(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778088
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0354 20130101AFI20150827BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
G06F3/033 453
G06F3/041 540
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-147841(P2012-147841)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-10707(P2014-10707A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】小口 貴幸
【審査官】
遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−165372(JP,A)
【文献】
特開2002−007070(JP,A)
【文献】
特開2012−078946(JP,A)
【文献】
特開2006−053678(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/021913(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0354
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に支持された第1の筐体と第2の筐体と、ユーザの所望する情報処理を行うためのアプリケーションプログラムを実行するための共通的なソフトウェア環境であるオペレーティングシステムが実行される演算部を有する情報処理装置であって、
前記第2の筐体は、前記演算部で実行されるドライバに制御されることによりパッド面の感知結果を前記オペレーティングシステムに入力するタッチパッドを有し、
前記情報処理装置が閉じた状態のとき、前記第1の筐体が前記タッチパッドを覆い、
前記情報処理装置の開閉を検知する開閉検知手段により前記情報処理装置が閉じられたことを検知すると、この旨を示す第1の所定のコードを前記オペレーティングシステムに発行するエンベデッドコントローラを有し、
前記オペレーティングシステムは、前記第1の所定のコードを受信すると、前記ドライバを無効にすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記エンベデッドコントローラは、前記開閉検知手段により前記情報処理装置が開けられたことを検知すると、この旨を示す第2の所定のコードを前記オペレーティングシステムに発行し、
前記オペレーティングシステムは、前記第2の所定のコードを受信すると、前記ドライバを有効にすることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関し、特に、入力デバイスの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPC)の技術分野においては、軽量化、及び、薄型化の要求が厳しく、ユーザが納得のいく性能を提供できる範囲で可能な限りの軽量化、薄型化が求められている。ところが、従来のものよりも相対的に薄いノートPCを開発するにあたって、従来顕在化されてこなかった新たな課題が見出された。
【0003】
ノートPCにはグラフィカルユーザインタフェースにおける入力装置の一つとしてポインティングデバイスを設けることが一般的である。そのポインティングデバイスとして、静電方式のタッチパッドを採用した場合に、従来のものよりも相対的に薄いノートPCでは、上部筐体を閉じてもタッチパッドが反応してしまうことがあった。これは、ノートPCを閉じたときにタッチパッドの上に蓋をするように覆うはずの上部筐体が薄すぎるため、タッチパッドが、上部筐体へのタッチを検知してしまうために起きると考えられる。
【0004】
特許文献1には、いわゆるタブレット型ノートPCにおいて、タブレット入力時にスタイラスペンでキーボードやタッチパッドに触れてしまい誤入力することを防止するための技術が開示されている。
【0005】
誤入力を防止するという点で本願とは関連する課題を有するが、上部筐体が薄すぎるためタッチパッドへの誤入力が起きるという課題は考慮されておらず、特許文献1に開示されている技術的思想では、上記課題を解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−094808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノートPCは、閉じると省電力モードへ移行するように設定されていることが多い。省電力モードでは、省電力モードからの復帰を行うウェイクアップのために、入力デバイスの入力を検知することが普通である。なお、省電力モードはさまざまな定義ができるが、本実施形態では、ACPI仕様書におけるG1状態のことをいうものとする。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、ノートブック型パーソナルコンピュータを閉じた状態におけるタッチパッドの誤検知に起因する誤動作を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、開閉可能に支持された第1の筐体と第2の筐体と、ユーザの所望する情報処理を行うための基本的入出力システム及びアプリケーションプログラムを実行するための共通的なソフトウェア環境であるオペレーティングシステムが実行される演算部を有する情報処理装置であって、前記第2の筐体は、前記演算部で実行されるドライバに制御されることによりパッド面の感知結果を前記
オペレーティングシステムに入力するタッチパッドを有し、前記情報処理装置が閉じた状態のとき、前記第1の筐体が前記タッチパッドを覆い、前記情報処理装置の開閉を検知する開閉検知手段により前記情報処理装置が閉じられたことを検知すると、この旨を示す第1の所定のコードを前記オペレーティングシステムに発行するエンベデッドコントローラを有し、前記オペレーティングシステムは、前記第1の所定のコードを受信すると、前記ドライバを無効にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ノートブック型パーソナルコンピュータを閉じた状態におけるタッチパッドの誤検知に起因する誤動作を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1のPC1を閉じた状態にして真上から見下ろした図である。
【
図3】本実施形態の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1を参照すると、本実施形態の外観が示されている。本実施形態に係るノートPC1は、上部筐体101と下部筐体102がヒンジ部104で連結した構成をしている。
