(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の制御弁の二次側と前記第1の切換弁の一次側とを接続する第1のフェイルセーフバイパスラインと、前記第1の制御弁の二次側と前記第2の切換弁の一次側とを接続する第2のフェイルセーフバイパスラインと、を更に有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の建設機械の制御装置。
前記検出手段は、前記第1の制御弁及び前記第2の制御弁の出力信号に基づいて、該第1の制御弁及び該第2の制御弁の電気制御系の故障を検出することを特徴とする、請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の建設機械の制御装置。
前記検出手段は、前記第1の制御弁と前記第1のレギュレータとを接続する油路に配置された第1の圧力センサと、前記第2の制御弁と前記第2のレギュレータとを接続する油路に配置された第2の圧力センサとを更に備え、前記第1の圧力センサ及び前記第2の圧力センサが検出する圧力に基づいて、前記圧油経路の故障及び前記機械駆動部の故障を検出することを特徴とする、
請求項8に記載の建設機械の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面の中の記載で、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的としない。したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る制御装置10を備える建設機械100を用いて、本発明を説明する。なお、本発明は、本実施形態以外でも、2個以上の油圧ポンプを備える建設機械であって、油圧ポンプのレギュレータを制御する制御弁の故障(フェイル、フェール)を検出し、切換弁を用いて油圧ポンプ(レギュレータ)の動作を制御するものであれば、いずれのものにも用いることができる。また、建設機械には、ブルドーザ、ホイールローダ、ダンプトラック及び油圧ショベル等が含まれる。
【0015】
(建設機械の構成)
本発明の実施形態に係る制御装置10を備える建設機械100の構成を、
図1を用いて説明する。
【0016】
建設機械は、油圧ポンプから吐出された圧油を、センターバイパスラインに配置されたコントロールバルブに送り、コントロールバルブから油圧アクチュエータ(油圧モータ、ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダなど)に供給する。これにより、建設機械は、油圧アクチュエータを駆動して、所望の作業(動作)を実施することができる。また、建設機械は、コントロールバルブを機械管理者(運転者)の操作に応じて制御することによって、油圧アクチュエータの駆動を制御することができる。更に、建設機械は、センターバイパスラインの最下流側に配置した絞り(ネガコン絞り)を用いて圧力(ネガコン圧)を発生させ、そのネガコン圧を用いて油圧ポンプの吐出量(出力)を制御する(ネガコン方式)。
【0017】
なお、以後の説明においては、ネガコン方式の油圧ポンプ制御方式が例示されているが、本発明は、ポジコン方式、ロードセンシング方式、スピードセンシング方式及び定馬力制御方式などを含む任意の制御方式にも適用可能である。
【0018】
図1に示すように、建設機械100は、本実施形態では、2個の油圧ポンプP(第1の油圧ポンプP1及び第2の油圧ポンプP2)を備える機械である。建設機械100は、建設機械100の各構成に動作を指示し、各構成の動作を制御する制御装置10と、建設機械100の動作状態を選択するモード選択手段20と、を含む。
【0019】
ここで、油圧ポンプPは、本実施形態では、可変容量型の斜板式油圧ポンプを用いる。このため、本実施形態に係る建設機械100(制御装置10)は、レギュレータを用いて斜板の傾転角を制御することにより、油圧ポンプPの容量(吐出量、出力)を変更することができる。
【0020】
なお、本発明の実施形態に係る制御装置10を適用できる建設機械は、2個の油圧ポンプを備えるものに限定されるものではない。すなわち、3個以上の油圧ポンプを備える建設機械に本発明に係る制御装置10を用いてもよい。
【0021】
制御装置10は、建設機械100の各構成に動作を指示し、各構成の動作を制御する装置である。制御手段10は、I/F手段30(後述する実施例1の入力部31)により入力される情報などに基づいて、建設機械100の油圧ポンプP及び検出手段11(後述)などを制御する。また、制御手段10は、検出手段11の検出結果などをI/F手段30(後述する実施例1の表示部32)に出力する。更に、制御手段10は、検出手段11が検出した検出結果に基づいて、油圧ポンプPの吐出量(出力)を変更するレギュレータRなどを制御する。
