(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778170
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】並行流蓄熱式石灰焼成炉とその運転方法
(51)【国際特許分類】
C04B 2/12 20060101AFI20150827BHJP
F27B 1/02 20060101ALI20150827BHJP
F27B 1/08 20060101ALI20150827BHJP
F27B 1/26 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
C04B2/12
F27B1/02
F27B1/08 Z
F27B1/26
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-543539(P2012-543539)
(86)(22)【出願日】2010年9月15日
(65)【公表番号】特表2013-513542(P2013-513542A)
(43)【公表日】2013年4月22日
(86)【国際出願番号】EP2010063559
(87)【国際公開番号】WO2011072894
(87)【国際公開日】20110623
【審査請求日】2013年5月8日
(31)【優先権主張番号】102009058304.1
(32)【優先日】2009年12月15日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505446574
【氏名又は名称】メルツ オーフェンバウ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100082924
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100155424
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】ピリンゲル,ハンネス
【審査官】
永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】
H. RUCH,MESS- UND REGELUNGSTECHNIK BEIM KALKBRENNEN,ZEMENT-KALK-GIPS,1973年 6月,V1973 N6,P257-263
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00−2/12
F27B1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が予熱帯(V)、燃焼帯(B)、及び冷却帯(K)を有する少なくとも2本のシャフト(1,2)と、両シャフトを連結するオーバーフロー流路(3)とを備える並行流蓄熱式石灰焼成炉の運転方法であって、
前記2本のシャフトを燃焼用シャフトおよび排気シャフトとして交互に動作させるステップと、
燃焼用空気と燃料を燃焼用シャフトに供給して、対応する長さの火炎を形成するステップと、
燃焼用シャフトにおいて生成された高温ガスがオーバーフロー流路(3)を介して排気シャフトに達するステップと、を含み、
火炎の長さの形成に特徴を示す高温ガスに関する少なくとも1つのパラメータを、オーバーフロー流路(3)の領域における直接的または間接的測定により設定し、所定の火炎の長さを調整するために燃料対燃焼用空気の比率を該パラメータに応じて調整し、
燃焼用シャフト内の火炎の長さを調節するために、
a)オーバーフロー流路(3)における高温ガスの温度の平均値を測定するステップと、
b)オーバーフロー流路(3)における高温ガスの最低温度の平均値を測定するステップと、
c)前記2つの平均値の差(ΔT)を算出するステップと、
d)この差と調整可能な目標値とを比較し、比較結果に応じて供給する燃焼用空気の量を調整するステップと、を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
オーバーフロー流路(3)における高温ガスの温度の平均値を測定する際に、該設定に伴う燃焼時間の初めと終わりにおける調整可能な期間を考慮しないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オーバーフロー流路(3)における高温ガスの最低温度の平均値の測定は、調整可能な複数の焼成サイクルを用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オーバーフロー流路(3)における高温ガスの温度の平均値の測定は、調整可能な複数の焼成サイクルを用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記a)および/またはb)のステップにおいてスライディング平均を求めることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
