(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778099
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】受信回路
(51)【国際特許分類】
H04L 25/03 20060101AFI20150827BHJP
H03K 5/125 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H04L25/03 E
H03K5/01 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-185176(P2012-185176)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-45249(P2014-45249A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年1月23日
【審判番号】不服2014-23791(P2014-23791/J1)
【審判請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森 寛之
(72)【発明者】
【氏名】神川 直毅
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正義
(72)【発明者】
【氏名】岸上 友久
(72)【発明者】
【氏名】小池 智礼
【合議体】
【審判長】
新川 圭二
【審判官】
大塚 良平
【審判官】
中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−80721(JP,A)
【文献】
特開2012−80360(JP,A)
【文献】
特開2009−253498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/03
H03K 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの出力端子をロウインピーダンスにすることにより第1信号レベルの信号が送信され、ドライバの出力端子をハイインピーダンスにすることにより第2信号レベルの信号が送信される伝送線路(3)から受信した受信信号を、信号レベルに従って二値化する二値化信号生成部(75)と、
前記受信信号に従って信号レベルが変化する参照信号に基づき、前記受信信号が前記第1信号レベルにて安定している状態である第1安定状態、及び前記受信信号が前記第2信号レベルにて安定している状態である第2安定状態を検知する状態検知部(50,60)と、
前記状態検知部により前記第1安定状態にあることが検知され、且つ、前記受信信号が前記第1信号レベルから前記第2信号レベルに変化したことを検知したときのみ、前記状態検知部により前記第2安定状態にあることが検知されるまでの間、前記二値化信号生成部が生成する二値化信号を、前記第2信号レベルに対応した信号レベルに保持する信号保持部(80,71〜74,76)と、
を備えることを特徴とする受信回路。
【請求項2】
前記状態検知部は、前記第1信号レベル又は前記第2信号レベルを検知対象レベルとして、前記参照信号が前記検知対象レベルに対応した信号レベルである状態が、前記伝送線路で生じるリンギングの主成分の周期より長く且つ前記伝送信号の1ビット幅より短く設定された閾値時間以上継続した場合に、前記受信信号は前記検知対象レベルに安定している状態であることを示す検知結果を出力することを特徴とする請求項1に記載の受信回路。
【請求項3】
前記状態判定部は、
前記参照信号が前記第1信号レベルに対応した信号レベルである間、予め用意された第1容量性素子(51)を予め設定されたペースで充電し、前記参照信号が前記第2信号レベルに対応した信号レベルである時に、前記第1容量性素子の充電電荷を放電する第1充放電回路(52,53)と、
前記第1容量性素子の両端電圧が前記閾値時間に相当する閾値電圧を越えた場合に、前記伝送信号の信号レベルは第1安定状態にあると判定する第1判定回路(54,55,56)と、
前記参照信号が前記第2信号レベルに対応した信号レベルである間、予め用意された第2容量性素子を予め設定されたペースで充電し、前記参照信号が前記第1信号レベルに対応した信号レベルである時に、前記第2容量性素子の充電電荷を放電する第2充放電回路と、
前記第2容量性素子の両端電圧が前記閾値時間に相当する閾値電圧を越えた場合に、前記受信信号の信号レベルは第1安定状態にあると判定する第2判定回路と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の受信回路。
【請求項4】
前記参照信号は、前記二値化信号生成部が生成する二値化信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の受信回路。
【請求項5】
