【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
実施例1 各種ウイルスプレローディング法によるSupT1細胞への遺伝子導入
【0048】
(1)DON−ZsGreenレトロウイルスベクターの調製
pZsGreen Vector(クロンテック社製)を制限酵素BamHIとEcoRI(タカラバイオ社製)で切断し、アガロースゲル電気泳動を行い、緑色蛍光タンパク質ZsGreenをコードする配列を含む約0.7kbpのフラグメントを回収した。回収したフラグメントをDNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)を用いて末端平滑化後、pDON−AI DNA(タカラバイオ社製)に挿入し、組換えレトロウイルスベクタープラスミドpDON−ZsGreenを取得した。次に、当該プラスミドとRetrovirus Packaging Kit Eco(タカラバイオ社製)を用いてエコトロピックDON−ZsGreenウイルスを作製した。その後、これをGaLVレトロウイルスパッケージング細胞PG13に感染させた。感染細胞から高力価のウイルス産生細胞をクローニングしてレトロウイルスベクター産生細胞株PG13/DON−ZsGreenを樹立した。さらに当該産生細胞を用いて、5mM 酪酸ナトリウムを含有する培地で常法によりGaLV/DON−ZsGreenウイルス液を取得した(以下、DON−ZsGreenレトロウイルスベクターと称す)。なお、取得したウイルス液のRNAタイターは1.88×10
10コピー/mLであった。
【0049】
(2)SupT1細胞へのZsGreen遺伝子導入
表面未処理24ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン社製)に1ウェルあたり500μLの20μg/mLのフィブロネクチンフラグメントであるCH−296(商品名レトロネクチン;タカラバイオ社製)を添加して4℃で一晩放置した後、500μLのPBSで2回洗浄した。本明細書の実施例では、このプレートをCH−296コートプレートとし、必要に応じて作製した。
【0050】
実施例1−(1)で調製したDON−ZsGreenレトロウイルスベクターをRPMI培地にて60倍に希釈し、CH−296コートプレートに1ウェルあたり1mLずつ添加した。プレローディング(RBV法におけるレトロウイルスベクターの培養容器への結合)中のプレートの振とう条件は、プレローディング中にプレートを振とうしない(静置した)もの、35rpmで傾斜角9度のシーソー型の振とう機(Mild Mixer, SI−36(TAITEC社製))による振とうを行ったもの、及び100rpmでの傾斜0度、振とう幅3cmの横揺れによる振とう機(Personal10 INCUBATOR PERSONAL、TAITEC社製)による振とうを行ったものの3種類について検討した。プレローディングは、これらの各振とう条件について、4℃〜37℃のインキュベーション温度、及び2時間〜24時間のインキュベーション時間で実施した。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSを1ウェルあたり1mLずつ使用して各ウェルを洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含む培地を用いて5×10
5cells/mLとなるようにSupT1細胞(ATC CCRL−1942)を懸濁し、前述のウイルスをプレロードしたウェルに1mLずつ添加し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で培養してレトロウイルス感染(レトロウイルスベクターによる遺伝子導入)を行った。培養開始から1日目(培養1日目)に細胞懸濁液を新たな表面未処理24ウェルプレートに移した後、10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含む培地を1ウェルあたり4mLずつ添加し、細胞懸濁液を5倍希釈した。この細胞懸濁液について、培養3日目まで培養を継続した。
【0051】
(3)遺伝子導入効率の解析
実施例1−(2)で得られた培養3日目の細胞をフローサイトメーターFACS CantoII(ベクトン・ディッキンソン社製)に供し、遺伝子導入効率としてZsGreen陽性率を算出した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるように、4℃もしくは16℃で4時間以上プレローディングすることにより、高い遺伝子導入効率が示された。特に4℃もしくは16℃で6時間以上の振とうによるプレローディングを行うことにより、高い導入効率が示された。一方、37℃については4時間のプレローディング時間で最も導入効率が高く、それ以降は時間が長くなるに従って導入効率は著しく低下した。さらに振とうの速度に関しては100rpmでの横揺れにおいて高い導入効率が示された。
【0054】
実施例2 4℃振とうプレローディング法の繰り返しによるSupT1細胞への遺伝子導入
