(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ケーブルの導電層には、十分な耐加熱変形特性を有することが求められる。これは以下の理由によるものである。すなわち、ケーブルの導電層の耐加熱変形特性が不十分であると、ケーブルに含まれる導電層が荷重を受けた際に潰れ、このことがケーブル特性に悪影響を与えるおそれがあるためである。特にケーブルが高温の地域に敷設される場合や、電気自動車の急速充電器に接続されるリードケーブルである場合には、ケーブルの導電層が十分な耐加熱変形特性を有することが望ましい。
【0006】
また、ケーブルの導電層には、十分な耐衝撃性を有することが求められる。これは以下の理由によるものである。すなわち、ケーブルの導電層の耐衝撃性が不十分であると、ケーブルが荷重や衝撃を受けた際、ケーブルに含まれる導電層に割れやクラックが生じ、このことがケーブル特性に悪影響を与えるおそれがあるためである。特にケーブルが電気自動車の急速充電器に接続されるリードケーブルやキャブタイヤケーブルなどの可動ケーブルである場合には、ケーブルが繰り返し屈曲されたり、捻回されたりするため、荷重や衝撃を受けた際に生じた割れやクラックを起点に導電層が裂け、電気特性が劣化することがある。このため、上記の通り、ケーブルの導電層には十分な耐衝撃性を有することが求められる。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の半導電層用樹脂組成物は、十分な耐加熱変形特性と十分な耐衝撃性とを両立するものとは言えず、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐加熱変形特性を確保しながら、優れた耐衝撃性をも確保することができる導電性熱可塑性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため、熱可塑性樹脂と炭素材料とを含む導電性熱可塑性樹脂組成物について、熱可塑性樹脂の種類及び含有率並びに炭素材料の比表面積及び含有率に着目して鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者は、導電性熱可塑性樹脂組成物が、ポリ塩化ビニル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体とを含み、ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が特定の範囲であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特定の含有率で酢酸ビニル単位を含み、導電性熱可塑性樹脂組成物中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が特定の範囲であり、炭素材料が特定の範囲の比表面積を有し、炭素材料の比表面積と導電性熱可塑性樹脂組成物中の炭素材料の含有率に基づいて求められるパラメータが特定の範囲の値である場合に、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、炭素材料とを含む導電性熱可塑性樹脂組成物であって、
前記ポリ塩化ビニル樹脂と前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の合計100質量%中における前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が35質量%以上100質量%未満であり、前記炭素材料の比表面積が600m
2/g以上であり、且つ、前記導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積が120m
2/g以上であり、前記ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が900〜5000であり、前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が11〜41質量%であり、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位の含有率が20〜
39質量%である導電性熱可塑性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐加熱変形特性を確保しながら、優れた耐衝撃性をも確保することができる。
【0012】
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物が優れた耐加熱変形特性を確保しながら、優れた耐衝撃性をも確保することができる理由について、本発明者は以下のように推察している。
【0013】
すなわち、炭素材料粒子は凝集して凝集構造(ストラクチャー)を形成している。そして、本発明において、炭素材料の比表面積が大きいのは、このストラクチャーが大きい、即ち発達しているからである。そして、このように、導電性熱可塑性樹脂組成物に含まれる炭素材料が十分に大きいストラクチャーを有するため、導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積が十分に大きくなる場合、導電性熱可塑性樹脂組成物中でエチレン酢酸ビニル共重合体やポリ塩化ビニル樹脂は炭素材料により擬似的に架橋された状態となる。この作用により、導電性熱可塑性樹脂組成物は優れた耐加熱変形特性を確保することができる。一方、炭素材料による擬似架橋状態は固く脆いため衝撃に弱いが、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性に優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体を多く含む。したがって、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は優れた耐衝撃性を確保できるのではないか、と本発明者は推察している。