【0022】
制御装置10は、本実施形態では、油圧ポンプPを制御するレギュレータRと、レギュレータRに送り込む圧油(作用する圧力)を制御する制御弁Vrと、レギュレータRに送り込む圧油の流れの方向を切り換える切換弁Vsと、制御弁Vrの動作状態を検出する検出手段11と、を含む。
【0023】
ここで、レギュレータRは、押しのけ容積可変機構を有する油圧ポンプPの容積(吐出量、出力)を制御するものである。具体的には、レギュレータRは、制御弁Vrによって制御された圧油を用いて、油圧ポンプPの斜板の傾転角を変更する。これにより、レギュレータRは、油圧ポンプPの吐出量(出力)を変更することができる。
【0024】
制御弁Vrは、レギュレータRに送り込む圧油の圧力(又は、量)を制御する弁である。制御弁Vrは、本実施形態では、電磁比例弁(又は、二次圧を制御できる電磁弁、流量制御弁、圧力制御弁、電磁切換弁など)を用いることができる。具体的には、制御弁Vrは、その制御ポートと制御装置10(例えば
図2のコントローラ10c)とが接続され、制御装置10からの油圧ポンプPの吐出量に関する信号(以下、「ポンプ制御信号」という。)に基づいて、一次側(入力ポート)から流入する圧油の圧力を減圧し、二次側(出力ポート)からその圧油を流出する。これにより、制御弁Vrは、二次側から流出する圧油(二次圧)を用いて、制御弁Vrの二次側に接続されたレギュレータRを制御することができる。
【0025】
切換弁Vsは、レギュレータRに送り込む圧油を選択する弁である。切換弁Vsは、本実施形態では、電磁切換弁(又は、二次側の圧油の流れの方向を切り換えることができる方向切換弁、方向制御弁、電磁弁など)を用いることができる。具体的には、切換弁Vsは、その制御ポートと制御装置10(例えば
図2のコントローラ10c)とが接続され、制御装置10から出力されたレギュレータRに作用(流入)する圧油に関する信号(以下、「圧油切換制御信号」という。)に基づいて、制御弁Vrの二次側と接続された一次側(入力ポート)から流入する圧油(例えば、第1の油圧ポンプP1の第1の圧油又は第2の油圧ポンプP2の第2の圧油のいずれか一方)を選択し、二次側(出力ポート)に選択した圧油を流出する。これにより、切換弁Vsは、二次側から流出する選択した圧油のみをレギュレータRに作用(流入)させることができる。
【0026】
なお、制御装置10(レギュレータR、制御弁Vr及び切換弁Vs)の動作の詳細は、後述する(建設機械の油圧回路)で説明する。
【0027】
検出手段11は、制御弁Vrの動作状態を検出する手段である。検出手段11は、本実施形態では、制御弁Vrの電気制御系の故障を検出する電気制御系検出部11eと、圧油経路の故障を検出する圧油経路検出部11rと、機械駆動部の故障を検出する機械駆動部検出部11mとを有する。
【0028】
ここで、電気制御系の故障とは、制御弁Vr(例えば、
図2の第1のレギュレータ制御弁Vr1及び第2のレギュレータ制御弁Vr2)の電装系(及び、制御弁Vrとコントローラ10cとを結ぶ制御系)の脱線、破断若しくは漏洩、又は、制御装置10(例えばコントローラ10c)等に関する故障である。圧油経路の故障とは、制御弁Vrの弁内部及びポンプ制御油圧ラインRTp1、RTp2(
図2)内部の油路の不具合(例えば異物の混入、詰まりなど)である。機械駆動部の故障とは、制御弁Vrの駆動部の不具合(例えば切換スプールの固着、スティックなど)である。
【0029】
電気制御系検出部11eは、例えば第1のレギュレータ制御弁Vr1及び第2のレギュレータ制御弁Vr2の出力信号Os(電気信号、フィードバック信号、出力電流信号など)に基づいて、電気制御系の故障を検出することができる。
【0030】
圧油経路検出部11r及び機械駆動部検出部11mは、例えば制御弁VrとレギュレータRとを接続するポンプ制御油圧ラインRTp1、RTp2に配置された二次圧センサ11p1、11p2(
図2)が検出する圧力(制御弁Vrの二次圧)に基づいて、圧油経路の故障及び機械駆動部の故障を検出することができる。また、圧油経路検出部11r及び機械駆動部検出部11mは、制御弁Vrの二次圧が制御弁Vrの公差範囲外になったときに、故障であると検出することができる。更に、圧油経路検出部11r及び機械駆動部検出部11mは、制御装置10(コントローラ10c)からのポンプ制御信号に対応する二次圧(予想二次圧)と圧力センサ11p1、11p2により検出されるポンプ制御油圧ラインRTpの圧力(実際の二次圧)との差分が所定の差分以上になったときに、故障であると検出することができる。