(1)実施例1−(1)で調製したDON−ZsGreenレトロウイルスベクターをRPMI培地にて30倍に希釈し、CH−296コートプレートに1ウェルあたり1mLずつ添加した。プレローディング中のプレートは、100rpmで傾斜0度の横揺れによる振とうに供した。インキュベーション時間は、24時間行ったもの(24時間試験区)、及びプレローディングの繰り返しによる効果を調べるため、16時間後に新鮮なウイルス液1mLに置換し、さらに8時間のインキュベーション行ったもの(16+8時間試験区)の2試験区について試験した。インキュベーション温度は、いずれの試験も4℃で実施した。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSを1ウェルあたり1mLずつ使用して各ウェルを洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含む培地を用いて5×10
5cells/mLとなるようにSupT1細胞を懸濁し、前述のウイルスをプレロードしたウェルに1mLずつ添加し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で培養してレトロウイルス感染を行った。培養開始から1日目(培養1日目)に0.4mLの細胞懸濁液を新たな表面未処理24ウェルプレートに移した後、10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含む培地を1ウェルあたり1.6mLずつ添加し、細胞懸濁液を5倍希釈した。この細胞懸濁液について、培養3日目まで培養を継続した。
【0055】
(2)遺伝子導入効率の解析
実施例2−(1)で得られた培養3日目の細胞をフローサイトメーターFACS CantoII(ベクトン・ディッキンソン社製)に供し、遺伝子導入効率としてZsGreen陽性率を算出した。その結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示されるように、4℃振とう条件下でプレローディングを繰り返すことにより、1回のプレローディングより高い遺伝子導入効率が示され、プレローディングを繰り返すことによるCH−296がコートされた容器上へのレトロウイルスベクターの濃縮効果が示された。
【0058】
実施例3 細胞培養用バッグを用いた各種閉鎖系プレローディング法によるSupT1細胞への遺伝子導入
(1)培養面積60cm
2の培養バッグCultiLife(登録商標) Spin(タカラバイオ社製)に20μg/mLのCH−296を10mL注入して4℃で一晩以上放置した後、15mLのPBSで2回洗浄した。このバッグをCH−296コートバッグとし、以下の実験に使用した。
【0059】
実施例1−(1)で調製したDON−ZsGreenレトロウイルスベクターをRPMI培地にて30倍及び60倍に希釈し、CH−296コートバッグに30mLずつ注入した。プレローディング中のCH−296コートバッグの振とう条件は、プレローディング中にバッグを振とうしない(静置した)もの、及び100rpmでの傾斜0度の横揺れによる振とうを行ったものについて検討した。プレローディングは、これらの各振とう条件について、4℃のインキュベーション温度、20時間のインキュベーション時間で実施した。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSを1バッグあたり15mLずつ使用して各バッグを洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含む培地を用いて5×10
5cells/mLとなるようにSupT1細胞を懸濁し、前述のウイルスをプレロードしたバッグに30mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で3日間培養してレトロウイルス感染を行った。
【0060】
(2)遺伝子導入効率の解析
実施例3−(1)で得られた培養3日目の細胞をフローサイトメーターFACS CantoII(ベクトン・ディッキンソン社製)に供し、遺伝子導入効率としてZsGreen陽性率を算出した。その結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示されるように、4℃振とう条件下でプレローディングすることにより、37℃4時間のプレローディングと比較して高い遺伝子導入効率が示された。この結果は、実施例1の表1の24ウェルプレートを培養容器として用いた試験と同等の結果であることから、本発明の方法では、処理容量の30倍ものスケールアップを容易に行えることが示された。
【0063】
実施例4 各種ウイルスプレローディング法によるCD4陽性T細胞集団への遺伝子導入
(1)LNGFR及びMazF遺伝子搭載レトロウイルスベクターの調製