前記参照信号は、前記伝送線路から受信した受信信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の受信回路。
【請求項6】
前記伝送線路は、差動信号を伝送する一対の信号線(3a,3b)からなり、
前記参照信号は、前記一対の信号線のいずれか一方で伝送される伝送信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の受信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス状の伝送線路を介して信号を受信する受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
バス上の伝送線路を使用して信号を伝送する通信システムでは、伝送線路の端部やノードの接続端にてインピーダンスの不整合があると、これらの端部にて信号の反射が生じることによるリンギングが発生し、伝送信号に波形歪を生じさせることが知られている。
【0003】
この波形歪は、主に信号レベルが変化するエッジで生じ、時間の経過と共に収束していくが、ビットの信号レベルを判定するタイミングまでに、十分に収束していない場合、信号レベルの誤判定を生じさせる原因となる。
【0004】
特に、伝送線路にハイレベルの信号を出力する時と、ロウレベルの信号を出力する時とで、出力インピーダンスが大きく変化するドライバ(例えば、オープンコレクタ接続されたトランジスタ)を使用して、信号を送信するように構成されている場合、出力インピーダンスがロウインピーダンスからハイインピーダンスに切り替わるエッジにて、大きな波形歪が発生する。
【0005】
このような信号レベルの誤判定を低減する手法の一つとして、伝送線路の信号レベルが切り替わるエッジタイミングで、一定期間、終端抵抗に抵抗分が並列接続されるように構成し、伝送線路のインピーダンスを低下させることによって、リンギングの発生、ひいては波形歪を抑制するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−127805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、伝送線路のインピーダンスは、伝送線路の長さや伝送線路に接続するノードの数に応じて様々に異なったものとなり、どのような大きさの抵抗分を加えれば効果的にリンギングを抑制できるかは、システムによって様々に異なる。しかも、ノードを後付けできるようなシステムでは、後付けされたノードによってシステムの状態が変化するため、従来技術の手法では、十分なリンギング抑制効果を確実に得ることができるとは限らないという問題があった。
【0008】
このため、波形歪の影響を十分に抑制するには、結局のところ、配策規模(ノード数,配線長、分岐数など)や通信速度が制限する必要があった。
本発明は、上記問題点を解決するために、波形歪に基づく誤判定を抑制可能な受信回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の受信回路は、ドライバの出力端子をロウインピーダンスにすることにより第1信号レベルの信号が送信され、ドライバの出力端子をハイインピーダンスにすることにより第2信号レベルの信号が送信される伝送線路から信号を受信する。
【0010】
この伝送線路から受信した受信信号を、受信信号生成部が、その信号レベルに従って二値化することで二値化信号を生成する。また、状態検知部が、受信信号に従って信号レベルが変化する参照信号に基づき、受信信号が第1信号レベルに安定している状態である第1安定状態、及び受信信号が第2信号レベルに安定している状態である第2安定状態を検知する。
【0011】
そして、信号保持部が、状態検知部により第1安定状態にあることが検知され、且つ、受信信号が第1信号レベルから第2信号レベルに変化
したことを検知したときのみ、状態検知部により第2安定状態にあることが検知されるまでの間、二値化信号生成部が生成する二値化信号を、第2信号レベルに対応した信号レベルに保持する。
【0012】
つまり、受信信号が、第1安定状態にあることが検知された後、信号レベルが第1信号レベルから第2信号レベルに変化すると、二値化信号の信号レベルは、直ちに第2信号レベルに対応した信号レベルに変化し、その信号レベルは、受信信号の信号レベルによらず、第2安定状態が検知されるまでの間保持される。
【0013】
その後、第2安定状態が検知されると、信号レベルを保持した状態が解除されることにより、第1安定状態が検知されるまでの間は、受信信号の信号レベルに応じた二値化信号が生成される。
【0014】
このように、本発明の受信回路では、波形歪の発生を抑制するのではなく、大きな波形歪が生じさせやすいエッジ(第1信号レベルから第2信号レベルに変化するエッジ)を検出し、そのエッジ検出後の二値化信号の信号レベルを一定に保持することで、受信信号に現れる波形歪が、二値化信号の信号レベルに影響を与えることがないようにされている。