【0031】
ここで、制御弁Vrの公差範囲及び所定の差分とは、制御弁Vr及びポンプ制御油圧ラインRTp、並びに、建設機械100の仕様に対応する値とすることができる。また、制御弁Vrの公差範囲及び所定の差分を、実験及び数値計算等により予め定められる値とすることができる。
【0032】
モード選択手段20は、建設機械100の動作状態を選択する手段である。モード選択手段20は、本実施形態では、建設機械100の通常時の動作状態である「通常モード」及び故障時の動作状態である「フェイルセーフモード」を選択する。具体的には、モード選択手段20は、検出手段11が故障(電気制御系の故障など)を検出した場合に、故障時の動作状態である「フェイルセーフモード」を選択する。なお、モード選択手段20が動作状態を選択する動作は、例えば後述する実施例1(
図4)である。
【0033】
(建設機械の油圧回路)
本発明の実施形態に係る制御装置10を備える建設機械100の油圧回路を、
図2を用いて説明する。
図2は、制御装置10を備える建設機械100の油圧回路図の一例である。なお、
図2では、機械動力系を二重線、油路(油圧ライン)を実線、電気制御系を実線に//を付加して示す。
【0034】
図2に示すように、本実施形態に係る制御装置10を備える建設機械100の油圧回路は、動力源M(原動機、エンジン、モータなど)の出力軸に機械的に接続された2個の油圧ポンプP(第1の油圧ポンプP1及び第2の油圧ポンプP2)と、2個の油圧ポンプPから吐出される圧油Op(第1の油圧ポンプP1から吐出された圧油(以下、「第1の圧油Op1」という。)及び第2の油圧ポンプP2から吐出された圧油(以下、「第2の圧油Op2」という。))を油圧アクチュエータ(不図示)に供給する2個のセンターバイパスラインRTc(第1のセンターバイパスラインRTc1及び第2のセンターバイパスラインRTc2)と、2個の油圧ポンプPの吐出量(出力)を夫々制御する2個のレギュレータR(第1のレギュレータR1及び第2のレギュレータR2)と、を有する。また、建設機械100の油圧回路は、2個のポンプ制御油圧ラインRTp(第1のポンプ制御油圧ラインRTp1及び第2のポンプ制御油圧ラインRTp2)を介して2個のレギュレータRに送り込む制御圧を制御する2個の制御弁Vr(第1のレギュレータ制御弁Vr1及び第2のレギュレータ制御弁Vr2)と、レギュレータRに送り込む制御圧の流れの方向を切り換える(第1の圧油Op1又は第2の圧油Op2のいずれか一方を選択する)2個の切換弁Vs(第1のフェイルセーフ切換弁Vs1及び第2のフェイルセーフ切換弁Vs2)と、を有する。更に、建設機械100の油圧回路は、制御装置10として、建設機械100の各構成(制御弁Vr及び切換弁Vsなど)の動作を制御するコントローラ10cを有する。
【0035】
ここで、油圧ポンプPから吐出された圧油Op(作動油)は、センターバイパスラインRTcに配置されたコントロールバルブ(不図示)に送られ、コントロールバルブから不図示の油圧アクチュエータ(油圧モータ、ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダなど)に供給される。これにより、建設機械100は、油圧アクチュエータを駆動して、所望の作業(動作)を実施することができる。また、建設機械100は、2個のセンターバイパスラインRTcの最下流側に配置したネガコン絞り(不図示)を用いて圧力(ネガコン圧)を夫々発生させ、そのネガコン圧を夫々ネガコン圧センサ(不図示)により検出し、検出した各ネガコン圧に基づいてコントローラ10cにより各油圧ポンプPの吐出量目標値を求めて、2個の油圧ポンプPの吐出量(出力)を夫々制御することができる(ネガコン制御)。
【0036】
また、
図2に示すように、本実施形態の建設機械100の油圧回路は、第1の油圧ポンプP1及び第2の油圧ポンプP2の吐出圧を検出する2個の吐出圧センサSp(第1の吐出圧センサSp1及び第2の吐出圧センサSp2)を2個のセンターバイパスラインRTc(第1のセンターバイパスラインRTc1及び第2のセンターバイパスラインRTc2)に夫々配置している。これら2個の吐出圧センサSpの検出値に基づいて、コントローラ10cにより、エンジンの出力を越えないような各油圧ポンプの許容入力トルクを求め、この許容入力トルクに対応する各油圧ポンプPの吐出量目標値を求めて、2個の油圧ポンプPの吐出量(出力)を夫々制御することができる(馬力制御)。
