(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記収容空間に前記絶縁性心材が収容される部位と、前記絶縁性心材を備えない部位とは、交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の間接活線作業用防護シート。
前記絶縁性シート体の対峙する前記挟み部の双方の端部に、二股の先端部を有する間接活線工具の前記先端部又は挟み式クリップの先端部を装着することが可能な装着部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の間接活線作業用防護シート。
【背景技術】
【0002】
間接活線作業において、感電防止や地絡・短絡事故の防止を図るために、例えば特許文献1に示されるような絶縁被覆材が一般的に用いられている。この特許文献1に示される絶縁被覆材は、シート状本体を広げて架空電線の充電部分等に上方から被せ、シート状本体の双方の端部からそれぞれ延びる帯に設けられた面ファスナーと面ファスナーとを接合して、シート状本体を略筒状とすることで、架空電線の充電部分等を覆うことができるものとなっている。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に示される絶縁被覆材では、広げた状態のシート状本体を架空電線の充電部分等に被せる前に面ファスナーの余分となった部分が不用意にシート状本体に接合したり、面ファスナーが予定していた位置からずれてシート状本体に接合されたりした場合には、面ファスナーを剥がして、シート状本体を広げ直したり、面ファスナーの接合をやり直したりする必要がある。
【0004】
また、架空電線の充電部分は、S字状の蛇行等のように曲がりくねった状態である場合が多いのに対し、前記特許文献1に示される絶縁被覆材は、このような曲がりくねった架空電線の充電部分に沿うように柔軟に変形し難いので、曲がりくねった架空電線の充電部分への装着が容易ではない。
【0005】
尚、特許文献1に示される絶縁被覆材では、シート状本体で架空電線の充電部分を被覆した後、シート状本体がずれないように、クリップでシート状本体を外側から止める作業も行われる。
【0006】
これに対し、本願出願人は、特許文献2に示されるように、架空電線の充電部分を、2つ折りにした絶縁性のシート状部材内に納めて、外側から挟み式クリップで留める構成の電線防護シートに係る発明について、出願して公知としている。この特許文献2に示される電線防護シートについて概説すると、シート状部材は、2つ折りの折り線の伸長方向に折り込まれて蛇腹状とされた折り込み部となっており、挟み式クリップは、前記シート状部材の両側端部にそれぞれ配置されるもので、前記挟み式クリップの挟み部の先端は、前記シート状部材の外側面でかつ2つ折りの解放端寄り位置の近傍それぞれ固着することで前記シート状部材に取り付けられるものとなっている。
【0007】
また、本願出願人は、例えば特許文献3に示されるように、クリップを用いることなく防護対象物を防護することを目的とした防護カバーに係る発明について、出願して公知としている。この特許文献3に示される防護カバーについて概説すると、絶縁素材によって構成されると共に防護対象物を内側に係入させて包囲するカバー本体を備え、このカバー本体は、防護対象物を包囲する形状を有する胴部と、前記胴部の少なくとも一端部に一体に設けられると共に前記胴部が防護対象物を包囲する包囲状態を維持すべくこの胴部を保形する保形部とを備えたものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
もっとも、前記特許文献2に示される電線防護シートにおいては、この特許文献2の
図2及び
図3に示されるように、シート状部材の両端を近接させて閉じ、シート状部材が閉じた状態を維持するためには、挟み式クリップのリングバネの挟持力を主に利用する必要がある。このため、挟み式クリップが外れた場合には、シート状部材が開いて、電線防護シートが架空電線の充電部分から外れてしまうことが懸念される。
【0010】
