特許第5778042号(P5778042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5778042ノルモルフィナンの還元的アルキル化のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778042
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ノルモルフィナンの還元的アルキル化のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 489/08 20060101AFI20150827BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20150827BHJP
   A61P 25/36 20060101ALN20150827BHJP
   A61K 31/485 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
   C07D489/08
   !A61P25/04
   !A61P25/36
   !A61K31/485
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-550321(P2011-550321)
(86)(22)【出願日】2010年2月17日
(65)【公表番号】特表2012-518013(P2012-518013A)
(43)【公表日】2012年8月9日
(86)【国際出願番号】US2010024372
(87)【国際公開番号】WO2010096416
(87)【国際公開日】20100826
【審査請求日】2013年1月9日
(31)【優先権主張番号】61/153,021
(32)【優先日】2009年2月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595181003
【氏名又は名称】マリンクロッド エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン, エドモンド シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ, シャーロン
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/012005(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/137785(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/035195(WO,A1)
【文献】 米国特許第02578787(US,A)
【文献】 国際公開第2007/083839(WO,A1)
【文献】 Jerry March,Advanced Organic Chemistry,Wiley-Interscience,1985年,第3版,pp.798-799
【文献】 Name Reactions,2003年,second edition,237
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,A61K
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
17位の窒素原子が−CH10により置換されるモルフィナンを調製するプロセスであって、17位に第二級アミンを含むノルモルフィナンを、R10がヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択されるR10CHOと、ボラート塩、二塩基性および三塩基性リン酸塩、炭酸水素塩、水酸化物塩、炭酸塩、アルキルアミン塩基、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノピリジン、有機緩衝剤およびこれらの組み合わせから選択されるプロトン受容体と、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせから選択される還元剤と接触させて該モルフィナンを形成することを含み、該プロセスは金属触媒を使用せずに起こるプロセス。
【請求項2】
前記ノルモルフィナンはノルコデイン、ノルモルヒネ、ノルテバイン、ノルオリパビン、ノルオキシモルホン、ノルジヒドロモルヒネ、ノルジヒドロコデイン、ノルヒドロコドン、ノルヒドロモルホン、ノルオキシコドン、ノルデキストロメトルファン、ノルデキストロルファン、ノルレボメトルファン、ノルレボルファノール、ノルブプレノルフィン、ノルオキシモモルホール、ノルオキシコドール、ノルシノメニンおよびノルジヒドロシノメニンから選択され;前記モルフィナンはコデイン、モルヒネ、テバイン、オリパビン、オキシモルフォン、ジヒドロモルホン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシコドン、オキシコデイノン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナルフラフィン、モルヒノン、エチルモルヒネ、ブトルファノール、デキストロメトルファン、デキストロルファン、レボメトルファン、レボルファノール、ブプレノルフィン、シノメニンおよびジヒドロシノメニンから選択され;R10はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ノルモルフィナンはノルコデイン、ノルモルヒネ、ノルテバイン、ノルオキシモルホン、ノルジヒドロモルヒネ、ノルジヒドロコデイン、ノルヒドロコドン、ノルヒドロモルホン、ノルオキシコドン、ノルデキストロメトルファン、ノルデキストロルファン、ノルレボメルファン、ノルレボルファノール、ノルシノメニンおよびノルジヒドロシノメニンから選択され;前記プロトン受容体はトリエチルアミンであり;R10はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ノルモルフィナンのイミニウム塩を含む中間体化合物は前記反応において前記モルフィナンの形成の前に形成される、請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記モルフィナンは式(IIIa)を含み、前記プロセスは下記の反応スキームに従い:
(a)前記プロトン受容体存在下で、式(Ia)を含む前記ノルモルフィナンを、R10CHOと接触させて式(IIa)を含む前記中間体化合物を形成すること;および
(b)式(IIa)を含む該化合物を、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせから選択される前記還元剤と接触させて式(IIIa)を含む前記化合物を形成すること:
を含み
【化6】


式中、
、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11から選択され;
は水素およびヒドロキシルから選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルから選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基から選択され;
Xは酸素および硫黄から選択される、
請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
、R、RおよびRは水素であり、Rは{=}Oであり、R10はシクロアルキル基であり、Xは酸素である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
、R、RおよびRは水素であり、Rはヒドロキシル基であり、R10はシクロアルキルメチル基であり、Xは酸素である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