【0037】
なお、2個の油圧ポンプPの吐出量(出力)は、ネガコン制御により定まる吐出量目標値と馬力制御により定まる許容入力トルクに応じた吐出量目標値のうち何れか小さい方に基づいて制御される。
【0038】
更に、本実施形態の建設機械100の油圧回路は、2個の制御弁Vr(第1のレギュレータ制御弁Vr1及び第2のレギュレータ制御弁Vr2)の二次圧を検出する2個の二次圧センサ11p(第1の二次圧センサ11p1及び第2の二次圧センサ11p2)を2個のポンプ制御油圧ラインRTp(第1のポンプ制御油圧ラインRTp1及び第2のポンプ制御油圧ラインRTp2)に夫々配置している。
【0039】
以下に、コントローラ10c、制御弁Vr、切換弁Vs及びレギュレータRを詳細に説明する。
【0040】
コントローラ10cは、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を含む演算処理装置で構成することができる。コントローラ10cは、制御弁Vr及び切換弁Vs、並びに、ネガコン圧センサ(不図示)、吐出圧センサSp及び二次圧センサ11pが個別独立して夫々接続されている。コントローラ10cは、本実施形態では、吐出圧センサSpから出力される電気信号に基づいて(油圧ポンプの吐出圧に基づいて)、制御弁Vr等を用いて、レギュレータRを制御する。その結果、コントローラ10cは、油圧ポンプPの吐出量(出力)を制御し、建設機械100の動作を制御することができる。また、コントローラ10cは、通常時の各動作状態の組み合わせ(以下、「個別馬力制御」という。)及び故障時の2個の油圧ポンプの制御又は出力制限(以下、「同時馬力制御」という。)に関する油圧ポンプPの動作を規定した制御マップなどをメモリに備えてもよい。
【0041】
ここで、制御マップは、ネガコン圧に応じた第1の油圧ポンプP1及び第2の油圧ポンプP2の吐出量目標値(斜板の傾転角)を求めるための情報、又は、第1の油圧ポンプP1若しくは第2の油圧ポンプP2の一方の制御(個別馬力制御)、若しくは、第1の油圧ポンプP1及び第2の油圧ポンプP2の双方の制御(同時馬力制御)に基づいた第1の油圧ポンプP1及び第2の油圧ポンプP2の吐出量目標値(斜板の傾転角)を求めるための情報を含むことができる。また、制御マップは、油圧アクチュエータの負荷に応じた油圧ポンプPの吐出量の制御などに関する情報を含んでもよい。これにより、コントローラ10cは、このマップを参照して、建設機械100の動作を最適に制御することができる。
【0042】
制御弁Vrは、一次側(入力ポート)にパイロットポンプPpの吐出圧と作動油タンクが接続されている。また、制御弁Vrは、二次側(出力ポート)に切換弁Vsを介して、レギュレータRを接続している。更に、制御弁Vrは、制御ポートにコントローラ10cが接続されている。
【0043】
ここで、制御弁Vrは、レギュレータRの動作を制御する。具体的には、制御弁Vrは、制御ポートに接続されたコントローラ10cから入力されたポンプ制御信号に基づいて、一次側から流入するパイロットポンプPpの吐出圧を減圧し、二次側から減圧された制御圧を出力する。これにより、制御弁Vrは、二次側の制御圧(二次圧)を用いて、制御弁Vrの二次側に接続されたレギュレータRを制御することができる。
【0044】
切換弁Vsは、第2のレギュレータ制御弁Vr2の二次側(出力ポート)と第1のフェイルセーフ切換弁Vs1の一次側(入力ポート)とを接続する第1のフェイルセーフバイパスラインRTf1と、第1のレギュレータ制御弁Vr1の二次側(出力ポート)と第2のフェイルセーフ切換弁Vs2の一次側(入力ポート)とを接続する第2のフェイルセーフバイパスラインRTf2と、を更に備える。
【0045】
ここで、第1のフェイルセーフ切換弁Vs1の一次側は、第1のポンプ制御油圧ラインRTp1を経由して、第1のレギュレータ制御弁Vr1の二次側に接続され、且つ、第1のフェイルセーフバイパスラインRTf1を経由して、第2のレギュレータ制御弁Vr2の二次側と接続されている。また、第1のフェイルセーフ切換弁Vs1は、制御装置10(コントローラ10c)からの圧油切換制御信号に基づいて、制御スプールの位置を移動することにより、第1のレギュレータ制御弁Vr1の二次圧及び第2のレギュレータ制御弁Vr2の二次圧のどちらか一方を第1のレギュレータR1に送り込むことができる。
【0046】
