(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予想流量算出部は、作成された第2予想流量データにおける現在の予想流量と取得した実績流量との偏差を算出し、偏差が所定値以上であるか否かを検証する検証部をさらに有し、
検証部は、偏差が所定値以上であるときに、作成された第2予想流量データを補正流量算出部に送り、
補正量算出部は、再度、補正降雨量を算出し、
予想流量データ作成部は、再度算出された補正降雨量を用いて第2予想流量データを作成することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の流量予想装置。
流域に設けられる複数の雨量観測所と、現在の流量である実績流量を観測する制御所と、雨量観測所から降雨量を取得するとともに、作成された第2予想流量データを制御所に送信する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の流量予測装置とを備えることを特徴とする流量予測システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の流量予想装置では、複数回の乱数を発生させてその都度修正予報雨量を算出する必要があるので、最終的な一つの修正予報雨量を算出するのに同じ処理を複数回繰り返す必要がある。これにより、特許文献1の流量予想装置では、処理負荷が高くなることが考えられる。特に、昨今では、電力所等と複数の制御所をオンラインで結び、算出された予想流量をリアルタイムに更新することが望まれている。そのため、処理負荷の少ない手法で、確度の高い予想流量が算出されることが好ましい。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、処理負荷の少ない手法で、確度の高い予想流量を算出可能な流量予想装置及び流量予想システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る流量予想装置は、現在の河川の実際の流量である実績流量に沿って、将来に予想される河川の予想流量データを算出する流量予想装置であって、河川流域の降雨量を時系列で格納する流出成分データベースと、河川流域の降雨量から予め算出された予想流量データを第1予想流量データとして格納する予想流量データベースと、実績流量に即した第2予想流量データを作成し、第1予想流量データと置き換える予想流量算出部とを備え、予想流量算出部は、現在の実績流量を取得する実績流量取得部と、第1予想流量データに示される現在の予想流量と取得した現在の実績流量との偏差から補正係数を求め、補正係数と流出成分データベースに時系列で格納された降雨量のそれぞれとを乗算した補正降雨量を算出する補正量算出部と、補正降雨量を用いて、現在から将来にわたる予想流量である第2予想流量データを作成して、第1予想流量データを置き換える予想流量データ作成部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる流量予想システムは、流域に設けられる複数の雨量観測所と、現在の流量である実績流量を観測する制御所と、雨量観測所から降雨量を取得するとともに、作成された第2予想流量データを制御所に送信する流量予測装置を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、第1予想流量データで示される予想流量に対して、現在の実績流量の偏差があるときに、補正量算出部は、偏差を補正係数として、流出成分データベースに時系列に格納された降雨量を補正する。これにより、補正量算出部は、偏差に応じて補正された補正降雨量を取得する。予想流量データ作成部は、補正降雨量に基づく第2予想流量データを作成することで、現在の実績流量に沿った予想流量データを作成することができる。偏差に従って算出される補正係数を用いて補正降雨量を算出し、補正降雨量を用いて第2予想流量データを作成するだけであるので、補正降雨量の算出までを繰り返す必要がなく処理負荷を少なくすることができ、しかも実績流量に沿う確度の高い流量予測装置を提供することができる。
【0012】
また、かかる構成において、補正量算出部は、第1予想流量データに示される現在の予想流量と現在の実績流量との偏差を算出する流量差算出部と、偏差に基づいて降雨量を補正するための補正係数を算出する補正係数算出部と、流出成分データベースに時系列で格納された降雨量のそれぞれに補正係数を乗算して、補正降雨量を算出する補正降雨量算出部とを有してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、流量算出部によって求められた偏差から、補正係数算出部が補正係数を算出する。補正降雨量算出部が、時系列で格納された降雨量のそれぞれに補正係数を乗算して、補正降雨量を算出するので、現在の実績流量にあった補正降雨量を得ることができる。これにより、補正降雨量の算出までを繰り返す必要がなく処理負荷を少なくすることができ、しかも実績流量に沿う確度の高い流量予測装置を提供することができる。
【0014】
また、上記態様において、任意の降雨量に対応する河川の流量の変化を経過時間毎に示す流出特性データを格納する流出特性データベースをさらに備え、予想流量データ作成部は、全ての補正降雨量のそれぞれに対応する流出特性データを読み出して、現在から将来にわたる時刻毎に流出特性データに示される流量を合算することで第2予想流量データを作成してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、予想流量データ作成部は、補正降雨量に対応する流出特性データを読み出して、時間毎に単に合算することで第2予測流量データを作成することができる。これにより、第2予測流量データを作成する際にも処理を軽減することができる。
