【実施例1】
【0031】
次に、架線保持用先端工具1の実施例1におけるアダプタ2の上部の構成について、
図2から
図6を用いて説明する。実施例1の架線保持用先端工具1は、アダプタ2の上部に、基部3と、この基部3から突出した複数(この実施例1では2つ)の架線保持部4とを有している。
【0032】
このうち、基部3は、直方体のプレート状のものであって、その下面がアダプタ2の上面に固定されている。そして、基部3のアダプタ2とは反対側になる上面には凹部31が形成されている。この凹部31は、
図2(c)及び
図3に示されるように、共用操作棒100の操作棒本体101の軸線に対して垂直の方向に沿って延びる直線状のもので、架線保持部4側に開口していると共に基部3の両端側でも開口している。凹部31の深度は、
図5に示されるように、架線200の直径寸法よりも小さく、且つ架線200が凹部31と基部3の他の部位とで形成される段差に当たったときに段差を乗り越えることができない寸法、例えば、架線200の半径寸法より若干小さな寸法となっている。
【0033】
架線保持部4、4は、凹部31の延びる方向に沿って直線状に並んでいるもので、一方の架線保持部4は、凹部31の一方の縁部分から立ち上がって、凹部31を覆う方向に延出した形状を成すもので、この実施例では凹部31の一方の縁部分から共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に円弧状に湾曲しつつ延びたものとなっている。但し、図示しないが、共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に直角に曲がって直線状に延びた逆L字形状としてもよい。
【0034】
他方の架線保持部4は、凹部31の前記架線保持部4が形成された一方の縁部分とは反対側となる他方の縁部分から立ち上がって、凹部31を覆う方向に延出した形状を成すもので、この実施例では凹部31の他方の縁部分から共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に円弧状に湾曲しつつ延びたものとなっている。すなわち、他方の架線保持部4が凹部31を覆うように延びる方向は、一方の架線保持部4が凹部31を覆うように延びる方向と180度逆の方向となっている。尚、他方の架線保持部4について、共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に直角に曲がって直線状に延びた逆L字形状としてもよいことは、一方の架線保持部4と同様である。
【0035】
更に、各架線保持部4は、その先端部分において、基部3側に向かって延出した爪部41を有している。爪部41は、架線保持部4の他の部分が円弧状に湾曲しつつ延びる形状をしている場合には、爪部41も、架線保持部4の円弧の軌道に沿うように円弧状に延びたものとなり、これに伴い架線保持部4の全体形状は略半円形状となっている。架線保持部4の略半円形状の内側面の曲率は、公称断面が200mm
2、58mm
2、25mm
2の全ての架線200に対応できるようにする場合には、公称断面が最大である200mm
2の架線200の曲率であり、公称断面が200mm
2、58mm
2、25mm
2の架線200に対し個別に保持する場合には、いずれかの架線200の曲率に合せたものとなっている。尚、爪部41は、図示しないが、架線保持部4が逆L字状を成す場合には、基部3に真下に向けて直線状に延びたものとなり、これに伴い架線保持部4の全体形状は略コ字形状となる。
【0036】
これにより、
図2(a)に示されるように、基部3の凹部31の内側面と架線保持部4(爪部41を含む。)の内側面とで架線200を保持するための架線保持空間Sが形成される。
【0037】
各架線保持部4は、
図2(a)、
図3に示す爪部41の延出方向の先端面と基部3の凹部31の縁部分のうち架線保持部4と対峙する面との間に、架線保持空間Sと連通した開口部42が形成されている。開口部42の上下方向の開口寸法L1(
図2(a)に示す。)は、公称断面が200mm
2、58mm
2、25mm
2の全ての架線200に対応できるようにする場合には、公称断面が最大である200mm
2の架線200の直径寸法よりも所要の寸法ほど大きくなっており、公称断面が200mm
2、58mm
2、25mm
2の架線200に対し個別に保持する場合には、いずれかの架線200の直径寸法よりも所要の寸法ほど大きくなっている。
【0038】
また、一方の架線保持部4と他方の架線保持部4との間には、
図4に示されるように、隙間5が設けられており、隙間5の寸法L2は、架線200をその間に配置することができる寸法となっている。すなわち、隙間5の寸法L2は、公称断面が200mm
2、58mm
2、25mm
2の全ての架線200に対応できるようにする場合には、公称断面が最大である200mm
2の架線200の直径寸法よりも大きくなっており、公称断面が200mm
2、58mm
2、25mm
2の架線200に対し個別に保持する場合には、いずれかの架線200の直径寸法よりも大きくなっている。
【0039】
