(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0015】
[ガラス基板1・磁気ディスク10]
図1および
図2を参照して、まず、本実施の形態に基づく情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られるガラス基板1、およびガラス基板1を備えた磁気ディスク10について説明する。
図1は、磁気ディスク10(
図2参照)に用いられるガラス基板1を示す斜視図である。
図2は、情報記録媒体として、ガラス基板1を備えた磁気ディスク10を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、磁気ディスク10に用いられるガラス基板1(情報記録媒体用ガラス基板)は、中心に孔1Hが形成された環状の円板形状を呈している。ガラス基板1は、表主表面1A、裏主表面1B、内周端面1C、および外周端面1Dを有している。
【0017】
ガラス基板1の大きさは、たとえば0.8インチ、1.0インチ、1.8インチ、2.5インチ、または3.5インチである。ガラス基板の厚さは、破損防止の観点から、たとえば0.30〜2.2mmである。本実施の形態におけるガラス基板の大きさは、外径が約64mm、内径が約20mm、厚さが約0.8mmである。ガラス基板の厚さとは、ガラス基板上の点対象となる任意の複数の点で測定した値の平均によって算出される値である。
【0018】
図2に示すように、磁気ディスク10は、上記したガラス基板1の表主表面1A上に磁気薄膜層2が形成されることによって構成される。
図2中では、表主表面1A上にのみ磁気薄膜層2が形成されているが、裏主表面1B上にも磁気薄膜層2が形成されていてもよい。
【0019】
磁気薄膜層2は、磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂をガラス基板1の表主表面1A上にスピンコートすることによって形成される(スピンコート法)。磁気薄膜層2は、ガラス基板1の表主表面1Aに対してスパッタリング法、または無電解めっき法等により形成されてもよい。
【0020】
ガラス基板1の表主表面1Aに形成される磁気薄膜層2の膜厚は、スピンコート法の場合は約0.3μm〜1.2μm、スパッタリング法の場合は約0.04μm〜0.08μm、無電解めっき法の場合は約0.05μm〜0.1μmである。薄膜化および高密度化の観点からは、磁気薄膜層2はスパッタリング法または無電解めっき法によって形成されるとよい。
【0021】
磁気薄膜層2に用いる磁性材料としては、特に限定はなく従来公知のものが使用できるが、高い保持力を得るために結晶異方性の高いCoを基本とし、残留磁束密度を調整する目的でNiやCrを加えたCo系合金などが好適である。また、熱アシスト記録用に好適な磁性層材料として、FePt系の材料が用いられてもよい。
【0022】
また、磁気記録ヘッドの滑りをよくするために磁気薄膜層2の表面に潤滑剤を薄くコーティングしてもよい。潤滑剤としては、たとえば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈したものが挙げられる。
【0023】
さらに、必要により下地層や保護層を設けてもよい。磁気ディスク10における下地層は磁性膜に応じて選択される。下地層の材料としては、たとえば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、またはNiなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。
【0024】
また、下地層は単層とは限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造としても構わない。たとえば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NiAl/CrV等の多層下地層としてもよい。
【0025】
磁気薄膜層2の摩耗や腐食を防止する保護層としては、たとえば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、シリカ層などが挙げられる。これらの保護層は、下地層、磁性膜など共にインライン型スパッタ装置で連続して形成できる。また、これらの保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一または異種の層からなる多層構成としてもよい。
【0026】