【0016】
また、上記態様において、流出成分データベースは、河川の基底流量をさらに格納し、補正係数算出部は、実績流量と基底流量との差を、第1予想流量データに示される現在の予想流量と基底流量との差で除算することで補正係数を算出してもよい。
【0017】
かかる構成によれば、補正係数は、単に減算及び除算することで算出されるので、補正係数の算出に係る処理負荷を軽減できる。
【0018】
また、上記態様において、流出成分データベースは、降雨量として、地下水に流出する地下水流出成分降雨と河川流域の
地表から地下水に至るまでの間に流出する表面中間流出成分降雨とを格納し、補正降雨量算出部は、地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨のそれぞれに補正係数を乗算することで、補正降雨量を算出してもよい。
【0019】
かかる構成によれば、降雨量を地下水流出成分降雨と表面中間流出成分降雨とに分けることで、降雨量を細分化する。これにより、流域の状況や、降雨の時間に応じた流出量を得ることができる。そして、補正量算出部が、細分化されたこれらの降雨量に補正係数を乗算して補正降雨量を算出するので、より確度の高い補正降雨量を得ることができる。
【0020】
また、上記態様において、流域への降雨量を分離するためのパラメータを成分分離テーブルとして格納する成分分離データベースと、所定の時間毎に流域の降雨量を取得する降雨量取得部と、成分分離データベースから成分分離テーブルを取得するとともに、取得された降雨量から流域の平均降雨量を算出し、成分分離テーブルに基づいて、平均降雨量を分離して流出成分データベースに格納する平均降雨量算出部とをさらに備えてもよい。
【0021】
かかる構成によれば、河川流域への降雨量を成分に分離するためのパラメータを用いて、降雨量を各成分に分離することができる。これにより、河川流域特有の状況(地層の状況や、出水時間等)を用いて、降雨量を各成分に分離することができる。そして、平均降雨量を用いることで、流域への降雨の偏りを是正することができる。流出成分データベースは、流域への降雨の偏りや、河川流域特有の状況を加味した降雨量の各成分を格納することができるので、より確度の高い情報を格納することができる。
【0022】
また、上記態様において、予想流量算出部は、作成された第2予想流量データにおける現在の予想流量と取得した実績流量との偏差を算出し、偏差が所定値以上であるか否かを検証する検証部をさらに有し、検証部は、偏差が所定値以上であるときに、作成された第2予想流量データを流量差算出部に送り、補正量算出部は、再度、補正降雨量を算出し、予想流量データ作成部は、再度算出された補正降雨量を用いて第2予想流量データを作成してもよい。
【0023】
かかる構成によれば、第2予想流量データの予想流量が、実績流量と所定以上の差を有するときであっても、作成された第2予測流量データを用いて、再度第2予測流量データを作成するので、より確度の高い第2予想流量データを得ることができる。
【0024】
また、上記態様において、予想流量算出部は、所定の時間毎にトリガを出力する計時部をさらに有し、計時部は、実績流量取得部にトリガを出力し、実績流量取得部は、トリガに基づいて、実績流量を取得してもよい。
【0025】
かかる構成によれば、所定の時間毎に第1予想流量データを補正するか否かを判断することができる。したがって、継続的に実績流量に即した確度の高い予想流量を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上の如く、本発明に係る流量予測装置及び流量予測システムによれば、追処理負荷の少ない手法で、確度の高い予想流量を算出できるというすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る流量予測装置及び流量予測システムにおける一実施形態について、
図1〜
図11を参照して説明する。
【0029】
まず、本実施形態に係る流量予測装置10及び流量予測システムの各構成を説明するのに先だって、流域2、制御所5、及び電力所1の関係及び降雨量から予測される河川6の予測流量を算出する手法について説明する。
【0030】
図1に示すように、河川6には、降雨が河川6に流入する流域2が設定されている。流域2に降った降雨は、河川6に流入して、河川6の流量を増加させる。そして、河川6に流入した降雨は、貯水池又は調整池(本実施形態においては調整池3で説明する)に到達し、ダム4において発電に用いられる。制御所5は、ダム4を運用する箇所として設けられ、ダム4の発電量の調整や、調整池3の貯水量の調整を実施している。
【0031】
流域2には、複数の雨量観測所21,21・・・が配置されている。複数の雨量観測所21,21・・・のそれぞれは、配置されているそれぞれの地点における降雨量を所定の時間毎に取得している。複数の雨量観測所21,21・・・のそれぞれは、取得した降雨量を電力所1に設けられる流量予測装置10に送信している。
【0032】
