(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778183
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】セミフレキシブル弁形成リング
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-552041(P2012-552041)
(86)(22)【出願日】2011年2月1日
(65)【公表番号】特表2013-518671(P2013-518671A)
(43)【公表日】2013年5月23日
(86)【国際出願番号】US2011023386
(87)【国際公開番号】WO2011097251
(87)【国際公開日】20110811
【審査請求日】2014年1月30日
(31)【優先権主張番号】61/301,532
(32)【優先日】2010年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/301,158
(32)【優先日】2010年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512203964
【氏名又は名称】メドトロニック ジービーアイ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】512203698
【氏名又は名称】メドトロニック エイティーエス メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ライト ジョン ティー エム
(72)【発明者】
【氏名】アダムス ディヴィッド エイチ
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−313307(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/139776(WO,A1)
【文献】
特表2004−528885(JP,A)
【文献】
特表2005−501605(JP,A)
【文献】
特開2000−308652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方/後方交連(A/P交連)、後方/中隔交連(P/S交連)および中隔/前方交連(S/A交連)でそれぞれ連結された前方弁尖、後方弁尖および中隔弁尖を含む三尖弁の弁輪に取り付けるための弁形成リングであって、
中央部分ならびに第1および第2の端部分を含む細長い縫合可能材料チューブと、
前記チューブの中央部分に収容され、該中央部分の長さにわたって延びる弧状補強材であって、前記チューブに対する補強材の円周方向の移動を防ぐために、前記中央部分内に周方向の移動を拘束されている弧状補強材と、を備え、
前記チューブの第1と第2の端部分に補強材が無く、前記第1と第2の端は軸線方向に変形可能であり、
前記弧状補強材は、密巻コイルスプリングと該密巻コイルスプリングのバネキャビティ内に収容された補強ワイヤとを備え、
前記弧状補強材は、該補強ワイヤを前記弧状補強材の各端の端キャップによって密巻コイルスプリング内に長手方向に固定するように、構成されている、
ことを特徴とする弁形成リング。
【請求項2】
弁形成リングが三尖弁の弁輪に作動的に取り付けられ、その中央部分が、S/P交連の周辺からA/P交連までの範囲に及ぶように形成されている、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項3】
弧状補強材が、後方半径を有する後方部分および前方半径を有する前方部分を含み、前方半径が後方半径よりも大きい、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項4】
後方半径および前方半径が、弁形成リングが三尖弁の弁輪に作動的に取り付けられ、後方半径が、拡張前の状態の少なくとも弁輪の後方部分に適合し、前方半径が、拡張前の状態の弁輪の前方部分の少なくとも一部に適合するように選択される、
請求項3に記載の弁形成リング。
【請求項5】
第1と第2の端が、軸線方向に充分に変形可能であり、それにより、弁形成リングが作動的に三尖弁の弁輪に取り付けられた場合、第1と第2の端が弧状補強材により定まる平面より容易に逸脱して、正常な動作と実質的に干渉をせずに、三尖弁の解剖学的形態に適合することができる、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項6】
細長い縫合可能材料チューブが、弧状補強材で定まる平面内でC形状に熱硬化する編んだ熱硬化性材料を含む、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項7】