そして、この隙間5を境にして架線保持部4、4を2分した場合に、一方の架線保持部4の開口部42の開口方向と他方の架線保持部4の開口部42の開口方向とは逆の方向に向いている。尚、図示しないが、架線保持部4が3つの場合には、架線200を配置する隙間5を境にして3つの架線保持部4を1つの架線保持部4と2つの架線保持部4とに2分した場合でも、一方の架線保持部4の開口部42の開口方向と他方の架線保持部4の開口部42の開口方向とは逆の方向に向いたものとなる。
【0040】
このような架線保持用先端工具1の構成に基づき、架線保持用先端工具1の架線200への取り付け作業について、
図4を用いて説明する。まず、架線保持用先端工具1を共用操作棒100に装着し、
図4(a)に示されるように、共用操作棒100を持ち上げて、架線保持用先端工具1の架線保持部4、4間の隙間5に架線200が配置された状態とする。次に、架線保持部4の開口部42が架線200の側面に向かうように(
図4(a)では時計回りに)、架線200と基部3とが交差した部位の中心点Pを回転中心として回転させる。これにより、架線200は、
図4(b)に示されるように、基部3と架線保持部4、4とで形成される架線保持空間Sに開口部42から入り、架線200は保持された状態となる。架線200から架線保持用先端工具1を取り外す作業では、
図4(b)に示されるように、架線保持部4の開口部42が架線200の側面から離れるように(
図4(a)では反時計回りに)、架線200と基部3とが交差した部位の中心点Pを回転中心として回転させる。これにより、架線200は、
図4(a)に示されるように、基部3と架線保持部4、4とで形成される架線保持空間Sから開口部42を経て外部に出るので、架線200に対する保持が解除される。よって、架線保持用先端工具1で架線200を保持したり、架線200の保持を解除したりする作業を簡易に行うことができる。
【0041】
そして、架線保持用先端工具1の架線保持部4で架線200を保持した状態で、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動させても、架線200が架線保持空間Sから抜け出ることが凹部31と爪部41とによって抑止されている。
【0042】
すなわち、
図5に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を持ち上げる場合には、架線200は相対的に凹部31の底面に当接する位置まで変位するため、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても凹部31の内側面のうちの立面に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
【0043】
また、
図5に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を引き下げる場合や、架線保持用先端工具1を架線200に単に引き掛けた場合には、架線200は相対的に架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接する位置まで変位し或いは架線200は架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接した状態となるため、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても架線保持部4の爪部41に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
【0044】
しかるに、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動させるときに架線200から架線保持用先端工具1が外れるのを作業員は留意しなくても良くなるので、架線200の揺れ防止のためや架線200に一時的に保持したりする際の間接活線作業のうちの架線が保持された後の作業でも作業の簡便化を図ることができる。
【実施例2】
【0045】
架線保持用先端工具1の実施例2におけるアダプタ2の上部の構成について、
図7から
図12を用いて説明する。但し、実施例1に示される架線保持用先端工具1と同一の構成については同一の符号を付して、その説明を簡略化する。
【0046】
実施例2の架線保持用先端工具1も、アダプタ2の上部に、凹部31が形成された基部3と、この基部3から突出した複数(この実施例2でも2つ)の架線保持部4とを備えたもので、架線保持部4の先端に爪部41を有し、更に架線保持部4は寸法L1の開口部42が形成されていると共に架線保持部4、4の間に寸法L2の隙間5を有する点でも、実施例1の架線保持用先端工具1と同様である。そして、実施例2の架線保持用先端工具1の架線200への取り付け作業も実施例1と同様である。
【0047】
その一方で、実施例2の架線保持用先端工具1では、
図7に示されるように、基部3の凹部31に架線当接部材6と弾性機構7とが装着されたものとなっている。これに伴い、凹部31の深度は、実施例1の基部3の凹部31よりも深いことが好ましい。
【0048】
