(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778155
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】RFIDトランスポンダシステム用アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/26 20060101AFI20150827BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20150827BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H01Q9/26
H01Q1/38
G06K19/077 252
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-529310(P2012-529310)
(86)(22)【出願日】2010年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-505618(P2013-505618A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】FI2010050706
(87)【国際公開番号】WO2011033172
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年8月20日
(31)【優先権主張番号】20095965
(32)【優先日】2009年9月18日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【弁理士】
【氏名又は名称】小合 宗一
(72)【発明者】
【氏名】ヤーッコラ,カールレ
【審査官】
富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−511234(JP,A)
【文献】
特開2004−357203(JP,A)
【文献】
特開2005−191705(JP,A)
【文献】
特表2009−524363(JP,A)
【文献】
特表2011−501513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H01Q 7/00
H01Q 9/26
G06K 19/00 − 19/06
G06K 19/07 − 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・基板(3)と、
・導電性材料(1)からなり、前記基板(3)に支持され、その一端たる第一端がRFIDチップ(2)の第一の端子に接続されるループアンテナ(15)と、
・前記導電性材料(1)からなり、前記基板(3)に支持され、その一端がRFIDチップ(2)の第二の端子に接続される直線状の導体と、
を備える長距離用の前記RFIDチップ(2)のためのアンテナにおいて、
・前記ループアンテナ(15)は磁気双極子であり、
・前記ループアンテナ(15)の第二端領域は、前記ループアンテナ(15)の前記第一端を含む第一端領域、前記直線状の導体、及び前記RFIDチップ(2)と重なり、それによって前記RFIDチップ(2)に直列接続される直列キャパシタンス(Cs,11a)と、前記直列キャパシタンス(Cs)および前記RFIDチップ(2)に並列接続される並列キャパシタンス(Cp,11b)と、を形成し、
・前記直列キャパシタンス(Cs)は、前記ループアンテナ(15)の前記第二端領域が前記直線状の導体と重なることにより形成され、
・前記並列キャパシタンス(Cp)は、前記ループアンテナ(15)の前記第一端領域と前記ループアンテナ(15)の前記第二端領域が重なることにより形成される
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
その配列にマイクロチップ(2)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記直列および並列キャパシタンス(Cs,Cp)は、前記導電性材料(1)の第一および第二の拡張部を重ねることによって、大きさが異なってはいるが完全に重なっている各領域であるペアの電極(11a,11b)で形成され、それによってその小さい方の領域が前記直列および並列キャパシタンス(Cs,Cp)のキャパシタンスの値を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記ループアンテナ(15)、前記直線状の導体、および、前記直列および並列キャパシタンス(Cs,Cp)は前記基板(3)を前記導電性材料(1)で包むことによって形成されることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記ループアンテナ(15)、前記直線状の導体、および、前記直列および並列キャパシタンス(Cs,Cp)はプリント回路基板技術を用いて形成されることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項6】