また、前記特許文献3に示される防護カバーにおいては、カバー本体胴部と蓋部とで防護対象物の全周を包囲して防護対象物を防護するために、この特許文献3の段落番号「0034」から「0036」に示されるように、注入口から所定の注入室に空気等を注入するステップと、防護カバーを膨らませて所定の形状にするステップと、操作棒等の間接活線用作業工具で保形部の2つの端部を掴んで拡げるステップと、保形部の2つの端部の間に防護対象物を通過させ、カバー本体の内側に防護対象物が入った状態とするステップと、保形部を掴んでいた間接活線用作業工具を離して、拡げられていた保形部を元の形状に戻し、保形部の2つの端部同士の間隔が防護対象物の幅よりも小さくするステップと、蓋部によってカバー本体の開放部分を塞ぐステップとを要する。このため、特許文献3に示される防護カバーでは、防護対象物を防護するための作業が煩雑になるという懸念がある。
【0011】
しかも、特許文献2に示される電線防護シートや、特許文献3に示される防護カバーの構成でも、S字状の蛇行等のように曲がりくねった架空電線の充電部分等の充電体に沿うように柔軟に変形することが容易とは認められないので、曲がりくねった架空電線の充電部分等の充電体への装着が好適であるとは認められない。
【0012】
そこで、本発明は、工数の少ない簡易な作業で、挟み式の工具の挟持力を利用しなくても、曲がりくねった状態の架空電線の充電部分等の充電体を自らの挟持力で挟んで外装することが可能な間接活線作業用防護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る間接活線作業用防護シートは、弧状の条状体を成し、両端に相互に接近する力が働く
複数の絶縁性心材と、前記
複数の絶縁性心材の各々を収容可能な
収容空間を複数備えた絶縁性シート体とを有して構成され、前記絶縁性シート体は、
複数の前記収容空間を当該絶縁性シート体の長手方向に沿って列状に配置してなるもので、前記収容空間に前記絶縁性心材が収容される部位と、前記絶縁性心材を備えない部位とを備えると共に、前記絶縁性心材が前記収容空間に収容されて弧状となることで対峙する挟み部を有し、前記絶縁性心材の両端が相互に接近する力により充電体又は充電体に近接する器具を前記挟み部で挟んで保持することができることを特徴としている(請求項1)。ここで、絶縁性心材は、例えばプラスチック、合成樹脂製の発泡体等の、ある程度の復元力を備えた絶縁素材で形成されている。絶縁性シート材は、耐候性、防水性に優れた絶縁素材で形成されている。収容空間の形状は、予め絶縁性心材の弧状の条状体の形状に合せて湾曲した状態であっても、直線状であっても良い。更に、収容空間は、絶縁性心材の外面に絶縁性シート材をコーティングにより形成することで結果的に形成されるものであっても良い。絶縁性心材を備えない部位とは、絶縁性心材を収容可能な収容空間がない部位であっても、収容空間があっても絶縁性心材が収容されていない部位であっても良い。そして、充電体とは、例えば架空電線の充電部分、通電状態の引込み線、通電状態の高圧引下線をいい、充電体に近接する器具には、電柱の腕金、高圧ピン碍子等が該当する。
【0014】
これによって、間接活線作業用防護シートの挟み部において、絶縁性シート材に内蔵された絶縁性心材の両端の相互に接近する力を利用して、充電体又は充電体に近接する器具を挟んで保持することができる。
【0015】
そして、この発明に係る間接活線作業用防護シートでは、前記収容空間に前記絶縁性心材が収容される部位と、前記絶縁性心材を備えない部位とは、交互に配置されていることを特徴としている(請求項2)。
【0016】
これによって、間接活線作業用防護シートは、絶縁性心材が収容されることで肉厚の厚い部位と、絶縁性心材を備えないことで肉厚の薄い部位とを交互に有する凹凸(蛇腹)形態となるので、肉厚の薄い部位を間接活線作業用防護シートの厚み方向の双方に自在に曲げることが可能となる。このため、曲がりくねった状態の架空電線の充電部分等の充電体に沿って変形させることができるので、間接活線作業用防護シートの絶縁性シート材を曲がりくねった状態の架空電線の充電部分等の充電体に対し好適に外装することができる。