電力所1は、制御所5を支援すべく設けられ、電子通信回線を介して制御所5に接続されている。また、電力所1は、複数の雨量観測所21,21・・・に電気通信回線を用いて接続されている。そして、電力所1は、複数の雨量観測所21,21・・・から取得した降雨量を用いて、河川6の将来にわたる予想流量を算出する流量予測装置10を備えている。流量予測装置10は、算出した予想流量を制御所5に提供(送信)し、ダム4における発電を支援可能になっている。制御所5には、提供された予想流量(データ)を表示する図示しない表示装置が設けられる。該図示しない表示装置は、調整池3への実際の流入量(河川6の流量)である実績流量と、提供された予想流量(データ)を表示可能になっている。制御所5では、運転員により図示しない表示装置に表示された実績流量及び予想流量(データ)が参照されて、ダム1における発電量や放水量の変更が可能になっている。なお、制御所5は、本実施形態において
図1に示すように、電力所1とは別途設けられる構成の他、電力所1内に設けられる構成であってもよい。
【0033】
次に、降雨量から予想流量を求める手法について説明する。
【0034】
図2に示すように、流域2への降雨は、いくつかの成分に分類される。まず、流域2への降雨の一部は、流域2の地表(表面)を通って河川6に流出する。これを表面流出成分降雨とする。残りは、流域2の地表(表面)から地下に浸透する。
【0035】
そして、地表から地下に浸透した降雨の一部は、地下水に至るまでの地層を通って、下線6に流出する。これを中間流出成分降雨とする。残りは、地下水に流出する。
【0036】
さらに、地下水に至った降雨の一部は、地下水として、河川6に流出する。これを地下水流出成分とする。一方で、地下水に至った降雨の残りは、河川6に流出しない。これを損失分降雨とする。このように、降雨量のうち、表面流出成分降雨、中間流出成分降雨、及び地下水流出成分降雨を求めることで、河川6の流量の増加量(流出量)を求めることができる。
【0037】
そこで、
図3に示すように、単位時間(本実施形態においては1時間とする)あたり降雨量を表面中間流出成分降雨(表面流出成分降雨及び中間流出成分降雨の合算量)及び地下水流出成分降雨に分けて、それぞれの流出特性(到達時間を考慮した増加減衰流量)を算出する。そして、単位時間毎に2つの流出特性の流量を合算することで、単位時間あたりで河川6に流出する流出量を得ることができる。そして、
図4に示すように、それぞれの時刻で算出された河川6への流出量を、時間軸で合わせて積算することで、時刻毎に河川6に流出する総合的な総合流出量を得ることができる。
【0038】
実際の河川6は、常時、基底流量と呼ばれる流量を有している。そこで、
図5に示すように、
図4に示された総合的な流出量に基底流量を和算することで、降雨に対する予想流量が算出(作成)される。このように作成された予想流量のデータを予想流量データとする。
【0039】
ここで、作成された予想流量データは、一般的な値を示すものであり、降雨の状況、季節、降雨前の状況、及び河川状況の変化により、実際の河川6の流量である実績流量と予想流量との間に誤差を生じることがある。降雨の状況として、例えば、流域2全体での降雨のばらつきがあり、雨量観測所21の配置位置で取得された降雨量により求められる流域2の降雨量との差が生じることがある。また、風の存在により、植物により保水される水(植物の葉等に付着する水)が流出することがある。
【0040】
また、季節の例として、人為的な操作により田畑から水が流出することが挙げられる。また、季節により、植物による水分の吸収に差が生じることがある。降雨前の状況の例として、梅雨時期と渇水期とでの出水の違いが挙げられる。河川の状況の変化の例として、河川改修や洪水による河川状況の変化が上げられる。本実施形態に係る流量予測装置10及び流量予測システムは、実績流量に沿って予想流量データの示す値を変更することで、上記のような要因で発生した誤差を補正する。
【0041】
図6に示すように、流量予想システムは、流域2に設けられる複数の21,21・・・と、現在の流量である実績流量を観測する流域2と、雨量観測所21,21・・・から降雨量を取得するとともに、作成された予想流量データを制御所に送信する流量予測装置10とを備える。なお、以下の説明では、上記一般的に算出された予想流量データを第1予想流量データとし、上記誤差が補正された予想流量データを第2予想流量データとして説明する。また、単に予想流量というときは、第1予想流量データ又は第2予想流量データで予想される各時刻の流量をいうものとする。そして、
図6では、1つの流域2及び1つの制御所5に対して、1つの流量予測装置10を備える例を示しているが、複数の流域2又は複数の制御所5に対して、1つの流量予測装置10を備えてもよい。
【0042】
流量予測装置10は、現在の河川6の実際の流量である実績流量に沿って、将来に予想される河川6の予想流量データを算出する流量予想装置10であって、各種情報を格納するデータベース部103と、所定の時間毎に流域2の降雨量を取得する降雨量取得部101と、流域2の平均降雨量を算出する平均降雨量算出部102と、実績流量に即した第2予想流量データを作成し、第1予想流量データと置き換える予想流量算出部と104とを備える。ここで、予想流量算出部104は、第2予想流量データを作成する前に、予め上記第1予想流量データを作成することも可能になっている。
【0043】
データベース部103は、流域2への降雨を成分毎に分離する成分分離テーブルを格納する成分分離データベース301と、河川6流域の降雨量を時系列で格納する流出成分データベース302と、任意の降雨量に対応する河川6の流量の変化を経過時間毎に示す流出特性データを格納する流出特性データベース303と、河川流域2の降雨量から予め算出された予想流量データを第1予想流量データとして格納する予想流量データベース304とを有する。
【0044】
成分分離データベース301は、