各ビア(12)が前記ループアンテナ(15)および前記直線状の導体を形成するために用いられることを特徴とする、請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記ループアンテナ(15)に一体化された容量性インピーダンス変成器を用いることによって、前記RFIDチップ(2)と前記ループアンテナ(15)の間の共役インピーダンス整合が実行されることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項8】
・基板(3)に導電性材料(1)からなるループアンテナ(15)および直線状の導体を形成するステップと、
・前記直線状の導体をRFIDチップ(2)内の回路に連結するための第一の連結手段(11a)を形成するステップと、
・前記ループアンテナ(15)を前記RFIDチップ(2)内の回路に連結するための第二の連結手段(11b)を形成するステップと、
を備える長距離用の前記RFIDチップ(2)のためのアンテナを形成する方法であって、
・前記ループアンテナ(15)を磁気双極子として形成するステップをさらに備え、
・前記ループアンテナ(15)の第二端領域を前記直線状の導体および前記RFIDチップ(2)と重ねることにより、前記第一の連結手段(11a)を形成し、それによって前記RFIDチップ(2)に直列接続される直列キャパシタンス(Cs)を形成し、
・前記ループアンテナ(15)の第二端領域を、前記ループアンテナ(15)の第一端を含む第一端領域および前記RFIDチップ(2)と重ねることにより、前記前記第二の連結手段(11b)を形成し、それによって前記直列キャパシタンス(Cs)および前記RFIDチップ(2)に並列接続される並列キャパシタンス(Cp)を形成することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記RFIDチップ(2)がマイクロチップ(2)であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一および第二の連結手段(11a,11b)を、前記導電性材料(1)の第一および第二の拡張部を重ねることによって、大きさが異なってはいるが完全に重なっている各領域であるペアの電極(11a,11b)で形成し、それによってその小さい方の領域が前記直列および並列キャパシタンス(Cs,Cp)のキャパシタンスの値を決定することを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ループアンテナ(15)、前記直線状の導体、および、前記第一および第二の連結手段(11a,11b)を、基板(3)を前記導電性材料(1)で包むことによって形成することを特徴とする、請求項8〜10のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ループアンテナ(15)、前記直線状の導体、および、前記第一および第二の連結手段(11a,11b)を、プリント回路基板技術を用いて形成することを特徴とする、請求項8〜10のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
各ビア(12)を、前記ループアンテナ(15)および前記直線状の導体を形成するために用いることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ループアンテナ(15)に一体化された容量性インピーダンス変成器を用いることによって、前記RFIDチップ(2)と前記ループアンテナ(15)の間の共役インピーダンス整合が実行されることを特徴とする、請求項8〜13のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項1の前段部分によれば、本発明はアンテナに関する。
【0002】
本発明は前記アンテナの製造方法にも関する。
【0003】
前記アンテナは、例えば遠隔識別回路と共に使用される。
【背景技術】
【0004】
今までのところ、極超短波RFIDトランスポンダの市場は、安物なラベルと、より高価で金属のプラットフォームにも適用できる剛体のタグと、に二分されている。標準的な剛体のトランスポンダは大きくて高価で、それ故に大きくて高価なアイテムのみに適用できる。いくつかの小さな剛体のタグは市場に参入しているが、大きなものよりも著しく低い能力である。
【0005】