上記保護層上に、あるいは上記保護層に替えて、他の保護層を形成してもよい。たとえば、上記保護層に替えて、Cr層の上にテトラアルコキシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO2)層を形成してもよい。
【0027】
[ガラス基板の製造方法]
次に、
図3に示すフローチャート図を用いて、本実施の形態におけるガラス基板(情報記録媒体用ガラス基板)の製造方法について説明する。
【0028】
本実施の形態におけるガラス基板の製造方法は、ガラスブランク材準備工程(ステップS10)、ガラス基板形成工程(ステップS20)、研磨工程(ステップS30)、化学強化工程(ステップS40)、および洗浄工程(ステップS50)を備えている。化学強化処理工程(ステップS40)を経ることによって得られたガラス基板(
図1におけるガラス基板1に相当)に対して、磁気薄膜形成工程(ステップS60)が実施されてもよい。磁気薄膜形成工程(ステップS60)によって、磁気ディスク10が得られる。
【0029】
以下、これらの各ステップS10〜S60の詳細について順に説明する、以下には、各ステップS10〜S60間に適宜行なわれる簡易的な洗浄については記載していない。
【0030】
(ガラスブランク材準備工程)
ガラスブランク材準備工程(ステップS10)においては、ガラス基板を構成するガラス素材が溶融される(ステップS11)。ガラス素材は、たとえばアルミノシリケートガラスである。溶融したガラス素材は、下型上に流し込まれた後、上型および下型によってプレス成形される(ステップS12)。プレス成形によって、円盤状のガラスブランク材(ガラス母材)が形成される。ガラスブランク材は、ダウンドロー法またはフロート法によって形成されたシートガラス(板ガラス)を、研削砥石で切り出すことによって形成されてもよい。
【0031】
(ガラス基板形成工程)
次に、ガラス基板形成工程(ステップS20)においては、プレス成形されたガラスブランク材の両方の主表面に対して、ラップ研磨処理が施される(ステップS21)。ガラスブランク材の両方の主表面とは、後述する各処理を経ることによって、
図1における表主表面1Aとなる主表面および裏主表面1Bとなる主表面のことである(以下、両主表面ともいう)。ラップ研磨処理は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置などのラップ定盤を、両主表面に押圧することによって行なわれる。ラップ研磨処理によって、ガラス基板としてのおおよその平行度、平坦度、および厚みなどが予備調整される。
【0032】
ラップ研磨処理の後、円筒状のダイヤモンドドリルなどを用いてガラスブランク材の中心部に対してコアリング(内周カット)処理が施される(ステップS22)。コアリング処理によって、中心部に孔の開いた円環状のガラス基板が得られる。中心部の孔に対しては、所定の面取り加工が施されてもよい。
【0033】
(研磨工程)
次に、研磨工程(ステップS30)においては、上述のステップS21と同様に、ガラス基板の両主表面に対してラップ研磨処理が施される(ステップS31)。コアリング工程(ステップS22)においてガラス基板の両主表面に形成された微細なキズや突起物などが除去される。ラップ研磨処理の後、ガラス基板の外周端面がブラシによって鏡面状に研磨される(ステップS32)。研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリーが用いられる。
【0034】
次に、第1ポリッシュ研磨工程(粗研磨)として、ラップ研磨工程(ステップS31)においてガラス基板の両主表面に残留したキズを除去しつつ、ガラス基板の反りを矯正する(ステップS32)。第1ポリッシュ研磨工程においては、遊星歯車機構を利用した両面研磨装置などが使用される。
【0035】
第2ポリッシュ研磨工程(精密研磨)においては、ガラス基板に研磨加工が再度実施され、ガラス基板の両主表面上に残留した微小欠陥等が解消される(ステップS34)。ガラス基板の両主表面は鏡面状に仕上げられることによって所望の平坦度に形成され、ガラス基板の反りも解消される。第2ポリッシュ研磨工程においては、遊星歯車機構を利用した両面研磨装置などが使用される。研磨剤としては、コロイダルシリカが使用される。
【0036】
ここで、
図4および
図5を参照して、両面研磨装置1000の構成について簡単に説明する。
図4は、研磨工程に用いられる両面研磨装置1000の部分断面図、
図5は、
図4中のV−V線矢視断面図である。
【0037】
図4を参照して、両面研磨装置1000は、多数の研削用ペレット100を保持したペレット保持板300a,400aを取り付けた上定盤(上側砥石保持定盤)300および下定盤(下側砥石保持定盤)400の間にキャリア500で保持したディスク状のガラス基板1が配置される。上定盤300と下定盤400とは互いに反対方向に回転するようになっている。
