(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記把持部は、未シール部と、中央部が注出口側に湾曲し両端部が未シール部に位置する切断線によって形成される舌片とで構成される、請求項1〜5のいずれか一に記載のパウチ容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パウチ容器50において、内容物をスパウト54から注出するとき(例えば、内容物をボトル100に移し替えるとき)には、把持孔55に親指以外の4本の指が挿入されて容器が把持される。このとき、一般的には、人差し指が把持孔55の上端側、つまりスパウト54の先端側に位置するように指が挿入される(以下、この持ち方を順手と称し、逆向きの持ち方を逆手と称する)。そして、内容物の量が少ない場合には、
図10に示すように、スパウト54の先端を鉛直下方に向け、輪郭線57が水平方向に沿うように容器を保持することで内容物の全量を注出することができる。なお、スパウト54の先端を鉛直下方に向けて注出作業する場合としては、内容物の量が少ない場合だけでなく、内容物の粘度が高く流動速度が遅い場合などが想定される。
【0008】
しかしながら、パウチ容器50において、スパウト54の先端を鉛直下方に向けると、把持孔55の長手方向が鉛直方向に沿うようになって、4本の指が鉛直方向に沿って並び、例えば、手首を大きく曲げるような無理な体勢となる。ゆえに、手首が痛くなる等、容器を保持する手に負担がかかる。特に内容物量がおよそ1L以上の大型の詰め替え用パウチ容器では、その負担はより大きくなる。一方で、手の負担を軽減するために順手から逆手に持ち替えることも考えられるが、持ち替える操作は面倒であり、また、持ち替える際に内容物が零れる場合がある。
なお、特許文献2に開示された容器においても、内容物の注出性に関して、パウチ容器50と同様の課題が想定される。
【0009】
即ち、本発明の目的は、把持部を備えたパウチ容器において、内容物の注出性に優れたパウチ容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るパウチ容器は、シート材の端縁を接合してなるパウチ本体の一方側の端縁シール部に把持部が形成されており、該パウチ本体の他方側の上方角部に注出口を有するパウチ容器において、前記把持部は、その長手方向に沿った仮想線と、前記注出口を通り容器の上下方向に沿った仮想線とが、前記注出口より下方で交差するように形成されていることを特徴とする。
当該構成によれば、注出口の先端を鉛直下方に向けて内容物の注出作業を行うときに、把持部の長手方向、つまり把持部に挿入された指が並ぶ方向が水平方向に近づくので、容器を把持する手に負担がかかり難く内容物の注出性が向上する。
【0011】
また、本発明に係るパウチ容器において、前記把持部は、その長手方向に沿った仮想線と前記注出口の中心線とが略直交するように設けられていることが好ましい。
当該構成によれば、注出口の先端を鉛直下方に向けて内容物の注出作業を行うときに、把持部の長手方向が水平方向に沿って略平行となり、把持部に挿入された指が水平方向に沿うように並ぶから、容器を把持する手に負担がかからず内容物の注出性がさらに向上する。
【0012】
また、本発明に係るパウチ容器において、前記注出口は、パウチ本体の他方側の上方角部に形成される斜辺の端縁シール部に注出口部材が設けられてなることが好ましい。
【0013】
また、パウチ本体の他方側の上方角部に斜辺が形成された構成において、前記把持部は、その長手方向に沿った仮想線と前記斜辺とが略平行となるように設けられていることが好ましい。
当該構成によれば、注出口の先端を鉛直下方に向けたときに、注出口に内容物が流れ込み易く、内容物の全量をより注出し易くなる。