【0013】
上部筐体101にはディスプレイ103が設けられている。下部筐体102は、ディスプレイ103に向かって手前側にタッチパッド107、奥側にキーボード108が設けられている。タッチパッド107は、静電方式である。
【0014】
なお、本実施形態における物理的な配置関係は、一例であって、発明を限定するものではない。
【0015】
上部筐体101と下部筐体102は、ヒンジ部104を中心に回動可能である。
図1では、上部筐体101がヒンジ部104を中心に下部筐体102に対して135°程度の角度をつけて回動している。このような状態をPC1が開いている状態とする。これに対して、PC1が閉じている状態の典型例を
図2に示す。
【0016】
図2は、
図1のPC1を閉じた状態にして上部筐体101の真上から見下ろした図である。上部筐体101の天板が見える。一方で、キーボード108やタッチパッド107は上部筐体101の下に位置することになるので、見えず、また、直接触れることもできない。PC1を閉じた状態のとき、上部筐体101は、タッチパッド107の上に、蓋をするように覆うことになる。
【0017】
しかしながら、従来のものよりも相対的に薄いノートPC1は、上部筐体101を閉じてもタッチパッド107が反応してしまうことが可能性があった。これは、上部筐体101が薄すぎるため、タッチパッド107が、上部筐体101へのタッチを検知してしまうために起きると考えられる。本実施形態では、以下に説明する構成で、このような課題を解決している。
【0018】
なお、「閉じた状態」の定義は、例えば、上部筐体101と下部筐体102のなす角度が45°以下になったことを、ヒンジ部104に設けられている開閉検知手段111が検知した状態としてもよい。ノートPC1が閉じた状態のとき、タッチパッド107の上に蓋をするように上部筐体101がタッチパッド107を覆う。
【0019】
図3に、本実施形態の機能構成を示す。
図3に示すように、ノートPC1の基本ソフトウェアであるOS(オペレーティングシステム)110にはタッチパッドドライバ113がインストールされている。タッチパッドドライバ113は、タッチパッド107を制御する。
【0020】
具体的には、タッチパッドドライバ113は、タッチパッド107が発する検知信号の入力に基づき、入力座標や入力点の移動方向や移動量、移動速度などを演算する。また、演算結果をポインタの移動量などとしてオペレーティングシステム110に伝える。タッチパッド107が発する検知信号は、タッチパッド107のパッド面の感知結果に基づく電気的な信号である。ハードウェアであるタッチパッド107及びソフトウェアであるタッチパッドドライバ113の協働により、ユーザの身体との位置関係に応じた座標(入力点の移動方向や移動量、移動速度などを含む)がオペレーティングシステム110に入力される。
【0021】
ここで、オペレーティングシステム110は、ユーザの所望する情報処理を行うためのアプリケーションプログラムを実行するための共通的なソフトウェア環境である。オペレーティングシステムの一機能としてタッチパッドドライバが存在する場合があるが、本願においては、そのようなオペレーティングシステムの一機能として提供されるタッチパッドドライバも、タッチパッドドライバ113と同じものとして捉える。なお、オペレーティングシステムとしては、他のオペレーティングシステムの環境上で動く仮想機械(ヴァーチャルOSなど)を含む。
【0022】
また、
図3に示すように、ノートPC1は、開閉検知手段111とエンベデッドコントローラ112を備える。開閉検知手段111は、前述のように例えばヒンジ部104に設けられている。開閉を検知する具体的方法については特に限定はなく、上部筐体101と下部筐体102のなす角度を検知するものでも、照度センサにより所定の暗さ以下になった場合にノートPC1が閉じた状態にあることを検知するものでもよい。
【0023】
本実施形態においては、開閉検知手段111は、ノートPC1が開いた状態にあることを検知しているとき、High信号をエンベデッドコントローラ112に入力し続ける。一方で、ノートPC1が閉じた状態にあることを検知しているとき、Low信号をエンベデッドコントローラ112に入力する。
【0024】
開閉検知手段111による検知結果は、エンベデッドコントローラ112に入力される。エンベデッドコントローラ112は、開閉検知手段111の検知結果に応じた特定のコードをオペレーティングシステム110に発行する。
【0025】
特に、開閉検知手段111からの入力信号のHighからLowへの移り変わりを検知したとき、エンベデッドコントローラ112は、オペレーティングシステム110に、ノートPC1が閉じたことを意味する所定のコードを発行する。また、LowからHighへの変化を検出したときは、ノートPC1が開いたことを意味する所定のコードを発行する。
【0026】
オペレーティングシステム110は、ノートPC1が閉じたことを意味する所定のコードを受信したとき、タッチパッドドライバ113を無効にする。無効になることによって、タッチパッドドライバ113は、タッチパッド107が発する検知信号の入力があっても無視する。移動方向等の演算を行ってもよいが、オペレーティングシステム110へ伝えることはしない。
【0027】
その結果、ノートPC1が閉じた状態において、上部筐体101が薄すぎることによってタッチパッド107がタッチを誤検知してしまうことに起因する誤動作を防止することができる。
【0028】
また、オペレーティングシステム110は、ノートPC1が開いたことを意味する所定のコードを受信したとき、タッチパッドドライバ113を有効にする。有効になることによって、タッチパッドドライバ113は、タッチパッド107が発する検知信号に基づいて通常の演算を行い、オペレーティングシステム110に演算結果を伝える。つまり、タッチパッド107を普通に使えるようになる。
【0029】
本実施形態の変形例として、本発明の技術的思想を、いわゆるタブレット型のノートブック型パーソナルコンピュータに適用してもよい。タブレット型ノートPCにおいては、ディスプレイ103がもう一つのタッチパッドである。また、タブレット型ノートPCにおいては、上部筐体101がヒンジ部104を中心に回動可能であることに加え、ヒンジ部104の任意の一点を中心に回転も可能である。
【0030】
そのため、タブレット型ノートPCにおいては、上部筐体101が、ディスプレイ103を上面にしてタッチパッド107の上に蓋をするように覆って、ノートPC1が閉じる状態が形成される。このような構成においても本実施形態と同様の構成及び動作をすることによって、本実施形態と同等の効果が得られる。
【符号の説明】
【0031】
1 ノートPC
101 上部筐体
102 下部筐体
103 ディスプレイ
104 ヒンジ部
107 タッチパッド
108 キーボード
110 オペレーティングシステム(OS)
111 開閉検知手段
112 エンベデッドコントローラ(EC)
113 タッチパッドドライバ