LNGFR及びMazF遺伝子搭載レトロウイルスベクターの調製は国際公開第2008/133137号パンフレットの実施例1及び2と同様の方法で行った。すなわち、HIV LTR−MazFカセットがレトロウイルスベクターゲノムの転写とは逆方向に挿入され、かつヒトLow affinity Nerve Growth Factor Receptorの細胞外ドメインをコードする遺伝子がヒトPGKプロモーターの下流に順方向に挿入された組換えレトロウイルスベクタープラスミドpMT−MFR−PL2を取得し、当該プラスミドを用いてエコトロピックMT−MFR−PL2ウイルスを作製した後、これをGaLVレトロウイルスパッケージング細胞PG13に感染させ、高力価のウイルス産生細胞をクローニングしてレトロウイルスベクター産生細胞株PG13/MT−MFR−PL2を樹立した。さらに当該産生細胞を用いて、5mM 酪酸ナトリウムを含有する培地で常法によりGaLV/MT−MFR−PL2ウイルス液を取得した。なお、取得したウイルス液のRNAタイターは6.6×10
9コピー/mLであった。
【0064】
(2)CD4陽性T細胞集団の調製
インフォームド・コンセントの得られた健常人ドナーTK19及びTK29から常法に従い調製したヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、2mM EDTA、0.1% BSAを含むPBS(以下、Buffer1と称す)を用いて1×10
7cells/mLになるように懸濁後、Buffer1で洗浄したCD8ポジティブセレクションビーズ(Dynabeads M−450 CD8:インビトロジェン社製)をPBMC1×10
7cellsあたり2×10
7ビーズとなるように添加した。ローテーターを用いて4℃で30分間緩やかに攪拌したのち、ビーズを含む細胞懸濁液を磁気分離装置MPC−15(Dynal社製)上に2〜3分静置してビーズ非結合細胞を回収した(以下、CD8除去細胞集団と記載)。回収したCD8除去細胞集団を500×gで5分間遠心したのち、X−VIVO15(ロンザ社製)を基礎とするリンパ球培養用培地(以下、X−VIVO15CMと称する)を用いて、5×10
5cells/mLになるように懸濁した。
【0065】
(3)実施例4−(2)で調製した細胞集団への遺伝子導入及び拡大培養
(3)−1 レトロウイルスベクターのプレローディング
ウイルスベクターのプレローディングは4℃、19時間の振とう区、37℃、4時間の振とう区、及び32℃、3時間の遠心区の3種の方法で行った。すなわち、CH−296コートプレートに実施例2−(1)で調製したGaLV/MT−MFR−PL2ウイルス液を1ウェルあたり1mLずつ添加し、4℃、19時間の振とう、37℃、4時間の振とう、もしくは32℃、2000×g、3時間の遠心により、レトロウイルスベクターのプレローディングを行った。振とう条件は、シーソー型の振とう機であるMild Mixer, SI−36を用いて傾斜角度は9度、振とう速度は35rpmで行った。その後、上清を除去し、1.5%HSAを含むPBSを1ウェルあたり1mLずつ使用して各ウェルを洗浄した。こうして作製したプレローディングプレートは、使用するまで4℃で保存した。
【0066】
(3)−2 培養開始
実施例4−(2)で調製したCD8除去細胞集団を底面積25cm
2細胞培養用フラスコ(コーニング社製)に10mL添加した。細胞数に対して3倍量のDynabeads Human T−Activator CD3/CD28(インビトロジェン社製)を遠心管に分注後、X−VIVO15で洗浄し、上記細胞を含むフラスコに添加し、フラスコを立てて37℃、5%CO
2インキュベータ内での培養を開始した(培養0日目)。
【0067】
(3)−3 遺伝子導入
培養3日目に細胞を遠心管に回収し、500×g、5分間遠心して上清を除去した後、5×10
5cells/mLとなるようにX−VIVO15CMを加えて懸濁した。実施例3−(3)−1で作製したプレローディングプレートから上清を除去した後、上記細胞懸濁液を1ウェルあたり1mLずつ添加し、37℃、5%CO
2インキュベータ内でインキュベートして細胞へのレトロウイルス感染を行った。なお、非感染区では、プレローディングプレートの代わりにCH−296コートプレートを用いる以外は上記と同様の操作を行った。
【0068】
(3)−4 拡大培養
培養4日目に実施例4−(3)−3でレトロウイルス感染を行った細胞を遠心管に回収し、500×gで5分間遠心して上清を除去し、2mLのX−VIVO15CMに懸濁して2倍希釈培養した。さらに培養5日目にHuman AB Serum(ロンザ社製)を終濃度5%となるように添加したX−VIVO15CMを加えて、5倍希釈培養を培養7日目まで行った。
【0069】
(4)遺伝子導入効率の解析
実施例4−(3)で得られた培養7日目の細胞を0.1%BSA/PBSで洗浄した。次に、0.1%BSA/PBSに細胞を懸濁し、ここに抗体反応液として、FITC標識マウス抗ヒトCD8抗体(ベクトン・ディッキンソン社製)、PerCP標識マウス抗ヒトCD3抗体(ベクトン・ディッキンソン社製)、APC標識マウス抗ヒトLNGFR抗体(Miltenyi Biotec社製)、及びAPC‐Cy7標識マウス抗ヒトCD4抗体(ベクトン・ディッキンソン社製)を含む抗体液を添加し、抗体反応を行った。その後、0.1%BSA/PBSで細胞を2回洗浄し、再度0.1%BSA/PBSに懸濁した。この細胞をフローサイトメトリーに供し、遺伝子導入効率として、各々の細胞集団のCD3陽性CD4陽性細胞中のLNGFR陽性率を算出した。その結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