【0016】
また、上記導電性熱可塑性樹脂組成物は、さらに可塑剤を含むことが好ましい。
【0017】
この場合、上記導電性熱可塑性樹脂組成物は、優れた低温脆化特性を確保することができる。
【0018】
また、上記導電性熱可塑性樹脂組成物は、可塑剤を含み、且つ前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の前記可塑剤の含有率が34〜38質量%であることが好ましい。
【0019】
可塑剤の含有率が34質量%〜38質量%である場合、含有率が上記範囲を外れる場合に比べて、上記導電性熱可塑性樹脂組成物はより優れた低温脆化特性を確保することができる。
【0020】
また、本発明は、少なくとも1本の導線と、前記導線を包囲する導電層と、を備え、前記導電層が上記の導電性熱可塑性樹脂組成物からなるケーブルである。
【0021】
本発明のケーブルは、導電層が上記の導電性熱可塑性樹脂組成物からなるため、優れた耐加熱変形特性を確保しながら、優れた耐衝撃性をも確保することができる。
【0022】
なお、本発明において、炭素材料の比表面積はBET法により測定されるものである。
【0023】
また、本発明において、導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積とは、以下の式によって定義されるものである。
[導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積(m
2/g)]
=[炭素材料の比表面積(m
2/g)]×[導電性熱可塑性樹脂組成物中の炭素材料の含有率(質量%)]×(1/100)
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、優れた耐加熱変形特性を確保しながら、優れた耐衝撃性をも確保することができる導電性熱可塑性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
【0027】
[第1実施形態]
まず本発明のケーブルの第1実施形態について
図1を用いて説明する。
図1は本発明のケーブルの第1実施形態としての電力ケーブルの断面図である。
【0028】
図1に示すように、ケーブル100は、導線1と、導線1を包囲する内部半導電層2と、内部半導電層2を包囲する絶縁層3と、絶縁層3を包囲する外部半導電層(導電層)4と、外部半導電層4を包囲するシース5とを備えている。
【0029】
ここで、内部半導電層2及び外部半導電層4は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、この導電性熱可塑性樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、炭素材料とを含む。ここで、炭素材料の比表面積が600m
2/g以上であり、且つ、導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積が120m
2/g以上である。また、ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が900〜5000であり、導電性熱可塑性樹脂組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が11〜41質量%であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位の含有率が20〜45質量%である。
【0030】
内部半導電層2及び外部半導電層4は上記導電性熱可塑性樹脂組成物からなるため、優れた耐加熱変形特性を確保しながら、優れた耐衝撃性をも確保することができる。このため、ケーブル100が荷重を受けた際に、内部半導電層2及び外部半導電層4が潰れにくくなり、ケーブル100の特性に悪影響が生じることを十分に抑制できる。また、ケーブル100が衝撃を受けた際に、内部半導電層2及び/又は外部半導電層4に割れが生じ、そこを起点に内部半導電層2及び/又は外部半導電層4が裂けて電気特性が劣化する現象を防止できる。
【0031】
次に、上述したケーブル100の製造方法について説明する。
【0032】
<導線>
まず導線1を準備する。導線1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、導線1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0033】
<内部半導電層及び外部半導電層>
次に、内部半導電層2及び外部半導電層4を形成するための導電性熱可塑性樹脂組成物を準備する。この導電性熱可塑性樹脂組成物は、上述したように、ポリ塩化ビニル樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、炭素材料とを含む。
【0034】
(ポリ塩化ビニル樹脂)
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は、900〜5000である。ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が900未満である場合、導電性熱可塑性樹脂組成物は優れた耐衝撃性を確保することができない。また、平均重合度が5000を超える場合、平均重合度が5000以下である場合に比べ、ポリ塩化ビニル樹脂の溶融粘度が高くなり、溶融混練が困難になる。したがってこの場合、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造が困難なものになる。
