(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
前述の一般的な記載および下記の詳細な説明は両方とも、例示的かつ説明的なものであるに過ぎず、特許請求の範囲に記載されているとおりの開示を限定するものではないことを理解されたい。添付の特許請求の範囲に詳細に指摘されている要素およびその組合せによって、開示の詳細および利点を実現および達成することができる。
【0010】
例示的な実施形態の詳細な説明:
本開示を、本開示の配合物および使用の様々な例を含めて、その実施形態のより限定された態様で記載する。これらの実施形態は、本発明を説明することのみを目的として提示されるものであって、本発明の範囲に対する限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0011】
例示的な実施形態に関して、ある種の用語が本明細書で使用される場合のその意味を明確にするために、用語について次の定義を提供する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑性組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」および「潤滑剤」という用語は、大部分量の基油と小部分量の添加剤組成物とを含む完成潤滑製品を指す、同義で完全に互換的な専門用語である。
【0013】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」および「添加剤組成物」という用語は、大部分量の基油ストック混合物を除いた潤滑性組成物分を指す、同義で完全に互換的な専門用語である。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味において使用される。具体的には、分子の残りの部分に直接結合していて、かつ主に炭化水素特性を有する炭素原子を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には下記が包含される:
(1)炭化水素置換基、即ち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(
例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基ならびに芳香族−、脂肪族−および脂環式−置換芳香族置換基、さらに、分子の他の部分を介して環が完成している環式置換基(例えば、2個の置換基が一緒に脂環式ラジカルを形成している);
(2)置換炭化水素置換基、即ち、本発明の内容において、主には炭化水素置換基を変えない非炭化水素基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミンおよびスルホキシ)を含有する置換基;
(3)ヘテロ置換基、即ち、本発明の内容において主には炭化水素特性を有し、さもなければ炭素原子からなる環または鎖中に炭素以外を含有する置換基。ヘテロ原子には、硫黄、酸素、窒素が包含され、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルなどの置換基が内包される。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個当たり2個以下、例えば1個以下の非炭化水素置換基が存在し;典型的には、ヒドロカルビル基中に、非炭化水素置換基は存在しない。
【0015】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、別段に特に述べられていない限り、組成物全体の重量に対して、挙げられている成分が示すパーセンテージを意味する。
【0016】
本明細書で使用されている「油溶性」または「分散性」という用語は、その化合物または添加剤がどんな割合でも油中に可溶性、分散性、混和性または懸濁可能であることを必ずしも示していなくてよい。しかしながら、前述の用語は、その油が利用される状況においてそれらの意図されている効果を発揮するのに十分な程度には、それらが油中に例えば可溶性または安定的に分散性であることは意味するものである。さらに、他の添加剤の追加の組み込みはまた、所望の場合には特定の添加剤の比較的高いレベルでの組み込みを許容し得る。
【0017】
下記で詳細に記載されているとおりの1種または複数の添加剤を、適切な基油配合物に加えることによって、本開示の潤滑油、エンジン潤滑油および/またはクランクケース用潤滑油は配合することができる。添加剤は、添加剤パッケージ(または濃縮物)の形態で基油と組み合わせることができるか、基油と個々に組み合わせることができるか、または別法では、「ブースター」添加剤としてエンジン中の潤滑剤組成物に加えることができる。「ブースター」添加剤は、本明細書で使用される場合、完全配合潤滑剤組成物中に典型的に存在する成分の慣用の量以上に、潤滑剤組成物中の添加剤成分の量を補足または増加させる完全配合潤滑剤組成物に加えられる添加剤の量である。完全配合潤滑剤、エンジン潤滑剤および/またはクランクケース用潤滑剤は、加えられる添加剤およびその個々の割合に基づいて、改良された性能特性を示し得る。
【0018】
本明細書に記載されているエンジンまたはクランクケース用潤滑剤組成物は、スパーク点火式エンジン、詳細にはスパーク点火式直噴エンジンを備えた車両で使用される。そのようなエンジンは、自動車および軽量任務級トラック用途で使用されていることがあり、かつこれらに限られないが、ガソリン、アルコール含有燃料、圧縮天然ガス、気液(gas−to−liquid)燃料、バイオ燃料、フレックス燃料(flex−fuels)、それらの混合物などを包含する燃料で運転され得る。本開示は、提示されているILSAC GF−5潤滑剤標準に適合するか、それ以上である自動車クランクケース用潤滑剤などのエンジン潤滑剤として使用するのに適した潤滑剤を記載し得る。慣用のGF−5潤滑剤組成物は、清浄剤、分散剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、さび止め剤、粘度指数改良剤、乳化剤、抗乳化剤、腐食防止剤、摩耗防止剤、金属ジヒドロカルビルジチオリン酸塩、無灰アミンリン酸塩、消泡剤および流動点降下剤から選択される1種または複数の添加剤成分を包含し得る。本開示の実施形態によって、潤滑剤組成物はまた、SIDIエンジン中のインテークバルブ沈積物を低減するのに有効な量の芳香族化合物も包含する。
【0019】
芳香族添加剤
本開示の実施形態では、相対的に揮発性の芳香族添加剤を、標準大気圧条件下で約190℃から約270℃までの沸点を有する完全配合潤滑剤組成物と組み合わせるが、その際、その芳香族化合物は、添加剤を含有する潤滑剤組成物の全重量に対して約0.1から約5.0重量パーセントまでの範囲の量で使用されると、SIDIエンジン中のインテークバルブ沈積物を低減するために有効である。
【0020】
使用することができる芳香族添加剤化合物には、下式の化合物が包含される:
【化1】
[式中、R
1、R
2およびR
3はそれぞれ、水素および1から6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択されるが、但し、R
1、R
2およびR
3のうちの少なくとも1個は、1から6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であることを条件とし、その化合物は、標準大気圧条件下で約190℃から約270℃までの沸点を有する]。標準大気圧条件は、室温および1気圧である。