【0038】
また、
図5に示すように、上定盤300と下定盤400との間には、太陽歯車600とインターナル歯車700とが設けられ、キャリア500がこれらの間に配置されている。キャリア500の外周には太陽歯車600とインターナル歯車700とに噛み合う歯車が形成されている。これにより、上下定盤の回転とともに太陽歯車600およびインターナル歯車700も回転してキャリア500が自転及び公転するようになっている。
【0039】
キャリア500の回転方向については、太陽歯車600の回転数と、インターナル歯車700の回転数を変化させることで、時計回りか、反時計回りかを選択できる。この加工装置においては、キャリア500が太陽歯車600のまわりを自転・公転しながら回ると共に、上下定盤300,400もそれぞれ反対方向に回転する。加工装置の上方から見た場合、上定盤300は時計方向に回転し、太陽歯車600,インターナル歯車700,および下定盤400はいずれも反時計方向に回転する。
【0040】
また、この研磨工程においては、コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位とガラス基板1を載置するキャリア500の
表面のゼータ電位と
の電位関係により、コロイダルシリカをキャリア500に対して反発させるとともに、コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位とガラス基板1の
表面のゼータ電位
との電位関係により、コロイダルシリカをガラス基板1に対して反発させている。
【0041】
コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位をζsi
[mV]と表し、キャリア500の
表面のゼータ電位をζc
[mV]と表し、ガラス基板1の
表面のゼータ電位をζs
[mV]と表すとき、ζsi
[mV]<0
[mV]、ζc
[mV]<0
[mV]、ζs
[mV]<0
[mV]の条件を満たす各ゼータ電位でガラス基板1の研磨を行なう。
【0042】
より好ましくは、コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位ζsi
[mV]、キャリア500の
表面のゼータ電位ζc
[mV]、および、ガラス基板1の
表面のゼータ電位ζs
[mV]が、下記の式1から式3の関係を満足すると良い。
【0043】
|ζsi−ζc|≦20
[mV]・・・式1
|ζsi−ζs|≦20
[mV]・・・式2
|ζc−ζs|≦20
[mV]・・・式3
また、コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位ζsi
[mV]、キャリア500の
表面のゼータ電位ζc
[mV]、および、ガラス基板1の
表面のゼータ電位ζs
[mV]の各ゼータ電位の調整剤として、水溶性ポリマーまたは界面活性剤を用いることができる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド(共)重合体、またはエチレングリコールなどが挙げられる。界面活性剤としては、リン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤、または非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0044】
キャリア500の
表面のゼータ電位を調整する場合には、研磨液のpHを変更することに加えて、上記水溶性ポリマーまたは界面活性剤により処理時間や処理に用いる水溶性ポリマーや界面活性剤の濃度を調整することでゼータ電位の値を上昇させたり、下降させることが可能である。例えば、水溶性ポリマーとの接触時間を長くして、ガラス基板やキャリア表面におけるOH基やCOOH基の導入量を増加させた場合には、ゼータ電位の値は減少し、OH基やCOOH基の導入量を低下させた場合にはゼータ電位の値は増加する傾向を示す。
【0045】
コロイダルシリカの
表面のゼータ電位は研磨液のpHを調整することで調整可能であり、研磨液のpHを大きくすると、即ちアルカリ性側に調整するとゼータ電位は低下し(マイナス側に調整可能)、研磨液のpHを小さくすると、即ち酸性側に調整すると、ゼータ電位は増加する(プラス側に調整可能)。更に、上記の水溶性ポリマーや界面活性剤により同様に調整が可能である。
【0046】
また、好ましくは、本研磨工程におけるコロイダルシリカのpHは、3〜13であると良い。更に好ましくはpH10-13である。
【0047】
(化学強化工程)