図7に示すように、降雨量に対して、上記のように成分毎に降雨量を分離する指標としての、成分分離テーブルが格納されている。成分分離テーブルは、複数の流域2,2・・・のそれぞれの初期損失降水量(吸収及び保水等で流出しない降雨量)、地下水流出成分降雨上限値(地下水に流出する降雨の上限値)、地下水流出成分降雨係数(流出する降雨量のうち、地下水に流出する成分の係数)、及び表面中間流出成分降雨係数(流出する降雨量のうち、表面及び中間に流出する成分の係数)の指標を有している。本実施形態においては、流域2は、
図1で示される流域1であるとし、初期損失降水量(損失分降雨)を35mm、地下水流出成分降雨を3mm/h、地下水流出成分降雨を0.6(係数)、表面中間流出成分降雨を1.0(係数)とする。
【0045】
流出成分データベース302は、降雨量として、地下水に流出する地下水流出成分降雨(量)と河川流域の表面及び力の間に流出する表面中間流出成分降雨(量)とを格納する。より詳しくは、流出成分データベース302は、
図8に示すように、時系列に降雨観測値(平均降雨量)、一雨雨量、計算損失雨量、流出計算降雨、地下水流出成分降雨、表面中間流出成分降雨、及び河川の基底流量を格納する。降雨観測値(平均降雨量)は、単位時間(本実施形態においては1時間)あたりに複数の雨量観測所21,21・・・で観測された降雨量を平均した降雨量を示す。一雨雨量は、一度の降雨における単位時間あたりの降雨量を積算した降雨量を示す。計算損失降雨は、地面等に保水可能と想定される水量を示す。流出計算降雨は、実際に河川に流出するであろう水量にあたる雨量を示す。地下水流出成分降雨は、地下水流出成分として流出する水量にあたる雨量を示す。表面中間流出成分降雨は、表面成分及び中間成分として流出する水量を示す。
【0046】
流出特性データベース303は、
図3に示すような、表面中間成分降雨の水量における経過時間と河川6への流出量との相関を示すデータを格納する。また、流出特性データベース303は、地下水流出成分降雨の水量における経過時間と河川6への流出量との相関を示すデータを格納する。流出特性データベース303は、複数の水量のそれぞれに対応する、相関を示すデータを格納する。すなわち、例えば、流出特性データベース303は、1mmの水量毎に、相関を示すデータを格納する。
【0047】
予想流量データベース304は、予め算出された第1予想流量データを格納する。また、予想流量データベース304は、予想流量算出部104で第2予想流量データを作成したときに、第1予想流量データに置き換えて、作成された第2予想流量データを格納する。
【0048】
降雨量取得部101は、所定の時間毎に、複数の雨量観測所21,21・・・から降雨量を取得する。降雨量取得部101は、例えば、単位時間毎(1時間毎)に、複数の雨量観測所21,21・・・から降雨量のそれぞれを取得する。降雨量取得部101は、取得した降雨量を複数の雨量観測所21,21・・・のそれぞれに紐付けて、平均降雨量算出部102に送る。
【0049】
平均降雨量算出部102は、成分分離データベース301から成分分離テーブルを取得するとともに、取得された降雨量から流域の平均降雨量を算出し、成分分離テーブルに基づいて、平均降雨量を分離して流出成分データベース302に格納する。平均降雨量算出部102は、所定時間毎に降雨量取得部101から送られる降雨量毎に平均降雨量を算出及び分離して、時系列に流出成分データベース302に格納する。
【0050】
予想流量算出部104は、現在の実績流量を取得する実績流量取得部108と、第1予想流量データに示される現在の予想流量と取得した現在の実績流量との偏差から補正係数を求め、補正係数と流出成分データベースに時系列で格納された降雨量のそれぞれとを乗算した補正降雨量を算出する補正量算出部109と、補正降雨量を用いて、現在から将来にわたる予想流量である第2予想流量データを作成して、第1予想流量データを置き換える予想流量データ作成部105と、制御所5に第2予測流量データを送信する予想流量データ送信部106とを有する。
【0051】
また、予想流量算出部104は、作成された第2予想流量データにおける現在の予想流量と取得した実績流量との偏差を算出し、偏差が所定値以上であるか否かを検証する検証部110と、所定の時間毎にトリガを出力する計時部107とをさらに有する。
【0052】
実績流量取得部108は、制御所5に電子通信回線を介して接続される。実績流量取得部108は、制御所5から、河川6から調整池3への現在の流量である実績流量を取得する。なお、実績流量取得部108は、計時部107から出力されるトリガに基づいて、実績流量を取得する。実績流量取得部108は、取得した実績流量を補正流量算出部109に送る。
【0053】
補正流量算出部109は、第1予想流量データに示される現在の予想流量と現在の実績流量との偏差を算出する流量差算出部901と、偏差に基づいて降雨量を補正するための補正係数を算出する補正係数算出部902と、流出成分データベースに時系列で格納された降雨量のそれぞれに補正係数を乗算して、補正降雨量を算出する補正降雨量算出部903とを有する。
【0054】
流量差算出部901は、予想流量データベース304から第1予想流量データを取得する。また、流量差算出部901は、実績流量取得部108から送られた実績流量を取得する。そして、流量差算出部901は、第1予想流量データに示される現在の予想流量から実績流量との差を算出することで、現在の予想流量及び実績流量の偏差を算出する。流量差算出部901は、偏差が所定の値以上であるときに、算出された偏差を補正係数算出部902に送る。
【0055】