なお、斜辺の形状と共に、斜辺を含むシート材の端縁に形成される端縁シール部の形状、特に充填部の輪郭線となる当該端縁シール部の内縁の形状は、内容物の注出性に影響し易い。斜辺の端縁シール部により形成される充填部の輪郭線は、例えば、斜辺に平行な直線形状であるが、注出口の先端を鉛直下方に向けた状態で注出口の両側に位置する部分が注出口側に向かって内容物が流動するように傾斜した形状とすることもできる。つまり、注出口の先端を鉛直下方に向けた状態で、当該輪郭線のうち注出口の両側部分が、注出口に接近するほど鉛直下方に位置するように傾斜した形状とすることができる。
【0014】
また、本発明に係るパウチ容器において、前記把持部は、前記注出口の中心線上に設けられていることが好ましい。
当該構成によれば、注出口の先端を鉛直下方に向けて内容物の注出作業を行うときに、把持部の左右に存在する内容物の充填スペースが、例えば、把持部が注出口の中心線よりも上方に位置する形態と比べて均等になり易く、把持部に挿入された指に容器重量が均等に加わり易くなる。ゆえに、容器をより安定して保持することができ、内容物の注出性がさらに向上する。
【0015】
また、本発明に係るパウチ容器において、前記把持部は、未シール部と、中央部が注出口側に湾曲し両端部が未シール部に位置する切断線によって形成される舌片とで構成されることが好ましい。
当該構成によれば、特許文献1等に記載の把持部のように孔を設ける場合に発生するゴミを削減することができ、且つ手指が接する部分が未シール部によって形成されているため、軟らかい触感を付与することができ、手にかかる負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るパウチ容器によれば、把持部を使用してスムーズに注出口から内容物を注出することができる。即ち、本発明に係るパウチ容器は、内容物の注出性に優れた容器であって、特に内容物の充填量が多い大容量の詰め替え用パウチに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
なお、本発明の実施形態であるパウチ容器10は、注出口として、スパウト19とキャップ20とで構成される口栓15(注出口部材)を備えるものとして説明するが、本発明の適用は、口栓を備えた形態に限定されない。即ち、後述の
図8及び
図9に記載のように、パウチ本体11の一部が注出口として機能するものを含む。また、パウチ容器10は、シート材12として、表面シート12a、裏面シート12b、及び底ガゼットシート12cから構成される口栓15付きのスタンディングパウチの形態として説明するが、本発明の適用は、当該形態に限定されず、所謂平パウチやサイドガゼットパウチ等、その他の公知形態にも適用することができる。
【0020】
また、本明細書において、パウチ容器10を自立させた形態(以下、自立形態とする)で正面視鉛直方向に沿った方向が容器の上下方向であり、注出口が形成される側を「上(上側、上方)」、鉛直下方(底部側)に位置する側が容器の「下(下側、下方)」である。
図1に1点鎖線で示す仮想線Zは、注出口を通り容器の上下方向に沿った仮想線を意味する(
図1では、紙面の左右方向が容器の左右方向、紙面に対して垂直な方向が容器の表裏方向として説明する)。
また、本明細書において、「一方側」とは、パウチ容器10の正面視幅方向における左右のいずれかの側をいい、「他方側」とは、正面視幅方向における左右のいずれかで「一方側」と逆の側をいう。以下の説明では、説明の便宜上、把持部が形成される側を「一方側」、注出口が設けられる側を「他方側」という。
【0021】
まず初めに、
図1を用いて、パウチ容器10の構成を説明する。
図1は、シート材12の端縁を接合してなるパウチ本体11の一方側の端縁シール部13に把持部16が形成されており、該パウチ本体11の他方側の上方角部に形成される斜辺17の端縁シール部13に口栓15(注出口部材)が設けられてなる容器であって、把持部16の長手方向に沿った仮想線X(以下、長手方向線Xとする)と、口栓15を通り容器の上下方向に沿った仮想線Z(以下、上下方向線Zとする)とが、口栓15の下方で交差する(
図1中の交点G)ように形成されているパウチ容器10を示す正面図である。なお、