その結果、いずれのドナーにおいても4℃、19時間の振とう区の遺伝子導入率が最も高く、32℃、3時間の遠心区よりもはるかに高効率であることが明らかになった。
【0072】
実施例5 振とうウイルスプレローディング法によるCD4陽性T細胞集団への遺伝子導入
(1)レトロウイルスベクターの調製
実施例4−(1)に記載のレトロウイルスベクター産生細胞株PG13/MT−MFR−PL2を用いて、5mM 酪酸ナトリウムを含有する培地もしくは含有しない培地で常法によりGaLV/MT−MFR−PL2ウイルス液を取得した。なお、取得したウイルス液のRNAタイターを下記表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
(2)CD8除去細胞集団の調製
実施例4−(2)と同様の方法で、インフォームド・コンセントの得られた健常人ドナーTK19からCD8除去細胞集団を調製し、X−VIVO15CMを用いて、5×10
5cells/mLになるように懸濁した。
【0075】
(3)実施例5−(2)で調製した細胞集団への遺伝子導入及び拡大培養
(3)−1 レトロウイルスベクターのプレローディング
ウイルスベクターのプレローディングは4℃、30時間振とうすることにより行った。すなわち、実施例1−(2)と同様の方法で得られたCH−296コートプレートに実施例5−(1)で調製した酪酸ナトリウム含有もしくは非含有のGaLV/MT−MFR−PL2ウイルス液を1ウェルあたり0.7mLずつ添加し、4℃、30時間の振とうによりレトロウイルスベクターのプレローディングを行った。振とうは、シーソー型の振とう機であるMild Mixer, SI−36を用いて傾斜角度は9度、振とう速度は35rpmで行った。プレローディング後は、上記ウイルス液を除去し1.5%HSAを含むPBSを1ウェルあたり1mLずつ使用して各ウェルを洗浄する区(ウイルス洗浄区)と、ウイルス液を除去しない区(ウイルス非洗浄区)を設定した。こうして作製したプレローディングプレートは、使用するまで4℃で保存した。
【0076】
(3)−2 培養開始
実施例5−(2)で調製したCD8除去細胞集団を底面積25cm
2細胞培養用フラスコ(コーニング社製)に12mL添加した。細胞数に対して3倍量のDynabeads Human T−Activator CD3/CD28(インビトロジェン社製)をX−VIVO15で洗浄した後、上記細胞を含むフラスコに添加し、フラスコを立てて37℃、5%CO
2インキュベータ内での培養を開始した(培養0日目)。
【0077】
(3)−3 遺伝子導入
培養3日目に細胞を遠心管に回収し、500×g、5分間遠心して上清を除去した後、7.14×10
5cells/mLとなるようにX−VIVO15CMを加えて懸濁した。実施例5−(3)−1で作製したプレローディングプレートから、ウイルス洗浄区については上清を除去した後、上記細胞懸濁液を1ウェルあたり0.7mLずつ添加後、さらに1ウェルあたり0.3mLのX−VIVO15CMを添加した(最終密度5×10
5/ウェル)。ウイルス非洗浄区については、各ウイルス液の入ったウェルに上記細胞懸濁液を1ウェルあたり0.7mLずつ添加した(最終密度5×10
5/ウェル)。これらのプレートを、37℃、5%CO
2インキュベータ内でインキュベートして細胞へのレトロウイルス感染を行った(感染1回目)。
【0078】
さらに培養4日目に細胞を遠心管に回収し、500×g、5分間遠心して上清を除去した後、各細胞を0.7mLのX−VIVO15CMに懸濁し、培養3日目と同様にレトロウイルス感染を行った(感染2回目)。
【0079】
(3)−4 拡大培養
培養5日目にHuman AB Serum(ロンザ社製)を終濃度5%となるように添加したX−VIVO15CMを加えて、5倍希釈培養を培養7日目まで行った。さらに培養7日目にHuman AB Serum(ロンザ社製)を終濃度5%となるように添加したX−VIVO15CMを加えて、4倍希釈培養を培養10日目まで行った。なお、非感染区では、プレローディングプレートの代わりにCH−296コートプレートを用いる以外は上記の実施例5−(3)−2〜実施例5−(3)−4と同様の操作を行った。各試験区の拡大培養率を表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
以上より、酪酸ナトリウム添加ウイルス液を用いた場合、ウイルス液の洗浄を行わないと細胞増殖が阻害されることが示された。一方、酪酸ナトリウム無添加ウイルス液を用いた場合は、ウイルス液の洗浄を行わなくとも非感染区と比較して同等の拡大培養率が示された。
【0082】
(4)遺伝子導入効率の解析
