特許第5778253号(P5778253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778253
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/06 20060101AFI20150827BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20150827BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20150827BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20150827BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20150827BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20150827BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
   C10M169/06
   !C10M133/56
   !C10M139/00 A
   C10N20:04
   C10N30:06
   C10N40:02
   C10N50:10
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-507572(P2013-507572)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2012057802
(87)【国際公開番号】WO2012133345
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-77836(P2011-77836)
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JX日鉱日石エネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 修
(72)【発明者】
【氏名】坂本 清美
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−013083(JP,A)
【文献】 特開2009−185084(JP,A)
【文献】 特開2008−32150(JP,A)
【文献】 特開2010−229479(JP,A)
【文献】 軸受・潤滑便覧,1964年 1月30日,第2版,P372-386
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 169/06
C10M 133/56
C10M 139/00
C10N 20/04
C10N 30/06
C10N 40/02
C10N 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の潤滑油基油と、グリース組成物全量を基準として、増ちょう剤1〜40質量%と、アルケニルコハク酸イミド1.510質量%と、を含有し、部材の少なくとも1つが非鉄金属である潤滑部位に用いられ
前記アルケニルコハク酸イミドが、ホウ素を含有しないアルケニルコハク酸イミド、並びに、ホウ素含有量が、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド全量を基準として、0を超え0.025質量%以下であるホウ素含有アルケニルコハク酸イミドから選択される少なくとも1種であり、
前記アルケニルコハク酸イミドが重量平均分子量700〜1500のポリブテニル基を有するグリース組成物。
【請求項2】
前記非鉄金属が、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、ニッケル、クロム、亜鉛、すず、鉛及びチタン並びにこれらの合金から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記非鉄金属のビッカース硬さが150以下である、請求項1又は2に記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記非鉄金属が、アルミニウム又はその合金である、請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項5】
部材の少なくとも1つが非鉄金属である潤滑部位に、請求項1に記載のグリース組成物を接触させる潤滑方法。
【請求項6】
前記非鉄金属がアルミニウム又はその合金である、請求項5に記載の潤滑方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油及びグリース組成物に関し、特に非鉄金属の摩擦部分において良好な耐摩耗性能を有するグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム及びその合金(以下、アルミニウム材ともいう)等の非鉄金属は、強くて熱伝導性の良い軽金属であり、重量節減が重要となる輸送や構造物の分野で汎用されている。
【0003】
従来、非鉄金属を有する摺動部の潤滑に使用されているグリース組成物は、多くの場合、汎用のグリース組成物を転用したものである。しかし、この場合には、十分な摺動特性が得られないのが実情である。
【0004】
そこで、非鉄金属に対する潤滑性を改善する手段として、高級アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸、アルキレングリコールエステル化物、α−オレフィンなどの添加剤の使用が提案されている。これらの添加剤の中でも特に高級アルコール、次いで脂肪酸エステルの潤滑性改善効果が高いと考えられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−53685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の添加剤を用いたグリース組成物であっても、非鉄金属を有する摺動部に高荷重を掛けた極圧条件下で摺動させた場合には効果が無く、かじり(焼付き)が生じ摩耗が急激に進行してしまう。
【0007】