図1では、内容物が充填される前の底ガゼットシート12cが折り畳まれた形態(以下、折り畳み形態とする)を示している。
【0022】
図1に示すように、パウチ容器10(折り畳み形態)は、容器上方に向かって山折りに折り返され、切欠き18が形成された底ガゼットシート12cが、互いに重ね合わされた表面シート12a及び裏面シート12bの下部に挿入された状態で、各シートの端縁同士を接合する端縁シール部13が形成され、内容物が充填される容器内部空間である充填部14が形成された構造を有する。パウチ容器10に内容物が充填されると、表裏面部を構成する表面シート12a及び裏面シート12bが離間すると共に、底ガゼットシート12cが展開されて自立性が発現する。
【0023】
また、パウチ容器10は、端縁シール部13に取り付けられた注出口部材である口栓15と、端縁シール部13に形成された把持部16とを備える。
図1に例示する形態では、パウチ本体11の左側の上方角部に形成される斜辺17の端縁シール部13(以下、斜辺端縁シール部13
*とする)に口栓15が取り付けられている。なお、斜辺17は、パウチ本体11の左側の上方角部(以下、左側上方角部とする)が容器の上下方向に対して斜めにカットされることで形成されている。そして、口栓15は、その先端が斜め上方を向いた状態で斜辺端縁シール部13
*に取り付けられている。
また、把持部16は、パウチ本体11の右側の上方角部(以下、右側上方角部とする)に位置する端縁シール部13に形成されている。把持部16は、未シール部21と、中央部が口栓15側に湾曲し両端部が未シール部に位置する略円弧形状の切断線24によって形成される舌片22とで構成され、舌片22が容器の表側又は裏側に折り曲げられることで指先が挿入可能な把持孔23が現れる構造である。
【0024】
以下、パウチ容器10の上記各構成要素について更に詳説する。
【0025】
シート材12は、上記のように、パウチ本体11を構成するシート状部材であって、通常、樹脂フィルムから構成される。シート材12としては、上下方向にやや長く斜辺17が形成された同一形状の表面シート12a及び裏面シート12bと、その間に挿入された底ガゼットシート12cとを有し、端縁シール部13によって互いに接合されている。
【0026】
シート材12を構成する樹脂フィルムは、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、後述するように、端縁シール部13は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シート材12には、ヒートシール性も要求される。従って、シート材12は、通常、ベースフィルム層と、シーラント層と、を備えた積層フィルムから構成される。また、高いガスバリア性が要求される場合には、ガスバリア層を設けることもできる。
【0027】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムなどが例示できる。
【0028】
また、シート材12には、内容物の商品名や原材料・使用上の注意事項等の商品説明、その他各種デザインなどを表示するための印刷層(図示せず)を設けることができる。例えば、印刷層は、グラビア印刷等の公知の方法により、ベースフィルム層の内側の面に形成することができる。
【0029】
端縁シール部13は、各シート材12の端縁同士を接合して形成され充填部14を密閉する接合部であって、通常、ヒートシールにより形成される。ヒートシールによる端縁シール部13は、各シート材12のシーラント層が容器の内側となるように重ね合わせた状態で、各シーラント層を溶融し圧着することにより形成される。パウチ容器10では、表面シート12a及び裏面シート12bの間に底ガゼットシート12cが挿入された状態でヒートシールされるため、表面シート12a及び裏面シート12bと、底ガゼットシート12cとが接合された端縁シール部13(以下、端縁シール部13aとする)が形成される。また、底ガゼットシート12cの一部には、底ガゼットシート12cを間に挟んだ状態で表面シート12aと裏面シート12bとをヒートシールするための切欠き18が形成されている。なお、内容物を充填部14に充填するため、パウチ本体11の端縁の一部、例えば、パウチ本体11の上端を残して端縁シール部13が一旦形成される。そして、当該上端から内容物を充填した後、パウチ本体11の上端縁をヒートシールして(端縁シール部13bを形成)、充填部14が密閉される。
