(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778179
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】赤外線外部光電子放出検出器
(51)【国際特許分類】
H01J 1/34 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
H01J1/34 C
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-551330(P2012-551330)
(86)(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公表番号】特表2013-518448(P2013-518448A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】US2011022948
(87)【国際公開番号】WO2011094558
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2014年1月24日
(31)【優先権主張番号】12/695,188
(32)【優先日】2010年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511105953
【氏名又は名称】ハワード ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ベイツ, クレイトン ダブリュー. ジュニア
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−119567(JP,A)
【文献】
特開2000−357449(JP,A)
【文献】
特公昭47−033537(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/34−1/35, 9/12
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線外部光電子放出検出器であって、
該検出器は、n−タイプ半導体層とp−層とを含むn−pヘテロ接合を備え、
該n−層半導体は、ショットキーバリヤを形成するナノ粒子と共に埋め込まれたドープされたシリコンを含み、
該p−層は、p−タイプダイアモンドフィルムである、
赤外線外部光電子放出検出器。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、5〜10nmの平均粒径を有する、20〜30原子百分率の金属粒子である、請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記金属粒子は銀である、請求項2に記載の検出器。
【請求項4】
前記p−層は、負電子親和力を有する表面層を有する、請求項1に記載の検出器。
【請求項5】
前記n−層は、3μm〜10μmの厚さの範囲にある、請求項1に記載の検出器。
【請求項6】
前記n−層は、3μmの厚さである、請求項5に記載の検出器。
【請求項7】
前記ドープされたシリコンは、燐およびアンチモンから成るリストから選択される元素によってドープされている、請求項1に記載の検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2010年1月28日に出願された米国特許出願第12/695,188号の継続であり、該特許出願の利益を主張し、該特許出願の内容は、本明細書に参照により援用されている。
【0002】
(分野)
このデバイスおよび方法は概して、光電子放出検出器に関し、詳細には、n−タイプシリコン複合体における銀ナノ粒子を使用する赤外線外部光電子放出検出器に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
外部光エミッター(または光電陰極)は、光放射を検出する手段として当該技術分野において公知である。これらのタイプの検出器は、例えば、電磁スペクトルの可視部分における光増幅に対するイメージ増強管において使用されることができる。実用的な用途には、例えば双眼鏡、スコープおよびゴグル、赤外線ビューワ、高速度撮影に対するストリーク撮像管、などのような暗視装置における使用が含まれることができる。
【0004】
一部の用途は、多チャネルプレート(MCP)に対して光電陰極を使用して、光電陰極の表面からの電磁放射の低いレベルを検出することができる。MPCは、光電陰極から出て来るのではない電子を加速し、ゲインを提供することができる。
【0005】
最近の進展には、高性能III−V負電子親和力光電陰極が含まれている。これらのデバイスは、周囲に対して特に敏感であることができ、最大の感度を達成するために極めて高い真空内で開発されなくてはならない。これらのデバイスはまた、形成される表面におけるヘテロ接合バリヤの形成により、約2μm以下の波長の検出に限定される。デバイスのこのタイプの例は、p−InGaAsを使用する電界支援光電放射に対して有効であった。