【0035】
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は1000〜4000であることが好ましく、1100〜3000であることがより好ましい。
【0036】
なお、「平均重合度」とは、JIS K6720−2に準拠して測定したポリ塩化ビニル樹脂の比粘度をJIS K6720−1に準拠して推定換算した平均重合度を言う。
【0037】
また、導電性熱可塑性樹脂組成物に平均重合度の異なる2種以上のポリ塩化ビニル樹脂が含まれる場合、ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は、それぞれのポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度の加重平均により算出される。
【0038】
(エチレン−酢酸ビニル共重合体)
上述したように、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位の含有率は20〜45質量%である。酢酸ビニル単位の含有率が20質量%未満である場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリ塩化ビニル樹脂との相溶性が悪くなり、その結果、導電性熱可塑性樹脂組成物は十分な耐衝撃性を確保することができない。一方、酢酸ビニル単位の含有率が45質量%より大きい場合、導電性熱可塑性樹脂組成物は十分な耐衝撃性を確保することができない。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の粘着性が高く、取り扱いが面倒になる。さらに、導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットがブロッキングする問題が生じる。さらにまた、酢酸ビニル単位の含有率が45質量%より大きい場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体の価格が高くなるため、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造コストが高くなる。酢酸ビニル単位の含有率は24〜42質量%であることが好ましく、27〜39質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
また、上述したように、上記導電性熱可塑性樹脂組成物中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率は11〜41質量%である。エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が11質量%未満である場合、導電性熱可塑性樹脂組成物は十分な耐衝撃性を確保することができない。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が41質量%より大きい場合、導電性熱可塑性樹脂組成物は十分な耐加熱変形特性を確保することができない。
【0040】
上記導電性熱可塑性樹脂組成物中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率は20〜40質量%であることが好ましい。
【0041】
上記導電性熱可塑性樹脂組成物においては、ポリ塩化ビニル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体の合計100質量%中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が35質量%以上100質量%未満であることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が35質量%以上である場合、含有率が35質量%未満である場合に比べて、導電性熱可塑性樹脂組成物は優れた耐衝撃性を確保することができる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率が100質量%未満である場合、含有率が100質量%である場合に比べて、導電性熱可塑性樹脂組成物が可塑剤を安定に樹脂内に保持でき、可塑剤の飛散や外部への移行を防止できる。またこの場合、上記導電性熱可塑性樹脂組成物は、より優れた耐加熱変形特性を確保できる。ポリ塩化ビニル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体の合計100質量%中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率は40〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
上記導電性熱可塑性樹脂組成物には、ポリ塩化ビニル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体以外の熱可塑性樹脂がさらに含まれていてもよい。ポリ塩化ビニル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体以外の熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらは1種類が単独で又は2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。
【0043】
(炭素材料)