もっとも、曲がりくねった状態の架空電線の充電部分等の充電体に外装できれば良いのであるから、収容空間に前記絶縁性心材が収容される部位と絶縁性心材を備えない部位との配置は交互に配置されている場合に限定されず、2つの絶縁性心材を備えない部位間に、収容空間に絶縁性心材が収容される部位が2以上連続して配置されても、反対に、2つの収容空間に絶縁性心材が収容される部位間に、絶縁性心材を備えない部位が2以上連続して配置されても良い。
【0017】
また、この発明に係る間接活線作業用防護シートでは、前記絶縁性シート体の対峙する前記挟み部の双方の端部に、二股の先端部を有する間接活線工具の前記先端部又は挟み式クリップの先端部を装着することが可能な装着部が設けられていることを特徴としている(請求項3)。装着部は、例えば、一の収容空間に絶縁性心材が収容される部位の端部の外面に一端が接合し、他の収容空間に絶縁性心材が収容される部位の端部の外面に他端が接合し、中間部位は絶縁性心材を備えない部位の端部の外面から離隔された状態となる橋梁形状となっている。
【0018】
これによって、例えば架空電線の充電部分に間接活線作業用防護シートを外装するために、二股の先端部を有する間接活線工具の一例として絶縁ヤットコを用いるにあたり、先端部を構成する固定側把持部と可動側把持部とをそれぞれ装着部に装着することにより、絶縁ヤットコの操作で、絶縁性シート体の一対の挟み部を、絶縁性心材の両端が相互に接近する力に抗して開いたり閉じたりすることが可能となって、間接活線作業用防護シートの架空電線の充電部分への外装作業又は間接活線作業用防護シートの架空電線の充電部分の取り外し作業が簡便化する。
また、例えば架空電線の充電部分に外装された間接活線作業用防護シートを挟み式クリップで固定する場合に、挟み式クリップの一対の先端部たる挟み部をそれぞれ装着部に装着することにより、挟み式クリップが絶縁性シート体から外れ難くすることができる。
しかも、装着部を橋梁形状とすることにより、絶縁ヤットコの固定側把持部と可動側把持部とを装着部に装着したり、挟み式クリップの一対の先端部を装着部に装着したりするときに、装着部と絶縁性シート体の絶縁性心材を備えない部位の外面との間に相対的に大きな隙間ができるので、絶縁ヤットコの固定側把持部及び可動側把持部や挟み式クリップの一対の先端部の装着部への装着を簡易に行うことが可能となる。
【0019】
更に、この発明に係る間接活線作業用防護シートでは、前記絶縁性シート体の前記対峙する挟み部同士を繋ぐ中間部に、間接活線工具を装着することが可能な
間接活線工具用の装着部が設けられていることを特徴としている(請求項4)。
間接活線工具用の装着部は、例えば、一の収容空間に絶縁性心材が収容される部位の中間部の外面に一端が接合し、他の収容空間に絶縁性心材が収容される部位の中間部の外面に他端が接合し、中間部位は絶縁性心材を備えない部位の中間部の外面から離隔された状態となる橋梁形状となっている。
【0020】
これにより、例えば架空電線の充電部分に間接活線作業用防護シートを外装するために、二股の先端部を有する間接活線工具の一例として絶縁ヤットコを用いるにあたり、先端部を構成する固定側把持部又は可動側把持部の一方を
間接活線工具用の装着部に装着することにより、絶縁ヤットコを架空電線の充電部分に向けて下げていくと、架空電線の充電部分に当たった絶縁性シート体の一対の挟み部は、絶縁性心材の両端が相互に接近する力に抗して開いた後、絶縁性シート体の一対の挟み部の端部よりも中央側に架空電線の充電部分が変位したときには、挟み部の端部は絶縁性心材の両端が相互に接近する力により閉じた状態となるので、一対の挟み部で架空電線の充電部分を挟んで保持することが可能となり、間接活線作業用防護シートの架空電線の充電部分への外装作業が簡便化する。
しかも、
間接活線工具用の装着部を橋梁形状とすることにより、絶縁ヤットコの固定側把持部又は可動側把持部を
間接活線工具用の装着部に装着するときに、
間接活線工具用の装着部と絶縁性シート体の絶縁性心材を備えない部位の外面との間に相対的に大きな隙間ができるので、絶縁ヤットコの固定側把持部又は可動側把持部の