式(Ia)、(IIa)および(IIIa)を含む化合物の光学活性は(−)または(+)であり、炭素5、13、14および9の配置はそれぞれ、RRRR、RRRS、RRSR、RSRR、SRRR、RRSS、RSSR、SSRR、SRRS、SRSR、RSRS、RSSS、SRSS、SSRS、SSSRおよびSSSSから選択されるが、ただし15位および16位の炭素はどちらもその分子のα面またはその分子のβ面のどちらかにある、請求項5〜7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記モルフィナンは式(IIIb)を含み、前記プロセスは下記反応スキームに従い:(a)前記プロトン受容体の存在下で、式(Ib)を含む前記ノルモルフィナンを、R10CHOと接触させて式(IIb)を含む前記中間体化合物を形成すること;および
(b)式(IIb)を含む前記化合物を、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせから選択される前記還元剤と接触させて式(IIIb)を含む前記化合物を形成すること
を含み:
【化7】

式中、
、R、R、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11から選択され;
は水素およびヒドロキシルから選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルから選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項10】
、R、R、R、RおよびRは水素であり、Rは{=}Oであり、R10はシクロアルキル基である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
、R、R、R、RおよびRは水素であり、Rはヒドロキシル基であり、R10はシクロアルキルメチル基である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
式(Ib)、(IIb)および(IIIb)を含む化合物の光学活性は(−)または(+)であり、C13、C14およびC9の配置はそれぞれ、RRR、RRS、RSR、SRR、SRS、SSR、RSSおよびSSSから選択されるが、ただし15位および16位の炭素はどちらもその分子のα面またはその分子のβ面のどちらかにある、請求項9〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記還元剤はギ酸であり、前記反応はプロトン性溶媒の存在下で行われる、請求項1〜12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロトン受容体はトリエチルアミンであり;R10はシクロプロピルメチルおよびシクロブチルメチルから選択され;前記反応はアルコール基を含むプロトン性溶媒の存在下で行われる、請求項1〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応はワンポットプロセスで行われる、請求項1〜14のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、2009年2月17日に出願された、米国仮特許出願第61/153,201号(その全体が、参照により本明細書中に援用される)の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は全般的に、N−アルキル化モルフィナンの合成方法に関する。特に、本プロセスは、ノルモルフィナンおよびカルボキシアルデヒドの反応から形成されるイミニウム塩を還元する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
N−アルキル化モルフィナンは重要な医薬品であり、通常鎮痛薬、アヘン剤アゴニストおよびアヘン剤アンタゴニストとして使用される。これらの薬の使用の増加に伴い、多様なN−アルキル置換モルフィナンの合成にこの化合物の実用的で効率的な調製方法が不可欠となっている。
【0004】
現在、当該技術分野において公知のN−アルキル化モルフィナンの合成方法には、主に2つの問題:(a)遷移金属触媒への依存性および(b)アルキル化のための水素の供給源としての水素ガスの使用のうちの少なくとも1つの問題がある。遷移金属触媒は、費用がかかるうえ有毒であり、最終の生成物に所定の百万分率を超える遷移金属が含まれていないことを確認するため最終生成物の試験が必要となる。加えて水素ガスは有害であり、合成方法には通常高い圧力を利用する。従来技術の方法の中には、反応の触媒に水素化ホウ素を加えるものもある。この方法は、所望の生成物から副生成物を分離しにくく、ケト基が存在する場合、反応に−20°〜−30℃という比較的低い温度が必要とされるため、回避することが望ましかった。現在のこうした問題を踏まえて、効率的で費用効果に優れたN−アルキル化ノルモルフィナンの合成方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、N−アルキル化モルフィナンを、対応するノルモルフィナン化合物から合成するプロセスを提供する。
【0006】
本発明の一態様は、N−アルキル化モルフィナンの調製プロセスを包含する。この方法は、17位に第二級アミンを含むノルモルフィナンを、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択されるR10を含むアルキル化剤と、プロトン受容体と、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤と接触させて17位にNR10を含むN−アルキル化モルフィナンを形成することを含む。
【0007】
追加の態様では、本発明は、式(IIIa)を含む化合物の調製プロセスを包含する。このプロセスは、以下の反応スキームに従い:(a)プロトン受容体の存在下で、式(Ia)を含む化合物を、R10を含むアルキル化剤と接触させて式(IIa)を含む化合物を形成すること;および(b)式(IIa)を含む化合物を、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤と接触させて式(IIIa)を含む化合物を形成することを含む:
【0008】
【化1】
【0009】
式中、
、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11からなる群から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11からなる群から選択され;
は水素およびヒドロキシルからなる群から選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルからなる群から選択され;
10はヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基からなる群から選択され;
Xは酸素および硫黄からなる群から選択される。
【0010】
別の態様では、本発明は、式(IIIb)を含む化合物の調製プロセスを包含する。このプロセスは、以下の反応スキームに従い:(a)プロトン受容体の存在下で、式(Ib)を含む化合物を、R10を含むアルキル化剤と接触させて式(IIb)を含む化合物を形成すること;および(b)式(IIb)を含む化合物を、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤と接触させて式(IIIb)を含む化合物を形成することを含む:
【0011】
【化2】
【0012】
式中、
、R、R、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11からなる群から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11からなる群から選択され;