【0006】
当該技術には有意な前進がある一方で、更なる進歩が可能であるし、かつ望まれる。2μmを超える波長が可能である外部光電子放出検出および処理を有することが望ましい。例えば、1〜20ミクロンの放射を検出することが望ましい。
【0007】
さらに、大気ウィンドウとは、大気を容易に通過して地球の表面に達することが可能な電磁放射の波長の範囲である。これは、例えば吸収帯として知られる水蒸気、二酸化炭素およびオゾンのような大気ガスによって吸収されるEM波長と対照的である。例えば1〜2μm、3〜5μmおよび8〜14μmにおける大気ウィンドウのような複数の大気ウィンドウ内で効率的に放射を検出することが望ましい。このタイプの検出が、材料の単一のフィルムによって達成されることができれば、これは特に価値がある。
【0008】
更なる改良は、製造の簡略化であり、例えば、適度な真空状態の下でこれらのタイプの検出器を製造する能力およびその動作を本質的に弱めることなく長期間大気の状態に露出することができることである。そのようなデバイスは、有毒材料に対する低減された必要性という付加的な利益と共に容易に製造され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本明細書には、銀n−タイプシリコン複合体を使用する外部光電子放出赤外線検出器のデバイスおよび方法が提供される。このデバイスは、2μmより長い波長を検出することができる。このデバイスは、材料の単一のフィルムを使用して、放射大気ウィンドウ、例えば1〜2μm、3〜5μmおよび8〜14μmを効率的に検出することができる。このデバイスは、非常に適度な真空状態の下で調整されることができ、その動作を弱めることなく長期間大気の状態に露出することができる。このデバイスは容易に製造され、有毒材料を含まない。
【0010】
一実施形態において、赤外線外部光電子放出検出器は、n−タイプ半導体層とp−層とを含むn−pヘテロ接合を有することができ、該n−層半導体は、ショットキーバリヤを形成するナノ粒子と共に埋め込まれたドープされたシリコンを含み、該p−層は、p−タイプダイアモンドフィルムである。ナノ粒子は、約5〜10nmの平均粒径を有する、約20〜30原子百分率の金属粒子(例えば銀)であることができる。p−層は、負電子親和力を有する表面層を有することができる。n−層は、約3μm〜10μmの厚さの範囲にあることができ、好ましくは、約3μmの厚さである。ドープされたシリコンは、燐およびアンチモンから成るリストから選択される元素によってドープされることができる。
本明細書は、たとえば、以下の項目を提供する。
(項目1)
赤外線外部光電子放出検出器であって、
該検出器は、n−タイプ半導体層とp−層とを含むn−pヘテロ接合を備え、
該n−層半導体は、ショットキーバリヤを形成するナノ粒子と共に埋め込まれたドープされたシリコンを含み、
該p−層は、p−タイプダイアモンドフィルムである、
赤外線外部光電子放出検出器。
(項目2)
前記ナノ粒子は、約5〜10nmの平均粒径を有する、約20〜30原子百分率の金属粒子である、項目1に記載の検出器。
(項目3)
前記金属粒子は銀である、項目2に記載の検出器。
(項目4)
前記p−層は、負電子親和力を有する表面層を有する、項目1に記載の検出器。
(項目5)
前記n−層は、約3μm〜10μmの厚さの範囲にある、項目1に記載の検出器。
(項目6)
前記n−層は、約3μmの厚さである、項目5に記載の検出器。
(項目7)
前記ドープされたシリコンは、燐およびアンチモンから成るリストから選択される元素によってドープされている、項目1に記載の検出器。
【0011】
他の特徴が、以下の説明および請求項から、関連する技術における当業者により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上記特徴および他の特徴が、説明および図面を参照して明らかとなる。
【
図1】図面は、Ag/n−タイプシリコン−p−タイプダイアモンドに対する電子エネルギー帯の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
このデバイスおよび方法は概して、光電子放出検出器に関し、特に、n−タイプのシリコン複合体の銀ナノ粒子を使用して、2μmよりも長い波長を検出することのできる赤外線外部光電子放出検出器に関する。このデバイスは、材料の単一のフィルムを使用して、3つの大気ウィンドウ、すなわち1〜2μm、3〜5μmおよび8〜14μmすべてにおける放射を効率的に検出することができる。このデバイスは、極めて適度な真空状態の下で調整されることができ、その動作を弱めることなく長期間大気の状態に露出することができる。このデバイスは容易に製造され、有毒材料を含まない。また、熱結像が、従来のイメージ増強管においてこれらの材料を使用して実行されることができ、焦電型ビディコンの複雑さを避けることができる。