【0015】
従って、本発明の受信回路によれば、波形歪の発生を抑制するための特別な対策を施すことなく、受信信号の波形歪に基づく信号レベルの誤判定を抑制することができ、その結果、より配策規模の大きい通信システムや、より通信速度の高い通信システムにも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車載用の通信システム1の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】トランシーバの構成を示すブロック図である。
【
図3】二値化回路の詳細な構成を示す回路図である。
【
図4】第1状態検知部及び第2状態検知部の動作を示すタイミング図である。
【
図5】ホールド制御部及びレベル決定部の動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
ここでは、通信プロトコルとしてCAN(Controller Area Network)が用いられた車載用の通信システム1に本発明を適用した例を示す。
【0018】
通信システム1は、
図1に示すように、車両に搭載された複数の電子制御ユニット10a,10b,10c,…を、共通の伝送線路3を介して相互に通信可能となるように接続することで構成され、これら電子制御ユニット10a,10b,10c,…のそれぞれがノードとして機能するようにされている。以下では、電子制御ユニットをECUとよび、また、ECU10a,10b,10c…を、特に区別しないでいずれか一つを指す場合はECU10と表記する。
【0019】
このうち、伝送線路3は一対の信号線3a,3b(以下、一方をCANH3a,他方をCANL3bと表記する)で構成された二線式のバス型伝送線路からなり、その両端は、終端抵抗5,5によってそれぞれ終端されている。そして、伝送線路3では、CANH3a,CANL3b間の電位差によって信号レベルを表現した差動信号が伝送される。以下では、CANH3a,CANL3b間の電位差が予め設定された符号判定閾値以上である場合をドミナント、その電位差が符号判定閾値未満である場合をレセッシブと称する。
【0020】
<ECU>
ECU10は、通信システム1を介してCANプロトコルに従った通信制御(送信フレームの生成、受信フレームの解析)を行うCANコントローラ12と、CANコントローラ12から与えられる二値符号からなる二値化信号(送信データ列)を差動信号に変換して伝送線路3に出力すると共に、伝送線路3上の差動信号を受信して二値符号に復号した二値化信号(受信データ列)をCANコントローラ12に入力するトランシーバ13と、車両各部を制御するための制御処理や、CANコントローラ12を用いて他のECU10との通信を行うための処理等を実行するマイクロコンピュータ11とを備えている。
【0021】
以下では、トランシーバ13において、CANH3aが接続される端子をCANH端子131、CANL3bが接続される端子をCANL端子132、CANコントローラ12から供給されるデータ列を入力する端子をTXD端子133、CANコントローラ12へ供給するデータ列を出力する端子をRXD端子134と称する。
【0022】
<トランシーバ>
トランシーバ13は、
図2に示すように、TXD端子133を介して入力される送信データ列(二値化信号)を差動信号に変換してCANH端子131,CANL端子132に出力する送信回路20と、CANH端子131,CANL端子132を介して入力される差動信号を受信データ列(二値化信号)に復号してRXD端子に出力する受信回路30と、差動信号がレセッシブである場合にCANH3a,CANL3bが示す電圧である中立電圧を発生させる中立電圧発生回路40とを備えている。
【0023】
このうち、送信回路20及び中立電圧発生回路40は周知のものであるため、ここでは説明を省略し、以下では、本発明の主要部となる受信回路30を中心に説明する。但し、送信回路20を構成するドライバ回路の出力インピーダンスは、レセッシブを出力する際にはハイインピーダンスとなり、ドミナントを出力する際にはロウインピーダンスとなるように構成されている。
【0024】
受信回路30は、差動信号の電位差に応じた振幅を有する単極性の受信信号Defを生成する差動増幅器からなるレシーバ31と、レシーバ31から供給される受信信号Defから二値化信号RXDを生成する二値化回路32とを備えている。また、二値化回路32には、受信信号Defの他に、参照信号Refとして、二値化信号RXDを入力するように構成されている。
【0025】
なお、本実施形態において、受信信号Defは、
図4に示すように、レセッシブがロウレベル、ドミナントがハイレベルに対応し、一方、二値化信号RXDでは、レセッシブがハイレベル、ドミナントがロウレベルに対応するものとする。
【0026】
<二値化回路>
二値化回路32は、