Cの開口部が弁形成リングの公称寸法の約50%超の長さを有するギャップを規定する、
請求項6に記載の弁形成リング。
【請求項8】
ギャップが公称寸法の約60%の長さである、
請求項7に記載の弁形成リング。
【請求項9】
弧状補強材が、弧状補強材の各端での縫合線により中央部分内に周方向移動を拘束されている、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項10】
各第1と第2の端部分にX線マーカをさらに含む、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項11】
X線マーカが、軸線方向および半径方向に容易に変形可能である、
請求項10に記載の弁形成リング。
【請求項12】
第1と第2の端部分が、軸線方向および半径方向に容易に変形可能である、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項13】
周方向に間隔をあけて設けた約11以下の取り付け縫合糸をさらに含む、
請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項14】
弧状補強材が弧状補強材の各端の縫合線により縫合可能材料に固定される、
請求項8に記載の弁形成リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓弁修復用の弁形成リングに関し、さらに詳細には、機能的三尖弁逆流治療のためのセミフレキシブル弁形成リングに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの心臓の解剖学的形態および生理機能についてはよく知られている。心臓にある4つの一方向弁の内、2つの入口弁は、心臓の左側の僧帽弁、および心臓の右側の三尖弁である。三尖弁は、右心房と右心室の間に位置する。三尖弁の3つの弁尖は、横方向に三尖弁輪のところで終端となる。血液は、上下大静脈から右心房に流入し、弛緩期の間に三尖弁を通って右心室を満たす。心室収縮期の間に、三尖弁が閉じられ、血液が、肺動脈弁を通って肺動脈中に、従って肺を通って、送り出される。心室収縮期の最後に、肺動脈弁が閉じる。酸素を付加された血液は、肺を出て左心房に流入し、心室弛緩期の間に僧帽弁を通って左心室に入る。最後に、心室収縮期に僧帽弁が閉じ、血液が大動脈弁を通って大動脈に押し出される。しかし、疾患に起因して僧帽弁が逆流性になることがあると、左心室一回拍出量のある程度のパーセンテージが、僧帽弁を通って左心房に逆流することになる。この逆流が左心房の圧力上昇の原因となり、ひいては、肺動脈圧力の上昇を生じさせ、また、これは、右心室の圧力にも反映される。この機序は、ShiranとSagieにより、さらに詳細に説明された(Shiran and Sagie(2009)J.Am.Coll.Cardiology53:401−408、「僧帽弁膜症における三尖弁逆流:発生、予後、機序、および管理」(Tricuspid Regurgitation in Mitral Valve Disease:Incidence、Prognostic Implications、Mechanism、and Management))。この内容は、その中の全引用を含め、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
右心室は、左心室の主要筋肉に取り囲まれた薄壁筋肉の「ポケット」である。理論に拘泥する意図はないが、上述の心室圧力の結果として、薄壁右心室および三尖弁輪の一部が、拡張する可能性がある。最初に、三尖弁の弁尖の接合が縮小するが、弁は、必要能力を維持している。その後、三尖弁輪がさらに拡張する場合、弁尖接合が失われ、三尖弁逆流が生ずる。これが機能的三尖弁逆流として知られるものであるが、こう呼ばれる理由は、三尖弁の弁尖が正常なままで残されているためである。問題は、前方と後方部分の拡張した弁輪である。このことは、BexおよびLeCompteにより最初に記載され(Bex and LeCompte(1986)J.Cardiac Surgery1:151−159、「フレキシブルリニアレデューサーを使った三尖弁修復」(Tricuspid Valve Repair Usinga Flexible Linear Reducer))、その後、Dreyfusにより記載された(Dreyfus、et al.(2005)Ann Thoracic Surgery 79:127−32、「2次三尖弁逆流または拡張:どちらを外科的修復の判断基準にすべきか?(Secondary Tricuspid Regurgitation or Dilation:WhichShould Be the Criteria for Surgical Repair?)」)。