架線当接部材6は、肉厚の薄い直方体の板状の形状をなし、その長手方向寸法は凹部31の長手方向寸法と一致し、その短手方向寸法は凹部31内を円滑に上下動することができるように凹部31の短手方向寸法より若干小さくなっている。そして、架線当接部材6の上面である架線当接面と、架線当接部材6の下面たる架線当接面と反対側に位置する面とは、ともに平坦な面となっている。
【0049】
弾性機構7は、架線当接部材6を架線保持部4側に押すためのものであり、例えば
図7(a)に示されるように、上板部と、下板部と、上板部と下板部とを連接する連接板部とで成るZ字状の板バネ71が用いられる。板バネ71は、この実施例2にあっては、上板部、下板部の長手方向寸法及び短手方向寸法が、架線当接部材6の長手方向寸法及び短手方向寸法と一致している。但し、この板バネ71の形状は特に限定されない。また、弾性機構7として、
図7(b)に示されるように、圧縮バネであるコイルスプリング72を用いるようにしてもよい。この場合、コイルスプリング72は、架線当接部材6の長手方向に沿って複数(例えば4つ)配置されたものとなると共に、一端が凹部31の底面に接続され、他端が架線当接部材6の架線当接面とは反対側の面に接続されたものとなる。尚、弾性機構7が架線200で押されていない状態では、架線当接部材6の架線当接面が架線保持部4の開口部42の下縁(凹部31の縁部)の上面と連なった状態となるように、弾性機構7の付勢力は調整されている。
【0050】
このような架線保持用先端工具1の構成とすることで、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動しても、架線200が架線保持空間Sから抜け出ることが凹部31と爪部41とによって抑止される一方で、必要に応じて架線200を架線保持部4の開口部42から簡易に取り出すこともできる。以下、弾性機構7として板バネ71を用いた場合で説明する。
【0051】
図9に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を持ち上げる場合には、架線200は、相対的に下方に変位するので、架線当接部材6の架線当接面を押し、ひいては板バネ71の上板部を押すので、板バネ71を凹部31の底面側に収縮させる。これにより、架線当接部材6の架線当接面が架線保持部4の開口部42の下縁よりも低くなるため、段差が生じ、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても凹部31の内側面のうちの立面(段差)に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
【0052】
また、
図10に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を引き下げる場合や、架線保持用先端工具1を架線200に単に引き掛けた場合には、架線200は相対的に架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接する位置まで変位し或いは架線200は架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接した状態となるため、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても架線保持部4の爪部41に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
【0053】
そして、
図11に示されるように、架線200が架線当接部材6の架線当接面を押さずに接しているのみの状態では、架線当接部材6の架線当接面が架線保持部4の開口部42の下縁(凹部31の縁部)の上面と連なった状態となるので、架線保持用先端工具1を水平方向に移動させるだけで、架線保持空間S内の架線200を、架線当接部材6の架線当接面から開口部42の下縁の上面に接しつつ変位させて、架線保持部4の開口部42から外部に出すことができる。
【0054】
しかるに、実施例2でも、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動させるときに架線200から架線保持用先端工具1が外れるのを作業員は留意しなくても良く、更には、架線200の架線保持用先端工具1からの取り出しも簡易に行うことができるので、架線200の揺れ防止のためや架線200に一時的に保持したりする際の間接活線作業のうちの架線が保持された後の作業でも作業の簡便化を図ることができる。
【0055】
最後に、基部3の凹部31は、
図12(b)に示されるように、架線保持部4を有しない部位において共用操作棒100の操作棒本体101の軸方向と交差する方向に延びるガイド用凹部311を形成すると共に、架線当接部材6に凹部31のガイド用凹部311に対応する位置に側方に突出した突起部61を形成しても良い。
【0056】
これにより、ガイド用凹部311に突起部61が装着された状態で、架線当接部材6が凹部31内を上下動するので、弾性機構7が架線当接部材6を押す付勢力が均一でなくても、架線当接部材6がガタツキを生ずることがなく、また、架線当接部材6が凹部31から外れるのを防止することもできる。