は水素およびヒドロキシルからなる群から選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルからなる群から選択され;
10はヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基からなる群から選択される。
一実施形態において、たとえば、以下の項目が提供される。
(項目1)
17位にNR10を含むN−アルキル化モルフィナンを調製するプロセスであって、17位に第二級アミンを含むノルモルフィナンを、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択されるR10を含むアルキル化剤と、プロトン受容体と、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせから選択される還元剤と接触させて17位にNR10を含む該N−アルキル化モルフィナンを形成することを含む、プロセス。
(項目2)
前記ノルモルフィナンはノルコデイン、ノルモルヒネ、ノルテバイン、ノルオリパビン、ノルオキシモルホン、ノルジヒドロモルヒネ、ノルジヒドロコデイン、ノルヒドロコドン、ノルヒドロモルホン、ノルオキシコドン、ノルデキストロメトルファン、ノルデキストロルファン、ノルレボメトルファン、ノルレボルファノール、ノルブプレノルフィン、ノルオキシモモルホール、ノロキシコドール、ノルシノメニンおよびノルジヒドロシノメニンから選択され;前記N−アルキル化モルフィナンはコデイン、モルヒネ、テバイン、オリパビン、オキシモルフォン、ジヒドロモルホン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシコドン、オキシコデイノン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナルフラフィン、モルヒノン、エチルモルヒネ、ブトルファノール、デキストロメトルファン、デキストロルファン、レボメトルファン、レボルファノール、ブプレノルフィン、シノメニンおよびジヒドロシノメニンから選択され;前記アルキル化剤はアルデヒドを含み;R10はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから選択される、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記ノルモルフィナンはノルコデイン、ノルモルヒネ、ノルテバイン、ノルオキシモルホン、ノルジヒドロモルヒネ、ノルジヒドロコデイン、ノルヒドロコドン、ノルヒドロモルホン、ノルオキシコドン、ノルデキストロメトルファン、ノルデキストロルファン、ノルレボメソルファン、ノルレボルファノール、ノルシノメニンおよびノルジヒドロシノメニンから選択され;前記プロトン受容体はトリエチルアミンであり;前記アルキル化剤はアルデヒドを含み、R10はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから選択される、項目1または2に記載のプロセス。
(項目4)
前記ノルモルフィナンのイミニウム塩を含む中間体化合物は前記反応において前記N−アルキル化モルフィナンの形成の前に形成される、項目1〜3のいずれかに記載のプロセス。
(項目5)
前記N−アルキル化モルフィナンは式(IIIa)を含み、前記プロセスは下記の反応スキームに従い:
(a)前記プロトン受容体存在下で、式(Ia)を含む前記ノルモルフィナンを、R10を含む前記アルキル化剤と接触させて式(IIa)を含む前記中間体化合物を形成すること;および
(b)式(IIa)を含む該化合物を、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせから選択される前記還元剤と接触させて式(IIIa)を含む前記化合物を形成すること:
を含み
【化6】

式中、
、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11から選択され;
は水素およびヒドロキシルから選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルから選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基から選択され;
Xは酸素および硫黄から選択される、
項目4に記載のプロセス。
(項目6)
、R、RおよびRは水素であり、Rは{=}Oであり、R10はシクロアルキル基であり、Xは酸素である、項目5に記載のプロセス。
(項目7)
、R、RおよびRは水素であり、Rはヒドロキシル基であり、R10はシクロアルキルメチル基であり、Xは酸素である、項目5に記載のプロセス。
(項目8)
式(Ia)、(IIa)および(IIIa)を含む化合物の光学活性は(−)または(+)であり、炭素5、13、14および9の配置はそれぞれ、RRRR、RRRS、RRSR、RSRR、SRRR、RRSS、RSSR、SSRR、SRRS、SRSR、RSRS、RSSS、SRSS、SSRS、SSSRおよびSSSSから選択されるが、ただし15位および16位の炭素はどちらもその分子のα面またはその分子のβ面のどちらかにある、項目5〜7のいずれかに記載のプロセス。
(項目9)
前記N−アルキル化モルフィナンは式(IIIb)を含み、前記プロセスは下記反応スキームに従い:
(a)前記プロトン受容体の存在下で、式(Ib)を含む前記ノルモルフィナンを、R10を含む前記アルキル化剤と接触させて式(IIb)を含む前記中間体化合物を形成すること;および
(b)式(IIb)を含む前記化合物を、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせから選択される前記還元剤と接触させて式(IIIb)を含む前記化合物を形成すること
を含み:
【化7】

式中、
、R、R、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11から選択され;
は水素およびヒドロキシルから選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルから選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基から選択される、
項目4に記載のプロセス。
(項目10)
、R、R、R、RおよびRは水素であり、Rは{=}Oであり、R10はシクロアルキル基である、項目9に記載のプロセス。
(項目11)
、R、R、R、RおよびRは水素であり、Rはヒドロキシル基であり、R10はシクロアルキルメチル基である、項目9に記載のプロセス。
(項目12)
式(Ib)、(IIb)および(IIIb)を含む化合物の光学活性は(−)または(+)であり、C13、C14およびC9の配置はそれぞれ、RRR、RRS、RSR、SRR、SRS、SSR、RSSおよびSSSから選択されるが、ただし15位および16位の炭素はどちらもその分子のα面またはその分子のβ面のどちらかにある、項目9〜11のいずれかに記載のプロセス。
(項目13)
前記アルキル化剤は式R10CHOを含むアルデヒドを含み、前記還元剤はギ酸であり、前記反応はプロトン性溶媒の存在下で行われる、項目1〜12のいずれかに記載のプロセス。
(項目14)
前記プロトン受容体はトリエチルアミンであり;前記アルキル化剤はカルボキシアルデヒドを含み、R10はシクロプロピルメチルおよびシクロブチルメチルから選択され;前記反応はアルコール基を含むプロトン性溶媒の存在下で行われる、項目1〜13のいずれかに記載のプロセス。
(項目15)
前記反応はワンポットプロセスで行われる、項目1〜14のいずれかに記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、高収率でN−アルキル化モルフィナンを生成する効率的なプロセスを提供する。特に本発明のプロセスは、有毒な金属触媒および危険な水素ガスを使用する必要がない。さらに、本発明のプロセスは、中間生成物の単離または精製を行うことなくワンポットプロセスで行うこともできる。
