(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778291
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
F02M 47/00 20060101AFI20150827BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
F02M47/00 P
F02M61/16 J
F02M61/16 A
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-536954(P2013-536954)
(86)(22)【出願日】2011年11月2日
(65)【公表番号】特表2013-541670(P2013-541670A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】AT2011000444
(87)【国際公開番号】WO2012058703
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年7月8日
(31)【優先権主張番号】A1809/2010
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503471891
【氏名又は名称】ロバート ボッシュ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラシュポイントナー、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウンテルベルガー、ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】グッゲンビヒラー、フランツ
【審査官】
赤間 充
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−540196(JP,A)
【文献】
特開2000−205081(JP,A)
【文献】
特開平10−213043(JP,A)
【文献】
特開平11−093800(JP,A)
【文献】
特開2004−332602(JP,A)
【文献】
特表2009−501863(JP,A)
【文献】
米国特許第07603984(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00〜71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのインジェクタ(1)を有する内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するためのデバイスであって、前記少なくとも1つのインジェクタ(1)が、
高圧蓄圧器(6)を含むインジェクタ本体と、
軸方向に変位可能に前記インジェクタ(1)に案内され、ノズル室(19)に囲まれたノズルニードル(15)と、
前記高圧蓄圧器(6)を前記ノズル室(19)に接続する高圧管路(8)と、
前記高圧管路(8)と並列に配置され、前記ノズル室(19)と連通し、レゾネータのスロットル(21)を介して前記高圧蓄圧器(6)に開口するレゾネータ管路(20)とを備える、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するためのデバイスにおいて、
前記レゾネータ管路(20)及び前記高圧管路(8)が、少なくとも前記高圧蓄圧器(6)に隣接する部分において保持体(5)中に形成され、前記保持体(5)が、その端面において、前記高圧蓄圧器(6)を形成する蓄圧器パイプ(22)にねじ嵌めされており、その端面において前記蓄圧器パイプ(22)にねじ嵌めされている前記保持体(5)が、前記レゾネータ管路(20)の口及び前記高圧管路(8)の口を囲む環状凹部(27)を備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記保持体(5)が、その端面に、前記保持体(5)と前記蓄圧器パイプ(22)との間の接続部を封止するために、前記蓄圧器パイプ(22)の円すいシート(24)と協働する円すいシート(23)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記保持体(5)の前記円すいシート(23)の円すい角が、前記蓄圧器パイプ(22)の前記円すいシート(24)の円すい角よりも小さいことを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記保持体(5)の前記円すいシート(23)が、前記蓄圧器パイプ(22)の内壁(26)から前記高圧蓄圧器(6)の内側に突出することを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記環状凹部(27)が、前記保持体(5)の前記端面において環状凸部(28)に囲まれ、前記凸部(28)が端面(29)を有し、前記凸部(28)の前記端面(29)の反対側に、前記レゾネータ管路(20)の前記口が軸方向に後退するように配置されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記保持体(5)の直径が、前記レゾネータ管路(20)の直径の少なくとも4倍に相当することを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのインジェクタを有する内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するためのデバイスに関するものである。少なくとも1つのインジェクタは、高圧蓄圧器を含むインジェクタ本体と、軸方向に変位可能にインジェクタに案内され、ノズル室に囲まれたノズルニードルと、高圧蓄圧器をノズル室に接続する高圧管路と、高圧管路と並列に配置され、ノズル室と連通し、レゾネータのスロットルを介して高圧蓄圧器に開口するレゾネータ管路とを備える。