図3に示すように、参照信号Ref(ここでは二値化信号RXD)に基づき、参照信号Refがロウレベル(ドミナントに対応した信号レベル)に安定した状態である第1安定状態にあることを検知する第1状態検知部50と、参照信号Refを反転回路90によって反転させた信号に基づき、参照信号Refがハイレベル(レセッシブに対応した信号レベル)に安定した状態である第2安定状態にあることを検知する第2状態検知部60とを備えている。
【0027】
また、二値化回路32は、受信信号Def及びレベル制御信号LCに基づいて二値化信号RXDの信号レベルを決定するレベル決定部70と、第1状態検知部50及び第2状態検知部60の検知結果に基づいて、レベル決定部70の動作を制御するためのレベル制御信号LCを生成するホールド制御部80とを備えている。
【0028】
<<第1状態検知部>>
第1状態検知部50は、一端が接地されたコンデンサ(容量性素子)51と、ダイオード,抵抗,トランジスタで構成され、予め設定されたペースでコンデンサ51を充電する充電回路52と、トランジスタ及び抵抗で構成され、参照信号Refがハイレベルの時にコンデンサ51の充電電荷を放電する放電回路53とを備えている。
【0029】
また、第1状態検知部50は、一対の抵抗により構成され、電源電圧を分圧して閾値電圧Vthを発生させる分圧回路54と、コンデンサ51の両端電圧Vcが分圧回路54の閾値電圧Vthを上回ると出力がハイレベルとなるコンパレータ55と、コンパレータ55の出力がロウレベルからハイレベルに変化したタイミングで、第1安定状態を検知したことを表すパルス状の第1検知信号P1を発生させるエッジ検出回路56とを備えている。
【0030】
なお、エッジ検出回路56は、抵抗,コンデンサで構成され、コンパレータ55の出力を遅延させる遅延回路、遅延回路の出力を反転させる反転回路、コンパレータ55の出力及び反転回路の出力を入力として動作する論理積回路からなり、信号の立ち上がりエッジを検出する周知のものである。
【0031】
また、分圧回路54にて生成される閾値電圧Vthは、伝送線路3で発生するリンギングの主成分の周期より長く且つ伝送路符号の1ビット幅より短くなるように設定された閾値時間(例えば、1ビットの80%の長さ)の間、コンデンサ51への充電が連続して行われた時に、コンデンサ51の両端電圧Vcが達する大きさに設定される。
【0032】
つまり、第1状態検知部50では、
図4に示すように、参照信号Refの信号レベルが、閾値時間以上継続してロウレベル(ドミナント)に保持されている場合に、受信信号Defの信号レベルが安定した状態にあるものとみなしてパルス状の第1検知信号P1を出力する。
【0033】
<<第2状態検知部>>
第2状態検知部60は、第1状態検知部50と全く同様の構成を有しているため、その構成についての説明は省略する。但し、第2状態検知部60では、参照信号Refではなく、参照信号Refを反転させた信号が入力される。
【0034】
つまり、第2状態検知部60では、
図4に示すように、参照信号Refの信号レベルが、閾値時間以上継続してハイレベル(レセッシブ)に保持されている場合に、受信信号Defの信号レベルが安定した状態にあるものとみなしてパルス状の第2検知信号P2を出力する。
【0035】
<<ホールド制御部>>
図3に戻り、ホールド制御部80は、第1検知信号P1及び第2検知信号P2を入力とする論理和回路81と、抵抗及びコンデンサで構成され、論理和回路81の出力を遅延させる遅延回路82と、遅延回路82の出力をクロック入力、第1検知信号P1がデータ入力として動作するフリップフロップ回路83と、抵抗及びコンデンサで構成され、電源投入時に一定期間だけロウレベルに保持されるプリセット信号を発生させることで、フリップフロップ回路83の出力であるレベル制御信号LCをハイレベルに初期化するプリセット信号発生回路84とを備えている。
【0036】
なお、遅延回路82は、第1検知信号P1が入力された時に、ハイレベルとなっている第1検知信号P1の信号レベルを、フリップフロップ回路83が確実にサンプリングできるようにタイミングを合わせるためのものである。
【0037】
つまり、レベル制御信号LCは、起動時にハイレベルに初期化され、その後、
図5に示すように、第1検知信号P1が入力された時にはハイレベル、第2検知信号P2が入力された時にはロウレベルに信号レベルが変化する。
【0038】
<<レベル決定部>>
図3に戻り、レベル決定部70は、抵抗及びコンデンサで構成され、受信信号Defを遅延させる遅延回路71と、遅延回路71の出力を反転させる反転回路76と、反転回路76の出力をクロック入力、レベル制御信号LCをデータ入力として動作するフリップフロップ回路72と、抵抗及びコンデンサで構成され、電源投入時に一定期間だけロウレベルを保持するクリア信号を発生させることで、フリップフロップ回路72の出力であるホールド信号HDをロウレベルに初期化するクリア信号発生回路73とを備えている。
【0039】