【0014】
(a)N−アルキル化モルフィナンの合成プロセス
本発明の一態様は、N−アルキル化モルフィナン化合物の効率的な生成プロセスを提供する。このプロセスは、17位に第二級アミンを含むノルモルフィナンを、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択されるR10を含むアルキル化剤と、プロトン受容体と、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤と接触させて17位にNR10を含むN−アルキル化モルフィナンを形成することを含む。
【0015】
一般に、ノルモルフィナンは、17位の窒素が第二級アミンを構成するモルフィナン構造を持つ任意の化合物を含む。当業者であれば、「ノル(nor)」化合物は当該技術分野において公知の方法により生成してもよいし、あるいは出発材料として購入してもよいことを理解するであろう。ノルモルフィナンの非限定的な例として、ノルコデイン、ノルモルヒネ、ノルテバイン、ノルオリパビン、ノルオキシモルホン、ノルジヒドロモルヒネ、ノルジヒドロコデイン、ノルヒドロコドン、ノルヒドロモルホン、ノルオキシコドン、ノルデキストロメトルファン、ノルデキストロルファン、ノルレボメソルファン、ノルレボルファノール、ノルブプレノルフィン、ノルオキシモモルホール、ノルオキシコドール ノルシノメニン、ノルジヒドロシノメニンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、ノルモルフィナンは、ノルオキシモルホンを含む。
【0016】
N−アルキル化モルフィナンは、17位に第三級アミンを含む任意のモルフィナン化合物を含み、17位のアミンはヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基を含む。N−アルキル化モルフィナンの好適な例として、コデイン、モルヒネ、テバイン、オリパビン、オキシモルホン、ジヒドロモルホン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシコドン、オキシコデイノン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナルフラフィン、モルヒノン、エチルモルヒネ、ブトルファノール、デキストロメトルファン、デキストロルファン、レボメトルファン、レボルファノール、ブプレノルフィン、シノメニン、ジヒドロシノメニンおよびこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。好ましい実施形態では、N−アルキル化モルフィナンは、ナルトレキソン、ナルブフィンまたは6−ケトナルブフィンを含む。
【0017】
一般に、17位の窒素のアルキル化に使用するR10基は、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基である。好ましい実施形態では、R10基は、アルキル基でも、シクロアルキル基でも、シクロアルキルメチル基でも、アルケニル基でも、アルキニル基でも、またはアリール基でもよい。例示的実施形態では、R10基はメチル基でも、シクロプロピルメチル基でも、シクロブチルメチル基でも、またはアリル基でもよい。
【0018】
本プロセスは、N−アルキル化モルフィナンの形成の前にノルモルフィナン化合物のイミニウム塩を含む中間体化合物を形成することを含む。イミニウム塩は、ギ酸、ギ酸メチル、ホルムアミド、ギ酸とギ酸のアルカリ塩との混合物またはこれらの組み合わせにより還元される基質として働くことで、N−アルキル化モルフィナンを形成する。イミニウム塩は一般に、17位に式N=CR10を含むプロトン化または置換イミン化合物と考えられ、ここでR10は上記で定義したようなヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基である。好ましい実施形態では、イミニウム塩のR10基は、アルキルでも、シクロアルキルでも、シクロアルキルメチルでも、アルケニルでも、アルキニルでも、またはアリール基でもよい。例示的実施形態では、R10基はメチルでも、シクロプロピルメチルでも、シクロブチルメチルでも、またはアリルでもよい。
【0019】
(b)式(IIIa)を含む化合物の合成
一実施形態では、式(Ia)を含むノルモルフィナンから式(IIIa)を含むN−アルキル化モルフィナンを合成する。説明の目的のために、反応スキーム1は、本発明の一態様による式(IIIa)を含む化合物の生成を示す:
【0020】
【化3】
【0021】
式中、
、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11からなる群から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11からなる群から選択され;
は水素およびヒドロキシルからなる群から選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルからなる群から選択され;
10はヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基からなる群から選択され;
Xは酸素および硫黄からなる群から選択される。
【0022】
好ましい実施態様では、R、R、RおよびRは各々水素であり、Xは酸素である。Rは好ましくは{−}OR11であり、ここでR11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基からなる群から選択される。Rは好ましくはヒドロキシルである。Rは好ましくは{=}Oである。さらに、R10は好ましくはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アリルまたはアリールであるか;あるいは一層好ましくはメチル、アリル、シクロプロピルメチルまたはシクロブチルメチルである。例示的な一実施形態では、R、R、RおよびRは各々水素であり、Xは酸素であり、Rはヒドロキシルであり、Rは{−OH}であり、Rは{=}Oであり、R10はシクロプロピルメチルである。別の例示的な実施形態では、R、R、RおよびRは各々水素であり、Xは酸素であり、Rは{−}OHであり、Rは{−}OHであり、Rは{=}Oであり、R10はシクロブチルメチルである。
【0023】
式(IIIa)を含む代表的な化合物として、オキシモルホン、ジヒドロモルホン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシコドン、オキシコデイノン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルブフィン、ナルメフェンがあるが、これに限定されるものではない。
【0024】
(c)式(IIIb)を含む化合物の合成
追加の実施形態では、式(Ib)を含むノルモルフィナンから式(IIIb)を含むN−アルキル化モルフィナンを合成する。説明の目的のために、反応スキーム2は、本発明の一態様による式(IIIb)を含む化合物の生成を示す:
【0025】
【化4】
【0026】
式中、
、R、R、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよび{−}OR11からなる群から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲンおよび{−}OR11からなる群から選択され;
は水素およびヒドロキシルからなる群から選択され;
は{=}Oおよびヒドロキシルからなる群から選択され;
10はヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;
11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基からなる群から選択される。
