特許第5778238号(P5778238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778238
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】密封装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/32 20060101AFI20150827BHJP
   F16J 15/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   F16J15/32 311V
   F16J15/00 B
   F16J15/32 311P
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-237915(P2013-237915)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-98881(P2015-98881A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2015年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】神前 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶
(72)【発明者】
【氏名】小林 直人
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−94321(JP,A)
【文献】 特開2009−90476(JP,A)
【文献】 実開平1−83965(JP,U)
【文献】 米国特許第4957680(US,A)
【文献】 実開平1−104310(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/32
F16J 15/00
B29C 45/14
B29C 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の補強環に、この補強環のフランジ部の両面を覆う部分を有するゴム状弾性材料からなるシール本体を、金型内で一体成形する密封装置の製造において、前記フランジ部を、その本来の形状から成形材料の充填圧力による変形方向と反対側へ偏在した形状にあらかじめ形成することを特徴とする密封装置の製造方法。
【請求項2】
補強環のフランジ部の本来の形状からの偏在量を、前記充填圧力による変形量にほぼ相当する大きさとすることを特徴とする請求項1に記載の密封装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の運動部分を、補強環に一体成形したシールリップにより密封する密封装置を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用車輪懸架装置に車輪を回転自在に支持する軸受部の密封手段として、従来、例えば下記の特許文献1に記載されたような密封装置が知られている。
【0003】
図7は、特許文献1に記載されたものと同種の密封装置を使用状態で示すもので、参照符号110は自動車用車輪懸架装置に車輪を回転自在に支持する軸受部の外輪、参照符号120は中心軸部122が外輪110に挿通され取付フランジ121に不図示の車輪が取り付けられるハブである。図における左下側の軸受内部空間Sには、円周方向所定間隔で配置された不図示の複数の球体が、前記中心軸部122の外周面及び前記外輪110の内周面に形成された不図示の軌道に転動自在に保持されており、これらハブ120の中心軸部122、外輪110及び球体によって軸受ユニットが構成されている。
【0004】
外輪110の外端部の内周面と、ハブ120の中心軸部122の外周面との間には、密封装置100が介在されている。この密封装置100は、外部Aからの軸受内部空間Sへの雨水、泥水あるいは塵埃等の異物が浸入するのを防止すると共に、軸受内部空間Sに充填されたグリースが外部Aへ漏洩するのを防止するものである。
【0005】
詳しくは、この密封装置100は、図8にも示すように金属製の補強環101と、ラビリンスリップ102、対ダスト用リップ103〜104及び対グリース用リップ105からなる。ラビリンスリップ102、対ダスト用リップ103〜104及び対グリース用リップ105は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、同じゴム状弾性材料からなる被覆層106を介して補強環101に一体的に加硫接着されている。
【0006】
そして補強環101は、外輪110の内周面に圧入嵌着される嵌合筒部101aの端部から外輪110の外周側へ円盤状に展開した外径フランジ部101bの背面側に位置する最も外径側のラビリンスリップ102が、ハブ120の取付フランジ121の端面に非接触で近接対向されることによってラビリンスシールとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−281013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種の密封装置100は、図9に示すように、金型200内に、プレス成形により製作された補強環101をセットし、この補強環101と金型200の内面との間に型締めによって画成された環状のキャビティ210に、内周側から成形材料を充填して加熱・加圧することによって、ゴム状弾性材料からなるラビリンスリップ102、対ダスト用リップ103〜104、対グリース用リップ105及び被覆層106を、加硫成形と同時に前記補強環101に一体に加硫接着することで製造される。
