特許第5778134号(P5778134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778134
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20150827BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61Q19/02
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-509708(P2012-509708)
(86)(22)【出願日】2011年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2011058854
(87)【国際公開番号】WO2011126098
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-89775(P2010-89775)
(32)【優先日】2010年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 稔
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−188547(JP,A)
【文献】 特開平03−047143(JP,A)
【文献】 特開平10−265325(JP,A)
【文献】 特開平06−107539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を有効成分とするメラニン生成抑制剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
【請求項2】
一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である請求項記載のメラニン生成抑制剤。
【請求項3】
一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である請求項記載のメラニン生成抑制剤。
【請求項4】
一般式(1)中のRが、エチル基である請求項記載のメラニン生成抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン生成抑制剤及びこれを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
しみ、そばかすは、メラニンの生成と排泄のバランスが崩れ、表皮細胞にメラニンが過剰に蓄積したものである。これらの原因は、炎症、ホルモンのバランス、遺伝的要因等、様々であるが紫外線の影響により助長される。増加した色素沈着を緩和するのが美白剤である。
このうち、皮膚の黒化やしみ、そばかすを防ぎ、本来の白い肌を保つための美白化粧料に応用されているものとしては、コウジ酸、アルブチン、ハイドロキノンモノベンジルエーテル、過酸化水素等が知られている。しかしながら、これらの美白剤を配合すると、若干、色黒の肌を淡色化する効果はあるものの、美白化粧料として十分満足すべき効果が得られておらず、さらに紫外線による炎症抑制効果はなく、安全性の面でも問題を残すものが多かった。また、紫外線による炎症を抑制する美白剤としては、ビタミンC及びその誘導体が知られている。
【0003】
また、ラズベリーケトン、ロドデンドロール又はそれらの誘導体が優れたメラニン生成抑制作用及び美白作用を有することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−265325号公報
【特許文献2】特開平2−188547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの美白成分は、美白効果が十分でない、外用剤基剤への溶解性が十分でない、製剤中での安定性が十分でない等の欠点を有していた。
従って、本発明の課題は、良好な美白作用に加えて安定性、外用剤基剤への溶解性に優れた化合物を探索し、当該化合物を含有する皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される化合物が既存の美白剤、例えば特許文献1記載の化合物よりも優れた美白作用を有することを見出し、また、分子中に不安定な分子構造を有さないことから多種の製剤系において安定に配合可能であり、かつ外用剤基剤への溶解性も良好であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[30]の発明を提供するものである。
【0008】
[1]下記一般式(1)で表される化合物を含有する皮膚外用剤。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
[2]一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である[1]記載の皮膚外用剤。
[3]一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である[1]記載の皮膚外用剤。
[4]一般式(1)中のRが、エチル基である[1]記載の皮膚外用剤。
[5]下記一般式(1)で表される化合物を含有する美白化粧料。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
[6]一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である[5]記載の美白化粧料。
[7]一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である[5]記載の美白化粧料。
[8]一般式(1)中のRが、エチル基である[5]記載の美白化粧料。
[9]下記一般式(1)で表される化合物を有効成分とするメラニン生成抑制剤。
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