実施例5−(3)で得られた培養10日目の細胞を0.1%BSA/PBSで洗浄した。次に、0.1%BSA/PBSに細胞を懸濁し、ここに抗体反応液として、FITC標識マウス抗ヒトCD8抗体(ベクトン・ディッキンソン社製)、PerCP標識マウス抗ヒトCD3抗体(ベクトン・ディッキンソン社製)、APC標識マウス抗ヒトLNGFR抗体(Miltenyi Biotec社製)、及びAPC‐Cy7標識マウス抗ヒトCD4抗体(ベクトン・ディッキンソン社製)を含む抗体液を添加し、抗体反応を行った。その後、0.1%BSA/PBSで細胞を2回洗浄し、再度0.1%BSA/PBSに懸濁した。この細胞をフローサイトメトリーに供し、遺伝子導入効率として、各々の細胞集団のCD3陽性CD4陽性細胞中のLNGFR陽性率を算出した。その結果を表7に示す。
【0083】
【表7】
【0084】
その結果、酪酸ナトリウム添加ウイルス液を用いてウイルスプレローディングを行い、ウイルス液の洗浄を行った区が最も遺伝子導入効率が高いことが示された。また酪酸ナトリウム無添加ウイルスを用いた場合は、酪酸ナトリウム添加ウイルスを用いた場合よりは劣るものの、同等レベルの遺伝子導入を実施できることが示された。
【0085】
実施例6 細胞培養用バッグを用いた閉鎖系プレローディング法によるSupT1細胞への遺伝子導入
(1)MazF遺伝子搭載レトロウイルスベクターの調製
MazF遺伝子搭載レトロウイルスベクターの調製は国際公開第2008/133137号パンフレットの実施例1および2と同様の方法で行った。すなわち、HIV LTR−MazFカセットがレトロウイルスベクターゲノムの転写とは逆方向に挿入された組換えレトロウイルスベクタープラスミドpMT−MFR3を取得し、当該プラスミドを用いてエコトロピックMT−MFR3ウイルスを作製した後、これをGaLVレトロウイルスパッケージング細胞PG13に感染させ、高力価のウイルス産生細胞をクローニングしてレトロウイルスベクター産生細胞株PG13/MT−MFR3を樹立した。さらに、5mM 酪酸ナトリウムを含有するGT−T−RetroI培地(タカラバイオ株式会社製)にて上記のレトロウイルス産生細胞を32℃で24時間培養して得られた培養上清を採取し、GaLV/MT−MFR3ウイルス液を取得した。なお、取得したウイルス液のRNAタイターは1.4×10
10コピー/mLであった。
【0086】
(2)SupT1細胞へのMazF遺伝子導入
OriGen社のガス透過性培養バッグPermaLife PL30に、1バッグあたり9mLの20μg/mLのCH−296を添加して4℃で一晩放置した後、15mLのPBSで2回洗浄した。このバッグをCH−296コートバッグとし、以下の実験に使用した。
【0087】
実施例6−(1)で調製したMT−MFR3レトロウイルス液をGT−T−RetroI培地にて2倍に希釈した。プレローディング条件は、CH−296コートバッグに希釈後のウイルス液を25mL注入した後に振とうを16時間、または24時間行ったもの、CH−296コートバッグに25mLのウイルスベクターと10mLの無菌の空気を注入した後に振とうを16時間行ったもの、の3種類について検討した。振とうは、傾斜0度、振とう幅2.5cmの横揺れ振とう機(MMS−3010:東京理化器械社製)を用いて、100rpmの振とう速度で行った。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSを1バッグあたり15mL使用してバッグを洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5×10
5cells/mLとなるように調製したSupT1細胞懸濁液を、前述のウイルスをプレロードしたバッグに25mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で24時間培養した。次に、各試験区の細胞を懸濁し、10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5倍希釈した後、さらに2日間培養した。
【0088】
(3)遺伝子導入効率の解析
実施例6−(2)で得られた細胞1×10
6個相当より、FastPure(登録商標) DNA Kit(タカラバイオ社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、Provirus Copy Number Detection Primer Set, Human (for Real Time PCR)(タカラバイオ社製)を用いて導入コピー数の測定を行った。結果を下記表8に示す。
【0089】
【表8】
【0090】
PermaLife PL30の素材は他のバッグに比べて硬質である。当該バッグにウイルス液のみ注入して密封した場合の振とう時の内容液の動きは小さいが、ウイルス液と空気をバッグ内に注入した場合には内容液の動きが大きくなった。また、表8に示されるように、密封された細胞培養用バッグにウイルス液と共に空気を注入することにより、プレローディングの効率が向上することが示された。
【0091】
実施例7 インキュベーション時間の検討(プレート感染)
(1)SupT1細胞へのMazF遺伝子導入