【0027】
好ましい実施形態では、R、RおよびRは各々水素である。加えて、Rは好ましくは水素またはヒドロキシルである。Rは好ましくは{−}OR11であり、ここでR11は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびヒドロキシル保護基からなる群から選択される。Rは好ましくは水素または{−}OR11である。Rは好ましくはヒドロキシルまたは{=}Oである。R10は好ましくはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アリルまたはアリールであるか;あるいは一層好ましくはメチル、アリル、シクロプロピルメチルまたはシクロブチルメチルである。
【0028】
式(IIIb)を含む代表的な化合物として、ブトルファノール、デキストロメトルファン、デキストロルファン、レボメトルファンおよびレボルファノールがあるが、これに限定されるものではない。
【0029】
(d)反応混合物
本発明のプロセスは、プロトン受容体の存在下で式(Ia)または(Ib)を含む化合物をアルキル化剤と組み合わせて反応混合物を形成することから開始する。本発明のプロセスに使用するのに好適なアルキル化剤は様々ある。一般に、アルキル化剤は、アルキル基をアルキル化剤からノルモルフィナンの17位の窒素に転移するものであり、したがってアルキル基の転移が可能な任意の化合物と考えることができる。好ましい実施形態では、アルキル化剤は、一般式R10CHO、式中、R10はヒドロカルビルでも、または置換ヒドロカルビルでもよいアルデヒドとしてもよい。好ましい実施形態では、R10はアルキルでも、置換アルキルでも、シクロアルキルでも、置換シクロアルキルでも、シクロアルキルメチルでも、アルケニルでも、アルキニルでも、アリールでも、シクロプロピルメチルでも、シクロブチルメチルでも、またはアリルでもよい。使用してもよいアルデヒドの例として、アルキル−アルデヒド、たとえばメタナール、エタナール、プロパナール、置換プロパナール、ブタナール、置換ブタナール、ペンタナール、置換ペンタナール、ヘキサナール、置換ヘキサナール、ヘプタナール、置換ヘプタナール、オクタナール、置換オクタナール、ノナナール、置換ノナナール、デカナール、置換デカナール、ウンデカナール、置換ウンデカナール、ドデカナール、置換ドデカナールおよびこれらの置換変異体;シクロアルキル−アルデヒド、たとえばシクロプロパンカルボキシアルデヒド、シクロブタンカルボキシアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、シクロヘプタンカルボキシアルデヒド、シクロオクタンカルボキシアルデヒド、シクロノナンカルボキシアルデヒド、シクロデカンカルボキシアルデヒド、ベンザルアルデヒド、シンナムアルデヒド、トルアルデヒド(4−メチルベンズアルデヒド)およびこれらの置換変異体;および2つの末端カルボニル基を持つアルデヒド、たとえばエタンジアール、プロパンジアール、ブタンジアール、ペンタンジアール、ヘキサンジアール、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ウンデカンジアール、ドデカンジアールおよびこれらの置換変異体があるが、これに限定されるものではない。好ましい実施形態では、アルキル化剤は、シクロプロパンカルボキシアルデヒドでも、またはシクロブタンカルボキシアルデヒドでもよい。
【0030】
式(Ia)または(Ib)を含む化合物とアルキル化剤とのモル/モル比は、異なることがある。一般に、式(Ia)または(Ib)を含む化合物とアルキル化剤とのモル/モル比は、約1:0.5〜約1:5の範囲であってもよい。好ましい実施形態では、式(Ia)または(Ib)を含む化合物とアルキル化剤との比率は、約1:1〜約1:2の範囲であってもよい。例示的実施形態では、式(Ia)または(Ib)を含む化合物とアルキル化剤とのモル/モル比は約1:1.4であってもよい。
【0031】
本発明のプロセスにはさらに、式(IIa)または(IIb)を含む中間体化合物を還元する試剤が必要とされる。一般に、還元剤はギ酸、ギ酸のエステル、ギ酸のアルカリ塩、ホルムアミド、ギ酸とギ酸の塩との混合物、またはこれらの任意の組み合わせとする。ギ酸の好適なエステルとして、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸トリメチル、ギ酸トリエチル、クロロギ酸メチルなどがあるが、これに限定されるものではない。ギ酸の好適なアルカリ塩の非限定的な例として、ギ酸ナトリウム、ギ酸リチウム、ギ酸カリウムおよびギ酸セシウムが挙げられる。例示的実施形態では、還元剤はギ酸であってもよい。
【0032】
一般に、式(Ia)または(Ib)を含む化合物と還元剤とのモル/モル比は、約1:1〜約1:20の範囲とする。好ましい実施形態では、式(Ia)または(Ib)を含む化合物と還元剤とのモル/モル比は、約1:10〜約1:15の範囲であってもよい。例示的実施形態では、式(Ia)または(Ib)を含む化合物と還元剤とのモル/モル比は約1:12であってもよい。
【0033】
本発明のプロセスはまた、プロトン受容体の存在下で行う。一般に、プロトン受容体は、pKaが約7〜約13、好ましくは約8〜約10である。使用してもよい代表的なプロトン受容体として、ボラート塩(たとえば、NaBOなど)、二塩基性および三塩基性リン酸塩(たとえば、NaHPOおよびNaPOなど)、炭酸水素塩(たとえば、NaHCO、KHCO、これらの混合物など)、水酸化物塩(たとえば、NaOH、KOH、これらの混合物など)、炭酸塩(たとえば、NaCO、KCO、これらの混合物など)、アルキルアミン塩基(たとえば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなど)、有機塩基(たとえば、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノピリジンおよびこれらの混合物など)、有機緩衝剤(たとえば、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)、2−(4−モルホリニル)エタンスルホン酸(MES)、4−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、1,4−ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)、[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、2−[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、これらの塩および/または混合物など)ならびにこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。好ましい実施形態では、プロトン受容体は、トリエチルアミンでも、トリメチルアミンでも、トリブチルアミンでも、またはピリジンでもよい。例示的実施形態では、プロトン受容体はトリエチルアミンであってもよい。式(Ia)または(Ib)を含む化合物とプロトン受容体とのモル/モル比は、約1:1〜約1:20の範囲であってもよい。好ましい実施形態では、式(Ia)または(Ib)を含む化合物とプロトン受容体とのモル/モル比は、約1:5〜約1:10の範囲であってもよい。例示的実施形態では、式(Ia)または(Ib)を含む化合物とプロトン受容体とのモル/モル比は約1:8であってもよい。
【0034】