【0021】
したがって、SIDIエンジン中のバルブ沈積物を低減するために使用することができる適切な芳香族化合物には、これらに限られないが、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールおよび前記のうちの2種以上の混合物が包含される。前述のうち、特に適切な化合物には、約190℃から約270℃まで、例えば約220℃から約265℃までの範囲内の沸点を有するヒンダードフェノール化合物が包含される。そのような化合物の例には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、2−tert−ブチルフェノールおよび4−tert−ブチルフェノールが包含される。
【0022】
潤滑剤組成物中で使用されている慣用のフェノール化合物と比較して、本明細書に記載されている化合物は、潤滑剤組成物中で慣用的に使用されている芳香族化合物よりも比較的揮発性が高い。理論の検討によって制限されることは望まないが、本明細書に記載されている芳香族化合物は、より容易に揮発し、SIDIエンジンの吸気マニホールドに油のミストと共に進入し、エンジンのPCV循環中で気化し得ると考えられる。芳香族を含有する連行された油のミストおよび蒸気がインテークバルブステムおよびチューリップ上で凝縮する際に、芳香族化合物は、ミストおよび蒸気に由来するオイルが重合するのを妨げ、油が自然に気化し、燃焼プロセスで消費されるのに十分な時間を可能にし得る。
【0023】
潤滑剤組成物中での芳香族添加剤化合物の量は望ましくは、約35,000マイル超のエンジン運転でもSIDIエンジンの性能および/または燃費を維持するのに十分な量で
ある。したがって、SIDIエンジン用の完全配合潤滑剤組成物中で使用することができる芳香族添加剤の量は、添加剤を含有する潤滑剤組成物の全重量に対して、約0.1から約5.0重量%までの範囲であってよい。添加剤の特に適切な量は、添加剤を含有する潤滑剤組成物の全重量に対して、約0.5から約2.0重量パーセントまでの範囲であってよい。
【0024】
芳香族添加剤は、完全配合潤滑剤組成物に初めから存在してよいか、または潤滑剤組成物に、もしくは完全配合潤滑剤組成物を含有するエンジンのクランクケースに添加することができる。他の実施形態では、予め決定されたマイル数にわたってエンジンを運転した後に、エンジンのインテークバルブ中に形成される沈積物の量を低減するために、芳香族添加剤をエンジンのクランクケースに添加することができる。
【0025】
基油
エンジン潤滑剤組成物を配合する際に使用するのに適した基油は、適切な合成油もしくは鉱油またはそれらの混合物のいずれからも選択することができる。鉱油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、さらに白色鉱油および溶剤処理もしくは酸処理されたパラフィン系の無機潤滑油、ナフテン型または混合パラフィン−ナフテン型などの無機潤滑油が包含され得る。石炭または頁岩に由来する油もまた、適していることがある。基油は典型的には、100℃で約2〜約15cStまたは、さらなる例として、約2〜約10cStの粘度を有してよい。さらに、気液プロセスに由来する油もまた適している。
【0026】
適切な合成基油には、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリブテンを包含するポリ−アルファ−オレフィン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステルならびにポリシリコーン油が包含され得る。合成油には、重合および共重合オレフィンなどの炭化水素油(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマーなど);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ−(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)などおよびそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニルなど);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにそれらの誘導体、類似体および同族体などが包含される。
【0027】
末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されているアルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーならびにそれらの誘導体は、使用することができる他の群の既知の合成油を構成している。そのような油の例は、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドの重合を介して調製される油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、約1000の平均分子量を有するメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、約500〜1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、約1000〜1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)またはそのモノ−およびポリカルボキシル酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C
3〜C
8脂肪酸エステルもしくはC
13オキソ酸ジエステルである。
【0028】
使用することができる他の群の合成油には、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルが包
含される。これらのエステルの具体的な例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸を反応させることによって形成される複合エステルなどが包含される。
【0029】
合成油として有用なエステルにはまた、C
5からC
12モノカルボン酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールなどのポリオールおよびポリオールエーテルとから製造されるものが包含される。
【0030】
したがって、本明細書に記載されているとおりのエンジン潤滑剤組成物を製造するために使用することができる基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドラインにおいて規定されている、グループI〜Vの基油のいずれかから選択することができる。そのような基油グループは次のとおりである:
【表1】
【0031】
基油は、少量または大量のポリ−アルファ−オレフィン(PAO)を含有してよい。典型的にはポリ−アルファ−オレフィンは、約4から約30個、または約4から約20個、または約6から約16個の炭素原子を有するモノマーに由来する。有用なPAOの例には、オクテン、デセン、それらの混合物などに由来するものが包含される。PAOは、約2〜約15、または約3〜約12、または約4〜約8cStの粘度を100℃で有し得る。PAOの例には、100℃で4cStのポリ−アルファ−オレフィン、100℃で6cStのポリ−アルファ−オレフィンおよびそれらの混合物が包含される。鉱油と上述のポリ−アルファ−オレフィンとの混合物も使用することができる。