上記導電性熱可塑性樹脂組成物に含まれる炭素材料は上記導電性熱可塑性樹脂組成物に十分な導電性、十分な耐加熱変形特性および十分な耐衝撃性を付与するものであればよく、特に限定されるものではない。炭素材料としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。これらは1種類単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中ではカーボンブラックが特に好ましい。
【0044】
上述したように、炭素材料の比表面積は600m
2/g以上である。炭素材料の比表面積が600m
2/g未満である場合、上記導電性熱可塑性樹脂組成物は十分な耐加熱変形特性と十分な耐衝撃性とを両立することが困難になる。
【0045】
炭素材料の比表面積は700m
2/g以上であることが好ましく、1000m
2/g以上であることがより好ましい。
【0046】
但し、炭素材料の比表面積は1350m
2/g以下であることが好ましい。この場合、比表面積が1350m
2/gを超える場合に比べて、導電性熱可塑性樹脂組成物の加工性がより向上する。
【0047】
また、上述したように、導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積は120m
2/g以上である。導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積が120m
2/g未満である場合、上記導電性熱可塑性樹脂組成物は十分な耐加熱変形特性を確保することができない
【0048】
導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積は130m
2/g以上であることが好ましく、140m
2/g以上であることがより好ましい。
【0049】
但し、導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積は265m
2/g以下であることが好ましい。この場合、導電性熱可塑性樹脂組成物単位質量当たりの比表面積が265m
2/gを超える場合に比べて、導電性熱可塑性樹脂組成物の加工性がより向上する。
【0050】
(可塑剤)
導電性熱可塑性樹脂組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。この場合、導電性熱可塑性樹脂組成物はより優れた低温脆化特性を確保することができる。可塑剤としては、例えばフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)などのフタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、低分子ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ系可塑剤、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステルなどが挙げられる。これらは1種類が単独で含まれていても又は2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。
【0051】
導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤の含有率は34〜38質量%であることが好ましい。可塑剤の含有率が34〜38質量%である場合、含有率が上記範囲を外れる場合に比べて、上記導電性熱可塑性樹脂組成物はより優れた低温脆化特性を確保することができる。
【0052】
導電性熱可塑性樹脂組成物は、安定剤、難燃剤、充填材、表面処理剤、ドリップ防止剤、加工助剤、活剤、老化防止剤、架橋剤、架橋助剤、スコーチ防止剤などを必要に応じてさらに含んでもよい。
【0053】
導電性熱可塑性樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、炭素材料ならびに必要に応じて各種熱可塑性樹脂および各種添加剤を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。
【0054】
(絶縁層及びシース)
次に、絶縁層3及びシース5を形成するための絶縁材料を用意する。この絶縁材料は絶縁性を示すものであればよい。このような絶縁材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ブタジエン−ジエンゴム(EPDM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリエチレン樹脂(CPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート(EEA)、クロロプレンゴム(CR)、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)及び天然ゴム(NR)などを用いることができる。これらは1種類単独で又は2種以上を組み合せて用いることが可能である。
【0055】
そして、例えば共押出成形法により、導線1が、内部半導電層2を形成するための導電性熱可塑性樹脂組成物、絶縁層3を形成するための絶縁材料、外部半導電層4を形成するための導電性熱可塑性樹脂組成物、及びシース5を形成するための絶縁材料で順次被覆された状態とする。
【0056】
以上のようにしてケーブル100が得られる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明のケーブルの第2実施形態について
図2を用いて説明する。
図2は本発明のケーブルの第2実施形態としての電気自動車の急速充電器に接続されるケーブルの断面図である。
【0058】