さらに、本発明のプロセスは一般に溶媒の存在下で行う。溶媒は、プロトン性溶媒でも、非プロトン性溶媒でも、または有機溶媒でもよい。プロトン性溶媒の好適な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ギ酸、酢酸、水およびこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。好適な非プロトン性溶媒の非限定的な例として、アセトン、アセトニトリル、ジエトキシメタン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)、N,N−ジメチルプロピオンアミド、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジメトキシメタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、酢酸エチル、ギ酸エチル、エチルメチルケトン、ホルムアミド、ヘキサクロロアセトン、ヘキサメチルホスホルアミド、酢酸メチル、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、塩化メチレン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、プロピオニトリル、スルホラン、テトラメチル尿素、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエン、トリクロロメタンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。有機溶媒の好適な例として、アルカンおよび置換アルカン溶媒(シクロアルカンを含む)、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ケトン、これらの組み合わせなどがあるが、これに限定されるものではない。使用してもよい具体的な有機溶媒としては、たとえば、アセトニトリル、ベンゼン、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルケトン、クロロベンゼン、クロロホルム、クロロメタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ジエチレングリコール、フルオロベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルメチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸ペンチル、酢酸n−プロピル、テトラヒドロフラン、トルエンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、溶媒は、プロトン性溶媒メタノールであってもよい。一般に、溶媒と式(Ia)または(Ib)を含む化合物との重量比は、約0.5:1〜約100:1の範囲となる。好ましい実施形態では、溶媒と式(Ia)または(Ib)を含む化合物との重量比は、約2:1〜約5:1の範囲であってもよい。
【0035】
(e)反応条件
一般に、この反応は、式(Ia)または(Ib)を含む化合物のかなりの部分を、式(IIIa)または(IIIb)を含む化合物に変換するのに十分な時間に応じて約20℃〜約120℃の範囲の温度で行えばよい。好ましい実施形態では、約40℃〜約100℃の範囲の温度で反応を行えばよい。例示的実施形態では、約50℃〜約80℃の範囲の温度で反応を行ってもよい。
【0036】
通常、反応については、反応の終了が、クロマトグラフィー(たとえば、HPLC:high performance liquid chromatography)など当業者に知られる任意の方法により決定されるまで十分な時間進行させる。この文脈では、「反応の終了」とは一般に、反応混合物に含まれる式(Ia)または(Ib)を含む化合物の量が、それぞれ反応の開始時に存在した量と比較して著しく減少し、式(IIIa)または(IIIb)を含む化合物の量が著しく増加することを意味する。通常、反応混合物中に残存している式(Ia)または(of)(Ib)を含む化合物の量は、約3%未満、好ましくは約1%未満であればよい。
【0037】
式(IIIa)または(IIIb)を含む化合物の収率は、異なることがある。通常、式(IIIa)または(IIIb)を含む化合物の収率は、少なくとも約50%であればよい。本発明の好ましい実施形態では、式(IIIa)または(IIIb)を含む化合物の収率は、少なくとも約65%であってもよい。
【0038】
この反応はさらに、1工程で全試薬を加えて反応混合物を形成するワンポットプロセスで行ってもよい。したがって、反応混合物は、上記で定義したとおり、式(Ia)または(Ib)を含む化合物、アルキル化剤、プロトン受容体および還元剤を含む。本発明のワンポットプロセスは実質的に、アルキル化試薬との反応終了時に式(IIa)または(IIb)を含む中間体化合物を単離または精製する、および/または還元剤を反応混合物に手作業で加える必要がない。
【0039】
(f)立体化学およびエナンチオマー
式(I)または(II)のどちらかを含む任意の化合物は、使用した出発材料がアヘン剤の絶対配置で(−)であるか、または(+)であるかにより、偏光の回転方向との関連で(−)でも、または(+)でもよい。さらに詳しくは、各キラル中心の立体配置は、R配置でも、またはS配置でもよい。本発明のプロセスにより形成される化合物は、モルフィナンを含む。説明の目的のために、モルフィナン化合物の炭素原子に下記に図示したように番号を付ける。
【0040】
【化5】
【0041】
こうしたモルフィナン化合物は、α面およびβ面を持つものと考えられる。本明細書に記載のいくつかの化合物は、少なくとも3つ、すなわち炭素C13、C14およびC9のキラル中心を持ち得るが、ただしC15原子およびC16原子はどちらも分子のα面、またはどちらも分子のβ面にあるものとする。さらに、化合物が炭素C4とC5との間に複素環式環を含む場合、C5もキラル中心になり得る。各キラル中心では、炭素原子の立体化学は独立にRまたはSである。
【0042】
式(Ia)、(IIa)および(IIIa)を含む化合物など本明細書に記載のいくつかの化合物は、少なくとも4つ、すなわち炭素C5、C9、C13およびC14のキラル中心を持ち得る。各キラル中心では、炭素原子の立体化学は独立にRまたはSである。炭素5、13、14および9の配置はそれぞれ、RRRRでも、RRRSでも、RRSRでも、RSRRでも、SRRRでも、RRSSでも、RSSRでも、SSRRでも、SRRSでも、SRSRでも、RSRSでも、RSSSでも、SRSSでも、SSRSでも、SSSRでもまたはSSSSでもよいが、ただしC15原子およびC16原子はどちらも分子のα面、またはどちらも分子のβ面にあるものとする。さらに、17位の窒素はRでも、またはSでもよく、選択したR8基によってはC6もキラル中心となることもあり、立体化学はRあるいはSである。
【0043】
式(Ib)、(IIb)および(IIIb)を含む化合物など本明細書に記載の追加の化合物は、少なくとも3つ、すなわち炭素C13、C14およびC9のキラル中心を持ち得る。各キラル中心では、炭素原子の立体化学は独立にRまたはSである。炭素13、14および9の配置はそれぞれ、RRRでも、RRSでも、RSRでも、SRRでも、SRSでも、SSRでも、RSSでも、またはSSSでもよいが、ただしC15原子およびC16原子はどちらも分子のα面、またはどちらも分子のβ面にあるものとする。さらに、17位の窒素はRでも、またはSでもよく、選択したR8基によってはC6もキラル中心となることもあり、立体化学はRあるいはSである。
【0044】
定義
本発明を理解しやすくするため、下記にいくつかの用語を定義する。
【0045】
本明細書に記載の化合物は不斉中心を持ち得る。非対称置換原子を含む本発明の化合物は、光学活性体で単離しても、またはラセミ体で単離してもよい。本発明の化合物のシスおよびトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物として単離しても、または別々の異性体形態として単離してもよい。具体的な立体化学または異性体形態を特に示さない限り、キラル体、ジアステレオ体、ラセミ体およびある構造の全幾何異性体についてはすべて意図している。本発明の化合物の調製に使用する全プロセスおよびそこで生成される中間体は本発明の一部と見なされる。