実施例6−(1)と同様の方法で調製したMT−MFR3レトロウイルス液をGT−T−RetroI培地にて2倍希釈し、CH−296コートプレートに1ウェルあたり1mLずつ添加した。プレローディング条件は、CH−296コートプレートに希釈後のウイルス液を1mL注入した後に振とうを12、16、24、48または72時間行ったものについて検討した。振とうは、傾斜0度、振とう幅2.5cmの横揺れ振とう機(MMS−3010:東京理化器械社製)を用いて、100rpmの振とう速度で行った。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSを1ウェルあたり0.5mL添加して洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5×10
5cells/mLとなるように調製したSupT1細胞懸濁液を、前述のウイルスをプレロードしたプレートに1mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で24時間培養した。次に、各試験区の細胞を懸濁し、10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5倍希釈した後、さらに2日間培養した。
【0092】
(2)遺伝子導入効率の解析
実施例7−(1)で得られた細胞1×10
6個相当より、実施例6−(3)と同様の方法で導入コピー数の測定を行った。結果を下記表9に示す。
【0093】
【表9】
【0094】
その結果、MT−MFR3レトロウイルスベクターによる遺伝子導入効率はインキュベーション時間が16時間の時が最も高く、インキュベーション時間が12〜48時間までは1コピー/細胞以上の導入効率が実現できた。
【0095】
実施例8 インキュベーション時間の検討(スモールスケールバッグ感染)
(1)SupT1細胞へのMazF遺伝子導入
実施例6−(1)と同様の方法で調製したMT−MFR3レトロウイルス液をGT−T−RetroI培地にて4倍希釈し、OriGen社のガス透過性培養バッグPermaLife PL30を用いて実施例6−(2)と同様に調製したCH−296コートバッグに25mLずつ注入し、さらにバッグ中に10mLの無菌の空気を注入してインキュベーションを行った。また、コントロールとしてCH−296コートプレートに上記の4倍希釈したレトロウイルス液を1ウェルあたり1mLずつ添加してインキュベーションを行った。プレローディング条件は、PL30については振とうを12、16もしくは24時間、プレートについては16時間のみ行ったものについて検討した。振とうは、傾斜0度、振とう幅2.5cmの横揺れ振とう機を用い、100rpmの振とう速度で行った。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSをバッグあたり15mL、プレートについては1ウェルあたり0.5mL注入して洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて4×10
5cells/mLとなるように調製したSupT1細胞懸濁液を、前述のウイルスをプレロードしたバッグに25mLずつ、プレートについては1ウェルあたり1mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で8時間培養した(総細胞数1×10
7細胞/PL30バッグ)。次に、各試験区の細胞を懸濁し、10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて4倍希釈した後、さらに3日間培養した。
【0096】
(2)遺伝子導入効率の解析
実施例8−(1)で得られた細胞1×10
6個相当より、実施例6−(3)と同様の方法で導入コピー数の測定を行った。結果を下記表10に示す。
【0097】
【表10】
【0098】
その結果、PL30バッグを用いた場合でも、いずれの試験区も十分な遺伝子導入効率が示され、さらにインキュベーション時間が24時間の時はプレートよりも高い遺伝子導入効率が示された。
【0099】
実施例9 ラージスケールバッグ感染の検討
(1)ラージスケールバッグでの溶液可動性試験
OriGen社のガス透過性培養バッグPermaLife PL325(培養面積362.6cm
2)に180mLの10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を注入し、傾斜0度、50rpmの空気を入れない横揺れ振とう、傾斜4度、35rpmの空気を入れないシーソー型振とうを行った。その結果、PL325を用いた場合は、バッグ中に空気を入れなくてもバッグ端部まで十分な可動性が得られていることを確認した。
【0100】
(2)SupT1細胞へのMazF遺伝子導入
PL325に、1バッグあたり65mLの20μg/mLのCH−296を添加して4℃で一晩放置した後、108mLのPBSで2回洗浄した。このバッグをCH−296コートバッグとし、以下の実験に使用した。
【0101】
実施例6−(1)で調製したMT−MFR3レトロウイルス液をGT−T−RetroI培地にて4倍希釈してウイルス希釈液を調製し、CH−296コートバッグに180mLずつ、CH−296コートプレートに1ウェルあたり1mLずつ添加した。プレローディング条件は、PL325バッグについては、傾斜0度、50rpmの空気を入れない横揺れ振とう、傾斜4度、35rpmの空気を入れないシーソー型振とうの2条件を実施した。プレートについては、傾斜0度、100rpmの横揺れ振とうを行った。インキュベーション時間は、いずれも16時間行った。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSをバッグあたり108mL、プレート1ウェルあたり0.5mL添加して洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて4×10