求めた差が調整可能な目標値に対して大きすぎる場合は燃焼用空気の供給量を増量し、求めた差が調整可能な目標値に対して小さすぎる場合は燃焼用空気の供給量を減量することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
オーバーフロー流路における高温ガスの温度が低すぎる場合は燃料の供給量を増大し、オーバーフロー流路(3)における高温ガスの温度が高すぎる場合は燃料の供給量を減量することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
並行流蓄熱式石灰焼成炉であって、
各々が予熱帯(V)、燃焼帯(B)、及び冷却帯(K)を有し、交互に燃焼用シャフトおよび排気シャフトとして動作する少なくとも2本のシャフト(1,2)と、
各シャフトと関連付けられた少なくとも1つの燃料供給装置(4,5)と、
各シャフトと関連付けられた少なくとも1つの燃焼用空気供給装置(6,7)と、
前記2本のシャフト(1,2)を連結するオーバーフロー流路(3)と、
前記オーバーフロー流路(3)における高温ガスの少なくとも1つのパラメータを設定するために前記オーバーフロー流路(13)の領域に配設されている測定装置(13)と、を含み、
前記燃料供給装置(4,5)、前記燃焼用空気供給装置(6,7)および前記測定装置に接続され、請求項1〜7の何れか1項以上に記載の方法に従って火炎の長さを調節するように構成されている制御装置(14)を含むことを特徴とする並行流蓄熱式石灰焼成炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並行流蓄熱式石灰焼成炉(PFR石灰焼成炉)とその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PFR石灰焼成炉は石灰石を焼成するために使用されるものであって、
図1によると、各々が予熱帯Vと、燃焼帯Bと冷却帯Kとを有する少なくとも2本のシャフト1,2を含む。2本のシャフトはオーバーフロー流路3を介して相互に連結されている。被焼成材料は上方から両シャフトに導入され、焼成済み材料として底部から取り出される。
【0003】
2本のシャフトは、燃焼用シャフトおよび排気シャフトとして交互に動作し、燃焼用空気は材料および燃料と共に直流として燃焼用シャフトに供給される。結果的に得られる高温の排気ガスは、下方から供給されて加熱された冷却用の空気と共にオーバーフロー流路を経由して排気シャフトへと送られる。排気シャフトでは、排気ガスは材料に逆流して上向きに流れ、材料の予熱を行う。所定の時間経過後、例えば15分後に2本のシャフトの機能の交換が行われ、燃焼用シャフトは排気シャフトとなり、排気シャフトは燃焼用シャフトとなる。この方法では、燃焼用ガスとの直接の流れの中で石灰石を効率的に焼成することができると共に、高温の排気ガスとは逆方向の流れにおいて石灰石の再生予熱を行うことができる。
【0004】
燃料の発熱量、原材料の炭酸塩含有量、焼成炉の熱損失などにおける変動等の様々な外乱変数が原因で、燃料の量を再調整する必要が生じる場合がある。もう一つの外乱変数として、焼成の対象となる石灰石に含まれることの多いケロゲン成分によるものがある。ケロゲンは、加熱中に炭化水素を放出する有機ポリマー材料である。ところが、ケロゲンは原材料中に均等に分布していないため、製品品質の一定に保つためには、石灰焼成炉の比熱供給を6%までに再調整する必要がある。
【0005】
製品品質を決定する要素としてまず挙げられるのが、焼成済み石灰に含まれる残留CO
2の量とその反応性である。どちらのパラメータもできるだけ一定して所定の目標値に合わせる必要がある。しかしながらこれまでは、石灰のもつこれら2つの性質は最終製品になってしか確認することができず、調整作業は12〜16時間遅れてしか行うことができなかった(材料の通過時間)。
【0006】
焼成炉のオペレータは、これまではオーバーフロー流路の領域における温度を測定し、熱供給を手作業で調整することで製品品質に影響を与えて来たが、この種の調整には高度の経験を要する上、いつも十分な結果が得られるとは限らない。
【0007】