補正係数算出部902は、流出成分データベース302に格納されている基底流量を取得する。補正係数算出部902は、実績流量と基底流量との差を、第1予想流量データに示される現在の予想流量と基底流量との差で除算することで補正係数を算出する。補正係数算出部902は、算出された補正係数を、補正降雨量算出部903に送る。
【0056】
補正降雨量算出部903は、流出特性データベース303から、時刻(日時)と、全ての時刻のそれぞれに係る地下水流出成分降雨と、表面中間成分降雨のデータを取得する。地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨のそれぞれに補正係数を乗算することで、補正降雨量を算出する。すなわち、補正降雨量算出部903は、補正係数算出部902から取得した補正係数と、流出特性データベース303から取得した地下水流出成分降雨のそれぞれとを乗算する。また、補正降雨量算出部903は、補正係数算出部902から取得した補正係数と、流出特性データベース303から取得した表面中間成分降雨のデータのそれぞれとを乗算する。補正降雨量算出部903は、乗算した結果のそれぞれを補正降雨量として、流出特性データベース303から取得した時刻とともに予想流量データ作成部105に送る。
【0057】
予想流量データ作成部105は、全ての補正降雨量のそれぞれに対応する流出特性データを流出特性データベース303から読み出して、現在から将来にわたる時刻毎に流出特性データに示される流量を合算することで第2予想流量データを作成する。詳細に説明すると、予想流量データ作成部105は、全ての時刻毎に、地下水流出成分降雨に係る補正降雨量に対応する流出特性データを流出特性データベース303から取得する。また、予想流量データ作成部105は、全ての時刻毎に、表面中間流出成分降雨に係る補正降雨量に対応する流出特性データを流出特性データベース303から取得する。そして、予想流量データ作成部105は、時刻毎に取得された流出特性データの流量を経過時間毎に合算することで、総合流出量を算出する。さらに、予想流量データ作成部105は、算出した総合流出量を、時刻にまたがって経過時間毎に合算して、予想される河川6の経過時間毎の総合流出量を作成する。予想流量データ作成部105は、流出成分データベース302から基底流量を取得し、この作成した総合流出量に基底流量を合算することで、第2予測流量データを作成する。
【0058】
予想流量データ作成部105は、作成した第2予測流量データを、予想流量データベース304に格納されている第1予測流量データと置き換えて格納する。そして、予想流量データ作成部105は、作成した第2予測流量データを検証部110に送る。
【0059】
予想流量データ送信部106は、制御所5に電気通信回線を介して接続される。予想流量データ送信部106は、検証部110から送信された第2予想流量データを制御所5に送信する。予想流量データ送信部106が第2予想流量データを制御所5に送信することで、制御所5では、
図9に示すような実績流量と第2予想流量データとが表示される。
【0060】
検証部110は、予想流量データ作成部105から作成された第2予測流量データを取得する。また、検証部110は、実績流量取得部108から実績流量を取得する。検証部110は、第2予測流量データに示される現在の予測流量と、実績流量との偏差を算出する。そして、検証部110は、第2予想流量データ及び実績流量の間の偏差が所定範囲内であるときに、取得した第2予想流量データを予想流量データ送信部106を介して制御所5に送信する。
【0061】
一方、検証部110は、偏差が所定値以上であるときに、作成された第2予想流量データを補正流量算出部109に送る。これにより、検証部110は、第2予想流量データ及び実績流量の間の偏差が未だ一定以上開いているときに、作成された第2予想流量データ及び実績流量を用いて、再度第2予想流量データを作成させる。
【0062】
計時部107は、例えばタイマである。計時部107は、所定時間毎に実績流量取得部108にトリガを出力する。
【0063】
本実施形態に係る流量予測装置10及び流量予想システムの構成は以上の通りであり、次に、
図10及び
図11を用いて流量予測装置10及び流量予想システムのフローチャートを説明する。
【0064】
図10は、第1予想流量データ及び第2予想流量データを作成する全体のフローチャートを示す。まず、降雨量取得部101は、流域2に配置されている複数の雨量観測所21,21・・・のそれぞれから、所定時間毎に降雨量を取得する(ステップS1)。降雨量取得部101は、取得した降雨量を、平均降雨量算出部102に送る。
【0065】
平均降雨量算出部102は、降雨量取得部101から送信された降雨量を用いて、平均降雨量を求める(ステップS2)。また、平均降雨量算出部102は、成分分離データベース301から成分分離テーブルを取得して、平均降雨量から地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨を求める(ステップS3)。平均降雨量算出部102は、求めた平均降雨量、地下水流出成分降雨、及び表面中間成分降雨のそれぞれを、流出成分データベース302に時系列で格納する。
【0066】
予想流量データ作成部105は、流出成分データベース302から、全ての時刻における地下水流出成分降雨及び表面中間成分降雨のそれぞれを取得する。また、予想流量データ作成部105は、地下水流出成分降雨及び表面中間成分降雨のそれぞれに対応する流出特性データを流出特性データベース303から取得する(ステップS4)。予想流量データ作成部105は、取得した流出特性データに示される流量を経過時間毎に合算する(ステップS5)。そして、予想流量データ作成部105は、基底流量をさらに合算して、第1予想流量データを作成する。予想流量データ作成部105は、作成した第1予想流量データを予想流量データベース304に格納するとともに、予想流量データ送信部106を介して、制御所5に送信する(ステップS6)。