また、トリクレジルホスフェート(TCP)、あるいはモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)等の有機モリブデン化合物などの添加剤は、鉄材同士を摺動させる際に極圧条件下で焼付き防止効果を示すが、その効果は鉄と添加剤との化学反応に起因するものである。そのため、これらの添加剤を用いても、非鉄金属に対しては化学反応による表面改質がなされず、かじり防止効果が認められない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、非鉄金属を有する摺動部に高荷重を掛けて極圧条件下で摺動させた場合であっても、かじり(焼付き)及び摩耗を十分に抑制することができ、高水準の摺動特性を達成することが可能なグリース組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の潤滑油基油と、グリース組成物全量を基準として、増ちょう剤1〜40質量%と、アルケニルコハク酸イミド0.5〜15質量%と、を含有し、部材の少なくとも1つが非鉄金属である潤滑部位に用いられるグリース組成物を提供する。
【0010】
本発明におけるアルケニルコハク酸イミドは、ホウ素を含有しないアルケニルコハク酸イミド、並びに、ホウ素含有量が、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド全量を基準として、0を超え1.0質量%以下であるホウ素含有アルケニルコハク酸イミドから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、上記アルケニルコハク酸イミドは、重量平均分子量2000以下のポリブテニル基を有することが好ましい。
【0012】
また、上記非鉄金属は、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、ニッケル、クロム、亜鉛、すず、鉛及びチタン並びにこれらの2種以上の合金から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルミニウム、マグネシウム、銅及びチタン並びにこれらの合金から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0013】
また、上記非鉄金属のビッカース硬さは150以下であることが好ましい。本発明の他の態様は、部材の少なくとも1つが非鉄金属である潤滑部位に、上述のグリース組成物を接触させる潤滑方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非鉄金属を有する摺動部に高荷重を掛けて極圧条件下で摺動させた場合であっても、かじり(焼付き)及び摩耗を十分に抑制することができ、高水準の摺動特性を達成することが可能なグリース組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係るグリース組成物は、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の潤滑油基油と、グリース組成物全量を基準として、増ちょう剤1〜40質量%と、アルケニルコハク酸イミド0.5〜15質量%と、を含有する。
【0017】
潤滑油基油としては、鉱油及び/又は合成油を挙げることができる。鉱油としては、石油精製業の潤滑油製造プロセスで通常行われている方法により得られる、たとえば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの処理を1つ以上行って精製したものが挙げられる。
【0018】
また、合成油としては、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィン又はこれらの水素化物、エチレン−α−オレフィン共重合体;ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ3−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなどのポリオールエステル;アルキルナフタレン;アルキルベンゼン、ポリオキシアルキレングリコール;ポリフェニルエーテル;ジアルキルジフェニルエーテル;シリコーン油;又はこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
増ちょう剤としては、金属石けん、複合金属石けん等の石けん系、;ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物等の非石けん系など、あらゆる増ちょう剤が使用可能である。非石けん系増ちょう剤の内、ウレア化合物またはウレア・ウレタン化合物からなるウレア系増ちょう剤が、構造内に金属を含まず酸化安定性に優れ、また滴点が高く高温でもゲル状を保つことから好ましい。
【0020】
増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全量を基準として、1〜40質量%であり、好ましくは3〜30質量%である。増ちょう剤の含有量が1質量%に満たない場合は増ちょう剤としての効果が少ないため十分なグリース状とはならず、また40質量%を超えるとグリースとして硬くなりすぎて十分な潤滑性能を発揮することができない。
【0021】
アルケニルコハク酸イミドとしては、炭素数40〜400、好ましくは60〜350の直鎖又は分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するアルケニルコハク酸イミド化合物を例示することができる。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下するおそれがあり、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を超える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するおそれがある。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0022】