【0009】
ところが、このようにして製造された密封装置100は、補強環101の外径フランジ部101bを覆う被覆層106に、金型キャビティ210内で前記外径フランジ部101bを厚さ方向両側から押さえるための押さえ突起211,212による複数の穴状の溝部106a,106bが、円周方向等配状に形成され、この溝部106a,106bは、図7に示す装着状態において、対ダスト用リップ103〜104によるシール部より外側(外部A)に位置しており、外径フランジ部101bの金属表面が被覆層106から露出する可能性があるため、ここから錆が発生して、錆の進行により被覆層106の剥がれを生じるおそれがあった。
【0010】
そこで、このような錆の原因となる溝部106a,106bが形成されないようにするには、金型200に、補強環101の外径フランジ部101bを押さえるための押さえ突起211,212を設けなければ良いが、この場合は、図10に示すように、キャビティ210内へ充填される成形材料が、補強環101の外径フランジ部101bと金型内面との間の空間210bに達する際の充填圧力Pによって、前記外径フランジ部101bが曲げ変形を受け、平坦な円盤状の正常な形状にならなくなってしまう問題があった。
【0011】
しかも、充填圧力Pによって曲げ変形された補強環101の外径フランジ部101bの外径端が金型200の内面に接した場合は、空間210bに達した成形材料が、前記外径フランジ部101bの外周側の隙間210cから空間210bと反対側へ廻り込みにくくなるので、外径フランジ部101bの片面にしか被覆層106が形成されず、成形不良になるおそれがある。
【0012】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、金属製の補強環に、この補強環のフランジ部の両面を覆う部分を有するゴム状弾性材料からなるシール本体を、金型によって一体成形する密封装置の製造において、金型に、補強環のフランジ部を押さえるための突起を設けずに、錆の発生を有効に防止可能とし、かつ成形材料の充填圧力による前記フランジ部の大きな変形を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る密封装置の製造方法は、金属製の補強環に、この補強環のフランジ部の両面を覆う部分を有するゴム状弾性材料からなるシール本体を、金型内で一体成形する密封装置の製造において、前記フランジ部を、その本来の形状から成形材料の充填圧力による変形方向と反対側へ偏在した形状にあらかじめ形成することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2の発明に係る密封装置の製造方法は、請求項1に記載の方法において、補強環のフランジ部の本来の形状からの偏在量を、前記充填圧力による変形量にほぼ相当する大きさとするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、ゴム状弾性材料からなるシール本体を金型内で補強環と一体成形する際に、補強環のフランジ部が、成形材料が先行充填された空間の充填圧力によって曲げ変形を受けても、このフランジ部はあらかじめ本来の形状から変形方向と反対側へ偏在するように形成されているため、前記充填圧力によって未充填側の金型内面へ押し付けられにくくなり、このため成形材料が前記未充填側へ廻り込んで良好に賦形される。したがって成形不良が防止されると共に、前記フランジ部が、変形方向と反対側へ偏在した形状から前記充填圧力によって本来の形状又は本来の形状と近似した形状に矯正され、しかも前記フランジ部における錆の発生を有効に防止した密封装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る密封装置の製造方法の第一の実施の形態を示す説明図である。
図2】本発明に係る密封装置の製造方法の第一の実施の形態により製造された密封装置を示す半断面図である。
図3】本発明に係る密封装置の製造方法の第二の実施の形態を示す説明図である。
図4】本発明に係る密封装置の製造方法の第三の実施の形態を示す説明図である。
図5】本発明に係る密封装置の製造方法の第四の実施の形態を示す説明図である。
図6】本発明に係る密封装置の製造方法の第五の実施の形態を示す説明図である。
図7】従来技術により製造された密封装置の使用状態を示す半断面図である。
図8】従来技術により製造された密封装置を単体で示す半断面図である。
図9】従来技術に係る密封装置の製造方法を示す説明図である。
図10】従来技術に係る密封装置の製造方法の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る密封装置の製造方法の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
まず図1は第一の実施の形態を示すもので、参照符号2は金型1の内面と、この金型1内にセットされる密封装置用補強環4との間に金型1の型締めによって画成されるキャビティである。
【0019】
補強環4は、鋼板など金属板の打ち抜きプレス成形等によって製作されたものであって、嵌合筒部41と、その軸方向一端から内周側へ折り返すように形成された環状の折り返し部42と、この折り返し部42からふたたび折り返されて内径側へ傾斜しながら延びる円錐筒部43と、さらにこの円錐筒部43の小径端部から内径側へ延びる内径フランジ部44と、前記嵌合筒部41の軸方向他端から外径側へ展開した外径フランジ部45とからなる。