[10]一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である[9]記載のメラニン生成抑制剤。
[11]一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である[9]記載のメラニン生成抑制剤。
[12]一般式(1)中のRが、エチル基である[9]記載のメラニン生成抑制剤。
[13]皮膚外用のための、下記一般式(1)で表される化合物。
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
[14]一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である[13]記載の化合物。
[15]一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である[13]記載の化合物。
[16]一般式(1)中のRが、エチル基である[13]記載の化合物。
[17]皮膚外用が、美白のために皮膚に適用するものである[13]〜[16]のいずれか1項記載の化合物。
[18]皮膚外用が、皮膚におけるメラニン生成抑制のために皮膚に適用するものである[13]〜[16]のいずれか1項記載の化合物。
[19]皮膚外用剤製造のための、下記一般式(1)で表される化合物の使用。
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
[20]一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である[19]記載の使用。
[21]一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である[20]記載の使用。
[22]一般式(1)中のRが、エチル基である[20]記載の使用。
[23]美白化粧料製造のための、下記一般式(1)で表される化合物の使用。
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
[24]一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である[23]記載の使用。
[25]一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である[23]記載の使用。
[26]一般式(1)中のRが、エチル基である[23]記載の使用。
[27]メラニン生成抑制剤製造のための、下記一般式(1)で表される化合物の使用。
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)
[28]一般式(1)中のRが、炭素数1〜4のアルキル基である[27]記載の使用。
[29]一般式(1)中のRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である[27]記載の使用。
[30]一般式(1)中のRが、エチル基である[27]記載の使用。
【発明の効果】
【0023】
本発明に用いる化合物(1)は、優れた美白作用を有し、かつ安定性に優れるとともに外用剤基剤への溶解性も良好であることから種々の外用剤への応用が容易であり、良好な美白作用を有する皮膚外用剤を提供することができる。また、この皮膚外用剤は、使用感や嗜好性も優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】製造例1の4−(3−メトキシブチル)フェノールの13C−NMRスペクトルを示す図である。
図2】製造例1の4−(3−エトキシブチル)フェノールの13C−NMRスペクトルを示す図である。
図3】製造例1の4−(3−プロポキシブチル)フェノールの13C−NMRスペクトルを示す図である。
図4】製造例1の4−(3−イソプロポキシブチル)フェノールの13C−NMRスペクトルを示す図である。
図5】製造例1の4−(3−オクチルオキシブチル)フェノールの13C−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
【0026】
本発明で用いられる4−(3−アルコキシブチル)フェノール(化合物(1))は、上記一般式(1)で表される化合物である。当該化合物(1)は、例えば、特許文献2に記載されており、既知である。しかしながら、化合物(1)は、特許文献2のように液晶化合物等の有機電子材料として有用であることは知られているが、皮膚に適用できるか否かは全く知られていない。
一般式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、またアミノ基や水酸基等の置換基を有していてもよい。具体的には、炭素数1〜8のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。また、アミノ基や水酸基を有するものの例として、1,3−プロパンジオールやプロピレングリコール、グリセリン、セリノール、1,3−ブチレングリコール等由来の基が挙げられる。このうち炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。これらの範囲内であればメラニン生成抑制効果と各種溶媒への溶解性により優れる。但し、Rには糖類は含まない。
【0027】
本発明で用いられる化合物(1)の製造方法は、公知の合成方法により得られる4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンやラズベリー等の4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンを含有する植物の抽出物から分離精製したものを出発原料として用い、公知の有機合成反応により製造することができる。例えば、トリフルオロ酢酸溶媒中において、4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンと任意のアルコール及びトリエチルシランを反応させる方法等がある。また、ラズベリー等の植物抽出物を適当な方法により処理した後、目的とする4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物を分離精製することにより得ることもできる。