具体的には、第1のフェイルセーフ切換弁Vs1の制御スプールは、建設機械100の動作状態が通常モードのときに、第1のレギュレータ制御弁Vr1の二次圧を出力する位置(以下、「通常位置」という。)に移動する。このとき、第1のフェイルセーフ切換弁Vs1は、第2のレギュレータ制御弁Vr2の二次圧を全閉する。また、第1のフェイルセーフ切換弁Vs1の制御スプールは、建設機械100の動作状態がフェイルセーフモードのときに、第2のレギュレータ制御弁Vr2の二次圧を出力する位置(以下、「フェイルモード位置」という。)に移動する。このとき、第1のフェイルセーフ切換弁Vs1は、第1のレギュレータ制御弁Vr1の二次圧を全閉する。
【0047】
第2のフェイルセーフ切換弁Vs2も、同様に、制御装置10(コントローラ10c)からの圧油切換制御信号に基づいて、第1のレギュレータ制御弁Vr1の二次圧及び第2のレギュレータ制御弁Vr2の二次圧のどちらか一方を第2のレギュレータR2に送り込むことができる。
【0048】
これにより、本発明の実施形態に係る建設機械100の制御装置10は、第1のレギュレータ制御弁Vr1又は第2のレギュレータ制御弁Vr2のどちらか一方がフェイル(故障)した時に、フェイルした方のフェイルセーフ切換弁(Vs2又はVs1)を用いて、フェイルしていない方のレギュレータ制御弁(Vr1又はVr2)の二次圧をレギュレータRに作用(流入)させることができる。このため、建設機械100の制御装置10は、2個の油圧ポンプPを備える建設機械100を、どちらか一方のレギュレータ制御弁(Vr1又はVr2)を用いて、ネガコン制御及び同時馬力制御することができる。また、建設機械100の制御装置10は、通常時(制御弁Rが故障していない時)には、2個の切換弁Vsを用いて、2個の油圧ポンプPをネガコン制御及び個別馬力制御することができる。
【0049】
レギュレータRは、本実施形態では、斜板Raを作動させるアクチュエータRAと、制御弁Vrからの油圧に応じてアクチュエータRAの駆動を制御する制御用切換弁RBと、を有する。アクチュエータRAは、斜板Raに連結された両端の受圧面積が異なるサーボピストンRAaと、サーボピストンRAaの小径側を収納する小径側室RAsと、サーボピストンRAaの大径側を収納する大径側室RAbとで構成される。制御用切換弁RBは、制御スプールRBaと、制御スプールRBaの一端に設けられたバネ(リターンスプリング)RBsとで構成され、制御弁Vrからの油圧が制御スプールRBaのバネRBsと反対側の端部に供給され、その油圧とバネRBsが付勢する力との釣合で制御スプールRBaの位置を制御する。例えば、制御弁Vrからの油圧がバネRBsの設定値より高くなると、制御スプールRBaは図示右側(第1のレギュレータR1の場合)の位置に動かされ、第1の油圧ポンプP1の油圧が小径室側RAs及び大径室側RAbの双方に供給され、これら小径室側RAsと大径室側RAbとの受圧面積差によりサーボピストンRAaを斜板Raの傾転量を減少させる方向に移動する。逆に、制御弁Vrからの油圧がバネRBsの設定値より低くなると、制御スプールRBaは図示左側(第1のレギュレータR1の場合)の位置に動かされ、第1の油圧ポンプP1の油圧が小径室側RAsのみに供給されると共に大径室側RAbの圧油がタンクに排出され、サーボピストンRAaを斜板Raの傾転量を増加させる方向に移動させる。これにより、レギュレータRは、制御弁Vrの二次圧を用いて、油圧ポンプPの吐出量(出力)を変更することができる。
【0050】
なお、第2のレギュレータR2は、第1のレギュレータR1と同様のため、説明を省略する。
【0051】
以上により、本実施形態に係る建設機械100の制御装置10によれば、2個の制御弁Vr(Vr1又はVr2)のどちらか一方がフェイル(故障)した時に、フェイルした方の切換弁Vs(Vs1又はVs2)を用いて、フェイルしていない方の制御弁Vr(Vr2又はVr1)の二次圧をレギュレータR(R1又はR2)に作用(流入)させることができるので、2個の油圧ポンプPをネガコン制御及び同時馬力制御することができる。また、本実施形態に係る建設機械100の制御装置10によれば、通常時(制御弁Vrが故障していない時)には、2個の切換弁Vsを用いて、2個の油圧ポンプPをネガコン制御及び個別馬力制御することができる。
【0052】