本実施形態におけるアルケニルコハク酸イミドとしては、より具体的には、イミド化に際してポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した下記一般式(1)で示されるモノタイプアルケニルコハク酸イミド及び/又はポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した下記一般式(2)で表されるビスタイプアルケニルコハク酸イミドを挙げることができる。
【化1】
【化2】
【0023】
上記一般式(1)及び一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数40〜400、好ましくは炭素数60〜350の、直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を示す。aは1〜10の整数、好ましくは2〜5の整数、bは1〜10の整数、好ましくは2〜5の整数を示す。
【0024】
本発明においては、コハク酸イミドはモノタイプ、ビスタイプのいずれも使用することができ、含有成分全体の数平均分子量は500〜10000が好ましく、より好ましくは1000〜5000、さらに好ましくは2000〜4000である。コハク酸イミドの重量平均分子量は1000〜20000が好ましく、より好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは3000〜5000である。数平均分子量が前記下限値未満であると潤滑油基油に対する溶解性が低下するおそれがあり、また、前記上限値を超えると潤滑油組成物の低温流動性が悪化するおそれがある。また、上記下限値未満および上限値を超えた場合には、摺動時に十分な耐摩耗性が得られない。本発明におけるコハク酸イミドの分子量の測定に関しては、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。
上記一般式(1)、(2)で示されるアルケニルコハク酸イミドにおいて、R、R及びRで示される基の重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、より好ましくは500〜2000、さらに好ましくは700〜1500である。
【0025】
また、アルケニルコハク酸イミドの窒素含有量は、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%である。
【0026】
アルケニルコハク酸イミドの製法は特に制限はなく、例えば、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物を、無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得られる。
【0027】
ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンが例示できる。
【0028】
ホウ素含有アルケニルコハク酸イミドは、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるアルケニルコハク酸イミドに、ホウ酸、ホウ酸塩又はホウ酸エステル等のホウ素化合物を作用させることにより得ることができる。ホウ酸としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸又はテトラホウ酸が挙げられる。
【0029】
本実施形態におけるコハク酸イミド化合物としては、ホウ素を含有しているもの、含有しないものいずれでも使用することができるが、耐焼付き性の点からはホウ素を含有しないアルケニルコハク酸イミドが好ましく、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミドを配合する場合のホウ素含有量は、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド全量を基準として、0質量%を超え1.0質量%以下、好ましくは0質量%を超え0.5質量%以下、より好ましくは0質量%を超え0.025質量%以下である。ホウ素量が1.0質量%を超えると、アルミニウム材料の耐焼付き性が不十分となる恐れがある。
【0030】
アルケニルコハク酸イミドの含有量は、グリース組成物全量を基準として、0.5〜15質量%であり、好ましくは1.5〜10質量%である。アルケニルコハク酸イミドの含有量が0.5質量%未満ではアルケニルコハク酸イミドの添加効果が十分発揮されず、一方、10質量%より多いと、アルミニウム材に対する耐焼付き性の点で、アルケニルコハク酸イミドの含有量に見合う効果が得られず、経済的に不利である。
【0031】
本実施形態に係るグリ−ス組成物は、その性質を損ねることがない限り、さらに性能を向上させるために必要に応じて固体潤滑剤、極圧剤、酸化防止剤、油性剤、さび止め剤、粘度指数向上剤などの添加剤を含有させることができる。
【0032】
固体潤滑剤としては具体的には例えば、黒鉛、カーボンブラック、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、ポリテトラフロロエチレン、二硫化モリブデン、硫化アンチモン、アルカリ(土類)金属ホウ酸塩などが挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、具体的には、2、6−ジ−t−ブチルフェノール、2、6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどのフエノール系化合物;ジアルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミンなどのアミン系化合物;硫黄系化合物;フェノチアジン系化合物などが挙げられる。
【0034】
極圧剤としては、具体的には、硫化油脂、硫化エステル、サルファイド、有機モリブデン化合物、りん酸エステル、亜りん酸エステル、酸性りん酸エスエル、チオフォスフェート、チオフォスファイトなどが挙げられる。
【0035】
油性剤としては、具体的には、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどのアミン類;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類;ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレートなどの脂肪酸エステル類;ラウリルアミド、ミリスチルアミド、パルミチルアミド、ステアリルアミド、オレイルアミドなどのアミド類;油脂などが挙げられる。