【0028】
上記方法等により得られた化合物(1)は、光学異性体が存在するが、(+)体、(−)体単独でも、またそれらの混合物を用いることもできる。
【0029】
また、本発明で用いる化合物(1)は、上記一般式(1)で表される4−(3−アルコキシブチル)フェノールのうち、いずれか1種類を単独で用いてもよいし、又はそれらの2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0030】
化合物(1)は、後記実施例に示すように、特許文献1記載の化合物に比べて優れたメラニン生成抑制作用及び美白作用を有する。また、エステル油やアルコール等の溶媒に対する溶解性が高く、さらにエステル結合のような不安定な結合を有さないため、安定かつ安全に化粧料等の外用剤に配合することができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、化合物(1)をその配合目的、配合対象とするものにより一概に規定できないが、美白作用、安定性の点から、通常は皮膚外用剤の総量を基準として、0.0001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%の範囲内の含有量とすることができる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤は、化合物(1)のメラニン生成抑制作用、美白作用に基づき、メラニン生成抑制剤、美白化粧料とすることが好ましい。本発明の皮膚外用剤は、化合物(1)の他に、既に公知であるハイドロキノン、アルブチン、エラグ酸、ビタミンC及びその誘導体(例えば、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等)、ビフェニル誘導体(例えば、デヒドロジクレオソール、2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジプロピルビフェニル等)、及び特許文献1に記載の4−(4−ヒドロキシフェニル−)−2−ブタノン及びその誘導体、4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール、4−(3−ヒドロキシブチル)フェニルアセテート等のメラニン生成抑制剤、火棘エキス、ジオスコレアコンポジータエキス、岩白菜エキス、カミツレ抽出物、アデノシン5’−1−リン酸及びその塩、リノール酸誘導体、ビタミンB3及びその誘導体、トラネキサム酸及びトラネキサム酸塩、トラネキサム酸誘導体等の美白剤を適宜組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤は、上記の他、ヒアルロン酸、多価アルコール、糖アルコール等の保湿剤、タール系色素、酸化鉄等の着色顔料、パラベン等の防腐剤、脂肪酸石けん、セチル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、ベタイン型、スルホベタイン型、スルホアミノ酸型、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム等の両イオン性界面活性剤、レシチン、リゾフォスファチジルコリン等の天然系界面活性剤、ゼラチン、カゼイン、デンプン、アラビアガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、ドラガカントガム、クインスシード、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の天然高分子、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル及びコーポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキシドポリマー等の合成高分子、キサンテンガム等の増粘剤、酸化チタン等の顔料、ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤等を、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜配合することができる。
【0034】
本発明の皮膚外用剤の形態は、一般に皮膚に塗布する皮膚化粧料の他、入浴剤としてもよい。特に、本発明では4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物が優れたメラニン生成抑制作用を有することから美白化粧料とすることが好ましい。剤型については、本発明の4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物が安定的に配合できるのであれば特に限定されず、例えばローション等の液状、ゲル、乳液、クリーム等の乳化状、シート状、スティック状、適当な賦刑剤等を用いた顆粒状や粉末状の剤型が挙げられる。乳化状のものとしては、油中水型、水中油型、マルチエマルジョンのいずれの形状のものであってもよい。
【実施例】
【0035】
以下、製造例、試験例、及び実施例に基いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下に記載の4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンは一般の試薬として流通しているものを用いた。またNMRは、CDClを測定溶媒とし、日本電子社製のJEOL JNM−LA400により測定した。
【0036】
製造例1:4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物の合成