【0046】
「アシル」という用語は、本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部として、有機カルボン酸のCOOH基からヒドロキシ基を取り除いて形成される部分、たとえば、RC(O)−をいい、ここでRはR、RO−、RN−またはRS−であり、Rはヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、Rは水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。
【0047】
「アシルオキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部として、酸素結合(O)を介して結合した上記のようなアシル基、たとえば、RC(O)O−を意味し、ここでRは「アシル」という用語との関連で定義したとおりである。
【0048】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは主鎖に1〜8個の炭素原子、および最大20個の炭素原子を含む低級アルキルである基をいう。こうした基は、直鎖でも、または分枝鎖でも、または環状でもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシルなどがある。
【0049】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは主鎖内に2〜8個の炭素原子、および最大20個の炭素原子を含む低級アルケニルである基をいう。こうした基は直鎖でも、または分枝鎖でも、または環状でもよく、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0050】
「アルキニル」という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは主鎖内に2〜8個の炭素原子、および最大20個の炭素原子を含む低級アルキニルである基をいう。こうした基は、直鎖でも、または分枝鎖でもよく、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニルなどが挙げられる。
【0051】
「芳香族」という用語は、本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部として、任意に置換された同素(homo)環式または複素環式芳香族を意味する。こうした芳香族基は、好ましくは環の部分に6〜14個の原子を含む単環式基、二環式基または三環式基である。「芳香族」という用語は、下記に定義される「アリール」基および「ヘテロアリール」基を包含する。
【0052】
「アリール」または「Ar」という用語は、本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部として任意に置換された同素環式芳香族基、好ましくは環の部分に6〜12個の炭素を含む単環式基または二環式基を意味し、たとえばフェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルがある。フェニルおよび置換フェニルがより好ましいアリールである。
【0053】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部として塩素、臭素、フッ素およびヨウ素をいう。
【0054】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素および水素以外の原子を意味するものとする。
【0055】
「ヘテロシクロ」または「複素環式」という用語は、本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部として、少なくとも1つの環内に少なくとも1個のヘテロ原子、および好ましくは各環内に5または6個の原子を持ち、任意に置換されている、完全飽和または不飽和で単環式または二環式の芳香族基または非芳香族基を意味する。ヘテロシクロ基は好ましくは環内に1または2個の酸素原子および/または1〜4個の窒素原子を持ち、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残部と結合している。例示的なヘテロシクロ基として、下記のような複素環式芳香族化合物がある。例示的な置換基としては、以下の基:ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルケノキシ基、アルキノキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン基、アミド基、アミノ基、シアノ基、ケタール基、アセタール基、エステル基およびエーテル基の1つまたは複数が挙げられる。
【0056】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部として、少なくとも1つの環内に少なくとも1個のヘテロ原子、および好ましくは各環内に5または6個の原子を持つ、任意に置換されている芳香族基をいう。ヘテロアリール基は、好ましくは環内に1または2個の酸素原子および/または1〜4個の窒素原子を持ち、炭素を介して分子の残部と結合している。
【0057】
「炭化水素」および「ヒドロカルビル」という用語は、本明細書で使用する場合、炭素元素および水素元素のみからなる有機化合物またはラジカルをいう。こうした部分としてアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が挙げられる。こうした部分としてさらに、アルカリール、アルケナリールおよびアルキナリールなど他の脂肪族または環状炭化水素基で置換されているアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が挙げられる。他に記載がない限り、こうした部分は1〜20個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0058】
「保護基」という用語は、本明細書で使用する場合、酸素原子を保護することができる基を意味し、保護基は、保護作用を利用した反応後に分子の残部を傷害することなく除去できる。例示的な保護基として、エーテル(たとえば、アリル、トリフェニルメチル(トリチルまたはTr)、p−メトキシベンジル(PMB:p−methoxybenzyl)、p−メトキシフェニル(PMP:p−methoxyphenyl))、アセタール(たとえば、メトキシメチル(MOM:methoxymethyl)、β−methoxyethoxymethyl(MEM:methoxyethoxymethyl)、テトラヒドロピラニル(THP:tetrahydropyranyl)、エトキシエチル(EE:ethoxy ethyl)、メチルチオメチル(MTM:methylthiomethyl)、2−メトキシ−2−プロピル(MOP)、2−トリメチルシリルエトキシメチル(SEM))、エステル(たとえば、ベンゾアート(Bz)、炭酸アリル、2,2,2−トリクロロエチルカルボナート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカルボナート)、シリルエーテル(たとえば、トリメチルシリル(TMS:trimethylsilyl)、トリエチルシリル(TES:triethylsilyl)、トリイソプロピルシリル(TIPS:triisopropylsilyl)、トリフェニルシリル(TPS:triphenylsilyl)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)などが挙げられる。様々な保護基およびその合成については、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts著、「Protective Groups in Organic Synthesis」John Wiley & Sons,1999で確認することができる。
