(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778215
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/28 20060101AFI20150827BHJP
C22C 33/04 20060101ALI20150827BHJP
C22B 5/10 20060101ALI20150827BHJP
C22B 34/32 20060101ALI20150827BHJP
C22B 23/02 20060101ALI20150827BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20150827BHJP
C22B 1/16 20060101ALI20150827BHJP
C22B 3/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
C21C5/28 E
C22C33/04 H
C22C33/04 B
C22B5/10
C22B34/32
C22B23/02
C22B23/00 101
C22B1/16 C
C22B23/00 102
C22B3/00
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-130098(P2013-130098)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-9403(P2014-9403A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2013年7月18日
(31)【優先権主張番号】101123242
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502455463
【氏名又は名称】▲いえ▼聯鋼鐵股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】徐 文鍵
(72)【発明者】
【氏名】黄 培特
(72)【発明者】
【氏名】▲うー▼ 一誠
(72)【発明者】
【氏名】楊 程棟
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−500965(JP,A)
【文献】
特開平07−188831(JP,A)
【文献】
特開昭52−007812(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0180945(US,A1)
【文献】
特開2008−007801(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/014685(WO,A1)
【文献】
田中克芳,フェロニッケル製造法における最近の状況,鉄と鋼,日本,日本鉄鋼協会,1985年 2月 1日,Vol. 71, (1985), No. 2,147-156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/28
C22B 1/16
C22B 3/00
C22B 5/10
C22B 23/00
C22B 23/02
C22B 34/32
C22C 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法であって、
a)前記ニッケルラテライト鉱のニッケル含有量が、前記ニッケルラテライト鉱全体の重量に対して1.5wt%未満であるかどうかを判断するステップと、
b)前記ステップa)において、前記ニッケルラテライト鉱の前記ニッケル含有量が、1.5wt%以上であると判断された場合に実施される、前記ニッケルラテライト鉱を、溶融フェロニッケルに処理するステップであって、
前記溶融フェロニッケルは、前記ニッケルラテライト鉱を破砕し、ふるい分けし、混合するステップ、その後、前記ニッケルラテライト鉱を回転キルン内で加熱し、自由水および結晶水を除去するとともに、前記回転キルンに還元剤を導入し、カルシン(焼成物)を得るステップ、ならびに前記カルシン(焼成物)を電気炉内で溶解するステップによって得られるステップ、または、
b’)前記ステップa)において、前記ニッケルラテライト鉱の前記ニッケル含有量が、1.5wt%未満であると判断された場合に実施される、前記ニッケルラテライト鉱を、純ニッケルに処理するステップであって、