【0032】
基油は、フィッシャー−トロプシュ合成された炭化水素に由来する油であってよい。フィッシャー−トロプシュ合成された炭化水素は、H
2およびCOを含有する合成ガスから、フィッシャー−トロプシュ触媒を使用して製造される。基油として有用なものとするために、そのような炭化水素は典型的には、さらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素を、米国特許第6,103,099号または同第6,180,575号に開示されているプロセスを使用して水素化異性化(hydroisomerized)することができるか;米国特許第4,943,672号または同第6,096,940号に開示されている方法を使用して水素化分解および水素化異性化することができるか;米国特許第5,882,505号に開示されている方法を使用して脱ろうすることができるか;または米国特許第6,013,171号;同第6,080,301号;または同第6,165,949号に開示されている方法を使用して水素化異性化および脱ろうすることができる。
【0033】
本明細書で上記に開示されている種類の鉱油または合成油(さらに、それらの任意の2種以上の混合物)の未精製、精製および再精製油を、基油中で使用することができる。未精製油は、鉱油源または合成源からさらに精製処理することなくそのまま得られたものである。例えば、レトルト採取法から直接得られるシェール油、一次蒸留から直接得られる石油またはエステル化プロセスから直接得られ、さらに処理することなく使用されるエステル油が、未精製油であろう。1つまたは複数の特性を改良するために、1つまたは複数の精製ステップでさらに処理されていることを除き、精製油は未精製油と同様である。溶剤抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなど、多くのそのような精製技術が当業者には知られている。精製油を得るために使用されるのと同様のプロセスを、運転で既に使用された精製油に適用することによって、再精製油は得られる。そのような再精製油はまた、再生または再処理油としても知られており、多くの場合に追加的に、使用済み添加剤、汚染物質および油分解生成物を除去することを目的とした技術によって処理される。
【0034】
基油を本明細書に記載の実施形態で開示されるとおりの添加剤組成物と組み合わせて、エンジンのクランクケースに適したエンジン潤滑剤組成物を得ることができる。したがって、基油は、エンジン潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の全重量に対して約50重量%から約95重量%までの範囲の量で存在してよい。
【0035】
分散剤
本開示による完全配合潤滑剤組成物中に含有される分散剤には、これらに限られないが、分散される粒子と会合し得る官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖が包含され得る。典型的には、分散剤は、多くの場合に架橋基を介してポリマー主鎖に結合しているアミン、アルコール、アミドまたはエステル極性部分を含む。分散剤は、米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載されているとおりのマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載されているとおりの無灰スクシンイミド分散剤;米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号および同第5,633,326号に記載されているとおりのアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号および同第5,627,259号に記載されているとおりのKoch分散剤ならびに米国特許第5,851,965号;同第5,853,434号;および同第5,792,729号に記載されているとおりのポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択することができる。
【0036】
完全配合潤滑剤組成物中で使用することができる適切な分散剤には、A)ヒドロカルビル−カルボン酸もしくは無水物またはヒドロカルビル−置換マンニッヒ塩基およびB)少なくとも2個の窒素原子を含有するポリアミンの反応生成物が包含され得る。成分Aのヒドロカルビル−カルボン酸または無水物のヒドロカルビル部分は、ブテンポリマー、例えば、イソブチレンのポリマーに由来してよい。本明細書において使用するのに適したポリイソブテンには、ポリイソブチレンまたは少なくとも約60%、例えば約70%から約90%以上などの末端ビニリデン含有率を有する高反応性ポリイソブチレンに由来するものが包含される。適切なポリイソブテンには、BF
3触媒を使用して調製されるものが包含され得る。ポリアルケニル置換基の数平均分子量は、幅広い範囲にわたって、上記のとおりのGPCによって決定されるとおり、例えば約100から約5000、約500から約5000などの範囲で変動してよい。
【0037】
成分Aのカルボン酸または無水物は、対応する酸ハロゲン化物および低級脂肪族エステルを含めたマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、エチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など、マレイン酸無水物以外のカルボン酸反応物からも選択することができる。成分Aを製造する
ために使用される反応混合物中におけるマレイン酸無水物とヒドロカルビル部分とのモル比は、広く変動してよい。したがって、そのモル比は、約5:1から約1.5まで、例えば約3:1から約1:3まで変動してよく、さらなる例として、マレイン酸無水物は、反応を完了させるために、化学量論的過剰で使用することができる。未反応のマレイン酸無水物は、真空蒸留によって除去することができる。
【0038】
多くのポリアミンのうちのいずれも、官能化分散剤を調製する際に成分Bとして使用することができる。非限定的なポリアミンの例には、アミノグアニジンビカルボネート(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)および重質ポリアミンが包含され得る。重質ポリアミンは、少量のTEPAおよびPEHAなどの低級ポリアミンオリゴマー、主として7個以上の窒素原子、1分子当たり2個以上の第一級アミンおよび通常のポリアミン混合物より多い長大な分岐鎖を有するオリゴマーとを有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含んでよい。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用することができる追加の非限定的ポリアミンは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,548,458号に開示されている。本開示の実施形態では、ポリアミンは、テトラエチレンペンタミン(TEPA)から選択することができる。