【0030】
また、端縁シール部13は、把持部16の形成場所を提供する。
図1に例示する形態では、パウチ本体11の右側上方角部に、把持部16が形成可能な幅広の端縁シール部13(以下、端縁シール部13cとする)が形成されている。なお、当該幅広の端縁シール部13cは、容器の上下方向にやや長くなった平面視略矩形状を有しているが、その形状やサイズは適宜変更することができる。
【0031】
また、端縁シール部13の形成態様によって、充填部14の形状を変更することができる。
図1に例示する形態では、充填部14の下部中央が下部両側よりも下方に膨らんだ円弧形状を有し、充填部14の上部左側は斜辺17に対応して傾斜し、上部右側は端縁シール部13cに対応してL字状に凹んだ形状を有する。つまり、端縁シール部13の内縁を形成する内周線の形状によって、充填部14の平面形状(平面視したときの外形形状)が決まり、当該内周線は、パウチ本体11を平面視したときの充填部14の輪郭線B(外形線)となる。輪郭線Bの形状は、内容物を注出するときの注出速度等に影響し、特に口栓15が取り付けられた斜辺端縁シール部13
*により形成される輪郭線B(以下、輪郭線B
*とする)の形状は注出性に影響し易い。
【0032】
口栓15は、充填部14と外部とを連通させる貫通孔を含み、充填部14から内容物を取り出すための注出口部材であって、その先端が容器の斜め上方を向くように斜辺端縁シール部13
*に取り付けられている。口栓15は、軸方向に沿って直線状に延びた貫通孔を含む筒状体であるスパウト19と、スパウト19にねじ込まれて貫通孔の先端を塞ぐキャップ20とで構成される。スパウト19は、筒状体の貫通孔が充填部14とパウチ本体11の外部とを連通するように、筒状体の外周面に表面シート12a及び裏面シート12bがヒートシールされることで斜辺端縁シール部13
*に取り付けられている。なお、スパウト19は、表面シート12a及び裏面シート12bとヒートシール可能な樹脂材料から構成され、両シートの間に根元部(例えば、外周面の一部が径方向に延出した流線型の根元部)が挿入された状態でヒートシールされる。
【0033】
口栓15のスパウト19は、その貫通孔の中心線Yが斜辺17に対して直交するように取り付けられている。
図1に例示する形態では、斜辺17と斜辺端縁シール部13
*の外縁を形成する外周線とが一致しており、斜辺17と斜辺端縁シール部13
*の内縁を形成する内周線とが互いに平行である。そして、当該内周線は充填部14の輪郭線B
*であるから、スパウト19は、中心線Yが輪郭線B
*と直交するように取り付けられているとも言える。
ここで、中心線Yとは、スパウト19の貫通孔の中心、つまり注出口の径方向の中心を通り、注出口(スパウト19)の軸方向に沿った仮想線を意味する(注出口の軸方向が定まらない形態(後述の
図8,9参照)では、注出口の径方向の中心を通り、注出口先端の仮想端面に垂直な仮想線を意味する)。
【0034】
把持部16は、上記のように、未シール部21と、未シール部21に両端部が位置する切断線24によって形成される舌片22とで構成されている。
また、把持部16は、口栓15と同様に、パウチ本体11の上方角部に設けられているが、口栓15と把持部16とは互いに左右に離れて異なった角部(口栓15が左側上方角部、把持部16が右側上方角部)に設けられている。つまり、口栓15と把持部16とが容器の水平方向に並ぶように配置されており、把持部16が口栓15の注出口の中心線Yよりも容器上方側に位置している。