【0059】
本明細書に記載の「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素鎖原子が窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄またはハロゲン原子などのヘテロ原子で置換されている部分など、炭素以外の少なくとも1個の原子で置換されたヒドロカルビル部分である。こうした置換基として、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルが挙げられる。
【0060】
本発明またはその好ましい実施形態(単数または複数)の要素を紹介する際、冠詞「a」、「an」、「the」および「前記(said)」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味するものとする。「を含む(comprising)」、「を含む(including)」および「を持つ(having)」という用語は、包括的であることを意図しており、記載した要素以外に別の要素が存在し得ることを意味する。
【0061】
本発明について詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱しない範囲で修正および変形が可能であることは明らかであろう。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するために記載される。以下の実施例に開示された技法は、本発明者らにより発見された技法であり、本発明の実施の際に非常に役立ち、したがって本発明を実施するための好ましい方法になると考えられることを当業者は理解されたい。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神および範囲を逸脱しない範囲で、開示された個々の実施形態において多くの変更を行っても、同様または類似の結果が得られることを理解すべきである。
【0063】
(実施例1)
ナルトレキソンの生成
0.50グラムの量のノルオキシモルホンを試験管に入れた。試験管に撹拌子を加えてから、ゴム製セプタムで密封した。続いて、試験管に1.0mlのメタノールを加えて反応混合物を生成した。次いで、別の試験管で1.0mlのメタノールを2.0mlのトリエチルアミンと混合し、この混合物を氷浴で冷却した。混合物の冷却後、このメタノールとトリエチルアミンとの混合物に0.83mlのギ酸を加えた。ギ酸の添加中は、混合物の温度が確実に30℃未満になるように注意した。ギ酸の添加後、温度を確実に25℃未満に維持するように注意しながら混合物に0.19mlのシクロプロパンカルボキシアルデヒド(CPCA:cyclopropanecarboxaldehyde)を加えた。
【0064】
メタノール、トリエチルアミン、ギ酸およびCPCA混合物を含むこの別の反応混合物を形成したら、この混合物を、ノルオキシモルホンとメタノールとの混合物を含む試験管に約8℃の温度で加えた。次いで、合わせた反応混合物を不活性な窒素環境下でJ−Kem Personal Reaction Station(PRS)により加熱した。加熱ブロックの温度は74℃であったが、反応混合物の内部温度は72℃で測定された。さらに、上部ブロックの温度を0℃まで冷却し、反応混合物を反応させた。
【0065】
3時間後、反応混合物を加熱状態から取り出し、サンプルを得た。反応混合物の約1滴を0.5mlの1%酢酸に加えて、反応生成物を確認するためのサンプルを調製した。サンプルを解析したところ、サンプルは約96%の回収率を示した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による試験から、サンプルのナルトレキソン濃度が約73%(w/w)であり、収率が約70%であることが明らかになった。
【0066】
サンプルによりナルトレキソンの生成が確認されたら、残存している反応混合物に4.0mlの水を加えた。この反応混合物を氷浴で約10℃まで冷却し、濃縮水酸化アンモニウムでpHを約9に調節した。次いでこの生成物を8mlのジクロロメタンを用いて抽出した。次いで生成物を含む層を分離し、生成物をさらに3mlのジクロロメタンで抽出した。続いて生成物と追加の有機抽出物とを集めて、2mlの水で洗浄した。有機抽出物を綿で濾過し、ロータリーエバポレーター(rotovap)で濃縮して重量約0.592グラムの黄色の泡沫状固体を得た。次いで、反応生成物を含むバイアルを、約40mmHgの減圧下、周囲温度で真空オーブンに入れてサンプルをさらに乾燥させた。真空オーブンで約19時間後、このサンプルを取り出し、重量約0.570グラムの淡褐色固体を得、続いてHPLCアッセイによりこれがナルトレキソンであることを確認した。
【0067】
このようにして上述のプロセスに従い、0.50グラムのノルオキシモルホンを反応させて0.570グラムのナルトレキソンを生成した。
【0068】
(実施例2)
6−ケトナルブフィンの生成
0.50グラムの量のノルオキシモルホンを試験管に入れた。試験管に撹拌子を加えてから、ゴム製セプタムで密封した。続いて、試験管に1.0mlのメタノールを加えて反応混合物を生成した。次いで、別の試験管で1.0mlのメタノールを2.0mlのトリエチルアミンと混合し、この混合物を氷浴で冷却した。混合物の冷却後、このメタノールとトリエチルアミンとの混合物に0.83mlのギ酸を加えた。ギ酸の添加中は、混合物の温度が確実に30℃未満になるように注意した。ギ酸の添加後、温度を確実に25℃未満に維持するように注意しながら混合物に0.19mlのシクロブタンカルボキシアルデヒド(CBCA:cyclobutanecarboxaldehyde)を加えた。
【0069】
メタノール、トリエチルアミン、ギ酸およびCBCA混合物を含むこの別の反応混合物を形成したら、この混合物を、ノルオキシモルホンとメタノールとの混合物を含む試験管に約8℃の温度で加えた。次いで、合わせた反応混合物を不活性な窒素環境下でJ−Kem Personal Reaction Station(PRS)により加熱した。加熱ブロックの温度は74℃であったが、反応混合物の内部温度は72℃で測定された。さらに、上部ブロックの温度を0℃まで冷却し、反応混合物を反応させた。
【0070】
3時間後、反応混合物を加熱状態から取り出し、サンプルを得た。反応混合物の約1滴を0.5mlの1%酢酸に加えて、反応生成物を確認するためのサンプルを調製した。サンプルを解析したところ、サンプルは約108%の回収率を示した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による試験から、サンプルの6−ケトナルブフィン濃度が約77%(w/w)であり、収率が約83%であることが明らかになった。
【0071】
6−ケトナルブフィンの生成が確認されたら、残存している反応混合物に4.0mlの水を加えた。この反応混合物を氷浴で約10℃まで冷却し、濃縮水酸化アンモニウムでpHを約9に調節した。次いでこの生成物を8mlのジクロロメタンを用いて抽出した。次いで生成物を含む層を分離し、生成物をさらに3mlのジクロロメタンで抽出した。続いて生成物と追加の有機抽出物とを集めて、2mlの水で洗浄した。有機抽出物を綿で濾過し、ロータリーエバポレーター(rotovap)で濃縮して重量約0.685グラムの淡褐色の泡沫状固体を得た。次いで、反応生成物を含むバイアルを、約40mmHgの減圧下、周囲温度で真空オーブンに入れてサンプルをさらに乾燥させた。真空オーブンで約19時間後、このサンプルを取り出し、重量約0.666グラムの淡褐色固体を得、続いてHPLCアッセイによりこれが6−ケトナルブフィンであることを確認した。
【0072】
このようにして上述のプロセスに従い、0.50グラムのノルオキシモルホンを反応させて0.666グラムの6−ケトナルブフィンを生成した。