間接活線工具用の装着部への装着を簡易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、この発明に係る間接活線作業用防護シートによれば、挟み式のクリップ等の固定具の力を利用しなくても、絶縁性シート材に内蔵された絶縁性心材の両端の相互に接近する力を利用して、絶縁性シート材の一対の挟み部の開閉動作で充電体又は充電体に近接する器具を挟んで保持することができるので、簡易な作業にて充電体又は充電体に近接する器具を外装することが可能となり、挟み式クリップ等の固定具が外れても、直ちに絶縁性シート材が外れることもなくなる。
【0022】
特に請求項2に記載の間接活線作業用防護シートによれば、間接活線作業用防護シートは、絶縁性心材が収容されることで肉厚の厚い部位と、絶縁性心材を備えないことで肉厚の薄い部位とが交互に有する蛇腹形態となるため、肉厚の薄い部位を間接活線作業用防護シートの厚み方向のいずれへも自在に曲げることが可能となることから、曲がりくねった状態の架空電線の充電部分等の充電体に沿って変形させることができるので、間接活線作業用防護シートの絶縁性シート材を曲がりくねった状態の架空電線の充電部分等の充電体に対し好適に外装することが可能である。
【0023】
特に請求項3に記載の間接活線作業用防護シートによれば、例えば架空電線の充電部分に間接活線作業用防護シートを外装するために、二股の先端部を有する間接活線工具の一例として絶縁ヤットコを用いるにあたり、先端部を構成する固定側把持部と可動側把持部とをそれぞれ装着部に装着することにより、絶縁ヤットコの操作で、絶縁性シート体の一対の挟み部を、絶縁性心材の両端が相互に接近する力に抗して開いたり閉じたりすることが可能となって、間接活線作業用防護シートの架空電線の充電部分への外装作業又は間接活線作業用防護シートの架空電線の充電部分の取り外し作業を簡便化させることができる。
【0024】
また、特に請求項3に記載の間接活線作業用防護シートによれば、例えば架空電線の充電部分に外装された間接活線作業用防護シートを挟み式クリップで固定する場合に、挟み式クリップの一対の先端部たる挟み部をそれぞれ装着部に装着することにより、挟み式クリップが絶縁性シート体から外れ難くすることができる。
【0025】
特に請求項4に記載の間接活線作業用防護シートによれば、例えば架空電線の充電部分に間接活線作業用防護シートを外装するために、二股の先端部を有する間接活線工具の一例として絶縁ヤットコを用いるにあたり、先端部を構成する固定側把持部又は可動側把持部の一方を
間接活線工具用の装着部に装着することにより、絶縁ヤットコを架空電線の充電部分に向けて下げていくと、架空電線の充電部分に当たった絶縁性シート体の一対の挟み部は、絶縁性心材の両端が相互に接近する力に抗して開いた後、絶縁性シート体の一対の挟み部の端部よりも中央側に架空電線の充電部分が変位したときには、挟み部の端部は絶縁性心材の両端が相互に接近する力により閉じた状態となるので、一対の挟み部で架空電線の充電部分を挟んで保持することが可能となり、間接活線作業用防護シートの架空電線の充電部分への外装作業を簡便化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、この発明に係る間接活線作業用防護シートの一例を示す説明図であり、
図1(a)は間接活線作業用防護シートの平面図、
図1(b)は間接活線作業用防護シートの側面図、
図1(c)は間接活線作業用防護シートの底面図、
図1(d)は間接活線作業用防護シートの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される間接活線作業用防護シートの拡大断面図であり、
図2(a)は間接活線作業用防護シートの絶縁性心材が収容空間に収容された部位を示す拡大断面図、
図2(b)は間接活線作業用防護シートの絶縁性心材が収容空間に収容さない部位を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される間接活線作業用防護シートの装着部に絶縁ヤットコを予め装着して架空電線の充電部分に間接活線作業用防護シートを接近させる工程を示す説明図であり、
図3(a)は絶縁ヤットコに装着された状態の間接活線作業用防護シートの側面図、
図3(b)は絶縁ヤットコに装着された状態の間接活線作業用防護シートの背面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示される間接活線作業用防護シートの装着部に挟み式クリップを予め装着した後に、架空電線の充電部分に間接活線作業用防護シートを固定した状態を示す説明図であり、