【0039】
完全配合潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全重量に対して、上記の分散剤約0.5重量パーセントから約10.0重量パーセントを含有してよい。分散剤の典型的な範囲は、潤滑剤組成物の全重量に対して約2重量パーセントから約5重量パーセントであってよい。
【0040】
金属含有清浄剤
上記の分散剤反応生成物と共に使用することができる金属清浄剤は一般に、極性ヘッドを長鎖疎水性テールと共に含み、その際、その極性ヘッドは酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は、実質的に化学量論的量の金属を含有してよく、その場合にそれらは通常、正塩または中性塩として記載され、かつ典型的には、約0から約150未満の全アルカリ価またはTBN(ASTM D2896によって測定した場合)を有するであろう。酸化物または水酸化物などの過剰の金属化合物を二酸化炭素などの酸性ガスと反応させることによって、大量の金属塩基が包含され得る。生じる過剰塩基性清浄剤は、無機金属塩基(例えば、水和炭酸塩)の核を囲む中和された清浄剤のミセルを含む。そのような過剰塩基性清浄剤は、約150以上、例えば約150から約450以上のTBNを有し得る。
【0041】
本実施形態で使用するのに適し得る清浄剤には、油溶性過剰塩基性、低塩基性および金属、詳細にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムおよびマグネシウムの中性のスルホン酸塩、石炭酸塩、硫化石炭酸塩およびサリチル酸塩が包含される。1種超の金属、例えばカルシウムおよびマグネシウムの両方が存在してもよい。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物もまた、適し得る。適切な金属清浄剤は、150から450TBNのTBNを有する過剰塩基性スルホン酸カルシウムまたはマグネシウム、150から300TBNのTBNを有する過剰塩基性石炭酸または硫黄化石炭酸カルシウムまたはマグネシウムおよび130から350のTBNを有する過剰塩基性サリチル酸カルシウムまたはマグネシウムであってよい。そのような塩の混合物もまた、使用することができる。
【0042】
金属含有清浄剤は潤滑性組成物中に、約0.5重量%から約5重量%までの量で存在してよい。さらなる例として、金属含有清浄剤は、約1.0重量%から約3.0重量%の量で存在してよい。金属含有清浄剤は、潤滑性組成物中に、潤滑剤組成物の全重量に対してアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属約500から約5000ppmを潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在してよい。さらなる例として、金属含有清浄剤は潤滑
組成物中に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属約1000から約3000ppmを提供するのに十分な量で存在してよい。
【0043】
リンベースの摩耗防止剤
リンベースの摩耗防止剤を使用することができ、それは、これらに限られないが、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属化合物を含んでよい。適切なジヒドロカルビルジチオリン酸金属は、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩を含んでよく、その際、金属は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅または亜鉛であってよい。
【0044】
公知の技術に従って、通常は1種または複数のアルコールまたはフェノールをP
2S
5と反応させることによって初めにジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次いで形成されたDDPAを金属化合物で中和することによって、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩を調製することができる。例えば、第一級および第二級アルコールの混合物を反応させることによって、ジチオリン酸を製造することができる。別法では、一方の酸上のヒドロカルビル基が本質的に完全に第二級性であり、他方の酸上のヒドロカルビル基が本質的に完全に第一級性である複合ジチオリン酸を調製できる。金属塩を製造するために、任意の塩基性または中性金属化合物を使用することができるであろうが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応において過剰な塩基性金属化合物を使用することから過剰な金属を含んでいることが多い。
【0045】
ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、下式によって表され得る:
【化2】
[式中、RおよびR’は、1から18個、例えば2から12個の炭素原子を含有する同じか、または異なるヒドロカルビルラジカルであってよく、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式ラジカルなどのラジカルを包含する]。RおよびR’基は、2から8個の炭素原子のアルキル基であってよい。したがって、ラジカルは例えば、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の炭素原子(即ち、RおよびR’)の総数は一般に、約5以上である。ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛はしたがって、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含んでよい。
【0046】
リンベースの摩耗防止剤として利用することができる他の適切な成分には、これらに限られないが、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、ホスファイト(phosphite)およびそれらの塩ならびにホスホネートなどの任意の適切な有機リン化合物が包含される。適切な例は、トリクレシルホスフェート(TCP)、ジ−アルキルホスファイト(例えば、ジブチル水素ホスファイト)およびアミル酸ホスフェートである。
【0047】
他の適切な成分は、無機または有機リン酸またはエステルなどのリン供給源と組み合わせてのヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤およびポリアミンの反応からの完全反応生成物などのリン酸化スクシンイミドである。さらに、それは、アミド、アミジンおよび/または塩結合を、第一級アミノ基および無水物部分の反応から生じる種類のイミド結合に加えて有し得る化合物を含んでよい。
【0048】
リンベースの摩耗防止剤は、潤滑性組成物中に、リン約200から約2000ppmを提供するのに十分な量で存在してよい。さらなる例として、リンベースの摩耗防止剤は、潤滑組成物中に、リン約500から約800ppmを提供するのに十分な量で存在してよい。
【0049】