図1は、Dreyfusから引用したものであるが、三尖弁輪2の拡張、後方弁尖60、前方弁尖62および中隔弁尖64ならびに前/後(A/P)交連3、後/中隔(P/S)交連4および中隔/前(S/A)交連5の相対的位置を図示している。
【0004】
上述以外の原因による三尖弁輪の変形もまた、機能的三尖弁逆流につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手術に関し今日存在する大きな問題は、三尖弁逆流問題の重症度に対する手術時の認識である。僧帽弁手術直前に、患者は麻酔され、食道に超音波プローブが導入され、僧帽弁および三尖弁逆流が評価される。困難の1つは、麻酔の1つの効果として、三尖弁逆流が大きく抑制される可能性があることである。超音波プローブディスプレイにより外科医が間違った方向に導かれ、三尖弁逆流が無いか、またはごく少ないと判断する可能性がある。不幸にも、後で、手術後に薬剤の効力が切れた場合、三尖弁逆流の本当の程度は、通常、手術中または手術前に認められた程度よりずっと重症になる。残念ながら、三尖弁逆流の患者の再手術死亡率は約30%であるが、重篤な三尖弁逆流を未治療のままで放置するとさらに悪い数字となり、5年患者生存率は約50%である。このことは、現在の症例に比べ、僧帽弁修復を受けているさらに多くの患者が、三尖弁輪縮小術も同時に受けるべきであることを示唆している。僧帽弁修復に付随する三尖弁輪形成縮小術の現状の比率は、約5%および60%の間で変化する。範囲の内の数値の高い側の端では、卓越した研究拠点の外科医が僧帽弁膜症の患者に対し、右心室および三尖弁拡張が重大になる前に早期に手術を行っている。しかし、他の多くの外科医は、手術前または手術中に診断した際のわずかな三尖弁逆流が、麻酔薬が切れた後の回復室で、早くも、重篤になる可能性があることを正しく認識できない。
【0006】
三尖弁輪の早期修復については、De Vegaにより記述された(De Vega(1972)RevEsp.Cardiol.6:555−557、「Laanulopl astia selective、regulable y permanente」)。ここでは、二重の連続2/0または3/0ポリプロピレン縫合糸を使い、右心室遊離壁に対応する前後弁輪に沿って縫合した。この技術の欠点は、縫合糸が組織から抜けたことや、抜ける傾向が残ることである。しかし、Antunesにより記載された11〜13綿撒糸を使った改良De Vega技術(Antunes(2003)Operative Techniques in Thoracic and Cardiovascular Surgery De Vega 8:169−76、「三尖弁のDe Vega弁輪形成術」)は、手術を複雑で、時間がかかるものにしたが、裂開問題を軽減するように思われる。
【0007】
フレキシブル、あるいは、剛体弁形成リングを含む機能的三尖弁逆流を治療する他の方法および装置が使用されてきた。これらの弁形成リングはいずれも、少なくとも1つの問題を示している。埋め込み時、三尖弁形成リングに対していくつかの注意が必要で、特に、房室(AV)結節の埋込縫合は避けなければならない。また、この関連で、既知C形状弁形成リングのギャップは、小さすぎて、埋込縫合をAV結節に侵入させ、心ブロックの原因となる可能性がある。フレキシブルリングを三尖弁輪に埋め込む場合の別の課題には、弁輪上の正しい埋込位置がある。さらに別の課題は、三尖弁輪は、平面と言うより、概ね凹面面になっている事である。機能的三尖弁逆流が進行するにつれ、弁輪は、凹面が少なくなり、よりフラットになる。従って、全くの剛体の三尖弁リングでは、弁輪にうまく適合できない。
【0008】
本発明は、上記で考察した1つまたは複数の問題を克服することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】は、正常な三尖弁輪およびDreyfusにより示された機能的三尖弁逆流の原因となる漸進的非対称拡大を示す三尖弁の平面図である。
【
図2】は、機能的三尖弁逆流を治療するためのセミフレキシブル弁形成リングの実施形態の平面図である。
【
図3】は、
図2の弁形成リングの部分断面の平面図である。
【
図4】は、
図2の弁形成リングにおける
図3のラインAAに沿った断面図である。
【
図5】は、
図2の弁形成リングにおける
図3のラインBBに沿った断面図である。
【
図6】は、
図2の弁形成リングの平面図で、外径OD、内径ID、公称寸法NSおよびリングの前方端および中隔端の間のギャップGを示す。
【
図7】は、
図6の矢印Cの方向から見た、
図2の弁形成リングの側面図で、ホルダー(示さず)に取り付けた弁形成リングを示す。
【
図8】は、
図6の矢印Cの方向から見た、