【0067】
そして、予想流量算出部104は、所定の時間毎に第1予想流量データと実績流量データとを比較して、第1予想流量データを補正する(ステップS7)。
【0068】
ステップS7についてより詳しく説明すると、
図11に示すように、実績流量取得部108は、計時部107から所定時間毎に出力されるトリガに基づいて、制御所5から実績流量を取得する(ステップS71)。実績流量取得部108は、取得した実績流量を流量差算出部901に送る。
【0069】
流量差算出部901は、予想流量データベース304から第1予想流量データを取得するとともに、実績流量取得部108から実績流量を取得する。流量差算出部901は。第1予想流量データ及び実績流量データの偏差を取得(算出)する(ステップS72)。流量差算出部901は、偏差を所定範囲内と判断するときには、処理を終了する(ステップS73 NO)。一方で、流量差算出部901は、偏差を所定範囲外と判断するときには、補正係数算出部902に偏差の値を送信する(ステップS73 YES)。
【0070】
補正係数算出部902は、送信された偏差の値を用いて、補正係数を算出する(ステップS74)。補正係数算出部902は、算出した補正係数を補正降雨量算出部903に送る。
【0071】
補正降雨量算出部903は、流出成分データベース302から、全ての時刻毎に地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨のそれぞれを取得する。補正降雨量算出部903は、取得した地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨のそれぞれに補正係数を乗算して、補正降雨量を算出する(ステップS75)。補正降雨量算出部903は、算出した補正降雨量を予想流量データ作成部105に送る。
【0072】
予想流量データ作成部105は、補正降雨量算出部903から送信された補正降雨量を用いて、第2予測流量データを作成する。予想流量データ作成部105は、作成した第2予想流量データを、予想流量データベース304に格納されている第1予想流量データに置き換えて格納する。また、予想流量データ作成部105は、作成した第2予想流量データを検証部110に送る。
【0073】
検証部110は、実績流量取得部108から、実績流量を取得する。また、検証部110は、予想流量データ作成部105から送信された第2予想流量データを取得する。検証部110は、第2予測流量データ及び実績流量の偏差を求め、偏差が所定範囲内か否かを判断する(ステップS77)。検証部110は、偏差が所定範囲内でないと判断すると(ステップS77 NO)、補正流量算出部109に第2予想流量データを送り、第2予想流量データ及び実績流量データとの間で再度、第2予想流量データを作成させる。すなわち、補正流量算出部109は、再度、補正降雨量を算出する。
【0074】
具体的に、流量差算出部901は、第2予想流量データ及び実績流量データを取得する。補正係数算出部902は、第2予想流量データ及び実績流量から再度補正係数を算出する。補正降雨量算出部903は、再度算出された補正係数と、流出成分データベース302に格納されている地下水流出降雨及び表面中間流出成分降雨とから、再度、補正降雨量を算出する。予想流量データ作成部105は、再度算出された補正降雨量を用いて第2予想流量データを作成する。予想流量データ作成部105は、再度作成された第2予想流量データを、予想流量データベース304に格納されている第2予想流量データに置き換えて格納する。また、予想流量データ作成部105は、再度作成された第2予想流量データを検証部110に送る。検証部110は、再度作成された第2予想流量データ及び実績流量との偏差を求めて、偏差が所定範囲内になるまで上記流れを繰り返す。
【0075】
一方、検証部110は、偏差が所定範囲内であると判断すると(ステップS77 YES)、第2予想流量データを予想流量データ送信部106を介して制御所5に送信する(ステップS78)。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る流量予想装置10は、現在の河川6の実際の流量である実績流量に沿って、将来に予想される河川の予想流量データを算出する流量予想装置10であって、河川流域2の降雨量を時系列で格納する流出成分データベース302と、河川流域2の降雨量から予め算出された予想流量データを第1予想流量データとして格納する予想流量データベース304と、実績流量に即した第2予想流量データを作成し、第1予想流量データと置き換える予想流量算出部104とを備え、予想流量算出部104は、現在の実績流量を取得する実績流量取得部108と、第1予想流量データに示される現在の予想流量と取得した現在の実績流量との偏差から補正係数を求め、補正係数と流出成分データベースに時系列で格納された降雨量のそれぞれとを乗算した補正降雨量を算出する補正量算出部109と、補正降雨量を用いて、現在から将来にわたる予想流量である第2予想流量データを作成して、第1予想流量データを置き換える予想流量データ作成部105とを有することを特徴とする。
【0077】
また、本実施形態にかかる流量予想システムは、流域2に設けられる複数の雨量観測所21,21・・・と、現在の流量である実績流量を観測する制御所5と、雨量観測所21,21・・・から降雨量を取得するとともに、作成された第2予想流量データを制御所5に送信する流量予測装置10を備えることを特徴とする。