【0020】
金型1は互いに衝合・分離可能な複数の分割型からなるものであって、この金型1にセットされる補強環4との間に型締めによって画成されるキャビティ2は、ラビリンスリップ成形空間21と、その内径側の対ダスト用リップ成形空間22,23と、対グリース用リップ成形空間24と、外径フランジ部被覆層成形空間25と、その内径側の内径被覆層成形空間26からなる。そして外径フランジ部被覆層成形空間25は補強環4の外径フランジ部45の外径端部の外周側を通じて厚さ方向(軸方向)両側に跨って形成され、ラビリンスリップ成形空間21は、補強環4の外径フランジ部45の背面側に位置して前記外径フランジ部被覆層成形空間25から延びており、対ダスト用リップ成形空間22,23及び対グリース用リップ成形空間24は、前記内径被覆層成形空間26から延びている。
【0021】
補強環4における外径フランジ部45は、後述する図2に示す密封装置3の完成品の内部に埋設された本来の形状は円盤状をなすものであるが、金型1へセットする以前は、キャビティ2への成形材料の充填圧力Pによる変形方向と反対側へ、ほぼ前記充填圧力Pによる曲げ変形量に相当する分だけ、あらかじめ本来の形状から偏在した緩やかな傾斜形状に形成されている。詳しくは、軸心Oと直交する平面に対する外径フランジ部45の傾斜角度θは、前記充填圧力Pによる変形後のスプリングバックによる最終的な変形角度にほぼ相当するものとする。
【0022】
また、金型1の内面には、補強環4における嵌合筒部41の外周面との嵌合面11、折り返し部42の内周面との嵌合面12、及び円錐筒部43の外周面との嵌合面13などが形成されている。
【0023】
そして金型1による成形においては、まず金型1に補強環4をセットして型締めする。このとき、補強環4における外径フランジ部45はキャビティ2における外径フランジ部被覆層成形空間25内にあり、この外径フランジ部被覆層成形空間25のうちラビリンスリップ成形空間21が存在する側の空間25a側へ角度θをなして傾斜した状態にある。
【0024】
次に、型締めによって金型1の内面と補強環4との間に画成されたキャビティ2へ、その内周側から成形材料(成形用ゴム材料)を充填する。この成形材料は、図1に矢印Fで示すように、キャビティ2における外径フランジ部被覆層成形空間25へ流入する過程で、ラビリンスリップ成形空間21が存在する側の空間25aに先行充填されるので、その充填圧力P、詳しくは補強環4の外径フランジ部45を挟んで反対側の未充填の空間25bとの圧力差によって、前記外径フランジ部45は、未充填の空間25b側へ向けて曲げ変形を受ける。
【0025】
ここで、補強環4の外径フランジ部45は、成形材料の充填前は、軸心Oと直交する平面から、充填圧力Pによる曲げ変形方向と反対側へ、その変形量にほぼ相当する角度θだけあらかじめ傾斜した形状となっているため、充填圧力Pによる空間25b側への曲げ変形によって、外径フランジ部45は本来の円盤状もしくはそれに近似する形状に矯正される。しかもこのため、外径フランジ部45の外径端部は空間25b側の金型内面1aには押し付けられず、したがって、ラビリンスリップ成形空間21が存在する側の空間25aに先行充填された成形材料は、外径フランジ部45の外周側の隙間25cを迂回して空間25bへ円滑に充填される。
【0026】
上述の成形工程の後、型開きによって取り出される密封装置は、図2に示すように、補強環4と、これに一体的に加硫接着されたゴム状弾性材料からなるシール本体3を備え、シール本体3は、補強環4の外径フランジ部45の背面側に位置するラビリンスリップ31と、補強環4の円錐筒部43の背面側に位置する対ダスト用リップ32と、補強環4の内径フランジ部44の内径部に位置する対ダスト用リップ33及び対グリース用リップ34と、補強環4の外径フランジ部45を被覆するように形成された外径フランジ部被覆層35と、この外径フランジ部被覆層35と連続し、補強環4の嵌合筒部41の内周面から折り返し部42の外周面及び円錐筒部43の内周面を経て内径フランジ部44の内周縁に到る面を被覆するように形成された内径被覆層36からなる。ラビリンスリップ31は外径フランジ部被覆層35から延びており、対ダスト用リップ32、33及び対グリース用リップ34は内径被覆層36から延びている。
【0027】
この密封装置は、自動車用車輪懸架装置に車輪を回転自在に支持する軸受ユニットの密封手段として用いられるものであって、補強環4の嵌合筒部41の外周面が前記軸受ユニットの外輪110の内周面に圧入嵌着されると共に、対ダスト用リップ32,33及び対グリース用リップ34が前記軸受ユニットにおけるハブ120に摺動可能に密接され、前記外輪110の外周側へ延びる補強環4の外径フランジ部45の背面側に位置するラビリンスリップ31が前記ハブ120側に非接触で近接対向されることによって、外部Aからの軸受内部空間Sへの雨水、泥水あるいは塵埃等の異物が浸入するのを防止すると共に、軸受内部空間Sに充填されたグリースが外部Aへ漏洩するのを防止するものである。
【0028】
そして上述の製造方法によれば、補強環4の外径フランジ部45は、図2に二点鎖線で示す予備成形による傾斜形状から、シール本体3の成形に際して実線で示す略円盤状に矯正されることに加え、先に説明した図9に示す金型200の押さえ突起211,212による成形痕が存在せず、補強環4の外径フランジ部45は対ダスト用リップ32,33によるシール部及び外輪110との密接部よりも外側が外径フランジ部被覆層35で完全に被覆されているため、外部の泥水等に曝されることによる錆の発生が有効に防止される。