図3を再び参照して、ガラス基板が洗浄された後、化学強化処理液にガラス基板を浸漬することによって、ガラス基板の両主表面に化学強化層を形成する(ステップS40)。
【0048】
ガラス基板に含まれるリチウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンは、これらのイオンに比べてイオン半径の大きなカリウムイオン等のアルカリ金属イオンによって置換される(イオン交換法)。イオン半径の違いによって生じる歪みより、イオン交換された領域に圧縮応力が発生し、ガラス基板の両主表面が強化される。以上のようにして、
図1に示すガラス基板1に相当するガラス基板が得られる。
【0049】
ガラス基板1に対しては、両主表面上における取り代が0.1μm以上0.5μm以下のポリッシュ研磨処理がさらに施されてもよい。化学強化工程を経た後にガラス基板の主表面上に残留している付着物が除去されることによって、ガラス基板1を用いて製造される磁気ディスクにヘッドクラッシュが発生することが低減される。また、ポリッシュ研磨処理における両主表面上の取り代を0.1μm以上0.5μm以下とすることによって、化学強化処理によって発生した応力の不均一性が表面に現れることもなくなる。本実施の形態におけるガラス基板の製造方法としては、以上のように構成される。
【0050】
なお、第1ポリッシュ研磨工程(粗研磨)と第2ポリッシュ研磨工程(精密研磨)との間に、化学強化工程を施してもかまわない。
【0051】
(洗浄工程)
次に、ガラス基板は洗浄される(ステップS50)。ガラス基板の両主表面が洗剤、純水、オゾン、IPA(イソプロピルアルコール)、またはUV(ultraviolet)オゾンなどによって洗浄されることによって、ガラス基板の両主表面に付着した付着物が除去される。
【0052】
その後、ガラス基板表面上の付着物の数が、光学式欠陥検査装置等を用いて検査される。
【0053】
(磁気薄膜形成工程)
化学強化処理が完了したガラス基板(
図1に示すガラス基板1に相当)の両主表面(またはいずれか一方の主表面)に対し、磁気薄膜層が形成される。磁気薄膜層は、Cr合金からなる密着層、CoFeZr合金からなる軟磁性層、Ruからなる配向制御下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、C系からなる保護層、およびF系からなる潤滑層が順次成膜されることによって形成される。磁気薄膜層の形成によって、
図2に示す磁気ディスク10に相当する垂直磁気記録ディスクを得ることができる。
【0054】
本実施の形態における磁気ディスクは、磁気薄膜層から構成される垂直磁気ディスクの一例である。磁気ディスクは、いわゆる面内磁気ディスクとして磁性層等から構成されてもよい。
【0055】
(作用・効果)
以上、本実施の形態においては、研磨工程において、コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位とガラス基板1の
表面のゼータ電位
との電位関係により、コロイダルシリカをガラス基板1に対して反発させるだけでなく、コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位とガラス基板1を載置するキャリア500の
表面のゼータ電位
との電位関係により、コロイダルシリカをキャリア500に対しても反発させている。これにより、キャリア500へのコロイダルシリカの付着が抑制されることで、キャリア500からガラス基板1へのコロイダルシリカの再付着を防止することができる。
【0056】
[実施例・比較例]
次に、
図6から
図8を参照して、実施例1〜
3、実施例A〜
C、実施例a〜
c、比較例1〜
5、比較例A〜
E、および比較例a〜
eについて説明する。なお、
図3で説明した製造工程を「工程I」と称し、第1ポリッシュ研磨工程(粗研磨)と第2ポリッシュ研磨工程(精密研磨)との間に、化学強化工程を採用した製造工程を「工程II」と称し、化学強化工程を採用しない製造工程を「工程III」と称する。
【0057】
図6に示す、実施例1〜
3および比較例1〜
5は、「工程I」により製造されたガラス基板であり、
図7に示す実施例A〜
Cおよび比較例A〜
Eは、「工程II」により製造されたガラス基板であり、
図8に示す実施例a〜
cおよび比較例a〜
eは、「工程III」により製造されたガラス基板である。
【0058】
また、ガラス基板の組成は、質量%で、SiO2:50%〜70%、Al2O3:0%〜20%、B2O3:0%〜5%である。
【0059】
ただし、SiO2+Al2O3+B2O3=50%〜80%
Li2+Na2+K2O=0%〜20%
MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO=2%〜20%
である。
【0060】
(実施例1〜
3および比較例1〜
5)
図6を参照して、「工程I」でガラス基板を製造した評価結果を、実施例1〜
3および比較例1〜
5として示す。実施例1〜
3および比較例1〜
5は、
図6に示す各pHで研磨した結果を示す。
【0061】
コロイダルシリカは、フジミインコーポレッド社製のCompol20を用い、スウェード製の研磨パッドを用いて、研磨工程を実施した。
【0062】
ゼーダ電位は、大塚電子製のELSZ−2を用いて測定した。キャリアおよびガラス基板は、所定のサイズ(37mm×16mm×5mm)のサンプルを作成し、キャリアおよびガラス基板の平板セルを用いて
各表面のゼータ電位
[mV]を測定した。コロイダルシリカは、フローセルユニットを用いて、
コロイダルシリカの粒子表面のゼータ電位
[mV]を測定した。印加電圧は、60mV/cmである。欠陥(Defect)数は、ガラス基板の端面の欠陥(Defect)数を評価した。
【0063】
また、本実施例においては、コロイダルシリカの
粒子表面、キャリア
の表面及びガラス基板の
表面のゼータ電位
[mV]は、研磨液のpHを
図6に記載のように調整したことに加え、研磨処理前に界面活性剤としてリン酸系界面活性剤溶液と接触させる時間を調整することで、調整した。具体的には、リン酸系界面活性剤(モノアルキルリン酸塩溶液)の濃度を変更することで調整した(通常1%溶液)。濃度を高くした場合には、ゼータ電位は減少し、低くした場合には増加(するか未処理と変化なし)する傾向を示す。
【0064】
実施例1の欠陥数は「6」、実施例2の欠陥数は「8」、実施例3の欠陥数は「9」と、評価結果はいずれも優(A)であった。
比較例5の欠陥数は「17」で、評価結果は良(B)であった。実施例1〜
実施例3および比較例5はいずれも、コロイダルシリカの
粒子表面のゼータ電位をζsi
[mV]と表し、キャリアの
表面のゼータ電位をζc
[mV]と表し、ガラス基板の
表面のゼータ電位をζs
[mV]と表すとき、ζsi
[mV]<0
[mV]、ζc
[mV]<0
[mV]、ζs
[mV]<0
[mV]の条件を満たしていた。
【0065】
また、評価結果が優(A)の実施例1〜実施例3は、下記式1から式3の条件式を具備している。
【0066】
|ζsi−ζc|≦20
[mV]・・・式1
|ζsi−ζs|≦20
[mV]・・・式2
|ζc−ζs|≦20
[mV]・・・式3
一方、比較例1は、ζsi=0
[mV]、ζc=−20(<0)
[mV]、ζs=−45(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「25」で評価は可(C)であった。また、比較例2は、ζsi=5(>0)
[mV]、ζc=−10(<0)
[mV]、ζs=−15(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「28」で評価は可(C)であった。また、比較例3は、ζsi=5(>0)
[mV]、ζc=3(>0)
[mV]、ζs=−20(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「60」で評価は不(D)であった。また、比較例4は、pHが14かつ式3を満たさないため、であることから、欠陥数が「55」で評価は不(D)であった。
【0067】
(実施例A〜
Cおよび比較例A〜
E)
図7を参照して、「工程II」でガラス基板を製造した評価結果を、実施例A〜
Cおよび比較例A〜
Eとして示す。実施例A〜
Cおよび比較例A〜
Eは、
図7に示す各pHで研磨した結果を示す。
【0068】
コロイダルシリカは、フジミインコーポレッド社製のCompol20を用い、スウェード製の研磨パッドを用いて、研磨工程を実施した。
【0069】
ゼーダ電位は、大塚電子製のELSZ−2を用いて測定した。キャリアおよびガラス基板は、所定のサイズ(37mm×16mm×5mm)のサンプルを作成し、キャリアおよびガラス基板の平セルを用いてゼータ電位を測定した。コロイダルシリカは、フローセルユニットを用いて、ゼータ電位を測定した。印加電圧は、60mV/cmである。欠陥(Defect)数は、ガラス基板の端面の欠陥(Defect)数を評価した。
【0070】
実施例Aの欠陥数は「7」、実施例Bの欠陥数は「6」、実施例Cの欠陥数は「10」と、評価結果はいずれも優(A)であった。
比較例Eの欠陥数は「18」で、評価結果は良(B)であった。実施例A〜
実施例Cおよび比較例Eはいずれも、コロイダルシリカのゼータ電位をζsi
[mV]と表し、キャリアのゼータ電位をζc