図4(a)は挟み式クリップで架空電線の充電部分に固定された状態の間接活線作業用防護シートの側面図、
図4(b)は挟み式クリップで架空電線の充電部分に固定された状態の間接活線作業用防護シートの背面図である。
【
図5】
図5は、蛇行した状態の架空電線の充電部分に複数の挟み式クリップで固定された状態の間接活線作業用防護シートを示す説明図である。
【
図6】
図6は、
図1に示される間接活線作業用防護シートの
間接活線工具用の装着部に絶縁ヤットコを予め装着して架空電線の充電部分に間接活線作業用防護シートを接近させ、外装する工程を示す説明図であり、
図6(a)は絶縁性シート材の挟み部が開いていない状態を示す側面図、
図6(b)は絶縁性シート材の挟み部が架空電線の充電部分で拡げられた状態を示す側面図、
図6(c)は絶縁性シート材の挟み部が架空電線の充電部分を外装した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1及び
図2において、この発明に係る間接活線作業用防護シート1の一例が示されている。間接活線作業用防護シート1は、間接活線作業において、感電防止や地絡・短絡事故の防止を図るために、
図3から
図6に示される架空電線の充電部分や、通電状態の引込み線、通電状態の高圧引下線等の充電体A、並びに、電柱の腕金、高圧ピン碍子等の充電体Aに近接する器具に外装するのに好適なシートである。この間接活線作業用防護シート1は、特に
図2(a)に示されるように、絶縁性心材2とこの絶縁性心材2を包む絶縁性シート材3とで構成されている。
【0029】
絶縁性心材2は、例えばプラスチック、合成樹脂製の発泡体等の、変形しても元の状態に戻る復元力を有する絶縁素材で形成されたもので、
図2(a)に示されるように、弧状(この実施例では略U字状ないし馬蹄状)の条状体を成し、両端部21、21は相互に接近する力(挟持力)が働くものとなっている。
【0030】
絶縁性シート材3は、間接活線作業用防護シート1が屋外に設置されることに伴い、耐候性、防水性に優れた絶縁素材で形成されたもので、長手方向寸法が約50cm若しくは約80cmであり、既存の間接活線作業用の防護シート等と同様の長手方向寸法となっている。そして、絶縁性シート材3は、
図2(a)に示される、絶縁性心材2が内蔵された絶縁性心材有り部位31と、
図2(b)に示される、絶縁性心材2が内蔵されない絶縁性心材無し部位32とを有している。
【0031】
絶縁性心材有り部位31は、この実施例では、
図2(a)に示されるように、絶縁性シート材3の長手方向に沿って列状に配置された袋状の収容空間33に、絶縁性心材2を収容することで形成されている。これにより、絶縁性心材2が収容された絶縁性心材有り部位31は、絶縁性心材2の形状に合せて、対峙する挟み部34、34と、一方の挟み部34と他方の挟み部34とを繋ぐ中間部36とを備えた弧形状(この実施例では略U字形状ないし馬蹄形状)となり、その肉厚も相対的に厚くなっている。
【0032】
挟み部34、34間には、充電体Aを保持するための保持用空間37が形成されている。保持用空間37は、
図2(a)に示されるように、絶縁性心材有り部位31の中間部36側から挟み部34、34の端側に向けて延び、挟み部34、34間に開口部38を有している。
【0033】
保持用空間37の内幅寸法は、開口部38から中間部36側に進むに従い、徐々に大きくなった後、絶縁性心材有り部位31の略中央位置からは中間部36側に進むに従い徐々に小さくなっている。すなわち、保持用空間37は、略楕円形状(略両凸レンズ形状)をなしている。そして、保持用空間37の通常時(閉時)での最大内幅寸法は、充電体Aの外径寸法よりも小さくなるように設定されていると共に、両挟み部34、34は、内蔵する絶縁性心材2の端部21、22により、端部が相互に接近する方向に付勢されている。これにより、挟み部34、34間の保持用空間37の通常時(閉時)における最も内幅寸法が大きな部位でも、充電体Aを挟み部34、34で挟んで保持することが可能になっている。
【0034】