並行流蓄熱式焼成炉は、例えば特許文献1から公知となっている。このような焼成炉の測定および調整技術については、非特許文献1にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第2927834号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H.Ruch,Mess− und Regelungstechnik beim Kalkbrennen(石灰焼成における測定および調整技術)、セメント/石灰/石膏,6/1973,257〜263頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、焼成済み石灰の製品に対して高い品質と信頼性を保証するPFR石灰焼成炉の運転方法、およびPFR石灰焼成炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、この目的は請求項1と請求項13に記載の特徴により達成される。
【0012】
本発明による並行流蓄熱式石灰焼成炉の運転方法は、各々が予熱帯(V)と、燃焼帯(B)と、冷却帯(K)とを有する少なくとも2本のシャフト(1,2)と、両シャフトを連結するオーバーフロー流路(3)とを備える並行流蓄熱式石灰焼成炉の運転方法であって、
前記2本のシャフトを燃焼用シャフトおよび排気シャフトとして交互に動作させるステップと、
燃焼用空気と燃料を燃焼用シャフトに供給して対応する長さの火炎を形成するステップと、
燃焼用シャフトにおいて生成される高温ガスがオーバーフロー流路(3)を介して排気シャフトに達するステップと、
火炎の長さの形成に特徴を示す高温ガスに関して少なくとも1つのパラメータを、オーバーフロー流路(3)の領域における直接的または間接的測定により設定し、所定の火炎の長さを調整するために燃料対燃焼用空気の比率を該パラメータに応じて調整するステップと、を含む。
【0013】
本発明によるPFR石灰焼成炉は実質的に、
それぞれ予熱帯(V)と、燃焼帯(B)と、冷却帯(K)とを有し、交互に燃焼用シャフトおよび排気シャフトとして動作する少なくとも2本のシャフト(1,2)と、
各シャフトと関連付けられた少なくとも1つの燃料供給装置(4,5)と、
各シャフトと関連付けられた少なくとも1つの燃焼用空気供給装置(6,7)と、
前記2本のシャフト(1,2)を連結するオーバーフロー流路(3)と、
前記オーバーフロー流路(3)における高温ガスの少なくとも1つのパラメータを設定するために前記オーバーフロー流路(3)の領域に配設されている測定装置(13)と、
前記燃料供給装置(4,5)、前記燃焼用空気供給装置(6,7)および前記測定装置に接続され、請求項1〜12の何れか1項またはそれ以上に記載の方法に従って火炎の長さを調節するように構成されている制御装置(14)と、を含む。
【0014】
本発明は、燃焼帯において形成される火炎の長さの変化をできるだけ小さくした時、即ちできるだけ一定に維持した時に焼成済み石灰の反応性も一定に維持できるという知見に基づくものである。
図1は通常の火炎の長さlを示しており、この場合の火炎は燃焼帯Bの下端部まで延びているがオーバーフロー流路内にまでは達していない。この運転方法では、燃焼用シャフトの燃焼帯の長さ全体に亘って熱エネルギーが分散されるのが理想である。この運転方法では、余分な空気が正確に調節される。
図2に示すように短すぎる火炎の長さl
1は燃焼帯Bの上部領域における燃焼温度の上昇につながり、製品品質の反応性が低くなる。この運転方法では、余剰空気が
図1の場合より多くなっている。余剰空気が少なすぎると、火炎がオーバーフロー流路にまで侵入する(
図3)。
【0015】
従って、火炎の長さは焼成済み石灰の反応性に直接的に影響する。オーバーフロー流路の領域における継続的な測定、およびこの測定値を用いて設定され、火炎の長さを特徴とする高温ガスのパラメータにより、これまでと比べて大幅に早く調整作業を行って最終製品の反応性をできるだけ一定に維持することができる。これまでは、事後の測定が常に必要であったが、その結果として焼成炉を誤った設定で12〜16時間に亘って運転する恐れがあった。
【0016】
従属請求項は本発明のその他の構成に関連している。
【0017】
火炎の長さを特徴とする高温ガスのパラメータは、例えば温度の測定値、N0x(窒素酸化物)の測定値,および/またはCO(一酸化炭素)の測定値を用いて求めることができる。
【0018】
オーバーフロー流路の領域における温度測定値によりパラメータを設定した場合、オーバーフロー流路における高温ガスの最低温度を考慮に入れたオーバーフロー流路における高温ガスの平均温度を使用することができる。