リンベースの摩耗防止剤は、潤滑性組成物中に、潤滑性組成物中のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の全量に基づくアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有率(ppm)の、潤滑性組成物中のリンの全量に基づくリン含有率(ppm)に対する比が約1.6から約3.0(ppm/ppm)になるような十分な量で存在してよい。
【0050】
摩擦調整剤
本開示の実施形態は、1種または複数の摩擦調整剤を包含し得る。適切な摩擦調整剤は、金属含有および金属不含の摩擦調整剤を含んでよく、それらには、これらに限られないが、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級化アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステルなどが包含され得る。
【0051】
適切な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖もしくは芳香族ヒドロカルビル基またはそれらの混合物から選択され、飽和または不飽和であってよいヒドロカルビル基を含有してよい。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素などのヘテロ原子から構成されてよい。ヒドロカルビル基は、約12から約25個の炭素原子の範囲であってよく、かつ飽和または不飽和であってよい。
【0052】
アミン系摩擦調整剤は、ポリアミンのアミドを包含し得る。そのような化合物は、直鎖で、飽和もしくは不飽和のいずれかであるヒドロカルビル基またはそれらの混合物を有してよく、かつ約12から約25個の炭素原子を含有してよい。
【0053】
適切な摩擦調整剤のさらなる例には、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが包含される。そのような化合物は、直鎖で、飽和もしくは不飽和のいずれかであるヒドロカルビル基またはそれらの混合物を有してよい。それらは、約12から約25個の炭素原子を含有してよい。例には、エトキシ化アミンおよびエトキシ化エーテルアミンが包含される。
【0054】
アミンおよびアミドは、そのままで、または三酸化二ホウ素、ホウ素ハロゲン化物、メタボレート、ホウ酸またはモノ−、ジ−もしくはトリアルキルホウ酸エステルなどのホウ素化合物との付加物または反応生成物の形態で使用することができる。他の適切な摩擦調整剤は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0055】
他の適切な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が包含され得る。そのような摩擦調整剤には、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルが包含され得る。他の有用な摩擦調整剤には一般に、親油炭化水素鎖に共有結合している極性末端基(例えばカルボキシルまたはヒドロキシ
ル)が包含される。カルボン酸および無水物とアルカノールとのエステルは、米国特許第4,702,850号に記載されている。有機無灰窒素不含の摩擦調整剤の他の例は一般に、オレイン酸のモノ−およびジエステルを含有し得るグリセロールオレエート(GMO)として知られている。他の適切な摩擦調整剤は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。無灰摩擦調整剤は、潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の全重量に対して約0.1から約0.4重量パーセントの範囲の量で存在してよい。
【0056】
適切な摩擦調整剤にはまた、1種または複数のモリブデン化合物が包含され得る。モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン、三核オルガノモリブデン化合物、モリブデン/アミン複合体およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0057】
加えて、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってよい。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のアルカリ金属モリブデン酸塩ならびに他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl
4、MoO
2Br
2、Mo
2O
3Cl
6、三酸化モリブデンまたは同様の酸性モリブデン化合物が包含される。別法では、組成物は、例えば米国特許第4,263,152号;同第4,285,822号;同第4,283,295号;同第4,272,387号;同第4,265,773号;同第4,261,843号;同第4,259,195号および同第4,259,194号;およびWO94/06897号に記載されているとおりの塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄複合体によってモリブデンを与えられていてよい。
【0058】
適切なモリブデンジチオカルバメートは、下式によって表され得る:
【化3】
[式中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立に、水素原子、C
1〜C
20アルキル基、C
6〜C
20シクロアルキル、アリール、アルキルアリールもしくはアラルキル基か、またはエステル、エーテル、アルコールもしくはカルボキシル基を含有するC
3〜C
20ヒドロカルビル基を表し;かつX
1、X
2、Y
1およびY
2はそれぞれ独立に、硫黄または酸素原子を表す。
【0059】
R
1、R
2、R
3およびR
4それぞれに適した基の例には、2−エチルヘキシル、ノニルフェニル、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、ラウリル、オレイル、リノレイル、シクロヘキシルおよびフェニルメチルが包含される。R
1からR
4はそれぞれ、C
6〜C
18アルキル基を有してよい。X
1およびX
2は同じであってよく、かつY
1およびY
2は同じであってよい。X
1およびX
2は両方とも、硫黄原子を含んでよく、かつY
1およびY
2は両方とも、酸素原子を含んでよい。
【0060】
モリブデンジチオカルバメートのさらなる例には、ジブチル−、ジアミル−ジ−(2−エチル−ヘキシル)−、ジラウリル−、ジオレイル−およびジシクロヘキシル−ジチオカ
ルバメートなどのC
6〜C
18ジアルキルもしくはジアリールジチオカルバメート塩またはアルキル−アリールジチオカルバメート塩が包含される。
【0061】
他の適切なオルガノ−モリブデン化合物群は、式Mo
3S
kL
nQ
zのものおよびそれら混合物などの三核モリブデン化合物である[式中、Lは独立に、化合物を油中に可溶性または分散性にするのに十分な数の炭素原子を有するオルガノ基を有するリガンドから選択され、nは、1から4であり、kは、4から7で変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィンおよびエーテルなどの中性電子供与化合物の群から選択され、かつzは、0から5までの範囲であり、非化学量論的値を包含する]。少なくとも全部で21個の炭素原子、例えば少なくとも25個、少なくとも30個または少なくとも35個の炭素原子が、全てのリガンドのオルガノ基内に存在してよい。追加の適切なモリブデン化合物は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0062】