絶縁性心材無し部位32は、この実施例では、
図2(b)に示されるように、絶縁性シート材3の長手方向に沿って列状に配置されて成る、閉塞された袋状の収容空間33に、絶縁性心材2を収容しないことで形成されている。すなわち、絶縁性心材無し部位32は、絶縁性シート材3の収容空間33の内壁を構成する内面同士が接しており、肉厚も相対的に薄くなっている。その一方で、絶縁性心材有り部位31は、近接する絶縁性心材有り部位31とは同じ絶縁性シート材3が用いられるものであるから、絶縁性心材有り部位31の形状に合せて、
図2(b)に示されるように、弧形状(この実施例では略U字形状ないし馬蹄形状)をなしている。尚、絶縁性心材無し部位32の対峙する部位は、絶縁性心材2を収容空間33に内蔵していないので、絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34とは異なり、それ自体では充電体Aを挟む機能を有しないものとなっている。更に、絶縁性心材無し部位32の側方外面は、絶縁性心材有り部位31の側方外面に対し若干内側に窪んだ位置になっている。
【0035】
間接活線作業用防護シート1は、この実施例では、
図1に示されるように、絶縁性シート材3について、長手方向の端から、絶縁性心材有り部位31、絶縁性心材無し部位32、絶縁性心材有り部位31の順で、絶縁性心材有り部位31と絶縁性心材無し部位32とが交互に配置されており、絶縁性心材無し部位32の側方外面は、絶縁性心材有り部位31の側方外面に対し若干内側に窪んだ位置になっているので、複数の凹凸を有する蛇腹形態となっている。このため、間接活線作業用防護シート1は、各絶縁性心材無し部位32において、その厚み方向(保持用空間37の内幅方向)の双方に自在に曲げることが可能となっている。
【0036】
これにより、
図5に示されるように、充電体Aの一例たる架空電線等の充電部分が略S字状に曲がりくねった状態であっても、各絶縁性心材無し部位32を間接活線作業用防護シート1の所要の厚み方向に曲げることにより、間接活線作業用防護シート1を架空電線等の充電部分に沿って外装させることが可能である。
【0037】
そして、間接活線作業用防護シート1は、この実施例では、特に
図1に示されるように、絶縁性シート材3の長手方向の最も端側に位置する絶縁性心材有り部位31、31(以下、端側の絶縁性心材有り部位31。)とこの端側の絶縁性心材有り部位31、31に対し1つ中央側に位置する絶縁性心材有り部位31、31(以下、2番目の絶縁性心材有り部位31。)との間に装着部4、4を有している。装着部4は、一端が端側の縁性心材有り部位31の挟み部34の端側の外面に接合し、他端が2番目の絶縁性心材有り部位31の挟み部34の端側の外面に接合し、中間部位が絶縁性心材無し部位32とは非接合で絶縁性心材無し部位32との間に隙間を有する、橋梁(ブリッジ)形状となっている。
【0038】
これにより、
図3に示される間接活線工具の1種である絶縁ヤットコ100の固定側把持部101や可動側把持部102、又は
図4に示される挟み式クリップの一種であるシートクリップ200の挟み部201、201を、装着部4と絶縁性心材無し部位32との隙間に挿入することで、絶縁ヤットコ100やシートクリップ200を装着部4に装着することが可能である。
【0039】
また、間接活線作業用防護シート1は、この実施例では、特に
図1に示されるように、2番目の絶縁性心材有り部位31とこの2番目の絶縁性心材有り部位31、31に対し1つ中央側に位置する絶縁性心材有り部位31、31(以下、3番目の絶縁性心材有り部位31。)との間に装着部5、5を有している。装着部5は、一端が2番目の絶縁性心材有り部位31の中間部36の外面に接合し、他端が3番目の絶縁性心材有り部位31の中間部36の外面に接合し、中間部位が絶縁性心材無し部位32とは非接合で絶縁性心材無し部位32との間に隙間を有する、橋梁(ブリッジ)形状となっている。
【0040】
これにより、
図3に示される間接活線工具の1種である絶縁ヤットコ100の固定側把持部101又は可動側把持部102を、装着部5と絶縁性心材無し部位32との隙間に挿入することで、絶縁ヤットコ100を装着部5に装着することが可能である。
【0041】
尚、
図3や