[mV]と表し、ガラス基板のゼータ電位をζs
[mV]と表すとき、ζsi<0
[mV]、ζc<0
[mV]、ζs<0
[mV]の条件を満たしていた。
【0071】
また、評価結果が優(A)の実施例A〜実施例Cは、下記式1から式3の条件式を具備している。
【0072】
|ζsi−ζc|≦20
[mV]・・・式1
|ζsi−ζs|≦20
[mV]・・・式2
|ζc−ζs|≦20
[mV]・・・式3
一方、比較例Aは、ζsi=0
[mV]、ζc=−20(<0)
[mV]、ζs=−45(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「27」で評価は可(C)であった。また、比較例Bは、ζsi=5(>0)
[mV]、ζc=−10(<0)
[mV]、ζs=−13(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「29」で評価は可(C)であった。また、比較例Cは、ζsi=5(>0)
[mV]、ζc=3(>0)
[mV]、ζs=−20(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「57」で評価は不(D)であった。また、比較例Dは、pHが14かつ式3を満たさないため、欠陥数が「57」で評価は不(D)であった。
【0073】
(実施例a〜
cおよび比較例a〜
e)
図8を参照して、「工程III」でガラス基板を製造した評価結果を、実施例a〜
cおよび比較例a〜
eとして示す。実施例a〜
cおよび比較例a〜
eは、
図8に示す各pHで研磨した結果を示す。
【0074】
コロイダルシリカは、フジミインコーポレッド社製のCompol20を用い、スウェード製の研磨パッドを用いて、研磨工程を実施した。
【0075】
ゼーダ電位は、大塚電子製のELSZ−2を用いて測定した。キャリアおよびガラス基板は、所定のサイズ(37mm×16mm×5mm)のサンプルを作成し、キャリアおよびガラス基板の平セルを用いてゼータ電位を測定した。コロイダルシリカは、フローセルユニットを用いて、ゼータ電位を測定した。印加電圧は、60mV/cmである。欠陥(Defect)数は、ガラス基板の端面の欠陥(Defect)数を評価した。
【0076】
実施例aの欠陥数は「14」、実施例bの欠陥数は「16」、実施例cの欠陥数は「18」と、評価結果はいずれも良(B)であった。
比較例eの欠陥数は「23」で、評価結果は可(C)であった。実施例a〜
cはいずれも、コロイダルシリカのゼータ電位をζsi
[mV]と表し、キャリアのゼータ電位をζc
[mV]と表し、ガラス基板のゼータ電位をζs
[mV]と表すとき、ζsi<0
[mV]、ζc<0
[mV]、ζs<0
[mV]の条件を満たしていた。
しかし、比較例eは、下記式1から式3の条件式を具備していない。
【0077】
また、評価結果が良(B)の実施例
a〜実施例
cは、下記式1から式3の条件式を具備している。
【0078】
|ζsi−ζc|≦20
[mV]・・・式1
|ζsi−ζs|≦20
[mV]・・・式2
|ζc−ζs|≦20
[mV]・・・式3
この実施例a〜
cの評価結果が、実施例1〜
3および実施例A〜
Cに対して評価結果が劣るのは、「工程III」では、「工程I」および「工程II」で実施している「化学強化工程」を採用していないからである。
【0079】
比較例aは、ζsi=0
[mV]、ζc=−20(<0)
[mV]、ζs=−45(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「30」で評価は可(C)であった。また、比較例bは、ζsi=5(>0)
[mV]、ζc=−10(<0)
[mV]、ζs=−15(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「38」で評価は不(D)であった。また、比較例cは、ζsi=5(>0)
[mV]、ζc=3(>0)
[mV]、ζs=−20(<0)
[mV]の条件で、また、上記式1から式3の条件式を具備していないことから、欠陥数が「70」で評価は不(D)であった。また、比較例dは、pHが14かつ式3を満たさないため、欠陥数が「68」で評価は不(D)であった。
【0080】
この比較例a〜
eの評価結果が、比較例1〜
5および比較例A〜
Eに対して評価結果が劣るのは、「工程III」では、「工程I」および「工程II」で実施している「化学強化工程」を採用していないからである。
【0081】
以上、本発明に基づいた実施の形態および各実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。