今日の市場においては、いくつかの小さな金属マウント型のRFIDトランスポンダがすでに入手できる。本文において、「小さな」をトランスポンダの設置面積領域が10平方センチ未満で、最大寸法が波長(867MHzでは86ミリ)の四分の一未満と定義することができる。一般に、これらの小さなタグの抱える問題は、サイズの小さなトランスポンダを製造することは常に妥協の原因となる。実際的に、これらの妥協は読取範囲を縮小し、当該読取範囲は受動RFIDシステムの信頼性と能力を評価するためのキーになるパラメータである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第一に、前記トランスポンダの放射効率はサイズ制限によって低下する。これは基本的に、完全には克服できず、例えば最適な材料によって最小限に抑えられるだけの、完全には克服できない物理的事実である。しかし、非常に小さなアンテナでは、マイクロチップとアンテナの間の貧弱なインピーダンス整合は一般的に、減少した放射効率よりも、読取範囲の損失のより大部分さえも引き起こす。前記アンテナと、最適操作のために必要とされる前記マイクロチップと、の間を連結する共役インピーダンスは、一般的にとても小さなアンテナと現行の方法では達成されることができない。とても小さなタグにおける最も代表的な解決策は、反応カップリングのみを提供することであり、当該解決策は部分的な解決策である。例えば携帯機器や基地局のような、アンテナを有する、より複雑な無線システムにおいては、この必要とされるインピーダンス整合はしばしば、各個別部品(キャパシタとインダクタ)或いは各マイクロストリップ素子を使用して達成される。小さなRFIDタグにとって、マイクロストリップ素子は大きすぎる手段である。各ディスクリート部品は十分に小さいだろう、しかし、それらは費用と処理可能性の理由によって、問題外である。
【0007】
今日の市場に存在する小さな金属マウント型のトランスポンダは、いくぶんか妥協した能力を有する。前記小さなアンテナの低い放射効率に加えて、それらの読取範囲はマイクロチップとアンテナの間の貧弱なインピーダンス整合によって著しく減少する。
【0008】
誘導的に、容量的に、或いは、無線周波数(RF)放射場の補助と関連付けられて、接続が行われ得るものと同様に、異なる数タイプ、受動型、半受動型(或いはバッテリ補助受動型)、および、能動型、のRFIDトランスポンダが存在する。受動型トランスポンダは、必要とする電気エネルギーを、それらを目的とするRF場から生成する。能動型と半受動型トランスポンダにおいては、独立したバッテリ或いは他の電源が存在する。誘導的に接続されるRFIDとリモートセンサシステムは一般的に、100〜125kHz或いは13.56MHzの周波数で稼働する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の最も好適な各実施例は、無線周波数放射場を使用して読み取り可能な受動型RFIDトランスポンダに関する。ただし、アンテナのタイプは全てのアプリケーションにおいて好都合なものであり、当該アプリケーションにおいては、アンテナは小型さを兼ね備えて長い読取間隔を備えることと、ベース、例えば、品物或いはパッケージの表面に取り付けられ得ることと、を求められる。そのような表面は通常平坦である。本発明に最も有利に適している周波数は、869MHzと2.45GHzである。
【0010】
RFIDトランスポンダは、アンテナと、メモリを有する超小型回路と、を備える小さな機器であり、当該機器は、送信コマンドを読取機器から受け取り、前記読取機器が無線信号に伴ってそれを明らかにする。バッテリのない受動型RFIDトランスポンダにおいては、当該RFIDトランスポンダは、代わりに、当該RFIDトランスポンダに送信された無線信号から当該RFIDトランスポンダが要求する動作電力を引き出す。電力と、前記トランスポンダと前記読取機器の間の情報と、の送信は、磁界、電界、或いは、放射無線信号の補助を伴って行われてもよい。多くのトランスポンダアプリケーションにおいては、読取器とトランスポンダの間の距離が長いこと−実に数メートルに至る、は重要である。
【0011】
本発明は、全く新しい型のアンテナと当該アンテナを製造するための方法とを開発するために、従来技術の少なくともいくつかの欠点を取り除くことを目的とする。
【0012】
本発明は、特に長距離での稼働のための、高性能で小さくなおかつ低コストなオールプラットフォームトランスポンダを可能にする技術的解決策である。
【0013】
本発明は、磁気双極子を長距離RFIDトランスポンダにおけるアンテナ(放射器)として使用することに基く。本発明の好適な解決策において、共役インピーダンス整合は、放射器からマイクロチップまでに、前記アンテナの統合された部分を用いた容量性インピーダンス変成によって形成される。小さな磁気双極子(ループ)アンテナの給電インピーダンスの抵抗成分はとても低い。このタイプのアンテナのリアクタンス成分は正で、抵抗成分に比べてとても高い。一方で、マイクロチップのインピーダンスは容量性で、その実部は非整合ループアンテナのそれよりも高い。このことは、容量性インピーダンス変成器を用いることによって前記磁気双極子アンテナと前記マイクロチップの間の最適な共役インピーダンス整合を達成することを可能にする。前記アンテナを製造するこの新しいやり方は、この容量性変成器、ひいては、外部要素なしでのアンテナの一部としての最適なインピーダンス整合を提供する。
【0014】
本発明はオールプラットフォームUHF RFIDトランスポンダ(或いはタグ)であり、当該トランスポンダ(或いはタグ)はサイズ的に小さく、しかしそれでも、長い読取距離を備える。本発明はまた、前記トランスポンダの低コストで繰り返し性の高い製造工程を可能にする解決策をも含む。良好な能力とプラットフォーム公差は、磁気双極子を放射器として利用すること、そして、さらに重要なことには、前記アンテナと前記マイクロチップの間の共役インピーダンス整合を提供することに基く。このことは一般的に、とても小さいトランスポンダでは難しい。前記インピーダンス整合は、インピーダンス変成器の実行という新しいやり方である。これは標準的な各処理と、安価で一般的な各材料と、で達成される。