図6に示される絶縁ヤットコ100、及び
図4や
図5に示されるシートクリップ200は公知のものであるので、その構成の説明は省略した。
【0042】
次に、
図3から
図6を用いて、間接活線作業用防護シート1を充電体Aの一例である架空電線等の充電部分に外装する工程の幾つかについて説明する。
【0043】
図3では、間接活線作業用防護シート1を充電体Aの一例である架空電線等の充電部分に外装するときに、絶縁ヤットコ100を用いる工程について示されている。
【0044】
まず、間接活線作業用防護シート1の装着部4、4に、絶縁ヤットコ100の固定側把持部101と可動側把持部102とを予め装着する。これにより、絶縁ヤットコ100の図示しないハンドルを操作して、可動側把持部102を固定側把持部101に遠近させる開閉動作を行うことで、端側の絶縁性心材有り部位31と2番目の絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34も連動して開閉させることが可能となる。
【0045】
次に、可動側把持部102を固定側把持部101から開いて、端側の絶縁性心材有り部位31と2番目の絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34も開いた状態として、絶縁ヤットコ100を
図3(a)の矢印で示すように、充電体Aに向けて上方に変位させる。更に、充電体Aが挟み部34、34の間の保持用空間37内に開口部38から入ったときに、可動側把持部102を固定側把持部101に向けて閉じて、端側の絶縁性心材有り部位31と2番目の絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34も閉じた状態にする。そして、間接活線作業用防護シート1の他の絶縁性心材有り部位31や絶縁性心材無し部位32では、充電体Aに押し込む等の作業が行われる。最後に、絶縁ヤットコ100の固定側把持部101と可動側把持部102とを装着部4、4から外す。これにより、各絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34で充電体Aが挟まれた状態となるので、充電体Aは絶縁性心材2の力により保持される。
【0046】
尚、挟み部34、34の間の開口部38が充電体Aの外径寸法よりも大きく開いて、間接活線作業用防護シート1が脱落する危険性をなくすために、充電体Aを間接活線作業用防護シート1の絶縁性シート材3で外装した後に、シートクリップ200の挟み部201、202を間接活線作業用防護シート1の装着部4、4に装着することで、
図5に示されるように、シートクリップ200によっても絶縁性シート材3を挟んで保持することが好ましい。
【0047】
図4では、間接活線作業用防護シート1を充電体Aの一例である架空電線等の充電部分に外装するときに、シートクリップ200を予め間接活線作業用防護シート1に装着して行う工程について示されている。
【0048】
まず、間接活線作業用防護シート1の装着部4、4に、シートクリップ200の挟み部201、202を予め装着する。これにより、挟み部201、202と連接した基部203、204を遠近させることで、挟み部201、202を開閉させ、端側の絶縁性心材有り部位31と2番目の絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34を連動して開閉させることが可能となる。
【0049】
次に、
図3に示されるような絶縁ヤットコ100を用い、固定側把持部101と可動側把持部102とで基部203、204の双方を挟む。これにより、シートクリップ200の挟み部201、202、ひいては間接活線作業用防護シート1の端側の絶縁性心材有り部位31と2番目の絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34が開いた状態となる。そして、絶縁ヤットコ100を充電体Aに向けて上方に変位させる。更に、充電体Aが挟み部34、34の間の保持用空間37内に開口部38から入ったときに、絶縁ヤットコ100をシートクリップ200の基部203、204から外す。これにより、シートクリップ200の挟み部201、202が閉じて、端側の絶縁性心材有り部位31と2番目の絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34も閉じる。なお、間接活線作業用防護シート1の他の絶縁性心材有り部位31や絶縁性心材無し部位32では、絶縁ヤットコ100のシートクリップ200からの取り外し作業に前後して、充電体Aに押し込む等の作業が行われる。これにより、充電体Aは各絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34で挟まれると同時に、