4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物の合成はMichaelらの方法に従って行った(Journal of the American Chemical Society、pp.3659−3661、1972)。4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン(10mmol)及びトリエチルシラン(11mmol)を各種アルコール(125mmol)に溶解し、氷冷下でトリフルオロ酢酸(375mmol)を滴下した後、室温に戻して24時間攪拌した。反応液に氷水(100mL)を加え、ヘキサン(100mL)で2回抽出した。得られたヘキサン層を飽和食塩水及び飽和炭酸水素ナトリウム水で数回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル溶媒系)で精製し、以下に示す各化合物を得た。これらの化合物の13C−NMRスペクトルを図1図5に示す。
【0037】
4−(3−メトキシブチル)フェノール:無色油状物,H−NMR(CDCl)δ:7.03(2H,d,J=8.3Hz),6.75(2H,d,J=8.3Hz),3.35(3H,s),3.33(1H,m),2.60(2H,m),1.83(1H,m),1.67(1H,m),1.18(3H,d,J=6.2Hz).13C−NMR(CDCl)δ:154.0,133.8,129.4,115.2,76.4,55.8,38.1,30.7,18.9.(図1
【0038】
4−(3−エトキシブチル)フェノール:無色油状物,H−NMR(CDCl)δ:7.05(2H,d,J=8.4Hz),6.75(2H,d,J=8.4Hz),3.57(1H,m),3.40(2H,m),2.61(2H,m),1.80(1H,m),1.66(1H,m),1.21(3H,t,J=6.8Hz),1.16(3H,d,J=6.2Hz).13C−NMR(CDCl)δ:153.8,134.0,129.4,115.2,74.7,63.7,38.5,30.9,19.7,15.5.(図2
【0039】
4−(3−プロポキシブチル)フェノール:
無色油状物,H−NMR(CDCl)δ:7.04(2H,d,J=8.8Hz),6.73(2H,d,J=8.4Hz),3.45(1H,m),3.37(1H,m),3.29(1H,m),2.61(2H,m),1.82(1H,m),1.66(1H,m),1.58(2H,q,J=7.3Hz),1.15(3H,d,J=6.0Hz),0.93(3H,t,J=7.3Hz).13C−NMR(CDCl)δ:153.5,134.5,129.4,115.1,74.6,70.2,38.7,30.9,23.3,19.7,10.8.(図3
【0040】
4−(3−イソプロポキシブチル)フェノール:
無色油状物,H−NMR(CDCl)δ:7.04(2H,d,J=8.8Hz),6.74(2H,d,J=8.8Hz),3.64(1H,septet,J=6.2Hz),3.46(1H,m),2.65(1H,m),2.53(1H,m),1.76(1H,m),1.65(1H,m),1.15(3H,d,J=6.0Hz),1.14(3H,d,J=6.4Hz,1.13(3H,d,J=6.0Hz).13C−NMR(CDCl)δ:153.5,134.5,129.4,115.1,72.3,69.3,39.1,31.1,23.3,22.6,20.8.(図4
【0041】
4−(3−オクチルオキシブチル)フェノール:無色油状物,H−NMR(CDCl)δ:7.02(2H,d,J=8.0Hz),6.75(2H,d,J=8.0Hz),3.53(1H,m),3.37(2H,m),2.61(2H,m),1.84(1H,m),1.67(1H,m),1.58(2H,m),1.26(m),1.18(3H,d,J=6.0Hz),0.86(3H,t,J=6.6Hz).13C−NMR(CDCl)δ:153.8,134.1,129.4,115.2,74.8,68.6,38.5,31.8,30.9,30.0,29.4,29.2,26.2,22.6,19.6,14.1.(図5
【0042】
試験例1:溶解性試験
上記製造例1で得られた4−(3−エトキシブチル)フェノールを用いて、下記に示す溶解性試験を行った。尚、比較対象として、4−(3−ヒドロキシブチル)フェノールを用いた。
【0043】
(試験方法)
各化合物0.1gに、下記表1に示した各種溶媒1mLを加え、40℃で10分間加温後、室温に戻した。この時の溶媒への溶解性を目視にて評価した。評価は、溶解している場合を「○」、不溶物が残っている場合を「×」と判定した。
【0044】
結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より、本発明の4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物は、4−(3−ヒドロキシブチル)フェノールと比較して低極性溶媒への溶解性に優れることが分かる。
【0047】
試験例2:in vitroメラニン生成抑制試験
上記製造例1で得られた4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物について下記に示すメラニン生成抑制試験を行った。尚、比較対象として、メラニン生成抑制作用が公知であるアルブチン、アスコルビン酸、コウジ酸、リノール酸を用いた。
【0048】
(試験方法)
B16メラノーマ細胞を、10vol%牛胎児血清含有MEM培地で、12穴培養プレートに1×10個/wellとなるように播種し、常法にて24時間前培養した。前培養後、各評価試料を各種濃度で添加した試験培地と培地交換し、72時間培養を行った。試験培地としては、上記の前培養用培地にテオフィリンを2mmol/Lとなるように添加したものを使用した。培養後、細胞を回収し、10vol%ジメチルスルホキシドを含有する1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、溶解液のOD475値を測定してメラニン量の指標とした。また同時に、Coomasie Plus Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて、溶解液の総タンパク質量を定量し、タンパク質量当たりのメラニン量を算出した。