モリブデン化合物は、完全配合エンジン潤滑剤中に、モリブデン約5ppmから800ppmを提供する量で存在してよい。さらなる例として、モリブデン化合物は、モリブデン約30から100ppmを提供する量で存在してよい。
【0063】
チタン化合物もまた、潤滑剤組成物中に摩擦調整剤として包含されていてよい。チタン化合物には、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,615,519号;第7,615,520号;第7,709,423号;第7,776,800号;第7,767,632号;第7,772,167号;第7,879,774号;第7,897,548号;第8,008,237号;第8,048,834号に一般的に記載されているとおりの、チタンイソプロポキシドなどのチタンアルコキシドおよび6から25個の炭素原子を含有するカルボン酸の反応生成物が包含される。
【0064】
泡止め剤
一部の実施形態では、泡止め剤は、組成物中で使用するのに適した他の成分を形成していてよい。泡止め剤は、シリコーン、ポリアクリレートなどから選択することができる。本明細書に記載されているエンジン潤滑剤配合物中での泡止め剤の量は、配合物の全重量に対して約0.001重量%から約0.1重量%までの範囲であってよい。さらなる例として、泡止め剤は、約0.004重量%から約0.008重量%の量で存在してよい。
【0065】
酸化防止剤成分
酸化防止剤または抗酸化剤は、使用中にベースストックが劣化する傾向を低減するものであり、その劣化は、金属表面上に沈積するスラッジおよびワニス様沈積物などの酸化生成物によって、かつ完成潤滑剤の粘度上昇によって実証され得る。そのような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、硫化ヒンダードフェノール、C
5〜C
12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化または非硫化アルキルフェノールのいずれかの金属塩、例えば硫化カルシウムノニルフェノール、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、ホスホ硫化または硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカーバメートならびに米国特許第4867890号明細書に記載されているとおりの油溶性銅化合物が包含される。
【0066】
使用することができる追加の抗酸化剤には、立体ヒンダードフェノールおよびそのエステル、ジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物および無灰ジアルキルジチオカルバメートが包含され得る。立体ヒンダードフェノールの非限定的例には、これらに限られないが、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ペンチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ヘキシ
ル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ヘプチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−オクチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ノニル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−デシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ウンデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、メチレン架橋立体ヒンダードフェノール(これらに限られないが、米国特許出願公開第2004/0266630号に記載されているとおりの4,4−メチレンビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、4,4−メチレンビス(2−tert−アミル−o−クレゾール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6 tert−ブチルフェノール、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)およびそれらの混合物を包含)が包含される。インテークバルブ沈積物に影響を及ぼすことなく、潤滑剤の抗酸化特性を改良する目的で、本明細書に記載されている芳香族化合物に加えて、上記のヒンダードフェノール化合物を使用することができる。言い換えると、前述の抗酸化剤を、SIDIエンジンのインテークバルブ上の沈積物の量を低減することなく抗酸化作用を提供する量で使用する。
【0067】
ジアリールアミン抗酸化剤には、これらに限られないが、下式を有するジアリールアミンが包含される:
【化4】
[式中、R’およびR”はそれぞれ独立に、6から30個の炭素原子を有する置換または非置換アリール基を表す]。アリール基のための置換基の例には、1から30個の炭素原子を有するアルキル基などの脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸もしくはエステル基またはニトロ基が包含される。
【0068】
アリール基は好ましくは、置換または非置換フェニルまたはナフチルであり、詳細にはその際、アリール基の一方または両方が、4から30個の炭素原子、好ましくは4から18個の炭素原子、最も好ましくは4から9個の炭素原子を有するアルキル少なくとも1個で置換されている。アリール基の一方または両方が、置換されていること、例えばモノ−アルキル化ジフェニルアミン、ジ−アルキル化ジフェニルアミンまたはモノ−およびジ−アルキル化ジフェニルアミンの混合物であることが好ましい。
【0069】
ジアリールアミンは、分子中に1個超の窒素原子を含有する構造を有するものであってよい。したがって、ジアリールアミンは、少なくとも2個の窒素原子を含有してよく、その際、例えば第二級窒素原子の他にも、1個の窒素原子上に2個のアリールを有する様々なジアミンの場合のように、少なくとも1個の窒素原子に2個のアリール基が結合している。
【0070】
使用することができるジアリールアミンの例には、これらに限られないが:ジフェニルアミン;様々なアルキル化ジフェニルアミン;3−ヒドロキシジフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;モノブチルジフェニル−アミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデシルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン;モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン;フェニル−β−ナフチルアミン;モノヘプチルジフェニルアミン;ジヘプチル−ジフェニルア