前記純ニッケルは、前記ニッケルラテライト鉱を破砕し、該ニッケルラテライト鉱を水でパルプ状にし、パルプ状材料を形成するステップ、その後、高圧雰囲気下で、前記パルプ状材料を硫酸溶液とともに撹拌し、混合物を形成するステップ、前記混合物から、ニッケルおよびコバルトを含むろ過液をろ過処理し、溶媒抽出法により、前記ろ過液を、ニッケルを含む抽出溶液と、コバルトを含む反抽出溶液とに分離するステップ、ならびに前記抽出溶液および前記反抽出溶液を電解処理し、それぞれ、純ニッケルおよび純コバルトを得るステップによって得られるステップと、
c)前記クロマイト鉱を焼結装置内で焼結させ、焼結化クロマイト鉱を得るステップ、およびその後、電気炉内で前記焼結化クロマイト鉱をコークス粒子とともに溶解し、溶融フェロクロムを得るステップと、
d)前記溶融フェロニッケルまたは純ニッケルを転炉に移し、前記溶融フェロクロムを前記転炉にホットチャージ(hot charge)装入し、溶融ステンレス鋼を得るステップと、
e)前記溶融ステンレス鋼を連続鋳造機にチャージし、ステンレス鋼スラブを得るステップと、
を有し、
さらに、前記ニッケルラテライト鉱を乾燥キルン内で乾燥し、前記ステップb)の前に、前記自由水の一部を除去するステップを有し、
コークス粉末とともに前記クロマイト鉱を、ボールプレス機でプレス処理して、クロマイトペレットを形成するステップと、前記クロマイトペレットを乾燥し、前記ステップc)の前に、水分を除去するステップを有し、
前記ステップb)において、前記回転キルンの加熱温度は、800℃から950℃の範囲であり、前記溶融フェロニッケルのタッピング温度は、1400℃から1500℃の範囲であり、
前記ステップb’)において、前記ニッケルラテライト鉱の前記硫酸溶液に対する固体−液体比は、約1:4であり、前記パルプ状材料は、前記硫酸溶液とともに、4から5MPaの範囲の圧力下、250℃から300℃の範囲の温度で撹拌され、
前記ステップc)において、前記焼結化クロマイト鉱は、30mm未満の粒子サイズを有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、オーステナイトステンレス鋼を製造する方法に関し、特に、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーステナイトステンレス鋼を製造する従来の方法では、主要原材料として、スクラップおよび合金鉄が使用され、これらが電気炉内で溶融金属に溶解される。次に、溶融金属は、転炉(converter)に移され、フェロニッケル(ニッケル鉄)および/またはフェロクロム(クロム鉄)が、製造される特定の鋼(例えば、200または300系のステンレス鋼)によって定められる割合で、転炉に添加され、これによりオーステナイトステンレス鋼が得られる。ニッケルのような貴金属のコストは、ステンレス鋼の全コストの約40〜50%を占めるため、ステンレス鋼の製造者の利益は、貴金属の価格の乱効果により、容易に左右され、あるいは損失に至り得る。
【0003】
中国特許出願公開第CN102212691号およびCN101701312号に記載されているように、ステンレス鋼を製造するコストを抑制するため、原材料としてのニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱を、電気炉または溶鉱炉内で直接溶解させることにより、ステンレス鋼マスター合金を製造するプロセスが開発されている。しかしながら、前述の開示されたプロセスでは、溶解処理の前に、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱に対して、自由水および結晶水を除去する前処理がなされず、溶解処理の間、水分除去のため比較的多量のエネルギーが消費される。また、前述のプロセスには、溶融金属中のニッケル量の制御の困難性、比較的多量の不純物、および回収率の低さなど、他の問題も存在する。さらに、通常、ニッケルラテライト鉱に含有されているコバルトのようなレアメタルは、前述のような従来技術のプロセスでは、抽出し回収することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第CN102212691号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第CN101701312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する、コスト効果のある方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様では、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法が提供される。当該方法は、