また、把持部16は一方向に長く延びた形状を有し、その長手方向線Xが上下方向線Zに対して傾いている。より詳しくは、把持部16は、長手方向線Xと上下方向線Zとが、注出口より下方で交差するように形成されており、長手方向線Xと注出口の中心線Yとが略直交し、且つ長手方向線Xと斜辺17とが略平行となるように設けられている。
【0035】
ここで、把持部16の構成要素である、未シール部21、舌片22及び切断線24について更に詳説する。
【0036】
未シール部21は、表面シート12a及び裏面シート12bが接合されていない部分であって、端縁シール部13と比べて剛性が低く、容器重量等の力が作用すると撓んで指と容器との接触面積を大きくする機能を有する。未シール部21は、パウチ本体11の右側上方角部を含む所定領域(把持部16が形成可能な範囲の領域)において、当該領域の一部分を残して表面シート12aと裏面シート12bとをヒートシールすることで設けられる。つまり、ヒートシールされない一部分が未シール部21となり、未シール部21の周囲は、端縁シール部13cで囲まれている。
【0037】
なお、未シール部21は、平面視略矩形状を呈している。そして、未シール部21は、その長手方向に沿った仮想線が、上下方向線Zに対して傾いている。未シール部21の長手方向と、把持部16の長手方向とは、同一方向であって、未シール部21の長手方向に沿った仮想線として、把持部16の長手方向線Xを用いることができる。したがって、未シール部21の長手方向と注出口の中心線Yに沿った方向とは略直交関係になり、且つ未シール部21の長手方向と斜辺17に沿った方向とが略平行関係になる。
【0038】
切断線24は、端縁シール部13c及び未シール部21のシート材12を破断する略円弧形状の切込み線であって、切断線24によって舌片22が形成される。つまり、切断線24は、舌片22の輪郭線(外形線)となる。なお、切断線24の両端部には、容器重量が作用しても切断線24が拡張しないように、左斜め上方に切り返されたU字状部が設けられ、付け根線は、例えば、各U字状部の切り返し点同士を結ぶように形成される。
【0039】
なお、切断線24は、その一方端部が未シール部21の上端近傍に、他方端部が未シール部21の下端近傍にそれぞれ位置し、中央部が口栓15(注出口)の先端が向いた方向(つまり、左斜め上方)に湾曲した略円弧形状に形成されている。最も膨らんだ部分は、把持孔23への指(特に中指)の挿入をスムーズにするため、切断線24の中間位置よりもやや上方に位置している。
【0040】
舌片22は、指先で押されて容器の表側又は裏側に折り曲げられる部分であって、未シール部21と同様に、指と容器との接触面積を大きくする機能を有する。上記のように、舌片22は、切断線24によって形成され、指先で押されたときに、切断線24の両端部を結ぶ仮想線(以下、付け根線とする)で容易に折り曲げられる。そして、折り曲げられた結果、指先が挿入されて容器を把持するために使用される把持孔23が現れる。把持孔23は、例えば、親指以外の4本の指が挿入可能なサイズを有する。
【0041】
なお、舌片22は、略円弧形状の切断線24と、直線状の付け根線とを輪郭線とし、付け根線に沿った方向に長い略半円形状を有する。そして、舌片22は、その長手方向に沿った仮想線が、未シール部21と同様に、上下方向線Zに対して傾いている。舌片22の長手方向と、把持部16の長手方向とは、同一方向であって、舌片22の長手方向に沿った仮想線として、把持部16の長手方向線Xを用いることができる。したがって、舌片22の長手方向と中心線Yに沿った方向とは略直交関係になり、且つ舌片22の長手方向と斜辺17に沿った方向とが略平行関係になる。
【0042】
ここで、略直交とは、長手方向線Xと中心線Yとが直交及び実質的に直交するとみなせる角度関係であることを意味し、長手方向線Xと中心線Yとがなす角度(例えば、容器上端方向に対してなす角度)が、好ましくは90°±10°、より好ましくは90°±5°である。 同様に、略平行とは、長手方向線Xと斜辺17(又は、輪郭線B
