【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
[実施例1〜11、比較例1〜6]
実施例1〜11及び比較例1〜6においては、それぞれ以下に示す潤滑油基油及び添加剤を用いて、表1〜3に示す組成を有するグリース組成物を調製した。なお、C1〜C4の窒素含有量及びホウ素含有量は、それぞれホウ素含有アルケニルコハク酸イミド全量を基準とした窒素及びホウ素の含有量を意味する。
<潤滑油基油>
A1:ポリ−α−オレフィン(40℃での動粘度が47mm
2/s)
A2:鉱油(40℃における動粘度95mm
2/sの高度精製油)
A3:ポリオールエステル油(40℃における動粘度の30mm
2/s)
<増ちょう剤>
B1:ウレア系増ちょう剤
B2:Ca石けん
B3:Li石けん
B4:Li石けん複合石けん
<アルケニルコハク酸イミド>
C1:アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:1000、窒素含有量:1.3%、ホウ素含有量:0%、化合物全体の数平均分子量:3030、化合物全体の重量平均分子量:4490)
C2:ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:1300、窒素含有量:1.6%、ホウ素含有量:0.44%、化合物全体の数平均分子量:3070、化合物全体の重量平均分子量:4430)
C3:ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:1000、窒素含有量:2.3%、ホウ素含有量:1.9%、化合物全体の数平均分子量:3010、化合物全体の重量平均分子量:4180)
C4:ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:2300、窒素含有量:0.88%、ホウ素含有量:0.23%、化合物全体の数平均分子量:4940、化合物全体の重量平均分子量:8040)
<その他の添加剤>
D1:ラウリルアルコール
D2:グリセリンモノオレート
D3:TCP(トリクレジルホスフェート)
D4:MoDTC(モリブデンジチオカーバメート)
【0043】
実施例1〜11及び比較例1〜6のグリース組成物の具体的な調整方法は以下の通りである。
まず、実施例1〜6、10、11及び比較例2においては、潤滑油基油A1〜A3のいずれかにジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にアルケニルコハク酸イミドC1〜C4のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、実施例7〜9においては、潤滑油基油A1(ポリ−α−オレフィン)に、増ちょう剤B2、B3又はB4と、アルケニルコハク酸イミドC1とを加え、撹拌した後にロールミルに通し、石けん系のグリース組成物を得た。
また、比較例1においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質を攪拌した後、ロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例3〜6においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にその他の添加剤D1〜D4のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。なお、本実施例のウレア系グリース組成物の滴点は250℃以上であった。
【0044】
[SRV振動摩擦摩耗試験I]
実施例1〜11及び比較例1〜6のグリース組成物に対して、SRV摩擦摩耗試験を下記の条件で実施し、SRV試験焼付き荷重(N)を測定した。
<試験条件>
試験片:10mmφ鋼球(SUJ2)/アルミニウム合金板(ADC12)
油温:25℃
ストローク:2mm
振動数:30Hz
時間:10分
ASTM D5706−97(Standard Test Method for Determining Extream Pressure Properties of Lubricating greases Using A High−Frequency, Linera−Oscillation (SRV) Test Machine)に準拠し、10分の摺動試験の間に摩擦係数が0.2を超えたときの荷重を焼き付き荷重(N)と判断した。
得られた結果を表1〜3に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表1、2に示した結果から、実施例1〜11のグリース組成物は、鉄−アルミニウム合金の摺動における焼付き荷重が高く、鉄及びアルミニウム合金の摩擦摩耗を低くするグリース組成物であることが分かる。
これに対して、表3に示した結果から、アルケニルコハク酸イミドを添加していない比較例1、2のグリース組成物は、鉄−アルミニウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。また、比較例4〜5のグリース組成物は、非鉄金属の耐摩耗性に効果があるラウリルアルコール又はグリセリンモノオレートを含有するものであるにも関わらず、高荷重における鉄−アルミニウム合金の摺動には摩耗低減効果が不十分である。