また、レベル決定部70は、レベル制御信号LC及びクリア信号を入力とし、出力がフリップフロップ回路72のクリア入力となるように接続された論理積回路74と、フリップフロップ回路72の出力であるホールド信号HD及び受信信号Defを入力とする論理和回路75とを備え、論理和回路75の出力が二値化信号RXDとして出力されるように構成されている。
【0040】
つまり、ホールド信号HDは、起動時にロウレベルに初期化され、以後、
図5に示すように、レベル制御信号LCがハイレベル(即ち、第1安定状態が検知された状態)の時には、受信信号Defがハイレベルからロウレベルに変化するタイミングでハイレベルに変化し、その後、レベル制御信号LCがロウレベル(即ち、第2安定状態が検知された状態)に変化するとロウレベルに戻る。
【0041】
また、二値化信号RXDは、ホールド信号HDがロウレベルとなる第2安定状態が検知されてから第1安定状態が検知されるまでの間は、受信信号Defの信号レベルに応じて生成され、ホールド信号HDがハイレベルとなる第1安定状態の検出後は、受信信号Defが一端ハイレベルに変化すると、以後、第2安定状態が検出されるまでの間は、受信信号Defの信号レベルに関係なくハイレベルに保持される。
【0042】
<効果>
以上説明したように、ECU10の受信回路30では、波形歪の発生を抑制するのではなく、大きな波形歪が生じさせやすいエッジ(第1安定状態が検知され且つ受信信号Defの信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化)を検出すると、そのエッジ検出後の二値化信号RXDの信号レベルをハイレベル(レセッシブ)に保持することで、受信信号Defに現れる波形歪が、二値化信号RXDの信号レベルに影響を与えることがないようにされている。
【0043】
従って、受信回路30によれば、波形歪の発生を抑制するための特別な対策を施すことなく、受信信号Defの波形歪に基づく信号レベルの誤判定を抑制することができ、その結果、より配策規模の大きい通信システムや、より通信速度の高い通信システムにも好適に用いることができる。
【0044】
なお、
図5の最下段には、比較のために、従来技術の手法を適用して波形歪を抑制した場合の受信信号の波形を示す。このように、従来技術では、受信信号Defの波形歪の速やかに収束させることはできるが、信号レベルが変化してから効果が現れるまでに遅延が生じるため、信号レベルが変化した直後の期間歪(図中矢印で示す)を除去することができず、この受信信号を二値化すると、波形歪の影響が二値化信号に現れてしまう。これに対して受信回路30から出力される二値化信号RXDは、波形歪の影響が除去されたものなっていることがわかる。
【0045】
<他の実施形態>
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、受信回路30aは、参照信号Refとして二値化信号RXDを使用するように構成されているが、
図6(a)に示す受信回路30aのように、受信信号Defを使用したり、
図6(b)に示す受信回路30bのように、CANH端子から入力される伝送信号を使用したり、
図6(c)に示す受信回路30cのように、CANL端子から入力される伝送信号を使用したりするように構成されていてもよい。
【0047】
但し、これら受信回路30a〜30bの場合、ドミナント,レセッシブに対応する参照信号Refの信号レベルが、二値化信号RXDと異なっている場合は、第1状態検知部50には、参照信号Refを反転させて入力し、第2状態検知部60には参照信号Refをそのまま入力するように変更すればよい。
【0048】
上記実施形態では、第1安定状態及び第2安定状態の検知を、コンデンサ51や充電回路52及び放電回路53を中心としたアナログ回路によって構成したが、信号レベルが反転するタイミングを検知し、その検知したタイミングから閾値時間を、タイマを用いて計時し、タイムアウトしたタイミングで検知信号P1,P2を出力するように構成してもよい。
【0049】
上記実施形態では、伝送線路3として二線式のものを使用したが、単線式のものを使用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…通信システム 3…伝送線路 3a…信号線(CANH) 3b…信号線(CANL) 5…終端抵抗 10(10a〜10c)…電子制御ユニット 11…マイクロコンピュータ 12…CANコントローラ 13…トランシーバ 20…送信回路 30,30a〜30c)…受信回路 31…レシーバ 32…二値化回路 40…中立電圧発生回路 50…第1状態検知部 51…コンデンサ 52…充電回路 53…放電回路 54…分圧回路 55…コンパレータ 56…エッジ検出回路 60…第2状態検知部 70…レベル決定部 71…遅延回路 72,83…フリップフロップ回路 73…クリア信号発生回路 74,82…論理積回路 75,81…論理和回路 76,90…反転回路 80…ホールド制御部 84…プリセット信号発生回路 131…CANH端子 132…CANL端子 133…TXD端子 134…RXD端子