【背景技術】
【0002】
コモンレールシステムにおいて、機関の燃焼室に燃料を噴射するために電子制御式インジェクタが使用されている。そのようなインジェクタに用いられるサーボバルブでは、噴射ノズルが非常に急速に閉鎖され、その結果、連続する高圧孔中の燃料の慣性によりノズルシートに強力な圧力脈動が生じ、このことが強い摩耗をもたらすことになる。最も好ましくない場合では、高圧孔に生じる圧力のピークは、レール圧力よりも最大50MPa(500bar)高くなる。
【0003】
さらに、高速で連続する一連の噴射手順では、そのような圧力振動は、噴射速度の激しい振れをもたらすことになる。たとえば、先行する噴射により圧力振動がノズルシートに引き起こされる場合、2回目の続く噴射の噴射量は、ノズルニードルの一定の開時間で、2回目の噴射が圧力振動の最大時に行われたか、又は圧力振動の最小時に行われたかによって異なることになる。したがって、液圧システムのいずれの動作状態においても、インジェクタでは圧力振動ができるだけ少ないことが望ましい。
【0004】
特許文献には、液圧システムにおける圧力振動を回避するための多くの手段が記載されている。ほとんどの場合、これらの手段は、減衰容量、スロットルの構成、バルブの構成又は前記手段の組合せを含む。最もよく用いられるのは、スロットルの構成であり、これは、流動エネルギーから静圧エネルギーへの散逸に寄与するはずである。
【0005】
したがって、たとえば、欧州特許出願公開第1217202号明細書には、圧力振動のより迅速な減衰を可能にするように、高圧管路(コモンレール)から出発しインジェクタに至る高圧孔に逆止めバルブ及び散逸要素を並列に配置することが開示されている。
【0006】
独国特許出願公開第160785号明細書によれば、高圧管路から供給される燃料噴射管路の圧力脈動を最小にするために、噴射管路の断面を減少させるスロットルが、高圧管路への接続部位に設置されている。
【0007】
国際公開第2007/143768号には、インジェクタと高圧蓄圧器との間に高圧管路と並列に配置されたレゾネータ管路が設置される構成が開示されている。この構成は、高圧蓄圧器の側にレゾネータのスロットルを備える。レゾネータのスロットルは、好ましくはレゾネータ管路の高圧蓄圧器への入口に配置される。
【0008】
したがって、国際公開第2007/143768号に開示されている構成は、高圧管路が2つの相互に独立した部分に分けられており、そのうちの1つは、ノズルシートに生じる圧力振動が2つの部分において別々に反射され、反射された振動がそれらの位相オフセットによりほとんど消失されるように、スロットルが設置される。そうすることによって、管路振動のみが消失され、液圧システムの機能は、スロットルがない液圧システムと全く同じように再現される。
【0009】
しかし、この場合において、レゾネータのスロットルの移行領域に応力が発生し、棒状のレゾネータ要素が高圧蓄圧器本体に押圧されると微小運動が観察される。したがって、圧入式ロッドレゾネータのようなレゾネータ本体の構成は、こうした微小運動のために、さらには押圧力が制限されるために、180MPa(1800bar)よりも高いシステム圧力には使用することができないといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1217202号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第160785号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/143768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、180MPa(1800bar)よりも高いシステム圧力下であってもレゾネータ要素の安全で安定した構成を保証し、レゾネータのスロットル及び高圧孔それぞれの移行領域における応力を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明は、最初に定める種類のデバイスから出発し、本質的には、レゾネータ管路及び高圧管路が、少なくとも高圧蓄圧器に隣接する部分において保持体中に形成され、保持体が、その端面において、高圧蓄圧器を形成する蓄圧器パイプにねじ嵌めされていることを提供する。したがって、保持体は、高圧孔と、これに並列に配置されたレゾネータ要素であるレゾネータ孔との両方を備え、保持体が、その端面において、高圧蓄圧器を形成する蓄圧器パイプにねじ嵌めされていることにより、高圧蓄圧器とレゾネータ要素の孔との直接接続が確立され、また、このねじ接続により、高いシステム圧力に適した極めて安定な接続が得られる。単純な様式でねじ接続することにより、円すいシートの領域に十分な接触圧力を適用することが可能になり、この文脈における好ましい構成では、保持体と蓄圧器パイプとの間の接続部を封止するために、保持体がその端面に、蓄圧器パイプの円すいシートと協働する円すいシートを備えることを提供する。そのような円すいシートにより、十分な封止、及びレゾネータのスロットルを備える保持体の安定化の両方がもたらされ、それゆえ、高いシステム圧力においてさえ微細運動を防止する。さらに好ましい構成に対応すれば、保持体の円すいシートの円すい角が、蓄圧器パイプの円すいシートの円すい角よりも小さい場合、蓄圧器パイプと保持体との間の輪状の線接触が円すいシートの領域に得られ、それぞれの接触対象にもたらされる力の集中がこの接触線に沿って生じ、ここで蓄圧器パイプの縁部は、この領域の保持体の円すいシートに押し込まれることさえ可能であり、これにより安定化がさらに促進されることになる。