図2に示すように、ケーブル200は、集合ケーブル210と、集合ケーブル210を包囲するように設けられる導電層220と、導電層220を包囲するように設けられるシース230とを備えている。集合ケーブル210は、2本のパワー線240と、2組の信号線250、260とを備えている。パワー線240は、導線1と導線1を包囲する絶縁層241とで構成され、信号線250は、導線1及び導線1を包囲する絶縁層251で構成される2本の絶縁電線252と、2本の絶縁電線252を包囲する介材253とを有している。信号線260は、7本の絶縁電線252と、7本の絶縁電線252を包囲する介材263とで構成されている。そして、2本のパワー線240及び2組の信号線250,260は撚り合わされてメッシュテープ(図示せず)などで巻かれている。ここで、絶縁層241及び絶縁層251の材料は、例えば上記絶縁層3と同じ材料で構成される。また介材253,263は例えばジュートなどからなる。
【0059】
導電層220の材料は、上記導電性熱可塑性樹脂組成物からなる。またシース230の材料は例えば上記シース5と同じ材料で構成される。
【0060】
上記ケーブル200においては、導電層220が上記導電性熱可塑性樹脂組成物からなるため、上記導電層220は、優れた耐加熱変形特性を確保できることに加えて、優れた耐衝撃性をも確保することができる。このため、ケーブル200によれば、導電層220が荷重を受けても潰れにくくなり、電気特性の低下を十分に抑制することができる。また、ケーブル200が衝撃を受けた際に、導電層220に割れが生じ、そこを起点に導電層220が裂けて電気特性が劣化する現象を防止できる。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態では、ケーブル100の内部半導電層2及び外部半導電層4が本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物で構成されているが、内部半導電層2及び外部半導電層4のうち一方は、本発明の要件を満たさない一般的な導電性熱可塑性樹脂組成物で構成され、もう一方のみが本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物で構成されていてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0063】
<導電性熱可塑性樹脂組成物およびケーブルの作製>
導電性熱可塑性樹脂組成物の原料としては、以下のものを使用した。
(1)ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)
PVC−1:平均重合度1000(大洋塩ビ社製、商品名「TH−1000」)
PVC−2:平均重合度1350(大洋塩ビ社製、商品名「TH−1400」)
PVC−3:平均重合度2000(大洋塩ビ社製、商品名「TH−2000」)
PVC−4:平均重合度2800(大洋塩ビ社製、商品名「TH−2800」)
PVC−5:平均重合度4500(大洋塩ビ社製、商品名「TU−400」)
PVC−6:平均重合度800(大洋塩ビ社製、商品名「TH−800」)
【0064】
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
EVA−1:酢酸ビニル単位含有率19質量%(三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックスEV460R」)
EVA−2:酢酸ビニル単位含有率33質量%(三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックスEV180」)
EVA−3:酢酸ビニル単位含有率25質量%(三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックスEV360」)
EVA−4:酢酸ビニル単位含有率28質量%(三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックスEV270」)
EVA−5:酢酸ビニル単位含有率41質量%(三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックスEV40LX」)
EVA−6:酢酸ビニル単位含有率46質量%(三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックスEV45LX」)
(B−2)エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)
アクリル酸エチル単位含有率20質量%(日本ポリエチレン社製、商品名「レクスパールA4200」
【0065】
(3)炭素材料
炭素材料−1:アセチレンブラック、比表面積68m
2/g、吸油量(DBP吸油量)125mL/100g(電気化学工業社製、商品名「デンカブラック」)
炭素材料−2:カーボンブラック、比表面積254m
2/g、吸油量(DBP吸油量)174mL/100g(キャボット社製、商品名「バルカンXC−72」)
炭素材料−3:ケッチェンブラック、比表面積800m
2/g、吸油量(DBP吸油量)360mL/100g(ライオン社製、商品名「EC300J」)
炭素材料−4:ケッチェンブラック、比表面積1300m
2/g、吸油量(DBP吸油量)495mL/100g(ライオン社製、商品名「EC600JD」)
【0066】
(4)充填剤
炭酸カルシウム:比表面積1.4m
2/g、平均粒子径1.7μm、吸油量(DBP吸油量)30ml/100g(日東粉化社製、商品名「NCC−P」)
【0067】
(5)可塑剤
可塑剤−1:フタル酸ジイソノニル(ジェイ・プラス社製、商品名「DINP」)
