(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778252
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】炭素繊維強化プラスチック引抜成形バー
(51)【国際特許分類】
B29C 70/06 20060101AFI20150827BHJP
B29C 70/52 20060101ALI20150827BHJP
F16C 3/02 20060101ALI20150827BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
B29C67/14 T
B29C67/14 D
F16C3/02
B29K105:08
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-506536(P2013-506536)
(86)(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公表番号】特表2013-525149(P2013-525149A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011002095
(87)【国際公開番号】WO2011134644
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】202010006303.5
(32)【優先日】2010年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507128388
【氏名又は名称】ゲーエムテー グミ−メタル−テクニーク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100183450
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 太知
(72)【発明者】
【氏名】ウール,アルベルト
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−193922(JP,A)
【文献】
特開昭52−142000(JP,A)
【文献】
特開昭64−074315(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0129041(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02645070(FR,A1)
【文献】
実開平01−073523(JP,U)
【文献】
特開昭59−050216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/04−70/56
F16C 3/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐部と円筒部とを含む金属製の管状端部を有する少なくとも1つのアダプタ(4)と、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で形成された内管体および外管体とからなる引抜成形バーであって、
前記CFRP外管体(1)が前記アダプタ(4)の前記円錐部に円錐状に外嵌し、
前記CFRP内管体(2)が、前記円筒部内に配置されており、前記アダプタ(4)の前記円筒部に内嵌接続しており、
前記CFRP内管体(2)における前記CFRP外管体(1)との接触領域の外側を弾性層(3)で被覆し、前記CFRP内管体(2)と前記CFRP外管体(1)の内側との間に前記弾性層(3)を配置して、前記CFRP内管体(2)と前記CFRP外管体(1)とを互いに分離することによって、保護と絶縁を提供することを特徴とする引抜成形バー。
【請求項2】
前記CFRP外管体(1)の径方向に関して、前記円筒部の周壁の厚みは、連続的に減少しており、前記円錐部の周壁の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の引抜成形バー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機構造において機械的な案内および支持を提供するための引抜成形バーに関する。
【背景技術】
【0002】
引抜成形バーは、機械工学および車両構造においても同様に使用することができる。
この様な引抜成形バーは、一般的に、略管状体からなり、その各端部には引抜成形バーを組み立てるためのアダプタが配置されている。この様な引抜成形バーは、引張荷重および圧縮荷重の両方を伝達する役割を果たす。通常、この種の管状体は、特にステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどの金属材料で構成される。しかし、この様な材料は、特に航空機構造において、重すぎるという不利な点があり、これは、外部ダメージに対する金属管の耐性から得られる利点を弱めるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、これは、特に航空機構造に使用される引抜成形バーにとって、炭素繊維強化プラスチック(以降、「CFRP」と称する)など、比較的軽い材料を使用する機会を提供する。本当のところ、CFRPからなる引抜成形バーは、既に公知である。しかし、この様なCFRP引抜成形バーは、アダプタに対する直接的な単純な接続ではあるが、航空機産業の要件を部分的に満たすだけの構造を有する一重壁の管状体のみで構成されている。航空機産業の一般的に厳しいテスト指針は、引抜成形バーが外部ダメージを受けた時でも、その目的を達成し、必要に応じて引張荷重および圧縮荷重の両方を伝達することを要件としている。しかし、この様な要件は、特大の一重壁のCFRP管状体しか達成することができない。そして、これは、重量の増加という不都合を呈する。
【0004】
したがって、本発明の課題は、重量の問題を克服する一方、それと同時に外部ダメージ(衝撃)の影響がなく、特に、均一な安定性を実質的に保持し、外部ダメージ(衝撃)が発生しても、引張および圧縮の両方において伝達力を維持する、引抜成形バーのための複合材料および構成を見付けることであった。この課題は、以下のごとく、本発明により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
衝撃によりダメージを受けたCFRP管状体が引張荷重を受ける能力は、殆ど影響を受けないが、圧縮荷重を受ける能力は大幅に減少することが、弾性実験により証明されている。したがって、特に管状体の圧縮荷重部分を衝撃から保護すべきであるが、驚くべきことに、炭素繊維強化プラスチック引抜成形バーからなる本質的に周知の単層管状体とは異なる以下の多層構造は、この問題を解決するために極めて有利であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本発明に係る引抜成形バーの管状体は、2つのCFRP管、すなわち、アダプタ(4)の金属延長部(この様なアダプタに通常存在するUリンクや螺合スリーブなどの末端部)に接続される外管体(1)および内管体(2)からなることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
CFRP外管体(1)および内管体(2)は、CFRP外管体(1)が先細りの管形態でアダプタ(4)の金属延長部に外嵌し、CFRP内管体(2)が内管の形態でアダプタの金属端部の下に位置するように、アダプタ(4)の金属端部に確実に接続されている。これに関して、CFRP外管体(1)は、引張荷重を伝達する役割を果たし、CFRP内管体(2)は、圧縮荷重を伝達することを意図している。この個別の引張/圧縮伝達は、CFRP管体(1)とアダプタの金属端部との間の円錐面によって達成される。金属端部(4)とCFRP外管体(1)との間の円錐面は、引張により発生するモーメントを吸収し、CFRP内管体(2)は、圧力を吸収する。しかし、経験上、CFRP管状体へのダメージは、引張荷重の場合よりも圧縮荷重を伝達したり受けたりする能力に与える影響の方が大きいので、圧縮荷重される引抜成形バーの部材、すなわち、CFRP内管体(2)を特に保護する必要がある。これは、薄い弾性層によって互いに分離されているCFRP外管体(1)とCFRP内管体(2)とを介して実施される。これを介して、外部の影響(衝撃)により発生するダメージに対して、CFRP内管体(2)を保護することができる。
【0008】
アダプタの金属端部がアルミニウムからなる場合、腐食防止のために、ガラス繊維層(GFL)を使用して、アダプタの金属端部をCFRP管状体の両端部から絶縁する必要がある。
管状体の材料として、CFRPと弾性体との複合材を使用する。この場合、圧縮荷重されるCFRP内管体(2)の部材用として、湿式/プリプレグ(予備含浸繊維)を巻き付けた管状物、引抜成形管状物、または、デュロマーまたは熱硬化性樹脂RTM法を使用して製造された管状物を使用することができる。引張荷重されるCFRP外管体(1)用としては、構造条件にもよるが、湿式/プリプレグ巻付法しか使用することができない。シリコーンラバーを弾性体として使用することが好ましい。
【0009】
本発明によると、CFRP引抜成形バーは、以下の工程を順次用いて製造することが好ましい。
まず、(予備含浸繊維を使用して)湿式/プリプレグをCFRP内管体(2)に巻き付けるか、引抜成形するか、デュロマーまたは熱硬化性樹脂RTM法を使用して、CFRP内管体(2)を製造する。その後、CFRP管体(2)上で弾性層(3)を加硫する。そして、金属端部(4)を取り付けて整合させた後、湿式/プリプレグ巻付法を使用してCFRP外管体(1)を製造し、アダプタの金属端部を覆うことによってCFRP外管体(1)を取り付ける。
【符号の説明】
【0010】
1: 外管体
2: 内管体
3: 弾性層
4: アダプタ