【0015】
さらに具体的に言うと、本発明におけるアンテナは、請求項1の特徴部に記載されたものによって特徴づけられる。
【0016】
本発明における方法は、同様に、請求項10の特徴部に記載されたものによって特徴づけられる。
【0017】
重要な長所が本発明の助けによって獲得される。
【0018】
長い読取範囲、小さなサイズ、プラットフォーム公差、そして、低コストを本発明によって達成することができるので、多くの例えば金属体が同程度の読取範囲の今までのトランスポンダよりもずっと小さく安物のトランスポンダで標識されることができる。
【0019】
このアンテナタイプは、それ故に取り付けられる表面の影響を受けない。本発明の実施例におけるこのアンテナタイプはまた、製造も経済的である。加えて、そのセンサ構造はまた、簡単に低コストで例えばRFID電子機器と組み合わせることができる。
【0020】
以下において、本発明を各添付図面における実施例を補助とし検討する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明における一つのアンテナの斜視図を示す。
【
図2】本発明における一つのアンテナの垂直断面図を示す。
【
図3】本発明におけるトランスポンダの等価回路の概略を示す。
【
図4】本発明における別のアンテナの斜視図を示す。
【
図5】本発明における別のアンテナの上面図を示す。
【
図6a】
図4の一つの起こり得る具体例を上面図としてさらに詳細に示す。
【
図6b】
図4の一つの好適な具体例を上面図として示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の小型トランスポンダにおいて、基本理念は高価な部品なしでインピーダンス整合を取ることである。インピーダンス整合のために必要とされるキャパシタはアンテナの金属層と誘電層によって形成され、したがって高価な追加要素を使用する代わりに、トランスポンダの一部として、それらのキャパシタを結合する。このタイプの集積キャパシタでは、表面実装部品と比べてその領域は大きくできるので、とても高いQの値が達成され、そして接触抵抗はごくわずかである。本発明はまた、マイクロチップと、集積キャパシタと、そして、前記アンテナ自身と、を組み合わせる新しい原理を包含し、当該原理はその構造を簡素で製造工程が容易なままに保つ。そのタグは、例えば柔軟なインレーで1かたまりのプラスチックを包むことによって、製造されてもよい。また、プリント基板技術を製造のために使用してもよい。この後者の場合には、基板全体を貫く、タグの両端の2つのビアだけが必要となる。例えば高い誘電率を有する材料(当該材料は時として小さなトランスポンダのために使用される)等の特別な材料は必要とされない。それよりむしろ、PEやPP等の安物のプラスチックがトランスポンダにとってとても良好な基板材料である。金属パターンとマイクロチップとを有する前記柔軟なインレーは、安価で標準的なロールトゥロールプロセスを用いて製造されてもよく、当該プロセスはラベルトランスポンダの製造での使用のために存在する。結合された個別のキャパシタンスを、インピーダンスをマイクロチップ用に調整するために使用する自由は、マイクロチップ用の適切なインピーダンスを獲得可能なままで、磁気双極子を放射器として使用することを可能にする。垂直磁気ループ、技術的には磁気双極子は、小さなサイズではとても効率的な放射器である。それはまた、電気双極子とは違って、さほど近接場の影響を受けない。したがって、当該トランスポンダはプラットフォームに寛容、金属表面でも当該トランスポンダの使用が許容される状態にされ、当該表面は最も困難なRFIDトランスポンダ用の取り付けプラットフォームである。磁気双極子の唯一の大きな問題、低すぎるマイクロチップに対する給電インピーダンスは、今や集積キャパシタによって形成される前記インピーダンス変成器によって克服し得る。前記インピーダンス変成器用にキャパシタを形成する方法は、簡単にキャパシタンスの値を変化させ、ひいては様々なインピーダンスを整合させることができるようにする。その結果として、アンテナ自身のサイズを、例えば特定のアプリケーションに基いて自由に選択することができる。
【0023】
とても小さなトランスポンダ、特にこの場合高い内部Q値に伴う一つの一般的問題は、前記アンテナの狭い帯域幅である。これは、寸法の小さな変更が読取範囲の大きな縮小を引き起こしかねないので、製造プロセスの公差の困難な条件を定める。本発明の前記トランスポンダはまた、この問題の解決策を包含している。このタイプのプロセスにおける典型的な製造ミスは各金属層間のずれなので、各層はお互いに関してずれるだろうが、それらの共有領域が変化しないように、前記キャパシタは対称に作成される。
【0024】
前記トランスポンダの構造は以下の各図面に示される。