【0029】
次に図3図6は、本発明に係る密封装置の製造方法の他の実施の形態を示すものである。このうち、図3に示す第二の実施の形態は、上述した第一の実施の形態による構成に加え、補強環4の内径フランジ部44を、軸心Oと直交する平面よりも、図示の金型1へのセット状態における対ダスト用リップ成形空間23と反対側へ傾斜した形状としたものである。
【0030】
このようにすれば、ゲートからキャビティ2における内径被覆層成形空間26への成形材料の流動経路が広くなって流動抵抗を小さくすることができる。
【0031】
また、図4に示す第三の実施の形態は、補強環4の外径フランジ部45を、その径方向中間部45cにおいて、軸心Oと直交する平面から、キャビティ2における外径フランジ部被覆層成形空間25のラビリンスリップ成形空間21側の空間25aへ成形材料が流入する際の充填圧力による曲げ変形方向と反対側へあらかじめ傾斜した形状に形成し、内径部45a及び外径部45bにおいて軸心Oと直交する平面と平行(円盤状)に形成したものである。その他の構成は、第一の実施の形態と同様である。
【0032】
この形態によれば、第一の実施の形態と同様、金型1に補強環4をセットして型締めし、これによって金型1の内面と補強環4との間に画成されたキャビティ2へ、内周側から成形材料を充填すると、この成形材料は、キャビティ2における外径フランジ部被覆層成形空間25へ流入する過程で、ラビリンスリップ成形空間21が存在する側の空間25aに先行充填されるので、その充填圧力によって、前記外径フランジ部45は未充填の空間25b側へ向けて曲げ変形を受ける。
【0033】
しかしながら、補強環4の外径フランジ部45は、あらかじめ曲げ変形の方向と反対側へ傾斜した径方向中間部45cを有するため、成形材料の充填圧力によって外径フランジ部45が曲げ変形を受けても、その外径端部は空間25b側の金型内面1aには押し付けられない。したがってこの場合も第一の実施の形態と同様、補強環4の外径フランジ部45が対ダスト用リップ32,33によるシール部及び外輪との密接部よりも外側が外径フランジ部被覆層35で完全に被覆された構造の密封装置が得られる。
【0034】
また、図5に示す第四の実施の形態は、補強環4の外径フランジ部45が、その内径部45aから径方向中間部45cにかけての部分と外径部45bが、それぞれ軸心Oと直交する平面と平行(円盤状)に形成され、前記径方向中間部45cと外径部45bの間に、この外径部45bを、キャビティ2における外径フランジ部被覆層成形空間25のラビリンスリップ成形空間21側の空間25aへ成形材料が流入する際の充填圧力による曲げ変形方向と反対側へ偏在させる段差部45dが、円周方向へ連続してあらかじめ形成されたものである。その他の構成は、第一の実施の形態と同様である。
【0035】
この形態も、第一の実施の形態と同様、金型1に補強環4をセットして型締めし、これによって金型1の内面と補強環4との間に画成されたキャビティ2へ、内周側から成形材料を充填すると、この成形材料は、キャビティ2における外径フランジ部被覆層成形空間25へ流入する過程で、ラビリンスリップ成形空間21が存在する側の空間25aに先行充填されるので、その充填圧力によって、前記外径フランジ部45は未充填の空間25b側へ向けて曲げ変形を受ける。
【0036】
しかしながら、補強環4の外径フランジ部45の外径部45bは、あらかじめ段差部45dによって曲げ変形の方向と反対側へ偏在しているため、成形材料の充填圧力によって外径フランジ部45が曲げ変形を受けても、その外径端部は空間25b側の金型内面1aに押し付けられない。したがってこの場合も第一の実施の形態と同様、補強環4の外径フランジ部45が対ダスト用リップ32,33によるシール部及び外輪との密接部よりも外側が外径フランジ部被覆層35で完全に被覆された構造の密封装置が得られる。
【0037】
また、図6に示す第五の実施の形態は、補強環4の外径フランジ部45における径方向中間部45cに、あらかじめ複数の穴45eを円周方向所定間隔で開設したものである。なお、図6に示す例では外径フランジ部45が円盤状に形成されているが、先に説明した第一〜第四の実施の形態と同様の傾斜又は段差形状としても良い。
【0038】
この形態も、第一の実施の形態と同様、金型1に補強環4をセットして型締めし、これによって金型1の内面と補強環4との間に画成されたキャビティ2へ、内周側から成形材料を充填すると、この成形材料は、キャビティ2における外径フランジ部被覆層成形空間25へ流入する過程で、ラビリンスリップ成形空間21が存在する側の空間25aへ充填されるのとほぼ同時に、複数の穴45eを介して反対側の空間25bにも充填される。
【0039】
すなわち、成形材料の充填圧力は、補強環4の外径フランジ部45の両側の空間25a,25bで均圧するため、外径フランジ部45の外径端部は空間25b側の金型内面1aに押し付けられない。したがってこの場合も第一の実施の形態と同様、補強環4の外径フランジ部45が対ダスト用リップ32,33によるシール部及び外輪との密接部よりも外側が外径フランジ部被覆層35で完全に被覆された構造の密封装置が得られる。
【符号の説明】
【0040】
1 金型
2 キャビティ
25 外径フランジ部被覆層成形空間
3 シール本体
4 補強環
45 外径フランジ部(フランジ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10