成物凝縮器から出る。
【0067】
更なる態様において、廃水が廃棄物排出口を通じてシステムから出る。
【0068】
更なる態様において、制御システムは、システムが安定な動作温度に達するまで生産水を廃棄物排出路へそらす。
【0069】
更なる実施形態において、本開示は、水を浄化して脱塩する方法であって、第1の濃度の少なくとも1つの汚染物質を備える注入水源を設けるステップと、注入水の温度を90℃を超えて上昇させることができる予熱器に注入水を通過させるステップと、脱気装置内でガスの反対方向の流れに抗して注入水を逆流させることによって、ほぼ全ての有機物、揮発性物質、およびガスを注入水から取り除くステップと、蒸気の形成を可能にする条件下で水を蒸発室内に10〜90分或いはそれ以上の平均滞留時間にわたって維持するステップと、蒸気を蒸発室からサイクロンデミスタへ排出するステップと、清浄な蒸気の発生量がデミスタからの廃棄物の発生量よりも少なくとも約4倍多くなるようにデミスタ内で清浄な蒸気を汚染物質を含む廃棄物から分離するステップと、清浄な蒸気を凝縮させて、第1の濃度よりも低い第2の濃度の少なくとも1つの汚染物質を備える浄水を発生させるステップと、回収される熱の量が凝縮熱の少なくとも50%になるように、凝縮器から熱を回収して上側蒸発室または予熱器へ伝えるステップとを備える方法に関する。
【0070】
更なる態様において、少なくとも1つの汚染物質は、微生物、放射性核種、塩、有機物から成るグループから選択される汚染物質を備え、第2の濃度が表3に示される濃度以下であり、第1の濃度が第2の濃度の少なくとも約10倍である。
【0071】
更なる態様において、第1の濃度が第2の濃度よりも少なくとも約25倍大きい。
【0072】
更なる態様において、ガスは、蒸気、空気、および窒素から成るグループから選択される。
【0073】
更なる態様において、プロセスステップは、洗浄またはメンテナンスを必要とすることなく少なくとも約3ヶ月間にわたって自動的に繰り返される。
【0074】
更なる態様において、プロセスステップは、洗浄またはメンテナンスを必要とすることなく少なくとも約1年間にわたって自動的に繰り返される。
【0075】
更なる態様において、蒸発室、凝縮器、および予熱器の積層構造が、蒸発室と凝縮器とを分離する多孔板を伴って金属シェル内に封入される。
【0076】
更なる態様において、多孔板は、ヒートパイプ、脱気装置、デミスタ、塩水オーバーフローチューブ、および廃棄物流チューブの通過を可能にする。
【0077】
更なる態様において、蒸発室、予熱器、ヒートパイプの構造の材料が非腐食性チタン合金から形成される。
【0078】
更なる態様において、非腐食性チタン合金がTi−6Al,4V合金を備える。
【0079】
更なる態様において、蒸発室、予熱器、およびヒートパイプは、非腐食性クロロフルオロカーボンポリマーでコーティングされる普通鋼または他の金属または合金を備える。