*)とが平行及び実質的に平行するとみなせる関係であることを意味し、長手方向線Xが斜辺17に対して、好ましくは±10°、より好ましくは±5°の範囲で傾いているものを含む。
【0043】
なお、上記では、把持部16が舌片22によって設けられる形態について説明したが、それに限定されず、
図2(a)に示すように、把持部16は、端縁シール部13cの一部を一つの孔状に切除して(換言すれば、切断線24の両端を接合して)把持孔23として設けてもよい。また、
図2(b)に示すように、把持部16は、端縁シール部13cの一部を複数の孔状に切除して複数の把持孔23を設けてもよい。ここで、把持孔23として複数の孔を設ける場合は、これら複数の孔が長手方向線X上に並ぶようにして設けられるが、
図2(c)に示すように、少なくとも上端の孔と下端の孔を結ぶ線が長手方向線X上にあればよい。
【0044】
また、上述のように、把持部16では、長手方向線Xと付け根線とは互いに平行であるから、付け根線に沿った仮想線と注出口の中心線Yとが略直交し、且つ付け根線に沿った仮想線と斜辺17とが略平行であると言うこともできる。更に換言すると、注出口の先端を鉛直下方に向けたときに把持孔23の鉛直上方に位置して挿入される指先に接触する輪郭線に沿った方向が、中心線Yに沿った方向と略直交関係になり、且つ斜辺17に沿った方向と略平行関係になると言える。
また、把持部16は、上記のように、斜辺17と充填部14の輪郭線B
*とが互いに平行であるから、長手方向線Xと輪郭線B
*とが略平行となるように形成されていると言うこともできる。
【0045】
次に、上記構成を備えるパウチ容器10の製造方法の一例について説明する。
【0046】
まず初めに、シート材12の長尺体を、ベースフィルム層及びシーラント層を構成する各樹脂フィルムのラミネートにより作製する。次に、容器表面部及び容器裏面部を形成する表面シート12a及び裏面シート12bの長尺体を重ね合わせ、その下部に容器上方に向かって山折りに折り返された底ガゼットシート12cの長尺体を挿入した状態で、長尺体の長手方向に沿った一端側(ここでは、下端側)と、長手方向に直交する所定部とをヒートシールする。当該所定部は、パウチ本体11の左右側端縁となる部分である。なお、当該ヒートシール工程において、パウチ本体11の右側上方角部に、未シール部21を残して把持部16が形成可能な幅広の端縁シール部13cが形成される。
【0047】
次に、斜辺17を形成して口栓15を取り付け、更に把持部16(舌片22又は把持孔23)を形成する。斜辺17は、ヒートシールされた上記所定部の中央を切断して長尺体を個々のパウチ容器10に分割すると同時に、或いは分割した後で、パウチ本体11の左側上方角部を斜めに切断することで形成される。そして、斜辺17の表面シート12aと裏面シート12bとの間にスパウト19の根元(シール基部)を挿入した状態で、斜辺17を含む端縁領域をヒートシールすることでスパウト19を取り付ける。また、把持部16は、ヒートシールされた上記所定部の中央を切断して長尺体を個々のパウチ容器10に分割すると同時に、或いは分割した後で、パウチ本体11の幅広の端縁シール部13cに、表面シート12a及び裏面シート12bを貫通する切断線24を設けることで形成される。
【0048】
最後に、開放されているパウチ本体11の上端から容器内部空間である充填部14に内容物を充填する。その後、パウチ本体11の上端縁をヒートシールして端縁シール部13bを形成し、充填部14を密閉することで、内容物が充填されたパウチ容器10が得られる。
【0049】
次に、
図3を参照して、上記構成を備えるパウチ容器10の作用効果について、パウチ容器10のスパウト19から内容物をボトル100に移す操作を例示しながら詳説する。
【0050】