【0049】
(IC50
算出したタンパク質量当たりのメラニン量に基き、下式により各種添加濃度毎にメラニン生成抑制率を求めた。
メラニン生成抑制率(%)=(A−B)/A×100
(但し、A:試料無添加時のタンパク質量当たりのメラニン量、B:試料添加時のタンパク質量当たりのメラニン量)
次いで、横軸に試料添加濃度、縦軸にメラニン生成抑制率をプロットしたグラフを作成し、このグラフから各評価試料がメラニン生成を50%抑制する濃度(IC50)を決定した。
【0050】
結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果から、本発明の4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物は、公知のメラニン生成抑制剤であるアルブチン、アスコルビン酸、コウジ酸、リノール酸と比較して、優れたメラニン生成抑制効果を示すことが分かった。
【0053】
試験例3:3次元培養皮膚モデルを用いたメラニン生成抑制試験
上記製造例1で得られた4−(3−アルコキシブチル)フェノールについて下記に示すメラニン生成抑制試験を行った。尚、比較対象として、アルキル基を除去した4−(3−ヒドロキシブチル)フェノール、同じ炭素数を有するエステル化合物である4−(3−アセトキシブチル)フェノール、4−(3−プロパノイルオキシブチル)フェノールを用いた。
【0054】
(試験方法)
メラニン細胞含有培養皮膚モデル(MEL−300、Asian Doner、倉敷紡績株式会社製)の皮膚モデルカップに被験物質溶液0.2mLを入れ、皮膚モデルを製品添付のLLMM培地を用いて14日間培養した。培養期間中、培地は3日おきに交換した。培養14日後、皮膚モデルを洗浄し、AlamarBlue(Molecular Probe社製)試薬を用いた蛍光測定(Excitation:560nm、Emmition:590nm)により生存率を測定した後、各皮膚モデル中のメラニン合成量を測定した。メラニン合成量は、各皮膚モデルをPBSに浸漬して細胞層を分離後、PBS及び含水エタノールで洗浄し、2NNaOH水溶液0.2mLを加えて100℃、3時間の条件でメラニン抽出した溶液の比色測定(405nm)により求めた。
【0055】
(試験結果)
結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果から、本発明の4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物は、各比較例と比して良好な美白作用を有することが分かった。特に、同じ炭素数の化合物である4−(3−エトキシブチル)フェノールと4−(3−アセトキシブチル)−フェノール、及び4−(3−プロポキシブチル)フェノールと4−(3−プロパノイルオキシブチル)フェノールとの比較からは、エステル結合を有する化合物に比してエーテル結合を有する化合物(1)のほうが、美白作用に関して良好に寄与することが示された。尚、上記試験濃度において、いずれも細胞毒性は検出されなかった。
【0058】
試験例3:美白実用試験
上記製造例1で得られた4−(3−エトキシブチル)フェノール化合物を配合したスキンクリーム(実施例1)を用いて、下記に示す美白実用試験を行った。尚、比較対象として、美白作用が公知であるアルブチンを配合したスキンクリーム(比較例1)を用いた。
【0059】
(試験方法)
被験者20名の前腕屈側部皮膚に、夏季の太陽光を3時間(1日1.5時間で連続2日間)曝露した。曝露後より被験者の左前腕屈側部皮膚には、下記表4の実施例1のスキンクリームを1日朝夕1回ずつ13週間連続で塗布した。また被験者の右前腕屈側部皮膚には、下記表3の比較例1のスキンクリームを同様の条件で塗布した。
最終塗布終了時に、左右の前腕屈側部皮膚の連用前後における美白の程度に関し、専門判定員により評価した。尚、評価は美白効果が確認された被験者を「美白効果あり」とし、その人数を示した。
【0060】
【表4】
【0061】
(結果)
結果を下記表5に示す。この結果から、本発明の製造例1の4−(3−エトキシブチル)フェノール化合物を配合したスキンクリームは、比較例1のアルブチンを配合したスキンクリームと比較して、美白化粧料として非常に優れていることが分かる。なお、試験期間中、実施例1のスキンクリームを塗布した部位に、皮膚刺激反応及び皮膚感作反応が認められた被験者はおらず、本発明品が製剤の形態においても安全であることが確認できた。
【0062】
【表5】
【0063】
次に、製造例1の各化合物を用いて、下記の配合成分に従い、常法により各化粧料を製造した。
【0064】
実施例2(スキンローション)
【0065】
【表6】
【0066】
実施例3(スキンクリーム)
【0067】
【表7】
【0068】
実施例4(クリーム)
【0069】
【表8】
【0070】
実施例5(クリーム)
【0071】
【表9】
【0072】
実施例6〜8(サンスクリーン)
【0073】
【表10】
【0074】
実施例9〜11(美容液)
【0075】
【表11】
【0076】
実施例12〜13(化粧水)
【0077】
【表12】
【0078】
実施例14(乳液)
【0079】
【表13】
【0080】
本発明の4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物を、実施例2〜14の化粧料製剤へ応用することができ、またこれらを使用することにより優れたメラニン生成抑制効果、及び美白効果が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物は安定性に優れ、幅広い剤型、例えば、ローション類、乳液類、クリーム類、パック類、入浴剤等の皮膚外用剤に応用することが可能である。また、本発明の4−(3−アルコキシブチル)フェノール化合物は、優れたメラニン生成抑制効果及び美白効果を有することから、皮膚の美容の面において非常に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5