ミン;p−配向スチレン化ジフェニルアミン;混合ブチルオクチルジ−フェニルアミン;および混合オクチルスチリルジフェニルアミンが包含される。
【0071】
硫黄含有抗酸化剤には、これらに限られないが、それを生産する際に使用されるオレフィンの種類および抗酸化剤の最終硫黄含有率によって特徴付けられる硫化オレフィンが包含される。高分子量オレフィン、即ち、168から351g/moleの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用することができるオレフィンの例には、アルファ−オレフィン、異性化アルファ−オレフィン、分岐オレフィン、環式オレフィンおよびこれらの組合せが包含される。
【0072】
アルファ−オレフィンには、これらに限られないが、任意のC
4〜C
25アルファ−オレフィンが包含される。アルファ−オレフィンは、硫化反応の前か、または硫化反応の間に異性化することができる。内部二重結合および/または分岐を含有するアルファオレフィンの構造および/または配座異性体を使用することもできる。例えば、イソブチレンは、アルファ−オレフィン1−ブテンの分岐オレフィン対応体である。
【0073】
オレフィンの硫化反応で使用することができる硫黄供給源には:元素の硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウムおよび一緒に加えられているか、または硫化プロセスの異なる段階でのこれらの混合物が包含される。
【0074】
それが不飽和であることによって、不飽和油もまた硫化して、抗酸化剤として使用することができる。使用することができる油または脂肪の例には、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、ブドウ種子油、オリブ油、パーム油、ラッカセイ油、ヤシ油、ナタネ油、ベニバナ種子油、ゴマ種子油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、獣脂およびこれらの組み合わせが包含される。
【0075】
完成潤滑剤に供給される硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンまたは脂肪油の硫黄含有率および完成潤滑剤に供給されるべき所望の硫黄レベルに基づく。例えば、硫黄20重量%を含有する硫化脂肪油またはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで完成潤滑剤に加えられると、硫黄2000ppmを完成潤滑剤に供給することとなる。硫黄10重量%を含有する硫化脂肪油またはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで完成潤滑剤に加えられると、硫黄1000ppmを完成潤滑剤に供給することとなる。硫化オレフィンまたは硫化脂肪油が硫黄200ppmおよび2000ppmを完成潤滑剤に供給することが望ましい。
【0076】
一般的には、適切なエンジン潤滑剤は、次の表に列挙されている範囲の添加剤成分を包含し得る。
【表2】
【0077】
本明細書に記載されている潤滑剤組成物中に包含され得る追加的な場合による添加剤には、これらに限られないが、さび止め剤、乳化剤、抗乳化剤および油溶性チタン含有添加剤が包含される。本明細書に記載されている組成物を配合する際に使用される添加剤は基油中に、個別にか、または様々な下位組合せでブレンドすることができる。しかしながら、添加剤濃縮物(即ち、添加剤と、炭化水素溶剤などの希釈剤)を同時に使用して、全ての成分をブレンドすることが適切なことがある。添加剤濃縮物を使用することで、添加剤濃縮物の形態の場合で成分を組み合わせることによって得られる相互相容性の利点を得ることができる。他にも、濃縮物を使用することで、ブレンド時間を短縮することができ、かつブレンドエラーの可能性を減らすことができる。
【0078】
本開示は、SIDIエンジン中で自動車エンジン潤滑剤として使用するために特異的に配合された新規な潤滑油を提供する。本開示による潤滑剤組成物の利益および利点を実証するために、下記の非限定的実施例を示す。
【実施例】
【0079】
実施例
SIDI燃料管理を使用する2台の同一に装備された2008 Pontiac Solstice試験車両をこの評価では使用した。両方の車両は、ILSAC GF−4規定適合のSAE 5W−30エンジン油である慣用の完全配合エンジン油をそのクランクケースにおいて予め使用していた。エンジン効率の低下をもたらし、エンジンが故障する前に整備プロセスで機械的に除去しなければならないであろう顕著なインテークバルブ沈積物を、両方の車両が既に成長させていた。蓄積を放置すれば、沈積物は、バルブガイド内のインテークバルブの最終的な焼き付きをもたらし、エンジンを故障させるであろう。
【0080】
両方の車両のバルブおよびポートの試験を開始する前に、それらを分解し、清浄化し、かつ再組立てした。試験車両1では、その車両のメーカーが推奨するベースライン完全配合エンジン油を使用した。試験車両2では、ILSAC GF−4およびGF−5要件に適合するように配合され、かつ本明細書に記載されている芳香族化合物を含有するSAE
5W−30試験油を使用した。
【0081】
両方の車両をマイレージ累積ダイナモメーター(Mileage Accumulation Dynamometer)(MAD)で、燃焼チャンバー沈積物に対する燃料の
作用を試験するために使用されるインハウス「Quad 4」駆動サイクルに従って運転した。燃料はインテークバルブと相互作用しなかったので、燃料を試験変数とは考えなかった。インテークポート中、かつインテークバルブ周囲での限られた空気流れに帰せられるエンジン効率の低下をもたらすのに十分な沈積物を試験車両1が成長させた35,184マイルで、評価を行った。試験車両2は、80912マイルでもなお正常に運転された。
【0082】
図1は、慣用のエンジン油組成物で35,184マイル運転した後の試験車両1からの典型的なインテークバルブポートおよびバルブステムのうちの1つの写真である。スタックバルブでの先行する実験によって、この試験の作業者には、バルブの詰まりの切迫を示す十分な蓄積が存在していることが分かった。
図2は、バルブステム
図1上の沈積物のクローズアップ写真である。
【0083】
先行する実験から、
図1および2に示されている油性沈積物は、気化したエンジン油を含有する再循環クランクケースガスに由来したことが分かっている。SIDIエンジンは、ポート燃料噴射を使用しないので、ポート燃料噴射型エンジンでは生じるであろうような、バルブステムおよびポートから油性沈積物を洗い落とすための燃料が存在しない。
【0084】
図3は、車両を80912マイル走行させた後の車両2からの典型的なインテークバルブポートおよびバルブステムのうちの1つの写真である。
図4は、
図3のバルブステムのクローズアップ写真である。
【0085】
図3および4に示されているとおり、本明細書に記載されている芳香族化合物を使用した場合の車両からのポートおよびバルブの外観は著しく異なった。
図3および4によって示されている沈積物は、油性沈積物の証拠を示さなかった。
図1および2とは対照的に、