図3に示すように、内容物をボトル100に移す注出作業を行うときには、通常、把持孔23に親指以外の4本の指が挿入されて順手で容器が保持される。上記のように、把持孔23は、舌片22により塞がれているが、例えば、舌片22を裏側から押すことで表側に折り曲げることができる。舌片22は、未シール部21において切断線24の両端部を結ぶ付け根線で折り曲げられ、切断線24及び付け根線に囲まれた把持孔23が現れる。
【0051】
例えば、内容物の量が少ない場合や内容物の粘度が高く流動速度が遅い場合には、
図3に示すように、スパウト19を鉛直下方に向けて内容物が注出される。つまり、パウチ容器10は、スパウト19の中心線Yが鉛直方向に沿って略平行になると共に、斜辺17及び充填部14の輪郭線B
*が水平方向に沿って略平行な状態に保持される。当該保持状態において、中心線Yに対して略直交し且つ斜辺17及び輪郭線B
*に対して略平行である把持部16の長手方向線X(付け根線)は、水平方向に沿って略平行になる。また、当該保持状態において、付け根線は、把持孔23の鉛直上端に位置し、把持孔23に挿入された4本の指に当接する。
したがって、パウチ容器10では、スパウト19を鉛直下方に向けた当該保持状態において、把持孔23に挿入された4本の指が水平方向に沿って略平行に並び、例えば、手首が大きく曲がるような無理な体勢とはならず、手首が自然に伸びた体勢で容器を保持することができる。
【0052】
以上のように、パウチ容器10によれば、長手方向線Xと注出口の中心線Yとが略直交し、且つ長手方向線Xと斜辺17及び輪郭線B
*とが略平行となるように把持部16が形成されているので、スパウト19を鉛直下方に向けた保持状態においても、容器を把持する手に負担がかからず、内容物を注出し易い。つまり、パウチ容器10は、内容物の注出性に優れた容器である。
また、把持孔23に挿入される4本の指には容器重量が作用するが、未シール部21及び舌片22の効果によって指と容器との接触面積が大きくなり、指への負担を軽減することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で設計変更することができる。
以下、
図4〜9を用いて、上記実施形態の変形例(パウチ容器10A〜10F)を例示する。なお、以下では、上記実施形態との相違点を説明し、重複する説明は省略する。
【0054】
図4は、第1の変形例であるパウチ容器10Aの正面図である。
図4に示すように、パウチ容器10Aにおいて、把持部16は、その長手方向線Xが、注出口の中心線Yと略直交し且つ斜辺17及び輪郭線B
*と略平行となるように設けられているが、
図1に示す形態と比較すれば、長手方向線Xと上下方向線Zとが容器上端方向に対してなす角度がやや小さくなっている(パウチ容器10B〜Dについても同様)。
また、端縁シール部13c及び当該シール部に形成される把持部16は、パウチ本体11の上下方向の中央部に設けられている。より詳しくは、口栓15(注出口)の根元が向いた方向であって、注出口の中心線Y上に端縁シール部13c及び把持部16が設けられており、中心線Yは把持部16の長手方向の略中間位置を通る(パウチ容器10B〜Dについても同様)。なお、
図4に例示する形態では、充填部14の輪郭線Bが端縁シール部13cに対応して凹んだ形状を有し、端縁シール部13cの上方及び下方に内容物の充填スペースが形成されている。
【0055】
パウチ容器10Aによれば、把持部16が注出口の中心線Y上に設けられているので、スパウト19を鉛直下方に向けた容器の保持状態において、把持孔23に挿入され略水平方向に沿って並ぶ4本の指に容器重量が均等に加わり易くなる。つまり、パウチ容器10Aでは、スパウト19を鉛直下方に向けた保持状態において、把持孔23の左右に存在する充填部14の容量(つまり内容物の量)が、
図1に例示する形態よりも均等であるため、4本の指に容器重量が分散され易く、容器をより安定に保持することができ内容物の注出性がさらに向上する。
【0056】
図5は、第2の変形例であるパウチ容器10Bの正面図である。