可塑剤−2:フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(ジェイ・プラス社製、商品名「DOP」)
【0068】
(6)安定剤
Ca/Zn系安定剤(水澤化学工業社製、商品名「スタビネックスNL221−5」、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイトなど、多種を配合したもの)
【0069】
(実施例1〜320及び比較例1〜72)
上記の熱可塑性樹脂、炭素材料、充填剤、可塑剤及び安定剤を表1〜34に示す割合で配合し、バンバリーミキサを用いて180℃で15分間混練することにより、実施例1〜320及び比較例1〜73の導電性熱可塑性樹脂組成物を得た。表1〜34において、熱可塑性樹脂、炭素材料、充填剤、可塑剤及び安定剤の配合量の単位は質量部である。また、表1〜34において「EVA含有率(質量%)」とは、ポリ塩化ビニル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体の合計100質量%中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率(質量%)のことを示す。
【0070】
一方、パワー線2本及び通信線2組を撚り合わせてメッシュテープで巻いてなる集合ケーブルを用意した。ここで、2本のパワー線としてはそれぞれ、外径8.89mm、絶縁厚が1.71mmのものを用い、2組の通信線としては、外径1.1mm、絶縁厚0.57mmの線を2本撚り合わせてジュートで包囲してなる通信線1組と、外径1.1mm、絶縁厚0.57mmの線7本のうち1,6の線を撚り合わせてジュートで包囲してなる通信線1組とを用いた。
【0071】
そして、得られた導電性熱可塑性樹脂組成物を単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機からチューブ状の押出物を押し出し、上記集合ケーブル上に、厚さ1.09mmとなるように導電層を形成した。その後、上記単軸押出機を用いて、厚さ2.95mmとなるようにシースを被覆した。こうして急速充電器用リードケーブルを得た。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
【表12】
【0085】
【表13】
【0086】
【表14】
【0087】
【表15】
【0088】
【表16】
【0089】
【表17】
【0090】
【表18】
【0091】
【表19】
【0092】
【表20】
【0093】
【表21】
【0094】
【表22】
【0095】
【表23】
【0096】
【表24】
【0097】
【表25】
【0098】
【表26】
【0099】
【表27】
【0100】
【表28】
【0101】
【表29】
【0102】
【表30】
【0103】
【表31】
【0104】
【表32】
【0105】
【表33】
【0106】
【表34】
【0107】
<特性評価>
(耐加熱変形特性)
上記実施例1〜320及び比較例1〜72で得られたリードケーブルから導電層を切り出して、35mm×35mm×2mmの試験片を作製し、JIS K 6723 6.5に記載の加熱変形試験(120℃、9.8N荷重、60分)を行った。そして試験前の試験片の厚さ(試験前厚さ)と試験後の試験片の厚さ(試験後厚さ)から、下記式により加熱変形率(%)を算出した。
加熱変形率(%)
=[(試験前厚さ)−(試験後厚さ)]/(試験前厚さ)×100(%)
結果を表1〜34に示す。耐加熱変形特性については、加熱変形率が1%以下の場合を合格とし、加熱変形率が1%を超える場合を不合格とした。
【0108】
(耐衝撃性)
上記実施例1〜320及び比較例1〜72で得られたリードケーブルから導電層を切り出して、80mm×10mm×4mmの試験片を作製し、JIS K 7111−1に準拠したシャルピー衝撃試験を行い、衝撃強さを測定した。この衝撃強さを耐衝撃性の指標とした。結果を表1〜34に示す。耐衝撃性については、衝撃強さが15kJ/m
2を超える場合を合格とし、衝撃強さが15kJ/m
2以下である場合を不合格とした。
【0109】
(導電性)
上記実施例1〜320及び比較例1〜72で得られたリードケーブルから導電層を切り出して、100mm×100mm×1mmの試験片を作製した。そして、これらの試験片について、体積抵抗率ρ(Ω・cm)を測定した。なお、体積抵抗率の測定は、体積抵抗率が1×10
9Ω・cm以下である場合は、ホイートストンブリッジにより行い、体積抵抗率が1×10
9Ω・cmより大きい場合は、超絶縁計(R−503、川口電機製作所社製、500V、1min値)により行った。体積抵抗率の測定は30℃で行った。結果を表1〜34に示す。なお、表1〜34において、体積抵抗率は、ρの常用対数logρで表示した。
【0110】
(低温脆化特性)
上記実施例1〜320及び比較例1〜72で得られたリードケーブルから導電層を切り出して、38mm×6mm×2mmの試験片を作製し、JIS K 7216に準拠した脆化試験を行い、脆化温度(℃)を測定した。結果を表1〜34に示す。なお、表1〜34において、脆化温度が−60℃未満のものは、「−60↓」と記載した。
【0111】
表1〜34に示すように、実施例1〜320の導電性熱可塑性樹脂組成物は、耐加熱変形特性及び耐衝撃性の点で合格基準に達していた。一方、比較例1〜72の導電性熱可塑性樹脂組成物は耐加熱変形特性または耐衝撃性の点で合格基準に達していなかった。
【0112】
以上より、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物によれば、優れた耐加熱変形特性を確保しながら、優れた耐衝撃性をも確保することができることが確認された。