【0036】
さび止め剤としては具体的には、金属石けん類;ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコール部分エステル類;アミン類;リン酸;リン酸塩などが挙げられる。
粘度指数向上剤としては具体的には、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0037】
本実施形態に係るグリース組成物の滴点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは150℃以上である。滴点が前記下限値未満であると恒温使用時にゲル状を保つことが出来ず、潤滑不良や周囲を汚染する場合がある。
【0038】
本実施形態に係るグリース組成物は、部材の少なくとも1つがアルミニウム又は非鉄金属を有する潤滑部位の潤滑に好適に用いることができる。したがって、本実施形態に係るグリース組成物は、重量節減が重要となる輸送や構造物の分野において、非鉄金属用グリースとして非常に有用である。なお、本実施形態に係るグリース組成物が上記のような優れた効果を有する理由は、アルケニルコハク酸イミド化合物が非鉄金属に対して強く吸着し強固な油膜形成をすることにより潤滑性が著しく向上するためであると考えられる。
【0039】
非鉄金属としては、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、ニッケル、クロム亜鉛、すず、鉛及びチタン並びにこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。これらの中でも、アルミニウム、マグネシウム、銅及びチタン並びにこれらの合金から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。なお、これらの合金は、アルミニウムなどの金属を主成分とすることが好ましく、主成分以外の金属含有量が10質量%未満、さらには2質量%未満であることが好ましい。
【0040】
また、非鉄金属のビッカース硬さは150以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
[実施例1〜11、比較例1〜6]
実施例1〜11及び比較例1〜6においては、それぞれ以下に示す潤滑油基油及び添加剤を用いて、表1〜3に示す組成を有するグリース組成物を調製した。なお、C1〜C4の窒素含有量及びホウ素含有量は、それぞれホウ素含有アルケニルコハク酸イミド全量を基準とした窒素及びホウ素の含有量を意味する。
<潤滑油基油>
A1:ポリ−α−オレフィン(40℃での動粘度が47mm2/s)
A2:鉱油(40℃における動粘度95mm2/sの高度精製油)
A3:ポリオールエステル油(40℃における動粘度の30mm2/s)
<増ちょう剤>
B1:ウレア系増ちょう剤
B2:Ca石けん
B3:Li石けん
B4:Li石けん複合石けん
<アルケニルコハク酸イミド>
C1:アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:1000、窒素含有量:1.3%、ホウ素含有量:0%、化合物全体の数平均分子量:3030、化合物全体の重量平均分子量:4490)
C2:ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:1300、窒素含有量:1.6%、ホウ素含有量:0.44%、化合物全体の数平均分子量:3070、化合物全体の重量平均分子量:4430)
C3:ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:1000、窒素含有量:2.3%、ホウ素含有量:1.9%、化合物全体の数平均分子量:3010、化合物全体の重量平均分子量:4180)
C4:ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:2300、窒素含有量:0.88%、ホウ素含有量:0.23%、化合物全体の数平均分子量:4940、化合物全体の重量平均分子量:8040)
<その他の添加剤>
D1:ラウリルアルコール
D2:グリセリンモノオレート
D3:TCP(トリクレジルホスフェート)
D4:MoDTC(モリブデンジチオカーバメート)
【0043】
実施例1〜11及び比較例1〜6のグリース組成物の具体的な調整方法は以下の通りである。
まず、実施例1〜6、10、11及び比較例2においては、潤滑油基油A1〜A3のいずれかにジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にアルケニルコハク酸イミドC1〜C4のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、実施例7〜9においては、潤滑油基油A1(ポリ−α−オレフィン)に、増ちょう剤B2、B3又はB4と、アルケニルコハク酸イミドC1とを加え、撹拌した後にロールミルに通し、石けん系のグリース組成物を得た。
また、比較例1においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質を攪拌した後、ロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例3〜6においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にその他の添加剤D1〜D4のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。なお、本実施例のウレア系グリース組成物の滴点は250℃以上であった。
【0044】
[SRV振動摩擦摩耗試験I]
実施例1〜11及び比較例1〜6のグリース組成物に対して、SRV摩擦摩耗試験を下記の条件で実施し、SRV試験焼付き荷重(N)を測定した。
<試験条件>
試験片:10mmφ鋼球(SUJ2)/アルミニウム合金板(ADC12)
油温:25℃
ストローク:2mm
振動数:30Hz
時間:10分
ASTM D5706−97(Standard Test Method for Determining Extream Pressure Properties of Lubricating greases Using A High−Frequency, Linera−Oscillation (SRV) Test Machine)に準拠し、10分の摺動試験の間に摩擦係数が0.2を超えたときの荷重を焼き付き荷重(N)と判断した。