このため、建設機械100の制御装置10は、2個の油圧ポンプPの吐出量が最大に固定されること、及び、吐出量が最小に固定されることを防止することができる。これにより、建設機械100の制御装置10によれば、油圧ポンプPの吐出量が最大に固定されることによってポンプトルクが過大になることやエンジンがラグダウンすることを防止することができる。また、建設機械100の制御装置10によれば、油圧ポンプPの吐出量が最小に固定されることによって油圧ポンプPの流量不足になり、建設機械100の動作が困難になってしまうことを防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る建設機械100の制御装置10によれば、2個の制御弁Vrのどちらか一方がフェイルした時に、フェイルした方の切換弁Vsを用いて、フェイルしていない方の制御弁Vrの二次圧をレギュレータRに作用させることができるので、2個の油圧ポンプPを同時馬力制御することができ、フェイル時に2個の油圧ポンプPに吐出量差(ポンプ出力の差)が生じることを防止することができる。このため、建設機械100の制御装置10は、2個の制御弁Vrのどちらか一方がフェイルした時でも、走行時の直進性を損なうこと(例えば走行蛇行すること)を防止することができる。
【0054】
更に、本実施形態に係る建設機械100の制御装置10によれば、2個の二次圧センサ11pを用いてポンプ制御油圧ラインの二次圧を夫々検出することができるので、制御弁Vsなどの圧油経路の故障及び機械駆動部の故障を検出することができる。このため、建設機械100の制御装置10は、故障を検出したときに、フェイルした方の切換弁Vsを用いて、フェイルしていない方の制御弁Vrの二次圧をレギュレータRに作用させることにより、2個の油圧ポンプPをネガコン制御及び同時馬力制御することができる。
【実施例】
【0055】
実施形態に係る制御装置10を備える建設機械の実施例を用いて、本発明を説明する。
(実施例1)
(建設機械の構成)
本発明に係る制御装置10を備える建設機械110の構成を、
図1を用いて説明する。なお、以後の説明において、本実施例に係る建設機械110の構成は、実施形態の建設機械100の構成と基本的に同様のため、異なる部分のみ説明する。
【0056】
図1に示すように、本実施例に係る建設機械110は、モード選択手段20が選択した選択結果等を表示するI/F手段(インターフェース手段)30を更に含む。
【0057】
I/F手段30は、建設機械110外部と情報の入出力を行なう情報伝達手段又は情報通信手段である。I/F手段30は、建設機械110の操作条件、運転条件及びその他の動作条件など(以下、「入力情報Im」という。)を外部から建設機械110に入力する入力部31と、検出手段11が検出した検出結果、モード選択手段20が選択した選択結果など(以下、「出力情報Or」という。)を表示する表示部32と、を有する。I/F手段30は、公知の技術を用いることができる。
【0058】
入力部31は、入力情報Imを建設機械110外部から入力するものである。入力部31は、本実施例では、機械管理者(建設機械を使用する者、建設機械の操作席(運転席)の操作者(運転者)など)が入力情報Imを入力することができるものである。また、入力部31は、表示部32がモード選択手段20が選択した選択結果を表示した後に、機械管理者が建設機械100の動作を制御するための入力情報Imを入力することができる。
【0059】
表示部32は、出力情報Orを建設機械110外部に出力するものである。表示部32は、本実施例では、出力情報Orを表示する運転席モニタ32m(
図2)を用いることができる。これにより、本実施例に係る建設機械110は、表示部32を用いて、建設機械110の動作状態(例えば、「通常モード」及び「フェイルセーフモード」)を機械管理者に知らせることができる。このため、建設機械110は、故障時に、機械管理者に建設機械110の動作が制限されること(同時馬力制御)を知らせることができる。また、本実施例に係る建設機械110は、表示部32を用いて、検出手段11が検出した検出結果(故障箇所など)を更に表示してもよい。
【0060】
(建設機械の油圧回路)
本実施例に係る制御装置10を備える建設機械110の油圧回路を、
図2を用いて説明する。なお、以後の説明において、本実施例に係る建設機械110の油圧回路は、実施形態の建設機械100の油圧回路と基本的に同様のため、異なる部分のみ説明する。
【0061】
図2に示すように、本実施例に係る建設機械110は、出力情報Orを表示する表示部32として、運転席モニタ32mを備える。
【0062】
(建設機械の動作)
本実施例に係る制御装置10を備える建設機械110の通常時の動作(通常モード)を、
図3を用いて説明する。なお、本実施例に係る建設機械110は、2個の油圧ポンプPを個別馬力制御で制御する。すなわち、以下の説明の通り、2個の油圧ポンプPは夫々同様の方法で制御される。
【0063】