図2の弁形成リングの側面図で、ホルダーから取り出した弁形成リングのリング端軸線方向変異を示す。
【
図9】は、矯正済み三尖弁輪に埋め込んだ
図2の弁形成リングの斜視図を示す。
【
図10】は、リングホルダーに取り付けた
図2のセミフレキシブル弁形成リングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別に指示がなければ、本明細書および請求項で使用される成分、寸法、反応条件、等の量を表す全ての数字は、全ての例において、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。
【0011】
本出願および請求項では、明確に別義が指示されていなければ、単数形の使用は、複数形を含む。さらに、「または」の使用は、別義が指示されていなければ、「および/または」を意味する。さらに、用語の「含む(including)」、ならびに他の形、例えば、「含む(includes)」および「含まれる(included)」の使用は、制限を意図するものではない。また、明確に別義が指示されていなければ、「要素」または「成分」等の用語は、1つのユニットを含む「要素」および「成分」ならびに2つ以上のユニットを含む「要素」および「成分」を包含する。
【0012】
図2に、セミフレキシブル弁形成リング10の平面図を示す。
図2からわかるように、セミフレキシブル弁形成リング10は、縫合可能材料12によるC形状リングに形成された細長いチューブを含む。本明細書記載の一実施形態では、縫合可能材料は、米国特許第5、674、279号明細書(Wright)に記載のようにしてチューブ形状に熱硬化させた熱硬化性材料の生体適合性リボンであってもよい。本開示は、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。適切な熱硬化性材料の例は、ポリエーテルテトラフィラート(ポリエステル)である。また、いくつかの実施形態では、他の適切な編んだ、織った、または編んだ生体適合性材料、例えば、ナイロンまたは他の生体適合性材料を含んでもよい。材料は、縫合糸を保持した針、縫合クリップまたは他の類似の固定手段を容易に受け入れるのに適したものでなければならない。また、適切な位置に一旦固定されたら摩滅することなく心臓弁の弁輪上に維持できるものでなければならない。
【0013】
Wrightの米国特許第5、674、279号明細書には、熱硬化可能で、溶融可能な繊維チューブから始め、チューブをマンドレル上でスライドさせ、次に、チューブを巻き戻して二重壁チューブを形成する等の編んだリボン材料を作るプロセスが記載されている。この二重壁チューブを加熱ブレードで所望長さに切断する。この切断は、繊維を溶融することにより切断するもので、複数繊維を一緒に溶融し内外壁が融着継ぎ目で結合した融着端を形成する。次に、二重幅チューブをV形状マンドレル上でスリップさせる。このマンドレルは、より高耐熱ポリマーまたは金属で作られ、形成ツールの間で固定され、目的のV形状バンドのV形状開口部のサイズと形を定める形状に作られている。次に、ポリマーを硬化させるのに充分で、かつ、チューブが溶融せずに成形できる温度で、このバンドを熱硬化する。例えば、チューブがポリエステル性である場合は、温度は、100〜110℃の範囲が適切で、加熱時間は約10分でよい。V開口部は、長い縫合糸を使って一緒に縫い合わせ、例えば、
図3〜5に示すような4壁チューブを形成できる。
【0014】
セミフレキシブル弁形成リング10を弁輪上に設置する際に、種々のマーカを縫合可能材料に設け、外科医を支援することができる。例えば、
図2に示す実施形態は、三尖弁輪上に設置することを意図されている。この実施形態では、マーカは、境界マーカ14、および前/後(「A/P」)交連マーカ16を含む。境界マーカ14は、縫合糸または縫合クリップを埋め込むのに使われる針またはクリップが内部補強材またはセミフレキシブル弁形成リング10の動作と干渉しないで配置可能な場所の可視指示を外科医に提供できる。A/P交連マーカは、三尖弁心臓弁のA/P交連に合致するように作られており、外科医が三尖弁輪上の正しい位置にセミフレキシブル弁形成リング10を配置するのを支援する(
図9参照)。他の心臓弁を使う実施形態では、他のマーカを提供可能である。さらに、このような実施形態では、セミフレキシブル弁形成リング10は、
図2のセミフレキシブル弁形成リング10の実施形態よりもさらに対称的なC形状にすることができる。
【0015】
図2の実施形態では、セミフレキシブル弁形成リング10は、中央部分18、第1の端部分20(前端としても知られる)および第2の端部分22(中隔端としても知られる)を含む。中央部分18は、中央部分18内の長さ方向弧状補強材の固定に使われる半径方向縫合線24、26で規定される。これについては、後述する。