また、比較例6〜7のグリース組成物は、鉄材どうしの極圧下で焼付き防止効果のあるトリクレジルホスフェート(TCP)又は有機モリブデン化合物(MoDTC)を含有するものであるにも関わらず、比較例1、2のグリース組成物と同様に鉄−アルミニウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。
この結果は、ラウリルアルコール、グリセリンモノオレート、TCP又はMoDTCを用いても、アルミニウム材に対して化学反応による表面改質がなされず、かじり(焼付き)防止効果が得られないことを支持するものである。
【0049】
[実施例12〜17、比較例7〜9]
実施例12〜17及び比較例7〜9においては、それぞれ上記の潤滑油基油A1〜A3及び添加剤B1、C1、C2、D1、D3を用いて、表4、5に示す組成を有するグリース組成物を調製した。
【0050】
実施例12〜17及び比較例7〜9のグリース組成物の具体的な調整方法は以下の通りである。
まず、実施例12〜17においては、潤滑油基油A1〜A3のいずれかにジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にアルケニルコハク酸イミドC1、C2のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例7においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1〜A3のいずれかに加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質を攪拌した後、ロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例8、9においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にその他の添加剤D1〜D4のいずれかを加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
【0051】
[SRV振動摩擦摩耗試験II]
実施例12〜17及び比較例7〜9のグリース組成物に対して、試験片のうちアルミニウム合金板(ADC12)をマグネシウム合金板(AZ31)に変更したこと以外は上記のSRV振動摩擦摩耗試験Iと同様にして、SRV摩擦摩耗試験を実施し、SRV試験焼付き荷重(N)を測定した。得られた結果を表4、5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
表4に示した結果から、実施例12〜17のグリース組成物は、鉄−マグネシウム合金の摺動における焼付き荷重が高く、鉄及びマグネシウム合金の摩擦摩耗を低くするグリース組成物であることが分かる。
これに対して、表5に示した結果から、アルケニルコハク酸イミドを添加していない比較例7のグリース組成物は、鉄−マグネシウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。また、比較例8、9のグリース組成物は、非鉄金属に摩耗防止効果のあるラウリルアルコール又は、鉄材どうしの極圧下で焼付き防止効果のあるトリクレジルホスフェート(TCP)を含有するものであるにも関わらず、比較例7のグリース組成物と同様に鉄−マグネシウム合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。この結果は、ラウリルアルコールやTCPを用いても、マグネシウム、マグネシウム合金等のマグネシウム材に対して化学反応による表面改質がなされず、かじり(焼付き)防止効果が得られないことを支持するものである。
【0055】
[実施例18、比較例10]
実施例18及び比較例10においては、それぞれ上記の潤滑油基油A1及び添加剤B1、C1を用いて、表6に示す組成を有するグリース組成物を調製した。
【0056】
実施例18及び比較例10のグリース組成物の具体的な調整方法は以下の通りである。
まず、実施例18においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質にアルケニルコハク酸イミドC1を加え、攪拌した後にロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
また、比較例10においては、潤滑油基油A1にジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解させ、これにシクロヘキシルアミンを潤滑油基油A1に加熱溶解させたものを加えた。生成したゲル状物質を攪拌した後、ロールミルに通し、ウレア系グリース組成物を得た。
【0057】
[SRV振動摩擦摩耗試験III]
実施例18及び比較例10のグリース組成物に対して、試験片のうちアルミニウム合金板(ADC12)を銅合金板(C3604材)に変更したこと以外は上記のSRV振動摩擦摩耗試験Iと同様にして、SRV摩擦摩耗試験を実施し、SRV試験焼付き荷重(N)を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
表6に示した結果から、実施例18のグリース組成物は、鉄−銅合金の摺動における焼付き荷重が高く、鉄及び銅合金の摩擦摩耗を低くするグリース組成物であることが分かる。
これに対して、表6に示した結果から、アルケニルコハク酸イミドを添加していない比較例10のグリース組成物は、鉄−銅合金の摺動に対する摩耗低減効果が不十分であることが分かる。