【0019】
燃焼用シャフトにおける火炎の長さを調整するための好ましい方法では、
a)オーバーフロー流路における高温ガスの温度の平均値を
測定するステップと、
b)オーバーフロー流路における高温ガスの最低温度の平均値を
測定するステップと、
c)2つの平均値の差(ΔT)を算出するステップと、
d)この差と調整可能な目標値とを比較し、比較結果に応じて供給する燃焼用空気の量を調整するステップと、が行われる。
【0020】
オーバーフロー流路における高温ガスの温度の平均値を設定する際、該設定に伴う燃焼時間の初めと終わりにおける調整可能な期間はバラツキが多く、誤った結果を生むことが多いため、これらの期間を考慮しない方が良い。
【0021】
また、オーバーフロー流路における高温ガスの最低温度の平均値、およびオーバーフロー流路における高温ガス温度の平均値の
測定は、調整可能な
複数の焼成サイクル
を用いて行うことができる。測定値のバラツキを抑えるために、前記a)および/またはb)のステップにおいてスライディング平均を
測定すると良い。
【0022】
前記d)のステップにより、求めた差が調整可能な目標値に対して大きすぎる場合は燃焼用空気の供給量を増量し、求めた差が調整可能な目標値に対して小さすぎる場合は燃焼用空気の供給量を減量する。
【0023】
本発明方法の別の変形例によると、オーバーフロー流路における高温ガスの温度が低すぎる場合は燃料の供給量を増量し、オーバーフロー流路における高温ガスの温度が高すぎる場合は燃料の供給量を減量する
【0024】
オーバーフロー流路における高温ガスの平均温度
の代わりに、焼成炉の処理量および/または被焼成材料の粒度に従って目標値を調整し、この目標値を用いて燃料の量の調整および/または燃焼用空気の量の調整を行う。
【0025】
本発明のその他の利点およびその構成について、添付図面を参照しながら以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】動作中に最適な長さの炎が形成されているPFR石灰焼成炉を示す略図である。
【
図2】炎の長さが短すぎるPFR石灰焼成炉を示す略図である。
【
図3】炎の長さが長すぎるPFR石灰焼成炉を示す略図である。
【
図4】オーバーフロー流路の領域内の温度経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜
図3に示すシャフト式石灰焼成炉の2本のシャフト1,2は、それぞれ燃料供給装置4,5と燃焼用空気供給装置6,7とを備えている。また、2つの燃焼用空気供給装置6,7に加えて、2つの排気ガス排出装置10,11が上部領域に設けられている。燃料供給装置4,5は、材料床の予熱帯Vと燃焼帯Bとの間の遷移領域において開口するランス等によって形成される。また、冷却帯Kには冷却用空気供給装置8,9により下方から冷却用の空気が供給される。
【0028】
運転中、詳細には不図示の供給手段により未焼成の石灰が上方から2本のシャフト1,2に供給される一方、完全に焼成されて冷却された材料が両シャフトの下端部から排出されるため、材料は連続的に下方向に移動している。通過時間は一般に12〜14時間である。処理が行われている間、2本のシャフト1,2は交互に燃焼用シャフトおよび排気シャフトとして常時動作する。
図1〜
図3に示した実施形態では、シャフト1がいずれの場合も燃焼用シャフトとして示されている。この目的で、燃焼用空気と燃料が燃焼用空気供給装置6または燃料供給装置4を介して供給され、燃焼帯Bにおいて1つまたはそれ以上の火炎Fが形成されている。
【0029】
供給された熱エネルギーを最適に使用するために、火炎の長さlを燃焼帯Bの長さに相当する長さとする。すなわち、火炎は燃焼帯Bに設けられた領域の厳密に下端部まで延びている。燃焼中に生成された高温の排気ガスと、下方から供給されて冷却帯Kにおいて加熱された冷却用の空気とは高温ガス12としてオーバーフロー流路3を介して排気シャフトとして動作するシャフト2へと送られる。このとき、シャフト2には燃焼用空気も燃料も供給されない。こうして高温の排気ガスはシャフト2内の材料を通過して逆流方向に流れ、排出装置11を介して排出される。
【0030】
調整可能な時間、例えば15分の経過後、シャフト1への燃焼用空気および燃料の供給が停止されて、排気ガス排出装置10が開かれる。同時に、燃料供給装置5を介してシャフト2に燃料が供給され、燃焼用空気供給装置7を介して燃焼用空気が供給されて、シャフト2内での燃焼が開始される。そこで生成される高温ガスはシャフト1を介して反対方向に排出される。