【0078】
かかる構成によれば、第1予想流量データで示される予想流量に対して、現在の実績流量の偏差があるときに、補正量算出部109は、偏差を補正係数として、流出成分データベースに時系列に格納された降雨量を補正する。これにより、補正量算出部109は、偏差に応じて補正された補正降雨量を取得する。予想流量データ作成部105は、補正降雨量に基づく第2予想流量データを作成することで、現在の実績流量に沿った予想流量データを作成することができる。偏差に従って算出される補正係数を用いて補正降雨量を算出し、補正降雨量を用いて第2予想流量データを作成するだけであるので、補正降雨量の算出までを繰り返す必要がなく処理負荷を少なくすることができ、しかも実績流量に沿う確度の高い流量予測装置10を提供することができる。
【0079】
また、かかる構成において、補正量算出部109は、第1予想流量データに示される現在の予想流量と現在の実績流量との偏差を算出する流量差算出部901と、偏差に基づいて降雨量を補正するための補正係数を算出する補正係数算出部902と、流出成分データベース302に時系列で格納された降雨量のそれぞれに補正係数を乗算して、補正降雨量を算出する補正降雨量算出部903とを有してもよい。
【0080】
かかる構成によれば、流量算出部901によって求められた偏差から、補正係数算出部902が補正係数を算出する。補正降雨量算出部903が、時系列で格納された降雨量のそれぞれに補正係数を乗算して、補正降雨量を算出するので、現在の実績流量にあった補正降雨量を得ることができる。これにより、補正降雨量の算出までを繰り返す必要がなく処理負荷を少なくすることができ、しかも実績流量に沿う確度の高い流量予測装置10を提供することができる。
【0081】
また、上記態様において、任意の降雨量に対応する河川の流量の変化を経過時間毎に示す流出特性データを格納する流出特性データベース303をさらに備え、予想流量データ作成部105は、全ての補正降雨量のそれぞれに対応する流出特性データを読み出して、現在から将来にわたる時刻毎に流出特性データに示される流量を合算することで第2予想流量データを作成してもよい。
【0082】
かかる構成によれば、予想流量データ作成部105は、補正降雨量に対応する流出特性データを読み出して、時間毎に単に合算することで第2予測流量データを作成することができる。これにより、第2予測流量データを作成する際にも処理を軽減することができる。
【0083】
また、上記態様において、流出成分データベース302は、河川の基底流量をさらに格納し、補正係数算出部902は、実績流量と基底流量との差を、第1予想流量データに示される現在の予想流量と基底流量との差で除算することで補正係数を算出してもよい。
【0084】
かかる構成によれば、補正係数は、単に減算及び除算することで算出されるので、補正係数の算出に係る処理負荷を軽減できる。
【0085】
また、上記態様において、流出成分データベース302は、降雨量として、地下水に流出する地下水流出成分降雨と河川流域の表面及び力の間に流出する表面中間流出成分降雨とを格納し、補正量算出部902は、地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨のそれぞれに補正係数を乗算することで、補正降雨量を算出してもよい。
【0086】
かかる構成によれば、降雨量を地下水流出成分降雨と表面中間流出成分降雨とに分けることで、降雨量を細分化する。これにより、流域の状況や、降雨の時間に応じた流出量を得ることができる。そして、補正量算出部902が、細分化されたこれらの降雨量に補正係数を乗算して補正降雨量を算出するので、より確度の高い補正降雨量を得ることができる。
【0087】
また、上記態様において、流域2への降雨量を分離するためのパラメータを成分分離テーブルとして格納する成分分離データベース301と、所定の時間毎に流域の降雨量を取得する降雨量取得部101と、成分分離データベース301から成分分離テーブルを取得するとともに、取得された降雨量から流域の平均降雨量を算出し、成分分離テーブルに基づいて、平均降雨量を分離して流出成分データベース302に格納する平均降雨量算出部102とをさらに備えてもよい。
【0088】
かかる構成によれば、河川流域への降雨量を成分に分離するためのパラメータを用いて、降雨量を各成分に分離することができる。これにより、河川流域特有の状況(地層の状況や、出水時間等)を用いて、降雨量を各成分に分離することができる。そして、平均降雨量を用いることで、流域への降雨の偏りを是正することができる。流出成分データベース302は、流域への降雨の偏りや、河川流域特有の状況を加味した降雨量の各成分を格納することができるので、より確度の高い情報を格納することができる。
【0089】
また、上記態様において、予想流量算出部104は、作成された第2予想流量データにおける現在の予想流量と取得した実績流量との偏差を算出し、偏差が所定値以上であるか否かを検証する検証部110をさらに有し、検証部110は、偏差が所定値以上であるときに、作成された第2予想流量データを補正流量算出部109に送り、補正量算出部109は、再度、補正降雨量を算出し、予想流量データ作成部105は、再度算出された補正降雨量を用いて第2予想流量データを作成してもよい。
【0090】
かかる構成によれば、第2予想流量データの予想流量が、実績流量と所定以上の差を有するときであっても、作成された第2予測流量データを用いて、再度第2予測流量データを作成するので、より確度の高い第2予想流量データを得ることができる。