a)前記ニッケルラテライト鉱を破砕し、ふるい分けし、混合するステップ、その後、前記ニッケルラテライト鉱を回転キルン内で加熱し、自由水および結晶水を除去するとともに、前記回転キルンに還元剤を導入し、カルシン(焼成物)を得るステップ、ならびに前記カルシン(焼成物)を電気炉内で溶解し、溶融フェロニッケルを得るステップと、
b)前記クロマイト鉱を焼結装置内で焼結させ、焼結化クロマイト鉱を得るステップ、およびその後、別の電気炉内で、前記焼結化クロマイト鉱を、コークス粒子とともに溶解し、溶融フェロクロムを得るステップと、
c)前記溶融フェロニッケルと溶融フェロクロムを転炉(converter)にホットチャージ(hot charge)装入し、溶融ステンレス鋼を得るステップと、
d)前記溶融ステンレス鋼を連続鋳造機にチャージし、ステンレス鋼スラブを得るステップと、
を有する。
【0007】
本発明の第2の態様では、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法が提供される。当該方法は、
a)前記ニッケルラテライト鉱を破砕し、該ニッケルラテライト鉱を水でパルプ状にし、パルプ状材料を形成するステップ、その後、高圧雰囲気下で、前記パルプ状材料を硫酸溶液とともに撹拌し、混合物を形成するステップ、前記混合物から、ニッケルおよびコバルトを含むろ過液をろ過処理し、溶媒抽出法により、前記ろ過液を、ニッケルを含む抽出溶液と、コバルトを含む反抽出溶液とに分離するステップ、ならびに前記抽出溶液および前記反抽出溶液を電解処理し、それぞれ、純ニッケルおよび純コバルトを得るステップと、
b)前記クロマイト鉱を焼結装置内で焼結させ、焼結化クロマイト鉱を得るステップ、およびその後、電気炉内で、前記焼結化クロマイト鉱を溶解し、溶融フェロクロムを得るステップと、
c)前記純ニッケルを転炉に移し、前記溶融フェロクロムを前記転炉にホットチャージ(hot charge)装入し、溶融ステンレス鋼を得るステップと、
d)前記溶融ステンレス鋼を連続鋳造機にチャージし、ステンレス鋼スラブを得るステップと、
を有する。
【0008】
本発明の第3の態様では、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法が提供される。当該方法は、
a)前記ニッケルラテライト鉱のニッケル含有量が、前記ニッケルラテライト鉱全体の重量に対して1.5wt%未満であるかどうかを判断するステップと、
b)前記ステップa)でなされた判断に基づいて、前記ニッケルラテライト鉱を、ニッケル含有前駆体に処理するステップと、
c)前記クロマイト鉱を焼結装置内で焼結させ、焼結化クロマイト鉱を得るステップ、およびその後、電気炉内で前記焼結化クロマイト鉱をコークス粒子とともに溶解し、溶融フェロクロムを得るステップと、
d)前記ニッケル含有前駆体を転炉に移し、前記溶融フェロクロムを前記転炉にホットチャージ(hot charge)装入し、溶融ステンレス鋼を得るステップと、
e)前記溶融ステンレス鋼を連続鋳造機にチャージし、ステンレス鋼スラブを得るステップと、
を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の好適実施例による、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法は、以下のステップを有する。
【0010】
i)溶融フェロニッケルを得るステップ
ニッケルラテライト鉱は、600℃から700℃の範囲の乾燥温度で、乾燥キルン内で乾燥され、ニッケルラテライト鉱に含まれる自由水が、30乃至35%から10乃至20%まで除去される。次に、ニッケルラテライト鉱は、破砕され、ふるい分けされ、混合されてから、回転キルン内で、800℃〜950℃の範囲の加熱温度で加熱され、ニッケルラテライト鉱から残留自由水および結晶水が除去される。ニッケルラテライト鉱が回転キルン内で加熱される際に、無煙炭のような還元剤が回転キルンに供給され、予備還元された焼成物(カルシン:calcine)が得られる。カルシンは、電気炉内で溶融され、溶融フェロニッケルが得られる。スラグのタッピング温度は、1550℃から1560℃の範囲に制御され、溶融フェロニッケルのタッピング温度は、1400℃から1500℃の範囲に制御される。これにより、溶融フェロニッケルからスラグを分離する際に、より良い効果が得られる。溶融フェロニッケルは、8〜15wt%のNi、4 wt%未満のC、2 wt%未満のSi、および0.06 wt%未満のPを含む。