【0031】
オーバーフロー流路3の領域には、測定装置13がさらに設けられている。測定装置13は高温ガス12のNOx含有量またはCO含有量を測定するように構成することもできるが、高温ガス12の温度を直接的または間接的に測定する温度測定装置とするのが好ましい。例えば、高温ガス12の流れの中に設置された熱素子またはオーバーフロー流路3の煉瓦張り領域に配設された熱素子を使用することができるが、光学高温計を使用し、オーバーフロー流路の煉瓦張りの熱放射を測定することにより高温ガスの温度を間接的に測定するのが特に望ましい。
図3に示すように火炎がフラッシュオーバーした場合でも、測定装置で火炎の色により突発的特性ピークを判定することができ、それを好ましくない状況と明確にかつ直ちに関連付けることが可能となる。
【0032】
測定装置13は制御装置14に接続されており、制御装置14は燃料供給装置4,5および燃焼用空気供給装置6,7に接続されている。制御装置14は燃料と燃焼用空気との比率を測定装置によって得られた測定値に従って調整するために用いられる。
【0033】
焼成済み石灰の反応性は、燃焼帯Bにおいて形成される火炎Fの長さと直接関係することが一般に知られている。
図1に示すように火炎が燃焼帯Bの下縁部に達するまで延びているときに、焼成済み石灰の反応性は所定の目標範囲(目標値)となる。
図2と
図3は、
図1に示した石灰焼成炉の運転状況を火炎の長さを極端に短くした状態(
図2の火炎の長さl
1)と、火炎の長さを極端に長くした状態(
図3の火炎の長さl
2)で示したものである。
【0034】
火炎の長さの変化は、例えば燃料対燃焼用空気の比率が変化したときに生じる。このような変化は、石灰のケロゲン成分が変則的に放出されるだけでも生まれ、結果的に最終製品の反応性に好ましくない変動が生じる。
【0035】
燃料対燃焼用空気の比率の変化は火炎の長さに影響を及ぼし、その結果間接的に最終製品の反応性にも影響するため、本発明ではできるだけ早い段階で測定を行うことにより、形成される火炎の長さを特徴とする高温ガスのパラメータを設定することを提案する。この場合にNOxまたはCOの測定値も原理上は考慮されるが、いずれにせよ温度の測定は必要であるため、温度測定値による調整の方が、さらに別の測定装置を必要としないという点で決定的に有利である。
【0036】
図4は測定装置13によって測定される温度経路(上側の線)を示している。下側の線は、特定の時間において2本のシャフト1,2のどちらが焼成を行っているかを示している。10においてはシャフト1が焼成し、20においてはシャフト2が焼成している。図示の例では、急激な温度上昇がある度にその後にゆっくりとした低下が続いている。ただし、この温度経路は焼成炉ごとに異なるものであり、非常に変則的なものである。
【0037】
本発明の基礎を成す試験では、オーバーフロー流路における高温ガスの最低温度を考慮に入れてオーバーフロー流路における高温ガスの平均温度を用いることにより、形成される火炎の長さと直接的に関連するパラメータを設定することができるという知見を得た。
【0038】
このパラメータは、オーバーフロー流路における高温ガスの温度の平均とオーバーフロー流路における高温ガスの最低温度の平均との差によって形成される。この温度差ΔTを調整可能な目標値または目標範囲と比較し、供給する燃焼用空気の調整に用いる。調整可能な目標値/範囲に関して得られた差が大きすぎる場合は燃焼用空気の量を増量し、差が小さすぎる場合は減量する。
【0039】
オーバーフロー流路における高温ガスの温度の平均を求める際、複数の燃焼サイクルを考慮に入れると共に、各燃焼サイクルにおいて設定動作に伴う燃焼時間の初めと終わりにおける調整可能な時間は考慮に入れない方が良い。こうすることで、2本のシャフトの切り替え時期に温度によって結果が影響されて変わることはなくなる。
【0040】
別の調整方法によると、供給する燃料の量を、特に平均温度とは関係なくオーバーフロー流路における高温ガスの温度に従って調整する方法がある。
【0041】
オーバーフロー流路における高温ガスについて設定されたパラメータおよび/または平均温度に関する目標値は、焼成炉の処理量および/または被焼成材料の粒度にも適用することを意図すると良い。
【0042】
調整方法を適切に選択し、多くの焼成サイクルを行った後にその調整方法を行うことにより、石灰焼成炉は自動的に制御され、非常に一貫した反応性が得られると共に最終製品の残留CO
2含有量も一定したものとなる。反応性や残留CO
2含有量と言った性質の判定はその後に行われるが、検証のために使用されるにすぎない。