5cells/mLとなるように調製したSupT1細胞懸濁液を、前述のウイルスをプレロードしたバッグに180mLずつ、プレートに1mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で8時間培養した(総細胞数7.2×10
7細胞/バッグ)。
【0102】
8時間後、プレート試験区については、表面未処理24ウェルプレートにて細胞を10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて4倍希釈してさらに3日間培養を行った。PL325バッグ試験区については、1.5mLをサンプリングし、表面未処理24ウェルプレートにてプレート試験区と同様に4倍希釈してさらに3日間培養を行った。サンプリング後のバッグは、上下を反転させて5%CO
2インキュベータ内でさらに3日間培養することで、感染から8時間目までとは異なるバッグ面での感染を行った。
【0103】
(2)遺伝子導入効率の解析
実施例9−(1)で得られた細胞1×10
6個相当より、実施例6−(3)と同様の方法で導入コピー数の測定を行った。結果を下記表11に示す。
【0104】
【表11】
【0105】
その結果、PL325のラージスケールバッグを用いた場合でも、横揺れやシーソー型の振とうを伴うプレローディングにより、遺伝子導入効率は24ウェルプレートと同程度の十分な遺伝子導入効率が示され、さらに感染途中でバッグを反転させることでプレートよりも高い遺伝子導入効率が示された。これにより、本発明の遺伝子導入方法は、ラージスケールバッグを用いた大量の細胞への遺伝子導入に極めて適していることが示された。
【0106】
実施例10 ウイルス液再利用試験
(1)ウイルス液のプレローディング1(使用済ウイルス液の回収)
PL325バッグに、1バッグあたり65mLの20μg/mLのCH−296を添加して4℃で一晩放置した後、100mLのACD−Aで2回洗浄した。このバッグをCH−296コートバッグとした。
【0107】
実施例6−(1)と同様の方法で調製したMT−MFR3レトロウイルス液原液を、CH−296コートバッグに180mL添加した。プレローディング条件は、傾斜0度、50rpmの空気を入れない横揺れ振とうを実施した。インキュベーション温度は4℃、インキュベーション時間は16時間とした。インキュベーションの終了後ウイルス液を回収し、使用済ウイルス液とした。
【0108】
(2)ウイルス液のプレローディング2
使用済ウイルス液を用いた場合の感染効率を調べるため、実施例1−(2)と同様の方法で得られたCH296コートプレートにウイルス液を1ウェルあたり1mLずつ添加した。ウイルス液は、実施例10−(1)で使用したウイルス液原液と同ロットのウイルス液原液(New Virus)、使用済ウイルス液(Used Virus)、New VirusをGT−T−RetroIで2倍希釈したもの(New Virus+GT−T−RetroI)およびNew VirusをUsed Virusで希釈したもの(New Virus+Reuse Virus)の計4種類を用いた。その後、傾斜0度、振とう幅2.5cmの横揺れ振とう機(MMS−3010:東京理化器械社製)を用いて、100rpmの振とう速度で4℃にて16.5時間の振とうを行った。インキュベーション終了後、ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含む生理食塩水を1ウェルあたり0.5mL添加して洗浄した。
【0109】
(3)細胞への遺伝子導入
10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5×10
5cells/mLとなるように調製したSupT1細胞懸濁液を、前述のウイルスをプレロードしたプレートに1mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で24時間培養した。次に、各試験区の細胞を懸濁し、10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5倍希釈した後、さらに2日間培養した。
【0110】
(4)遺伝子導入効率の解析
実施例10−(1)で得られた細胞1×10
6個相当より、実施例6−(3)と同様の方法で導入コピー数の測定を行った。結果を下記表10に示す。
【0111】
【表12】
【0112】
その結果、4℃条件下で16.5時間のプレローディングを行った後の使用済ウイルス液は、未使用のウイルス液の2倍希釈と同等の力価を有していることが示された。本実施例により、本発明の遺伝子導入方法における低温でのウイルスプレロードで使用したウイルス液は、再利用に適していることが明らかになった。
【0113】