図5に示すように、パウチ容器10Bは、パウチ容器10Aと同様に、把持部16が中心線Y上に設けられており、把持部16が形成される幅広の端縁シール部13cが、容器上端から底ガゼットシート12cとの端縁シール部13aまで、上下方向線Zに沿って平行に設けられている。
パウチ容器10Bによれば、把持部16の周囲の剛性がパウチ容器10Aよりも高くなって容器を保持したときの安定性が向上するので、内容物がより注出し易くなる。
【0057】
図6は、第3の変形例であるパウチ容器10Cの正面図である。
図6に示すように、パウチ容器10Cは、パウチ容器10Bと比較すると、端縁シール部13cのサイズが小さく充填部14が拡大されており、把持部16の上方に内容物の充填スペースが形成されている。なお、端縁シール部13c及び端縁シール部13aは、連続している。ゆえに、パウチ容器10Cによれば、把持部16の周囲の剛性を高めながら充填部14をできるだけ拡大して内容物の充填量を増やすことができる。
また、パウチ容器10Cの端縁シール部13cには、切欠き部25が設けられている。切欠き部25は、把持部16の容器外側に位置する端縁シール部13cの一部を切断除去して形成された部分であって、把持部16の傾斜角度に合わせて略L字状に形成されている。切欠き部25を形成することによって、パウチ本体11の外形線から把持部16までの距離が短くなるので容器を把持し易くなる。
【0058】
図7は、第4の変形例であるパウチ容器10Dの正面図である。
図7に示すように、パウチ容器10Dは、パウチ容器10Cと比較すると、斜辺端縁シール部13
*により形成される充填部14の輪郭線B
*が直線状ではなく、注出口の両側に位置する輪郭線B
*(以下、輪郭線B1,輪郭線B2とする)が注出口側に向かって内容物が流れ込むように傾斜している。より詳しくは、輪郭線B1,輪郭線B2に沿った仮想線と中心線Yとがなす角度(例えば、把持部16の方向に対してなす角度)は、90°よりも小さくなっており、スパウト19の先端を鉛直下方に向けた状態で輪郭線B1及び輪郭線B2は、口栓15に近いほど鉛直下方に位置するように傾斜している。つまり、パウチ容器10Dでは、スパウト19の先端を鉛直下方に向けたときに、口栓15の方向に内容物が流れ易い形状を有しているため、内容物の全量をより注出し易くなる。
【0059】
図8は、第5の変形例であるパウチ容器10Eの注出口周辺を示す拡大図である。
図8に示すように、パウチ容器10Eは、パウチ本体11の上方角部に斜辺17を有さず、上方角部が鋏等でカットされることを想定した形態である。パウチ容器10Eの上方角部には、例えば、カット位置を示すカット位置表示26が施され、当該カット位置表示26に沿ってシート材12をカットすることで上方角部に注出口27が形成される。
なお、当該形態においても、図示しない把持部16の長手方向線Xが、注出口27の中心線Yと略直交することが好ましい。
【0060】
図9は、第6の変形例であるパウチ容器10Fの注出口周辺を示す拡大図である。
図9に示すように、パウチ容器10Fは、シート材12及び端縁シール部13によって注出口部28がパウチ本体11の上方角部に形成された形態である。注出口部28は、端縁シール部13によって形成された注出路29と、端縁シール部13によって注出路29の先端を塞ぐ栓部30とで構成され、栓部30が切込み31から切断予定線32に沿って切断除去されることで注出口33が形成される。
なお、当該形態においても、図示しない把持部16の長手方向線Xが、注出口33の中心線Yと略直交することが好ましい。
【0061】
なお、上記では、いずれの形態においても、把持部16の長手方向線Xと注出口の中心線Yとが略直交するものとして説明したが、例えば、長手方向線Xと中心線Yとのなす角度を90°±10°より大きくしてもよい。但し、内容物の注出性の観点から、把持部16は、その長手方向線Xと上下方向線Zとが注出口より下方で交差するように形成される必要がある。具体的には、長手方向線Xと上下方向線Zとがなす角度θは、斜辺端縁シール部13
*に口栓15が取り付けられている場合、好ましくは10〜50°であり、より好ましくは20〜40°である。