図3および4に示されている沈積物は、灰様外観を有する。その灰は、油組成物中で使用されている金属化合物、例えば、ジチオリン酸亜鉛摩擦防止添加剤およびスルホン酸カルシウム清浄剤に由来したと考えられる。油分は気化したので、灰成分が後に残った。灰様沈積物は本質的に脆く、バルブがエンジンのガイドおよびポート内で上下するにつれて、バルブステムおよびバルブから剥がれ落ちやすかった。本明細書に記載されている芳香族化合物添加剤は、沈積物中の油性成分が自然に揮発して、バルブステムおよびポート上に灰残渣のみを残す時間を与えるほどの十分に長期間にわたって、油性沈積物を安定化したと考えられる。対照的に、
図1および2に示されている油性沈積物は、より大きく硬い沈積物を形成し、これは、経験から教示されているとおり、バルブの焼き付きをもたらす。
【0086】
この明細書を通じて多くの箇所で、いくつかの米国特許が参照されている。そのような列挙された文献は全て、本明細書中に全て記載されているかのように、本開示中にその全体が明らかに組み込まれる。
【0087】
本開示の他の実施形態は、本明細書および本明細書に開示されている実施形態の実施を検討することによって、当業者には明らかであろう。本明細書および特許請求の範囲を通じて使用されているとおり、「a」および/または「an」は、1つまたは複数を指し得る。別段に示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、パーセント、比、反応条件などを表す数値は全て、「約」という用語によっていずれの場合にも修飾されていると理解されたい。したがって、反対のことが示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載されている数値パラメーターは、本発明によって得ようとしている所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは少なくとも、報告されている有効数字の数を考慮し、かつ通常の四捨五入の技術を適用することによって解釈されるべきである。本発明の幅広い範囲を記載してい
る数値的範囲およびパラメーターが近似値であるにも関わらず、具体的な実施例に記載されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、その個々の試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。明細書および実施例は単なる例示としてみなされるべきであることが意図されており、本発明の真の範囲および意図は、下記の特許請求の範囲において示されている。
【0088】
前述の実施形態は、実施においてかなり変形させることができる。したがって、実施形態は、本明細書中上記で記載された具体的な例に限定することを意図したものではない。むしろ、前述の実施形態は、法的に利用可能なその同等物を含めて、添付の特許請求の範囲の意図および範囲内のものである。
【0089】
特許権者は、どの開示されている実施形態についても、それを一般的なものとすることは意図してなく、かつどの開示されている変更形態または改変形態についても、それを、特許請求の範囲に文字通り該当し得ない範囲にまで捧げることは意図してなく、それらは、均等論の下で本発明の一部であるとみなされる。
【0090】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
【0091】
1.スパーク点火式直噴(SIDI)エンジン中のインテークバルブ沈積物を低減するために有効な潤滑剤添加剤であって、標準大気条件下で約190℃から約270℃までの沸点を有する芳香族化合物を含み、その際、前記芳香族化合物は、添加剤を含有する潤滑剤組成物の全重量に対して約0.1から約5.0重量パーセントまでの範囲の量で使用されると、SIDIエンジン中のインテークバルブ沈積物を低減するために有効である潤滑剤添加剤。
【0092】
2.前記芳香族化合物が、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールおよび前述のうちの2種以上の混合物からなる群から選択されている、上記1に記載の潤滑剤添加剤。
【0093】
3.前記芳香族化合物が2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを含む、上記1に記載の潤滑剤添加剤。
【0094】
4.上記1に記載の潤滑剤添加剤を約0.5から約2.0重量パーセント含む、潤滑剤組成物。
【0095】
5.上記1に記載の潤滑剤添加剤を含む、SIDIエンジンのクランクケースに添加するための潤滑剤ブースター添加剤。
【0096】
6.スパーク点火式直噴(SIDI)エンジン中のインテークバルブ沈積物を低減するための方法であって、前記エンジンのクランクケースに、インテークバルブ沈積物を低減するのに十分な量で、標準大気条件下で約190℃から約270℃までの沸点を有する芳香族化合物を含む潤滑剤添加剤を与えるステップと、前記芳香族化合物の少なくとも一部が気化して、前記芳香族化合物が前記エンジンのインテークバルブと接触するのに十分な期間、前記エンジンを動作させるステップとを含む方法。
【0097】
7.前記芳香族化合物が、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、o−クレゾール、
m−クレゾール、p−クレゾールおよび前述のうちの2種以上の混合物からなる群から選択される、上記1に記載の方法。
【0098】
8.前記芳香族化合物が2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを含む、上記7に記載の方法。
【0099】
9.前記潤滑剤組成物中の芳香族化合物の量が、潤滑剤組成物の全重量に対して約0.1から約5.0重量パーセントまでの範囲である、上記6に記載の方法。
【0100】
10.前記潤滑剤組成物中の芳香族化合物の量が、潤滑剤組成物の全重量に対して約0.5から約2.0重量パーセントまでの範囲である、上記6に記載の方法。
【0101】
11.スパーク点火式直噴(SIDI)エンジンのためのクランクケース用潤滑剤組成物であって、前記SIDIエンジン中のインテークバルブ沈積物を低減するの十分な量で、標準大気条件下で約190℃から約270℃までの沸点を有する芳香族化合物を含むクランクケース用潤滑剤組成物。
【0102】
12.前記芳香族化合物が、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールおよび前述のうちの2種以上の混合物からなる群から選択されている、上記11に記載のクランクケース用潤滑剤組成物。
【0103】
13.前記潤滑剤組成物中の芳香族化合物の量が、潤滑剤組成物の全重量に対して約0.1から約5.0重量パーセントまでの範囲である、上記11に記載のクランクケース用潤滑剤組成物。
【0104】
14.前記潤滑剤組成物中の芳香族化合物の量が、潤滑剤組成物の全重量に対して約0.5から約2.0重量パーセントまでの範囲である、上記11に記載のクランクケース用潤滑剤組成物。
【0105】
15.清浄剤、分散剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、さび止め剤、粘度指数改良剤、乳化剤、抗乳化剤、腐食防止剤、摩耗防止剤、金属ジヒドロカルビルジチオリン酸塩、無灰アミンリン酸塩、消泡剤および流動点降下剤から選択される群のメンバーのうちの1種または複数をさらに含む、上記11に記載のクランクケース用潤滑剤組成物。
【0106】
16.油溶性チタン含有添加剤をさらに含む、上記11に記載のクランクケース用潤滑剤組成物。