【0016】
図3は、
図2のセミフレキシブル弁形成リング10の種々の断面部分であり、セミフレキシブル弁形成リング10の内部構造を説明している。中央部分18中の断面部分28(
図4も参照)に関しては、上記で参照のWrightの米国特許第5、674、279号明細書に記載されているように、縫合可能材料12は、多くの層を含むことが認められる。縫合可能材料12は、円周方向縫合によりチューブ中で、円周方向縫い目25を形成する。
【0017】
セミフレキシブル弁形成リング10の中央部分の中に弧状補強材30が配置されている。図示した実施形態中の弧状補強材30は、Carpentier MP35N合金等の生体適合性金属の密巻バネ32を含む。このバネは、0.009〜0.012インチ径ワイヤを使って巻いてもよいが、0.005〜0.020インチの範囲の径の他のワイヤも適している。特定の本明細書記載の実施形態では、バネは、約0.029インチの内径と約0.055インチの外径を有する。他の内外径も本発明の範囲に入る。バネのヘリカルコイルは、内径の内側のバネのキャビティを規定する。補強材30は、長さ方向の圧縮を防ぎ、第1の円周方向部分の軸と半径方向の変形に耐えるように作られている。本明細書で使用する「軸線方向」および「半径方向」は、血液が流入する方向に伸びる弁輪の軸線に対するものである。従って、「軸線方向」の変形は、この軸線に沿った方向、および「半径方向」の変形は、軸線に向かう、または軸線から離れる方向での変形を意味する。「軸線方向と半径方向」の変形は、軸線方向のみの変形、半径方向のみの変形、または軸線方向と半径方向の同時変形を包含することを意図している。補強材ワイヤ34は、バネキャビティ中に軸線方向に受け入れられ、軸線と半径方向の変形に対する抵抗力を与える。補強材ワイヤ34は、例えば、電解腐食を防ぐためにバネと同じ組成の生体適合性金属であってもよい。補強材ワイヤは、前記で定めたように、半径方向の変形に耐える直径でなければならない。セミフレキシブル弁形成リングが機能的三尖弁逆流の治療用の三尖弁に使われる場合の例としては、約0.028インチの直径のMP35N合金を使って良い結果が得られ、通常、0.015〜0.050インチの範囲(所望の剛性およびリングサイズに応じて)が利用可能である。
【0018】
補強材ワイヤ34は、補強材の各端にある端キャップ36により、密巻バネ32内に長手方向に固定される。第2の端部分22に近接している端キャップ36は、
図3の破断部分38に示されている。図には示していないが、同じ端キャップ36が、半径方向縫合線24に隣接した第1の端部分20の近くにある。各端キャップ36は、丸みを付けるか、または面取りして、全てのシャープエッジを除去し、さらに半球状にしてもよい。セミフレキシブル弁形成リング10が
図2と
図3に示すように形成される場合、端キャップは、補強材が縫合可能材料12から突き出るのを防ぐように作られている。図示した実施形態では、端キャップは、約0.046インチの外径を有する。補強材30は、A/P交連マーカ16、およびセミフレキシブル弁形成リング10を拡張前の健康な三尖弁輪(「拡張前弁輪」)の少なくとも後方部分に適合させるように選択される後方半径42を有する半径方向縫合線26の間の後方部分40を含む。補強材30は、さらにA/P交連マーカ16および半径方向縫合線24の間に広がる前方部分44を含む。部分44は、前方半径46を有し、これは、後方半径42より大きく、セミフレキシブル弁形成リング10が、三尖弁の弁輪に作動的に取り付けられ、前方半径が拡張前弁輪の少なくとも前方部分に適合するように選択される。密巻バネ32は、シリコンゴムチューブ47の中に収容される。
【0019】
第1の端部分20および第2の端部分22は、補強材を含まず、その結果、第1と第2の端部分は、下記に説明するように軸線方向および半径方向に変形可能である。本明細書で図示されている実施形態では、X線マーカ48が、チューブ内、および第1と第2の端20、22のそれぞれに配置されている。X線マーカ48は、第1と第2の端の半径方向または軸線方向の変形を大きく抑制しないという意味で非構造的である。図示されている実施形態では、X線マーカ48は、タングステンおよびバリウム硫酸塩を混合した0.020インチシリコーンゴムバンドである。再度
図3に関して、X線マーカ48は、縫合可能材料12から引き出した縫合可能材料12の組紐50を介してX線マーカ48を取り付けることにより、第1と第2の端部分20、22内で固定される。
【0020】
縫合可能材料のチューブ12は、前述したWrightの米国特許第5、674、279号明細書に記載されている方法で形成可能である。縫合可能材料12を、V字断面を有する長さ部分に形成し、補強材30を、V字の底部に配置し、補強材30の周りの周方向に間隔を開けて配置したタックステッチ52(