図3に示すように、ステップS301において、本実施例に係る建設機械110は、先ず、吐出圧センサSp(
図2)を用いて、2個の油圧ポンプPの吐出圧を夫々検出する。また、続くステップS302において、ネガコン圧センサを用いて、2個のセンターバイパスラインRTc1、RTc2の最下流側のネガコン圧を検出する。その後、検出結果をコントローラ10cに出力して、ステップS303に進む。
【0064】
ステップS303において、コントローラ10cは、検出した吐出圧に基づいて、馬力制御用の吐出量目標値を算出すると共に、ネガコン制御用の吐出量目標値を算出する。
【0065】
次いで、ステップS304において、コントローラ10cは、算出されたそれぞれの馬力制御用の吐出量目標値とネガコン制御用の吐出量目標値のうち小さい方の吐出量目標値に基づいて、2個のレギュレータRの傾転の角度を算出する。また、コントローラ10cは、傾転の角度の算出結果に基づいて、2個の制御弁Vrを制御するためのポンプ制御信号を制御弁Vrに夫々出力する。更に、コントローラ10cは、2個の切換弁Vsを通常位置にするための信号を夫々切換弁Vsに出力する。その後、ステップS305に進む。
【0066】
ステップS305において、制御弁Vrは、コントローラ10cから出力されたポンプ制御信号に基づいて、制御スプールの位置を移動し、二次圧を制御する。
【0067】
また、ステップS306において、切換弁Vsは、コントローラ10cから出力された信号に基づいて、通常位置に移動する。
【0068】
その後、ステップS307において、2個のレギュレータRは、制御弁Vrから流出された圧油Op(圧力)に基づいて、油圧ポンプPの斜板の傾転量を夫々制御する。その後、ステップS308に進む。
【0069】
ステップS308において、2個の油圧ポンプPは、ステップS307のレギュレータRによる斜板の傾転量の制御によって、吐出量(出力)を夫々制御される(第1のポンプ制御ステップ、第2のポンプ制御ステップ)。その後、ステップS309に進む。
【0070】
ステップS309において、建設機械110は、入力部31(I/F手段30)により入力された入力情報Im等に基づいて、建設機械110の動作を終了するか否かを判断する。具体的には、建設機械110は、機械管理者が建設機械110の使用を終了する場合には、建設機械の動作を終了し、図中のENDに進む。また、建設機械110は、機械管理者が建設機械110の使用を継続する場合には、建設機械の動作を継続するため、ステップS301に戻る。
【0071】
以上により、建設機械110は、通常時の動作を終了する。
【0072】
(建設機械の故障時の動作)
本実施例に係る制御装置10を備える建設機械110の故障時の動作(フェイルセーフモード)を、
図4を用いて説明する。なお、本実施例に係る建設機械110は、故障時に、2個の油圧ポンプPを同時馬力制御で制御する。すなわち、以下の説明は、2個の油圧ポンプPを同時に同じ馬力で制御する方法についてである。
【0073】
図4に示すように、ステップS401において、本実施例に係る建設機械110は、先ず、入力部31(I/F手段30)を用いて入力された入力情報Imに基づいて、制御弁Vrの故障を監視する動作(故障検出ステップ)を開始する。その後、ステップS402に進む。
【0074】
次に、ステップS402において、建設機械110は、検出手段11を用いて、2個の制御弁Vrの故障を検出する。ここで、検出手段11が故障を検出した場合には、ステップS403に進む。検出手段11が故障を検出しない場合には、ステップS406に進む。
【0075】
ステップS403において、モード選択手段20は、フェイルセーフモードを選択する(モード選択ステップ)。その後、ステップS404に進む。
【0076】
ステップS404において、コントローラ10cは、圧油切換制御信号を切換弁Vsに出力する。具体的には、コントローラ10cは、ステップS402で故障が検出された制御弁Vrに対応する切換弁Vsの制御スプールの位置をフェイルセーフ位置に移動するための信号を切換弁Vsに出力する。このとき、切換弁Vsは、フェイルしていない方の制御弁Vrの二次圧をレギュレータRに作用(流入)させる。これにより、制御装置10は2個の油圧ポンプPを同時馬力制御することができる(第1のフェイルセーフステップ、第2のフェイルセーフステップ)。その後、ステップS405に進む。
【0077】