実施例11 インキュベーション時間の検討1(ラージスケールバッグ感染)
(1)SupT1細胞へのMazF遺伝子導入
実施例6−(1)と同様の方法で調製したMT−MFR3レトロウイルス液をGT−T−RetroI培地にて4倍希釈してウイルス希釈液を調製し、OriGen社のガス透過性培養バッグPermaLife PL325を用いて実施例9−(2)と同様の方法で調製したCH−296コートバッグに180mLずつ、CH−296コートプレートに1ウェルあたり0.5mLずつ添加した。プレローディング条件は、PL325バッグについては、傾斜0度、50rpmの空気を入れない横揺れ振とうを実施した。プレートについては、傾斜0度、100rpmの横揺れ振とうを行った。インキュベーション時間は、PL325については16、24もしくは48時間とし、プレートについては16時間とした。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSをバッグあたり108mL、プレート1ウェルあたり0.5mL添加して洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5×10
5cells/mLとなるように調製したSupT1細胞懸濁液を、前述のウイルスをプレロードしたバッグに180mLずつ、プレートに1mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で培養した(総細胞数7.2×10
7細胞/バッグ)。8時間後、バッグ試験区についてはバッグを反転させて、引き続き37℃、5%CO
2インキュベータ内で培養した。
【0114】
翌日、プレート試験区については、表面未処理24ウェルプレートにて細胞を10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5倍希釈してさらに2日間培養を行った。PL325バッグ試験区については、1.5mLをサンプリングし、表面未処理24ウェルプレートにてプレート試験区と同様に5倍希釈してさらに2日間培養を行った。
【0115】
(2)遺伝子導入効率の解析
実施例11−(1)で得られた細胞1×10
6個相当より、実施例6−(3)と同様の方法で導入コピー数の測定を行った。結果を下記表13に示す。
【0116】
【表13】
【0117】
その結果、PL325のラージスケールバッグを用いた場合、いずれの試験区においてもプレートと比較してより高い遺伝子導入効率が示され、さらにインキュベーション時間は今回の試験区では16時間が最も効果的であった。
【0118】
実施例12 インキュベーション時間の検討2(ラージスケールバッグ感染)
(1)SupT1細胞へのMazF遺伝子導入
実施例6−(1)と同様の方法で調製したMT−MFR3レトロウイルス液をGT−T−RetroI培地にて4倍希釈してウイルス希釈液を調製し、OriGen社のガス透過性培養バッグPermaLife PL325を用いて実施例9−(2)と同様の方法で調製したCH−296コートバッグに180mLずつ、CH−296コートプレートに1ウェルあたり0.5mLずつ添加した。プレローディング条件は、PL325バッグについては、傾斜0度、50rpmの空気を入れない横揺れ振とうを実施した。プレートについては、傾斜0度、100rpmの横揺れ振とうを行った。インキュベーション時間は、PL325については8、12、16もしくは20時間とし、プレートについては16時間とした。インキュベーションの終了後ウイルス液を除去し、1.5%HSAを含むPBSをバッグあたり108mL、プレート1ウェルあたり0.5mL添加して洗浄した。次に10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5×10
5cells/mLとなるように調製したSupT1細胞懸濁液を、前述のウイルスをプレロードしたバッグに180mLずつ、プレートに1mLずつ注入し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で培養した(総細胞数7.2×10
7細胞/バッグ)。2時間後、バッグ試験区についてはバッグを反転させて、引き続き37℃、5%CO
2インキュベータ内で培養した。
【0119】
翌日、プレート試験区については、表面未処理24ウェルプレートにて細胞を10%FBS、1%Penicillin−Streptmycinを含むRPMI1640培地を用いて5倍希釈してさらに3日間培養を行った。PL325バッグ試験区については、1.5mLをサンプリングし、表面未処理24ウェルプレートにてプレート試験区と同様に5倍希釈してさらに3日間培養を行った。
【0120】
(2)遺伝子導入効率の解析
実施例12−(1)で得られた細胞1×10
6個相当より、実施例6−(3)と同様の方法で導入コピー数の測定を行った。結果を下記表14に示す。
【0121】
【表14】
【0122】
その結果、PL325のラージスケールバッグを用いた場合、いずれの試験区においてもプレートと比較してより高い遺伝子導入効率が示され、さらにインキュベーション時間は今回の試験区では12時間と16時間が効果的であることが示された。