図3参照)により適切な位置に保持される。X線マーカ48は、同様に、Vの底部に配置され、上述のように、引き出した縫合可能材料12の組紐50を介してX線マーカ48を取り付けることにより固定される。その後、円周方向縫い目25が形成され、V断面がチューブ中に形成される。境界マーカ14およびA/P交連マーカ16が、縫合糸として付加される。さらに、半径方向縫合線24、26が、周方向に追加され、中央部分内に弧状補強材を限定することができる。次に、組み上げたセミフレキシブル弁形成リング10を、熱硬化して、
図2、
図3および
図6〜
図10に示すような形状に維持することが好ましい。
図6に関し、セミフレキシブル弁形成リング10を熱硬化して、図のように、選択した外径ODおよび選択した内径IDを持たせる。これにより、
図6に示されるような、公称寸法NSの大きさのセミフレキシブル弁形成リング10が得られる。熱硬化した場合、セミフレキシブル弁形成リング10は、さらに第1の端部分20と第2の端部分22の間にギャップGを保持する。このギャップGは、弁形成リングの公称寸法NSの約50%を超える長さを有する。一実施形態では、ギャップGは、公称寸法NSの約60%の長さを有することができる。このサイズは、セミフレキシブル弁形成リング10の埋込の間に房室(AV)結節を損傷する危険性を最小限にするように選択される。
図7に関して、熱硬化した場合には、セミフレキシブル弁形成リング10は、弧状補強材30で規定される平面51の周りで実質的に平面である。
【0021】
図8に関して、セミフレキシブル弁形成リング10の中央部分18は、実質的に弧状補強材30の平面51内に留まることが意図されている。第1と第2の端部分20、22は、
図8に示すように、軸線方向のどちらの方にも実質的に変形が自由である。図には示していないが、第1と第2の端部分20、22は、半径方向にも変形可能である。
【0022】
図9は、三尖弁を露出させるために右心房壁を切開し、後退させ、心臓の三尖弁に作動的に取り付けたセミフレキシブル弁形成リング10を示す。セミフレキシブル弁形成リング10は、拡張前または正常に近い状態に対し三尖弁輪を適合させるために寸法と位置を定めている。後方部分40は、後方弁尖60の基部で三尖弁輪に合わせている。中央部分18の前方部分44は、前方弁尖62の基部で、三尖弁輪の前方部分の円周方向長さの約1/3に覆いかぶさる。前端とも呼ばれる第1の端部分20は、同様に、前方弁輪に固定される。中隔端としても知られる第2の端部分22は、中隔弁尖64の基部で、三尖弁輪の中隔部分に取り付けられる。
図9で認められるように、セミフレキシブル弁形成リング10を三尖弁輪に固定するのに8つの縫合糸66のみが必要である。患者の解剖学的形態に応じて、1つまたは2つまたは3つまでも少ないまたは多い縫合糸を使うことができる。いかなる場合でも、この数は、弁形成リングの三尖弁への埋め込みの先行技術で必要な12〜14縫合糸より少ない。縫合糸の数を減らすことにより、約15分のオーダーでより素早くセミフレキシブル弁形成リング10を埋め込むことを可能とするが、これは先行技術の装置に比べかなり早い。
【0023】
図10は、ホルダー70に取り付けた
図2のセミフレキシブル弁形成リング10の平面図である。
図10は、さらに、三尖弁輪に弁形成リングを埋め込むための8つの取り付け縫合糸の好ましい位置を図示している。
【0024】
セミフレキシブル弁形成リング10の中央部分40は、三尖弁輪の取り付け部分を実質的に平面形状に維持し、三尖弁輪拡張領域の「ハンモック」効果を防ぐ。一方で、フレキシブルな第1と第2端部分は、三尖弁輪に対し軸線方向および半径方向に変形可能で、取り付けた縫合糸と弁輪組織の応力を実質的に除去するが、この場合も、三尖弁の正常な機能と実質的に干渉することなく、三尖弁輪の拡張を制御している。言い換えれば、フレキシブル端部分は、矯正された、または非拡張弁輪を有する三尖弁の正常な動作の実効性を阻害しない。
【0025】
種々の本開示実施形態は、あたかも、各従属請求項が、先行従属請求項ならびに独立請求項のそれぞれの制限を組み込んだ複数の従属請求項であるかのように、請求項中で列挙される種々の要素の組み合わせを含むことができる。このような組み合わせは、明示的に本開示の範囲内にある。
【0026】
本発明では、関連する多くの実施形態を具体的に示し説明してきたが、本明細書で開示されている種々の実施形態に対し、本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく形態および詳細に対する変更を行うことができ、さらに本明細書で開示の種々の実施形態は、請求項の範囲を限定するものとする意図はないことは、当業者なら理解できる。本明細書に引用された全ての文献および付属書は、この参照によりその全体が組み込まれる。