図1には、アンテナ線、この図ではプラスチックのレンガ状の塊(brick)形をなす基板3の周りの箔インレーを曲げることによって製造される、トランスポンダの実際の実用的な原型の透明な中間層を有する構造の斜視図が示されている。
図2は曲げることによって製造される前記トランスポンダの側面図を示す。前記トランスポンダ10は、薄いプラスチックキャリヤ箔5上の金属パターンと、マイクロチップ2と、を包含するインレー1を備える。この薄くて柔軟なインレー1は、アンテナ15を形成するためのプラスチックのレンガ状の塊3と、キャパシタ11aと11bを形成するインピーダンスと、を包む。キャパシタ11aと11bを転換する前記インピーダンスは、ポイント4aと4bの領域で自身と重なる前記インレー1によって形成される。上記を参照すると、本発明の1つの着想は、一方の電極、一般的に埋め込まれた電極はより大きく、他方、より小さい電極は前記より大きい電極の領域の上に作られるように、連結部のキャパシタの上側と下側の電極を非対称にすることである。この方法によってより小さな電極でキャパシタのキャパシタンス値を規定する。その領域が正確に製造し易く、或いは後で正確に調整し易いような、前記のより小さな電極を選択することによって、前記マイクロチップ2と前記アンテナ15の間のとても良好な結合を達成し得る。言い換えれば、各キャパシタの電極のペア11aと11bは、大きさの異なる領域の各電極によって形成される。前記図面には、前記インレーの各重なる部分の間の任意の薄いプラスチックシート5が示されている。前記インレーの前記プラスチックキャリヤの材料および寸法は、この追加部分が必要とされないように選択されてもよい。前記構造の等価回路が
図3に示されている。前記小さな磁気ループ放射器は誘電性なので、それはアンテナインダクタンスLaとアンテナリアクタンスRaの直列接続によって表わされる。集積キャパシタCp(並列キャパシタンス)は
図2の11bに等しく、Cs(直列キャパシタンス)は11aに等しい。
【0025】
あるいは、
図5にしたがって、カップリング電極11aと11bは、長くて狭い湾曲した電極ギャップ30を有する、平行な各フィンガー電極の形で同一の平面に形成されるかもしれない。キャパシタ11aと11bの値は前記ギャップ30の長さと幅によって調整されてもよい。
【0026】
図4は、プリント基板(PCB)技術によって製造される類似の構造を表す。
この技術を使用すると、トランスポンダは、前記アンテナ15と、キャパシタ11aと11bを転換する前記インピーダンスと、を形成するための3つの金属層、グラウンド層13、中間層14、およびトップ層15であるアンテナ線1を包含する。これらの層は各ビア12によってお互いに接続される。これはまた実用的な原型の断面図でもある。両方のトランスポンダ原型(
図1および
図4)の寸法は50mm×10mm×3mmである。しかし、前記技術はより小さなトランスポンダをも可能にする。この技術と安価で標準的な材料を用いて設計した最小の原型は、寸法で9mm×9mm×3mmである。
【0027】
この発明は様々な寸法とトランスポンダにとってのフォームファクタ(form factor)を可能にする。それらは、顧客のおよびアプリケーションに基く要求にしたがって決定される。50×10×3mm
3から下がって9×9×3mm
3まで(寸法mm単位)の原型が設計されている。
【0028】
図6aにおいては、本発明の1つの好適な実施例によって解決される問題が表わされている。
図6aにおいては、前記導体トップ層15は前記導体中間層14と揃えられていない。そして、それ故に、キャパシタ11bの設計値は取得されず、前記キャパシタ11bのキャパシタンスは設計値よりも小さい。
【0029】
図6bにおいては、この位置合わせの問題は前記導体中間層14をより小さく、そして、前記キャパシタ11bの中央に形成することによって解決される。言い換えれば、2つの電極の一方はより小さく、しかしまた、通常の製造プロセスにおいてより大きい電極が全体に重なるような位置にされる。この方法によってトップ層15の小さなずれはキャパシタ11bのキャパシタンス値に影響を及ぼさない。それに応じて、前記トップ層15はより小さくされてもよく、一方で前記中間層14は前記キャパシタ11bの領域内の前記トップ層より大きい状態を保たれる。
【0030】
製造を基礎とするPCBプロセスに必要とされる全ての技術は容易に得られ、主要な製造にかかわる各問題は解決されている。その代替の曲げによる製造方法は、どの商業提携先でもまだ実行されていない。
【0031】
本発明は、1メートル以上の読取範囲能力を有するトランスポンダを意味する、ロングレンジRFIDトランスポンダを対象とする。
【0032】
本発明の1つの具体的な解決策において、前記構造の寸法は以下のとおりである。
867MHzトランスポンダに対して、
ループ領域(ループの断面):50mm×3mm
キャパシタ11aの間隔:0.2mm
キャパシタ11bの間隔:0.2mm
キャパシタ11aの効果領域:5mm
2
キャパシタ11bの効果領域:6mm
2
これらの各パラメータの原型では、4mの読取範囲が測定されている。(NXP製Ucode G2XMマイクロチップを使用)