図5に示されるように、シートクリップ200の挟み部201、202によっても挟まれた状態となるので、充電体Aは絶縁性心材2の挟持力のみならずシートクリップ200の挟持力によっても保持される。よって、充電体Aへの間接活線作業用防護シート1の外装もより確実に行うことが可能となる。しかも、後からシートクリップ200を間接活線作業用防護シート1の装着部4、4に装着する必要もなくなるので、工数の削減を図ることもできる。
【0050】
図6では、間接活線作業用防護シート1を充電体Aの一例である架空電線等の充電部分に外装するときに、絶縁ヤットコ100を用いるが、
図3とは異なる工程について示されている。
【0051】
まず、間接活線作業用防護シート1の装着部5に、絶縁ヤットコ100の固定側把持部101又は可動側把持部102(
図6では可動側把持部102)を予め装着する。これにより、間接活線作業用防護シート1は、
図6(a)に示されるように、絶縁ヤットコ100の可動側把持部102から垂下した状態となる。次に、絶縁ヤットコ100を
図6(a)の矢印に示される方向に降ろしていき、各絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34の端が充電体Aに当接した後も降ろし続ける。これにより、
図6(b)に示されるように、各絶縁性心材有り部位31(特に2番目の絶縁性心材有り部位31と3番目の絶縁性心材有り部位31)の開口部38が開き、充電体Aが挟み部34、34間の保持用空間37内に入っていく。そして、
図6(c)に示されるように、充電体Aが挟み部34、34間の保持用空間37の中央部位に達したときに、絶縁ヤットコ100の可動側把持部102を間接活線作業用防護シート1の装着部5から外す。更に、必要に応じて、間接活線作業用防護シート1の他の絶縁性心材有り部位31や絶縁性心材無し部位32では、充電体Aに押し込む等の作業が行われる。これにより、各絶縁性心材有り部位31の挟み部34、34で充電体Aが挟まれた状態となるので、充電体Aは絶縁性心材2の力により保持される。
【0052】
尚、この実施例でも、充電体Aを間接活線作業用防護シート1の絶縁性シート材3で外装した後に、シートクリップ200の挟み部201、202を間接活線作業用防護シート1の装着部4、4に装着することで、
図5に示されるように、シートクリップ200によっても絶縁性シート材3を挟んで保持することが好ましい。
【0053】
また、充電体Aの長手方向寸法が間接活線作業用防護シート1の長手方向寸法よりも大きな場合には、間接活線作業用防護シート1同士の端部を接続して長尺体とすることができ、この場合、装着部4、5は軟らかい素材で形成されており、絶縁性シート材3に接するように座屈させることができるので、装着部4、5が間接活線作業用防護シート1、1の端部を接続するために重ね合せても障害となることはない。
【0054】
更に、絶縁性心材有り部位31は、予め形成された袋状の収容空間33に後から絶縁性心材2を収容することで形成するものであっても良いが必ずしもこれに限定されず、例えば絶縁性心材2を一列に間隔を空けて配置した後、全ての絶縁性心材2をコーティング等で包むことで形成するものであっても良い。
【0055】
更にまた、
図3から
図6において、架空電線の充電部分を外装する使用例について図示してきたが必ずしもこの使用例に限定されず、間接活線作業用防護シート1は、既存の防護シートを用いてきたあらゆる場所で使用することが可能なものであり、スリーブカバーの代用としたり、高圧引下線の防護に使用したり、電柱の腕金に装着したり、高圧ピン碍子の防護に使用したりすることができる。