【0091】
また、上記態様において、予想流量算出部104は、所定の時間毎にトリガを出力する計時部107をさらに有し、計時部107は、実績流量取得部108にトリガを出力し、実績流量取得部108は、トリガに基づいて、実績流量を取得してもよい。
【0092】
かかる構成によれば、所定の時間毎に第1予想流量データを補正するか否かを判断することができる。したがって、継続的に実績流量に即した確度の高い予想流量を得ることができる。
【0093】
なお、本発明に係る流量予測装置及び流量予測システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0094】
例えば、本実施形態に係る流量予測装置10及び流量予測システムでは、降雨量に基づいて第2予想流量を作成したが、一方で、渇水期には、河川6の流量が基底流量を下回ることがある。このときには、降雨量を用いることができない。そこで、補正流量算出部109は、第1予想流量データに示される現在の予想流量と、実績流量の偏差を補正降雨量としてもよい。具体的に、流量差算出部901は、予想流量データベース304から第1予想流量データを取得するとともに、実績流量取得部108から実績流量を取得する。流量差算出部901は、第1予測流量及び実績流量の偏差を求め、所定値以上であるときに、補正係数算出部902に偏差を送る。また、流量差算出部901は、実績流量が基底流量を下回っているか否かを判断する。流量差算出部901は、実績流量が基底流量を下回っていると判断したときに、その旨を示す信号を補正係数算出部902に送る。
【0095】
補正係数算出部902は、上記信号を受信したときに、取得した偏差を補正係数とする。補正係数算出部902は、上記信号と補正係数とを補正降雨量算出部903に送る。補正降雨量算出部903は、上記信号と補正係数とを受信すると、予想流量データ作成部105に上記信号と補正係数をそのまま送信する。
【0096】
予想流量データ作成部105は、上記信号及び補正係数を受信すると、第1予測流量データから補正係数を減算したデータを第2予測流量データとする。ここで、予想流量データ作成部105は、急激な予想流量の変化を防止すべく、所定の時間(例えば6時間)で徐々に予想流量を減少させる第2予想流量データを作成しても良い。これにより、降雨時のみならず、渇水時においても確度の高い流量予測装置10及び流量予想システムを提供することができる。
【0097】
また、上記実施形態に係る流量予測装置10及び流量予想システムにおいては、補正降雨量算出部903が流出成分データベース302から取得した地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨に補正係数を乗算することとした。一方で、長い間降雨がないときには、補正係数算出部902は、地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨に代えて、所定の値(例えば1mm)を地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨として補正降雨量を算出しても良い。これにより、第2予想流量データが第1予想流量データに比べてまったく補正されないことを防止できる。
【0098】
また、上記実施形態に係る流量予測装置10及び流量予測システムにおいては、実績流量取得部108が実績流量を制御所5から取得することとしたが、実績流量取得部108は、調整池3の水位の変動量から移動平均を算出して、実績流量を算出しても良い。このようにすることで、制御所5から精度の高くない実績水量しか得られないとしても、より確度の高い実績水量を得ることができ、ひいてはより確度の高い予想流量データを得ることができる。
【0099】
また、上記実施形態に係る流量予測装置10及び流量予測システムにおいては、計時部107がトリガを出力したときに実績流量取得部108が実績流量を取得することとした。一方で、計時部107がトリガを出力したときに、降雨量取得部101が降雨量を取得するとともに、実績流量取得部108が実績流量を取得するとしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態に係る流量予測装置10及び流量予測システムにおいて、上流に別のダム等の設備がある場合には、設備の放流量が実績流量に影響を与えることがある。実際とは異なる第2予想流量データが作成されないように、実績流量取得部108は、実績流量から、上記設備の放流量及び上記設備の使用水量を減算して、実際の実績流量として取得しても良い。
【0101】
また、上記設備と調整池3との位置関係を勘案して、上記設備から調整池3への着水時間を考慮して、実際の実績流量を算出しても良い。
【0102】
また、上記実施形態に係る流量予測装置10及び流量予測システムにおいては、降雨量を地下水流出成分降雨及び表面中間流出成分降雨の2つに分離するとしたが、さらに複数に分類して分離しても良い。また、降雨量は、地下、中間、表面流出のそれぞれの成分を個別に算出してもよく、全ての成分を一つの計算式で一括して算出してもよい。そして、補正降雨量算出部903は、分離したそれぞれの流出成分に対して補正係数を乗算することで、補正降雨量を算出しても良い。
【0103】
また、上記実施形態に係る流量予想装置10及び流量予想システムにおいては、
図3乃至
図5に示すように、河川への出水を予測する手法として、降雨量をそれぞれの成分に分離して流出量を合算する手法を例示した。上記実施形態では、この手法に代えて、タンクモデル、単位図、又は貯留関数等の出水を予測可能な手法を採用してもよい。