【0011】
ii)溶融フェロクロムを得るステップ
クロマイト鉱(Cr
2O
3の含有量:62wt%未満)は、コークス粉末と混合され、ボールプレス機でプレスされ、クロマイトペレットが形成される。次に、クロマイトペレットが乾燥処理され、水分が除去される。次に、乾燥処理されたクロマイトペレットは、焼結装置内で、1350℃〜1450℃の範囲の温度で焼結され、30mm未満の粒子サイズを有する焼結化クロマイト鉱が得られる。次に、焼結化クロマイト鉱は、別の電気炉内で、コークスとともに溶融され、溶融フェロクロムが得られる。スラグのタッピング温度は、1600℃から1700℃の範囲に制御される。溶融フェロクロムは、60wt%未満のCr、9wt%未満のC、5wt%未満のSi、および0.03wt%未満のPを含む。
【0012】
iii)溶融ステンレス鋼を得るステップ
溶融フェロニッケルと溶融フェロクロムは、ホットチャージ(hot charge)方式で転炉に装入され、溶融ステンレス鋼が得られる。
【0013】
iv)ステンレス鋼スラブを得るステップ
溶融ステンレス鋼は、連続鋳造機にチャージされ、ステンレス鋼スラブが得られる。
【0014】
前述のステップiii)およびiv)は、従来から知られた方法で行われ、従って、ここでは詳しく説明しない。
【0015】
溶融フェロニッケルおよび溶融フェロクロムは、製造される特定のステンレス鋼により定められる割合で、転炉に添加しても良い。例えば、202系ステンレス鋼は、4〜6wt%のNiおよび17〜19wt%のCrを含み、304系ステンレス鋼は、8〜10.5wt%のNiおよび17.5〜19.5wt%のCrを含む。ステップi)で得られる溶融フェロニッケルが8wt%のNiを含有し、ステップii)で得られる溶融フェロクロムが50wt%のCrを含有する場合、202系ステンレス鋼は、65wt%の溶融フェロニッケルと、35wt%の溶融フェロクロムとを組み合わせることによって、製造することができる。ステップi)で得られる溶融フェロニッケルが15wt%のNiを含有し、ステップii)で得られる溶融フェロクロムが40wt%のCrを含有する場合、304系ステンレス鋼は、55wt%の溶融フェロニッケルと、45wt%の溶融フェロクロムを組み合わせることによって、製造することができる。
【0016】
前述の好適実施例では、溶融フェロニッケルおよび溶融フェロクロムは、それぞれ、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱から得られ、各種系列のステンレス鋼は、溶融フェロクロムに対して溶融フェロニッケルを特定の割合にして、溶融フェロニッケルと溶融フェロクロムを組み合わせることにより製造される。これは、製造される特定のステンレス鋼に応じて、容易に調整し制御することができる。従って、溶融ステップの繰り返し回数が減少するため、燃料および電気量の消費が抑制され、製造者の利益が高まるように、製造コストを効果的に制御することができる。
【0017】
本発明の第2の好適実施例による、ニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法は、以下のステップを有する。
【0018】
I)純ニッケルおよび純コバルトを得るステップ
ニッケルラテライト鉱は、破砕され、水でパルプ状にされ、パルプ状材料が形成される。次に、パルプ状材料は、高圧雰囲気下、硫酸溶液とともに撹拌され、混合物が形成される。混合物中のニッケルラテライト鉱の硫酸溶液に対する固体−液体比は、約1:4である。パルプ状材料は、4乃至5MPaの範囲の圧力下、250℃から300℃の範囲の温度で、硫酸溶液とともに撹拌される。次に、ニッケルおよびコバルトを含むろ過液が、混合物からろ過処理される。ろ過液は、溶媒抽出によって、ニッケルを含む抽出溶液と、コバルトを含む反抽出溶液とに分離される。抽出溶液および反抽出溶液は、電解処理され、それぞれ、純ニッケルおよび純クロムが得られる。好適実施例では、純ニッケルの純度は、99wt%よりも高く、純ニッケルおよび純クロムの回収率は、90%を超える。
【0019】
II)溶融フェロクロムを得るステップ
このステップは、前述の第1の好適実施例におけるステップii)と同様の方法で実施することができる。
【0020】
III)溶融ステンレス鋼を得るステップ
純ニッケルは、ベルトコンベアを介して転炉に移され、溶融フェロクロムが転炉にホットチャージ(hot charge)装入され、溶融ステンレス鋼が得られる。