【0013】
レゾネータのスロットルとレゾネータ管路との間の移行領域における応力の発生を最小にするために、好ましいさらなる発展例によれば、その端面において蓄圧器パイプにねじ嵌めされている保持体が、レゾネータ管路の口及び高圧管路の口を囲む環状凹部を備えることが提供される。そのような環状凹部の領域において、高圧蓄圧器に広がる液圧を利用して、前記移行領域の方向に作用する力を保持体に導入することができる。この場合、移行領域の方向に外部から保持体に作用する力は、レゾネータ管路の前記移行領域に生じる力に対する反力として作用し、その結果、全体としては、安定化効果が得られ、望ましくない局所的な応力の状態が回避されることになる。
【0014】
好ましいさらなる発展例によれば、環状凹部が、保持体の端面において環状凸部によって囲まれ、前記凸部が、その反対側にレゾネータ管路の口が軸方向に後退するように配置される端面を有する場合、本文脈における作用の促進が得られることになる。
【0015】
有利な態様においては、保持体の直径が、レゾネータ管路の直径の少なくとも4倍、好ましくは少なくとも8倍に相当することが提供される。
【0016】
以下において、図面に概略的に示す代表的な実施例として、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】高圧蓄圧器を備えるインジェクタの概略的な断面図である。
【
図2】保持体及び高圧蓄圧器の領域の詳細図である。
【
図3】レゾネータ管路と高圧蓄圧器との接続領域の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、噴射ノズル2と、スロットル板3と、バルブ板4と、支持体5(保持体5)と、高圧蓄圧器6とを備えるインジェクタ1を示し、支持体5にねじ嵌めされているノズル緊締ナット7が、噴射ノズル2、スロットル板3及びバルブ板4を一緒に保持している。アイドル状態では、高圧燃料が高圧蓄圧器6から高圧管路8、横接続部9及び入口スロットル10を介して噴射ノズル2の制御室11に流れ、且つ出口スロットル12を介する制御室11からの排出がソレノイドバルブ13のバルブシートで阻止されるように、ソレノイドバルブ13は閉鎖している。制御室11に加えられるシステム圧力が、ノズルスプリング14の力と共に、噴孔17が閉鎖されるようにノズルニードル15をノズルニードルシート16に押圧する。ソレノイドバルブ13が作動すると、ソレノイドバルブシートを介する通路が使用可能となり、燃料は、制御室11から出口スロットル12、ソレノイドバルブのアンカー室、及び低圧孔18を通って流れ、燃料タンク(図示せず)に戻ることになる。制御室11では、入口スロットル10及び出口スロットル12の流れの断面によって定義される平衡圧が確立されるが、この平衡圧は、ノズル室19に適用されるシステム圧力が、ノズルニードル15を開放することができるほど低く、このノズルニードル15は、噴孔17を開け噴射を行うように、ノズル本体に長手方向に変位可能に案内される。
【0019】
流動燃料は非常に短時間内に制動する必要があるため、蓄圧器6、高圧管路8及びノズル室19における燃料の慣性により、ノズルニードル15を閉鎖した直後に強い圧力振動がノズルシート16に生ずることになる。圧力振動を低減するためにレゾネータが使用される。レゾネータは、高圧管路8と同じ長さ及び同じ直径を有するレゾネータ管路20、並びにレゾネータ管路20の蓄圧器側の端部に取り付けられレゾネータ管路20を蓄圧器6に接続するレゾネータのスロットル21で構成される。ソレノイドバルブ13を閉鎖すると、ノズルシート16に形成される圧力脈動が、ノズル室19を介して高圧管路8及びレゾネータ管路20に伝播することになる。高圧管路8の端部では、蓄圧器6への移行時に開口端部に圧力脈動の反射が起こることになる。それと同時に、レゾネータ管路20に進行する圧力脈動が、閉鎖端部でレゾネータのスロットル21において反射されることになる。2つの反射した圧力脈動は、反射の種類が異なる(開口端及び閉鎖端)ために位相が180°ずれ、したがって2つの反射した圧力脈動がノズル室19で一緒になると互いを打ち消す。この結果、さらなる圧力脈動はノズルシート16に生じず、かくしてノズルシート16での摩耗は著しく減少することになる。
【0020】
図2による詳細図から、保持体5が、その端面において、高圧蓄圧器6を形成する蓄圧器パイプ22にねじ嵌めされていることが明らかである。保持体5は、その端面に、蓄圧器パイプ22の円すいシート24と協働する円すいシート23を有し、保持体5と蓄圧器パイプ22との間の接続部を封止する。環状シール25がさらなる封止を提供する。
【0021】
図3から、保持体5の円すいシート23の円すい角が、蓄圧器パイプ22の円すいシート24の円すい角よりも小さく、保持体5の円すいシート23が、蓄圧器パイプ22の内壁26から高圧蓄圧器6の内側に突出していることが明らかである。さらに、端面が蓄圧器パイプ22にねじ嵌めされている保持体5が、レゾネータ管路20の口及び高圧管路8の口を囲む環状凹部27を備えることが明らかである。環状凹部27は、保持体5の端面に設けられた環状凸部28によって囲まれ、この凸部は端面29を有し、凸部の端面29の反対側に、レゾネータ管路20の口及びレゾネータのスロットル21が軸方向に後退するように配置される。