なお、コントローラ10cは、フェイルセーフモードでは、制御弁Vrの二次圧を検出する二次圧センサ、油圧ポンプPの吐出圧を検出する吐出圧センサ及びネガコン圧センサからの信号に基づいて、予め記憶してある制御マップを参照して、2個の油圧ポンプPの吐出量が最適となる油圧ポンプ制御を行うことができる。具体的には、コントローラ10cは、制御マップを用いて、2個の油圧ポンプPの合計馬力を動力源(エンジンなど)の所定馬力内にする制御などを実施することができる。
【0078】
次に、
図4のステップS405において、I/F手段30は、出力情報Or(検出手段11が検出した検出結果(ステップS402)及びモード選択手段20が選択した選択結果(ステップS403))を運転席モニタ32m(
図2)に表示する(動作状態表示ステップ)。ここで、建設機械110は、表示後に、機械管理者によって入力部31を用いて入力される情報に基づいて、建設機械110の動作を制御してもよい(動作制御ステップ)。その後、ステップS406に進む。
【0079】
ステップS406において、建設機械110は、入力部31により入力された入力情報Im等に基づいて、建設機械110のフェイルセーフモードの動作を終了するか否かを判断する。具体的には、建設機械110は、機械管理者が建設機械110の使用を終了する場合には、建設機械のフェイルセーフモードの動作を終了し、図中のENDに進む。また、建設機械110は、機械管理者が建設機械110の使用を継続する場合には、建設機械のフェイルセーフモードの動作を継続するため、ステップS401に戻る。
【0080】
以上により、建設機械110は、フェイルセーフモードの動作を終了する。
【0081】
本発明の実施例1に係る建設機械110の制御装置10によれば、2個の制御弁Vr(Vr1又はVr2)のどちらか一方がフェイル(故障)した時に、フェイルした方の切換弁Vs(Vs1又はVs2)を用いて、フェイルしていない方の制御弁Vr(Vr2又はVr1)の二次圧をレギュレータRに作用(流入)させることができるので、2個の制御弁Vrを備える建設機械110のどちらか一方の制御弁Vr(Vr2又はVr1)の二次圧を用いて、2個の油圧ポンプPを同時馬力制御することができる。このため、建設機械110の制御装置10は、2個の油圧ポンプPの吐出量が最大に固定されること、及び、吐出量が最小に固定されることを防止することができる。これにより、建設機械110、油圧ポンプPの吐出量が最大に固定されることによってポンプトルクが過大になることやエンジンがラグダウンすることを防止することができる。また、建設機械110は、油圧ポンプPの吐出量が最小に固定されることで油圧ポンプPの流量不足になり、建設機械110の動作が困難になってしまうことを防止することができる。
【0082】
また、本実施例に係る建設機械110の制御装置10によれば、フェイルセーフモードでは、2個の二次圧センサ11pを用いて2個の制御弁Vrの二次圧を夫々検出し、2個の吐出圧センサSpを用いて2個の油圧ポンプPの吐出圧を検出し、2個のネガコン圧センサを用いて2個のセンターバイパスラインRTc1、RTc2の最下流側のネガコン圧を検出することができるので、予め記憶してあるマップを参照して、2個の油圧ポンプPの吐出量が最適となる油圧制御を行なうことができる。すなわち、建設機械110の制御装置10によれば、二次圧センサ11p、吐出圧センサSp及びネガコン圧センサ並びに制御弁Vr及びレギュレータRなどを用いて、2個の油圧ポンプPの双方又は一方の出力制限を適切に行なうことができるので、2個の油圧ポンプPのエネルギ消費の無駄を減少させることができる。特に、油圧ポンプPが動力源(原動機、エンジン、モータなど)の出力軸に直結されている場合では、2個の油圧ポンプPの出力制限を適切に行なうことができるので、動力源の省エネルギ化を図ることができる。また、建設機械110の制御装置10は、制御マップを用いて、2個の油圧ポンプPの合計馬力を動力源の所定馬力内にする制御などを実施することができる。
【0083】
更に、本実施例に係る建設機械110の制御装置10によれば、検出結果及び選択結果(フェイルセーフモード)を運転席モニタ32mに表示することができるので、建設機械110の動作状態(例えば同時馬力制御、定馬力制御など)を機械管理者に知らせることができる。すなわち、本実施例に係る建設機械110によれば、フェイル時に、機械管理者に、建設機械110の動作が制限されることを知らせることができる。また、本実施例に係る建設機械110によれば、フェイル時に、機械管理者に、故障箇所を知らせることができる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されるものではない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。