【0021】
IV)ステンレス鋼スラブを得るステップ
このステップは、前述の第1の好適実施例におけるステップiv)と同様の方法で実施することができる。
【0022】
ステップI)で得られた純ニッケルは、99wt%の純度を有し、ステップII)で得られた溶融フェロクロムは、24wt%のCrを含有し、5wt%の純ニッケルと、75wt%の溶融フェロクロムと、20wt%の炭素鋼スクラップを組み合わせることにより、前述の202系ステンレス鋼を製造することができる。前述の304系ステンレス鋼は、9wt%の純ニッケルと、76wt%の溶融フェロクロムと、15wt%の炭素鋼スクラップを組み合わせることにより、製造することができる。
【0023】
特定の割合で、純ニッケル、溶融フェロクロム、および炭素鋼スクラップを組み合わせることにより、各種系統のステンレス鋼を製造することができるという、前述の第1の好適実施例で得ることのできる効果に加えて、前述のステップI)において、純ニッケルとともに高価な純コバルトが得られるため、追加の経済的利益を得ることができる。
【0024】
本発明の第3の実施例によるニッケルラテライト鉱およびクロマイト鉱からオーステナイトステンレス鋼を製造する方法は、以下のステップを含む。
【0025】
A)ニッケルラテライト鉱のニッケル含有量を判断するステップ
ニッケルラテライト鉱のニッケル含有量が、ニッケルラテライト鉱の全重量に対して1.5wt%以上であると判断されると、以下のステップが実施される。
【0026】
B)溶融フェロニッケルを得るステップ
このステップは、前述の第1の好適実施例におけるステップi)と同様の方法で実施することができる。
【0027】
C)溶融フェロクロムを得るステップ
このステップは、前述の第1の好適実施例におけるステップii)と同様の方法で実施することができる。
【0028】
D)溶融ステンレス鋼を得るステップ
このステップは、前述の第1の好適実施例におけるステップiii)と同様の方法で実施することができる。
【0029】
E)ステンレス鋼スラブを得るステップ
このステップは、前述の第1の好適実施例におけるステップiv)と同様の方法で実施することができる。
【0030】
前述のように、溶融フェロニッケルと溶融フェロクロムは、製造される特定のステンレス鋼により定められる割合で、転炉に添加される。
【0031】
一方、ニッケルラテライト鉱のニッケル含有量が、ニッケルラテライト鉱の全重量に対して1.5wt%未満であると判断される場合、以下のステップが実施される。
【0032】
B’)純ニッケルおよび純クロムを得るステップ
このステップは、前述の第2の好適実施例におけるステップI)と同様の方法で実施することができる。
【0033】
C’)溶融フェロクロムを得るステップ
このステップは、前述の第1の好適実施例におけるステップii)と同様の方法で実施することができる。
【0034】
D’)溶融ステンレス鋼を得るステップ
このステップは、前述の第2の好適実施例におけるステップIII)と同様の方法で実施することができる。
【0035】
E’)ステンレス鋼スラブを得るステップ
このステップは、前述の第2の好適実施例におけるステップIV)と同様の方法で実施することができる。
【0036】
前述のように、各種系統のステンレス鋼は、純ニッケル、溶融フェロクロム、および炭素鋼スクラップを特定の割合で組み合わせることにより、製造することができ、これは、製造される特定のステンレス鋼に応じて、容易に調整し制御することができる。また、電解ステップにおいて、純ニッケルとともに、純コバルトのような他の貴金属を得ることができる。従って、本発明のオーステナイトステンレス鋼を製造する方法では、経済的な価値がいっそう高められる。
【0037】
あるいは、第3の好適実施例において、溶融フェロニッケルと純ニッケルの両方が転炉に移され、溶融フェロクロムが転炉にホットチャージ(hot charge)装入され、溶融ステンレス鋼が得られても良い。
【0038】
本発明のオーステナイトステンレス鋼を製造する方法では、ニッケルラテライト鉱は、効果的に処理され、溶融フェロニッケルまたは純ニッケルが得られる。従って、本発明のオーステナイトステンレス鋼を製造する方法は、比較的柔軟性があり、従来技術に比べてコスト効果がある。
最も実際的で好適な実施例に関して本発明を説明したが、本発明は、開示の実施例に限定されるものではなく、本発明は、最も広い解釈における思想および範囲内に含まれる、各種配置を網羅する意図を有することが理解される。全てのそのような変更および等価な配置は、本発明に包含される。