【0014】
外部光電子放出方式を使用して放射を検出する基本的なスキームが、図面の補佐により説明される。図示されるように、光電陰極への放射による入射は、電子を放出し、この電子は、バッテリの電位によって加速され、信号電流として外部回路に集められる。光電陰極によって検出されることのできる最小のエネルギーは、バンドギャップの特性(例えば、光電陰極が作製されている材料)の関数である。バンドギャップが小さければ小さいほど、検出され得る放射のエネルギーは小さい。様々な複合半導体が、成分の相対的な量を変化させて0電子ボルトから1電子ボルト以上にわたるバンドギャップを有する半導体を生成することによって構成され得、この方法は、非常に長い波長での放射を検出するために使用され得ることを示唆している。あいにくと、これは、約2μm以下の長さの波長の検出に対して実証されているに過ぎない。この理由は、光電陰極の表面がセシウムおよび酸素のコーティングによって処理されて、表面のエネルギーを下げて、電子が真空中に逃避することを可能にしなくてはならないからである。これらの層は、非常に高い真空において非常に注意深く調整されなくてはならない。セシウム−酸素化合物は、半導体材料と共にヘテロ接合を形成し、低いバンドギャップの半導体に対しては、半導体が最小の伝導帯が、光電放射を妨げるインターフェースバリヤより下に低下する。これは、約0.63電子ボルト(2μm)のバンドギャップを有する半導体に対して生じる。以下に説明される本発明の外部光電子放出スキームは、ヘテロ接合バリヤの制限および検出器をその動作寿命の間適度な真空の下に保つ必要性を回避する。検出の外部光電子放出方式は、非常に望ましいものである。なぜならば、〜10
−10秒という速さであるし、また低い雑音で高い利得(10
+5)が得られるからであり、一部の例においては、単一の光子イベントの検出を可能にする。
【0015】
詳細には、図示されるとおりの提案された検出器は、n−層とのn−pヘテロ接合を有することができ、このn−層は、例えば燐またはアンチモンのような元素でドープされており、提案された検出器はまた、大きさが約5〜10nmの埋め込まれた銀(Ag)ナノ粒子を有し、この埋め込まれた銀ナノ粒子は、埋め込み型ショットキーバリヤを形成するn−タイプのシリコンマトリックス全体にわたって分散される。Agの原子体積率は、20〜30重量パーセントであることができる。これは、検出の目的で大きな信号を提供するのに十分である一方で、約50パーセントの透過閾値未満であるようなAg体積率を有することにより、暗特性(dark property)がシリコンマトリックスによって支配されるという双方の妥協である。複合体のフィルム厚は、約3〜10ミクロンであることができるが、好ましくは、3ミクロンである。
【0016】
p−層は、負電子親和力表面層を有するp−タイプダイアモンドフィルムであることができる。図示されるように、バイアス電圧V
1、V
2およびV
3は、電子を右へ動かすような極性を有する。伝導体と価電子帯との不連続性、ΔEcとΔEvは、3ボルトのオーダーであるが、ダイアモンド表面放出陰極の研究のために構成されたn
+−pシリコン−ダイアモンドへテロ構造は、ほんの1ボルト(V2)
5の順方向バイアスターンオン電圧を有する外部光電子放出電子を生成した。これは、この検出器の正しい動作のために必要な本質的特長の重要な実験上の実証である。
【0017】
n−タイプ半導体に埋め込まれた金属粒子から半導体の伝導体の中に電子が逃避するバリヤ高さ(すなわちは、ショットキーバリヤ高さ)は、ショットキーバリヤは検出される最小のエネルギーに対する閾値である点で、先行技術のバンドギャップの代わりをする。これらの埋め込まれたショットキーバリヤはまた、少なくとも同じ材料から形成された平面構造よりも敏感なオーダーの大きさである。金属n−タイプ半導体複合体は、n−pヘテロ接合のn−パートナを形成する。金属−n−タイプ半導体の微細構造は、所望の波長帯において最も高い吸収率を与えるように構成される。p−パートナは、p−タイプのダイアモンドであり、その表面は、負電子親和力を有するように作製されている。すなわち、電子がダイアモンドの伝導帯に一旦到達すると、真空の中への電子放出に対するバリヤはない。シリコンの伝導帯の中の光励起電子は、順方向バイアスの下でダイアモンド伝導帯の中に注入され、次に、真空の中に光電子放出される。一旦ダイアモンド表面が、水素処理によって負電子親和力を有するようにされると、ダイアモンド表面は、空気に晒されてもこの性質を失わない。
【0018】
このタイプの組み合わせに対するショットキーバリヤ高さは、通常2μmに近い。しかしながら、Siが大量にドープされたn−タイプである場合、Agナノ粒子からSi伝導帯の中への電子の効果的なトンネリングが、電界の下で生じ得、2μmよりもはるかに長い波長での放射の検出を可能にする。
【0019】
プロダクトおよび方法が、特定の実施形態と連携して説明されたが、上記説明に照らして、多くの代替、変更、および変化が当業者には明らかであることは明白である。