得られた結果を表1〜3に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表1、2に示した結果から、実施例1〜11のグリース組成物は、鉄−アルミニウム合金の摺動における焼付き荷重が高く、鉄及びアルミニウム合金の摩擦摩耗を低くするグリース組成物であることが分かる。
これに対して、表3に示した結果から、アルケニルコハク酸イミドを添加していない比較例1、2のグリース組成物は、鉄−アルミニウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。また、比較例4〜5のグリース組成物は、非鉄金属の耐摩耗性に効果があるラウリルアルコール又はグリセリンモノオレートを含有するものであるにも関わらず、高荷重における鉄−アルミニウム合金の摺動には摩耗低減効果が不十分である。
また、比較例6〜7のグリース組成物は、鉄材どうしの極圧下で焼付き防止効果のあるトリクレジルホスフェート(TCP)又は有機モリブデン化合物(MoDTC)を含有するものであるにも関わらず、比較例1、2のグリース組成物と同様に鉄−アルミニウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。
この結果は、ラウリルアルコール、グリセリンモノオレート、TCP又はMoDTCを用いても、アルミニウム材に対して化学反応による表面改質がなされず、かじり(焼付き)防止効果が得られないことを支持するものである。
【0049】
[実施例12〜17、比較例7〜9]
実施例12〜17及び比較例7〜9においては、それぞれ上記の潤滑油基油A1〜A3及び添加剤B1、C1、C2、D1、D3を用いて、表4、5に示す組成を有するグリース組成物を調製した。
【0050】
実施例12〜17及び比較例7〜9のグリース組成物の具体的な調整方法は以下の通りである。
まず、実施例12〜17においては、潤滑油基油A1〜A3のいずれかにジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にアルケニルコハク酸イミドC1、C2のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例7においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質を攪拌した後、ロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例8、9においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にその他の添加剤D1〜D4のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
【0051】
[SRV振動摩擦摩耗試験II]
実施例12〜17及び比較例7〜9のグリース組成物に対して、試験片のうちアルミニウム合金板(ADC12)をマグネシウム合金板(AZ31)に変更したこと以外は上記のSRV振動摩擦摩耗試験Iと同様にして、SRV摩擦摩耗試験を実施し、SRV試験焼付き荷重(N)を測定した。得られた結果を表4、5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
表4に示した結果から、実施例12〜17のグリース組成物は、鉄−マグネシウム合金の摺動における焼付き荷重が高く、鉄及びマグネシウム合金の摩擦摩耗を低くするグリース組成物であることが分かる。
これに対して、表5に示した結果から、アルケニルコハク酸イミドを添加していない比較例7のグリース組成物は、鉄−マグネシウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。また、比較例8、9のグリース組成物は、非鉄金属に摩耗防止効果のあるラウリルアルコール又は、鉄材どうしの極圧下で焼付き防止効果のあるトリクレジルホスフェート(TCP)を含有するものであるにも関わらず、比較例7のグリース組成物と同様に鉄−マグネシウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。この結果は、ラウリルアルコールやTCPを用いても、マグネシウム、マグネシウム合金等のマグネシウム材に対して化学反応による表面改質がなされず、かじり(焼付き)防止効果が得られないことを支持するものである。
【0055】
[実施例18、比較例10]
実施例18及び比較例10においては、それぞれ上記の潤滑油基油A1及び添加剤B1、C1を用いて、表6に示す組成を有するグリース組成物を調製した。
【0056】
実施例18及び比較例10のグリース組成物の具体的な調整方法は以下の通りである。
まず、実施例18においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にアルケニルコハク酸イミドC1を加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例10においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質を攪拌した後、ロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
【0057】
[SRV振動摩擦摩耗試験III]
実施例18及び比較例10のグリース組成物に対して、試験片のうちアルミニウム合金板(ADC12)を銅合金板(C3604材)に変更したこと以外は上記のSRV振動摩擦摩耗試験Iと同様にして、SRV摩擦摩耗試験を実施し、SRV試験焼付き荷重(N)を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
表6に示した結果から、実施例18のグリース組成物は、鉄−銅合金の摺動における焼付き荷重が高く、鉄及び銅合金の摩擦摩耗を低くするグリース組成物であることが分かる。
これに対して、表6に示した結果から、アルケニルコハク酸イミドを添加していない比較例10のグリース組成物は、鉄−銅合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。